説明

フルベン化合物の製造方法、及びこれを利用したアンサ型メタロセン化合物の製造方法

本発明は、1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物の簡単な合成法、フルベン化合物の中間体、及び該フルベン化合物を利用し、炭素一つで橋架けされ、シクロペンタジエニル配位子の橋架け点の隣だけに置換体を有しているアンサ型メタロセン化合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物の簡単な合成法、及び前記合成法に由来する新規中間体に関する。また、前記フルベン化合物及び前記新規中間体を利用したアンサ(ansa)型メタロセン化合物の合成法に関する。特に、シクロペンタジエニル配位子の橋架け点の隣だけに置換体を有しているという特徴があるアンサ型メタロセン化合物の簡単であり、かつ量産可能な合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該アンサ型メタロセン化合物は、オレフィン重合触媒として、要緊に使われうる。橋架け点の隣だけに置換体を有している構造のアンサ型メタロセン触媒は、本発明者により提案され、反応点で立体障害が少ないという理由で、ノルボルネンのような立体障害の大きい単量体をエチレンと共重合するとき、優秀な性能を示すという特徴があることを立証した(大韓民国特許第10−98−12658;Organometallics,2002,21,1500−1503、J.Organomet.Chem.,2002,660,161−166)。しかし、下記反応式1で分かるように、その合成法が容易でない上に、量産し難い。特に、出発物質である1,4−ペンタジエンの合成が経済的でなく、これを利用してPauson−Khand反応を経て置換体を導入し、逆Diels−Alder反応を経る一連の過程は、高温または高圧の苛酷な条件で反応がなされ、全体反応段階も多く、各反応段階別に中間体は、クロマトグラフィ法などの方法で分離精製操作を行わねばならないという短所がある。また、メチルリチウムのように、発火の危険性があり、かつ高価な物質を過量に使用せねばならないという問題点もある。従って、かかる理由で、下記反応式1によって商業的に使用するだけの量の触媒を製造することは容易ではない。
【0003】
【化1】

【0004】
橋架け点の隣に置換体を有しているメタロセン触媒をもう少し容易に合成するための方法として、下記反応式2の過程による1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン合成法(大韓民国特許出願10−2002−51425)と、これを利用して下記反応式3の過程によるメタロセン触媒を製造する方法(大韓民国特許出願10−2002−51426)については、既に出願されている。
【0005】
【化2】

【0006】
【化3】

【0007】
しかし、この場合においても、合成段階が長すぎるという短所を有する。特に、ケトンをケタールに保護した後、有機金属化合物を使用した反応を行い、さらに脱保護するステップがあるが、かかる保護−脱保護の方法は、量産する合成法では望ましくない。また、反応式2により製造した新しいフルベンから反応式3の方法によって多様なメタロセン触媒を合成できるが、前記反応式1の化合物Aは製造できない。該特許出願によれば、フルベンにシクロペンタジエニル、インデニル、フロオレニル、アミド、ホスフィノ陰イオンまたはこの誘導体をフルベンに求核攻撃して配位子を製造した後、金属を付けて新しいメタロセン化合物を製造する。前記反応式1の化合物Aを製造するために、この方法を利用し、1,4−ジメチルフルベンに1,3−ジメチルシクロペンタジエニル陰イオンを求核攻撃させれば、下記反応式4の左側の矢印方向の反応により、所望の配位子が得られる代わりに、立体障害効果として、下記反応式4の右側の矢印方向の反応により、1,4位置にメチル基を有している化合物が得られる。
【0008】
【化4】

【0009】
同じ理由で、下記反応式5のように、1つの置換体だけあるシクロペンタジエニル陰イオンを反応させる場合にも、フルベンに導入されるシクロペンタジエニル基のα位置に置換体のあるものを得る代わりに、β位置にその置換体のある配位子が得られる。
【0010】
【化5】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記二種の問題点を克服できる方法を提供する。保護−脱保護過程がなく、かつ短いステップで1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベンを製造する合成法を提供し、また前記反応式4と反応式5とで示すように、橋架け点の隣だけに置換体を有しているメタロセン化合物を容易に製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物を製造する新規方法であり、
a)下記化学式(1)の化合物に下記化学式(2a)または化学式(2b)の化合物を反応させ、下記化学式(3)の化合物を製造するステップと、
【化6】

