説明

フレキシブルパイプの製造方法

1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマー、又は1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマーと1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーとの混合物からなるポリマー部分(a)、ASTM 926試験法によって測定される最小ウイリアムズ可塑度が30であり、且つ1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン(b)、1分子あたり平均少なくとも2つの、水素原子に直接結合したケイ素原子を有するオルガノヒドリドケイ素化合物(c)、ヒドロシリル化触媒(d)を含む組成物からフレキシブルパイプを製造する方法であって、(i)触媒(d)の存在下で化合物(b)及び(c)の架橋によって得られる硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を供給すること、(ii)前記硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を前記ポリマー部分(a)に分散させ、熱可塑性エラストマーを得ること、及び(iii)前記熱可塑性エラストマーを、例えば、押出成形によってフレキシブルパイプに成形することを含む方法である。使用する熱可塑性エラストマー及び得られるパイプは、飲料水汚染との関連で規格KTW−270(A)の条件に適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル送水管(パイプ)、特に熱可塑性エラストマーから製造されるフレキシブル送水管の分野に関する。特に、フレキシブルパイプ又はパイプラインは、液体(好ましくは水、特に飲料水)の輸送のために使用されることができ、主に圧力下及びそれが加熱される時にその輸送のために使用されることができる。より正確に言うと、本発明の対象は、圧力下における飲料水又は流体の輸送用フレキシブルパイプの製造のための熱可塑性エラストマーの使用、及び当該熱可塑性エラストマーから調製されるフレキシブルパイプである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックやエラストマーなどの有機材料は、送水の管理においてますます重要な役割を果たしている。これらの製品は、それらの取扱いを容易にする軽さ、それらの成形を容易にする熱成形の適合性、及び溶接なしの接続の容易さが特に評価されている。
【0003】
温水輸送の観点から、有機材料の選択は、選択された材料が高圧及び高温の同時ストレス(応力)に耐えなければならないため、冷水輸送の場合よりも明らかに厳しく制限される。この分野で最も一般に使用される有機材料は、1−ポリブテン(ISO 15876)、PE−X(ISO 15875)、PE−RT(ISO 22391)及びポリプロピレン(ISO 15874)である。
【0004】
しかしながら、これらの有機材料は、ある程度の柔軟性を有するが、フレキシブルパイプ又はホース(例えば、衛生設備と飲料水流通網との間の接続を作るものなど)の製造に適していないことがわかった。したがって、これらのホース又はパイプは、一般に、その端部で接続部をもつ金属組み紐(metal braiding)中に包まれたゴム管を含む可変直径及び可変長のフレキシブルパイプの形である。使用されるゴムは、一般に、良好なコスト/性能の妥協点(compromise)を示すEPDMゴムである。
【0005】
パイプ又はパイプラインの成分材料による水の非汚染に関して、飲料水の輸送のための条件が存在する。特に、食用を対象とした水との永続的又は一時的な接触があるなら、例えば、欧州共同体において適用される指針及び欧州における飲料水の品質に対するEFTA規則に従い、ホースは飲料水の品質を危険にさらしてはならない。しかしながら、飲料水パイプ網(piping network)の認可についての一方的な欧州の規格は今のところ存在しない。この状況を是正するために、欧州委員会は、産業共同研究センター(欧州委員会)により支持される、食用を対象とした水と接触する装置及び製品を試験するための既存の国家認可手続と調和させることを目的として、200年6月に欧州認可システム(EAS)を始めた。4つのワーキンググループ内で必要な研究開発を行うため、各加盟国において飲料水の品質に対して責任のある認可機関に協定を置いた。飲料水システムの証明のための国家手続は、当該システムが発効するまで適用され続ける。欧州において、国家の飲料水管理及び認可機関は、以下の通りである。オランダではKIWA N.V.;フランスではサントル・ドゥ・ルシェルシュ・エ・ドゥ・コントロール・デ・ゾ・ドゥ・パリ及びラボラトワール・ディジェーヌ・エ・ドゥ・ルシェルシュ・オン・サンテ・ピュブリック;英国ではWRcpic;オーストリアではOVGW−エスタライヒッシェ・フェアアイニグング・フェア・ダス・ガス・ウント・ヴァッセルファッハ;独国ではDVGW−テクノロジーツェントルム・ヴァッセル;デンマークではダンスク・トクシコロジ・センター(Dansk Toksikologi Center);スペインではバルセロナ自治大学;イタリアでは高等厚生研究所;スウェーデンではスウェーデン国立検査・研究所(SP:Swedish National Testing and Research Institute);ポルトガルではエンプレサ・ポルトゥゲザ・ダス・アグアス・リブレス,SA(Empresa Portuguesa das Aguas Livres, SA)である。
【0006】
その結果、飲料水の輸送用の装置又はパイプラインの製造業者は、製造される製品、並びに水の衛生及び品質に対して責任のある国家及び国際機関からの組み立てられたシステムのための認可を得なければならない。結局、最も厳しい国家規格が、欧州のレベルで採用されると予測され得る。2008年以来、独国の機関DVGWが、そのKTW270規格を、飲料水の輸送の条件をクラスCからクラスAまで変えることによってより厳しくした。この新しい条件は、その組成のためにクラスAの下で要求されるTOC(全有機体炭素)値を満たすことができないEPDMを排除した。
【0007】
この新しい規則に沿って、独国市場用ホースの製造業者は、KTW−270(A)認可材料に切り替えざるを得ず、その選択が非常に限定される。それは、特定の白金硬化シリコーンゴム、並びにいくつかのPEX−B及びPEX−Cに制限される。サントプレン(Santoprene)XF241−80EuなどのいくつかのTPEは、冷水の輸送のために認可されているKTW−270(A)のみである。数が少ないことに加えて、これらの材料は、EPDMゴムのものとは非常に異なる技術的/経済的な特性をしばしば有する。シリコーンゴムは、ホース1メートルあたり、EPDMゴムよりも約3倍高価である。PEXは、EPDMよりも硬く、小さな直径のホースに柔軟性を十分に与えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、PEXよりも柔軟であり、且つ好ましくはEPDMと同程度の価格で、温水輸送用のホース並びにフレキシブルパイプ及びパイプラインを製造することを可能にする材料が実際に必要とされている。
