フレキシブルプリント配線板およびその製造方法
【課題】耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)に優れたフレキシブル配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板1は、第1の基材4上に設けられた第1の接続配線部6を有する第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2の基材11上に設けられた第2の接続配線部14を有する第2のフレキシブルプリント配線板3を備えている。接着剤層5は、導電性微粒子24を含む異方導電性接着剤であり、導電性微粒子24は、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有している。また、第1、第2の接続配線部6、14の波打ち高さをW、第1、第2の接続配線部6、14を構成する導体配線25、26の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有する。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板1は、第1の基材4上に設けられた第1の接続配線部6を有する第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2の基材11上に設けられた第2の接続配線部14を有する第2のフレキシブルプリント配線板3を備えている。接着剤層5は、導電性微粒子24を含む異方導電性接着剤であり、導電性微粒子24は、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有している。また、第1、第2の接続配線部6、14の波打ち高さをW、第1、第2の接続配線部6、14を構成する導体配線25、26の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の部品として用いられるフレキシブルプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、電子機器の高密度化に伴い、例えば、電子機器類の可動部への配線などの用途に、フレキシブルプリント配線板が広く用いられている。また、電子機器類の小型化および高機能化に伴って、複数のフレキシブルプリント配線板を接続することにより形成された、種々の形状を有するフレキシブルプリント配線板が使用されている。
【0003】
複数のフレキシブルプリント配線板の接続構造としては、例えば、異方導電性接着剤を用いて、複数のフレキシブルプリント配線板を接続する構造が知られている。より具体的には、異方導電性接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、第1のフレキシブルプリント配線板の第1の基材上に設けられた第1の接続配線部と、第2のフレキシブルプリント配線板の第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を電気的に接続することにより、第1、第2のフレキシブルプリント配線板を接続する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−314216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載のようなフレキシブルプリント配線板においては、図13に示すように、第1、第2のフレキシブルプリント配線板48、49における第1、第2の接続配線部51、52を接続する際の加圧処理により、第1の接続配線部51を構成する導体配線53間(または、第2の接続配線部52を構成する導体配線54間)において、第1、第2の基材55、56の変形が発生するが、加圧処理時の圧力が大きいと、第1、第2の接続配線部51、52に形成される波打ち部57(即ち、第1、第2の接続配線部51、52を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材55、56の変形に伴い、第1、第2の接続配線部51、52に形成された段差部分)の高さVが大きくなる。従って、フレキシブルプリント配線板50の全体に対して、所定の温度(240℃〜260℃程度)でリフローを行うことにより、電子部品(不図示)を、フレキシブルプリント配線板50上に実装する際に、応力の開放に伴う第1、第2の基材55、56の反発力が大きくなる。その結果、フレキシブルプリント配線板50の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が低下することになり、図14に示すように、当該リフローを行う際に、第1、第2の接続配線部51、52において、第1、第2の基材55、56の剥離が発生してしまい、第1、第2の基材55、56と接着剤層58の間に、剥離部59が発生するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)に優れたフレキシブル配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ポリイミド樹脂製の第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、ポリイミド樹脂製の第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板と、を備えるフレキシブルプリント配線板において、第1の接続配線部と第2の接続配線部が、接着剤層を介して接続されており、接着剤層が、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤であり、導電性微粒子が、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有するとともに、第1、第2の接続配線部の波打ち部の高さをW、第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有することを特徴とする。なお、ここでいう「波打ち部」とは、第1、第2の接続配線部を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材の変形に伴い、第1、第2の接続配線部に形成された段差部分のことをいう。
【0008】
同構成によれば、加熱加圧処理により、第1、第2の接続配線部を、接着剤層を介して接続する際に、低い圧力(例えば、2MPa以下)で、第1、第2の接続配線部を接続することが可能になる。また、第1、第2の接続配線部を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材の変形が効果的に抑制されることになるため、所定の温度でリフローを行う際の、応力の開放に伴う第1、第2の基材の反発力が小さくなり、フレキシブルプリント配線板の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が向上することになる。その結果、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における、第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。
【0009】
また、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板は、上述のごとく、低い圧力により、第1、第2の接続配線部を接続でき、第1、第2の接続配線部を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材の変形を効果的に抑制することができる。従って、請求項2に記載の発明のように、第1、第2の基材の厚みが、25μm以下の場合や、請求項3に記載の発明のように、第1、第2の接続配線部の背面に他の接着剤層が設けられている場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。また、特に、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板であって、他の接着剤層のガラス転移温度が100℃以下の場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、第1の基材上に設けられた第1の接続配線部と第2の基材上に設けられた第2の接続配線部の間に、接着剤層を介して、加熱加圧処理を行うことにより、第1、第2の接続配線部を接続する工程を含み、第1、第2の接続配線部の接続後において、第1、第2の接続配線部の波打ち部の高さをW、第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係が成立するように、加熱加圧処理を行う際の圧力を調整して、第1、第2の接続配線部を接続することを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、加熱加圧処理により、第1、第2の接続配線部を、接着剤層を介して接続する際に、加圧処理による第1、第2の基材の変形が効果的に抑制されることになるため、所定の温度でリフローを行う際の、応力の開放に伴う第1、第2の基材の反発力が小さくなり、フレキシブルプリント配線板の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が向上することになる。その結果、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における、第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。なお、この場合、加熱加圧処理を行う際の圧力を、2MPa以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の基材上に設けられた第1の接続配線部と、第2の基材上に設けられた第2の接続配線部とを備えるフレキシブルプリント配線板において、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における、第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の構成を示す概略図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図5】図1のB−B断面の一部を示す部分断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板において使用される導電性微粒子を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の変形例を示す断面図である。
【図8】両面フレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板において、他の接着剤層を設けた場合の概略構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板において、他の接着剤層を設けた場合の概略構成を示す断面図である。
【図11】実施例1におけるフレキシブルプリント配線板に対して、リフローを行った後の状態を示す部分断面図である。
【図12】比較例1におけるフレキシブルプリント配線板に対して、リフローを行った後の状態を示す部分断面図である。
【図13】従来のフレキシブルプリント配線板を示す部分断面図である。
【図14】図13に示すフレキシブルプリント配線板に対して、リフローを行った後の状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の構成を示す概略図であり、図2は、図1のA−A断面図である。また、図3は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図であり、図4は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。また、図5は、図1のB−B断面の一部を示す部分断面図である。なお、本実施形態においては、片面フレキシブルプリント配線板と両面フレキシブルプリント配線板の接続を例に挙げて説明する。
