説明

フレキシブル配線板の製造方法

【課題】製造工程の簡略化が可能であり、製造コストの削減か可能となると共に、連続生産にも対応可能なフレキシブル配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のフレキシブル配線板の製造方法は、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層11の一方の主面上に貫通孔形成部位を有する銅箔12を形成する導電層形成工程と、銅箔12を介してブラインドビア形成部位12a〜12cの樹脂層11を溶解除去して貫通孔15a〜15cを形成する貫通孔形成工程と、貫通孔15a〜15cが形成された樹脂層11の他方の主面上に銅箔16を設けてブラインドビア17a〜17cを形成するブラインドビア形成工程と、ブラインドビア17a〜17cに銅めっき18を施して銅箔12と銅箔16とを電気的に接続するめっき工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクス機器等に用いられるフレキシブル配線板の製造方法に関し、特にビルドアップ法に好適に用いることが可能なフレキシブル配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末機などに採用されているフレキシブル配線板は、部品実装密度向上のため、配線回路のファイン化や多層化(両面、又は多層)が求められてきた。その結果、両面フレキシブル配線板や多層フレキシブル配線板の比率が増え、その生産量が急増している。
【0003】
従来、両面フレキシブル配線板や多層フレキシブル配線板の製造工程では、ドリル加工を用いて形成された貫通ビアにより各導電層の層間接続が行われてきた。最近では、配線密度を上げるために、レーザー加工を用いて形成されたブラインドビアにより各導電層を層間接続したフレキシブル配線板が増加している。しかしながら、レーザー加工では、1穴ずつ加工するため、生産効率が悪く、またレーザー加工後にレーザー加工かす(スミア)の除去も必要であるため、コストダウンの大きな障害になっている。また、ブラインドビア形成は、製造工程の初期に行う必要があるため、ロールツーロールによる連続生産の拡大にも大きな障害にもなっている。
【0004】
ブラインドビア形成技術は、主に両面フレキシブル配線板、多層フレキシブル配線板、あるいはリジッド・フレキ配線板のコア基板として使われる両面フレキシブル基板に数多く採用されている。両面フレキシブル基板は、ポリイミドフイルムの両面に接着剤で銅箔を貼り付けた接着剤付き両面フレキシブル基板と、ポリイミド樹脂の両面に銅箔を貼り付けた接着剤なし両面フレキシブル基板とがあるが、ブラインドビアを形成する場合には、一般的にはレーザー加工性から接着剤なし両面フレキシブル基板を用いる。以下、両面フレキシブル配線板及び多層フレキシブル配線板に用いられるブラインドビア形成技術の概略について説明する。
【0005】
図5(a)〜図5(f)に一般的な両面フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す。まず、図5(a)に示す両面フレキシブル基板101の銅箔102、103のうち、一方の銅箔102上にエッチングレジストとなる不図示の感光性ドライフイルム(DF)をラミネートし、露光・現像、及びエッチング工程を経て、ブラインドビア形成部位102a、102bの銅箔102を除去する(図5(b))。
【0006】
次に、レーザー加工機を用いて、残された銅箔102をマスクとしてレーザー光を照射し、ポリイミド層104(絶縁基板)を除去してブラインドビア104a、104bを形成する(図5(c))。レーザー光としては、一般的には炭酸ガスレーザー、又はYAGレーザーが用いられる。またフレキシブル銅張積層板(FCCL)の場合には、ドリル加工と同様、定尺状態にして行う場合が多い。
【0007】
次にデスミア処理を行う。デスミア工程では、過マンガン酸カリウム液等の強アルカリ加熱液に浸漬してレーザー加工時に銅箔面に付着したポリイミドのかす(スミア)を除去し、ブラインドビア104a、104b内に均一な銅めっきを施すために銅箔102、103表面を清浄にする。
【0008】
次に、ブラインドビア104a、104b内壁のポリイミド層104を導電化するために、無電解銅めっき処理を行った後、通常15μm程度の厚みの銅めっき105をブラインドビア104a、104b内壁及び銅箔102、103表面に施し、銅箔102、103を電気的接続に接続する(図5(d))。最近では、無電解銅めっき処理の替わりに、ポリイミド層104にカーボン粒子を付着させ、カーボン粒子を核として電解銅めっき処理を行う方法も用いられている。
【0009】
次に、サブトラクティブ法で回路形成を行う。まず、エッチングレジストとなる感光性ドライフィルム106を両面にラミネートする(図5(e))。次いで、露光・現像、及びエッチング工程を経て所定の回路パターン107の形成が完了する(図5(f))。
【0010】
図6(a)〜図6(e)に一般的な多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す。まず、両面フレキシブル配線板111の両面にカバーレイ112a、112bを設けてコア基板113とする(図6(a))。次にコア基板113の上下面に層間接着剤、又はプリプレグを仮固定して接着層114a、114bを設ける。ここでフレキシブル部120となる部位は、あらかじめ金型等を使って接着層114a、114bを除去する。次に、2枚の片面フレキシブル基板115a、115bを上下から接着層114a、114b上に仮止めし、熱プレスを用いて加圧・加熱硬化して積層する(図6(b))。
【0011】
次に、ドリル加工による貫通ビア116の形成及びレーザー加工によるブラインドビア117a、117bの形成を施した後、無電解銅めっき処理及び電気銅めっきにより、銅めっき118を施して片面フレキシブル基板115a、115bの導電層及びコア基板113の導電層を電気的に接続する(図6(c))。次に片面フレキシブル基板115a、115b上へ感光性ドライフィルム119をラミネートする(図6(d))。次いで、露光・現像、及びエッチング工程を経て所定の回路パターンを形成する。
【0012】
最後に多層フレキシブル配線板のフレキシブル部120を形成するため、外層剥がしを行う。外層剥がし工程では、外層の片面フレキシブル基板115a、115bの一部をルーター加工等により除去してフレキシブル部120を形成する(図6(e))。
【0013】
上述した両面フレキシブル配線板の製造工程や多層フレキシブル配線板の製造工程で用いられる貫通ビア及びブラインドビアの形成方法としては、感光性樹脂を使用するフォトリソグラフィーを用いたビルドアップ法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−26297号公報
【特許文献2】特開2000−91743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来のフレキシブル配線板の製造方法においては、上述の如くブラインドビアの形成にレーザー加工機を使って1穴ずつ加工する必要があるため、多大なコスト(加工時間)がかかる。またレーザー加工機を用いたフレキシブル配線板のロールツーロールでの連続生産は、搬送方法や品質管理面での課題が多く導入が遅れている。そのため、ブラインドビア形成は多くの加工時間を必要とし、自動化が困難な工程となっている。また、上述したようにフレキシブル配線板の生産量が増大しているため、更なる生産性の向上及び製造コストの低減が望まれている。
【0016】
さらに、従来の多層フレキシブル配線板の製造工程では、屈曲や折り曲げを可能とするため、最終工程で外層基板を除去してフレキシブル部を形成している。この外層基板はがし工程は、コストや品質面で大きな障害になっている。
【0017】
本発明は、かかる点に鑑みて為されたものであり、製造工程の簡略化が可能であり、製造コストの削減か可能となると共に、連続生産にも対応可能なフレキシブル配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法は、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層の一方の主面上に貫通孔形成部位を有する第1導電層を形成する導電層形成工程と、前記第1導電層を介して前記貫通孔形成部位の前記樹脂層を溶解除去して貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔が形成された前記樹脂層の他方の主面上に第2導電層を設けてブラインドビアを形成するブラインドビア形成工程と、前記ブラインドビアにめっきを施して前記第1導電層と前記第2導電層とを電気的に接続するめっき工程とを具備することを特徴とする。
【0019】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法は、片面フレキシブル配線板、両面フレキシブル配線板、又は多層フレキシブル配線板のいずれかからなるコア基板と、外層基板と、が積層されてなるフレキシブル配線板の製造方法であって、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層の一方の主面上に貫通孔形成部位を有する外部導電層を形成する外部導電層形成工程と、前記外部導電層を介して前記貫通孔形成部位の前記樹脂層を溶解除去して前記外層基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記外層基板の前記貫通孔と前記コア基板の所定の部位とが一致するように前記外層基板と前記コア基板とを積層してブラインドビアを形成するブラインドビア形成工程と、前記ブラインドビアにめっきを施して前記コア基板の内部導電層と前記外層基板の外部導電層とを電気的に接続するめっき工程とを具備することを特徴とする。
【0020】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記外部導電層形成工程では、フレキシブル部形成部位の前記外部導電層を除去し、前記貫通孔形成工程では、前記フレキシブル部形成部位の前記樹脂層を溶解除去してフレキシブル部を形成することが好ましい。
【0021】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記アルカリ可溶性樹脂組成物が、少なくともポリアミド酸構造を有するポリイミド前駆体を含有することが好ましい。
【0022】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記ポリイミド前駆体が、ポリアミド酸構造及びポリイミド構造をそれぞれ構成単位として有するブロック共重合体を含有することが好ましい。
【0023】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記ポリイミド前駆体が、ポリアルキレンエーテル構造及び/又はシロキサン構造を有することが好ましい。
【0024】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記アルカリ可溶性樹脂組成物が、さらに、溶解抑止剤を含むことが好ましい。
【0025】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記溶解抑止剤が、アミド化合物又はウレア化合物であることが好ましい。
【0026】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記アルカリ可溶性樹脂組成物が、さらにリン化合物を含有することが好ましい。