【化7】

【化8】

b)前記化学式(3)の化合物にリチウム塩化を行った後、得られたリチウム塩を、下記化学式(4)の求電子体と反応させ、下記化学式(5)の化合物を製造するステップと、
【化9】

【化10】

c)前記化学式(5)の化合物を下記化学式(6)の化合物と1当量以上反応させてエーテルを製造し、これを酸触媒下で水除去反応により、下記化学式(7)の化合物を製造するステップと、
【化11】

【化12】

d)前記化学式(7)の化合物に塩基を加え、下記化学式(8)のフルベン化合物を製造するステップとを含むことを特徴の製造方法を提供する。
【化13】

前記化学式1ないし8で、R,R,R及びRは、それぞれ独立的にまたは同時に、水素;酸素原子含有/非含有の炭素数1ないし20のアルキルまたはアリール;炭素数1ないし20のアルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキルであり、Rは、水素ではなく、RとRは、炭素数1ないし20のアルキルまたはアリールラジカルを含むアルキリデンラジカルにより互いに連結されて環を形成でき、
Xは、ハロゲン原子であり、
は、炭素数1ないし20のアルキル、アルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキル、アリール、アルコキシアルキルまたはヒドロカルビルに置換された14族金属のラジカルであり、
Yは、求核体置換反応による離脱基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物(前記化学式(8))を化学的処理で容易に得ることができる前記フルベン化合物の新規前駆体(前記化学式(7))を提供することが特徴であり、化学式(7)の化合物または化学式(8)の化合物の製造時に、化学式3の化合物を経由するということが他の特徴である。
【0014】
従って、本発明は、下記化学式(7)の化合物及びその製造方法を提供する。
【化14】

【0015】
具体的に、前記化学式(7)の化合物の製造方法は、
a)下記化学式(1)の化合物に下記化学式(2a)または化学式(2b)の化合物を反応させ、下記化学式(3)の化合物を製造するステップと、
【化15】

【化16】

【化17】

b)前記化学式(3)の化合物のリチウム塩化を行った後、得られたリチウム塩を、下記化学式(4)の求電子体と反応させ、下記化学式(5)の化合物を製造するステップと、
【化18】

【化19】

c)前記化学式(5)の化合物を下記化学式(6)の化合物と1当量以上反応させてエーテルを製造し、これを酸触媒下で水除去反応により、前記化学式(7)の化合物を製造するステップとを含む。
【化20】

【化21】

ここで、R,R,R,R,R,X,Yは、前記で定義したところと同一である。
1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物(化学式(8))は、前記化学式(7)の化合物に塩基を加えることによって形成可能である。
【0016】
前記のa)ステップで、出発物質として使われる前記の化学式(1)による具体的な物質は、例えば2−ブロモ−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−エチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ヨード−2−シクロペンテン−1−オン、2−ヨード−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ヨード−3−エチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−プロピル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−フェニル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ヨード−3−フェニル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−ブチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−トリル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−エテニル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−プロフェニル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−クミル−2−シクロペンテン−1−オンなどが含まれる。これら化合物のうち、2−ブロモ−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ヨード−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンなどを使用することが望ましい。
【0017】
前記のb)ステップで、反応物として使われる前記の化学式(4)による具体的な物質は、例えばアセトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどが含まれる。これら化合物のうち、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどを使用することが望ましい。
【0018】
前記のc)ステップで、反応物として使われる前記化学式(6)による化合物で、求核置換反応による離脱基の例を挙げれば、塩素、臭素、ヨード、メトキシメチル、トリフルオロスルホネート、パラトルエンスルホネートなどがある。
【0019】
また、本発明は、橋架け点の隣だけに置換体のあるメタロセン化合物を製造するための下記化学式(9)で表示される中間体化合物、及び該化合物の製造方法を提供する。化学式(9)の化合物は、下記化学式(3)の化合物に化学式(6)の化合物を反応させて製造可能である。
【化22】