【0015】
図1、図2に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、接着剤層5を介して、第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2のフレキシブルプリント配線板3が接着されたものである。
【0016】
第1のフレキシブルプリント配線板2は、柔軟な樹脂フィルムにて形成された第1の基材4上に(即ち、第1の基材4の片面に)、所定のピッチにより形成された導体配線25(後述の図5を参照)から構成される第1の接続配線部6を有する、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板であって、当該第1の接続配線部6を覆うように、絶縁層であるカバーレイフィルム7を設けたものである。なお、ここでいう「絶縁層」とは、第1の接続配線部6を保護するためのものをいい、カバーレイフィルム7や、後述のカバーコート層等を含むものである。
【0017】
また、図3に示すように、第1のフレキシブルプリント配線板2には、第1の接続配線部6を、第2のフレキシブルプリント配線板3に設けられた第2の接続配線部14(後述の図4参照)と電気的に接続すべく、カバーレイフィルム7を形成せずに外部に露出させた第1の接続部8が設けられている。なお、図3に示すように、本実施形態においては、当該第1の接続部8は、第1の接続配線部6と略同一の高さに設けられている。
【0018】
また、図3に示すように、カバーレイフィルム7は、第1の接続配線部6を覆うべく、第1の接続配線部6上に積層された接着剤層9とその上に積層された樹脂フィルム10により構成されている。
【0019】
第2のフレキシブルプリント配線板3は、柔軟な樹脂フィルムにて形成された第2の基材11上に(即ち、第2の基材11の両面の各々に)、所定のピッチにより形成された導体配線26(後述の図5を参照)から構成される第2の接続配線部14と導体配線部15を有する、いわゆる両面フレキシブルプリント配線板であって、当該第2の接続配線部14と導体配線部15を覆うように、その両面に2層の絶縁層であるカバーレイフィルム16、17を設けたものである。
【0020】
また、図4に示すように、第2のフレキシブルプリント配線板3には、第2の接続配線部14を、第1のフレキシブルプリント配線板2に設けられた第1の接続配線部6と電気的に接続すべく、カバーレイフィルム16を形成せずに外部に露出させた第2の接続部18が設けられている。なお、図4に示すように、本実施形態においては、当該第2の接続部18は、第2の接続配線部14と略同一の高さに設けられている。
【0021】
また、図4に示すように、カバーレイフィルム16、17のうち、カバーレイフィルム16は、第2の接続配線部14を覆うべく、第2の接続配線部14上に積層された接着剤層19とその上に積層された樹脂フィルム20により構成されている。また、カバーレイフィルム17は、導体配線部15を覆うべく、導体配線部15上に積層された接着剤層21とその上に積層された樹脂フィルム22により構成されている。
【0022】
そして、図2に示すように、第1のフレキシブルプリント配線板2に設けられた第1の接続配線部6と、第2のフレキシブルプリント配線板3に設けられた第2の接続配線部14が接着剤層5を介して接続される構成となっている。
【0023】
第1、第2の基材4、11を構成する樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルムなどの、フレキシブルプリント配線板用として汎用性のある樹脂のフィルムがいずれも使用可能である。また、特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているのが好ましく、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムやポリエチレンナフタレートが好適に使用される。
【0024】
また、本実施形態においては、第1、第2の基材4、11の表面に、銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を常法により露光、エッチングして、第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15を形成しても良いが、当該第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15を、導電性ペーストを印刷することにより形成することが好ましい。このような方法を使用することにより、金属箔を使用する際に必要な露光やエッチングが不要になるため、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3(即ち、フレキシブルプリント配線板1)の製造コストが安価になるからである。なお、導電性ペーストを印刷する方法としては、例えば、スクリーン印刷法や凹版印刷法が挙げられる。また、第1、第2の接続配線部6、14のいずれか一方のみを、導電性ペーストにより形成する構成としても良い。
【0025】
導電性ペーストとしては、例えば、導電性粉末、バインダー樹脂、硬化剤および溶剤を主成分とする熱硬化型の導電性ペーストが使用できる。ここで、導電性粉末としては、例えば、銀、ニッケル、銅を使用できる。また、バインダー樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂を使用することができる。また、硬化剤としては、例えば、バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を使用する場合にはイソシアネート化合物を使用することができ、エポキシ樹脂を使用する場合にはアミン化合物、イミダゾール化合物を使用することができる。さらに、溶剤としては、例えば、セロソルブ、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテートを使用することができる。そして、上述のスクリーン印刷法等により、導電性ペーストを、第1、第2の基材4、11の表面に塗布するとともに、加熱処理を施してバインダー樹脂を硬化させることにより、第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15が形成される。
【0026】
また、樹脂フィルム10、20、22としては、上述の第1、第2の基材4、11を構成する樹脂フィルムと同様のものを使用することができる。また、接着剤層9、19、21を構成する接着剤としては、柔軟性や耐熱性にすぐれたものが好ましく、かかる接着剤としては、例えば、ナイロン系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂系、アクリル樹脂系などの、各種の樹脂系の接着剤が挙げられる。
【0027】
なお、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3は、従来と同様にして製造することができる。即ち、例えば、第2のフレキシブルプリント配線板3においては、柔軟な樹脂フィルムにて形成された第2の基材11の両面の各々に、導電性ペーストを、上述のスクリーン印刷法により印刷することにより、各面に形成された第2の接続配線部14、および導体配線部15を有する両面板を作製する。次いで、この両面板の両面の各々に、接着剤層付きの樹脂フィルムをラミネートして、2層のカバーレイフィルム16、17を貼り合わせれば良い。
【0028】
次に、フレキシブルプリント配線板1の製造方法について説明する。本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板1は、第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2のフレキシブルプリント配線板3の間に接着剤層5を介して、圧着部材により加熱加圧処理を行うことにより、第1の基材4上に設けられた第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2の基材11上に設けられた第2の接続配線部14に形成された導体配線26の間を接続することにより製造される。
【0029】
より具体的には、第1のフレキシブルプリント配線板2の第1の接続部8上に、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする接着剤層5を載置し、当該接着剤層5を所定の温度に加熱した状態で、第1の基材4の方向へ所定の圧力で加圧し、接着剤層5を第1の接続部8上に仮接着する。次いで、第2のフレキシブルプリント配線板3を下向き(フェースダウン)にした状態で、第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2の接続配線部14に形成された導体配線26との位置合わせをしながら、第2のフレキシブルプリント配線板3の第2の接続部18を接着剤層5上に載置することにより、第1、第2の接続配線部6、14間(即ち、第1、第2の接続部8、18間)に接着剤層5を介在させる。
【0030】
次いで、圧着部材(不図示)を、第2のフレキシブルプリント配線板3の上方に設置する。そして、当該圧着部材を、第2のフレキシブルプリント配線板3の方向に移動させ、当該第2のフレキシブルプリント配線板3を介して、接着剤層5を第1のフレキシブルプリント配線板2の方向へ所定の圧力で加圧した状態で、接着剤層5を加熱溶融させ、硬化温度に加熱する。なお、上述のごとく、接着剤層5は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該接着剤層5は、上述の硬化温度にて加熱をすると、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した接着剤層5の硬化時間が経過すると、圧着部材による加熱状態を解除して、接着剤層5の硬化温度の維持状態を開放し、冷却を開始することにより、接着剤層5を介して、複数の導体配線25−導体配線26間を接続して、第2のフレキシブルプリント配線板3を第1のフレキシブルプリント配線板2上に実装し、第1のフレキシブルプリント配線板2と第2のフレキシブルプリント配線板3からなるフレキシブルプリント配線板1が製造される。
【0031】
また、電子部品を、フレキシブルプリント配線板1上に実装する際には、予め印刷等により形成された半田(不図示)を含むフレキシブルプリント配線板1の全体に対して、リフローを行うことにより、フレキシブルプリント配線板1を所定の温度(240℃〜260℃程度)に加熱する。そうすると、半田が溶融して、電子部品が、第1、第2の接続配線部6、14と接続され、電子部品が、フレキシブルプリント配線板1上に実装される。
【0032】
ここで、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1においては、第1の接続配線部6と、第2の接続配線部14とを接続する接着剤層5として、図5に示すように、導電性微粒子24を含む異方導電性接着剤を使用する構成としている。この異方導電性接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂23を主成分とし、当該樹脂23中に導電性微粒子24が分散された接着剤が使用できる。また、異方導電性接着剤に使用される導電性微粒子24としては、例えば、球状の金属微粒子や、金属でめっきされた球状の樹脂粒子を使用することができるが、本実施形態においては、微細な粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有するものを使用する構成としている。なお、ここで言うアスペクト比とは、導電性微粒子24の短径R(導電性微粒子24の断面の長さ)と長径L(導電性微粒子24の長さ)の比のことを言う(図6参照)。
