説明

フルオロアクリレート重合体を含有する化粧料

【課題】化粧料、特に化粧料粉体に対して、耐水性、撥水撥油性、使用感、分散性を与える処理剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示されるフルオロアクリレートから誘導された繰返単位を必須とする重合体を含む化粧料用皮膜形成剤。
CH2=C(−X)−C(=O)−A−Rf (1)
[X:ハロゲン原子など
A:−O−Y−(ここで、Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基などである。)、あるいは
−Y2−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n− (ここで、Y2は、−O−または−NH−であり;Zは、−S−または−SO−であり;mは1〜10、nは0〜10、pは0または1である。)
Rf:炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数が6以下の短鎖フルオロアルキル(Rf)基含有フルオロアクリレート重合体である化粧料用皮膜形成剤と、この皮膜形成剤で表面を被覆した化粧料用粉体、および、これらを含有することを特徴とする化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロアルキル基の炭素数が8以上の長鎖Rf基を含有するフルオロアクリレートを必須の繰り返し単位とする共重合体を皮膜形成剤として化粧料に配合すると、汗と皮脂に対して化粧崩れしにくい性質を付与できることが知られている(WO98/55078, WO99/48464)。このように実用的に使用されている含フッ素アクリレート系ポリマーの側鎖のフルオロアルキル基の炭素数は通常8以上であり、通常「テロマー」とよばれている。
【0003】
「テロマー」が分解または代謝により炭素数8の含フッ素カルボン酸であるPFOA(perfluorooctanoic acid)を生成する可能性があるとされ、また、「テロマー」が、泡消火剤;ケア製品と洗浄製品;カーペット、テキスタイル、紙、皮革に設けられている撥水撥油被覆および防汚加工被覆を含めた多くの製品に使用されていることをも公表している(EPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003)
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)
【0004】
近年、そのPFOA(perfluorooctanoic acid)に対する環境への負荷の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日にEPA(米国環境保護庁)がPFOAに対する科学的調査を強化すると発表した。
【0005】
従来
1.化粧料に配合されるフルオロアクリレートを必須の繰り返し単位とする共重合体は「テロマー」を含むこと
2.この共重合体は化粧料処方中に配合される他素材との分散性が悪いこと
が問題となっており、早急に炭素数が6以下の短鎖Rf基含有フルオロアクリレート共重合体への移行が求められていた。単にRf基の鎖長のみを短くすると、著しく耐水性、撥水撥油性を損なうので、新しい構造のフルオロアクリレートが要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化粧料、特に化粧料粉体に対して、耐水性、撥水撥油性、使用感、分散性を与える処理剤(特に、被膜形成剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するために、鋭意研究した結果、特定の構造のフルオロアクリレートを必須の繰返単位とする重合体が化粧料用皮膜形成剤として優れた特徴を有することが明らかとなった。本発明の化粧料用皮膜形成剤は、「テロマー」とは異なる化学骨格構造をもち、また、優れた耐水性、撥水撥油性、使用感、他素材との分散性を有する。
【0008】
本発明は、一般式(1)で示されるフルオロアクリレートから誘導された繰返単位を必須とする重合体を含む化粧料用皮膜形成剤を提供する。

CH2=C(−X)−C(=O)−A−Rf (1)

[X:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、
A:−O−Y−(ここで、Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−(CH2CH2)a−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、aは0または1である。)、−CH2CH(OR11)CH2−基(但し、R11は水素原子またはアセチル基である。)または、-(CH2)nSO2-基(nは1〜10)である。)、あるいは
−Y2−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n− (ここで、Y2は、−O−または−NH−であり;Zは、−S−または−SO−であり;mは1〜10、nは0〜10、pは0または1である。)
Rf:炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基]
【発明の効果】
【0009】
本発明において、
皮膜形成剤は、「テロマー」とは異なる化学骨格構造をもつ
皮膜形成剤は、化粧料処方中に配合される他素材との分散性が良い
化粧料は、優れた耐水性、撥水撥油性、使用感を有する
という利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において使用するフルオロアクリレート[以下「FA」と省略する]は、以下の構造式(1)を有する。
CH2=C(−X)−C(=O)−A−Rf (1)
[X:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基;
A:−O−Y−(ここで、Yは、直接結合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−(CH2CH2)a−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、aは0または1である。)、−CH2CH(OR11)CH2−基(但し、R11は水素原子またはアセチル基である。)または、-(CH2)nSO2-基(nは1〜10)である。)、あるいは
−Y2−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n− (ここで、Y2は、−O−または−NH−であり;Zは、−S−または−SO−であり;mは1〜10、nは0〜10、pは0または1である。);
Rf:炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基]
【0011】
上記式(1)において、Rf基の炭素数は、1〜6、例えば1〜5、特に1〜4である。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−CF2CF2CF2CF2CF2CF3等である。
【0012】
は、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基、環状脂肪族基または芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CH2CH(OY11)CH2−基(但し、Y11は水素原子またはアセチル基である。)、または、-(CH2)nSO2-基(nは1〜10)である。脂肪族基はアルキレン基(特に炭素数1〜4、例えば、1または2)であることが好ましい。芳香族基および環状脂肪族基は、置換されていてもあるいは置換されていなくてもどちらでもよい。−CH2CH2N(R1)SO2−基および-(CH2)nSO2-基においてRfに結合する原子は、メチレン基における炭素原子またはスルホン基における硫黄原子のどちらであってもよいが、一般に、スルホン基における硫黄原子であってよい。
【0013】
FAとしては、次のものが挙げられる。
CH2=C(−X)−C(=O)−O−(CH2)n−Rf
CH2=C(−X)−C(=O)−O−C10−Rf
(−C10−は2価のシクロヘキサン基である。)
CH2=C(−X)−C(=O)−O−C−Rf
(−C−は2価のベンゼン基である。)
CH2=C(−X)−C(=O)−O−C12−Rf
(−C−は2価のビフェニル基である。)
CH2=C(−X)−C(=O)−O−(CH2)m−S−(CH2)n−Rf
CH2=C(−X)−C(=O)−O−(CH2)m−SO2−(CH2)n−Rf
CH2=C(−X)−C(=O)−NH−(CH2)n−Rf

