説明

フルオロケミカル表面層を含む物品および関連方法

本発明は、表面層と共有または水素結合を形成する反応性基材を含む物品を特徴とする。物品の表面層は、少なくとも1つのモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有する少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの反応生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロケミカル保護表面層を有する物品、およびこのような物品を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ディスプレイ、テキスタイル、金属、石、木材、皮革など、いくつかの一般的に使用される材料は、日常的に使用中、引掻き、磨耗、および汚染の影響を受けやすい。場合によっては、保護を行い、耐久性、性能、および外観を向上させるために、これらの材料の表面に、保護フィルムまたはコーティングを塗布することができる。
【0003】
アクリル酸樹脂の重合に基づくUV硬化性系が、様々な表面の保護コーティング組成物として使用されている。場合によっては、フッ素化基など、特定の構造をポリマー網目構造に導入することによって、これらのコーティングの性能を改変または向上させることが望ましいことがある。フッ素化基は、アクリル酸樹脂と低量(<1%、w/w)のフッ素化アクリレート化合物などのフッ素化モノマーとの共重合によって、これらの組成物に組み込むことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な保護コーティングは、フッ素化ポリマーを使用して開発されているが、既存の系より良好な性能および寿命を有する改善されたコーティング組成物が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アクリル酸樹脂とフッ素化モノマーとの共重合を伴うハードコート系において、ある種の基材では、特定の(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物の使用によって、ハードコート層の基材への接着の向上を実現することが可能であり、再仕上げ物品の耐久性の改善がもたらされることが見出された。一般に、本発明は、表面層と共有または水素結合を形成する反応性基材を含む物品を特徴とする。物品の表面層は、少なくとも1つのモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有する少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの反応生成物を含む。
【0006】
一代替実施形態では、基材は多孔質基材であり、コーティング組成物は、基材の細孔を貫通し、それによって基材との物理的相互作用によって基材に保持されている。
【0007】
本発明の一実施形態では、モノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は、少なくとも1つの末端基F(CF(CF3)CF2O)xCF(CF3)−および少なくとも1つ、好ましくは2つの(メタ)アクリル基(式中、xは平均して、3〜15となる)を含む。好ましい一実施形態では、モノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は、F−(CF(CF3)CF2O)n−CF(CF3)CONHCH2CH22C−C(R)=CH2(式中、Rはメチル基または水素であり、nは3〜12である)を含む。一代替実施形態では、モノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物は、C49SO2N(Me)C242C−C(R)=CH2(式中、Rはメチル(Me)または水素(H)である)を含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、フルオロケミカル成分は、式Cp2p+1242CCH=CH2(式中、pは3〜20、好ましくは6〜8である)で表される化合物を含み、あるいは式Cp2p+1SO2(R)C242CCH=CH2(式中、RはC1〜C6アルキル基である)で表される化合物を含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施例では、組成物のフルオロケミカル成分と反応するモノマーまたはオリゴマーは、ジ(メタ)アクリルを含む化合物、トリ(メタ)アクリルを含む化合物、より高級な(メタ)アクリル官能基を含む化合物、およびオリゴマー(メタ)アクリル化合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、トリプロピレングリコールジアクリレートが好ましい。適切な化合物の追加の例としては、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートなどが挙げられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、基材は、表面層と相互作用して、表面層との共有または水素結合の形成によって接着を助けるクロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アルケン(C=C)、アルキン、−OH、−CO2、CONH基などの反応性基を有する。結合は、一般に表面層組成物の重合中に形成される。一実施形態では、基材は、織物、不織布、編物、テキスタイル、カーペット、皮革、および紙などの繊維基材と、ビニル、木材、セラミック、メーソンリー、コンクリート、天然石、人造石、グラウト、金属シートおよび箔、木材、ペイント、プラスチック、ならびにポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリオレフィン、ポリカルボナート、およびポリビニルクロライドなどの熱可塑性樹脂のフィルムなどの硬質基材とからなる群から選択される。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、下記のその詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0012】
定義