【0027】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記リン化合物が、リン酸エステル化合物及び/又はホスファゼン化合物であることが好ましい。
【0028】
本発明のフレキシブル配線板の製造方法においては、前記樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂組成物を導電性フィルム基材上に塗工、加熱による脱溶剤後に得られる膜厚25μmの樹脂層の水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.50μm/sec以上であり、更に前記樹脂層を160℃以上で加熱することにより得られる水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.05μm/sec以下であり、前記樹脂層の弾性率が0.2GPa〜1.5GPaであり、前記樹脂層のガラス転移点温度が150℃以下であることが好ましい。
【0029】
本発明のフレキシブル配線板は、上記フレキシブル配線板の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、製造工程の簡略化が可能であり、製造コストの削減が可能となると共に、連続生産にも対応可能な両面フレキシブル配線板の製造方法及び多層フレキシブル配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る両面フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板に用いられるコア基板の製造工程の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフレキシブル部を有する多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。
【図5】一般的な両面フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。
【図6】一般的な多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法においては、接着層としてのアルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層と、この樹脂層上に設けられた導電層とを備えた片面フレキシブル基板を用いてフレキシブル配線板を製造する。本実施の形態においては、アルカリ可溶性樹脂組成物を含有する樹脂層を用いることにより、レーザー加工及びドリル加工を行わずに樹脂層を溶解除去して貫通孔を形成することができるので、製造工程の簡略化及び製造コストの削減が可能となる。以下、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法を用いた両面フレキシブル配線板の製造工程及び多層フレキシブル配線板の製造工程について説明する。
【0033】
(両面フレキシブル配線板の製造工程)
図1(a)〜図1(f)に本発明の実施の形態に係る両面フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す。両面フレキシブル配線板の製造には、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層11と、この樹脂層11の一方の主面上に設けられた銅箔12とを備えた片面フレキシブル配線板13が用いられる(図1(a))。
【0034】
まず、銅箔12上に不図示の感光性ドライフィルムをラミネートし、露光・現像によってブラインドビア形成部位12a〜12c(貫通孔形成部位)のドライフィルムを除去する。次いで、ブラインドビア形成部位12a〜12cの銅箔12をエッチングにより除去してコンフォーマルマスク14を形成する(図1(b))。次に、ブラインドビア形成部位12a〜12cの樹脂層11をアルカリ液により溶解除去して貫通孔15a〜15cを形成する(図1(c))。アルカリ液としては、樹脂層11として用いるアルカリ可溶性樹脂組成物を溶解できるものであれば特に限定されず、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液を用いることができる。また、アルカリ液による樹脂層の溶解除去は、一般的なフレキシブル配線板の製造工程で用いられているアルカリスプレー装置などを用いることができる。
【0035】
次に、貫通孔15a〜15cが設けられた樹脂層11の他方の主面側から銅箔16を貼り合せてブラインドビア17a〜17cを形成する(図1(d))。次いで、ブラインドビア17a〜17c内壁及び銅箔12の表面に無電解銅めっき処理を行い、ブラインドビア17a〜17c内の樹脂層11を導電化する。次に、ブラインドビア17a〜17c内壁及び銅箔12表面に銅めっき18を施して銅箔12と銅箔16とを電気的接続に接続する(図1(e))。
【0036】
次いで、銅めっき18の所定の部位に不図示の感光性ドライフィルムをラミネートし、露光・現像により感光性ドライフィルムをパターニングする。次に、エッチングによって銅箔12を除去して回路パターン19を形成する(図1(f))。以上の工程により両面フレキシブル配線板20が製造される。
【0037】
(多層フレキシブル配線板の製造工程)
次に、多層フレキシブル配線板の製造工程について説明する。多層フレキシブル配線板は、両面フレキシブル配線板を用いて製造されるコア基板と、片面フレキシブル基板を用いて製造される外層基板とを貼り合わせて製造する。
【0038】
図2(a)〜図2(e)に多層フレキシブル配線板に用いられるコア基板29の製造工程の概略を示す。コア基板29は、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層21と、この樹脂層21の一方の主面に設けられた銅箔22と、他方の主面に設けられた銅箔23とを備えた両面フレキシブル配線板24を用いて製造する(図2(a))。なお、コア基板は、片面フレキシブル配線板、両面フレキシブル配線板、又は多層フレキシブル配線板など、各種フレキシブル配線板を用いて製造することもできる。
【0039】
まず、銅箔22上に不図示のドライフィルムをラミネートし、露光・現像によりブラインドビア形成部位21a(貫通孔形成部位)のドライフィルムを除去する。次いで、エッチングにより銅箔22、23を除去してコンフォーマルマスクを形成する。次に、ブラインドビア形成部位21aに対応する位置の樹脂層21をアルカリ液により溶解除去して貫通孔25を形成し、ドライフィルムを除去する(図2(b))。アルカリ液としては、樹脂層21として用いたアルカリ可溶性樹脂組成物を溶解できるものであれば特に限定されない。
【0040】
次に、貫通孔25の内壁及び銅箔22、23の表面に無電解銅めっき処理を施し、貫通孔25内の樹脂層21を導電化する。次いで、貫通孔25内壁及び銅箔22、23表面に銅めっき26を施して銅箔22と銅箔23とを電気的接続に接続する(図2(c))。
【0041】
次に、銅めっき26の所定の部位に感光性ドライフィルム27をラミネートし、露光・現像により感光性ドライフィルム27をパターニングする(図2(d))。次いで、エッチングによって銅箔22、23をパターニングして回路パターン28を形成する。以上の工程によりコア基板29が製造される(図2(e))。
【0042】
図3(a)〜図3(e)に多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す。まず、銅箔30と、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む接着層としての樹脂層31とが積層された2枚の片面フレキシブル配線板を用いて外層基板33、34を製造する。まず、銅箔30上に不図示の感光性ドライフィルムをラミネートし、露光・現像によってブラインドビア形成部位30a〜30d(貫通孔形成部位)のドライフィルムを除去する。次いで、エッチングによってブラインドビア形成部位30a〜30dの銅箔30を除去し、アルカリ液によって樹脂層31を溶解除去して貫通孔32a〜32dを形成して外層基板33、34を製造する(図3(a))。
【0043】
次に、コア基板29の一方の主面側の回路パターン28と樹脂層31とが対向するように外層基板33を接合し、他方の主面側の回路パターン28と樹脂層31とが対向するように外層基板34を接合する(図3(b))。ここで、外層基板33、34の貫通孔32a〜32dによって、ブラインドビア35a〜35dが形成される。コア基板29の回路パターン28が内部導電層36となり、外層基板33の銅箔30及び外層基板34の銅箔30が外部導電層37となる。
【0044】
次に、外部導電層37の表面及びブラインドビア35a〜35dの内壁に無電解銅めっき処理を行い、ブラインドビア35a〜35d内の樹脂層31を導電化する。次いで、ブラインドビア35a〜35d内壁及び外部導電層37表面に銅めっき38を施し、内部導電層36と外部導電層37とを電気的に接続する(図3(c))。
【0045】
次に、銅めっき38の所定の部位に感光性ドライフィルム39をラミネートし、露光・現像によりパターニングする(図3(d))。次いで、エッチングによって外部導電層37をパターニングして回路パターン40を形成し、感光性ドライフィルム39を除去することにより多層フレキシブル配線板41が製造される(図3(e))。
【0046】
次に、フレキシブル部を有する多層フレキシブル配線板の製造方法について説明する。図4(a)〜図4(e)にフレキシブル部を有する多層フレキシブル配線板の製造工程の概略を示す。なお、以下の説明においては、上述した多層フレキシブル配線板の製造方法との相違点を中心に説明し、説明の重複を避ける。
【0047】
まず、銅箔50上に不図示のドライフィルムをラミネートし、露光・現像によってブラインドビア形成部位(貫通孔形成部位)及びフレキシブル部50aの銅箔50を除去する。次いで、アルカリ液によりアルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層51を溶解除去してブラインドビア形成部位に貫通孔52a〜52dを形成すると共に、フレキシブル部50aの樹脂層51を除去する。以上のようにして外層基板53、54を製造する(図4(a))。
【0048】
次に、コア基板29の一方の主面側の回路パターン28と樹脂層51とが対向するようにして外層基板53を接合し、他方の主面側の回路パターン28と樹脂層51とが対向するようにして外層基板54を接合する(図4(b))。ここで、外層基板53、54に設けられた貫通孔52a〜52dによって、ブラインドビア55a〜55dが形成される。コア基板29の回路パターン28が内部導電層56となり、外層基板53の銅箔50及び外層基板54の銅箔50が外部導電層57となる。
【0049】
次いで、外部導電層57の表面及びブラインドビア55a〜55dの内壁に無電解銅めっき処理を行い、ブラインドビア55a〜55d内の樹脂層51を導電化する。次に、ブラインドビア55a〜55d内壁及び外部導電層57表面に銅めっき58を施し、内部導電層56と外部導電層57とを電気的に接続する(図4(c))。
【0050】
次いで、銅めっき58の所定の部位に感光性ドライフィルム59をラミネートし、露光・現像により感光性ドライフィルム59をパターニングする(図4(d))。次いで、エッチングによって外部導電層57をパターニングして回路パターン60を形成する。最後に感光性ドライフィルム59を除去することにより多層フレキシブル配線板61が製造される(図4(e))。
【0051】