【0033】
このような構成により、圧着部材により加熱加圧処理を行う際に、低い圧力(例えば、2MPa以下)で導電性微粒子24が導体配線25と導体配線26との間に噛み込むため、上述の低い圧力により、第1、第2の接続配線部6、14(または、導体配線25と導体配線26)を接続することが可能になる。
【0034】
また、第1、第2の接続配線部6、14を、接着剤層5を介して接続する際に、当該第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部27の高さをW、第1、第2の接続配線部6、14を構成する導体配線25、26の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有する構成としている。なお、波打ち部27とは、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形に伴い、第1、第2の接続配線部6、14に形成された段差部分のことをいう。このような構成により、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形が効果的に抑制されることになるため、所定の温度でリフローを行う際の、応力の開放に伴う第1、第2の基材4、11の反発力が小さくなり、フレキシブルプリント配線板1の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が向上することになる。その結果、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0035】
なお、W≦0.75Hの関係を有するフレキシブルプリント配線板1の具体的な製造方法としては、第1、第2の接続配線部6、14の接続後において、W≦0.75Hの関係が成立するように、上述の加熱加圧処理を行う際の圧力を調整して、第1、第2の接続配線部6、14を接続する。また、この際、加熱加圧処理を行う際の圧力を、上述の2MPa以下とすることが好ましい。
【0036】
また、導電性微粒子24のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性微粒子24の場合は、断面の最大長さを短径Rとしてアスペクト比を求める。また、導電性微粒子24は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性微粒子24の最大長さを長径Lとしてアスペクト比を求める。
【0037】
また、特に、図5に示すように、導電性微粒子24を、第1、第2の接続配線部6、14の接続前の状態において、異方導電性接着剤を形成する時点で異方導電性接着剤の厚み方向にかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向(磁場方向であって、図5の矢印Xで示す方向)に配向させて用いるのが好ましい。このような配向にすることにより、異方導電性接着剤の面方向(厚み方向に直交する方向であって、図5の矢印Yの方向)における高い導電抵抗によって隣り合う導体配線25間(または、隣り合う導体配線26間)の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、異方導電性接着剤の厚み方向における低い導電抵抗によって、多数の導体配線25−導体配線26間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。なお、第1、第2の接続配線部6、14の接続後の状態においても、導電性微粒子24が厚み方向Xに配向していることが好ましい。
【0038】
使用する導電性微粒子24としては、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自身が有する磁性により、磁場を用いて導電性微粒子24を配向させることが可能になるからである。例えば、直鎖状に繋がった形状を有するニッケル、鉄、コバルトおよびこれらのうち2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0039】
また、一般的に、第1、第2の基材4、11の厚みが薄い(25μm以下)場合、上述の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形が大きくなり、波打ち部の高さが大きくなるが、本発明のフレキシブルプリント配線板1は、上述のごとく、低い圧力により、第1、第2の接続配線部6、14(または、導体配線25と導体配線26)を接続でき、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形を効果的に抑制することができる。従って、本発明のフレキシブルプリント配線板1においては、25μm以下の厚みを有する第1、第2の基材4、11を使用する場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0040】
また、図7に示す、第1の基材4の片面に、接着剤層30を介して、第1の接続配線部6を設けた第1のフレキシブルプリント配線板2と、図8に示す、第2の基材11の両面に、他の接着剤層31、32を介して、第2の接続配線部14と導体配線部15を設けた両面フレキシブルプリント配線板50の導体配線部15をエッチング等により除去し、次いで、接着剤層32の表面上に他の接着剤層33を積層するとともに、当該接着剤層33の表面上に樹脂フィルム34を積層して、接着剤層33と樹脂フィルム34により構成されたカバーレイフィルム35を設けた第2のフレキシブルプリント配線板3(図9を参照)とを使用して、上述の加熱加圧処理により、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際に、第2の接続配線部14の背面に設けられた他の接着剤層32、33の可塑化により、波打ち部27の高さWが大きくなり易くなる。しかし、本発明のフレキシブルプリント配線板1は、上述のごとく、低い圧力により、第1、第2の接続配線部6、14を接続でき、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形を効果的に抑制することができるため、本発明のフレキシブルプリント配線板1においては、第2の接続配線部14の背面に他の接着剤層32、33を設けた場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0041】
なお、図9に示す第2のフレキシブルプリント配線板3と同様に、図10に示すように、第1の接続配線部6の背面であって、基材4の表面上に他の接着剤層36を積層するとともに、当該接着剤層36の表面上に樹脂フィルム37を積層して、接着剤層36と樹脂フィルム37により構成されたカバーレイフィルム38を設けた第1のフレキシブルプリント配線板2を使用する場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。また、上述の樹脂フィルム34(または、樹脂フィルム37)の代わりに、補強板を使用し、他の接着剤層33(または、他の接着剤層36)を介して、当該補強版を設ける構成としても良い。この補強板としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂や金属、ポリイミド樹脂等が好適に使用される。
【0042】
特に、他の接着剤層32、33、36のガラス転移温度Tgが100℃以下の場合、上述の他の接着剤層32、33、36の可塑化により、波打ち部27の高さWが、一層大きくなり易くなるが、本発明のフレキシブルプリント配線板1においては、他の接着剤層32、33、36のガラス転移温度Tgが100℃以下の場合であっても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0043】
なお、ガラス転移温度Tgは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された接着剤層の物性値であり、また、接着剤層30〜33、36を構成する接着剤としては、上述の接着剤層9、19、21の場合と同様に、例えば、ナイロン系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂系、アクリル樹脂系などの、各種の樹脂系の接着剤が使用できる。
【0044】
また、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0045】
例えば、上述の実施形態において使用した片面フレキシブルプリント配線板、または両面フレキシブルプリント配線板の代わりに、多層構造を有するフレキシブルプリント配線板を使用する構成としても良い。
【0046】
即ち、例えば、第1のフレキシブルプリント配線板2として、図3に示す片面フレキシブルプリント配線板を使用する場合は、上述の異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6と接続される、上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部(不図示)を有し、導体配線部(不図示)が複数層積層された多層フレキシブルプリント配線板(不図示)を、第2のフレキシブルプリント配線板3として使用する。そして、多層フレキシブルプリント配線板に、異方導電性接着剤が接続される、上述の第2の接続部18に相当する接続部(不図示)を設けるとともに、上述の接続方法により、異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6と上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部を接続する構成とすることができる。また、第2のフレキシブルプリント配線板として、図4に示す両面フレキシブルプリント配線板を使用する場合は、上述の異方導電性接着剤を介して、第2の接続配線部14と接続される、上述の第1の接続配線部6に相当する接続配線部(不図示)を有し、導体配線部(不図示)が複数層積層された多層フレキシブルプリント配線板(不図示)を、第1のフレキシブルプリント配線板2として使用する。そして、多層フレキシブルプリント配線板に、異方導電性接着剤が接続される、上述の第1の接続部8に相当する接続部(不図示)を設けるとともに、上述の接続方法により、異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6に相当する接続配線部と第2の接続配線部14を接続する構成とすることができる。このような構成においても、上述の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、この場合、多層フレキシブルプリント配線板が有する、上述の第1の接続配線部6に相当する接続配線部(または、上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部)を、導電性ペーストをスクリーン印刷することにより形成する構成としても良い。この場合も、上述の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、上述の多層フレキシブルプリント配線板としては、例えば、フレキシブルプリント配線板とリジッドプリント配線板との複合基板であるリジッドフレックスプリント配線板等を使用することができる。
【0049】