【0009】
したがって、本発明は、第1の態様において、圧力下での温水又は流体の輸送用パイプの製造のための使用と適合する、高温及び圧力下で柔軟性及び機械的特性を有することを必要とする熱可塑性エラストマーを含む組成物からフレキシブルパイプを製造する方法を与える。また、熱可塑性エラストマーは、飲料水汚染との関連で規格KTW−270(A)の条件に適合しなければならない。
【0010】
本発明の更なる目的は、熱可塑性エラストマーを含む当該組成物から製造されるフレキシブルパイプであって、産業上、経済的に製造し得るパイプを供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この背景と対照的に、本発明は、
a)1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマー、又は1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマーと1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーとの混合物からなるポリマー部分(a)、
b)ASTM 926試験法によって測定される最小ウイリアムズ可塑度(minimum Williams plasticity)が30であり、且つ1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン(b)、
c)1分子あたり平均少なくとも2つの、水素原子に直接結合したケイ素原子を有するオルガノヒドリドケイ素化合物(c)、
d)ヒドロシリル化触媒(d)
を含む組成物からフレキシブルパイプを製造する方法であって、
(i)触媒(d)の存在下で化合物(b)及び(c)の架橋によって得られる硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を供給すること、
(ii)前記硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を前記ポリマー部分(a)に分散させ、熱可塑性エラストマーを得ること、及び
(iii)前記熱可塑性エラストマーを、例えば、押出成形によってフレキシブルパイプに成形すること
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による使用に適した熱可塑性エラストマー材料は、国際公開第00/46291号の特許出願の比較例にある程度記載されている。かかる熱可塑性エラストマーは、PEXよりも柔軟である。また、パイプ又はホースに製造する場合、それは、冷たい又は温かい飲料水の輸送のための最も厳しい条件(例えば、規格KTW−270(A)など)に適合し得る。
【0013】
本発明の特定の実施形態によると、(d)の存在下での化合物(b)、(c)の架橋のプロセス工程は、溶融状態にあるポリマー部分(a)中での動的硬化(dynamic cure)によって起こり得る。
【0014】
本発明による方法に用いられる熱可塑性エラストマーは、予め硬化させた化合物(b)、(c)及び(d)を添加するか、又は化合物(b)、(c)及び(d)とポリマー部分とを直接混合し、次いで硬化することによって硬化ポリジオルガノシロキサンを得る、ポリマー部分(a)を含有する組成物から得ることができる。
【0015】
他のその態様によると、本発明は、上記した熱可塑性エラストマーから製造されるフレキシブルパイプを提供する。
【0016】
他のその態様によると、本発明は、上記した組成物の使用、又はフレキシブルパイプ(特に、圧力下での飲料水又は流体の輸送用フレキシブルパイプ)の製造のための、それから得られる熱可塑性エラストマーの使用に関する。
【0017】
本発明の方法で使用するための熱可塑性エラストマーは、
A1)1−ブテンモノマーの重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマー、又は1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマーと1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーとの混合物からなるポリマーマトリックス(a)、
B1)ヒドロシリル化触媒(d)の存在下で、以下の化合物(b)及び(c):
ASTM 926試験法によって測定される最小ウイリアムズ可塑度が30であり、且つ1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン(b)、
1分子あたり平均少なくとも2つの、水素原子に直接結合したケイ素原子を有するオルガノヒドリドケイ素化合物(c)
の硬化によって得られる硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)であって、前記硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)が前記ポリマーマトリックス(a)中に分散されることによって、硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を形成するための(d)の存在下での化合物(b)、(c)の硬化が、溶融状態にある前記ポリマーマトリックス(a)中での動的硬化によって起こる硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)
を含む。
【0018】
特定の実施形態によると、動的硬化は、共回転二軸押出機(co-rotating twin screw extruder)中で得られる。
【0019】
本発明による方法で使用するための熱可塑性エラストマーは、ポリマーマトリックス(a)を含有し、その中でポリジオルガノシロキサンの分布は概ね均一である。前記ポリマーマトリックスは、熱可塑性ポリマーからなり、必要であれば1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーと混合される。ポリマーマトリックスの熱可塑性ポリマー成分の少なくとも1つは1−ブテンポリマーであり、したがって、1−ブテンモノマーの単独重合又は共重合によって得られる。
【0020】
「相溶性」ポリマーは、比較的均一なポリマー混合物(entity)を与える(特に、溶融/硬化後)、すなわち、滲出、分離又は偏析現象なく、化学的適合性(主要な官能基が容易に混合され得ることを意味する)を有する2つのポリマーであると理解される。