上述した実施の形態によれば、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層を用いることにより、アルカリ液によって樹脂層を溶解除去できる。このため、レーザー加工やドリル加工を必要とすることなく容易にブラインドビアを形成できる。また、銅箔表面に異物(スミア)が生じることが無いので、デスミア処理などが不要となる。したがって、ブラインドビア形成コストを大幅に削減でき、またロールツーロール生産が容易にでき、大幅な生産リードタイム短縮ができる両面フレキシブル配線板や多層フレキシブル配線板の生産が可能となる。
【0052】
また、上述した実施の形態においては、両面フレキシブル配線板や多層フレキシブル配線板の層間絶縁体の機能を有する層間接着剤として、従来の熱硬化型接着剤ではなく加熱硬化後に再度接着性付与したアルカリ可溶性樹脂組成物を用いることが可能となる。このため、層間接続のためのブラインドビア形成にレーザー加工を用いることなくフレキシブルプリント配線板の製造工程で一般的に使用されているエッチング装置、アルカリ液スプレー装置、及びラミネート設備等を使用することが可能となる。また、両面フレキシブル配線板のブラインドビア形成だけではなく、多層フレキシブル配線板のブラインドビア形成にも適用できる。
【0053】
また、上記実施の形態によれば、コア基板と外層基板との間にカバーレイを設けることなく多層フレキシブル配線板を構成することが可能となる。このため、従来の多層フレキシブル配線板の製造方法によって製造された多層フレキシブル配線板と比較して構成の簡素化が可能となると共に、製造工程の大幅な簡略化が可能となる。
【0054】
さらに、上記実施の形態によれば、多層フレキシブル配線基板の製造工程において、ブラインドビアの形成と共に、外層基板を除去してフレキシブル部を形成することも可能となる。このため、上記ブラインドビア形成技術を多層フレキシブル配線板の外層基板剥がし工程に展開して、ブラインドビア形成工程と同時に外層除去部の銅箔エッチングと絶縁層であるアルカリ可溶性樹脂組成物を溶解除去することにより、容易に外層基板をはがしてフレキシブル部を形成することが可能となる。
【0055】
(アルカリ可溶性樹脂組成物)
次に、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法に用いられるアルカリ可溶性樹脂組成物について説明する。アルカリ可溶性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の層間絶縁層をなす接着材としての樹脂層の形成に用いられる。アルカリ可溶性樹脂組成物としては、少なくともアルカリ可溶性樹脂を含むものであれば限定されない。アルカリ可溶性樹脂としては、コンフォーマルマスク形成後のアルカリ液による溶解処理で溶解するものであれば特に限定されない。
【0056】
樹脂層は、フレキシブル配線板のフレキシブル部での柔軟性を付与するためやロールツーロール法での成型を可能にするために、低弾性率であることが好ましい。樹脂層の導電性フィルム基材上に塗工、加熱による脱溶剤後に得られる膜厚25μmの樹脂層の水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.50μm/sec以上であり、更に樹脂層を160℃以上で加熱することにより得られる水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.05μm/sec以下であり、樹脂層の弾性率が0.2GPa〜1.5GPa、ガラス転移点温度が150℃以下であることが好ましい。樹脂層のアルカリ溶解速度が上記範囲内であれば、樹脂層のアルカリ溶解性の制御が容易となり、フレキシブルプリント配線板製造工程で一般的に使用されているアルカリ液スプレー装置が使用できる。また、樹脂層の弾性率が0.2GPa〜1.5GPaであれば、基板の反りが小さく、且つ、柔軟性に優れる。ガラス転移点温度が150℃以下、好ましくは、50℃〜120℃であれば、一般的なラミネート装置を用いてのラミネート加工ができるため好ましい。
【0057】
樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂組成物を導電性基材フィルムに塗布しても良いし、一旦、フィルムに成膜してから導電性基材にラミネートしても良い。得られた樹脂層を必要に応じて加温させることで、接着性のある樹脂層が形成される。
【0058】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えばノボラック樹脂、アクリル樹脂、スチレンとアクリル酸との共重合体、ヒドロキシスチレンの重合体、ポリビニルフェノール、ポリα−メチルビニルフェノール、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂などが挙げられる。
【0059】
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性を有するために分子鎖中にカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。さらに200℃以下の加熱後に得られる樹脂層の耐熱性や柔軟性の観点より、分子中にカルボキシル基を有する(以下、分子中にカルボキシル基を含むものをカルボキシル基含有とする)ポリイミド、ポリイミド前駆体、カルボキシル基含有ポリベンゾオキサゾール、カルボキシル基含有ポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましい。下記一般式(1)で表されるポリアミド酸、分子中にカルボキシル基を有する(以下、カルボキシル基含有)ポリアミド酸エステル構造を有するポリマーが更に好ましい。
【0060】
本実施の形態においては、ポリイミド前駆体、下記一般式(1)で表されるポリアミド酸、ポリアミド酸エステル構造を有するカルボキシル基含有ポリマーを用いることにより、通常の生産ラインで使用される比較的弱塩基性水溶液で樹脂層を溶解することができ、回路基板の品質に優れるフレキシブル配線板を得ることができる。
【0061】
【化1】

(式(1)中、Rは4価の有機基である。R、Rは水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは2価〜4価の有機基である。R、Rは水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、R及びRが水素でないとき、m+n>0かつn>0であり、Rは水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基、Rは水素である。R、Rの少なくとも一方が水素のときm+n≧0であり、かつR、Rは水素又は炭素数1〜炭素数20の有機基であって、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0062】
アルカリ可溶性樹脂として、下記一般式(2)で表されるポリアミド酸がさらに好ましい。
【0063】
【化2】

(式(2)中、Rは炭素数2以上である4価の有機基を示し、Rは炭素数2以上の2価の有機基を示す。)
【0064】
ポリイミド前駆体は、好ましくは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合させて製造されるが、その使用されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとしては、例えば、以下に示すものがある。
【0065】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ニ無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンニ無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物などを挙げられる。
【0066】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボンサン二無水物、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これらのテトラカルボン酸二無水物の内、加熱処理を経て形成される絶縁層の柔軟性を高める観点から、ピロメリット酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタンニ無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンニ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタンニ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタンニ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンニ無水物、3,3’−オキシジフタル酸ニ無水物、4,4’−オキシジフタル酸ニ無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステルが好ましい。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0068】
ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(4‘−アミノフェノキシ)ペンタン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(γ−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン、下記一般式(3)で表されるジアミノシロキサン化合物などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0069】
【化3】

【0070】
上記一般式(3)において、R、R10は炭素数1以上炭素数30以下の有機基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。炭素数1以上炭素数30以下の有機基(R)としては、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、環状構造を含む官能基、及びそれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0071】
上記脂肪族飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの第一級炭化水素基、イソブチル基、イソペンチル基などの第二級炭化水素基、t−ブチル基などの第三級炭化水素基などが挙げられる。
【0072】
上記脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、アリル基などの二重結合を含む炭化水素基、エチニル基などの三重結合を含む炭化水素基などが挙げられる。
【0073】
上記環状構造を含む官能基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロデシル基、シクロオクチル基などの単環式官能基;ノルボルニル基、アダマンチル基などの多環式官能基;ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン構造を有する複素環式官能基;ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環構造を含む芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0074】
