説明

フレキシブル基板

【課題】 フレキシブル基板の面積を必要最小限に抑えるとともに、組立作業性を損なうことなく、基板内配線信号の干渉を防止することを可能にしたフレキシブル基板を提供すること。
【解決手段】 対向して配置される第一の基板301および第二の基板302を接続するフレキシブル基板303において、略同一平面内に信号配線をし、少なくとも1箇所の湾曲配線部507と、少なくとも1箇所の直線配線部508とを持ち、カバーレイの形成されていない領域504は前記直線配線部508、または前記湾曲配線部507の外周側に設け、前記直線配線部508は、互いに重なることがないことを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の電気機器の内部の基板間を接続するフレキシブルプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのように携帯して使用される電子機器には筐体の小型化および機能の充実が求められており、その要求の達成のため、リジット基板やフレキシブル基板を多数使用し、各種の電気部品の組み込みや電気回路の実装を行っている。
【0003】
カメラを例に挙げると、撮影シーケンス全体を管制するメインCPU、ストロボ回路、オートフォーカス回路、撮影情報表示用の液晶及びその駆動回路、スイッチ操作によりオン/オフされるスイッチ接点などである。
【0004】
これらの複数のリジット基板同士の接続には、フレキシブル基板や基板間コネクタが使用される。
【0005】
対向するリジット基板同士をフレキシブル基板で接続する際には、例えば、筐体側に固定されている一方のリジット基板に対象のフレキシブル基板を接続したのちに、フレキシブル基板ともう一方のリジット基板を接続し、その後フレキシブル基板が接続されたリジット基板を筐体に組み付ける作業となる。
【0006】
この組み付け作業を確実に行うためには、作業時の目視確認や、基板接続箇所に不意な負荷をかけないようフレキシブル基板には十分な大きさが必要となってしまう。
【0007】
また、組立状態では筐体内にフレキシブル基板を収めるため、フレキシブル基板が重畳するように配置させてしまうと、その重畳部分で信号の干渉を原因とする電気信号ノイズが発生するなど影響を与えることがある。
【0008】
この信号の干渉を避けるため、重畳部分に電磁波を緩和・吸収するような部材を配置したり、また、特許文献1に示す事例においては、フレキシブル基板の信号を持つ層の両面にシールド層を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-244583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、フレキシブル基板内で対向する信号同士が干渉し、ノイズが発生する虞があるとともに、フレキシブル基板のコシが固く、作業者の意図通りに曲げることが困難となる可能性があった。
【0011】
上記事情を顧みて、本発明の目的は、フレキシブル基板の面積を必要最小限に抑えるとともに、組立作業性を損なうことなく、基板内配線信号の干渉を防止することを可能にしたフレキシブル基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、
対向して配置される第一の基板301および第二の基板302を接続するフレキシブル基板303において、略同一平面内に信号配線をし、少なくとも1箇所の湾曲配線部507と、少なくとも1箇所の直線配線部508とを持ち、カバーレイの形成されていない領域503は前記直線配線部508、または前記湾曲配線部507の外周側に設け、前記直線配線部508は、電子機器1の組立後に互いに重なることがないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フレキシブル基板内配線信号の干渉がなく、且つ組立作業性を損なうことのない基板接続が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カメラの概要図
【図2】従来の基板接続図
【図3】本発明における基板接続図
【図4】従来のフレキシブル基板内の配線図
【図5】本発明におけるフレキシブル基板内の配線図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
[実施例1]
以下、図1〜5を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、カメラ背面から見た斜視図であり、撮影者側外装ユニットを取り外した状態である。
【0018】
カメラ上部中央には、カメラ本体に対してポップアップするカメラ内蔵型ストロボユニット101が設けられ、被写体に照明光を照射する。
【0019】
また、上方にファインダ接眼窓102の他、カメラの撮影前情報や設定内容、また、撮影した画像などを表示可能なカラー液晶モニタ103が設けられている。
【0020】
カラー液晶モニタ103は、カメラ背面ユニット105の一部として組み込まれており、カメラ背面ユニット105は、フレキシブル基板303によりカメラ本体側基板106と接続されている。
【0021】
フレキシブル基板303には、カラー液晶モニタ103を駆動および制御するための高速信号線が配線されている。
【0022】
カメラ背面ユニット105には、カメラの各設定を行うための各種操作ボタン107a〜eが配置されている。上部グリップ側には、撮影モード設定ダイヤル部104が設けられ、撮影シーンに合わせた撮影モードの選択が可能である。
【0023】
これらの機能を果たすための電気回路を実装したリジット基板を筐体内に収めるため、電気回路を複数のリジット基板に渡って実装し、筐体内に収めることで筐体の小型が達成できる。
【0024】
とくに、対向するリジット基板同士の接続や、外装ユニットと本体基板を接続には、フレキシブル基板を使用することで、接続作業後に接続箇所の目視確認が可能となる。
【0025】
従来、カメラ内部において、対向する一対の基板と、それら基板を接続するフレキシブル基板の構成は、図2に示すように、略直線形状のフレキシブル基板203を折り曲げて、基板201と基板202とを接続する構成が一般的である。しかし、この場合、図2のA方向から見ると、フレキシブル基板203の折り曲げ部が重なっており、フレキシブル基板203内部に高速信号のパターンが配線された場合に、フレキシブル基板203内部のパターン同士がノイズ干渉を引き起こし、結果的にカメラの性能に影響を及ぼしていた。
【0026】