【化23】

【化24】

前記式で、R,R,R及びXは、前記化学式(1)ないし(8)で定義したところと同一である。
【0020】
また、本発明は、前記化学式(9)の化合物から化学式(7)の化合物を製造する方法を提供し、化学式(9)の化合物から化学式(7)の化合物を製造し、そこから前記化学式(8)のフルベン化合物を合成する方法も提供する。
【0021】
前記化学式(9)の化合物から化学式(7)の化合物を製造する方法は、
a)下記化学式(9)の化合物のリチウム塩化を行うか、またはグリニャール反応剤で転換させた後、得られた有機金属化合物を下記化学式(4)の求電子体と反応させ、下記化学式(10)の化合物を製造するステップと、
【化25】

【化26】

【化27】

b)前記化学式(10)の化合物を下記化学式(6)の化合物と1当量以上反応させてエーテルを製造し、これを酸触媒下で水除去反応により下記化学式(7)の化合物を製造するステップとを含む。
【化28】

【化29】

【0022】
また、本発明は、下記化学式(3)または化学式(9)の化合物をリチウム塩化するか、またはグリニャール反応剤で転換させた後、得られた有機金属化合物を、下記化学式(8)の化合物と反応させ、酸処理を行うステップを含むことが特徴であるシクロペンタジエニル五員環の橋架け点のα位置だけに置換体のあるメタロセン化合物の前駆体である下記化学式(11)の化合物の製造方法を提供する。
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【0023】
前記化学式(11)の化合物から、シクロペンタジエニル五員環の橋架け点のα位置だけに置換体のあるメタロセン化合物である下記化学式(12)の化合物を製造する方法は、2つのシクロペンタジエニル五員環が橋架けされている化合物からアンサ型メタロセン化合物を製造する多様な文献に紹介されている方法に従うことも可能である。
【0024】
【化34】

【0025】
化学式(11)及び(12)で、R,R,R及びRは、それぞれ独立的にまたは同時に、水素;酸素原子含有/非含有の炭素数1〜20のアルキルまたはアリール;炭素数1ないし20のアルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキルであり、ここでRは、水素ではなく、RとRは、炭素数1ないし20のアルキルまたはアリールラジカルを含むアルキリデンラジカルにより互いに連結されて環形成が可能である。
【0026】
前記MQで、Q及びQは、それぞれ独立的にまたは同時に、ハロゲン;炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキル;アリール;置換/非置換の炭素数1〜20のアルキリデン;置換/非置換のアミド基;炭素数1ないし20のアルキルアルコキシ;またはアリールアルコキシ基であり、Mは、4族金属である。
【0027】
前記化学式(11)の化合物から前記化学式(12)の化合物を製造する方法には、KH、Mg、アルキルリチウムのような強塩基金属または金属化合物で処理して二価陰イオンを形成させた後、金属元素1個当たりハロゲン元素二つ以上が含まれている金属化合物と反応させて得る方法がある。かような方法を使用した文献の例を挙げれば、H.Wiesenfeldt et al,J.Organomet.Chem.,369 359(1989),S.Gutmann et al,J.Organomet.Chem.,369 343(1989)、及びS.Collins et al,Organometallics,9 2695(1990)などがある。また、他の方法としては、強塩基金属または金属化合物で処理し、生成された二価陰イオンをハロゲン元素が1個以上含まれている第14族メタロイド有機金属化合物と反応させ、それぞれの五員環をメタロイド元素に置換させた後、金属元素1個当たりハロゲン元素二つ以上が含まれている金属化合物と反応させて得る方法がある。かような方法を使用した文献の例を挙げれば、Boonyeoul Lee et al,J.Organomet.Chem., 660 161(2002)などがある。また、他の方法としては、米国特許第5,998,643明細書に開示されているように、前記化学式(11)の化合物を塩基処理なくそのまま使用し、金属アミド化合物と反応させて得る方法も可能である。かような方法のうち、最も望ましい製造方法の例を挙げれば、前記化学式(11)の化合物を2当量のノルマル−ブチルリチウムで処理し、それぞれのシクロペンタジエン五員環を脱水素化して二価陰イオンを形成させ、これをメタルハライド化合物などとの反応により、ブリッジ位置に炭素が一つだけありつつ、α位置だけに置換体を有しているシクロペンタジエニル基を含むブリッジされたメタロセン化合物の製造が可能である。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物の製造方法を提供することである。また、このフルベンを利用し、2つのシクロペンタジエニルが炭素一つにより橋架けされ、橋架け点の隣だけに置換体を有しているアンサ型メタロセン化合物の製造方法に関する。
【0029】
本発明の化学式(8)のフルベン化合物を製造する方法は、下記反応式6による。
【化35】

