説明

フリップチップ実装基板

【課題】 チップからの信号を正確に伝送することができるフリップチップ実装基板を実現することにある。
【解決手段】 本発明は、 チップに設けられたバンプがフリップチップ実装されるフリップチップ実装基板に改良を加えたものである。本基板は、開放端が形成された配線パターンと、この配線パターンのうち絶縁膜に覆われない所定の長さの導体パターンと、この導体パターンに連続して形成され、バンプが接合される電極パターンとを有し、配線パターンは、複数並んで設けられ、電極パターンは、導体パターンの長さ方向に対して、開放端近傍に設けられることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップに設けられたバンプがフリップチップ実装されるフリップチップ実装基板に関し、詳しくは、チップからの信号を正確に伝送することができるフリップチップ実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップを基板に実装する場合、チップ周辺に設けられているバンプ(例えば、金バンプ)を介して基板に接続するフリップチップが行なわれる。このような基板は、フリップチップ実装基板とも呼ばれる。
【0003】
図7は、従来のフリップチップ実装基板の一部の構成を示した図である(例えば、特許文献1参照)。図7において、配線パターン10は、電気信号の伝送経路であり、チップの電極数(バンプ数)に応じて基板上に複数並んで形成される。通常、配線パターン10はほぼ平行に形成される。
【0004】
電極パターン11は、配線パターン10に連続して形成され、チップのバンプが接合される接合部である。導体パターン12は、パターン10、11のうち、絶縁膜であるソルダーレジスト20で覆われていない部分であり、所定の長さL1、所定の幅Wである。なお、導体パターン12は、チップのバンプとパターン11とを電気的に接続するための接続媒体、例えば、半田がチップの実装前にコートされている。
【0005】
ソルダーレジスト20は、電極パターン11を挟んで対向して設けられるが、ソルダーレジスト20の対向する辺を基準線21とすると、この基準線21間の距離Ls1=L1である。
【0006】
開放端13は、基板に設けられる他の電気回路(図示せず)と接続されず、配線パターン10の一方に形成される。もちろん、配線パターン10の他端は、図示しない他の電気回路と接続されている。スタブ14は、配線パターン10のうち、電極パターン11から開放端13までの部分である。なお、電極パターン11の大きさが無視できる程度ならば、電極パターン11の中心(図7中、1点鎖線)から、開放端13までの部分がスタブ14になる。
【0007】
チップのバンプが直線に沿って設けられるので、電極パターン14も導体パターン11が並ぶ方向の直線上(図7中、1点鎖線)に設けられる。図7中は、各導体パターン11の長手方向の中央部分(導体パターン11の端から距離L1’=(L1)/2)に電極パターン14が形成され、中央部分でチップのバンプと接合される一例を図示している。
【0008】
図8は、従来のフリップチップ実装基板の一部のその他の構成を示した図である。ここで、図7と同一のものは同一符号を付し、説明を省略する。図7との違いは、配線パターン10が、ソルダーレジスト20の基準線21の手前まで形成された構成になっている点である。つまり、配線パターン10の開放端13が、ソルダーレジスト20で覆われていない。なお、導体パターン12の長さL1、幅W共に図7と同等である。スタブ15は、図7と同様に、配線パターン10のうち、電極パターン11から開放端13までの部分である。
【0009】
【特許文献1】特開2000−77471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
基板上に実装される他の電子回路とチップとを接続する配線パターン10は、基板設計の高密度化により、片方向のみから配線の引き出しをすることが難しく、図7、図8に示すように両方向から配線するようにしている。従って、配線パターン10の開放端13が、交互に形成され、スタブ14、15が形成される。
【0011】
また、導体パターン12は、コートされる半田、ソルダーレジスト20形成時の誤差、チップとの接合時の誤差などを考慮し、最低限必要な長さL1が決定される。特に、チップをフリップチップ実装基板に確実に実装するために、半田がコートされる部分の面積を所定の値よりも大きくする必要があるが、上述のように基板設計の高密度化により、幅Wを大きくすることは困難であり、長さL1で必要な面積を確保している。
【0012】
しかしながら、導体パターン11の長さL1を長くすることにより、長いスタブ14、15が形成される。例えば、図7、図8では、約(L1)/2程度のスタブ14、15になる。このようなスタブ14、15は、伝送経路である配線パターン10の特性(例えば、周波数特性)に影響を及ぼし信号を正確に伝送することが困難になるという問題があった。
【0013】
そこで本発明の目的は、チップからの信号を正確に伝送することができるフリップチップ実装基板を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、
チップに設けられたバンプがフリップチップ実装されるフリップチップ実装基板において、
開放端が形成された配線パターンと、
この配線パターンのうち絶縁膜に覆われない所定の長さの導体パターンと、
この導体パターンに連続して形成され、前記バンプが接合される電極パターンと