【0021】
使用されるポリマーマトリックスは、1−ポリブテンのホモポリマー又は1−ポリブテンのコポリマー(例えば、より十分な柔軟性(pliability)及び屈曲性(flexibility)特性を有し得るエチレンとのコポリマー)であり得る。バセル(Basell)により販売されているPB0110Mは、1−ポリブテンのホモポリマーを例示するために挙げられ得る。この種のホモポリマーは、その曲げ弾性率によって決定される柔軟性又は屈曲性(23℃で規格ISO178に従って測定したときに450MPaである)、及び128℃の融点を有する。1−ポリブテンのコポリマーの柔軟性又は屈曲性は、コモノマー比が増加するにつれて増大し、反対に融点はコモノマー比と共に減少する。例えば、PB8640M(バセル)について、23℃で規格ISO178に従って測定された曲げ弾性率は250MPa、融点は114℃であり、また、DP8220M(バセル)について、23℃でISO178に従って測定された曲げ弾性率は140MPa、融点は97℃である。したがって、使用されるコポリマーに対する柔軟性の制限は、融点によって強いられ、温水輸送用の最も柔軟なコポリマーを除外する。本発明による方法で用いられる組成物は、柔軟性を達成するが、応用のために必要な温度耐性を危うくしない。温水輸送用のそれらの使用に適合させるために、ポリマーマトリックス(a)を作るポリマーは、95℃以上、好ましくは110℃以上の融点を有することが望ましい。
【0022】
また、1−ブテンのポリマーと1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーとの混合物を用いることも可能である。さらに、ポリマーマトリックスの柔軟性及び弾性特性を改善するために、ポリマー部分(a)は、23℃で規格ISO 178によって測定される最大曲げ弾性率が200MPaであるか、又は23℃で規格ISO 868によって測定される最大ショアA硬度が40である、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーと混合された、1−ポリブテンのホモポリマー又はコポリマーであることが可能である。
【0023】
特に、ポリマー部分(a)は、1−ポリブテンのホモポリマー又はコポリマーと、スチレンブロックコポリマー類からのエラストマーとの混合物であり得る。1つの実施形態によると、スチレンブロックコポリマー類からのエラストマーは、水素化され、且つ好ましくはSEEPS(スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)及びSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)のポリマーから選択される。SEEPSとしては、株式会社クラレのセプトンS4000シリーズ(family)が挙げられ、SEPSとしては、株式会社クラレのセプトンS2000シリーズ又はクレイトンポリマー(Kraton Polymers)のクレイトンGシリーズが挙げられ、SEBSとしては、株式会社クラレのセプトンS8000シリーズ又はクレイトンポリマーのクレイトンGシリーズが挙げられる。また、ポリマー部分(a)は、1−ポリブテンのホモポリマー又はコポリマーと、オレフィン系コポリマー類、好ましくはプロピレン系コポリマーからのエラストマーとの混合物であり得る。プロピレン系コポリマーとしては、プロピレンとエチレンとのコポリマーや、プロピレンとエチレンと1−ブテンとのターポリマーが挙げられる。このようなオレフィン系ポリマーは、Hifax(登録商標)<供給業者:バセル>、Adflex(登録商標)<供給業者:バセル>、Softell(登録商標)<供給業者:バセル>、Vistamaxx(登録商標)<供給業者:エクソンケミカル>、及びVersify(登録商標)<供給業者:ダウケミカル)のシリーズのものによって具体的に例示される。
【0024】
1−ブテンの熱可塑性ポリマーに加えて、前述の熱可塑性エラストマーポリマーの混合物、特に、スチレンポリマーと混合したオレフィン系ポリマーを使用することも可能である。
【0025】
ポリマー部分(a)100重量部あたり、
・40〜100重量部、より好ましくは40〜80重量部の1−ポリブテンのポリマー
・0〜60重量部、より好ましくは20〜60重量部の1種以上の他の相溶性熱可塑性ポリマー
を使用することが好ましい。
【0026】
1−ポリブテンのポリマーが1−ブテンのホモポリマーであるなら、それは、1−ポリブテンのポリマーが1−ブテンのコポリマーである場合よりもポリマー部分(a)の重量パーセントが少ないことを一般に意味するであろう。
【0027】
ダウコーニング名義の米国特許第6,013,715号は、ヒドロシリル化硬化ポリジオルガノシロキサンが分散されているポリオレフィン又はポリエステル系マトリックスからなる組成物、及びその組成物の調製方法を開示する。しかしながら、その文献中に明確に記載されている材料は、90℃以下の温度で耐クリープ性であると共に、圧力ストレスに対して高耐性である柔軟性材料を要求する、圧力下での温水輸送用フレキシブルホース又は流体輸送用フレキシブルホースの製造に適していない。米国特許第6,013,715号に記載されている組成物は同時に、上述の条件に適合し得ない。
【0028】
米国特許第6,013,715号は、ポリジオルガノシロキサンを硬化して、未硬化ポリジメチルシロキサン(PDMS)をもつ同じ組成物よりも高い機械的特性(特に、引張応力挙動)をもつ熱可塑性エラストマー材料を得ることを記載する。しかしながら、その特許ではマトリックスがごく一般的に記載されており、応用又は当該製品から製造された物品についての言及もない。それにも関わらず、その文献は、本発明の目的のために使用されるポリジオルガノシロキサン(b)、オルガノヒドリドケイ素化合物(c)及びヒドロシリル化触媒に関して言及し得る。その特許中のこれらの化合物に与えられる記載を以下で再び述べる。
【0029】
ポリジオルガノシロキサン(b)は、ほとんどの場合及び好ましくは、分子中に2〜20個の炭素原子を一般に有する少なくとも2つのアルケニル基を含有する、ゴムタイプ(すなわち、高粘度、典型的には25℃で100,000mPa・s以上の粘度を有する)のポリマー又はコポリマーである。アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル及びデセニル基が具体的に挙げられる。アルケニル官能基の位置は重要ではなく、分子鎖末端ユニットで、分子鎖の非末端位置で、又は両方の位置で結合し得る。アルケニル基がビニル又はヘキシルであること、及びこの基がポリジオルガノシロキサンゴム中で0.001〜3重量%、好ましくは0.01〜1重量%のレベルで存在することが好ましい。最も好ましくは、シロキサン(b)あたり平均2つのアルケニル基が存在する。
