説明

フレグランスをコントロールして放出するための動的混合物の使用

本発明は、水の存在で少なくとも1つのヒドラジン誘導体と少なくとも1つの芳香性、着香性、昆虫駆除剤または誘引剤、殺菌剤および/または殺真菌剤アルデヒドまたはケトンを一緒に反応させることにより得られる動的混合物に関する。本発明の混合物は、コントロールされた方法および延長した方法でアルデヒドまたはケトンを周辺環境に放出できる。さらに本発明は、前記動的混合物の芳香成分としての使用ならびに本発明の混合物を有する芳香組成物または着香製品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の存在で、少なくとも1つのヒドラジン誘導体と少なくとも1つの活性アルデヒドまたはケトンを混合することにより得られる動的混合物(dynamic mixture)に関する。本発明の混合物は、コントロールされた方法および延長した方法で前記活性化合物を周辺環境に放出できる。
【0002】
本発明は、前記動的混合物の芳香成分としての使用ならびに本発明の混合物を有する芳香組成物または着香製品にも関する。本発明の更なる対象は、特殊なアルデヒドまたはケトンの芳香作用を延長するための特異的ヒドラジン誘導体の添加剤としての使用である。
【0003】
従来技術
フレグランスのような活性化合物、また昆虫誘引剤または昆虫駆除剤ならびに幾つかの殺菌剤は揮発性分子であるが、これらは限られた期間にわたってのみ認知できるにすぎない。香料工業では、例えば、極めて揮発性であるか、または乏しい直接性を有するか、または最終用途の表面上に少量でしか堆積しない芳香成分をそのまま用いる場合に遭遇する問題を克服するために、一定の期間にわたりフレグランスの芳香作用を延長または向上できる組成物または添加剤に特別な関心を持っている。これらの組成物または添加剤は、様々な用途で、例えば、きめ細かいまたは機能性香料または化粧品調製物において使用できる。織物の洗濯は、洗濯および乾燥した後の一定の期間、活性物質、特に香料の作用を有効にできるようにコンスタントな追求がある特殊な分野である。実際に、このタイプの用途に特に適切である香りを有する多くの物質は、洗濯物の上でテナシティーを欠くか、または濯がれる場合に洗濯物の上に残らないことが知られており、その結果、それらの芳香効果は単に短くしか体験できず、また極めて強く体験することができない。香料工業ではこのタイプの用途の重要性があるので、特に、前記の問題に対して新規で、より効果的な解決法を見つけるためにこの分野の調査が持続的であった。
【0004】
適用の間または後に(放出のきっかけとしてO2、光、酵素、水(pH)または温度を用いる)、化学反応により活性材料を放出する様々なケミカルデリバリーシステムは、カプセル封入システムへの代用として記載されてきた。一般に、それらの固有の不安定性により、貯蔵の際に適用ベース中の前駆体が頻繁に分解してしまい、従ってそれらのフレグランス原料は所望する使用の前に放出されてしまう。
【0005】
我々の知る限りでは、本発明の組成物は、従来技術から公知ではなく、かつ以下に開示されているような使用に関してヒドラジン誘導体は何も記載されていない。
【0006】
ヒドラジンおよびカルボニル誘導体を使用する動的ライブラリは、製剤工業から公知である。しかし、このような従来技術のライブラリでは、ケトンまたはアルデヒドは製剤的に活性な化合物であり、かつこのライブラリ自体は多少なりとも数多くの生物学的活性化合物を生じるために使用されるか、または生物学的レセプターまたはリガンドの迅速な同定に使用される。前記従来技術の文献のいずれも、カルボニル化合物とヒドラジン誘導体間の付加生成物の形成の可逆性が前記カルボニル化合物をコントロールされた方法で与えられ、またこのようなライブラリを芳香成分として首尾良く使用でき、またこれらが特に消費製品中で芳香化合物のフレグラス効果を延長できることを示唆しておらず、またこれらの事を容易に想定することができない。
【0007】
本発明の説明
意外にも、水の存在で、少なくとも1つのヒドラジン誘導体と少なくとも1つの活性アルデヒドまたはケトンを混合することにより得られる動的混合物が、コントロールされた方法かつ延長した方法で前記活性アルデヒドまたはケトンを放出できる貴重な成分であることが見出された。
【0008】
本明細書中では、"動的混合物"とは、溶剤、幾つかの出発成分ならびに様々な出発成分の間の可逆反応の結果生じる幾つかの付加生成物を有する組成物を意味する。前記動的混合物は、可逆的な化学反応、特にヒドラゾン形成および可逆的ヒドラジン/カルボニル縮合による解離を利用する。様々な出発生成物と付加生成物の間の比は、該出発成分の間の可能性としてあり得る各反応の平衡定数による。前記"動的混合物"の有用性は、全成分の間の相乗効果により導き出される。
【0009】
本明細書中で"活性"という用語は、その周辺環境に利点または作用をもたらすことができるアルデヒドまたはケトンを意味し、かつ特に芳香作用、着香作用、昆虫駆除剤または誘引剤、殺菌剤および/または殺真菌剤作用を意味する。従って、例えば前記"活性アルデヒドまたはケトン"は、芳香または着香成分として、昆虫駆除剤または誘引剤として、または殺菌剤または殺真菌剤として有効性を与える少なくとも1つの特性を有する。