上記炭素数1以上炭素数30以下の有機基(R)は、ハロゲン原子、ヘテロ原子及び金属原子を含むことができる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、ヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。また、金属原子としては、ケイ素及びチタンが挙げられる。
【0075】
また、炭素数1以上炭素数30以下の有機基(R)がヘテロ原子及び/又は金属原子を含む場合、有機基(R)は結合するヘテロ原子及び/又は金属原子に直接結合していても、ヘテロ原子及び/又は金属原子を介して結合していても良い。
【0076】
上記一般式(3)で表される化合物として、例えば、シリコーンジアミン(信越化学工業社製、PAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−1660B−3)が挙げられる。
【0077】
の炭素数は、難燃性を考慮して、1以上20以下が好ましい。さらに、生成するポリイミドの溶媒溶解性の観点から、Rの炭素数は、1以上10以下が特に好ましい。
【0078】
またジアミンには、鎖状ポリエーテルを分子構造内に有するジアミンを用いることも好ましく、下記一般式(4)、または下記一般式(5)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0079】
【化4】

(式(4)中、bは1〜50の整数を表し、R11はそれぞれ独立に炭素数2〜炭素数10のアルキレン基を表す。)
【0080】
【化5】

(式(5)中、R12、R13、R14、R15、R16はそれぞれ独立して炭素数1〜炭素数20のアルキレン基を表し、それぞれ独立して炭素数1〜炭素数5のアルキル基を1個以上、有していても良い。c、d、eはそれぞれ独立して0以上の整数を表す。)
【0081】
上記一般式(4)で表されるジアミンとしては、例えば、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、両末端が、p−アミノ安息香酸エステル基のものが好ましく、その中でも、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートが好ましく用いられる。また、ジアミンを2種以上使用しても良い。
【0082】
上記一般式(4)で表されるジアミンは、全ジアミンに対して上記一般式(4)で表されるジアミンを25モル%〜55モル%含む。好ましくは25モル%〜50モル%、より好ましくは30モル%〜50モル%である。25モル%以上であれば、柔軟性を示し、55モル%以下であれば、耐溶剤性と耐熱性に優れる。
【0083】
また上記一般式(5)で表されるジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキシオクタン等のポリオキシエチレンジアミンや、ポリオキシプロピレンジアミン、そのほか長さの異なるオキシアルキレン基を含むものなどのポリオキシアルキレンジアミン等が挙げられる。ポリオキシアルキレンジアミン類としては米ハンツマン社によるジェファーミンEDR−148、EDR−176などのポリオキシエチレンジアミン、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000などのポリオキシプロピレンジアミン、HK−511、ED−600、ED−900、ED−2003、XTJ−542などの異なるオキシアルキレン基をもつものなどの市販品が、使用例として挙げられる。特に、中でも比較的分子量の低いEDR−148、D−230、D−400、HK−511などは比較的高いガラス転移温度をもつポリマーとなり得るため、耐熱性、耐薬品性が必要な用途で使用することができる。一方、比較的分子量の高いD−2000などは柔軟性、低沸点溶媒溶解性等に優れる。また、純度が高いものを用いた方がポリアミド酸として高分子量のものを得やすく、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98.5%以上である。
【0084】
上記一般式(5)で表されるジアミンは、全ジアミンに対して25モル%〜60モル%であることが好ましい。さらに好ましくは25モル%〜50モル%、より好ましくは30モル%〜50モル%である。25モル%以上であれば、柔軟性を示し、60モル%以下であれば、耐溶剤性と耐熱性に優れる。
【0085】
これらのジアミンの内、加熱処理を経て形成される絶縁層の柔軟性を高める観点から、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(4'−アミノフェノキシ)ペンタン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(γ−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン、上記一般式(3)で表されるジアミノシロキサン化合物、鎖状ポリエーテルを分子構造内に有する上記一般式(4)、または上記一般式(5)で表される化合物が好ましい。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0086】
また、ポリイミド前駆体は、ポリアミド酸構造に加えて、ポリイミド構造を有していることも好ましい。イミド化率は0%〜99.9%の範囲内が好ましく、0%〜90%の範囲内がより好ましく、0%〜80%の範囲内が更に好ましい。
【0087】
次にポリイミド前駆体の製造方法について述べる。ポリイミド前駆体は、最新ポリイミド〜基礎と応用〜 日本ポリイミド研究会編 pp4〜pp49などに記載の公知の方法で容易に合成することができる。具体的には、低温から100℃以下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとを反応させジエステルを合成し、その後に縮合剤の存在下、ジアミンと反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとを反応させジエステルを合成し、その後、残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、次いでジアミンと反応させる方法などがある。低温から100℃以下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法が好ましい。
【0088】
反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。このような反応において用いられる溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0089】
この反応における反応原料の濃度は、通常、2質量%〜60質量%、好ましくは5質量
%〜50質量%、さらに好ましくは10質量%〜45質量%である。
【0090】
重合させる酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.8〜1.2の範囲内である。この範囲内の場合、分子量を上げることができ、伸度等にも優れる。好ましくは0.9〜1.1、より好ましくは0.95〜1.05である。
【0091】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、5000以上100000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。重量平均分子量は10000以上60000以下がより好ましく、20000以上50000以下が最も好ましい。重量平均分子量が5000以上100000以下であると樹脂組成物を用いて得られる絶縁層の反りが改善され、柔軟性、及び耐熱性に優れる。
【0092】
イミド構造を導入するには、上記で得られたポリイミド前駆体を好ましくは100℃〜400℃に加熱してイミド化するか、または無水酢酸等のイミド化剤を用いて化学イミド化することにより、ポリアミド酸構造に対応する繰り返し単位構造を有するポリイミドが得られる。加熱してイミド化する場合、副生する水を除去するために、共沸剤(好ましくは、トルエンやキシレン)を共存させて、ディーンシュターク型脱水装置を用いて、還流下、脱水を行うことも好ましい。
【0093】
また、80℃〜220℃で反応を行うことにより、ポリイミド前駆体の生成と熱イミド
化反応を共に進行させて、ポリイミドを得ることも好ましい。すなわち、ジアミン成分と
酸二無水物成分とを有機溶媒中に懸濁または溶解させ、80℃〜220℃の加熱下に反応
を行い、ポリイミド前駆体の生成と脱水イミド化とを共に行わせることにより、ポリイミ
ドを得ることも好ましい。
【0094】
またポリイミド前駆体は、ポリアミド酸構造体とポリイミド構造体をそれぞれ構成単位として有するブロック共重合体であることが、アルカリ溶解性を制御する点から好ましい。
【0095】
ポリイミド構造及びポリアミド酸構造をそれぞれ繰り返し単位として有するポリイミド前駆体は、酸二無水物とジアミンを非等モル量で反応させて1段階目のポリアミド酸を合成する工程(工程1)、続いてイミド化する工程(工程2)、続いて2段階目のポリアミド酸を合成する工程(工程3)により作製することができる。
【0096】
さらにポリアミド酸−ポリイミドブロック体として、ポリイミドブロックに、上記一般式(3)で表される鎖状シロキサン構造を分子構造内に有するジアミン、上記一般式(4)、上記一般式(5)のいずれかで表される鎖状ポリエーテルを分子構造内に有するジアミンを導入することが好ましい。これらのジアミンの末端をイミド構造に変換することにより、アルカリ可溶性樹脂組成物の貯蔵安定性を向上させることが出来る。以下、それぞれの工程について説明する。
【0097】
(工程1)
1段階目のポリアミド酸を合成する工程について説明する。1段階目のポリアミド酸を合成する工程としては特に限定されず、公知の方法を適用することができる。より具体的には、以下の方法により得られる。まずジアミンを重合反応溶媒に溶解及び/又は分散し、これに酸二無水物粉末を添加し、メカニカルスターラーを用い、0.5時間〜96時間好ましくは0.5時間〜30時間撹拌する。この際モノマー濃度は0.5質量%以上、95質量%以下、好ましくは1質量%以上、90質量%以下である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより、ポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0098】
ポリアミド酸の製造の際に使用される反応溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上炭素数6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ―ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物、炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物、炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0099】
1段階目のポリアミド酸の製造の際の反応温度は、シリコーンジアミンの反応性の観点から、100℃以上250℃以下が好ましい。100℃以上あれば反応が開始され、また250℃以下であれば副反応等の影響が無い。好ましくは120℃以上220℃以下、さらに好ましくは120℃以上200℃以下である。ポリアミド酸の反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には好ましくは、30分から30時間の範囲で実施される。