本明細書では、「(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物」は、通常はリンキング基で結合している少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル基および少なくとも1つの(メタ)アクリル基を含む化合物を意味する。通常は、(メタ)アクリル基は水素またはフッ素で場合によっては置換されていてもよい(メタ)アクリレート基である。用語「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの両方の基/化合物を包含する。少なくともいくつかの実施形態では、アクリレート基が好ましい。本明細書では、(メタ)アクリル基には、水素またはフッ素で場合によっては置換されていてもよい(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、およびN−アルキル(メタ)アクリルアミドなどの化合物クラスのものが含まれる。好ましくは、(メタ)アクリル基は、水素またはフッ素で場合によっては置換されていてもよい(メタ)アクリレート基である。少なくともいくつかの実施形態では、アクリレート基が好ましい。
【0013】
「モノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物」は、次式Iで表すことができる化合物:
R’O−X−Q−R” (式I)
(式中、R’は、F、CF3、C25、またはC37であり、Xは、(パー)フルオロポリエーテル基であり、Qは、−C(O)NH(CH2aまたは−(CH2bO(CH2a(式中、aは1〜5であり、bは1〜5、好ましくは1である)であり、R”は、−OC(O)CH=CH2、−C(O)NH(C24O)b(CH2a、−OC(O)CMe=CH2、−OC(O)NHCH2CH2OC(O)CMe=CH2、−CH(OC(O)CH=CH22、−CH(OC(O)CMe=CH22、−N(CH2CH2OC(O)CH=CH22、−N(CH2CH2OC(O)CMe=CH22、−N(−C(O)CH=CH2)(−CH2CH2OC(O)CH=CH2)、−NMeCH2CH2CO2CH2CEt(CH2OC(O)CH=CH22、または−O−トリウレタン(NHCO2CH2CH2OC(O)CH=CH22である)、あるいは
次式IIで表すことができる化合物:
(Rf)−X−[(W)−(RA)]y (式II)
(式中、Rfは、(パー)フルオロポリエーテル基からなる群から選択された単官能性末端基であり、XおよびWは、存在しても存在しなくてもよい任意選択のリンキング基であり、Wはそれぞれ、同じでも異なってもよく、RAは、(メタ)アクリル基または−C(O)CF=CH2であり、yは1または2である)を意味する。
【0014】
「ハードコート」または「トップコート」は、無機物品を場合によっては含む架橋可能な組成物または架橋された組成物を意味する。
【0015】
「低表面エネルギー」は、本明細書に記載する物品の表面層は、好ましくは水との静的接触角が少なくとも70°であることを意味する。水との接触角は、より好ましくは少なくとも80°、さらにより好ましくは少なくとも90°(例えば、少なくとも95°、少なくとも100°)である。または、あるいはそれに加えて、ヘキサデカンとの前進接触角は、少なくとも50°、より好ましくは少なくとも60°である。低表面エネルギーは、耐汚れ性を示し、表面は清浄しやすい。低表面エネルギーのさらに別の指標として、商標名「サンフォード(SANFORD)(登録商標)キングサイズ(KING SIZE)パーマネントマーカー」で市販されているマーカーのインクは、好ましくは玉になる。さらに、本明細書に記載する表面層および物品は、「撥インク性」を発現し、これによって、インクは、キンバリー・クラーク・コーポレーション、米国ジョージア州ロズウェル(Kimberly Clark Corporation,Roswell,GA)から商標名「サーパス・フェイシャル・ティッシュ(SURPASS FACIAL TISSUE)」で市販されているティッシュで拭くことによって、容易に除去することができる。
【0016】
本明細書では、「重量%」は、別段の指定のない限り、そのコーティング組成物または反応生成物に対する固形分の重量パーセントを意味する。
【0017】
本明細書では、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されている数字をすべて含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈上からそうでないことがはっきりしていない限り、複数形も含まれる。したがって、例えば「ある化合物(a compound)」を含む組成物という言葉には、2つ以上の化合物の混合物が含まれる。さらに、用語「または」は、文脈上からそうでないことがはっきりしていない限り、一般に「および/または」の意味で使用される。
【0019】
別段の示唆のない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用されている、材料の量、表面エネルギー、接触角などの特性の測定の量などを表す数字はすべて、すべての場合、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうでない記載がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の教示を利用して、当業者が求める所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、均等論の特許請求の範囲への適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも通常の丸め技法を適用することによって報告された有効桁数を考慮に入れて、解釈されるべきである。本発明の幅広い範囲を記述する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載の数値は、できる限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定で見られる標準偏差に必ず起因するある種の誤差および不確定要素を本質的に含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、少なくとも1つのモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有する少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの反応生成物を含む保護表面層を有する反応性基材を含む物品を特徴とする。物品の表面層は、反応性基材に共有結合または水素結合し、物品に低表面エネルギーを提供する。この低表面エネルギーは、物品に容易な清浄特性およびインク、靴墨、食品による汚れなど一般的な汚れに対する保護を付与する。
【0021】