FAの具体例は、次のとおりである。
【0014】
【化1】


【化2】

【0015】
【化3】


【化4】


【化5】

【0016】
【化6】


Rf-SO2(CH2)3-OCO-CH=CH2

[Rfは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。]
などが例示される。
【0017】
これらのFAは2種類以上のものを混合させて用いても良いし、既存のフルオロアクリレート、
CH2=C(−H)−COO−CH2CH2−C6F13
CH2=C(−CH3)−COO−CH2CH2−C6F13
などと混合しても良い。
【0018】
本発明においてFAと共重合する非フッ素系モノマーの好ましい例は、重合性シリコーン、アルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む)の3種類である。
【0019】
重合性シリコーンは、エチレン性不飽和二重結合およびシロキサン結合を有する化合物である。重合性シリコーンの例は、アゾ基含有シリコーンおよび重合性シランである。
【0020】
アゾ基含有シリコーンは、一般式:


[式中、xは10〜200であり、nは1〜20である。]
で示されるものであることが好ましい。
【0021】
アゾ基含有シリコーンの具体例は次のとおりである。



【0022】
重合性シランは、エチレン性不飽和二重結合およびシラン基(特に、末端シラン基)を有する化合物である。重合性シランは、末端シランカップリング剤であってよい。
重合性シランは一般式:
CH=C(R)−C(=O)−O−R−Si(OR)
または
CH=CHSi(OR)
[式中、Rは、メチル基または水素原子であり、Rは、場合によりエーテル結合1個または2個で遮断されている、直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する炭素原子1〜10個の2価の飽和炭化水素基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0023】
重合性シランの具体例は、次のとおりである。
CH2=CHCO2(CH2)3Si(OCH3)3
CH2=CHCO2(CH2)3Si(OC25)3
CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OCH3)3
(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、
CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OC25)3
CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3(OC25)2
CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC25(OCH3)2
CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(CH3)2(OC25)、
CH2=C(CH3)CO(CH2)3Si(CH3)2OH、
CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3〔ON(CH3)C252
CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC65〔ON(CH3)C252
CH2=CHSi(OCH3)3
CH2=CHSi(OC25)3
CH2=CHSiCH3(OCH3)2
CH2=CHSi(CH3)2(OC25)、
CH2=CHSi(CH3)2SiCH3(OCH3)2
CH2=CHSiCH3〔ON(CH3)C252
ビニルトリクロロシラン、
ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン。
【0024】
アルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルである。アルキル基の炭素数は、1〜30、例えば、6〜30、例示すれば、10〜30であってよい。アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは水素原子またはメチル基、AはC2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基である。]
で示される化合物であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの具体例は、
メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートである。
【0025】
(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートは例えば、式:
CH=CR11COO−(R12−O)−R13
[式中、R11およびR13は水素またはメチル基、R12は炭素数2〜6のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。]
で示される化合物であってよい。
【0026】
具体的には、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
CH=C(CH)COO(CHCHO)
[式中、nは、2、5または8である。]
などが例示される。
【0027】
これらの非フッ素系モノマーは2種類以上のものを混合させて用いてもよい。
ここでFAと重合性シリコーンを必須成分として重合したFA重合体を選択すると、FAに由来する耐水性、撥水撥油性と、重合性シリコーンに由来する耐水性、撥水性、使用感(「すべり感」、「さらさら感」など)を満足したものが得られる。また重合性シリコーンを共重合することにより化粧料で汎用されるシリコーン油に溶解しやすくなる。さらに、FAと重合性シリコーンに加えて、アルキル(メタ)アクリレートを重合するFA重合体を選択すると炭化水素系、エステル系、ケトン系溶剤に対する溶解性を改善することができる。
【0028】
また、FAと(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む)を必須成分として重合したFA重合体を選択すると、汗と皮脂が共存する環境においても化粧崩れしにくくなる。一般に親水性モノマーを含有しないFA重合体の表面は、乾燥状態では油をはじくが、水が共存したときは逆に油で濡れてしまう["パーフルオロアルキルエチルアクリレート(FA)共重合体の特性と化粧品への応用", 森田正道, J.Soc.Cosmet.Chem.Japan 33,343-353(1999)]。これを防止するためには、親水性モノマー、特にポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを共重合すればよい。皮膚上においても汗と皮脂の量は外部環境に応じて変化する。ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含むFA重合体では、どのような環境下でも撥水撥油性を示す。
【0029】
非フッ素系モノマーには、使用感を改質するためや、耐水性、撥水撥油性以外の機能を皮膜に付与するために、適当なモノマーを併用しても良い。具体的にはグルシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸などが例示される。
【0030】
フッ素系モノマーと非フッ素系モノマーとからなる共重合体において、フッ素系モノマー含量は、5重量%以上、好ましくは5〜99重量%、より好ましくは10〜95重量%、特に好ましくは20〜90重量%であってよい。共重合体において、非フッ素系モノマーの割合が多いほど、化粧料に配合したときの使用感、すなわち、「すべり感」、「さらさら感」などが良くなり、また、非フッ素系溶剤に対する溶解性が良くなるが、非フッ素系モノマーの割合が99重量%以下であると、皮膜が高い撥油性を有する。
【0031】
本発明において、FA重合体(フッ素系重合体)は次のようなものであることが好ましい。
(1)フルオロアクリレート100重量%からなる単独重合体、
(2)フルオロアクリレート5〜99重量%と重合性シリコーン95〜1重量%からなる共重合体、
(3)フルオロアクリレート5〜99重量%とアルキル(メタ)アクリレート95〜1重量%からなる共重合体、
(4)フルオロアクリレート5〜99重量%と重合性シリコーン0.5〜90重量%とアルキル(メタ)アクリレート0.5〜90重量%からなる共重合体、
(5)フルオロアクリレート5〜99重量%と(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート95〜1重量%からなる共重合体、