【0010】
上記および下記の本発明の全ての実施態様によれば、本発明のデリバリーシステムは、活性アルデヒドまたはケトンが芳香成分である場合、すなわち、芳香性アルデヒドまたはケトンである場合に特に有用である。"芳香性アルデヒドまたはケトン"は、香料工業で現在使用されている化合物である。すなわち、ヘドニック作用を付与するために芳香調製物中または組成物中で活性成分として使用される化合物である。言い換えると、このようなアルデヒドまたはケトンは、芳香するものとして考えられるべきであり、組成物の香りをプラスの方法または快い方法で付与または変性することができるものであり、単に1つだけの香りを有するものではないと香料製造業の当業者により認識されるべきである。以後、"芳香性アルデヒドまたはケトン"を"芳香化合物"とも称することにする。
【0011】
一般に、本発明は活性アルデヒドまたはケトンの精密な特性とは独立に全く同じ方法で実施される。従って、以下に本発明を特に"芳香化合物"に関して記載したとしても、以下の実施態様は他の活性アルデヒドまたはケトンにも適用可能であることを理解されたい(すなわち、"芳香"という表現を例えば"昆虫誘引剤"または"昆虫駆除剤および殺菌剤"と置き換えることができる)。
【0012】
本発明の特殊な実施態様によれば、本発明は水含有媒体中で、
i)少なくとも1つの式
【化1】

[式中、
a)R1は、水素原子、場合により3個までのR3基により置換されたC1〜C5−アルキル基またはフェニル基を表し;
3は、OR、NR2、SO3R、C1〜C4−アルキル基およびCOORから成るグループから選択される基を表し;
Rは、水素原子、C1〜C10−アルキルまたはポリエチレン−またはポリプロピレン−グリコール基、フェニル基またはC6〜C9−アルキルアリール基を表し;
Aは、C=O、SO2、C=SおよびC=NRから成るグループから選択される官能基を表し;かつ
I) mは、0または1であり;nは1、2、3または4であり;かつR2は、場合により1個、2個または3個の窒素原子または酸素原子を有するC1〜C18−線状、分枝または環状炭化水素基、有利にはアルキルから誘導されるか、またはフェニル基から誘導されるか、またはC4〜C5−ヘテロ芳香族基から誘導されるモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−ラジカルを表し、前記R2は、場合により3個までのR3基により置換されている;または
II) mは、1であり;nは、1、2または3であり、かつR2は、N(R43-n基を表し、R4は、R1基またはR3CO基を表し;または
III) mは、1または2であり;nは1であり;かつR2は、NR1NH2基を表し;
IV) mは、1であり;nは1であり;かつR2はC1〜C6−線状、分枝または環状炭化水素、有利にはアルキル、NR3Xまたは(NC54)X基(NC54はピリジル基である)により置換された基であり、Xはハロゲン原子またはスルフェートを表す;または
V) mは、0または1であり;nは、2〜5000を変化する整数であり;かつR2はポリアルキレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたは多糖類鎖を表し、これは2〜5000個のモノマー単位を有し、または
b)R1、AまたはR2は、一緒になって場合により4個までの酸素、窒素または硫黄原子を含有する5員または6員環を表す]
のヒドラジン誘導体を、
ii)80〜230g/molから成る分子量を有し、かつ芳香成分、着香成分、昆虫駆除剤または誘引剤、殺菌剤または殺真菌剤成分であり、特にC6〜C20−芳香性アルデヒドとC6〜C20−芳香性ケトンから成るグループから選択される少なくとも1つの活性アルデヒドまたはケトンと反応させることにより得られる動的混合物の形のデリバリーシステムに関する。
【0013】
動的混合物は、水含有媒体中で1つ以上のヒドラジン誘導体と1つ以上の芳香成分を反応させることにより得られる。本明細書中で"水含有媒体"とは、水および場合によりC1〜C3−アルコール、例えばエタノールのような脂肪族アルコールを少なくとも10%w/w、または30%w/w有する分散媒体を意味する。より有利には、前記媒体は水を少なくとも50%w/w、または70%有し、場合により30%までの界面活性剤を含有する。本発明の特殊な実施態様によれば、水含有媒体は、2〜6から成るpHを有してもよい。
【0014】
本発明の他の特殊な実施態様によれば、有利なヒドラジン誘導体は、
1が、水素原子、メチル基またはエチル基を表すか、または場合により1個または2個のR3基により置換されたフェニル基を表すか;
3が、OR、NR2、SO3R、C1〜C4−アルキル基およびCOORから成るグループから選択される基を表し;
Rが、水素原子、C1〜C5−アルキルまたはポリエチレン−またはポリプロピレン−グリコール基、フェニル基またはC6〜C7−アルキルアリール基を表し;