(メタ)アクリルモノマーおよびオリゴマー
例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなど、ジ(メタ)アクリルを含む化合物;グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリアクリレート(例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリアクリレート(例えば、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリアクリレートなど、トリ(メタ)アクリルを含む化合物;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートなど、より高級な(メタ)アクリル官能基を含む化合物;例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなどのオリゴマー(メタ)アクリル化合物;上記のポリアクリルアミド類似体;およびその組合せなど、広範囲の(メタ)アクリルモノマーおよび/またはオリゴマーを、コーティング組成物で使用することができる。このような化合物は、例えばサートマー・カンパニー、米国ペンシルベニア州エクストン(Sartomer Company,Exton,PA)、ユー・シー・ビー・ケミカルズ・コーポレーション、米国ジョージア州スマーナ(UCB Chemicals Corporation, Smyrna,GA)、およびアルドリッチ・ケミカル・カンパニー、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI)などの業者から広く入手可能である。追加の有用な(メタ)アクリレート材料には、例えば米国特許第4,262,072号明細書(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載のようなヒダントイン部分を含むポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0022】
好ましい市販の(メタ)アクリル化合物には、商標名「SR306」で入手可能なトリプロピレングリコールジアクリレート、商標名「SR351」で入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート、商標名「SR444」で入手可能なペンタエリトリトールトリアクリレート、商標名「SR399LV」で入手可能なジペンタエリトリトールペンタアクリレート、商標名「SR454」で入手可能なエトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、および商標名「SR494」で入手可能なエトキシ化(4)ペンタエリトリトールトリアクリレートなど、サートマー・カンパニー、米国ペンシルベニア州エクストン(Sartomer Company, Exton, PA)から入手可能なものが含まれる。
【0023】
5重量%というわずかな非フッ素化(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーによって、いくつかの用途に適した耐久性をもたらすことができるが、特にこれらの化合物は、一般にフッ素化化合物より高価でないので、通常は、非フッ素化(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの濃度を最大限にすることが好ましい。したがって、本明細書に記載するコーティング組成物は、通常は少なくとも20重量%の非フッ素化(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーを含む。いくつかの実施例では、非フッ素化(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの全量は、少なくとも50重量%を成すことができ、コーティング組成物の、例えば少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、さらには約95重量%とすることができる。
【0024】
追加の適切なモノマーおよびオリゴマーは、本明細書と同一日付出願の、「耐汚染性フルオロケミカル組成物」という名称の米国特許出願(代理人整理番号60089US002)に記載されている。
【0025】
フルオロケミカル
本明細書に記載するコーティング組成物も、少なくとも1つのモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を単独または他のフッ素化モノマーと組み合わせて含む。重合して表面層を形成するコーティング組成物中のモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物の全量は、通常は少なくとも0.5重量%(例えば、少なくとも約1重量%、2重量%、3重量%、および4重量%)である。好ましくは、コーティング組成物は、少なくとも約5重量%のモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を含む。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、95重量%と同量の(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を含むことができる。しかし、一般的に、所望の低表面エネルギーをもたらすモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物を最小限濃度で使用することが、より費用効果が高い。したがって、コーティング組成物中に提供されているモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物の全量は、通常は30重量%を超えず、好ましくは約15重量%以下(例えば、約14重量%未満、13重量%未満、12重量%未満、および11重量%未満)の量で存在する。
【0026】
一実施形態では、モノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリレート化合物は、次式Iで表される任意の化合物である:
R’O−X−Q−R” (式I)