(6)フルオロアクリレート5〜99重量%とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート95〜1重量%からなる共重合体。
【0032】
本発明において用いられるFA重合体は、塊状重合、溶液重合、乳化重合で製造することが可能である。塊状重合では、FAと非フッ素モノマーの混合物を窒素置換後、重合開始剤を投入し、40〜80℃の範囲で数時間、撹拌して重合させる方法が採用される。また、溶液重合の場合、FAと非フッ素モノマーの混合物を、これらのモノマーが可溶である適当な有機溶剤に溶解して同様に重合する。ここで用いられる有機溶剤は、炭化水素系、エステル系、ケトン系、アルコール系、シリコーン系、フッ素系溶剤などである。
【0033】
乳化重合の場合、これらのモノマーを適当な乳化剤を用いて水中に乳化した後、同様に重合する。ある種のFAと非フッ素系モノマーの組み合わせにおいては、水中でFAと非フッ素系モノマーの相溶性が悪いために共重合性が悪くなる。この場合は、グリコール類、アルコール類などの適当な補助溶剤を添加して、両モノマーの相溶性を向上させる方法が採用される。乳化重合で用いる乳化剤は疎水基が炭化水素系、シリコーン系、フッ素系のいずれのものでも、また、親水基のイオン性もノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性のものいずれのものでも良い。
【0034】
重合開始剤は各種アゾ系、過酸化物等が例示される。重合の際には、必要に応じて、連鎖移動剤やpH調整剤を加えてもよい。重合後に得られるFA重合体(FAを含む重合体)の平均分子量(特に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算))は10,000から1,000,000であり、好ましくは20,000から300,000であってよい。
【0035】
溶液重合、乳化重合で調製したFA重合体は、反応液をそのまま化粧料用皮膜形成剤として用いても良いし、ポリマーのみを分離した後、溶剤中(または水中)に、溶解(または分散)させても良い。FA重合体は、化粧料用粉体の表面上に被膜を形成する。
【0036】
FA重合体は、ポリマー単体でも良いが、水、または、炭化水素系、アルコール系、エステル系、ケトン系、シリコーン系、フッ素系溶剤の少なくとも1種類に溶解または分散させた形態で化粧料原料として供給される方が好ましい。このときのFA重合体は全体[FA重合体+(水または溶剤)]に対して、1〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%で配合される。1重量%以上であると、化粧料製剤中に配合したときに、十分な耐水性、撥水撥油性を付与でき、50重量%以下であると、化粧料原料の安定性が高い。
【0037】
FA重合体を溶解、または、分散させる溶剤としては、炭化水素系、アルコール系、エステル系、ケトン系、シリコーン系、フッ素系溶剤の少なくとも1種類が用いられる。
【0038】
炭化水素系溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン、イソパラフィン、トルエン、ベンゼン、キシレンなどが例示される。
アルコール系溶剤としてはエタノール、イソプロピルアルコールなどが例示される。
エステル系溶剤としては、エステルとしては、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸アシルなどが例示される。
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどが例示される。
【0039】
シリコーン系としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(=環状シリコーン3量体)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(=環状シリコーン3量体)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(=環状シリコーン4量体)、デカメチルシクロペンタシロキサン(=環状シリコーン5量体)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(=環状シリコーン6量体)、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体などが例示される。
【0040】
フッ素系溶剤は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、フルオロエーテル、フルオロカーボン(FC)、含窒素フルオロカーボンなどが用いられる。
【0041】
HFCとしては1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−4310)、ベンゾトリフロライド、m−キシレンヘキサフロライドなどが挙げられる。
【0042】
HFEとしては一般式:
OC
[式中、nは1〜12の数、mは0〜25の数、lは0〜11の数、m+l=2n+1であり、xは1〜12の数、yは0〜25の数、zは0〜11の数、y+z=2x+1である(ただし、mとyが同時にゼロであることはなく、lとzが同時にゼロであること もない)。]
で表される化合物が好ましい。HFEとしては具体例には、COCH、COCなどが挙げられる。
【0043】
フルオロエーテルとしては一般式:
(C2n+1)
[式中、nは3〜5の数である。]
で表される化合物が好ましい。フルオロエーテル(特に、パーフルオロエーテル)としては、具体的には、(C)O、(C)Oなどが挙げられる。
【0044】
FCとしては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン、パーフルオロキシレン、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリンが挙げられる。
【0045】
含窒素フルオロカーボンとしては一般式
(C2n+1)
[式中、nは1〜5の数である。]
で表される化合物が好ましい。含窒素フルオロカーボンとしては、具体的には、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミンなどが挙げられる。
【0046】
これらの溶剤は単独で用いても混合して用いても良い。溶剤は皮膚温(約30℃)で容易に揮発する物性を持つものが、揮発時に清涼感があり、肌上で皮膜を形成しやすいので好ましい。特にシリコーン系のオクタメチルシクロテトラシロキサン(=環状シリコーン4量体)、デカメチルシクロペンタシロキサン(=環状シリコーン5量体)、炭化水素系のイソパラフィンを用いることが好ましい。フッ素系溶剤を用いる場合、HFEのC4F9OCH3またはC4F9OC2H5を使用することが最も好ましい。この溶剤は揮発性があり、化粧料で汎用される溶剤、オイルの多くに可溶であり、しかもフッ素系ポリマーの溶解性が非常に高い。
【0047】
本発明の化粧料用皮膜形成剤を配合する化粧料に使用される原料(粉体)は、通常、化粧料に用いられるものならば特に限定はない。
【0048】
例えば、粉体は、タルク、カオリン、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、一酸化亜鉛、二酸化亜鉛、重質もしくは軽質炭酸カルシウム、第2燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、シリカゲル、カーボンブラック、酸化アンチモン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成雲母などの無機粉体;蛋白質粉末、魚鱗箔、金属石鹸、ポリ塩化ビニル、ナイロン12、微結晶繊維粉末、タール色素、レーキなどの有機粉末等が挙げられる。これらは、未処理でもシリコーンやフッ素化合物で処理されていても良い。
【0049】
また粉体以外にも、例えば、ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコール等の固形・半固形油分;スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコーン油等の流動油分;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤;水溶性および油溶性ポリマー、界面活性剤、有機染料等の色剤、エタノール、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤などが挙げられる。
【0050】
本発明の化粧料は通常の方法に従って製造され、ファンデーション、おしろい、チークカラー、アイカラー、マスカラ、アイライナー、ネイルカラーなどの仕上化粧料;乳液、クリームなどの基礎化粧料;頭髪化粧料に使用できる。