【0030】
成分(b)中の残りの(すなわち、非アルケニル)ケイ素結合有機基は、例えば、脂肪族不飽和を含有しない炭化水素又はハロゲン化炭化水素基から独立して選択される。これらとしては、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル);シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル及びシクロヘプチル);6〜12個の炭素原子を有するアリール基(例えば、フェノール、トリル及びキシリル);7〜20個の炭素原子を有するアラルキル基(例えば、ベンジル及びフェネチル);及び1〜20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル及びクロロメチル)が具体的に挙げられる。もちろん、これらの基は、ポリジオルガノシロキサンゴム(b)が室温未満のガラス転移温度(又は融点)を有し、したがって当該ゴムがエラストマーであるように選択されることが理解されるであろう。メチル基は、成分(b)において、少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%の飽和(non-unsaturated)ケイ素結合有機基を構成する。
【0031】
したがって、ポリジオルガノシロキサン(b)は、かかる有機基を含有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであり得る。かかるポリマーの例としては、数ある中でも、ジメチルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位を含むゴム;ジメチルシロキシ単位及びジフェニルシロキシ単位を含むゴム;並びにジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位を含むゴムが挙げられる。また、分子構造は重要ではないが、直鎖構造や部分的に分岐した直鎖構造が例示され、線形構造が好ましい。
【0032】
ポリジオルガノシロキサン(b)の具体例としては、トリメチルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;トリメチルシロキシ末端封鎖メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;ジメチルビニルシロキシ末端封鎖ポリジメチルシロキサン;ジメチルビニルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;ジメチルビニルシロキシ末端封鎖ポリメチルフェニルシロキサン;ジメチルビニルシロキシ末端封鎖メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;少なくとも1つの末端基がジメチルヒドロキシシロキシである類似のコポリマーが挙げられる。低温での応用に好ましい系としては、メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、及びジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマーが挙げられ、特にその中でのジメチルシロキサン単位のモル含有量は約93%である。
【0033】
また、成分(b)は、2種以上のポリオルガノシロキサンの組み合わせから構成されてもよい。最も好ましくは、成分(b)は、分子の各末端においてビニル基で封鎖されているポリジメチルシロキサンホモポリマー、又は主鎖に沿って少なくとも1つのビニル基も含有するホモポリマーである。
【0034】
本発明の目的のために、ポリジオルガノシロキサンゴムの分子量は、米国材料試験協会(ASTM)試験法926によって測定されるウイリアムズ可塑度が少なくとも30となるのを与えるのに十分な範囲である。可塑度は、本発明の目的のために、円筒状試験片(体積2cm3、及び高さ約10mm)に25℃で49Nの圧縮荷重を3分間加えた後、円筒状試験片の厚さ(ミリメートル単位)を100倍したものと定義した。この成分の可塑度が約30未満であると、動的加硫によって調製される、熱可塑性材料とシロキサン材料との混合物を含有する組成物が不十分な均一性を示し、高シリコーン含有量(例えば、30〜70重量%)で本質的にシリコーンのみの領域と本質的に熱可塑性樹脂のみの領域とが存在し、混合物が脆弱で脆くなる。成分(b)の可塑度に対する絶対的な上限はないが、従来の混合装置における処理可能性の実施上の配慮が、この値を制限する。可塑度は、好ましくは約50〜200、最も好ましくは約50〜185であるべきである。
【0035】
本発明によって用いられるポリジオルガノシロキサンの調製方法は、当該技術分野において周知である。例えば、アルケニル官能性ポリマーの典型的な調製方法は、類似のアルケニル官能性種の存在下での環状及び/又は線状ポリジオルガノシロキサンの塩基触媒平衡を含む。
【0036】
オルガノヒドリドケイ素化合物(c)は、本組成物のポリジオルガノシロキサンのための架橋剤(硬化剤)である。それは、一般に、各分子中に少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンであるが、このオルガノポリシロキサンは、少なくとも約0.2重量%、好ましくは0.2〜2重量%、最も好ましくは0.5〜1.7重量%の、ケイ素に結合した水素を有する。もちろん、当業者は、ポリジオルガノシロキサンが硬化されるなら、成分(b)若しくは成分(c)のいずれか、又は両方が、2を超える官能性を有さなければならない(すなわち、これらの官能性の合計が平均で4を超えなければならない)ことを十分理解するであろう。成分(c)におけるケイ素結合水素の位置は重要でなく、分子鎖末端、分子鎖に沿った非末端位置、又は両方の位置に結合し得る。成分(c)のケイ素結合有機基は、ポリジオルガノシロキサン(b)との関連で上記した炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基のいずれかから独立して選択される。成分(c)の分子構造もまた重要でなく、直鎖構造、部分的に分岐した直鎖構造、分岐構造、環状構造及び網状構造が例示され、線状ポリマー又はコポリマーが好ましい。成分(c)は、硬化するポリジオルガノシロキサン(b)と完全に相溶性であるべきである。
【0037】
成分(c)は以下により例示される。
・PhSi(OSiMe2H)3などの低分子量シロキサン
・トリメチルシロキシ末端封鎖ポリメチルヒドリドポリシロキサン
・トリメチルシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサンメチル−ヒドリドシロキサンコポリマー
・ジメチルヒドリドシロキシ末端封鎖ポリジメチルポリシロキサン