(式中、R’は、F、CF3、C25、またはC37であり、Xは、(パー)フルオロポリエーテル基であり、Qは、−C(O)NH(CH2aまたは−(CH2bO(CH2a(式中、aは1〜5であり、bは1である)であり、R”は、−OC(O)CH=CH2、−OC(O)CMe=CH2、−OC(O)NHCH2CH2OC(O)CMe=CH2、−CH(OC(O)CH=CH22、−CH(OC(O)CMe=CH22、−N(CH2CH2OC(O)CH=CH22、−N(CH2CH2OC(O)CMe=CH22、−N(−C(O)CH=CH2)(−CH2CH2OC(O)CH=CH2)、−NMeCH2CH2CO2CH2CEt(CH2OC(O)CH=CH22、または−O−トリウレタン(NHCO2CH2CH2OC(O)CH=CH22である)。
【0027】
コーティング組成物で使用することができる他の適切なモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物には、次式IIで表されるものが含まれる:
(Rf)−[(W)−(RA)]W (式II)
(式中、Rfは、(パー)フルオロポリエーテル基からなる群から選択された単官能性基であり、Wは、リンキング基であり、RAは、(メタ)アクリル基または−COCF=CH2であり、wは、1または2である)。
【0028】
パーフルオロポリエーテルセグメントと(メタ)アクリルまたは−COCF=CH2末端基との間のリンキング基Wは、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、またはその組合せから選択された2価の基、およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド、またはその組合せから選択された任意選択の2価の基を含む。Wは、無置換でもよく、あるいはアルキル、アリール、ハロ、またはその組合せで置換されていてもよい。W基は、通常は30個以下の炭素原子を有する。いくつかの化合物では、W基は、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、または4個以下の炭素原子を有する。例えば、Wは、アルキレン、アリール基で置換されているアルキレン、またはアリーレンと組み合わせたアルキレンとすることができる。
【0029】
パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物(例えば、式II)は、米国特許第3,553,179号明細書および同第3,544,537号明細書で記載されているような周知の技法で合成することができる。
【0030】
本明細書に記載するコーティング組成物は、次式IIIで表すことができる単官能性フッ素化化合物を含むことができる:
(RA)−W’−(CH2F1−H) (式III)
(式中、RAは、前述した通りであり(すなわち、(メタ)アクリレートまたはCH2=CFCO基)、RF1は、2〜7個の炭素原子を含むフルオロアルキレン基であり、W’は、リンキング基である)。
【0031】
式IIIのRAは、好ましくはアクリレート基である。RF1は、線状または分枝状のパーフッ素化アルキレン部分とすることができる。
【0032】
式IIIの単官能性フッ素化化合物は、周知の技法で合成することができる。式IIIの単官能性フッ素化化合物の一例であるω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート(H−C48−CH2O−C(O)−CH=CH2)は、オークウッド・プロダクツ、米国サウスカロライナ州ウェストコロンビア(Oakwood Products,West Columbia,S.C)から市販されている。式H(CF2nCH2OCOCH=CH2(式中、n=2、4、および6)およびCF3CHFCF2CH2OCOC(CH3)CH2(2,2,3,4,4,4ヘキサフルオロブチルメタクリレート)を有する式IIIの単官能性フッ素化化合物は、ランカスター・ケミカル、米国ニューハンプシャー州ウィンダム(Lancaster Chemical,Windham,NH)から市販されている。
【0033】
式IIIの1つまたは複数の単官能性フッ素化化合物を含めることによって、少なくともいくつかのパーフルオロポリエーテルアクリレート化合物とポリ(メタ)アクリレート架橋剤との相溶性をさらに改善することができる。この態様は、特にHFPO−C(O)N(H)CH2CH2OC(O)CH=CH2などの単官能性パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物を使用する実施形態に有利である。
【0034】
本発明のコーティング組成物で利用される式IIIの単官能性フッ素化化合物の量は、使用する(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物の種類および量に応じて異なる可能性がある。通常は、量は(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物の量の約半分から(パー)フルオロポリエーテルアクリレート化合物の量の約2倍までである。
【0035】
本明細書に記載するコーティング組成物は、様々な他の反応性および非反応性材料をさらに含むことができる。例えば、組成物は、アルキル、パーフルオロアルキル、およびパーフルオロアルキレン部分を有する重合性(メタ)アクリル化合物を含むことができる。これらの化合物の例としては、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手可能なブチルアクリレート、1H,1H−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアクリレート;ランカスター・シンセシス、米国ニューハンプシャー州ウィンダム(Lancaster Synthesis,Windham,NH)から入手可能な1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレート;および国際公開第01/30873A号パンフレットの実施例2Aおよび2Bの手順で作製されたC49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2が挙げられる。パーフルオロアルキル部分を有する多数の他の(メタ)アクリル化合物は、米国特許第4,968,116号明細書および米国特許第5,239,026号明細書((パーフルオロシクロヘキシル)メチルアクリレートを含む)に記載されている。
【0036】
コーティング組成物の重合開始剤
硬化を容易にするために、本発明による重合性組成物は、少なくとも1つの熱ラジカル開始剤および/または光開始剤をさらに含むことができる。このような開始剤および/または光開始剤が存在する場合、重合性組成物の全重量に対して、典型的には重合性組成物の約10重量パーセント未満、より典型的には約5パーセント未満を成す。ラジカル硬化技法は、当技術分野でよく知られており、例えば、熱硬化方法、および電子ビームや紫外線などの放射線硬化方法が挙げられる。熱ラジカルおよび光ラジカル重合技法に関するさらに詳細な情報は、例えば米国特許第4,654,233号明細書(グラント(Grant)ら);同第4,855,184号明細書(クルン(Klun)ら);および同第6,224,949号明細書(ライト(Wright)ら)に出ている。