【0100】
(工程2)
次に、ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。本発明に係るポリイミド部位を製造する際は、公知のイミド化触媒を添加することによっても、無触媒によっても、得ることができる。本発明におけるイミド化触媒は特に制限されないが、無水酢酸のような酸無水物、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−テトロン酸、γ−フタリド、γ−クマリン、γ−フタリド酸のようなラクトン化合物、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエチルアミンのような三級アミンのなどが挙げられる。また、必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。この中でも特に、反応性の高さ及び次反応への影響の観点からγ−バレロラクトンとピリジンの混合系及び無触媒が特に好ましい。
【0101】
イミド化触媒の添加量は、ポリアミド酸を100質量部とすると、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。反応溶媒としては、ポリアミド酸の製造に使用したものと同じものを用いることができる。その場合、ポリアミド酸溶液をそのまま用いることができる。また、ポリアミド酸の製造に用いたものと異なる溶媒を用いてもよい。
【0102】
このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上炭素数6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ―ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。
【0103】
これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物、炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物、炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0104】
本発明に係るポリイミドの製造においては、反応温度は15℃以上、250℃以下で実施することが好ましい。15℃以上あれば反応が開始され、また250℃以下であれば触媒の失活が無い。好ましくは20℃以上、220℃以下、さらに好ましくは20℃以上、200℃以下である。反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲で実施される。
【0105】
(工程3)
次に、2段階目のポリアミド酸を合成する工程について説明する。2段階目のポリアミド酸の合成方法については、1段階目のポリアミド酸と同様の方法で実施することができる。
【0106】
2段階目の重合反応温度については、0℃以上250℃以下が好ましく、得られるポリイミド前駆体の分子量の観点から0℃以上100℃以下が好ましく、0℃以上、80℃以下が特に好ましい。製造終了後における、ポリイミド前駆体の回収は、反応溶液中の溶媒を減圧留去することに行うことができる。
【0107】
ポリイミド前駆体の精製方法としては、反応溶液中の不溶解な酸二無水物及びジアミンを減圧濾過、加圧濾過などで除去する方法が挙げられる。また、反応溶液を貧溶媒に加え析出させる、いわゆる再沈殿による精製法を実施することができる。更に特別に高純度なポリイミド前駆体が必要な場合は、超臨界二酸化炭素を用いた抽出法による精製も可能である。
【0108】
ポリイミド前駆体のポリマー主鎖の末端は、モノアミン誘導体またはカルボン酸誘導体からなる末端封止剤で末端封止することが好ましい。ポリイミド前駆体のポリマー主鎖を末端封止することにより、貯蔵安定性が向上する。
【0109】
モノアミン誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンズニトリル、p−アミノベンズニトリル、m−アミノベンズニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセンなどの芳香族モノアミンを挙げることができ、この中で好ましくはアニリンの誘導体が使用される。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0110】
カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、主に無水カルボン酸誘導体が挙げられ、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物などの芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸無水物の中で、好ましくは無水フタル酸が使用される。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0111】
ポリイミド前駆体は、主鎖中のポリアミド酸構造以外に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基からなる群から選ばれた官能基を有することも好ましい。このようなポリイミド前駆体は、例えば、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するジアミンを共重合させても良いし、ジアミン末端のポリイミド前駆体と分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有する酸無水物と反応させることによっても、酸無水物末端のポリイミド前駆体とカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するアミン化合物を反応させることによっても、得ることができる。
【0112】
分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するアミン化合物としては、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸などが挙げられる。
【0113】
分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有する酸無水物としては、トリメリット酸無水物などのカルボキシル基含有酸無水物、などが挙げられる。
【0114】
ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基に由来する部位の導入率については、現像性を向上させるため、得られる樹脂層の柔軟性を損なわない範囲で決定する。好ましくは、0.5mol%以上、10mol%以下である。
【0115】
またアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性を制御する目的のため、溶解抑止剤を含んでもよい。本発明において溶解抑止剤とは、カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基と水素結合する化合物をいう。アルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基が溶解抑止剤と水素結合することでアルカリ液から遮蔽され、溶解を制御することが可能となる。
【0116】
カルボキシル基と水素結合する基を有する化合物としては、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、アミド化合物、ウレア化合物などが挙げられる。アルカリ水溶液への溶解抑止効果及び保存安定性の観点より、アミド化合物、ウレア化合物が好ましい。
【0117】
アミド化合物としては、例えば、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、N,N−ジメチルブチルアミド、N,N−ジブチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチロキサミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、サリチルアミド、サリチルアニリド、アセトアニリド、2’−ヒドロキシフェニルアセトアニリド、3’−ヒドロキシフェニルアセトアニリド、4’−ヒドロキシフェニルアセトアニリドが挙げられる。
【0118】
中でも、加熱硬化後の絶縁層の低Tg化の観点より、芳香族水酸基を含有するアミド化合物がより好ましい。具体的には、4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、3’−ヒドロキシフェニルアセトアニリド、4’−ヒドロキシフェニルアセトアニリドが挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0119】
ウレア化合物としては、例えば、1,3−ジメチルウレア、テトラメチルウレア、テトラエチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、3−ヒドロキシフェニルウレアが挙げられる。中でも、加熱硬化後の絶縁層の低Tg化の観点より、芳香族水酸基を含有するウレア化合物がより好ましい。具体的には3−ヒドロキシフェニルウレアが挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0120】
溶解抑止剤は、アミド化合物を用いる場合、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸1molに対して、溶解抑止効果発現の点から0.1mol〜1.5mol以下を配合することが好ましく、0.15mol〜1.0mol配合することがより好ましい。
【0121】
溶解抑止剤は、ウレア化合物を用いる場合、アルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基1molに対して、溶解抑止効果発現の点から0.1mol〜1.5mol以下が好ましい。溶解抑止効果発現及びアルカリ現像後のキュアで得られるポリイミドの機械物性の観点から、0.15mol〜0.5mol配合することがより好ましい。
【0122】
また、アミド化合物とウレア化合物との両方を用いる場合には、アミド化合物とウレア化合物の総量が、溶解抑止効果の観点から、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸1molに対して、0.1mol〜1.5molの範囲が好ましい。
【0123】
また、アルカリ可溶性樹脂組成物による樹脂層難燃性の点からリン化合物を含有することが好ましい。リン化合物は、構造中にリン原子を含む化合物であれば限定されない。このような化合物として、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物などが挙げられる。
【0124】
リン酸エステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどの脂肪族炭化水素基を置換基とするリン酸エステル、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(以下、TBXPと略称する)などの酸素原子を含む脂肪族有機基を置換基とするリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族有機基を置換基とするリン酸エステル化合物などが挙げられる。これらの中で、現像性の観点からTBXP、トリイソブチルホスフェートが好ましい。