また、上述の導電性ペーストの代わりに、銅箔等の金属箔を使用して、第1の接続配線部6(または、第2の接続配線部14、導体配線部15)を形成する場合は、上述の図7、図8に示すように、第1の基材4の片面(または、第2の基材11の両面の各々)に、接着剤層30(または、接着剤層31、32)を介して、第1の接続配線部6(または、第2の接続配線部14、導体配線部15)を設ける構成としても良い。
【0050】
さらに、上述のカバーレイフィルム7、16、17の代わりに、第1の接続配線部6、第2の接続配線部14、導体配線部15の表面に、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工しても良い。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
(実施例1)
第1の基材4である、厚さが12.5μmのポリイミド樹脂フィルムの片面に、厚みが20μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層30が積層され、当該接着剤層30を介して、厚さが18μmの銅箔からなる第1の接続配線部6が形成された基板を用意した。次いで、第1の接続配線部6上に、厚みが20μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層9を積層した、厚み12.5μmのポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製、商品名カプトン)からなる樹脂フィルム10をプレスにより接着して、第1の接続配線部6上にカバーレイフィルム7を設けるとともに、当該カバーレイフィルム7を形成せずに、第1の接続配線部6の一部を外部に露出させることにより、第1の接続部8を設けた。次いで、第1の接続部8における第1の接続配線部6を、常法により露光、エッチングして、高さHが18μmの導体配線25を、100μm間隔で、30個形成し、図7に示す第1のフレキシブルプリント配線板2を作製した。
【0052】
また、第2の基材11である、厚さが12.5μmのポリイミド樹脂フィルムの両面に、厚みが10μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層31、32が積層され、当該接着剤層31、32を介して、厚さが33μmの銅箔からなる第2の接続配線部14、導体配線部15が形成された基板を用意した。次いで、第2の接続配線部14上に、厚みが30μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層19を積層した、厚み12.5μmのポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製、商品名カプトン)からなる樹脂フィルム20をプレスにより接着して、第2の接続配線部14上にカバーレイフィルム16を設けるとともに、当該カバーレイフィルム16を形成せずに、第2の接続配線部14の一部を外部に露出させることにより、第2の接続部18を設けた。次いで、導体配線部15をエッチングにより除去し、接着剤層32上に、厚みが30μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層33を積層した、厚み12.5μmのポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製、商品名カプトン)からなる樹脂フィルム34をプレスにより接着して、接着剤層32上にカバーレイフィルム35を設けた。次いで、第2の接続部18における第2の接続配線部14を、常法により露光、エッチングして、高さHが33μmの導体配線26を、100μm間隔で、30個形成し、図9に示す第2のフレキシブルプリント配線板3を作製した。
【0053】
なお、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー、EXSTAR6000 DMS)を使用して、昇温速度10℃/分、周波数1Hz、加重5gの条件の下、動的粘弾性測定法(DMA法)により、接着剤層32、33のガラス転移温度を測定したところ、40℃であった。なお、硬化物のサンプルとして、幅2mm、長さ10mmのものを使用した。
【0054】
また、第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2の接続配線部14に形成された導体配線26の間を接続するための接着剤層5である異方導電性接着剤を作製した。導電性粒子としては、3μmから11μmまでの鎖長分布を有する直鎖状ニッケル微粒子を用いた。樹脂としては、ビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、およびエピコート1002〕、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート828US〕と、マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕とを重量比で40/20/40/35の割合で用いた。
【0055】
そして、上記樹脂を酢酸ブチルに溶解後、三本ロールによる混練を行い、樹脂濃度が40重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、1体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させることにより、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ50μmの異方導電性接着剤を作製した。
【0056】
次に、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3の間に、作製した接着剤を挟み、200℃に加熱しながら、1MPaの圧力で180秒間、加圧して接着させ、第1のフレキシブルプリント配線板2の第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2のフレキシブルプリント配線板3の第2の接続配線部14に形成された導体配線26が接続された、フレキシブルプリント配線板1を作製した。
【0057】
次いで、作製されたフレキシブルプリント配線板1において、第1、第2の接続部8、18を断面研磨し、顕微鏡(ソニック(株)製、商品名デジタルマイクロスコープBS−D8000II)を用いて、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部27の高さWを測定したところ、9.1μmであった。
【0058】
次いで、作製されたフレキシブルプリント配線板1の全体に対して、リフローを行った。より具体的には、まず、3分間で、室温からピーク温度(260℃)まで昇温し、ピーク温度に到達した後、フレキシブルプリント配線板1を取り出して、室温まで冷却した。そして、リフロー後、第1、第2の接続配線部6、14における第1、第2の基材4、11の剥離の発生の有無を判定したところ、図11に示すように、第1、第2の基材4、11の剥離は発生していなかった。なお、剥離の発生は、顕微鏡(ソニック(株)製、商品名デジタルマイクロスコープBS−D8000II)を使用して観察した。
【0059】
(比較例1)
第1のフレキシブルプリント配線板2の第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2のフレキシブルプリント配線板3の第2の接続配線部14に形成された導体配線26を接続する際の圧力を、4MPaに設定したこと以外は、上述の実施例1と同一条件により、第1のフレキシブルプリント配線板2と第2のフレキシブルプリント配線板3が接着されたフレキシブルプリント配線板60を作製した。
【0060】
その後、上述の実施例1と同様にして、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部の高さWを測定したところ、29.8μmであった。また、上述の実施例1と同様にして、作製されたフレキシブルプリント配線板60の全体に対して、リフローを行い、第1、第2の接続配線部6、14における第1、第2の基材4、11の剥離の発生の有無を判定したところ、図12に示すように、第2の接続配線部14において、第2の基材11の剥離が生じており、第2の基材11と接着剤層5の間に、剥離部61が発生していた。
【0061】
即ち、実施例1においては、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部27の高さWが9.1μmであり、当該波打ち部27の高さWと導体配線26の高さH(33μm)との間に、W≦0.75Hなる関係が成立するため、第1、第2の基材4、11の剥離が発生しなかったものと考えられる。一方、比較例1においては、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部の高さWが29.8μmであり、当該波打ち部の高さWと導体配線26の高さH(33μm)との間に、W>0.75Hなる関係が成立するため、第2の基材11の剥離が発生したものと考えられる。
【0062】
また、実施例1においては、第1、第2の基材4、11の厚みが、25μm以下(12.5μm)の場合においても、第1、第2の基材4、11の剥離を防止することができることが判る。また、第2の接続配線部14の背面に、ガラス転移温度が100℃以下(40℃)の他の接着剤層32、33を設けた場合においても、第1、第2の基材4、11の剥離を防止することができることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活用例としては、電子機器の部品として用いられるフレキシブルプリント配線板およびその製造方法が挙げられる。
【符号の説明】
【0064】
1…フレキシブルプリント配線板、2…第1のフレキシブルプリント配線板、3…第2のフレキシブルプリント配線板、4…第1の基材、5…接着剤層、6…第1の接続配線部、11…第2の基材、14…第2の接続配線部、24…導電性微粒子、25…第1の接続配線部を構成する導体配線、26…第2の接続配線部を構成する導体配線、27…波打ち部、32…他の接着剤層、33…他の接着剤層、36…他の接着剤層、H…第1、第2の接続配線部を構成する導体配線の高さ、W…波打ち部の高さ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の部品として用いられるフレキシブルプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、電子機器の高密度化に伴い、例えば、電子機器類の可動部への配線などの用途に、フレキシブルプリント配線板が広く用いられている。また、電子機器類の小型化および高機能化に伴って、複数のフレキシブルプリント配線板を接続することにより形成された、種々の形状を有するフレキシブルプリント配線板が使用されている。
【0003】