【0037】
有用な熱ラジカル開始剤には、例えばアゾ、過酸化物、過硫酸塩、レドックス開始剤、およびその混合物が含まれる。
【0038】
有用な光ラジカル開始剤には、例えばアクリレートポリマーのUV硬化に有用であると知られているものが含まれる。このような開始剤には、ベンゾフェノンおよびその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション、米国ニューヨーク州タリータウン(Ciba Specialty Chemicals Corporation of Tarrytown,New York)から商標名「イルガキュア(IRGACURE) 651」で市販)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「ダロキュア(DAROCUR)1173」で市販)や1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商標名「イルガキュア(IRGACURE)184」で、これもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販)などのアセトフェノンおよびその誘導体;(商標名「イルガキュア(IRGACURE)907」で、これもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販)などの2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン;2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「イルガキュア(IRGACURE)369」で市販);ベンゾフェノンおよびその誘導体やアントラキノンおよびその誘導体などの芳香族ケトン;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩;例えば、商標名「CGI 784 DC」で、これもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から市販されているものなどのチタン錯体;ハロメチルニトロベンゼン;ならびにチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商標名「イルガキュア(IRGACURE)1700」、「イルガキュア(IRGACURE)1800」、「イルガキュア(IRGACURE)1850」、「イルガキュア(IRGACURE)819」、「イルガキュア(IRGACURE)2005」、「イルガキュア(IRGACURE)2010」、「イルガキュア(IRGACURE)2020」、および「ダロキュア(DAROCUR)4265」で入手可能なものなど、モノ−およびビス−アシルホスフィンが含まれる。2つ以上の光開始剤の組合せを使用することができる。さらに、ファースト・ケミカル・コーポレーション、米国ミシシッピ州パスカグーラ(First Chemical Corporation,Pascagoula,MS)から市販されている2−イソプロピルチオキサントンなどの増感剤を、「イルガキュア(IRGACURE)369」などの光開始剤と共に使用することができる。
【0039】
他の反応性および非反応性材料
様々な無機オキサイド粒子を表面層で使用することができる。粒子は、通常は形状が実質的に球状であり、サイズが比較的均一である。粒子は、実質的に単分散なサイズ分布、または実質的に単分散な2つ以上の分布をブレンドすることによって得られた多重モード分布を有することができる。凝集は無機オキサイド粒子の沈殿またはハードコートのゲル化を招く恐れがあるので、無機オキサイド粒子は、通常は非凝集性(実質的に離散的)である。無機オキサイド粒子は、通常はコロイド様サイズであり、平均粒径が、約0.001〜約0.2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル未満、および約0.03マイクロメートル未満である。これらのサイズ範囲によって、無機オキサイド粒子の結合剤樹脂への分散が容易になり、望ましい表面特性および光学的透明度を有するセラマーがもたらされる。所与の直径の無機オキサイド粒子を計数するための透過型電子顕微鏡を使用して、無機オキサイド粒子の平均粒径を測定することができる。無機オキサイド粒子には、コロイダルシリカ、コロイダルチタニア、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニア、コロイダルバナジア、コロイダルクロミア、コロイダル酸化鉄、コロイダル酸化アンチモン、コロイダル酸化スズ、およびその混合物が含まれる。無機オキサイド粒子は、シリカなどの単独オキサイドから本質的になり、またはそれからなることができ、あるいはシリカや酸化アルミニウムなどのオキサイドの組合せ、または1種類のオキサイドのコア(もしくは金属酸化物以外の材料のコア)の上に別の種類のオキサイドを被着させたものを含むことができる。シリカは、一般的な無機粒子である。無機オキサイド粒子は、液状媒体中、無機オキサイド粒子のコロイド分散液を含むゾルの形で提供される場合が多い。ゾルは、例えば、米国特許第5,648,407号明細書(ゴエッツ(Goetz)ら);同第5,677,050号明細書(ビルカディ(Bilkadi)ら)、および同第6,299,799号明細書(クレイグ(Craig)ら)に記載されているように、様々な技法を使用して、(水が液状媒体として働く)ヒドロゾル、(有機液体が液状媒体として働く)オルガノゾル、および混合ゾル(液状媒体が水と有機液体とを含む)を含めて、様々な形で調製することができる。(例えば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することができる。ゾルは、ゾルの全重量に対して、一般には少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%、および多くの場合には少なくとも35重量%のコロイダル無機オキサイド粒子を含む。コロイダル無機オキサイド粒子の量は、通常は50重量%以下(例えば、45重量%)である。無機粒子の表面は、ビルカディ(Bilkadi)らによって記載されているように、「アクリレート官能化する」ことができる。ゾルは、結合剤のpHに一致させることもでき、対イオンまたは水溶性化合物(例えば、アルミン酸ナトリウム)を含むことができる。