Aが、C=O、C=SおよびSO2から成るグループから選択される官能基を表し;かつ
I) mが0または1であり;nが1、2、3または4であり、かつR2が場合により3個までの窒素原子または酸素原子を有するC1〜C6−線状、分枝または環状炭化水素基から誘導されるか、またはフェニル基から誘導されるか、またはC4〜C5−ヘテロ芳香族基から誘導されるモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−ラジカルを表し、前記R2が場合により3個までのR3基により置換されていて、R3基は上記と同じ意味を有する;または
II) mが1であり;nが1または2であり;かつR2がN(R43-n基を表し、R4がR1基またはR3CO基を表し;または
III) mが1または2であり;nが1であり;かつR2がNR1NH2基を表し;
IV) mが1であり;nが1であり;かつR2がNR3Xまたは(NC54)X基により置換されたC1〜C3−線状、分枝または環状炭化水素基であり、Xはハロゲン原子を表す;または
V) mが0または1であり;nが2〜5000を変化する整数であり;かつR2がポリアルキレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたは多糖類鎖を表し、これは2〜5000個のモノマー単位を有する
式(I)のものである。
【0015】
二者択一的に、本発明の更なる実施態様によれば、ヒドラジン誘導体は式
【化2】

[式中、
I) nは1、2、3または4であり、かつR2は、場合により2個までの窒素原子または酸素原子を有するC1〜C6−線状、分枝または環状炭化水素基、有利にはアルキルから誘導されるか、またはフェニル基から誘導されるか、またはC4〜C5−ヘテロ芳香族基から誘導されるモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−ラジカルを表し、前記R2は、場合により1個または2個のR3基により置換されている;
3は、OR、NR2、SO3R、C1〜C4−アルキル基およびCOORから成るグループから選択される基を表し;
Rは、水素原子、C1〜C5−アルキルまたはポリエチレン−またはポリプロピレン−グリコール基、フェニル基またはC6〜C7−アルキルアリール基であり;または
II) nは、1、2または3であり、かつR2は、N(R43-n基を表し、R4は、水素原子、メチル基またはエチル基を表すか、またはR3CO基を表し;または
V) nは、2〜3000を変化する整数であり;かつR2は48〜80000の間の分子量を有するポリアルキレン、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール鎖またはガラクツロン酸から誘導される2〜1000個の間のモノマー単位を有する多糖類鎖を表す]
の化合物である。
【0016】
二者択一的に前記式(II)中、R2は、カチオン基である。すなわち、nは1であり、かつR2は、CH2NMe3XまたはCH2−(NC54)X基を表し、Xは塩素のようなハロゲンを表す。
【0017】
上記の本発明の全ての実施態様では、"ポリアルキレン鎖"とは、本明細書中では式−R’C=C(R’)2[式中、各R’は水素原子またはC1〜C3アルキルまたはフェニル基のようなC1〜7基の鎖を表す]の部分を有するモノマーまたはコモノマーの重合により誘導される鎖を意味する。
【0018】
特に、上記の実施態様中のヒドラジン誘導体の限定されない例として、次のクラスを挙げることができる:
i) ArCONHNH2またはArNHNH2、その際、ArはフェニルまたはトリルまたはC64COOHのような置換または非置換のC6〜C9フェニル基であるか、またはフランのようなC3〜C5芳香族複素環である;
ii) ジラード−Tまたは−P試薬(A. Girard et al in Helv. Chim. Acta 1936, 19, 1095参照);
iii) セミカルバゾンAr−NH−CO−NHNH2、チオセミカルバゾンAr−NH−CS−NHNH2またはアレーンスルホニルヒドラジンAr−SO2−NHNH2、式中、Arは先に定義した通りである;
iv) R5OCONHNH2、式中R5はC1〜C4アルキル基である;
v) 4H−1,2,4−トリアゾール−4−アミン誘導体;
vi) (NH2NHCO)n−Alk、式中nは1〜4から成り、かつAlkは場合により2個のOH基により置換され、かつ場合により1個または2個の窒素原子を含有するC2〜C18線状、分枝または環状炭化水素基、有利にはアルキル、例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C8、C12、C16、C18、(CHOH)2、CH2(CHOH)2CH2であり;
vii) (NH2NHCOCH2n(R62-nNCH2CH2N(R62-n(CH2CONHNH2nまたは(NH2NHCOCH2(R63-mN、式中nは1または2であり、mは1、2または3であり、かつR6は水素原子またはR5基である;