【0125】
ホスファゼン化合物としては、下記一般式(6)、下記一般式(7)で表される構造などが挙げられる。
【0126】
【化6】

(上記一般式(6)及び上記一般式(7)で表されるホスファゼン化合物におけるR17、R18、R19、及びR20としては、炭素数1〜炭素数20の有機基であれば限定されない。炭素数1以上であれば、難燃性が発現する傾向にあるため好ましい。炭素数20以下であれば、ポリイミド前駆体と相溶する傾向にあるため好ましい。この中で、難燃性発現の観点から、炭素数6以上炭素数18以下の芳香族性化合物に由来する官能基が特に好ましい。)
【0127】
このような官能基として、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基などのフェニル基を有する官能基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基を有する官能基、ピリジン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの含窒素複素環化合物に由来する官能基、などが挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて1種類でも2種類以上の組み合わせで用いても良い。この中で、入手の容易さからフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−シアノフェニル基、を有する化合物が好ましい。
【0128】
上記一般式(6)で表されるホスファゼン化合物におけるXは、3以上25以下の整数であれば限定されない。Xが3以上であれば、難燃性を発現し、25以下であれば、有機溶剤に対する溶解性が高い。この中で特に、入手の容易さからXは3以上10以下であることが好ましい。
【0129】
上記一般式(7)で表されるホスファゼン化合物におけるYは、3以上10000以下の整数であれば限定されない。Yが3以上であれば、難燃性を発現し、10000以下であれば、有機溶剤に対する溶解性が高い。この中で特に、入手の容易さからYは3以上100以下が好ましい。
【0130】
上記一般式(7)で表されるホスファゼン化合物におけるA及びBは、炭素数3以上炭素数30以下の有機基であれば限定されない。この中で、Aは−N=P(OC、−N=P(OC(OCOH)、−N=P(OC)(OCOH)、−N=P(OCOH)、−N=P(O)OC、−N=P(O)(OCOH)が好ましい。Bは−P(OC、−P(OC(OCOH)、−P(OC(OCOH)、−P(OC)(OCOH)、−P(OCOH)、−P(O)(OC、−P(O)(OCOH)、−P(O)(OC)(OCOH)などが好ましい。リン化合物は、1種類でも2種類以上の組み合わせで用いても良い。
【0131】
リン化合物の添加量は、ポリイミド前駆体100質量部に対し、感光性などの観点から、50質量部以下が好ましい。硬化体の難燃性の観点から、45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0132】
アルカリ溶解性樹脂組成物には、必要に応じてポリイミド前駆体、リン化合物などが均一に溶解及び/又は分散しうる溶媒を含むことができる。溶媒としては、上述のポリイミド前駆体の合成に用いる溶媒を使用することができる。
【0133】
ポリイミド前駆体を含有するアルカリ可溶性樹脂組成物を構成する溶媒は、ポリイミド前駆体を均一に溶解及び/又は分散させうるものであれば限定されない。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2〜炭素数9のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2〜炭素数6のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5〜炭素数10の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6〜炭素数10の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3〜炭素数9のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1〜炭素数10の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2〜炭素数10の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数2〜炭素数9のエーテル化合物、炭素数3〜炭素数9のエステル化合物、炭素数6〜炭素数10の芳香族炭化水素化合物、炭素数2〜炭素数10の含窒素化合物が挙げられる。また、必要に応じて、1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。ポリイミド前駆体の溶解性の観点から、トリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0134】
ポリイミド前駆体と溶媒とからなるアルカリ可溶性樹脂組成物におけるポリイミド前駆体の濃度は、樹脂成型体が製造される濃度であれば、特に制限されない。作製する樹脂成型体の膜厚の観点からポリイミド前駆体の濃度が1質量%以上、樹脂成型体の膜厚の均一性からポリイミド前駆体の濃度は90質量%以下が好ましい。得られる樹脂層の膜厚の観点から、2質量%以上、80質量%以下がより好ましい。
【0135】
アルカリ可溶性樹脂組成物には、さらに架橋剤を配合することも好ましい。これにより、キュア時にアルカリ可溶性樹脂の分子量を増加させることが可能となる。架橋剤として、例えば、のジアミン化合物のカーボネート保護基やカルバメート保護基を有するものが好ましい。架橋剤の配合量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部添加することが好ましい。
【0136】
アルカリ可溶性樹脂組成物には、その性能に悪影響を及ぼさない範囲でその他化合物を含むことが出来る。具体的には、密着性向上のための複素環化合物などが挙げられる。複素環化合物とはヘテロ原子を含む環式化合物であれば限定されない。ここで、ヘテロ原子には、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。
【0137】
複素環化合物とは、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールのようなイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールのようなN−アルキル基置換イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどの芳香族基含有イミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどのシアノ基含有イミダゾール、イミダゾールシランなどのケイ素含有イミダゾールなどのイミダゾール化合物、5−メチルベンゾトリアゾール、1−(1’、2’−ジカルボキシエチルベンゾトリアゾール)、1−(2−エチルヘキシアミノメチルベンゾトリアゾール)などのトリアゾール化合物、5−フェニルテトラゾールなどのテトラゾール化合物、2−メチル−5−フェニルベンゾオキサゾールなどオキサゾール化合物などが挙げられる。
【0138】
その他化合物の添加量は、ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.01質量部以上、30質量部以下であれば限定されない。0.01質量部以上であれば十分に密着性が向上する傾向にあり、30質量部以下であればアルカリ溶解性への悪影響がない。
【0139】
また、その他の具体的に添加剤としては、密着性向上剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、レベリング剤、分散剤、エチレン性不飽和化合物などが挙げられる。
【0140】
本発明に係るアルカリ可溶性樹脂組成物は、上記の成分を常法により混合して調製することができる。具体的には、例えば、撹拌装置及び加熱装置を備えたライカイ機、三本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これらの混合装置を適宜2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0141】
本発明に係るアルカリ可溶性樹脂組成物は、ブラインドビアを有する両面及び多層フレキシブルプリント配線板の製造に適する片面フレキシブル基板に好適に用いることができる。片面フレキシブル基板を製造するという観点からは、アルカリ可溶性樹脂組成物におけるポリイミド前駆体の濃度は、1質量%以上、90質量%以下が好ましい。ポリイミド前駆体の濃度は、片面フレキシブル基板の膜厚の観点から1質量%以上が好ましく、アルカリ可溶性樹脂組成物の粘度、膜厚の均一性の観点から90質量%以下が好ましい。得られる片面フレキシブル基板の膜厚の観点から、2質量%以上、80質量%以下がより好ましい。
【0142】
次に、片面フレキシブル基板の製造方法について説明する。まず、アルカリ可溶性樹脂組成物を基材にコートする。基材としては、ロールツーロールでの連続生産可能な塗工、乾燥設備であれば特に限定されない。このような基材としては、金属フィルム、ガラスクロス、キャリアフィルムなどが挙げられる。連続生産性やハンドリングの点からキャリアフィルムが好ましい。本発明においてキャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルが挙げられる。取扱いの良さや基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0143】
コート方法としてはバーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが例示できる。コート後、必要に応じてホットプレートなどによりプリベークと呼ばれる加熱処理を行っても良い。
【0144】
アルカリ可溶性樹脂組成物を用いる場合は、アルカリ可溶性樹脂組成物の溶液を任意の方法でキャリアフィルムなど任意の基材上に塗布後乾燥し、アルカリ可溶性樹脂組成物層をドライフィルム化した積層体を形成する。この積層体のアルカリ可溶性樹脂組成物層上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けても良い。本発明に係る積層体において、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレンなどアルカリ可溶性樹脂組成物を保護するフィルムであれば限定されない。
【0145】
次いで、積層体に導電性基材を加熱圧着し、導電性基材/アルカリ可溶性樹脂層組成物層/キャリアフィルムの3層から構成される片面フレキシブル基板を形成する。このような形成方法としては、本発明のアルカリ可溶性樹脂組成物層から保護用のカバーフィルムを剥離させ、導電性基材と接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネート等を行う方法などが挙げられる。この中で、アルカリ可溶性樹脂組成物層との接着性の観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。更に、ロールツーロールによる生産性の観点から、熱真空ラミネートが特に好ましい。導電性基材としては、電解銅箔、圧延銅箔、電着フィルム、導電性ペースト付きフィルム、アルミニウム箔フィルム、ステンレス箔フィルムなどが挙げられる。本発明のおける導電性基材フィルムは、電気伝導性や樹脂層との密着性の観点から電界銅箔が好ましい。