【0040】
表面層は、無機オキサイド粒子の水性ゾルをラジカル硬化性結合剤前駆体(例えば、適切な硬化エネルギー供給源に曝露時に、架橋反応に関与することができる1つまたは複数のラジカル硬化性モノマー、オリゴマー、またはポリマー)と混合することによって、好都合に調製することができる。得られた組成物は、実質的にすべての水を除去するために通常は塗布する前に乾燥する。この乾燥ステップは、「ストリッピング」と呼ばれることがある。得られたセラマー組成物を塗布する前に、改善された粘度特性を付与し、基材をセラマー組成物で被覆するのを助けるために有機溶媒を添加することができる。被覆した後、セラマー組成物を乾燥して、添加した溶媒を除去することができ、次いでラジカル硬化性結合剤前駆体の少なくとも部分硬化をもたらすために適切なエネルギー供給源に乾燥した組成物を曝露することによって、少なくとも部分固化することができる。
【0041】
本明細書に記載するコーティング組成物は、様々な他の反応性および非反応性材料をさらに含むことができる。例えば、組成物は、アルキル、パーフルオロアルキル、およびパーフルオロアルキレン部分を有する重合性(メタ)アクリル化合物を含むことができる。これらの化合物の例としては、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手可能なブチルアクリレート、1H,1H−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアクリレート;ランカスター・シンセシス、米国ニューハンプシャー州ウィンダム(Lancaster Synthesis,Windham,NH)から入手可能な1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレート;および国際公開第01/30873A号パンフレットの実施例2Aおよび2Bの手順で作製されたC49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2が挙げられる。パーフルオロアルキル部分を有する多数の他の(メタ)アクリル化合物は、米国特許第4,968,116号明細書および米国特許第5,239,026号明細書((パーフルオロシクロヘキシル)メチルアクリレートを含む)に記載されている。
【0042】
通常、本明細書に記載する組成物は、親水性材料を含めると、耐汚れ性を低減し、かついくつかの媒体を汚す傾向があるので親水性材料を含まないというわけではないと考えられている。親水性成分は、水系清浄剤への曝露時に劣化も受けやすい。
【0043】
当業者は、コーティング組成物は、結合剤、界面活性剤、帯電防止剤(例えば、導電性ポリマー)、レベリング剤、光増感剤、紫外線(「UV」)吸収剤、安定剤、酸化防止剤、滑沢剤、顔料、染料、可塑剤、懸濁化剤など、他の任意選択のアジュバントを含有できることを理解する。表面層に添加することができる他の成分には、米国特許第6,730,388号明細書に記載のものが含まれる。
【0044】
基材
様々な基材を発明の物品で利用することができる。適切な基材材料には、織物、不織布、編物、テキスタイル、カーペット、皮革、および紙などの繊維基材と、ビニル、木材、セラミック、メーソンリー、コンクリート、天然石、人造石、グラウト、金属シートおよび箔、木材、ペイント、プラスチック、ならびにポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリオレフィン、ポリカルボナート、およびポリビニルクロライドなどの熱可塑性樹脂のフィルムなどの硬質基材とが含まれる。通常は、基材は、コーティング組成物中の反応性基と共有または水素結合を形成することができる反応性基の存在にも基づいて選択される。このような反応性基の例としては、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アルケン(C=C)、アルキン、−OH、−CO2、CONH基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
例えば、反応性基を化学処理などで基材表面に組み込むことによって基材とハードコート層の間の接着を改善するように基材を処理することができる。望むなら、任意選択のタイ層またはプライマーを基材および/またはハードコート層に塗布して、層間接着を高めることができる。
【0046】
コーティング組成物の基材への塗布
様々な通常の被覆方法を使用して、コーティング組成物をハードコートに塗布することができる。適切な被覆方法には、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング、ワイヤーコーティング、フラッドコーティング、パジング、噴霧、ロールコーティング、浸漬、刷毛塗り、フォーム塗布などが含まれる。コーティングは、通常は強制空気オーブンを使用して、乾燥する。エネルギー源を使用して、乾燥したコーティングを少なくとも部分的に、通常は完全に硬化する。
【0047】
好ましいエネルギー源には、約5〜60ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm2)のUV「C」線量を提供する紫外線硬化デバイスが含まれる。硬化は、酸素を低量、例えば約100ppm未満しか含まない環境で起こることが好ましい。窒素ガスが好ましい環境である。
【0048】
好ましくは、厚さが少なくとも約10ナノメートル、好ましくは少なくとも約25ナノメートルである硬化層を形成するのに十分な量のコーティング組成物を塗布する。通常は、硬化層は、厚さが約50ミル未満、好ましくは約10ミル未満、より好ましくは約5ミル未満である。したがって、耐久性の大部分は、その下にある表面層によってもたらされる。
【0049】
本発明の別の特徴および利点を、それを限定するものではない下記の実施例でさらに説明する。本発明は、本明細書に記載する特定の実施例に限定されるものと解釈すべきではなく、添付の特許請求の範囲に明白に記載されている本発明の態様をすべてカバーするものと理解されるべきである。様々な修正、等価方法、および本発明を適用することができる多数の構造は、本明細書を検討したとき本発明が対象とする技術分野の技術者にとって、難なく明らかであろう。
【実施例】
【0050】
下記の実施例では、「HFPO−」は、平均分子量が1,211g/molであり、米国特許第3,250,808号明細書(Moore(ムーア)ら)に報告されている方法に従って調製し、分留で精製することができる末端基F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−(式中、「a」は、5から12までの間であり、平均すると約6.3である)を意味する。