viii) Q((CH2)COOR63-n((CH2)CONHNH2n、式中R6は、先に定義した通りであり、nは1、2または3であり、かつQはNまたはCOR6であり、dは0または1であり;または
ix) H2NNR6CONR6NH2またはH2NNR6COCONR6NH2、式中R6は、先に定義した通りであり;
x) ペクチンのポリヒドラジン誘導体;または
xi) ポリ(メチルメタクリレート)およびそのコポリマーのポリヒドラジン誘導体、ポリ(メチルアクリレート)およびそのコポリマーのポリヒドラジン誘導体、またはポリ(4−ビニルベンゾエート)およびそのコポリマーのポリヒドラジン誘導体。
【0019】
当業者は、式(I)のヒドラジン誘導体の幾つか、例えば、iv)で挙げたものがミセルまたはリポソームのような液体堆積物を形成できることを予測できることが重要である。
【0020】
活性化合物、特に芳香するものは、本発明による動的混合物の他の重要な要素である。
【0021】
前記芳香化合物は、有利には7〜15個の炭素原子を有する。
【0022】
本発明の実施態様によれば、前記芳香性アルデヒドまたはケトンは、100〜220g/molの分子量を有し、エナール、エノン、CH2CHOまたはCHMeCHO部分を有するアルデヒド、芳香族アルデヒドまたはケトン(その際、官能基は芳香環に直接に結合する)および環式または非環式ケトン(その際、CO基は環の一部であるか、またはそうでない)から成るグループから有利に選択できる。
【0023】
さらに、上記の実施態様によれば、前記芳香性アルデヒドまたはケトンは、ソフトEPIwin v 3.10を用いる計算により得られるように(2000 US Environmental Protection Agencyで入手可能)2.0 Paを上回る蒸気圧により有利に特徴付けられる。他の実施態様によれば、蒸気圧は5.0Paを上回るか、またはむしろ7.0Paを上回る。
【0024】
先に述べたように、これら全ての実施態様は、活性成分が芳香成分、昆虫駆除剤または誘引剤、殺菌剤または殺真菌剤成分である場合にも当てはまる。
【0025】
特に、上記の実施態様中の芳香化合物の限定されない例として以下のものを挙げることができる:
A)式R’’−CHOのアルデヒド(式中、R’’はC612の線状またはα−分枝アルキル基である)ベンズアルデヒド、1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボキサルデヒド(ヘリオトロピン)、3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2−メチルプロパナール、2,4−デカジエナール、2−デセナール、4−デセナール8−デセナール9−デセナール、3−(6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプテ−2−エン−2−イル)プロパナール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Triplal(R)、発売元:International Flavors & Fragrances, New York, USA)、3,5−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、1―(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノン、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール(メロナール)、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール(シトラール)、3,7−ジメチルオクタナール3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール)、(3,7―ジメチル−6−オクテニル)アセタルデヒド、3−ドデセナール、4−ドデセナール、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、4−エチルベンズアルデヒド、3−(2および4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナール、2−フランカルバルデヒド(フルフラール)、2,4−ヘプタジエナール4−ヘプテナール、2−ヘキシル−3−フェニル−2−プロペナール(ヘキシルシンナムアルデヒド)、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクタナール(ヒドロキシシトロネラール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−および3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Lyral(R)、発売元:International Flavors & Fragrances, New