【0030】
前記反応式(6)で、RないしRは、前記定義したところと同じである。出発物質である化合物B(化学式(1))において、Xは、I、BrまたはClなどを含むハロゲン原子であり、望ましくはXがBrまたはIである。XがBrである化合物は、公知の方法(J.Organomet.Chem.,677(2003),133)により量産可能である。XがIである化合物も、公知の方法(Tetrahedron Lett.,33(1992),917)により量産可能である。前記反応式6で、XがBrである化合物Bに、既出の化学式(2a)または化学式(2b)の有機金属化合物を求核攻撃させて三級アルコールの陰イオン化合物C(化学式(3))を得て、これに続いて同じ反応基で低温でアルキルリチウムを加え、リチウム塩(化合物D)を製造する。このリチウム塩を化学式(4)による求電子体と反応させれば、ジリチウム塩(化合物E)が得られる。このとき、反応させる求電子体の構造により、R及びRの形態が決定されうる。化合物E(化学式(5))に化学式(6)によるアルキルハライドまたはアルキルスルホネートのような化合物を同じ当量加えれば、R,Rが結合した炭素についているオキソ陰イオンがエーテル基に転換される。2当量を使用すれば、Rが付着している炭素についているオキソ陰イオンもエーテル基に転換される。この反応段階で、Rが付着している炭素についているオキソ陰イオンが、必ずしもエーテルに転換されねばならないわけではないが、全てエーテルに転換されることが望ましい。最終的に、酸を加えれば、Rが付着している炭素についているOHまたはアルコキシ基が、隣接する炭素についている水素と共に、水またはアルコールとして除去されて二重結合が生じ、反応式(6)の化合物F(化学式(7))が得られる。この化合物を減圧蒸留やクロマトグラフィ法で精製して使用することもでき、または精製せずに次の反応に使用することもできる。化合物F(化学式(7))に多様な溶媒で塩基を処理すれば、所望のフルベン化合物G(化学式(8))を得ることができる。
【0031】
化合物Bから中間の化合物C,D,Eを分離精製せずに、1つの反応器内で順次に反応剤を投入して化合物Fを得ることができることが望ましい。しかしながら、中間物質を分離精製することが、この発明を制限するものではない。例えば、化合物Cに水を入れてアルコールにした後でこれを精製し、次の反応に過量のブチルリチウムを入れて化合物Dを製造して使用する方法、または化合物Eに水を加えてアルコールに転換した後で分離精製し、多様な方法でアルコールを保護した後で酸処理して化合物Fを得る方法、または化合物Eに水を加えてアルコールに転換した後、まず酸処理して水除去反応によりシクロペンタジエン化合物を得て、残りのアルコールを保護して化合物Fを得る方法なども本発明の範疇に入る。また、場合によっては、化合物C,D,Eを多様な方法で精製して使用することもできる。
【0032】
2つのシクロペンタジエニルが炭素一つにより橋架けされて2つのシクロペンタジエニル配位子の橋架け点の横だけに置換体を有しているアンサ型メタロセン化合物を製造するのにおいて、中間物質として使われうる前記化学式(9)による化合物は、次の反応式7によって製造可能である。すなわち、フルベンを製造するとき、中間物質である前記化学式3の化合物に前記化学式(6)の化合物を反応させれば、下記反応式(7)の化合物H(化学式(9))が得られる。または、化合物C(化学式(3))に水を加えた後で分離精製してアルコール化合物を得て、このアルコール作用基を保護して化合物H(化学式(9))を得ることもできる。アルコール基を、後続の有機金属反応に安定的なように、エーテル化合物に変化させて保護する方法は、アルコールの水素をアルキル基に置換する方法、またはアルコールの水素をアルコキシアルキルに置換する方法、またはシクロアルケン化合物への挿入反応(insertion)により保護する方法など、よく知られている有機合成の方法を含む。かようなアルコール保護反応は、Protective groups in Organic synthesis,3rd Ed.(T.W.Green 1999)によく整理されている。
【0033】
【化36】