を有し、
前記配線パターンは、複数並んで設けられ、
前記電極パターンは、前記導体パターンの長さ方向に対して、前記開放端近傍に設けられることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
配線パターンのうち少なくとも一つは、開放端が、他の配線パターンの開放端に対し、前記電極パターンを挟んで反対側に設けられ、
絶縁膜は、前記電極パターンを挟んで対向して設けられることを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、
絶縁膜は、前記配線パターンの開放端を覆うことを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、
絶縁膜は、前記導体パターンの開放端手前までの基板を覆う凸部を有することを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、請求項1、2、4のいずれかに記載の発明において、
電極パターンは、前記導体パターンの開放端に設けられることを特徴とするものである。
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、
導体パターンは、半田がコートされることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1〜6によれば、電極パターンが、所定の長さの導体パターンの長さ方向(長手方向)に対して、開放端近傍の位置に設けられるので、スタブを小さくすることができる。これにより、伝送経路である配線パターンの特性への影響を抑えることができ、信号を正確に伝送することができる。
【0017】
請求項2によれば、配線パターンと図示しない電子回路とを片方向のみから接続しなくてすみ、基板設計が容易となる。
【0018】
請求項3によれば、絶縁膜が設けられるので、絶縁膜で保護された部分には、ビアや配線等を設けることができ、高密度化を図ることができる。また、絶縁膜によって、基板、ビア、配線等の保護が図れ信頼性が増すと共に、電極パターンにコートされる半田が余分に広がることを防ぐことができる。
【0019】
請求項4によれば、絶縁膜が開放端手前まで設けられるので、絶縁膜で保護された部分には、ビアや配線等を設けることができ、高密度化を図ることができる。また、絶縁膜によって、基板、ビア、配線等の保護が図れ信頼性が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施例]
図1は、本発明の第1の実施例を示した構成図である。ここで、図7と同一のものには同一符号を付し、説明を省略する。図1において、電極パターン11の代わりに、電極パターン16が、導体パターン12の長さ方向の中央部分に対して、開放端13よりの位置に設けられる。すなわち、導体パターン12の長さをL1、電極パターン16の中心部分(図1中の1点鎖線)から開放端13までの長さをL2とすると、0<L2<(L1)/2である。
【0021】
スタブ17は、図7と同様に、配線パターン10のうち、電極パターン16から開放端13までの部分である。なお、電極パターン16の大きさが無視できる程度ならば、電極パターン11の中心(図1中、1点鎖線)から、開放端13までの部分がスタブ17になる。
【0022】
ソルダーレジスト20の代わりに、ソルダーレジスト30が設けられ、電極パターン16を挟んで対向して設けられ、配線パターン10の開放端13を覆うように、凸部32を有する。ソルダーレジスト30の基準線31間の距離Ls2>L1である。もちろん、凸部32の先端から対向するソルダーレジスト30の基準線31までの距離はL1である。
【0023】
このように、電極パターン16が、所定の長さL1の導体パターン12の長さ方向(長手方向)の中央部分に対して、開放端13よりの位置に設けられるので、スタブ17を小さくすることができる。これにより、伝送経路である配線パターン10の特性への影響を抑えることができ、信号を正確に伝送することができる。
【0024】
また、配線パターン10と図示しない電子回路とを片方向のみから接続しなくてすみ、基板設計が容易となる。
【0025】
さらに、ソルダーレジスト30に凸部13が設けられるので、ソルダーレジスト30で保護された部分には、ビアや配線等を設けることができ、高密度化を図ることができる。また、ソルダーレジスト30によって、基板、ビア、配線等の保護が図れ信頼性が増すと共に、電極パターン16にコートされる半田が余分に広がることを防ぐことができる。
【0026】
[第2の実施例]
図2は、本発明の第2の実施例を示した構成図である。ここで、図1と同一のものには同一符号を付し、説明を省略する。図1との違いは、配線パターン10が、ソルダーレジスト30から突き出た凸部32先端の手前まで形成された構成になっている点である。つまり、配線パターン10の開放端13が、ソルダーレジスト30の凸部32で覆われていない。なお、導体パターン12の長さL1、幅W共に図1と同等であり、電極パターン16は、開放端13近傍に設けスタブ18がほとんど形成されないようにするとよい。
【0027】
ここで、近傍とは、バンプの大きさ、バンプの位置精度、フリップチップ実装精度等を考慮し、バンプが電極パターン16から外れないように設計した場所である。
【0028】