York, USA)、4−イソプロピルベンズアルデヒド(クミンアルデヒド)、3−(4−イソプロピルフェニル)−2―メチルプロパナール、2−(4−イソプロピルフェニル)プロパナール、(4R)−1−p−メンテン−9−カルバルデヒド(Liminal(R)、発売元:Firmenich SA, ジュネーブ、スイス)、2−および4−メトキシベンズアルデヒド(アニスアルデヒド)、6−メトキシ−2,6−ジメチルヘプタナール(メトキシメロナール)、8(9)−メトキシ−トリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカン−3(4)−カルバルデヒド(Scentenal(R)、発売元:Firmenich SA, ジュネーブ、スイス)、4−メチルベンズアルデヒド、2−(4−メチレンシクロヘキシル)プロパナール、1−メチル−4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Precyclemone(R) B、発売元:International Flavors & Fragrances, New York, USA)、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Acropal(R)、発売元:Givaudan-Roure SA., ヴァーニヤ、スイス)、(4−メチルフェノキシ)アセタルデヒド、(4−メチルフェニル)アセタルデヒド、3−メチル−5−フェニルペンタナール、2−(1−メチルプロピル)−1−シクロヘキサノン、2,4―ノナジエナール、2,6−ノナジエナール2−ノネナール6−ノネナール8−ノネナール2−オクテナール、フェノキシアセタルデヒド、フェニルアセタルデヒド3−フェニルブタナール(Trifernal(R)、発売元:Firmenich SA, ジュネーブ、スイス)、3−フェニルプロパナール2−フェニルプロパナール(hydratropaldehyde)、3−フェニル−2−プロペナール(シンナムアルデヒド)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(Lilial(R)、発売元:Givaudan-Roure SA., ヴァーニヤ、スイス)、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナール(Bourgeonal(R)、発売元:Quest International、ナーデン、オランダ)、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−4−カルバルデヒド、エキソ−トリシクロ[5.2.1.0(2.6)]デカン−8エキソ−カルバルデヒド(Vertral(R)、発売元:Symrise、ホルツミンデン、ドイツ)、2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−カルバルデヒド(ホルミルピナン)、2,4,6−および3,5,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−アセタルデヒド(カンフォレニックアルデヒド)、2,6,10−トリメチル−2,6,9,11−ドデカテトラエナール、2,5,6−トリメチル−4−ヘプテナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール、2−ウンデセナール、10−ウンデセナールまたは9−ウンデセナールおよびIntreleven aldehyde(発売元:International Flavors & Fragrances, New York, USA)のようなこれらの混合物、および
B)式R’−(CO)−R’’のC6-11ケトン(式中、R’とR’’は、線状アルキル基、ダマスセノンおよびダマスコン、イオノンおよびメチルイオノンである)(例えばIralia(R) Total、発売元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、イロン、大環状ケトン、例えば、シクロペンタデカノン(Exaltone(R))または3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オンおよび3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン(Delta Muscenone)または3−メチル−1−シクロペンタデカノン(Muscone)、全てスイス、ジュネーブのFirmenich SA社製、1−(2−アミノフェニル)−1−エタノン、1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン(Neobutenone(R)、発売元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノン、2,5−ジメチル−2−オクテン−6−オン、4,7−ジメチル−6−オクテン−3−オン、(3,7−ジメチル−6−オクテニルオキシ)アセタルデヒド、1−(2,4−ジメチルフェニル)−1−エタノン、4−(1,1−ジメチルプロピル)−1−シクロヘキサノン(Orivone(R) 