【0034】
前記反応式(7)の化合物H(化学式(9))を利用し、前記化学式(8)によるフルベン化合物も製造可能である。その方法は、前記反応式(7)の化合物H(化学式(9))を化合物Cの代わりに使用し、同じ反応段階を経て製造可能である。このとき、化合物C(化学式(3))の代わりに化合物H(化学式(9))を使用すれば、高価なブチルリチウムの代わりにリチウム金属をリチウム塩化に使用でき、またはリチウム塩化の代わりにグリニャール反応剤で転換させた後でこれを化学式(4)の化合物と反応させ、化学式(7)による中間体化合物を作った後で後続反応を進めて所望の目的物を得ることができるという長所がある。
【0035】
2つのシクロペンタジエニルが炭素一つにより橋架けされ、2つのシクロペンタジエニル配位子が橋架け点の横だけに置換体を有しているアンサ型メタロセン化合物を下記反応式8により製造可能である。前記反応式(6)で製造された化合物D(化学式(3))、または前記反応式(7)の化合物H(化学式(9))をリチウム塩化またはグリニャール反応剤で転換した物質に、前記反応式(6)のフルベン化合物G(化学式(8))を反応させて得られた化合物に酸を処理すれば、配位子化合物I(化学式(11))が得られる。化合物I(化学式(11))からメタロセン化合物J(化学式(12))は、公知の多様な方法で製造可能である。
【0036】
【化37】