複数のフレキシブルプリント配線板の接続構造としては、例えば、異方導電性接着剤を用いて、複数のフレキシブルプリント配線板を接続する構造が知られている。より具体的には、異方導電性接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、第1のフレキシブルプリント配線板の第1の基材上に設けられた第1の接続配線部と、第2のフレキシブルプリント配線板の第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を電気的に接続することにより、第1、第2のフレキシブルプリント配線板を接続する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−314216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載のようなフレキシブルプリント配線板においては、図13に示すように、第1、第2のフレキシブルプリント配線板48、49における第1、第2の接続配線部51、52を接続する際の加圧処理により、第1の接続配線部51を構成する導体配線53間(または、第2の接続配線部52を構成する導体配線54間)において、第1、第2の基材55、56の変形が発生するが、加圧処理時の圧力が大きいと、第1、第2の接続配線部51、52に形成される波打ち部57(即ち、第1、第2の接続配線部51、52を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材55、56の変形に伴い、第1、第2の接続配線部51、52に形成された段差部分)の高さVが大きくなる。従って、フレキシブルプリント配線板50の全体に対して、所定の温度(240℃〜260℃程度)でリフローを行うことにより、電子部品(不図示)を、フレキシブルプリント配線板50上に実装する際に、応力の開放に伴う第1、第2の基材55、56の反発力が大きくなる。その結果、フレキシブルプリント配線板50の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が低下することになり、図14に示すように、当該リフローを行う際に、第1、第2の接続配線部51、52において、第1、第2の基材55、56の剥離が発生してしまい、第1、第2の基材55、56と接着剤層58の間に、剥離部59が発生するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)に優れたフレキシブル配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ポリイミド樹脂製の第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、ポリイミド樹脂製の第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板と、を備えるフレキシブルプリント配線板において、第1の接続配線部と第2の接続配線部が、接着剤層を介して接続されており、接着剤層が、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤であり、導電性微粒子が、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有するとともに、第1、第2の接続配線部の波打ち部の高さをW、第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有することを特徴とする。なお、ここでいう「波打ち部」とは、第1、第2の接続配線部を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材の変形に伴い、第1、第2の接続配線部に形成された段差部分のことをいう。
【0008】
同構成によれば、加熱加圧処理により、第1、第2の接続配線部を、接着剤層を介して接続する際に、低い圧力(例えば、2MPa以下)で、第1、第2の接続配線部を接続することが可能になる。また、第1、第2の接続配線部を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材の変形が効果的に抑制されることになるため、所定の温度でリフローを行う際の、応力の開放に伴う第1、第2の基材の反発力が小さくなり、フレキシブルプリント配線板の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が向上することになる。その結果、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における、第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。
【0009】
また、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板は、上述のごとく、低い圧力により、第1、第2の接続配線部を接続でき、第1、第2の接続配線部を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材の変形を効果的に抑制することができる。従って、請求項2に記載の発明のように、第1、第2の基材の厚みが、25μm以下の場合や、請求項3に記載の発明のように、第1、第2の接続配線部の背面に他の接着剤層が設けられている場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。また、特に、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板であって、他の接着剤層のガラス転移温度が100℃以下の場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、第1の基材上に設けられた第1の接続配線部と第2の基材上に設けられた第2の接続配線部の間に、接着剤層を介して、加熱加圧処理を行うことにより、第1、第2の接続配線部を接続する工程を含み、第1、第2の接続配線部の接続後において、第1、第2の接続配線部の波打ち部の高さをW、第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係が成立するように、加熱加圧処理を行う際の圧力を調整して、第1、第2の接続配線部を接続することを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、加熱加圧処理により、第1、第2の接続配線部を、接着剤層を介して接続する際に、加圧処理による第1、第2の基材の変形が効果的に抑制されることになるため、所定の温度でリフローを行う際の、応力の開放に伴う第1、第2の基材の反発力が小さくなり、フレキシブルプリント配線板の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が向上することになる。その結果、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における、第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。なお、この場合、加熱加圧処理を行う際の圧力を、2MPa以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の基材上に設けられた第1の接続配線部と、第2の基材上に設けられた第2の接続配線部とを備えるフレキシブルプリント配線板において、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部における、第1、第2の基材の剥離を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の構成を示す概略図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図5】図1のB−B断面の一部を示す部分断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板において使用される導電性微粒子を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の変形例を示す断面図である。
【図8】両面フレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板において、他の接着剤層を設けた場合の概略構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板において、他の接着剤層を設けた場合の概略構成を示す断面図である。
【図11】実施例1におけるフレキシブルプリント配線板に対して、リフローを行った後の状態を示す部分断面図である。
【図12】比較例1におけるフレキシブルプリント配線板に対して、リフローを行った後の状態を示す部分断面図である。
【図13】従来のフレキシブルプリント配線板を示す部分断面図である。
【図14】図13に示すフレキシブルプリント配線板に対して、リフローを行った後の状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の構成を示す概略図であり、図2は、図1のA−A断面図である。また、図3は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図であり、図4は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。また、図5は、図1のB−B断面の一部を示す部分断面図である。なお、本実施形態においては、片面フレキシブルプリント配線板と両面フレキシブルプリント配線板の接続を例に挙げて説明する。
【0015】
図1、図2に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、接着剤層5を介して、第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2のフレキシブルプリント配線板3が接着されたものである。
【0016】
第1のフレキシブルプリント配線板2は、柔軟な樹脂フィルムにて形成された第1の基材4上に(即ち、第1の基材4の片面に)、所定のピッチにより形成された導体配線25(後述の図5を参照)から構成される第1の接続配線部6を有する、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板であって、当該第1の接続配線部6を覆うように、絶縁層であるカバーレイフィルム7を設けたものである。なお、ここでいう「絶縁層」とは、第1の接続配線部6を保護するためのものをいい、カバーレイフィルム7や、後述のカバーコート層等を含むものである。
【0017】
また、図3に示すように、第1のフレキシブルプリント配線板2には、第1の接続配線部6を、第2のフレキシブルプリント配線板3に設けられた第2の接続配線部14(後述の図4参照)と電気的に接続すべく、カバーレイフィルム7を形成せずに外部に露出させた第1の接続部8が設けられている。なお、図3に示すように、本実施形態においては、当該第1の接続部8は、第1の接続配線部6と略同一の高さに設けられている。
【0018】
また、図3に示すように、カバーレイフィルム7は、第1の接続配線部6を覆うべく、第1の接続配線部6上に積層された接着剤層9とその上に積層された樹脂フィルム10により構成されている。
【0019】
第2のフレキシブルプリント配線板3は、柔軟な樹脂フィルムにて形成された第2の基材11上に(即ち、第2の基材11の両面の各々に)、所定のピッチにより形成された導体配線26(後述の図5を参照)から構成される第2の接続配線部14と導体配線部15を有する、いわゆる両面フレキシブルプリント配線板であって、当該第2の接続配線部14と導体配線部15を覆うように、その両面に2層の絶縁層であるカバーレイフィルム16、17を設けたものである。
【0020】
また、図4に示すように、第2のフレキシブルプリント配線板3には、第2の接続配線部14を、第1のフレキシブルプリント配線板2に設けられた第1の接続配線部6と電気的に接続すべく、カバーレイフィルム16を形成せずに外部に露出させた第2の接続部18が設けられている。なお、図4に示すように、本実施形態においては、当該第2の接続部18は、第2の接続配線部14と略同一の高さに設けられている。
【0021】
また、図4に示すように、カバーレイフィルム16、17のうち、カバーレイフィルム16は、第2の接続配線部14を覆うべく、第2の接続配線部14上に積層された接着剤層19とその上に積層された樹脂フィルム20により構成されている。また、カバーレイフィルム17は、導体配線部15を覆うべく、導体配線部15上に積層された接着剤層21とその上に積層された樹脂フィルム22により構成されている。
【0022】