・ジメチルハイドロジェンシロキシ末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン
・ジメチルヒドリドシロキシ末端封鎖ジメチルシロキサン
・メチルヒドリドシロキサンコポリマー
・環状メチルハイドロジェンポリシロキサン
・環状ジメチルシロキサン−メチルヒドリドシロキサンコポリマー
・テトラキス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン
・(CH32HSiO1/2単位、(CH33SiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるシリコーン樹脂
・(CH32HSiO1/2単位、(CH33SiO1/2単位、CH3SiO3/2単位、PhSiO3/2単位及びSiO4/2単位からなるシリコーン樹脂
ここで、Me及びPhはそれぞれ、以下、メチル基及びフェニル基を意味する。
【0038】
特に好ましいオルガノヒドリドケイ素化合物は、R3SiO1/2又はHR2SiO1/2の末端を有する(ended)RHSiOをもつポリマー又はコポリマーである。ここで、Rは、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル又はトリフルオロプロピルから独立して選択され、好ましくはメチルである。また、成分(c)の粘度は、コーンプレートスピンドルをもつブルックフィールド(登録商標)HB DV−II+PROを用いて5rpmの速度で測定したときに、25℃で約0.5〜1,000mPa・s、好ましくは2〜500mPa・sであることが好ましい。さらに、この成分は、0.5〜1.7重量%の、ケイ素に結合した水素を好ましくは有する。成分(c)は、0.5〜1.7重量%の、ケイ素に結合した水素を有すると共に、コーンプレートスピンドルをもつブルックフィールド(登録商標)HB DV−II+PROを用いて5rpmの速度で測定したときに25℃で2〜500mPa・sの粘度を有する、メチルヒドリドシロキサン単位から本質的になるポリマー又はジメチルシロキサン単位とメチルヒドリドシロキサン単位とから本質的になるコポリマーから選択されることが極めて好ましい。このような極めて好ましい系は、トリメチルシロキシ又はジメチルヒドリドシロキシ基から選択される末端基を好ましくは有するであろう。
【0039】
また、成分(c)は、上記系の2種以上の組み合わせでもあり得る。オルガノヒドリドケイ素化合物(c)は、成分(b)中のSi−アルケニルに対する成分(c)中のSiHのモル比が1よりも大きく、そして好ましくは約50未満、より好ましくは1〜20の範囲内、最も好ましくは6〜12の範囲内であるようなレベルで用いられる。
【0040】
これらのSiH官能性物質は当該技術分野において周知であり、それらの多くが市販されている。
【0041】
また、成分(b)のアルケニル基及び成分(c)の水素結合ケイ素原子を交換することも可能である。言い換えると、当業者は、水素原子に結合したケイ素原子を含有し、且つアルケニル基を含有しない成分(b)について上記した種類の高分子量シロキサンと、アルケニル基を含有し、且つ水素原子に結合したケイ素原子を含有しない硬化用成分(c)とを使用し得る。
【0042】
ヒドロシリル化触媒(d)は、アルケニル基と水素原子に結合したケイ素原子との間の反応によってポリジオルガノシロキサン(b)の硬化反応を促進する触媒である。このヒドロシリル化触媒は、好ましくは、白金系触媒(例えば、白金黒、シリカに担持した白金、炭素に担持した白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金/オレフィン錯体、白金/アルケニルシロキサン錯体、白金/β−ジケトン錯体、白金/ホスフィン錯体など)、ロジウム系触媒(例えば、塩化ロジウム、塩化ロジウム/ジ(n−ブチル)スルフィド錯体など)、及びパラジウム系触媒(例えば、パラジウム炭素、塩化パラジウムなど)であり得る。成分(d)は、好ましくは、塩化白金酸;二塩化白金;四塩化白金;ウィリング(Willing)により公表された米国特許第3,419,593号にしたがって調製される、塩化白金酸と、ジメチルビニルシロキシ末端封鎖ポリジメチルシロキサンで希釈されるジビニルテトラメチルジシロキサンとの反応によって生じる白金系錯体触媒;ブラウンらにより公表された米国特許第5,175,325号にしたがって調製される、塩化第1白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中性錯体などの白金系触媒である。上記の特許は、参照によって本明細書中に援用される。最も好ましくは、触媒(d)は塩化第1白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中性錯体である。
【0043】
成分(d)は、成分(b)及び(c)の反応を促進することによってポリジオルガノシロキサンを硬化するのに十分な触媒量で本組成物に加えられる。例えば、触媒は、熱可塑性エラストマー組成物の全重量を基準として、約0.1〜500ppm、好ましくは0.25〜2550ppmを与えるように典型的に加えられる。
【0044】
本発明による方法における使用のための熱可塑性ポリマーの調製については、以下の使用が好ましい。
・89〜26重量%、好ましくは70〜40重量%のポリマー部分(a)(1−ポリブテンのポリマーからなる。必要なら1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーと混合される)
・10〜70重量%、好ましくは15〜45重量%のポリジオルガノシロキサン(b)
・0.3〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%のオルガノヒドリドケイ素化合物(c)
【0045】
(b)及び(c)の相対的比率は、(b)のビニルモル比及び(c)のSiHモル比に依存し、それは一般的に1:1〜1:20の比率、好ましくは1:6〜1:12の比率である。
【0046】
触媒は、化合物(b)及び(c)を硬化するのに十分な量で存在する。もし触媒(d)が白金錯体であるなら、0.015〜0.15重量%が好ましく使用され、それが白金金属であるなら、0.000075〜0.00075重量%が好ましく使用される。成分(a)、(b)、(c)及び(d)について上記で与えられる重量パーセントは、組成物の全重量を基準とした重量パーセントである。
【0047】
本発明による方法において使用するための組成物は、独立して以下のものを含むことが好ましい。
・ポリジオルガノシロキサン(b)として、ジメチルシロキサンコポリマー、特に、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位とを含むコポリマー
・オルガノヒドリドケイ素化合物(c)として、メチルヒドリドシロキサンコポリマー、特に、ジメチルシロキサン単位とメチルヒドリドシロキサン単位とを含有するコポリマー