【実施例】
【0037】
以下、下記実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、該実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明がそれらだけに限定されるものではない。
【0038】
有機試薬と溶媒は、アルドリッチ社とメルク社から購入し、標準方法で精製して使用した。合成の全てのステップで、空気と水分との接触を遮断して実験の再現性を高めた。化合物の構造を立証するために、400MHz核磁気共鳴器(NMR)を利用してスペクトルを得た。
【0039】
実施例1)2−メトキシメチル−1,3−ジメチル−シクロペンタ−1,3−ジエン[化合物(7)(R,R=CH;R,R=H)]の合成
−78℃の窒素状態で、2−ブロモ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン[化合物(1)の(R=CH、X=Br)]化合物29g(166mmol)の溶解している300mLのテトラヒドロフラン溶液に、1.1当量のメチルリチウム溶液121.7mLをゆっくり添加した後で2時間反応させた。同じ温度で、2.0当量の第三級ブチルリチウムの溶液195.3mLをゆっくり添加した後で2時間反応させた。パラホルムアルデヒド3当量と触媒量のパラトルエンスルホン酸無水物100℃で反応させ、生成されたホルムアルデヒドガスを反応フラスコに投入した。ホルムアルデヒドガスの投入が終われば、徐々に常温に引き上げつつ溶媒を減圧除去した。溶媒を除去した後で、ジメチルホルムアミド250mLをカニューレを使用して反応容器に注入した。2当量のヨード化メタンを添加した後で15時間反応させた後、1当量の水素化ナトリウムと同じ当量のヨード化メタンを添加した後で一日の間さらに反応させた。反応が終結した後、水300mLと塩水300mLとを添加し、ヘキサン600mLで一回、200mLでもう一回抽出する。有機層を塩水200mLで3回洗浄して回転蒸発器で溶媒を除去した後、酢酸エチル300mLを加えた。抽出した有機層に2N HCl溶液200mLを添加した後、二分間激しく振った。水層を除去し、飽和された炭酸水素ナトリウム溶液200mLで有機層を中和させた。分離した有機層を硫酸マグネシウムで処理して水を除去した後で減圧蒸留をし、黄色の2−メトキシメチル−1,3−ジメチル−シクロペンタ−1,3−ジエン化合物14.2gを得た。収得率62%。
【0040】
H NMR(CDCl):δ5.83(s,1H,CH)、4.15(s,2H,OCH)、3.33(s,3H,OCH)、2.85(s,2H,CH)、2.05(s,3H,CH)、1.99(s,3H,CH)ppm.13C{H}NMR(CDCl):δ 142.95、142.81、123.65、65.73、57.72、44.36、14.13、13.92ppm.
【0041】
実施例2)1,4−ジメチルフルベン[化合物(8)(R,R=CH;R,R=H)]の合成
窒素状態で、前記実施例1で製造した2−メトキシメチル−1,3−ジメチル−シクロペンタ−1,3−ジエン4.74g(34.3mmol)をペンタン30mLに溶かした後、−20℃で1当量の水素化ナトリウムを添加し、温度を徐々に上げつつ3時間反応させた後、別途の精製を行わずに濾過のみを行ってペンタン溶液を得て、この溶液を次の反応にすぐに使用した。この反応物の一部を分離し、1,4−ジメチルフルベン化合物を確認することができた。
【0042】
H NMR(C):δ 5.95(d,J=1.2Hz,2H,CH)、5.41(t,J=1.2Hz,2H,CH)、1.89(d,J=1.2Hz,6H,CH)ppm.13C{H}NMR(C):δ 154.51、131.17、128.98、114.71、12.44ppm.
【0043】
実施例3)2−ブロモ−3−メトキシ−1,3−ジメチル−シクロペンテン[化合物(9)(R,R,R=CH)]の合成
窒素状態で、メチルリチウム溶液152mL(0.228mol)を1Lフラスコに入れた後で減圧を行い、メチルリチウムの溶媒を除去した後でテトラヒドロフラン0.10Lを注入した後、−78℃で2−ブロモ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン[化1(R=CH,X=Br)]化合物40g(0.228mol)をテトラヒドロフラン0.1Lに溶かした溶液を注入して1時間撹拌した。1時間後に溶媒を減圧除去した後、ジメチルホルムアミド0.2Lを入れて撹拌しつつ1当量のヨード化メタンを添加した。40℃で2時間反応させた後、1当量の水素化ナトリウムを添加し、同じ当量のヨード化メタンを添加して40℃で15時間反応させた。反応終結後に、反応物に水400mLを添加し、ヘキサン600mLで抽出した有機層を塩水200mLで三回洗浄した後、炭酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発器を利用して溶媒を除去した後で減圧蒸留を行い、50℃で500mTorrで減圧蒸留し、2−ブロモ−3−メトキシ−1,3−ジメチル−シクロペンテン化合物32.7gを得た。収得率79%。
【0044】
H NMR(CDCl):δ 3.11(s,3H,OCH)、2.42−2.24(m,2H,CH)、2.18(ddd,J=14.0,4.0,9.2Hz,1H,CH)、1.92(ddd,J=14.4,5.6,9.2Hz,1H,CH)、1.82(s,3H,CH)ppm.13C{H}NMR(CDCl):δ 141.49、121.78、88.35、50.30、34.83、31.98、26.34、16.37ppm.
【0045】
実施例4)2,2'−メチレンビス(1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン)[化合物(11)(R,R=CH;R,R=H)]の合成
−25℃の窒素状態で、エーテル38mLに7.038g(34.3mmol)の前記実施例3で製造した化合物2−ブロモ−3−メトキシ−1,3−ジメチル−シクロペンテンを溶かした溶液にノルマル−ブチルリチウム1当量を添加した後、白色固体が生成されれば、温度を10℃に引き上げて10分間さらに反応させた。温度を−25℃に下げ、前記実施例2で製造したフルベン化合物を添加した。反応物の色が薄黄色を帯びれば、反応を終結させた。水50mLを入れた後で回転蒸発器を利用して溶媒を除去する。酢酸エチル50mLで抽出した有機層に、2N HCl溶液50mLを添加した後で二分間激しく振た。層分離で水層を除去した後、飽和された炭酸水素ナトリウム水溶液50mLで中和させた。分離した有機層を硫酸マグネシウムを使用して乾燥させた後で減圧蒸留を行い、黄色の2,2'−メチレンビス(1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン)化合物4.17gを得た。収得率61%
【0046】
実施例5)[2,2'−メチレンビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)二塩化ジルコニウム[化合物(12)(R,R=CH;R,R=H)]の合成
−78℃の窒素状態で、前記実施例4で製造した2,2'−メチレンビス(1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン)化合物3.24g(16.17mmol)をジエチルエーテル40mLに溶かした溶液に、2当量のノルマル−ブチルリチウムを添加した後、徐々に温度を引き上げて一日の間反応させた。窒素状態で濾過した固体をジエチルエーテル20mLで二回洗浄した後、減圧して溶媒を完全に除去した。このように作られたリチウム塩200mg(0.853mmol)をトルエン15mLとテトラヒドロフラン3mLとを混ぜた混合溶媒に溶かした後、同じ当量の四塩化ジルコニウム化合物を入れた後、一日の間反応させて反応物を濾過した後で濾された溶液の溶媒を減圧して除去し、薄黄色の固体化合物263mgを得た。収得率85%。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上で説明した通り、本発明は、1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物を容易に製造する方法を提供する。本発明に記述された方法は、先行発明に記述された方法(大韓民国特許出願10−2002−51425)に比べ、合成段階が短く、かつ量産可能である。また、この発明は、炭素一つで2つのシクロペンタジエニル配位子が橋架けされ、シクロペンタジエニル配位子の橋架け点の隣だけに置換体を有しているアンサ型メタロセン化合物の簡単な製造法も提供する。かようなメタロセン触媒を合成するために、既存の方法としては、高圧の一酸化炭素圧力が必要であり、かつ400℃以上の温度が要求され、反応段階が長く、また中間にクロマトグラフィ法で中間物質を分離精製しなければならないという困難さがあり、量産に問題があったが、本発明の方法により、かような問題を克服して容易に量産が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4,6−置換された、1,4−置換された、1,6−置換された、または1−置換されたフルベン化合物の製造方法であって、
a)下記化学式(1)の化合物に下記化学式(2a)または化学式(2b)の化合物を反応させて下記化学式(3)の化合物を製造するステップと、
【化1】