【0051】
本発明の化粧料用皮膜形成剤は、化粧料用粉体の表面の被覆のために用いることが出来る。被覆される粉体は、タルク、カオリン、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、一酸化亜鉛、二酸化亜鉛、重質もしくは軽質炭酸カルシウム、第2燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、シリカゲル、カーボンブラック、酸化アンチモン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成雲母などの無機粉体;蛋白質粉末、魚鱗箔、金属石鹸、ポリ塩化ビニル、ナイロン12、微結晶繊維粉末、タール色素、レーキなどの有機粉末等を処理したものが挙げられる。これらの粉体は重合体で表面処理するときに、2種類以上のものを混合してもよい。さらに、処理粉体を化粧品に配合するときにも、2種類以上のものを混合してもよい。
【0052】
化粧料用皮膜形成剤は、湿式法、または、乾式法で粉体の表面に付着させるが、より均一に表面処理するためには、湿式法の方が好ましい。具体的には、重合体そのもの、あるいは、重合体溶液を有機溶剤で希釈した溶液に粉体を混合し、室温、あるいは、加熱下で粉体が有機溶剤溶液で均一に濡れるまで撹拌する。このときの撹拌には、ヘンシェルミキサー、振動式ボールミル、回転式ボールミル、スーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの撹拌装置が使用される。ラボスケールで撹拌するときは、家庭用のジューサーミキサーを用いても良い。有機溶剤溶液中の重合体の濃度は、特に限定されないが、粉体混合時の撹拌の際に、粘度が高くなりすぎないように調製する。撹拌後、真空状態、あるいは、加熱して有機溶剤を留去し、上記の撹拌装置で処理粉体を均一に分散する。ラボスケールで撹拌するときは、家庭用のジューサーミキサー、あるいは、スピードカッターを用いても良い。
【0053】
本発明では、表面処理の際に必要ならば、使用感を改質するための適当な薬剤を併用しても良い。化粧品用粉体の使用感を改質するための薬剤としては、レシチン、N-モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸、シリコーン、キトサン、コラーゲン、ワックスなどが例示される。
【実施例】
【0054】
本発明の実施例について具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するものではない。
【0055】
製造例1
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にCH2=C(Cl)COO-CH2CH2C4F9(以下、Rf(C4)α−Clアクリレートと省略)24g、シリコーンマクロモノマー[以下、Si-MMと省略、商品名サイラプレーンFM-0721(分子量5000)、チッソ製] 16g、トルエン 158gを入れ、60℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌する。これにt-ブチルパーオキシピバレート(商品名パーブチルPV、日本油脂製)2gを添加し、6時間重合した。反応液中の残存α−Clをガスクロマトグラフィーで分析することより、Rf(C4)α−Clアクリレートの転化率が95%であることを確認した。得られた反応液の一部をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、Rf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM(=6/4wt.)共重合体を単離した。得られたRf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM共重合体の分子量をGPCで測定すると、重量平均分子量は40,000(ポリスチレン換算)であった。このRf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM共重合体が20重量%となるように環状シリコーン5量体に溶解して、Rf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM共重合体の環状シリコーン5量体溶液(20重量%)を得た。
【0056】
製造例2, 3, 4
製造例1のRf(C4)α−Clアクリレートを、それぞれ、CH2=C(Cl)COO-CH2CH2C6F13(以下、Rf(C6)α−Clアクリレートと省略)(製造例2)、CH2=C(H)COO-(CH2)3SO2C4F9(以下、Rf(C4)SO2Prアクリレートと省略)(製造例3)、CH2=C(H)COO-(CH2)3SO2C6F13(以下、Rf(C6)SO2Prアクリレートと省略)(製造例4)に置き換える以外は全く同じ方法で製造して、共重合体の環状シリコーン5量体溶液(20重量%)を得た。
【0057】
製造例5
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にRf(C4)α−Clアクリレート 54g、CH2=CHCOO(CH2CH2O)nH(ブレンマーPE-350,日本油脂製,n=7〜9)36g、イソプロパノール400gを入れ、80℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌する。これにアゾビスイソブチルアミジン酸塩1gを添加し、6時間撹拌して、共重合反応を行った。反応液中の残存FAをガスクロマトグラフィーで分析することより、FAの重合率はが99%以上であることを確認した。得られた反応液の一部をn-ヘキサンで沈殿、真空乾燥して、Rf(C4)α−Clアクリレート/PE-350(=6/4wt.)共重合体を単離した。得られたRf(C4)α−Clアクリレート/PE-350共重合体の分子量をGPCで測定すると、重量平均分子量は25,000であった(ポリスチレン換算)。このRf(C4)α−Clアクリレート/PE-350共重合体が20重量%となるようにエタノールに溶解して、Rf(C4)α−Clアクリレート/PE-350共重合体のエタノール溶液(20重量%)を得た。
【0058】
製造例6
製造例5のモノマーであるRf(C4)α−Clアクリレート54g、PE-350 36gを、Rf(C6)α−Clアクリレート72g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)18gに置き換える以外は全く同じ方法で製造し、Rf(C6)α−Clアクリレート/HEMA(=8/2wt.)共重合体のエタノール溶液(20重量%)を得た。
【0059】
製造例7
Rf(C4)α−Clアクリレート 36g、ステアリルアクリレート(StA) 24g、イオン交換水90g、エタノール24g、n-ラウリルメルカプタン 0.06g、ソルビタンモノラウレート 1.8g、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 4.2gを混合し、60℃に加熱後、高圧ホモジナイザーで乳化した。得られた乳化液を還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコに入れ、窒素気流下で約1時間60℃に保ち、十分撹拌した後、アゾビスイソブチルアミジン-2塩酸塩(商品名V-50、和光純薬製) 0.3gを添加して重合を開始した。60℃で3時間加熱撹拌してポリマーエマルションを得た。反応液中の残存Rf(C4)α−Clアクリレートをガスクロマトグラフィーで分析することより、Rf(C4)α−Clアクリレートの重合率が99%以上であることを確認した。ポリマーエマルションの一部をエタノールで沈殿、真空乾燥して、ポリマーを単離して分子量をGPCで測定すると、重量平均分子量は180,000であった。生成したポリマーエマルション5gを130℃で2時間加熱して蒸発残分量を測定した(この蒸発残分はポリマーと乳化剤から成るエマルションの有効成分である)。蒸発残分量から求めた有効成分濃度は34重量%であった。有効成分濃度が30重量%となるようにイオン交換水でポリマーエマルションを希釈して、Rf(C4)α−Clアクリレート/BA(=6/4wt.)共重合体エマルション(30重量%)を得た。
【0060】
製造例8
製造例1のRf(C4)α−Clアクリレート24g、Si-MM 16gを、それぞれ、Rf(C4)α−Clアクリレート20g、Si-MM 10g、ブチルアクリレート(BA) 10gに置き換える以外は全く同じ方法で製造して、Rf(C6)α−Clアクリレート/Si-MM/BA(=5/2.5/2.5wt.)共重合体の環状シリコーン5量体溶液(20重量%)を得た。