、発売元:International Flavors & Fragrances, New York, USA)、2,4−ジ−tert−ブチル−1−シクロヘキサノン、エチル4−オキソペンタノエート、1−(4−エチルフェニル)−1−エタノン、2−ヘキシル−1―シクロペンタノン、2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、4−(4−ヒドロキシ−1−フェニル)−2−ブタノン(ラズベリーケトン)、1−(2−および4−ヒドロキシフェニル)−1−エタノン、4−イソプロピル−2−シクロヘキセン−1−オン、1−(4−イソプロピル−1−フェニル)−1−エタノン、1(6),8−p−メンタジエン−2−オン(カルボン)、4(8)−p−メンテン−3−オン、1−(1−p−メンテン−2−イル)−1−プロパノン、メントン、(1R,4R)−メルカプト−3−p−メンタノン、1−(4−メトキシフェニル)−1−エタノン、7−メチル−2H,4H−1,5−ベンゾジオキセピン−3−オン(Calone(R)、発売元:C.A.L. SA, グラース、フランス)、5−メチル−3−ヘプタノン6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、メチル3−オキソ−2−ペンチル−1−シクロペンタンアセテート(Hedione(R)、発売元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、1−(4−メチルフェニル)−1−エタノン(4−メチルアセトフェノン)、5−メチル−エキソ−トリシクロ[6.2.1.0(2,7)]ウンデカン−4−オン、3−メチル−4−(1,2,2−トリメチルプロピル)−4−ペンテン−2−オン、2−ナフタレニル−1−エタノン、1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメ−2−ナフタレニル)−1−エタノン(異性体混合物、Iso ESuper(R)、発売元:International Flavors & Fragrances, New York, USA)、3,4,5,6,6−ペンタメチル−3−ヘプテン−2−オン2−ペンチル−1−シクロペンタノン(Delphone、発売元:Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、4−フェニル−2−ブタノン(ベンジルアセトン)、1−フェニル−1−エタノン(アセトフェノン)、2−および−4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノン、1−(4−tert−ブチルフェニル)−1−エタノン)、2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オン、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(カンファー)、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘプタノン、2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1,4−ジオン、4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブタノン(ジヒドロイオノン)、1−(2,4,4−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン、1−(3,5,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン、2,2,5−トリメチル−5−ペンチル−1−シクロペンタノン、その際、下線を引いた化合物は、本発明の実施態様において特に有用なフレグランスのアルデヒドまたはケトンである。
【0026】
さらに、上記の化合物の幾つかは、芳香成分、着香成分、昆虫駆除剤または誘引剤、殺菌剤または殺真菌剤成分として使用してもよい。
【0027】
本発明のデリバリーシステムは、水の存在で、少なくとも1つの式(I)の化合物と、少なくとも1つの芳香化合物を混合することにより得られる。さらに、配合された香料成分を有することが香料製造業で極めて有用であるので、より快く自然な香りを達成するために、少なくとも2つのヒドラジン誘導体と少なくとも1つの芳香化合物を一緒に反応させることにより得られるデリバリーシステムは、特に好ましい。同様に、少なくとも1つまたは2つのヒドラジン誘導体と少なくとも2つ、または少なくとも3つの芳香化合物を一緒に反応させることにより得られるデリバリーシステムを得ることも特に好ましい。
【0028】
上記のように、本発明のデリバリーシステムは幾つかの出発化合物を有し、該システムは可逆的方法でこれらの間で付加生成物を形成できる。
【0029】