【0051】
(HFPO)8.8−アルコールとも呼ばれるHFPO−オリゴマーアルコールCF3CF2CF2−O−(CF(CF3)CF2O)6.8CF(CF3)CONHCH2CH2OHの合成
1リットルの三口反応フラスコに、撹拌機、冷却器、滴下漏斗、加熱マントル、および温度計を装備した。フラスコに、1000gのCF3CF2CF2−O−(CF(CF3)CF2O)6.8CF(CF3)COOCH3を加えた。混合物を40℃に加熱し、滴下漏斗を用いて、43.4gのエタノールアミンを30分かけて添加した。反応混合物を65℃で3時間維持した。FTIR分析によって、変換が完了したことが示唆された。最終生成物は以下の通り精製することができた。500mlの酢酸エチルを添加し、有機溶液を200mlのHCL(1N)で洗浄し、続いて200mlのブラインで2回洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥した。ビュッヒ(Buechi)ロータベーパーを使用して、水流による真空で、酢酸エチルを蒸発させた。油ポンプによる真空(<1mbar)で、生成物を50℃で5時間乾燥した。代替の精製ステップは、ビュッヒ(Buechi)ロータベーパー(最高75℃、=<100mmHg)を使用して、水流による真空で反応中形成されたメタノールの蒸発を含む。残留メタノールを、さらに油ポンプによる真空(最高80℃、=<10mbar)で除去した。得られたHFPO−オリゴマーアルコールである(HFPO)8.8−alcは、中位の粘度を有する黄色油であった。NMRによって、構造を確認した。
【0052】
(HFPO)8.8−メタクリレートとしても示される(HFPO)8.8−メタクリレートの合成
CF3CF2CF2−O−(CF(CF3)CF2O)6.8CF(CF3)CONHCH2CH22CC(Me)=CH2(構造FC−1)は、対応する(HFPO)6.8−alcであるCF3CF2CF2−O−(CF(CF3)CF2O)6.8CF(CF3)CONHCH2CH2OH(MW 1100)を出発物として作製した。冷却器、撹拌機、窒素入口、および温度制御装置を装備した2リットルの三口丸底フラスコに、725.2gの(HFPO)8.8−alcを入れた。64.4gの無水メタクリル酸および280mlのHFE 7100を添加した。試薬が溶解するまで、混合物を撹拌した。1gの濃硫酸を添加した。発熱反応が顕著であった。発熱が治まった後、反応物を室温で終夜撹拌した。1000mlのDI水を添加した。混合物を振盪した。乳濁液を終夜放置して分離させた後、有機相を分別し、溶媒を減圧下で除去した。IR分析およびガスクロマトグラフィーによって、メタクリル酸エステルの形成が確認された。
実施例1〜8
【0053】
100部のサートマー(Sartomer)CN 306(サートマー・カンパニー、米国ペンシルベニア州エクストン(Sartomer Company,Exton,PA))に、撹拌しながら、光開始剤ダロキュア(DAROCUR)1173(チバ・ガイギー(Ciba−Geigy)製)1部、およびFC−1(下記に示す構造)の(HFPO)8.8−メタクリレート(濃度0、0.75、0.150、0.200、1.000、2.000、5.000、10.000重量%)1部を一緒に添加して、粘性液体配合物を得た。
【0054】
CF3CF2CF2−O−(CF(CF3)CF2O)6.8CF(CF3)CONHCH2CH22CC(Me)=CH2 (FC−1) (式中、n=5〜12)
【0055】
#10のマイヤーバーを使用して、上記の配合物を、3インチ×5インチの未被覆ビニルタイル(エクセロン・ビニル・タイル(Excelon Vinyl Tile)、アームストロング・ワールド・インダストリーズ、米国ペンシルベニア州ランカスター(Armstrong World Industries, Inc.,Lancaster,PA)製)に塗布して、厚さ約1ミルの濡れフィルムを得た。次いですぐに、RPC UV処理装置を使用して、中圧水銀アークで、被覆基材を窒素雰囲気中で硬化した。
【0056】
塗布した試料のヘキサデカンおよび水との接触角を決定した。それぞれ10滴について、記録した。数字は平均して、報告した。使用した装置は、レームハート(Rame−Hart Inc)から入手可能なNRL接触角ゴニオメーター(NRL Contact Angle Goniometer)モデル#100−00であった。
【0057】
【表1】

【0058】
上記に記載するように、配合物E5を調製し(CN−306中、1重量%のFC−1)、ビニルタイル、木材、ガラス、銅、ステンレス鋼、ナイロン、およびポリエステルフィルムの3インチ×5インチの未被覆片に、#10のマイヤーバーを使用して塗布して、厚さ約1ミルの濡れフィルムを得た。次いですぐに、RPC UV処理装置を使用して、中圧水銀アークで、被覆基材を窒素雰囲気中で硬化した。各基材を1インチ×4インチのサイズに硬化し、沸騰水のビーカー中に、撹拌しながら浸漬した。基材を層間剥離について検査した。結果を表2にまとめる。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例9
100部のサートマー(Sartomer)CN 306(サートマー・カンパニー、米国ペンシルベニア州エクストン(Sartomer Company,Exton,PA))に、撹拌しながら、1部の光開始剤ダロキュア(DAROCUR)1173(チバ・ガイギー(Ciba−Geigy)製)および1部のFC−2(下記に示す構造)を一緒に添加して、粘性液体配合物を得た。
【0061】
49SO2N(Me)−C24−O2CCH=CH2 (FC−2)
【0062】
#10のマイヤーバーを使用して、この配合物を、3インチ×5インチの未被覆ビニルタイル(エクセロン・ビニル・タイル(Excelon Vinyl Tile)、アームストロング・ワールド・インダストリーズ、米国ペンシルベニア州ランカスター(Armstrong World Industries, Inc.,Lancaster,PA)製)に塗布して、厚さ約1ミルの濡れフィルムを得た。次いですぐに、RPC UV処理装置(米国イリノイ州プレーンフィールド(Plainfield,IL))を使用して、中圧水銀アークで、被覆基材を窒素雰囲気中で硬化した。
【0063】
被覆ビニル基材は、ヘキサデカンとの後退接触角が30であった。
【0064】