【化2】

【化3】

b)前記化学式(3)の化合物にリチウム塩化を行い、得られたリチウム塩を下記化学式(4)の求電子体と反応させ、下記化学式(5)の化合物を製造するステップと、
【化4】

【化5】

c)前記化学式(5)の化合物を下記化学式(6)の化合物と1当量以上反応させてエーテルを製造し、これを酸触媒下で水除去反応により下記化学式(7)の化合物を製造するステップと、
【化6】

【化7】

d)前記化学式(7)の化合物に塩基を加え、下記化学式(8)のフルベン化合物を製造するステップとを含むことを特徴とする製造方法。
【化8】

(前記化学式(1)ないし(8)で、
,R,R及びRは、それぞれ独立的にまたは同時に、水素;酸素原子含有/非含有の炭素数1ないし20のアルキルまたはアリール;または炭素数1ないし20のアルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキルであり、Rは、水素ではなく、RとRは、炭素数1ないし20のアルキルまたはアリールラジカルを含むアルキリデンラジカルにより互いに連結されて環を形成でき、
Xは、ハロゲン原子であり、
は、炭素数1ないし20のアルキル、アルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキル、アリール、アルコキシアルキルまたはヒドロカルビルに置換された14族金属のラジカルであり、
Yは、求核置換反応による離脱基である。)
【請求項2】
下記化学式(7)で表示される化合物:
【化9】

ここで、R,R,R,R,Rは、請求項1で定義したところと同一である。
【請求項3】
下記化学式(7)の化合物を製造する方法であって、
【化10】

a)下記化学式(1)の化合物に下記化学式(2a)または化学式(2b)の化合物を反応させ、下記化学式(3)の化合物を製造するステップと、
【化11】

【化12】

【化13】

b)前記化学式(3)の化合物にリチウム塩化を行い、得られたリチウム塩を下記化学式(4)の親電子体と反応させ、下記化学式(5)の化合物を製造するステップと、
【化14】

【化15】

c)前記化学式(5)の化合物を下記化学式(6)の化合物と1当量以上反応させてエーテルを製造し、これを酸触媒下で水除去反応により前記化学式(7)の化合物を製造するステップとを含むことを特徴とする製造方法:
【化16】