【0146】
アルカリ可溶性樹脂組成物層を接着する際の加熱温度は、導電性基材に密着しうる温度であれば限定されない。導電性基材への密着の観点から、50℃以上、150℃以下が好ましい。より好ましくは、50℃以上、120℃以下である。
【0147】
アルカリ可溶性樹脂組成物層が溶解しうるアルカリ溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。一般的に用いられている製造設備やプロセス条件などの観点から、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0148】
次いで、本発明のアルカリ可溶性樹脂層と導電性基材からなる片面フレキシブル基板加熱硬化する。加熱硬化は、溶媒の除去の観点や副反応や分解などの観点から、またポリアミド酸のイミド化の観点から120℃以上、400℃以下の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、150℃以上、300℃以下である。
【0149】
加熱硬化における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。加熱硬化に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適に好ましくは1時間から8時間の範囲で実施される。
【0150】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂組成物を絶縁層としたフレキシブルプリント配線板の製造方法においては、フレキシブル配線板の層間接続のためのブラインドビア形成工程で、従来のレーザー加工ではなく、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む層間接着剤としての樹脂層を用いることにより、フレキシブルプリント配線板の製造工程で一般的に使用されているアルカリ液スプレー装置等を用いて、容易にブラインドビアを形成できる。このため、ブラインドビア形成コストを大幅に削減でき、またロールツーロール生産が容易にでき、大幅な生産リードタイム短縮ができる両面フレキシブル配線板や多層フレキシブル配線板の製造方法を実現できる。
【0151】
(実施例)
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0152】
〔アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解試験〕
アルカリ可溶性樹脂の溶解特性の評価は以下の手順により実施した。真空吸着及び加熱できる塗工台(マツキ科学社製)上にポリエステルフィルム(R−310−25/三菱ポリエステル社製)を敷き、真空吸着させることでポリエステルフィルムを貼り付けた。ポリエステルフィルム上にギャップが250μmのアプリケーター(マツキ科学社製)を用いて、アルカリ可溶性樹脂を塗布した。その後、乾燥機(SPH−201/エスペック社製)で95℃、30分の条件で脱溶剤を行った。
【0153】
得られたフィルムの樹脂層側に電解銅箔(F1−WS/古河サーキットフォイル社製)の粗面側に重ねて、真空プレス(テスター産業社製)を用い90℃、0.5MPaの条件で1分加圧接着させた。更に、ドライフィルムレジスト(DFR)(サンフォートAQ2578 旭化成イーマテリアルズ社製)を電解銅箔側にラミネートし、500μmφの円孔パターンを形成した後、塩化第二鉄エッチング液で円孔形成部の銅箔をエッチング除去した。
【0154】
その後、50℃に加温した3wt%の水酸化ナトリウム水溶液を圧力0.18MPaでスプレーし、フィルムが完全に溶けるまでに要した時間を溶解時間とし、アルカリ可溶性樹脂の水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解速度を、溶解前の膜厚(μm)を溶解時間(sec)で除し、100を掛けることで算出した。
【0155】
〔弾性率〕
アルカリ可溶性樹脂組成物を用いて約30μmの膜厚になるように銅箔上に成膜した。続いて120℃で1時間、180℃で1時間熱処理し、その後塩化第二鉄水溶液で銅箔部分を溶解させ、水道水で水洗後、室温で1日乾燥させてフィルムを得た。得られたフィルムを5mm×100mmに切り出し、試験片とした。得られた試験片を引っ張り試験機(RTG−1210/エー・アンド・デイ社製)にて測定した。
【0156】
〔ガラス転移点温度〕
アルカリ可溶性樹脂組成物を用いて約30μmの膜厚になるように銅箔上に成膜した。続いて120℃で1時間、180℃で1時間熱処理し、その後塩化第二鉄水溶液で銅箔部分を溶解させ、水道水で水洗後、室温で1日乾燥させてフィルムを得た。得られたフィルムを3mm×50mmに切り出し、試験片とした。得られた試験片をTMA試験機(EXSTAR6000/セイコーインスツルメント社製)にて測定した。
【0157】
〔試薬〕
試薬として、シリコーンジアミン(KF−8010)(信越化学工業社製)、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル(TMEG)(新日本理化社製)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−N)(三井化学社製)、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(TBXP)(大八化学社製)、ホスファゼン化合物(FP−100)(伏見製薬所社製)、トルエン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ―ブチロラクトン(和光純薬工業社製)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬工業社製)は特別な精製を実施せずに用いた。
【0158】
〔調製例〕
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、γ―ブチロラクトン(42.0g)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(18.0g)、トルエン(20.0g)、シリコーンジアミン(KF−8010、19.54mmol)、TMEG(40.00mmol)を入れ、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で30分間加熱撹拌した。共沸溶媒であるトルエンを除去した後に、25℃まで冷却し、続いてシリコーンジアミン(KF−8010、4.89mmol)、APB−N(15.56mmol)を加え25℃で5時間撹拌した。撹拌後にポリマー固形分濃度30重量%となるようにγ―ブチロラクトン/トリエチレングリコールジメチルエーテルの混合溶媒を加え、ポリイミド前駆体の溶液を得た。更にポリイミド前駆体100質量部に対して、TBXP(10質量部)、FP−100(7質量部)を混合し、アルカリ可溶性樹脂組成物を調整した。電解銅箔と積層後のアルカリ溶解速度は3μm/sec、加温処理後の弾性率は0.25GPa、ガラス転移点温度は58℃であった。
【0159】
(実施例1)
上記実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法を用いた両面フレキシブル配線板の実施例について説明する。
【0160】
調整例のアルカリ可溶性樹脂組成物溶液をポリエステルフィルム上にダイコーターを用いて塗布し、95℃、30分乾燥して、膜厚25μmのフィルムを作成した。この積層フィルムを電解銅箔(厚み12μm、F1−WS/古河サーキットフォイル社製)の粗面側に重ねて真空プレスを用いて90℃、0.5MPaで1分ラミネートして、片面フレキシブル基板を製作した。
【0161】
この銅箔上にドライフィルムをラミネートし、露光・現像した後、塩化第二鉄を用いたエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去した部位75μmφ円孔のコンフォーマルマスクを形成した。更に銅箔が除去された部位に、3%濃度の水酸化ナトリウム溶液を30秒スプレーして樹脂層を溶解除去して、ブラインドビアを形成した。一般的には銅箔のエッチングと水酸化ナトリウム溶液のスプレーは連続した装置で行なう事ができる。
【0162】
次に裏面のポリエステルフィルムを剥離した後、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層(接着剤)を硬化させた。
【0163】
次に真空プレスを用いて別の電解銅箔の粗面側を樹脂層(接着剤)に接する様に重ねて120℃、1.0MPaで1分ラミネートを行い貼り合わせブラインドビアが形成された両面フレキシブル基板を作製した。なお、銅箔との貼り合せは、ラミネーターを使って連続的に行なうこともできる。得られたブラインドビアの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、デスミア工程は不要であった。
【0164】
次に従来の両面フレキシブル配線板と同様のブラインドビアめっきを行った。まず穴内壁の樹脂層に無電解銅めっき、あるいはカーボン微粒子を付着させた後、電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。次に従来の両面フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来の両面フレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
【0165】
上述の如く、従来の両面フレキシブル配線板のブラインドビア形成では、レーザー加工機を用いて1穴ずつ加工していたため、多大なコストと時間を必要としていた。本発明では、接着性を有するアルカリ可溶性の樹脂組成物を採用することにより、従来からの銅エッチング装置、アルカリスプレー装置、ラミネーターを用いることができ、低コストかつ短時間でブラインドビアを形成することが可能となった。またロールツーロール生産が容易であることから、以降の工程まで含めたロールツーロールによる連続自動化生産が可能となった。
【0166】
(実施例2)
次に上記実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法を用いた多層フレキシブル配線板の実施例について説明する。
【0167】
まず、両面フレキシブル配線板をコア基板として製造する。実施例1により作製された両面フレキシブル配線板をコア基板として用いても良い。並行してアルカリ可溶性樹脂組成物を接着剤として銅箔とラミネートした片面フレキシブル基板を2組用意する。調整例のアルカリ可溶性樹脂組成物溶液をポリエステルフィルム上にダイコーターを用いて塗布し、95℃、30分乾燥して、膜厚25μmのフィルムを作成した。この積層フィルムを電解銅箔(厚み12μm、F1−WS/古河サーキットフォイル社製)の粗面側に重ねて真空プレスを用いて90℃、0.5MPaで1分ラミネートして、片面フレキシブル基板を製作した。
【0168】