比較製造例1
製造例1のモノマーであるRf(C4)α−Clアクリレート 24g、Si-MM 16gを、Si-MM 12g、メチルメタクリレート(MMA) 20g、ブチルメタクリレート(BMA) 8gに置き換える以外は全く同じ方法で製造し、Si-MM/MMA/BMA(=3/5/2wt.)共重合体の環状シリコーン5量体溶液(20重量%)を得た。
【0061】
比較製造例2
製造例7のモノマーであるRf(C4)α−Clアクリレート 36g、StA 24gを、エチルアクリレート(EA) 48g、エチルメタクリレート(EMA) 12gに、重合開始剤V-50を過硫酸カリウムに置き換える以外は全く同じ方法で製造し、EA/EMA(=8/2wt.)共重合体エマルション(30重量%)を得た。
【0062】
実施例1
製造例1〜7、比較製造例1、2で得られたポリマー溶液を平滑なポリエステルフィルム上にキャストし1日放置して皮膜を形成させた。撥水撥油性は、水またはn-ヘキサデカンに対する接触角で評価した。
撥水性は水に対する接触角が110〜130°のときを◎、90〜109°のときを○、60〜89°のときを△、30〜59°のときを×、29°以下のときを××とした。撥油性はn-ヘキサデカンに対する接触角が70〜89°のときを◎、50〜69°のときを○、30〜49°のときを△、20〜29°のときを×、19°以下のときを××とした。耐水性は皮膜を水に1時間浸漬し、1日放置後の接触角で評価した。いずれの実験も25℃で行った。
結果を表1に示す。
【0063】