ここで、R,R,R,R,R,X,Yは、請求項1で定義したところと同一である。
【請求項4】
下記化学式(8)のフルベン化合物の製造方法であって、
下記化学式(7)の化合物に塩基を加え、下記化学式(8)のフルベン化合物を製造するステップを含むことを特徴とする製造方法:
【化17】

【化18】

ここで、R,R,R,R,Rは、請求項1で定義したところと同一である。
【請求項5】
下記化学式(9)で表示される化合物:
【化19】

ここで、R,R,R、Xは、請求項1で定義したところと同一である。
【請求項6】
下記化学式(9)の化合物の製造方法であって、
下記化学式(3)の化合物に化学式(6)の化合物を反応させて化学式(9)の化合物を製造するステップを含むことを特徴とする製造方法:
【化20】

【化21】

【化22】

前記式で、R,R,R,X,Yは、請求項1で定義したところと同一である。
【請求項7】
下記化学式(7)の化合物の製造方法であって、
【化23】

a)下記化学式(9)の化合物にリチウム塩化を行うか、またはグリニャール反応剤で転換させた後で、得られた有機金属化合物を、下記化学式(4)の求電子体と反応させ、下記化学式(10)の化合物を製造するステップと、
【化24】

【化25】

【化26】

b)前記化学式(10)の化合物を下記化学式(6)の化合物と1当量以上反応させてエーテルを製造し、これを酸触媒の下で水除去反応により前記化学式7の化合物を製造するステップとを含むことを特徴とする製造方法:
【化27】

ここで、R,R,R,R,R,X,Yは、請求項1で定義したところと同一である。
【請求項8】
下記化学式(11)の化合物の製造方法であって、
下記化学式(3)または化学式(9)の化合物にリチウム塩化を行うか、またはグリニャール反応剤で転換後に、得られた有機金属化合物を、下記化学式(8)の化合物と反応させるステップと、酸処理するステップとを含むことを特徴とする製造方法:
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

ここで、R,R,R,R,R,Xは、請求項1で定義したところと同一である。
【請求項9】
下記化学式(11)の化合物から下記化学式(12)の化合物を製造する方法において、
前記化学式(11)の化合物は、下記化学式(3)または化学式(9)の化合物にリチウム塩化を行うか、またはグリニャール反応剤で転換後、前記化学式(8)の化合物と反応させて酸処理して製造されることを特徴とする製造方法:
【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

ここで、R,R,R,R,R,Xは、請求項1で定義したところと同一であり、
及びQは、それぞれ独立的にまたは同時に、ハロゲン;炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキル;アリール;置換/非置換の炭素数1〜20のアルキリデン;置換/非置換のアミド基;炭素数1ないし20のアルキルアルコキシ;またはアリールアルコキシ基であり、Mは4族金属である。
【請求項10】
前記化学式(1)の化合物は、2−ブロモ−2−シクロペンテン−1−オン、2−ブロモ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−ヨード−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンからなる群から選択されたことを特徴とする請求項1または3に記載の製造方法。
【請求項11】
前記化学式(4)の化合物は、アセトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒドからなる群から選択されたことを特徴とする請求項1、3及び7のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
,Rは、メチルである請求項1、3、4、6、7、8、9のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
,Rは、メチルであり、Rは、水素であり、Rは、水素、メチル、またはフェニルである請求項1、3、4、7、8、9のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
,R,Rがいずれもメチルであり、Xは、臭素である請求項1、3、6、7、8、9のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
,Rは、いずれもメチルであり、R,Rは、水素である請求項1、3、4、7、8、9のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
,Rは、メチルである請求項2または5に記載の化合物。
【請求項17】
,Rは、メチルであり、Rは、水素であり、Rは、水素、メチル、またはフェニルである請求項2または5に記載の化合物。
【請求項18】
,Rは、いずれもメチルであり、R,Rは、水素である請求項2に記載の化合物。

【公表番号】特表2006−514120(P2006−514120A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518461(P2005−518461)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002614
【国際公開番号】WO2005/035470
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】