本発明の様々な修正および変更は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に明らかであろう。本発明は、本明細書に記載の例示的実施形態によって不当に限定されるものではないこと、このような実施形態は、例として記載されているにすぎず、本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであることと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基材と、
少なくとも1つのモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有する少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの反応生成物を含む表面層と、を含む物品であって、
前記反応性基材が、前記表面層と共有結合または水素結合を形成する、物品。
【請求項2】
前記基材が、前記表面層と相互作用して接着を助ける反応性基を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記基材が、ビニル、木材、テキスタイル、布地、カーペット、皮革、紙、石、金属、セラミック、組積造、ペイント、プラスチック、および熱可塑性樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物が、少なくとも1つの末端基F(CF(CF3)CF2O)xCF(CF3)−(式中、xは平均して、3〜15となる)および少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記モノマーまたはオリゴマーが、トリプロピレングリコールジアクリレートを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記表面層が、前記物品に低表面エネルギーを提供する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
基材表面を保護する方法であって、
反応性基材を提供するステップと、
前記基材を、少なくとも1種のモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有する少なくとも1種のモノマーまたはオリゴマーとを含むコーティング組成物で被覆するステップと、
前記コーティング組成物を重合して、物品上に保護表面層を提供するステップと、を含み、
前記反応性基材が、前記表面層と共有結合または水素結合を形成する、方法。
【請求項8】
前記基材が、前記表面層と相互作用して接着を助ける反応性基を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基材が、ビニル、木材、テキスタイル、布地、カーペット、皮革、紙、石、金属、セラミック、組積造、ペイント、プラスチック、および熱可塑性樹脂からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物が、少なくとも1つの末端基F(CF(CF3)CF2O)xCF(CF3)−(式中、xは平均して、3〜15となる)および少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマーまたはオリゴマーが、トリプロピレングリコールジアクリレートを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記表面層が、前記物品に低表面エネルギーを提供する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
多孔質基材と、
少なくとも1つのモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有する少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの反応生成物を含む表面層と、を含む物品であって、
前記表面層が前記基材の細孔を貫通している、物品。
【請求項14】
前記基材が、ビニル、木材、テキスタイル、布地、カーペット、皮革、紙、石、金属、セラミック、組積造、ペイント、プラスチック、および熱可塑性樹脂からなる群から選択される、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物が、少なくとも1つの末端基F(CF(CF3)CF2O)xCF(CF3)−(式中、xは平均して、3〜15となる)および少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む、請求項13に記載の物品。
【請求項16】
前記モノマーまたはオリゴマーが、トリプロピレングリコールジアクリレートを含む、請求項13に記載の物品。
【請求項17】
前記表面層が、前記物品に低表面エネルギーを提供する、請求項13に記載の物品。
【請求項18】
多孔質基材と、
少なくとも1つのモノ末端(パー)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を有する少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの反応生成物を含む表面層と、を含む基材表面を保護する方法であって、
前記表面層が前記基材の細孔を貫通している、方法。
【請求項19】
前記基材が、ビニル、木材、テキスタイル、布地、カーペット、皮革、紙、石、金属、セラミック、組積造、ペイント、プラスチック、および熱可塑性樹脂からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物が、少なくとも1つの末端基F(CF(CF3)CF2O)xCF(CF3)−(式中、xは平均して、3〜15となる)および少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記モノマーまたはオリゴマーが、トリプロピレングリコールジアクリレートを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記表面層が、前記物品に低表面エネルギーを提供する、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2008−526551(P2008−526551A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549652(P2007−549652)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/047454
【国際公開番号】WO2006/074085
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】