・ヒドロシリル化触媒(d)として、白金触媒
【0048】
本発明による方法において使用するための熱可塑性エラストマーはまた、1種以上の添加物(例えば、光安定剤、化学安定剤)を含有し得る。特に、これらの各添加物は、組成物の全重量を基準として0.1〜0.5重量%のレベルで存在し得る。他の可能性のある添加物としては補強材(特に、粉末状フィラータイプ)が挙げられ、これは、使用するポリジオルガノシロキサン(b)の量を基準として200重量%以下の量で存在し得る。
【0049】
光安定剤は、立体障害の大きなアミン、ベンゾフェノン及びベンゾトリアゾール(単独又は混合される)によって例示される。
【0050】
化学安定剤は、フェノール誘導体及び亜リン酸誘導体によって例示される。特に、これらの各化学安定剤又は光安定剤は、組成物の全重量を基準として0.1〜0.5重量%のレベルで存在し得る。
【0051】
補強材を含有する組成物は、当該補強剤を使用しないものに比べて改善された機械的特性を有する。この任意成分は、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、カーボンブラック、又はポリジオルガノシロキサン(b)を補強することが知られている任意の他の充填材から一般に選択される任意の公知の充填材であることができる。当該充填材は、微細な熱安定無機物(例えば、少なくとも約50m2/gの比表面積を有する、シリカの燻蒸タイプ及び沈降タイプ、シリカエーロゲル及び二酸化チタン)から好ましくは選択される。シリカの燻蒸タイプは、その大きな表面積(450m2/g以下であり得る)に基づく好ましい補強材であり、50〜400m2/g、最も好ましくは200〜380m2/gの表面積を有するヒュームドシリカが極めて好ましい。使用される場合、補強材は、成分(b)100重量部ごとに、約200重量部以下、好ましくは5〜150重量部、最も好ましくは20〜100重量部のレベルで加えられる。
【0052】
本発明による方法での使用のために、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリマー(a)中にポリジオルガノシロキサン(b)を十分に分散させ、オルガノヒドリドケイ素化合物(c)及び触媒(d)を用いてポリジオルガノシロキサンを動的加硫することによって好ましくは調製される。混合は、樹脂中の成分を均一に分散し得る任意の装置(例えば、内部ミキサー、又は2軸押出機(好ましくは共回転二軸押出機)が挙げられるが、後者の方が市販品(commercial preparations)のために好ましい)中で行われる。温度は、樹脂が分解しないように、良好な混合と調和する範囲で出来る限り低く保持することが好ましい。混合の順序は重要でなく、例えば、成分(b)及び(c)を別々に導入し、動的加硫が始まる前に熱可塑性樹脂と混合することができる。しかしながら、成分(b)及び(c)は、触媒(d)が加えられて動的加硫が始まる前に、熱可塑性物質(a)中に十分に分散させるべきである。最適な温度、混合時間、及び混合操作の他の条件は、対象とする特定の樹脂及び他の成分に依存し、これらは、当業者による日常実験によって決定され得る。
【0053】
本発明の目的のために、規格KTW270(A)の認可条件に適合する熱可塑性エラストマーを使用することができる。このような熱可塑性エラストマーは、所望の柔軟性(flexibility properties)を有し、90℃以下の温水の輸送のための機械的圧力及び温度条件を満たす。
【0054】
したがって、本発明の目的のために、以下の特徴を有する熱可塑性エラストマーを使用することができる。
・規格ISO178に従って注入された試料について23℃で測定したときに、200MPaの最大曲げ弾性率を有する
・規格ISO527に従って500mm/mnで注入されたH5Aタイプの試料について測定したときに、15MPaの最小圧縮強度を有する
・規格W−270に従う注入プレートについての測定により、規格DVGW W270に関連した認可条件に適合する
【0055】
本発明による方法は、フレキシブルパイプを製造するために、成形プロセス、特に押出成形プロセスにおいて熱可塑性エラストマーを使用する工程を含む。当業者は、当該技術分野において周知且つ示されている当該押出プロセスを十分に熟知しているであろう。結果として得られるフレキシブルパイプは、流体、特に水の輸送用パイプに一般に使用される寸法を有することができる。例えば、特に、フレキシブルパイプは、1.5mm〜5mmの肉厚、及び6mm〜32mmの内径を有する。本発明のこの方法によって製造されるフレキシブルパイプは、以下の同時に存在する温度、時間及び圧力条件に対して耐性であることを示す。
・93℃、1時間、50bar
・93℃、10分、90bar
【0056】
また、本発明のこの方法によって製造されるフレキシブルパイプは、認可機関(例えば、独国のLGA)により指定される圧力又は温度サイクル試験に対して耐性であること、及び規格KTW−270(A)との関連で組成物を用いて得られるフレキシブルホースのための認可条件を満たすことを示す。
【0057】
したがって、この熱可塑性エラストマー材料は、従来のEPDMゴムの代替として、フレキシブルパイプを製造するための本発明による方法において使用され得る。これは、規格KTW−270(A)の下での認可が要求される場合に特に重要である。上記で特定された熱可塑性エラストマーは、温水の輸送と適合する高圧及び高温条件におけるその優れた機械的特性のため、他の熱可塑性エラストマーから区別できるのに対し、他の熱可塑性物質の使用は、冷水の輸送に限定される。
【0058】
本発明による方法は、パイプ状の成形(押出)物品の製造における上記の組成物から得られた熱可塑性エラストマーの使用を含む。熱可塑性エラストマーは、好ましくはモールディングによる後の成形に適した形態(好ましくは粒状)で与えられる。したがって、本方法は、熱可塑性エラストマーを顆粒(例えば、粒状のマスターバッチ)に製造する更なる工程を含み得る。次に、この顆粒は、成形/押し出し装置で与えられてもよく、ここで、顆粒は、成形(好ましくは押出成形)によって、飲料水の輸送用(特に、85℃以下の温度条件で水を送るための)フレキシブルパイプを製造するために使用されるであろう。
【0059】
本発明によるパイプは、押出成形によって製造し得る。パイプの内部寸法は、導水管に用いられる標準的な寸法に対応し得る。使用される任意の特定の化合物の物理的機械的性質は公知であり、したがって、運転圧力がわかった時点で、要求されるパイプの厚さを計算することは容易である。したがって、金属パイプに依然としてよくあることだが、一定数の標準的な種類及びサイズのパイプを有することが可能であるだろう。
【0060】