そして、図2に示すように、第1のフレキシブルプリント配線板2に設けられた第1の接続配線部6と、第2のフレキシブルプリント配線板3に設けられた第2の接続配線部14が接着剤層5を介して接続される構成となっている。
【0023】
第1、第2の基材4、11を構成する樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルムなどの、フレキシブルプリント配線板用として汎用性のある樹脂のフィルムがいずれも使用可能である。また、特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているのが好ましく、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムやポリエチレンナフタレートが好適に使用される。
【0024】
また、本実施形態においては、第1、第2の基材4、11の表面に、銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を常法により露光、エッチングして、第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15を形成しても良いが、当該第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15を、導電性ペーストを印刷することにより形成することが好ましい。このような方法を使用することにより、金属箔を使用する際に必要な露光やエッチングが不要になるため、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3(即ち、フレキシブルプリント配線板1)の製造コストが安価になるからである。なお、導電性ペーストを印刷する方法としては、例えば、スクリーン印刷法や凹版印刷法が挙げられる。また、第1、第2の接続配線部6、14のいずれか一方のみを、導電性ペーストにより形成する構成としても良い。
【0025】
導電性ペーストとしては、例えば、導電性粉末、バインダー樹脂、硬化剤および溶剤を主成分とする熱硬化型の導電性ペーストが使用できる。ここで、導電性粉末としては、例えば、銀、ニッケル、銅を使用できる。また、バインダー樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂を使用することができる。また、硬化剤としては、例えば、バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を使用する場合にはイソシアネート化合物を使用することができ、エポキシ樹脂を使用する場合にはアミン化合物、イミダゾール化合物を使用することができる。さらに、溶剤としては、例えば、セロソルブ、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテートを使用することができる。そして、上述のスクリーン印刷法等により、導電性ペーストを、第1、第2の基材4、11の表面に塗布するとともに、加熱処理を施してバインダー樹脂を硬化させることにより、第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15が形成される。
【0026】
また、樹脂フィルム10、20、22としては、上述の第1、第2の基材4、11を構成する樹脂フィルムと同様のものを使用することができる。また、接着剤層9、19、21を構成する接着剤としては、柔軟性や耐熱性にすぐれたものが好ましく、かかる接着剤としては、例えば、ナイロン系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂系、アクリル樹脂系などの、各種の樹脂系の接着剤が挙げられる。
【0027】
なお、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3は、従来と同様にして製造することができる。即ち、例えば、第2のフレキシブルプリント配線板3においては、柔軟な樹脂フィルムにて形成された第2の基材11の両面の各々に、導電性ペーストを、上述のスクリーン印刷法により印刷することにより、各面に形成された第2の接続配線部14、および導体配線部15を有する両面板を作製する。次いで、この両面板の両面の各々に、接着剤層付きの樹脂フィルムをラミネートして、2層のカバーレイフィルム16、17を貼り合わせれば良い。
【0028】
次に、フレキシブルプリント配線板1の製造方法について説明する。本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板1は、第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2のフレキシブルプリント配線板3の間に接着剤層5を介して、圧着部材により加熱加圧処理を行うことにより、第1の基材4上に設けられた第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2の基材11上に設けられた第2の接続配線部14に形成された導体配線26の間を接続することにより製造される。
【0029】
より具体的には、第1のフレキシブルプリント配線板2の第1の接続部8上に、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする接着剤層5を載置し、当該接着剤層5を所定の温度に加熱した状態で、第1の基材4の方向へ所定の圧力で加圧し、接着剤層5を第1の接続部8上に仮接着する。次いで、第2のフレキシブルプリント配線板3を下向き(フェースダウン)にした状態で、第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2の接続配線部14に形成された導体配線26との位置合わせをしながら、第2のフレキシブルプリント配線板3の第2の接続部18を接着剤層5上に載置することにより、第1、第2の接続配線部6、14間(即ち、第1、第2の接続部8、18間)に接着剤層5を介在させる。
【0030】
次いで、圧着部材(不図示)を、第2のフレキシブルプリント配線板3の上方に設置する。そして、当該圧着部材を、第2のフレキシブルプリント配線板3の方向に移動させ、当該第2のフレキシブルプリント配線板3を介して、接着剤層5を第1のフレキシブルプリント配線板2の方向へ所定の圧力で加圧した状態で、接着剤層5を加熱溶融させ、硬化温度に加熱する。なお、上述のごとく、接着剤層5は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該接着剤層5は、上述の硬化温度にて加熱をすると、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した接着剤層5の硬化時間が経過すると、圧着部材による加熱状態を解除して、接着剤層5の硬化温度の維持状態を開放し、冷却を開始することにより、接着剤層5を介して、複数の導体配線25−導体配線26間を接続して、第2のフレキシブルプリント配線板3を第1のフレキシブルプリント配線板2上に実装し、第1のフレキシブルプリント配線板2と第2のフレキシブルプリント配線板3からなるフレキシブルプリント配線板1が製造される。
【0031】
また、電子部品を、フレキシブルプリント配線板1上に実装する際には、予め印刷等により形成された半田(不図示)を含むフレキシブルプリント配線板1の全体に対して、リフローを行うことにより、フレキシブルプリント配線板1を所定の温度(240℃〜260℃程度)に加熱する。そうすると、半田が溶融して、電子部品が、第1、第2の接続配線部6、14と接続され、電子部品が、フレキシブルプリント配線板1上に実装される。
【0032】
ここで、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1においては、第1の接続配線部6と、第2の接続配線部14とを接続する接着剤層5として、図5に示すように、導電性微粒子24を含む異方導電性接着剤を使用する構成としている。この異方導電性接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂23を主成分とし、当該樹脂23中に導電性微粒子24が分散された接着剤が使用できる。また、異方導電性接着剤に使用される導電性微粒子24としては、例えば、球状の金属微粒子や、金属でめっきされた球状の樹脂粒子を使用することができるが、本実施形態においては、微細な粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有するものを使用する構成としている。なお、ここで言うアスペクト比とは、導電性微粒子24の短径R(導電性微粒子24の断面の長さ)と長径L(導電性微粒子24の長さ)の比のことを言う(図6参照)。
【0033】
このような構成により、圧着部材により加熱加圧処理を行う際に、低い圧力(例えば、2MPa以下)で導電性微粒子24が導体配線25と導体配線26との間に噛み込むため、上述の低い圧力により、第1、第2の接続配線部6、14(または、導体配線25と導体配線26)を接続することが可能になる。
【0034】
また、第1、第2の接続配線部6、14を、接着剤層5を介して接続する際に、当該第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部27の高さをW、第1、第2の接続配線部6、14を構成する導体配線25、26の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有する構成としている。なお、波打ち部27とは、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形に伴い、第1、第2の接続配線部6、14に形成された段差部分のことをいう。このような構成により、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形が効果的に抑制されることになるため、所定の温度でリフローを行う際の、応力の開放に伴う第1、第2の基材4、11の反発力が小さくなり、フレキシブルプリント配線板1の耐リフロー性(リフローに対する耐熱性)が向上することになる。その結果、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0035】
なお、W≦0.75Hの関係を有するフレキシブルプリント配線板1の具体的な製造方法としては、第1、第2の接続配線部6、14の接続後において、W≦0.75Hの関係が成立するように、上述の加熱加圧処理を行う際の圧力を調整して、第1、第2の接続配線部6、14を接続する。また、この際、加熱加圧処理を行う際の圧力を、上述の2MPa以下とすることが好ましい。
【0036】
また、導電性微粒子24のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性微粒子24の場合は、断面の最大長さを短径Rとしてアスペクト比を求める。また、導電性微粒子24は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性微粒子24の最大長さを長径Lとしてアスペクト比を求める。
【0037】
また、特に、図5に示すように、導電性微粒子24を、第1、第2の接続配線部6、14の接続前の状態において、異方導電性接着剤を形成する時点で異方導電性接着剤の厚み方向にかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向(磁場方向であって、図5の矢印Xで示す方向)に配向させて用いるのが好ましい。このような配向にすることにより、異方導電性接着剤の面方向(厚み方向に直交する方向であって、図5の矢印Yの方向)における高い導電抵抗によって隣り合う導体配線25間(または、隣り合う導体配線26間)の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、異方導電性接着剤の厚み方向における低い導電抵抗によって、多数の導体配線25−導体配線26間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。なお、第1、第2の接続配線部6、14の接続後の状態においても、導電性微粒子24が厚み方向Xに配向していることが好ましい。