【0064】
以下の実施例および比較例においては、表1.1に示す混合粉体を5%のRf(C6)α-Clアクリレート/HEMA(=8/2wt.)共重合体で表面処理したものに、表2に示す組成のシリコーン処理粉体を混合したものを使用して、化粧料を調製した。この混合粉体の処理方法を以下に示す。製造例6で製造したRf(C6)α-Clアクリレート/HEMA(=8/2wt.)共重合体4gをイソプロピルアルコール200gに80℃で加熱溶解したものと、表1.1の混合粉体40gを、ジューサーミキサーにいれ30秒間攪拌した。粉体分散液をアルミバットに流し込み、一昼夜スチーム乾燥機(60℃)中で乾燥させた。乾燥後の粉体をジューサーミキサーにいれ1分間攪拌した。
【0065】


【0066】
このフッ素処理粉体に表2に示す組成のシリコーン処理粉体を混合して、化粧料に配合する混合粉体を調製した。表2の(2)〜(4)のシリコーン処理粉体は、2%のメチルハイドロジェンポリシロキサンで処理されたものである。
【0067】


【0068】
化粧持ち(皮膜の撥水撥油性に由来)、使用感(すべり感、さらさら感)、整髪力、風合い、安定性(50℃、1カ月)、分散性(50℃、1カ月)、耐水性は次の基準で評価した。
◎:非常に良い ○:良い △:普通 ×:悪い ××:非常に悪い
【0069】
評価は官能評価の専門パネラー5名(安定性、分散性に関しては化粧品技術者1名)が行い、その平均を結果とした。また、耐水性は実施例1と同様にポリエステルフィルム上に均一に塗膜し、1日放置して皮膜を形成させたものを試料とした。皮膜を水に1時間浸漬し、1日放置後の接触角を実施例1と同じ基準で評価した。
【0070】
実施例2
表3に示す組成でパウダリーファンデーションを製造した。成分(1),(2)をアトマイザーで混合粉砕し、これをヘンシェルミキサーに移して、成分(3)〜(4)を加え、均一に混合した。これを金型に入れ、プレス成型して、パウダリファンデーションとした。パウダリーファンデーションの化粧持ち、耐水性および使用感を評価した。結果を表3に示す。
【0071】