パイプは、保存を容易にするためにコイル状にし得る適切な長さで製造されるであろうことが予測される。次に、場所に容易に運搬可能なコイルは、要求される長さのパイプ部分に切断されることができ、任意の必要なジョイント、分岐部(blanches)、二分岐連結部及び三分岐連結部が容易に適合することができる。
【0061】
本発明によるパイプの取り付けは、比較可能なサイズの金属パイプと比べて、パイプの軽量化及びパイプの柔軟性によって非常に容易になる。フレキシブルパイプの長さは、電線と同様の方法で(例えば、従来のフレキシブル金属リーダー(leader)を用いて)狭いダクト又はチャンネルの間に容易に供給し得る。また、パネル又は打設区域(cast sections)中にパイプを埋め込み易く、そして、バルブ、コック、流量計など、及び消費設備(consumption installations)に隣接するパイプの末端部に必要な取付部材(fittings)に適合し易い。
【0062】
さらに、パイプの柔軟性は、より幅広い作業性(manoeuvrability)及びより多くの空間を与える。したがって、多大な時間を必要とすると共に、屈曲半径が極端すぎる際に時々パイプのねじれ又は破壊をもたらす金属パイプの手作業による曲げ、又は空間が制限される場所(例えば、浴室又はシャワーユニットを設置する場合)での接続をもたらす幾つかの連結部材の使用が、自動的に曲がってあらゆる方向転換に順応し、パイプの位置及び長さに応じて最善の形態をとる本発明によるフレキシブルパイプの使用によって避けられる。
【0063】
さらに、パイプの柔軟性は、衛生器具の特定の特徴的な部品を排除する機会を与える。いわゆる「接続部(connections)」、すなわち、給湯器用のフレキシブル銅パイプを、同程度のサイズの本発明によるフレキシブルパイプによって置換することができ、ネジ式壁取付金具及び設置用取付部材を末端部に容易に接続することができる。フレキシブルパイプは、接続の際にいつも行われるクロムメッキの費用を節約するが、美的要求が特に厳しいなら、適切なフレキシブル金属被覆(例えば、網状被覆(braided covering))でパイプをコーティングしてもよい。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は本発明を説明し、これには全く制限されない。全てのパーセント及び部は、他に示さない限り、重量基準で与えられる。
【0065】
処方物を使用して顆粒を製造した。ここで、顆粒は、共回転二軸押出機中での動的硬化によって得られた。チューブの製造のために、成形操作(今回のケースでは押出成形)において顆粒をまとめた。
【0066】
顆粒の製造は以下の通りである。
成分(a)を形成するポリブテン及び相溶性ポリマーを、複数の計量ユニットを用いるか、又は単一の計量ユニットにプレミックスとして押出機の入口に別々に入れた。次に、成分(b)及び(c)を一緒に又は別々に押出機に入れた。(a)、(b)、(c)の混合物が均一になったら、成分(d)を導入し、成分(b)を硬化すると共にその分散を保持するのに適切な剪断速度で混合を続けた。スクリュープロファイルと称される押出機スクリューの形状及び計量ユニットの位置は、最適な混合及び組成物の硬化を得るように設計した。以下の4つの組成物をW&P押出機で押出成形した(長さ25mm、L/D=36)。9つの可塑化シリンダーの温度プロファイルは、200℃で1つのダイを用い、150℃〜200℃の間で段階的に行った。スクリュー速度は250rpmであり、流量は18kg/hである。
【0067】
押出機の出口で、穴のあいたダイを通して生成物が押出され、水中に浸漬されたGala型切断システムが顆粒を作ると共に冷却した。方法は、遠心分離して顆粒から水を分離し、次に流動床上に通して顆粒を乾燥させて終了した。次に、顆粒を袋につめた。
【0068】
チューブの製造
単一スクリュー押出機の供給システムに2〜3の最適圧縮比で顆粒を導入した。押出機は、当該技術分野において公知の管状ダイ(tubular die)で終わる。ダイを離れると、チューブが調整され、冷却水タンク中で冷却された。冷却ラインの終わりに、チューブをリールに巻きつけた。
【0069】
<実施例EX1>
・39%の1−ポリブテン(バセルからのPB−110M)
・12%のオレフィン系エラストマー(バセルからのHIFAX CA 7320A)
・23%のSEEPS(株式会社クラレからのセプトン4033)
・25%のビニルシリコーン(ダウコーニングからのSGM−11)
・0.95%の架橋剤(ダウコーニングからの7678)
・0.05%の白金触媒(ダウコーニングからの4000)
【0070】
<実施例EX2>
・39%の1−ポリブテン(バセルからのPB−8640M)
・12%のオレフィン系エラストマー(バセルからのHIFAX CA 7320A)
・23%のSEEPS(株式会社クラレからのセプトン4033)
・25%のビニルシリコーン(ダウコーニングからのSGM−11)
・0.95%の架橋剤(ダウコーニングからの7678)
・0.05%の白金触媒(ダウコーニングからの4000)
【0071】
<比較例EXA>
・44%のポリプロピレン(バセルからのHIFAX CA 7320A)
・21%のSEEPS(株式会社クラレからのセプトン4033)
・25%のビニルシリコーン(ダウコーニングからのHS−71)
・0.95%の架橋剤(ダウコーニングからの7678)
・0.05%の白金触媒(ダウコーニングからの4000)
【0072】
<比較例EXB>
・44%のHDPE(ポリメリ(Polimeri)からのEradene ML74)
・21%のSEEPS(株式会社クラレからのセプトン4033)
・34%のビニルシリコーン(ダウコーニングからのHS−71)
・0.95%の架橋剤(ダウコーニングからの7678)
・0.05%の白金触媒(ダウコーニングからの4000)
【0073】
Ex1、Ex2、ExA、ExBと呼ばれる4つの組成物を、上記の条件下で顆粒状に押出成形した。次に、顆粒をまとめ、8mmの内径をもつフレキシブルチューブを製造した。これらのチューブを使用し、規格DVGW W543に従って試験されるフレキシブル衛生パイプ(sanitary piping)の長さを作った。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
規格DVGW W543「飲料水供給システム用の耐圧性フレキシブルホースアセンブリ;条件及び試験」に従って試験を行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマー、又は1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマーと1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーとの混合物からなるポリマー部分(a)、
ASTM 926試験法によって測定される最小ウイリアムズ可塑度が30であり、且つ1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン(b)、