【0038】
使用する導電性微粒子24としては、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自身が有する磁性により、磁場を用いて導電性微粒子24を配向させることが可能になるからである。例えば、直鎖状に繋がった形状を有するニッケル、鉄、コバルトおよびこれらのうち2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0039】
また、一般的に、第1、第2の基材4、11の厚みが薄い(25μm以下)場合、上述の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形が大きくなり、波打ち部の高さが大きくなるが、本発明のフレキシブルプリント配線板1は、上述のごとく、低い圧力により、第1、第2の接続配線部6、14(または、導体配線25と導体配線26)を接続でき、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形を効果的に抑制することができる。従って、本発明のフレキシブルプリント配線板1においては、25μm以下の厚みを有する第1、第2の基材4、11を使用する場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0040】
また、図7に示す、第1の基材4の片面に、接着剤層30を介して、第1の接続配線部6を設けた第1のフレキシブルプリント配線板2と、図8に示す、第2の基材11の両面に、他の接着剤層31、32を介して、第2の接続配線部14と導体配線部15を設けた両面フレキシブルプリント配線板50の導体配線部15をエッチング等により除去し、次いで、接着剤層32の表面上に他の接着剤層33を積層するとともに、当該接着剤層33の表面上に樹脂フィルム34を積層して、接着剤層33と樹脂フィルム34により構成されたカバーレイフィルム35を設けた第2のフレキシブルプリント配線板3(図9を参照)とを使用して、上述の加熱加圧処理により、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際に、第2の接続配線部14の背面に設けられた他の接着剤層32、33の可塑化により、波打ち部27の高さWが大きくなり易くなる。しかし、本発明のフレキシブルプリント配線板1は、上述のごとく、低い圧力により、第1、第2の接続配線部6、14を接続でき、第1、第2の接続配線部6、14を接続する際の加圧処理による第1、第2の基材4、11の変形を効果的に抑制することができるため、本発明のフレキシブルプリント配線板1においては、第2の接続配線部14の背面に他の接着剤層32、33を設けた場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0041】
なお、図9に示す第2のフレキシブルプリント配線板3と同様に、図10に示すように、第1の接続配線部6の背面であって、基材4の表面上に他の接着剤層36を積層するとともに、当該接着剤層36の表面上に樹脂フィルム37を積層して、接着剤層36と樹脂フィルム37により構成されたカバーレイフィルム38を設けた第1のフレキシブルプリント配線板2を使用する場合においても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。また、上述の樹脂フィルム34(または、樹脂フィルム37)の代わりに、補強板を使用し、他の接着剤層33(または、他の接着剤層36)を介して、当該補強版を設ける構成としても良い。この補強板としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂や金属、ポリイミド樹脂等が好適に使用される。
【0042】
特に、他の接着剤層32、33、36のガラス転移温度Tgが100℃以下の場合、上述の他の接着剤層32、33、36の可塑化により、波打ち部27の高さWが、一層大きくなり易くなるが、本発明のフレキシブルプリント配線板1においては、他の接着剤層32、33、36のガラス転移温度Tgが100℃以下の場合であっても、リフローを行う際の、第1、第2の接続配線部6、14における接着剤層5と第1、第2の基材4、11の剥離を防止することが可能になる。
【0043】
なお、ガラス転移温度Tgは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された接着剤層の物性値であり、また、接着剤層30〜33、36を構成する接着剤としては、上述の接着剤層9、19、21の場合と同様に、例えば、ナイロン系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂系、アクリル樹脂系などの、各種の樹脂系の接着剤が使用できる。
【0044】
また、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0045】
例えば、上述の実施形態において使用した片面フレキシブルプリント配線板、または両面フレキシブルプリント配線板の代わりに、多層構造を有するフレキシブルプリント配線板を使用する構成としても良い。
【0046】
即ち、例えば、第1のフレキシブルプリント配線板2として、図3に示す片面フレキシブルプリント配線板を使用する場合は、上述の異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6と接続される、上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部(不図示)を有し、導体配線部(不図示)が複数層積層された多層フレキシブルプリント配線板(不図示)を、第2のフレキシブルプリント配線板3として使用する。そして、多層フレキシブルプリント配線板に、異方導電性接着剤が接続される、上述の第2の接続部18に相当する接続部(不図示)を設けるとともに、上述の接続方法により、異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6と上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部を接続する構成とすることができる。また、第2のフレキシブルプリント配線板として、図4に示す両面フレキシブルプリント配線板を使用する場合は、上述の異方導電性接着剤を介して、第2の接続配線部14と接続される、上述の第1の接続配線部6に相当する接続配線部(不図示)を有し、導体配線部(不図示)が複数層積層された多層フレキシブルプリント配線板(不図示)を、第1のフレキシブルプリント配線板2として使用する。そして、多層フレキシブルプリント配線板に、異方導電性接着剤が接続される、上述の第1の接続部8に相当する接続部(不図示)を設けるとともに、上述の接続方法により、異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6に相当する接続配線部と第2の接続配線部14を接続する構成とすることができる。このような構成においても、上述の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、この場合、多層フレキシブルプリント配線板が有する、上述の第1の接続配線部6に相当する接続配線部(または、上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部)を、導電性ペーストをスクリーン印刷することにより形成する構成としても良い。この場合も、上述の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、上述の多層フレキシブルプリント配線板としては、例えば、フレキシブルプリント配線板とリジッドプリント配線板との複合基板であるリジッドフレックスプリント配線板等を使用することができる。
【0049】
また、上述の導電性ペーストの代わりに、銅箔等の金属箔を使用して、第1の接続配線部6(または、第2の接続配線部14、導体配線部15)を形成する場合は、上述の図7、図8に示すように、第1の基材4の片面(または、第2の基材11の両面の各々)に、接着剤層30(または、接着剤層31、32)を介して、第1の接続配線部6(または、第2の接続配線部14、導体配線部15)を設ける構成としても良い。
【0050】
さらに、上述のカバーレイフィルム7、16、17の代わりに、第1の接続配線部6、第2の接続配線部14、導体配線部15の表面に、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工しても良い。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
(実施例1)
第1の基材4である、厚さが12.5μmのポリイミド樹脂フィルムの片面に、厚みが20μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層30が積層され、当該接着剤層30を介して、厚さが18μmの銅箔からなる第1の接続配線部6が形成された基板を用意した。次いで、第1の接続配線部6上に、厚みが20μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層9を積層した、厚み12.5μmのポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製、商品名カプトン)からなる樹脂フィルム10をプレスにより接着して、第1の接続配線部6上にカバーレイフィルム7を設けるとともに、当該カバーレイフィルム7を形成せずに、第1の接続配線部6の一部を外部に露出させることにより、第1の接続部8を設けた。次いで、第1の接続部8における第1の接続配線部6を、常法により露光、エッチングして、高さHが18μmの導体配線25を、100μm間隔で、30個形成し、図7に示す第1のフレキシブルプリント配線板2を作製した。
【0052】
また、第2の基材11である、厚さが12.5μmのポリイミド樹脂フィルムの両面に、厚みが10μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層31、32が積層され、当該接着剤層31、32を介して、厚さが33μmの銅箔からなる第2の接続配線部14、導体配線部15が形成された基板を用意した。次いで、第2の接続配線部14上に、厚みが30μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層19を積層した、厚み12.5μmのポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製、商品名カプトン)からなる樹脂フィルム20をプレスにより接着して、第2の接続配線部14上にカバーレイフィルム16を設けるとともに、当該カバーレイフィルム16を形成せずに、第2の接続配線部14の一部を外部に露出させることにより、第2の接続部18を設けた。次いで、導体配線部15をエッチングにより除去し、接着剤層32上に、厚みが30μmであるエポキシ系の接着剤からなる接着剤層33を積層した、厚み12.5μmのポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製、商品名カプトン)からなる樹脂フィルム34をプレスにより接着して、接着剤層32上にカバーレイフィルム35を設けた。次いで、第2の接続部18における第2の接続配線部14を、常法により露光、エッチングして、高さHが33μmの導体配線26を、100μm間隔で、30個形成し、図9に示す第2のフレキシブルプリント配線板3を作製した。
【0053】