スタブ18は、図1と同様に、配線パターン10のうち、電極パターン16から開放端13までの部分である。また、電極パターン16の中心部分(図2中の1点鎖線)から開放端13までの長さをL3とすると、0<L3<(L1)/2である。その他の部分は、図1に示す基板と同様なので説明を省略する。
【0029】
このように、電極パターン16が、所定の長さL1の導体パターン12の長さ方向(長手方向)に対して、開放端13近傍の位置に設けられるので、スタブ18を小さくすることができる。これにより、伝送経路である配線パターン10の特性への影響を抑えることができ、信号を正確に伝送することができる。
【0030】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示すようなものでもよい。
図1、図2に示す基板において、ソルダーレジスト30に凸部32を設ける構成を示したが、凸部32を設けなくともよく、例えば、図3に示すような構成としてもよい。ここで、図2と同一のものは同一符号を付し、説明を省略する。図3において、図2と異なる点は、ソルダーレジスト30の凸部32が設けられない点である。その他の部分は、図2に示す基板と同様なので説明を省略する。
【0031】
また、図1に示す基板において、開放端13よりに電極パターン16を設ける構成を示したが、開放端13側のソルダーレジスト30の凸部32の位置近傍に電極パターン16を設け、すなわち、開放端13近傍に電極パターン16を設け、スタブ17がほとんど形成されないようにしてもよい。
【0032】
このように、電極パターン16が、所定の長さL1の導体パターン12の長さ方向(長手方向)に対して、開放端13近傍の位置に設けられるので、スタブ17をより小さくすることができる。これにより、伝送経路である配線パターン10の特性への影響を抑えることができ、信号を正確に伝送することができる。
【0033】
また、図2、図3に示す基板において、開放端13近傍に電極パターン16を設ける構成を示したが、開放端13に電極パターン16を設け、スタブ18がほとんど形成されないようにしてもよい。
【0034】
また、図1〜図3に示す基板において、開放端13が設けられる方向を1本ごと交互に
変える構成を示したが、方向を変えるのは何本ごとでもよい。例えば、図1〜図3のそれぞれを、図4〜図6に示すように2本ごとに開放端13の方向が異なるように設けてもよい。または、開放端13の方向を全て同じ方向にしてもよい。
【0035】
さらに、図1〜図6に示す基板において、接続媒体に半田を用いる構成を示したが、チップの電極と導体パターンとを電気的に接続するものならばどのようなものでもよく、また、チップのバンプと導体パターンとの電気的な接続を固定する接着剤でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例を示した構成図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示した構成図である。
【図3】本発明の第3の実施例を示した構成図である。
【図4】本発明の第4の実施例を示した構成図である。
【図5】本発明の第5の実施例を示した構成図である。
【図6】本発明の第6の実施例を示した構成図である。
【図7】従来のフリップチップ実装基板の一部の構成例を示した図である。
【図8】従来のフリップチップ実装基板の一部のその他の構成例を示した図である。
【符号の説明】
【0037】
10 配線パターン
12 導体パターン
16 電極パターン
30 ソルダーレジスト(絶縁膜)
32 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップに設けられたバンプがフリップチップ実装されるフリップチップ実装基板において、
開放端が形成された配線パターンと、
この配線パターンのうち絶縁膜に覆われない所定の長さの導体パターンと、
この導体パターンに連続して形成され、前記バンプが接合される電極パターンと
を有し、
前記配線パターンは、複数並んで設けられ、
前記電極パターンは、前記導体パターンの長さ方向に対して、前記開放端近傍に設けられることを特徴とするフリップチップ実装基板。
【請求項2】
配線パターンのうち少なくとも一つは、開放端が、他の配線パターンの開放端に対し、前記電極パターンを挟んで反対側に設けられ、
絶縁膜は、前記電極パターンを挟んで対向して設けられることを特徴とする請求項1記載のフリップチップ実装基板。
【請求項3】
絶縁膜は、前記配線パターンの開放端を覆うことを特徴とする請求項2記載のフリップチップ実装基板。
【請求項4】
絶縁膜は、前記導体パターンの開放端手前までの基板を覆う凸部を有することを特徴とする請求項2記載のフリップチップ実装基板。
【請求項5】
電極パターンは、前記導体パターンの開放端に設けられることを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載のフリップチップ実装基板
【請求項6】
導体パターンは、半田がコートされることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフリップチップ実装基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−294766(P2006−294766A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111527(P2005−111527)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】