【0072】
実施例3
表2に示す混合粉体の構成成分であるフッ素処理粉体(1)〜(6)を、次に示す方法で、製造例1のRf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM(=6/4wt.)共重合体で表面処理した。フッ素処理粉体(1)〜(6)が混合されたもの40g、Rf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM共重合体の環状シリコーン5量体溶液(20重量%)10g、環状シリコーン4量体100gを、ジューサーミキサーで30秒間混合した。これをアルミバットに入れて、60℃で1昼夜乾燥した。乾燥後、スピードカッターで粉砕して、Rf(C4)α−Clアクリレートアクリレート/Si-MM共重合体で表面処理されたフッ素処理粉体を得た。
【0073】
実施例2において、フッ素処理粉体(1)〜(6)69.7重量%を含む混合粉体89.8重量%を上述のRf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM共重合体で表面処理されたフッ素処理粉体69.7重量%を含む混合粉体89.8重量%に、原料名(3)Rf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM共重合体の20重量%ジメチルポリシロキサン溶液10重量%をジメチルポリシロキサン10重量%に置き換える以外は、同じ方法でパウダリーファンデーションを製造した。予めフッ素処理粉体をRf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM共重合体で表面処理することにより、実施例2よりも、さらに高い化粧持ち、耐水性を示した。
【0074】
実施例4および5
表4に示す組成でリキッドファンデーション(油性)を製造した。成分(1)〜(6)をコロイドミルで均一に混合して、リキッドファンデーションを得た。
リキッドファンデーションの化粧持ち、耐水性および使用感を評価した。結果を表4に示す。
【0075】


【0076】
実施例6、7および比較例1
表5に示す組成でリキッドファンデーション(O/W型)を製造した。成分(1)〜(8)をコロイドミルで混合粉砕した。これを80℃に加熱後、成分(9)〜(13)を加熱混合したものを加えてホモミキサーで均一に乳化した。この乳化物に成分成分(16)または(17)または(18)および(19)を加えて、さらにホモミキサーで均一に乳化してリキッドファンデーションを得た。リキッドファンデーションの化粧持ち、耐水性および使用感を評価した。結果を表5に示す。
【0077】

【0078】
実施例8ならびに比較例2
表6に示す組成でマスカラを製造した。成分(1)〜(7)を80℃に加熱し、これに80℃に加熱混合した成分(12)〜(15)を加えてホモミキサーで均一に乳化した。この乳化物に、予め3本ローラーで3回通しを行った成分(8)〜(11)と成分(16)または(17)を加えて室温まで冷却し、マスカラを得た。マスカラの化粧持ち、耐水性および使用感を評価した。結果を表6に示す。
【0079】

【0080】
実施例9および比較例3
表7に示す組成で日焼け止め乳液を製造した。成分(3)のRf(C4)α-Clアクリレート/Si-MM共重合体のHFE溶液は製造例1のポリマーをC4F9OCH3に溶解したものである。成分(5)のフッ素処理酸化亜鉛は、7%のRf(C6)α-Clアクリレート/HEMA共重合体で処理されたものである。成分(1)〜(4)を室温にて混合溶解し、成分(5)を添加しディスパーで分散させた。成分(6)〜(11)を撹拌しながら添加してホモミキサーで乳化し、サンスクリーン乳液を得た。サンスクリーン乳液の耐水性、使用感および安定性を評価した。結果を表7に示す
【0081】

【0082】
実施例10および比較例4
表8に示す組成でヘアリンスを製造した。成分(10)のRf(C4)α-Clアクリレート/Si-MM共重合体は製造例1のポリマーをイソパラフィンに溶解したものである。成分(11)のSi-MM/MMA/BMA共重合体は比較製造例1のポリマーをイソパラフィンに溶解したものである。
80℃に加熱混合した成分(1)〜(8)を、80℃に加熱混合した成分(9)〜(11)に加えて、ホモミキサーで乳化し、室温まで冷却してヘアリンスを得た。ヘアリンスの整髪力および使用感(風合い)を評価した。結果を表8に示す。
【0083】

【0084】
実施例11および比較例5
表9に示す組成でネイルカラーを製造した。成分(12)のフッ素処理雲母チタンは5%フルオロアルキルリン酸エステルで表面処理されたものである。成分(1)〜(10)をディスパーで混合撹拌し、これに成分(11)、(12)を加えて、さらに混合撹拌して、ネイルカラーを得た。成分(11)の粉体は、実施例4と同様の方法で、製造例8のRf(C4)α-Clアクリレート/Si-MM/BA(=5/2.5/2.5wt.)共重合体で表面処理した。分散性を評価した。結果を表9に示す。
【0085】