動的混合物の主成分は、遊離アルデヒド、ケトン、ヒドラジン誘導体であり、かつ付加生成物(ヒドラゾンおよび中間体のヘミアミナール誘導体のような)を生じると考えられている。このような混合物および平衡の特殊な例は、スキーム(I)に示されている:
スキーム(I):1つの特異的アルデヒドと1つの特異的ヒドラジン誘導体から成る動的混合物中に存在する平衡と化学種の例
【化3】

【0030】
反応が可逆的であるという事実の結果、動的混合物は1つ以上のヒドラゾン誘導体を水に加え、かつこの混合物をその平衡に達するようにさせることにより得ることもできる。しかし、平衡点に達するために必要な時間を、出発材料として使用されるヒドラゾンまたはヒドラジン誘導体に応じて著しく変えられることにも注目すべきである。それというのも、この時間が媒体の溶解度または塩基度のような様々なパラメーターに依存すると考えられているからである。
【0031】
水の存在での芳香化合物の簡単な混合物による本発明の動的混合物の調製は、ヒドラゾンの調製のような付加的な化学的工程の必要性を回避する。従って、本発明の動的混合物は、動的平衡がこれらの化合物の間で自然にセットアップされるというその性質により、従来技術の前駆体で見られた生成物の不安定性の問題を回避する。消費製品のパラメーター(濃度、温度、pHまたは湿度、界面活性剤などの存在のような)が一定である限りにおいて、生成物貯蔵の間の平衡は安定である。所定のパラメーターのセットでは、平衡状態に達するために必要な時間は主に平衡の生成物形成に関わる最も遅い工程の運動速度定数に依存する。
【0032】
上記のように、本発明のデリバリーシステムは様々な成分から成る。一旦デリバリーシステムが表面に置かれると、遊離した芳香性アルデヒドまたはケトンは蒸発し出し、それらの典型的な香気を周辺環境に拡散すると考えられている。この蒸発は、この化学平衡を混乱させるが、様々な付加生成物が平衡を回復するように分解し始める。このような再平衡の成り行きは、遊離した芳香性アルデヒドまたはケトンの再生であり、このようにそれらの濃度は、時間に対して相対的に維持され、かつ速すぎる蒸発を避ける。
【0033】
デリバリーシステムの様々な物理または熱力学的特性、例えば、表面でのその堆積または形成された付加生成物の量を、芳香化合物またはヒドラジン誘導体の化学的性質により影響させることができることが認められた。上記特性に影響させる他の方法は、前記芳香化合物とヒドラジン化合物の間のモル比を変性することである。例えば、芳香化合物とヒドラジン誘導体の間のモル比が低いほど、全ての芳香化合物の蒸発に時間がかかる。一般に最終的な消費製品の調製で使用される他の成分(界面活性剤、乳化剤、ゲル化剤のようなもの)の存在も、上記の特性に影響させることができる。
【0034】
従って、混合物の成分の化学構造とそれらの比を変化させることにより、その挙動が標的とする消費製品の特異的な必要性に適合するように、本発明の動的混合物の放出特性を微調整することもできる。
【0035】
最終的な用途に従って、芳香化合物の幅広い範囲の蒸発速度が望ましい。
【0036】
芳香性アルデヒドおよび/またはケトンの全モル量と、化合物(I)の化合物の全モル量の間の比は、1:2〜50:1、有利には1:1〜10:1の間であることができる。
【0037】
上記のように、本発明のデリバリーシステムは活性アルデヒドまたはケトン、特に芳香する物のコントロールされた放出を可能にする。このような挙動は、本発明の動的混合物を活性成分として特に適切なものにする。従って、本発明のデリバリーシステムの活性成分としての使用は、本発明の他の対象である。特に、本発明は、芳香組成物または着香製品の香気特性を与え、増強し、改善または変性する方法に関し、この方法は、前記組成物または物品に本発明のデリバリーシステムの有効量を加えることから成る。
【0038】
さらに、本発明の他の対象は、本発明のデリバリーシステムを有する組成物にも関する。これは、また特に、次のもの:
i)芳香成分として、先に定義したようなデリバリーシステム;
ii)香料キャリヤーおよび香料ベースから成るグループから選択される少なくとも1つの成分:および
iii)場合により少なくとも1つの香料助剤
を有する芳香組成物にも関する。
【0039】
有利には、前記芳香組成物中で香料キャリヤー、香料ベースおよび香料助剤は、デリバリーシステムのヒドラジン誘導体のモル量と等しい、またはそれより高いアルデヒドまたはケトンの全モル量を有する。
【0040】
"香料キャリヤー"とは、本明細書では香料の見地から見て特に中性である材料、すなわち、芳香成分の官能的性質を著しく変えない材料を意味する。前記キャリヤーは液体でもよい。液体キャリヤーとしての限定されない1例として、香料製造業で一般に使用される乳化系、すなわち、溶剤および界面活性剤系、または溶剤を挙げることができる。香料製造業で一般に使用される溶剤の性質とタイプの詳細な記載は網羅していない。しかし、限定されない1例として、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2―エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはエチルシトレートのような溶剤を挙げることができ、これらは最も一般に使用される溶剤である。