この銅箔上にドライフィルムをラミネートし、露光、現像した後、塩化第二鉄エッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、部位に75μmφ円孔のコンフォーマルマスクを形成した。更に銅箔が除去された部位に、3%濃度の水酸化ナトリウム溶液を30秒スプレーし樹脂層を溶解除去して、ブラインドビアを形成した。一般的には銅箔のエッチングと水酸化ナトリウム溶液のスプレーは連続した装置で行なうことができる。
【0169】
次に裏面のポリエステルフィルムを剥離した後、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層(接着剤)を硬化させた。
【0170】
次にコア基板の上下両面に、ブラインドビアが形成された片面フレキシブル基板をそれぞれ所定の位置に位置あわせして、真空プレスを用いて120℃、1.0MPaで1分ラミネートを行い貼り合わせしてブラインドビアを形成した4層からなる多層フレキシブル基板を作製した。銅箔との貼り合せは、ラミネーターを使って連続的に行なうこともできる。得られたブラインドビアの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、デスミア工程は不要であった。
【0171】
次に多層フレキシブル配線板と同様のブラインドビアめっきを行った。まず穴内壁の樹脂層に無電解銅めっき、あるいはカーボン微粒子を付着させた後、電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。次に従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
【0172】
上述の如く、従来の多層フレキシブル配線板のブラインドビア形成は、レーザー加工機を用いて、1穴ずつ加工していたため、多大なコストと時間を必要としていた。本発明では、接着性を有するアルカリ可溶性の樹脂組成物を採用することにより、従来から銅エッチング装置、アルカリスプレー装置、ラミネーターを用いることができ、低コストかつ短時間で、また両面同時にブラインドビアを形成することが可能となった。
【0173】
(実施例3)
次に、上記実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法を用いたフレキシブル部を有する多層フレキシブル配線板の実施例について説明する。
【0174】
まず、両面フレキシブル配線板をコア基板として製作する。実施例1による両面フレキシブル配線板をコア基板として用いても良い。並行してアルカリ可溶性樹脂組成物を接着剤として銅箔とラミネートした片面フレキシブル基板を2種類用意する。調整例のアルカリ可溶性樹脂組成物溶液をポリエステルフィルム上にダイコーターを用いて塗布し、95℃、30分乾燥して、膜厚25μmのフィルムを作成した。この積層フィルムを電解銅箔(厚み12μm、F1−WS/古河サーキットフォイル社製)の粗面側に重ねて真空プレスを用いて90℃、0.5MPaで1分ラミネートして、片面フレキシブル基板を製作した。
【0175】
この銅箔上にドライフィルムをラミネートし、露光、現像した後、塩化第二鉄エッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、部位に75μmφ円孔のコンフォーマルマスクを形成した。同時に外層基板をはがす必要があるフレキシブル部についても銅箔をエッチング除去した。
【0176】
次いで銅箔が除去された部位に3%濃度の水酸化ナトリウム溶液を30秒スプレーし、樹脂層を溶解除去してブラインドビアを形成する共に外層基板のはがす必要のある樹脂層部位も同時に溶解除去した。一般的には銅箔のエッチングと水酸化ナトリウム溶液のスプレーは連続した装置で行なうことができる。
【0177】
次に裏面のポリエステルフィルムを剥離した後、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、アルカリ可溶性樹脂組成物からなる接着剤を硬化させた。
【0178】
次にコア基板の上下両面に、ブラインドビアが形成された片面フレキシブル基板を、それぞれ所定の位置に位置あわせして、真空プレスを用いて120℃、1.0MPaで1分ラミネートを行い貼り合わせしてブラインドビアを形成した両面フレキシブル基板を作製した。
【0179】
この結果、回路形成済みのコア基板と片面フレキシブル基板の間でブラインドビアが形成される。また外層はがし部は、外層樹脂層がくり抜かれた状態でコア基板に積層される。
【0180】
次に多層フレキシブル配線板と同様のブラインドビアめっきを行った。この工程では、外層はがし部に、ブラインドビアめっき付着を防ぐために、めっきマスクを施す。このため、この部分にドライフィルムを積層するが、これによりめっき付着を防ぐともに、この後の工程において基材の補強を果すことができる。その後、穴内壁の樹脂層に無電解銅めっき、あるいはカーボン微粒子を付着させた後、電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。次に従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行うが、この時、外層くり抜き部は、上述のドライフィルムにより保護された状態で行なわれる。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
【0181】
上述の如く、従来の多層フレキシブル配線板は外層基板のはがし工程が障害となっていたが、本発明により、容易にかつブラインドビア形成工程と同時に行なう事が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明のフレキシブル配線板は、種々の電子部品に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0183】
11、21、31、51 樹脂層
12、16、22、23、30、50、102、103 銅箔
12a〜12c、21a、30a〜30d、102a、102b ブラインドビア形成部位
13、115a、115b 片面フレキシブル基板
14 コンフォーマルマスク
15a〜15c、25、32a〜32d、52a〜52d 貫通孔
17a〜17c、35a〜35d、55a〜55d、104a、104b、117a、117b ブラインドビア
18、26、38、58、118 銅めっき
19、28、40、60、107 回路パターン
20、24、101、111 両面フレキシブル基板
27、39、59、106、119 感光性ドライフィルム
29、113 コア基板
33、34、53、54 外層基板
36、56 内部導電層
37、57 外部導電層
41、61 多層フレキシブル配線板
50a、120 フレキシブル部
104 ポリイミド層
112a、112b カバーレイ
114a、114b 接着層
116 貫通ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層の一方の主面上に貫通孔形成部位を有する第1導電層を形成する導電層形成工程と、前記第1導電層を介して前記貫通孔形成部位の前記樹脂層を溶解除去して貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔が形成された前記樹脂層の他方の主面上に第2導電層を設けてブラインドビアを形成するブラインドビア形成工程と、前記ブラインドビアにめっきを施して前記第1導電層と前記第2導電層とを電気的に接続するめっき工程とを具備することを特徴とするフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項2】
片面フレキシブル配線板、両面フレキシブル配線板、又は多層フレキシブル配線板のいずれかからなるコア基板と、外層基板と、が積層されてなるフレキシブル配線板の製造方法であって、
アルカリ可溶性樹脂組成物を含む樹脂層の一方の主面上に貫通孔形成部位を有する外部導電層を形成する外部導電層形成工程と、前記外部導電層を介して前記貫通孔形成部位の前記樹脂層を溶解除去して前記外層基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記外層基板の前記貫通孔と前記コア基板の所定の部位とが一致するように前記外層基板と前記コア基板とを積層してブラインドビアを形成するブラインドビア形成工程と、前記ブラインドビアにめっきを施して前記コア基板の内部導電層と前記外層基板の外部導電層とを電気的に接続するめっき工程とを具備することを特徴とするフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項3】
前記外部導電層形成工程では、フレキシブル部形成部位の前記外部導電層を除去し、前記貫通孔形成工程では、前記フレキシブル部形成部位の前記樹脂層を溶解除去してフレキシブル部を形成することを特徴とする請求項2記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂組成物が、少なくともポリアミド酸構造を有するポリイミド前駆体を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体が、ポリアミド酸構造及びポリイミド構造をそれぞれ構成単位として有するブロック共重合体を含有することを特徴とする請求項4に記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体が、ポリアルキレンエーテル構造及び/又はシロキサン構造を有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のフレキシブル配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂組成物が、さらに、溶解抑止剤を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項8】
前記溶解抑止剤が、アミド化合物又はウレア化合物であることを特徴とする請求項7記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ可溶性樹脂組成物が、さらにリン化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項10】
前記リン化合物が、リン酸エステル化合物及び/又はホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項9に記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂組成物を導電性フィルム基材上に塗工、加熱による脱溶剤後に得られる膜厚25μmの樹脂層の水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.50μm/sec以上であり、更に前記樹脂層を160℃以上で加熱することにより得られる水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.05μm/sec以下であり、前記樹脂層の弾性率が0.2GPa〜1.5GPaであり、前記樹脂層のガラス転移点温度が150℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のフレキシブル配線板の製造方法により製造されたことを特徴とするフレキシブル配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228493(P2011−228493A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97190(P2010−97190)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】