1分子あたり平均少なくとも2つの、水素原子に直接結合したケイ素原子を有するオルガノヒドリドケイ素化合物(c)、
ヒドロシリル化触媒(d)
を含む組成物からフレキシブルパイプを製造する方法であって、
(i)触媒(d)の存在下で化合物(b)及び(c)の架橋によって得られる硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を供給すること、
(ii)前記硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を前記ポリマー部分(a)に分散させ、熱可塑性エラストマーを得ること、及び
(iii)前記熱可塑性エラストマーを、例えば、押出成形によってフレキシブルパイプに成形すること
を含む方法。
【請求項2】
前記ポリマー部分(a)は、1−ポリブテンのホモポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー部分(a)は、1−ポリブテンのコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー部分(a)は、23℃で規格ISO 178によって測定される最大曲げ弾性率が200MPaであるか、又は23℃で規格ISO 868によって測定される最大ショアA硬度が40である、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーと混合された、1−ポリブテンのホモポリマー又はコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー部分(a)は、1−ポリブテンのホモポリマー又はコポリマーと、スチレンブロックコポリマー類からのエラストマーとの混合物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スチレンブロックコポリマー類からのエラストマーは、水素化され、且つSEEPS(スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)及びSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)のポリマーから選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー部分(a)は、1−ポリブテンのホモポリマー又はコポリマーと、オレフィン系コポリマー類、好ましくはプロピレン系コポリマーからのエラストマーとの混合物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー部分(a)は、1−ポリブテンのホモポリマー又はコポリマー40〜100重量%と、1種以上の相溶性熱可塑性ポリマー0〜60重量%との混合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリジオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサン、好ましくはジメチルシロキサンコポリマー、最も好ましくはジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位とを含むコポリマーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記オルガノヒドリドケイ素化合物(c)は、メチルヒドリドシロキサンコポリマー、特にジメチルシロキサン単位とメチルヒドリドシロキサン単位とを含むコポリマーであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒドロシリル化触媒(d)は、白金触媒であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性エラストマーは、
A1)1−ブテンモノマーの重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマー、又は1−ブテンモノマーの単独重合若しくは共重合によって得られる熱可塑性ポリマーと1種以上の相溶性熱可塑性ポリマーとの混合物からなるポリマーマトリックス(a)、
B1)ヒドロシリル化触媒(d)の存在下で、以下の化合物(b)及び(c):
ASTM 926試験法によって測定される最小ウイリアムズ可塑度が30であり、且つ1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン(b)、
1分子あたり平均少なくとも2つの、水素原子に直接結合したケイ素原子を有するオルガノヒドリドケイ素化合物(c)
の硬化によって得られる硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)であって、前記硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)が前記ポリマーマトリックス(a)中に分散されることによって、硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)を形成するための(d)の存在下での化合物(b)、(c)の硬化が、溶融状態にある前記ポリマーマトリックス(a)中での動的硬化によって起こる硬化ポリジオルガノシロキサン(B1)
を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記動的硬化は、共回転二軸押出機中で起こる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜11に記載の組成物又は請求項12又は13に記載の熱可塑性エラストマーの、フレキシブルパイプを製造するための使用。
【請求項15】
前記フレキシブルパイプは、圧力下での飲料水又は流体の輸送用である請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2012−526666(P2012−526666A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508925(P2011−508925)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055856
【国際公開番号】WO2009/138470
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509305343)マルティベイス・ソシエテ・アノニム (2)
【氏名又は名称原語表記】MULTIBASE SA
【住所又は居所原語表記】Z.I. Chartreuse−Guiers, F−38380 St. Laurent du Pont, France
【Fターム(参考)】