なお、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー、EXSTAR6000 DMS)を使用して、昇温速度10℃/分、周波数1Hz、加重5gの条件の下、動的粘弾性測定法(DMA法)により、接着剤層32、33のガラス転移温度を測定したところ、40℃であった。なお、硬化物のサンプルとして、幅2mm、長さ10mmのものを使用した。
【0054】
また、第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2の接続配線部14に形成された導体配線26の間を接続するための接着剤層5である異方導電性接着剤を作製した。導電性粒子としては、3μmから11μmまでの鎖長分布を有する直鎖状ニッケル微粒子を用いた。樹脂としては、ビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、およびエピコート1002〕、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート828US〕と、マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕とを重量比で40/20/40/35の割合で用いた。
【0055】
そして、上記樹脂を酢酸ブチルに溶解後、三本ロールによる混練を行い、樹脂濃度が40重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、1体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させることにより、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ50μmの異方導電性接着剤を作製した。
【0056】
次に、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3の間に、作製した接着剤を挟み、200℃に加熱しながら、1MPaの圧力で180秒間、加圧して接着させ、第1のフレキシブルプリント配線板2の第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2のフレキシブルプリント配線板3の第2の接続配線部14に形成された導体配線26が接続された、フレキシブルプリント配線板1を作製した。
【0057】
次いで、作製されたフレキシブルプリント配線板1において、第1、第2の接続部8、18を断面研磨し、顕微鏡(ソニック(株)製、商品名デジタルマイクロスコープBS−D8000II)を用いて、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部27の高さWを測定したところ、9.1μmであった。
【0058】
次いで、作製されたフレキシブルプリント配線板1の全体に対して、リフローを行った。より具体的には、まず、3分間で、室温からピーク温度(260℃)まで昇温し、ピーク温度に到達した後、フレキシブルプリント配線板1を取り出して、室温まで冷却した。そして、リフロー後、第1、第2の接続配線部6、14における第1、第2の基材4、11の剥離の発生の有無を判定したところ、図11に示すように、第1、第2の基材4、11の剥離は発生していなかった。なお、剥離の発生は、顕微鏡(ソニック(株)製、商品名デジタルマイクロスコープBS−D8000II)を使用して観察した。
【0059】
(比較例1)
第1のフレキシブルプリント配線板2の第1の接続配線部6に形成された導体配線25と、第2のフレキシブルプリント配線板3の第2の接続配線部14に形成された導体配線26を接続する際の圧力を、4MPaに設定したこと以外は、上述の実施例1と同一条件により、第1のフレキシブルプリント配線板2と第2のフレキシブルプリント配線板3が接着されたフレキシブルプリント配線板60を作製した。
【0060】
その後、上述の実施例1と同様にして、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部の高さWを測定したところ、29.8μmであった。また、上述の実施例1と同様にして、作製されたフレキシブルプリント配線板60の全体に対して、リフローを行い、第1、第2の接続配線部6、14における第1、第2の基材4、11の剥離の発生の有無を判定したところ、図12に示すように、第2の接続配線部14において、第2の基材11の剥離が生じており、第2の基材11と接着剤層5の間に、剥離部61が発生していた。
【0061】
即ち、実施例1においては、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部27の高さWが9.1μmであり、当該波打ち部27の高さWと導体配線26の高さH(33μm)との間に、W≦0.75Hなる関係が成立するため、第1、第2の基材4、11の剥離が発生しなかったものと考えられる。一方、比較例1においては、第1、第2の接続配線部6、14に形成された波打ち部の高さWが29.8μmであり、当該波打ち部の高さWと導体配線26の高さH(33μm)との間に、W>0.75Hなる関係が成立するため、第2の基材11の剥離が発生したものと考えられる。
【0062】
また、実施例1においては、第1、第2の基材4、11の厚みが、25μm以下(12.5μm)の場合においても、第1、第2の基材4、11の剥離を防止することができることが判る。また、第2の接続配線部14の背面に、ガラス転移温度が100℃以下(40℃)の他の接着剤層32、33を設けた場合においても、第1、第2の基材4、11の剥離を防止することができることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活用例としては、電子機器の部品として用いられるフレキシブルプリント配線板およびその製造方法が挙げられる。
【符号の説明】
【0064】
1…フレキシブルプリント配線板、2…第1のフレキシブルプリント配線板、3…第2のフレキシブルプリント配線板、4…第1の基材、5…接着剤層、6…第1の接続配線部、11…第2の基材、14…第2の接続配線部、24…導電性微粒子、25…第1の接続配線部を構成する導体配線、26…第2の接続配線部を構成する導体配線、27…波打ち部、32…他の接着剤層、33…他の接着剤層、36…他の接着剤層、H…第1、第2の接続配線部を構成する導体配線の高さ、W…波打ち部の高さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂製の第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、ポリイミド樹脂製の第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板と、を備えるフレキシブルプリント配線板において、
前記第1の接続配線部と前記第2の接続配線部が、接着剤層を介して接続されており、前記接着剤層が、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤であり、前記導電性微粒子が、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有するとともに、前記第1、第2の接続配線部の波打ち高さをW、前記第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記第1、第2の基材の厚みが、25μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記第1、第2の接続配線部の背面に他の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記他の接着剤層のガラス転移温度が、100℃以下であることを特徴とする請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、
前記第1の基材上に設けられた前記第1の接続配線部と前記第2の基材上に設けられた前記第2の接続配線部の間に、接着剤層を介して、加熱加圧処理を行うことにより、前記第1、第2の接続配線部を接続する工程を含み、
前記第1、第2の接続配線部の接続後において、前記第1、第2の接続配線部の波打ち高さをW、前記第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係が成立するように、前記加熱加圧処理を行う際の圧力を調整して、前記第1、第2の接続配線部を接続する
ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項1】
ポリイミド樹脂製の第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、ポリイミド樹脂製の第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板と、を備えるフレキシブルプリント配線板において、
前記第1の接続配線部と前記第2の接続配線部が、接着剤層を介して接続されており、前記接着剤層が、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤であり、前記導電性微粒子が、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有するとともに、前記第1、第2の接続配線部の波打ち高さをW、前記第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記第1、第2の基材の厚みが、25μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記第1、第2の接続配線部の背面に他の接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記他の接着剤層のガラス転移温度が、100℃以下であることを特徴とする請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
第1の基材上に設けられた第1の接続配線部を有する第1のフレキシブルプリント配線板と、第2の基材上に設けられた第2の接続配線部を有する第2のフレキシブルプリント配線板とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法において、
前記第1の基材上に設けられた前記第1の接続配線部と前記第2の基材上に設けられた前記第2の接続配線部の間に、接着剤層を介して、加熱加圧処理を行うことにより、前記第1、第2の接続配線部を接続する工程を含み、
前記第1、第2の接続配線部の接続後において、前記第1、第2の接続配線部の波打ち高さをW、前記第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さをHとした場合に、W≦0.75Hの関係が成立するように、前記加熱加圧処理を行う際の圧力を調整して、前記第1、第2の接続配線部を接続する
ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−160765(P2012−160765A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121349(P2012−121349)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2006−80400(P2006−80400)の分割
【原出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2006−80400(P2006−80400)の分割
【原出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】
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