そこで、本発明においては、図3に示すように、対向する基板第一の基板301と、第二の基板302とを接続するフレキシブル基板303を略U字形状とし、フレキシブル基板303内部の配線パターンが、筐体内で略同一平面となるよう配線した。つまり、B方向から見て、フレキシブル基板303内部の配線パターンが重ならない構成とすることで、フレキシブル基板303内部に高速信号のパターンが配線された場合でも、フレキシブル基板303内部のパターン同士がノイズ干渉を引き起こすことを防止している。
【0027】
次に、フレキシブル基板303内部の配線パターンの詳細について説明する。
【0028】
従来、図4に示すように、組立工程などで発生する外的ストレスによるフレキシブル基板401内部の配線パターンの破損防止のため、フレキシブル基板401の外形近傍に、信号処理に使用しないダミー配線パターン402を設けているものがあった。しかしこの場合、ダミー配線パターン402を設けることにより、フレキシブル基板401の外形を拡大する必要があり、結果的に、フレキシブル基板401自体が高コストになっていた。
【0029】
図5は本発明におけるフレキシブル基板の構成を示す。図5(a)は両面フレキのB面(裏面)側配線パターンを、 図5(b) は両面フレキのA面(表面)側配線パターンを、 図5(c)における503は、フレキシブル基板303において、カバーレイの形成されていない領域であるA面(表面)側のカバーレイ開口領域を示す。カバーレイ開口領域においては、フレキシブル基板303の厚みが薄く形成されるため、その領域においてフレキシブル基板303が柔らかくなり、曲げ性に優れている。
【0030】
図5(a)および(b)に示すように、フレキシブル基板303内部の配線パターンは、湾曲配線部507と直線配線部508とで構成され、フレキシブル基板303のA面(表面)に、信号502を配線し、高速信号502の両端およびB面(裏面)に信号501(a)、信号501(b)を配線している。
【0031】
また、フレキシブル基板303内部の配線パターンの湾曲配線部507と直線配線部508との境界に、フレキシブル基板303の一方の面内の配線パターンと、他方の面内の配線パターンとを接続するスルーホール504を設けている。
【0032】
スルーホール504は、両面内の配線パターンを電気的に互いに接続することに加えて、スルーホール504内部にメッキ処理が施されていることで、両面内の配線パターンを機械的にも接続している。
【0033】
この構成により、フレキシブル基板303は、両面絶縁部・両面配線部・片面配線部と柔剛の交互の構造により、亀裂の進行を抑制することができる。
【0034】
また、A面(表面)の最端側の配線パターン501(a)が破断したときには、A面(表面)の最端側の配線パターン501(a)とB面(裏面)に配線された信号501(b)がスルーホール504により電気的に接続しているため、フレキシブル基板303としての機能を果たすことができる。
【0035】
組立工程においては、フレキシブル基板303の接続端子部を開くように作業するため、U字部に外的ストレスが集中する。U字部に亀裂が入った際には、U字部前後に配置されたスルーホール504により、信号の断線が回避されるため、フレキシブル基板303は機能を果たすことが可能である。
【0036】
さらに、図5の(c)に示すように、フレキシブル基板303においてカバーレイの形成されていない領域503を、フレキシブル基板303の両端には設置せず、直線配線部508のみに配置する。カバーレイの形成されていない領域503を設置した箇所においては、フレキシブル基板303の剛性が、カバーレイの形成されていない領域503を設置していない箇所と比較して弱くなる。また、本実施例では、カバーレイの形成されていない領域503を直線配線部508のみとしたが、この直線配線部508に加えて、フレキシブル基板303の湾曲配線部507の外周側にもカバーレイの形成されていない領域504に設置することも可能である。
【0037】
以上の構成により、図3のように、対向する基板同士についてフレキシブル基板303を接続させる際に、接続に使用するコネクタ(不図示)に対する、基板面内方向であるC方向のズレが小さく、且つ、基板面直方向であるD方向に対しては、フレキシブル基板303の剛性を小さくすることで自由度を持たせ、フレキシブル基板303の作業性を良好なものにしている。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
303 フレキシブル基板
501a フレキシブル基板B面の配線信号
501b フレキシブル基板B面の配線信号
502 フレキシブル基板A面の配線信号
503 カバーレイの形成されていない領域
504 スルーホール
505 コネクタへの接続部
506 コネクタへの接続部
507 湾曲配線部
508 直線配線部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置される第一の基板(301)および第二の基板(302)を接続するフレキシブル基板(303)において、同一平面内に信号配線をし、少なくとも1箇所の湾曲配線部(507)と、少なくとも2箇所の直線配線部(508)とを持ち、カバーレイの形成されていない領域(503)は前記直線配線部(508)に設けられ、前記湾曲配線部(507)の内周側には設けられない、また、前記直線配線部(508)は、前記第一の基板(301)および前記第二の基板(302)が電子機器1に固定される際には、互いに重なることがないことを特徴とするフレキシブル基板(303)。
【請求項2】
前記カバーレイの形成されていない領域(503)は、前記基板(301)および(302)に接続するコネクタ部(505)および(506)には設けないことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板(303)。
【請求項3】
前記湾曲配線部(507)は、前記直線配線部(508)内の配線方向を、180°変更する配線であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板(303)。
【請求項4】
液晶駆動用のデジタル系回路を含むプリント基板と、液晶部材に接続された基板とを接続することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板(303)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−146901(P2012−146901A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5670(P2011−5670)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】