【0086】
実施例12
表10に示す組成で口紅を製造した。成分(1)〜(5)を加熱混合し、これに成分(6)〜(9)を加えて、3本ローラーで均一に分散した。これを容器に充填して冷却し、ペースト状の口紅とした。成分(1)の製造例1のRf(C4)α-Clアクリレート/Si-MM(=6/4wt.)共重合体と、成分(2)の製造例8のRf(C4)α-Clアクリレート/Si-MM/BA(=5/2.5/2.5wt.)共重合体を混ぜ合わせたものは、通常のポリマーとは全く異なる新規な使用感を有するペースト状の物質であり、これを配合した口紅は均一に良くのび、べたつきの少ない独特の使用感を有する。塗布後の耐油性も良好であった。
【0087】

【0088】
実施例13
製造例7のRf(C4)α−Clアクリレート/StA(=6/4wt.)共重合体10g、パーフルオロポリエーテル(Fomblin HC/04)100g、流動パラフィン300gをサンプル管に仕込み、80℃で加熱して均一に溶解した。これをホモミキサーで1分間予備撹拌した後、超音波ホモジナイザーで5分間乳化した。得られた非水エマルションを40℃で1ケ月保存後、安定性を観察した。このエマルションは、パーフルオロポリエーテルの分離が全くなかった。
【0089】
実施例14、15および比較例6
製造例1のモノマーであるSi-MM 16gを、Si-MM 11g、ダイアセトンアクリルアミド(DAAAM)4g、メタクリル酸1gに置き換える以外は製造例1と同じ方法で重合、単離を行い、Rf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM/DAAAM/メタクリル酸(=6/2.75/1/0.25wt.)共重合体を得た(実施例14)。また、製造例1のモノマーであるSi-MM 16gを、Si-MM 11g、ウレタンモノマー5gに置き換える以外は製造例1と同じ方法で重合、単離を行い、Rf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM/ウレタンモノマー(=6/2.75/1.25wt.)共重合体を得た(実施例15)。これらのポリマーを用いて、表13に示す組成でセットローションを製造した。比較例6においては、ポリビニルピロリドンを重合体として用いた。成分(4)〜(9)を溶解した後、成分(1)〜(3)を加え、湿潤、溶解した。さらに成分(9)を徐々に撹拌しながら加えた。洗髪後の整髪力、使用感(風合い)を評価した。結果を表11に示す。
【0090】

【0091】
実施例16および比較例7
製造例1のRf(C4)α−Clアクリレート/Si-MM(=6/4wt.)共重合体を用いて、表12に示す組成で製造した。成分(1)、(2)をアトマイザーで混合粉砕し、これをヘンシェルミキサーに移して、加熱溶解した成分(3)〜(6)を加え、均一に混合した。これを金型に入れ、プレス成型して、パウダリーファンデーションとした。結果を表12に示す。
【0092】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるフルオロアクリレートから誘導された繰返単位を必須とする重合体を含む化粧料用皮膜形成剤。

CH2=C(−X)−C(=O)−A−Rf (1)

[X:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基;
A:−O−Y−(ここで、Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−(CH2CH2)a−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、aは0または1である。)、−CH2CH(OR11)CH2−基(但し、R11は水素原子またはアセチル基である。)または、-(CH2)nSO2-基(nは1〜10)である。)、あるいは
−Y2−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n− (ここで、Y2は、−O−または−NH−であり;Zは、−S−または−SO−であり;mは1〜10、nは0〜10、pは0または1である。);
Rf:炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基]
【請求項2】
フルオロアクリレート100重量%からなる単独重合体を含む請求項1に記載の化粧料用被膜形成剤。
【請求項3】
フルオロアクリレート5〜99重量%と重合性シリコーン95〜1重量%からなる共重合体を含む請求項1記載の化粧料用皮膜形成剤。
【請求項4】
フルオロアクリレート5〜99重量%とアルキル(メタ)アクリレート95〜1重量%からなる共重合体を含む請求項1記載の化粧料用皮膜形成剤。
【請求項5】
フルオロアクリレート5〜99重量%と重合性シリコーン0.5〜90重量%とアルキル(メタ)アクリレート0.5〜90重量%からなる共重合体を含む請求項1記載の化粧料用皮膜形成剤。
【請求項6】
フルオロアクリレート5〜99重量%と(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート95〜1重量%からなる共重合体を含む請求項1記載の化粧料用皮膜形成剤。
【請求項7】
フルオロアクリレート5〜99重量%とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート95〜1重量%からなる共重合体を含む請求項1記載の化粧料用皮膜形成剤。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の化粧料用皮膜形成剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項9】
請求項1〜7に記載の化粧料用皮膜形成剤で表面を被覆した化粧料用粉体。
【請求項10】
請求項9に記載の化粧料用粉体を含有することを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2007−269642(P2007−269642A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93816(P2006−93816)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】