【0041】
一般的に述べると、"香料ベース"とは、本明細書中では少なくとも1つの芳香性補助成分(co-ingredient)を有する組成物を意味する。
【0042】
前記芳香性補助成分は、先に動的混合物に関して定義したようなアルデヒドまたはケトンではない。さらに、"芳香性補助成分"とは、本明細書では芳香調製物または組成物で使用されてヘドニック作用を与える化合物を意味する。言い換えると、このような補助成分は芳香するものとして考えられ、単に香りを有するのではなく、プラスのまたは快い方法で組成物の香りを与えるか、または変性できるものとして当業者に理解されるべきである。
【0043】
ベース中に存在する芳香性補助成分の性質とタイプについて、ここではより詳細な説明をしないことにし、これらはいずれの場合にも網羅的ではなく、当業者はその一般知識に基づき、かつ意図する使用または用途および所望の官能的作用により選択できる。一般名では、これらの芳香性補助成分は、アルコール、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン、炭化水素、含窒素または含硫黄ヘテロ環式化合物および精油のような様々な化学物質のクラスに属し、かつ前記芳香性補助成分は天然または合成源であることができる。芳香性補助成分の更なるクラスは、動的混合物中に存在するヒドラジン誘導体とは反応しないアルデヒドまたはケトンであることができる。
【0044】
これらの補助成分の多くは、いずれにせよS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAによる書物、またはそのより最新版、または他の類似した研究のような参考文献ならびに香料の分野の豊富な特許文献に記載されている。また、前記補助成分はコントロールされた方法で様々なタイプの芳香化合物を放出することが知られている化合物であってもよいと解釈される。
【0045】
香料キャリヤーと香料ベースの両方を有する組成物について、先に明記した以外の他の適切な香料キャリヤーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えば、商標名Isopar(R)(発売元:Exxon Chemical)で知られているようなもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えば商標名Dowanol(R)(発売元:Dow Chemical Company)で知られているようなものであることもできる。
【0046】
一般的に、"香料助剤"とは、本明細書では色、特に耐光性、化学安定性およびその他の物のような利点を更に与えることができる成分を意味する。芳香性ベース中で一般に使用される助剤の性質とタイプの詳細な説明は網羅していないが、しかし前記成分が当業者に周知であることは言及すべきである。
【0047】
本発明のデリバリーシステムと少なくとも1つの香料キャリヤーから成る本発明の組成物ならびに本発明のデリバリーシステム、少なくとも1つの香料キャリヤー、少なくとも1つの香料ベースおよび場合により少なくとも1つの香料助剤を有する芳香性組成物は、本発明の特殊な実施態様を代表する。
【0048】
先に予期したように、本発明の動的混合物または組成物は、その芳香を発するような消費製品に利点をもたらすように有利に使用することができる。実際に、前記混合物は、この目的のために特に適切にすることができる幾つかの他の特性を有する。従って、本発明のデリバリーシステムを有する消費製品も本発明の対象である。
【0049】
実際に、例えば、本発明の混合物の他の利点は、そのままの純粋なケトンまたはアルデヒドのものと比べて、芳香性アルデヒドまたはケトンの表面上での改善された堆積である。
【0050】
上記の全ての特性、すなわち、改善された直接性、延長された蒸発時間、攻撃的な薬剤に対して改善された安定性および改善された堆積は、芳香組成物にとって極めて重要である。実際に、前記組成物をきめ細かい香料で使用する意図がある場合には、本発明の混合物は、例えばフレッシュグリーンノートが数時間にわたり存在するというような、別の方法では達成することが難しい新規芳香作用の創作を可能にする。機能的香料用に意図する芳香組成物の場合には、上記の特性は極めて重要である。従って、例えば、一般に表面上で殆ど耐久力の無い洗濯組成物中にそのままの形で存在する芳香成分は、該表面を例えば水で濯ぐか、または乾燥させる際に頻繁に取り除かれてしまう。この問題は、本発明の動的混合物を使用することにより解決でき、これは貯蔵ならびに織物または髪のような表面上での直接性に対して改善された安定性を有する。
【0051】
従って、本発明の混合物は時間単位あたりの低いおよびより均一な蒸発により、結果として発香性分子のコントロールされた放出を生じるため、先に定義したような発香性成分の延長された遊離の作用が必要などのような用途にも組込むことができ、かつ更にフレグランスとフレッシュさを処理表面に与えることができ、これは濯ぎおよび/または乾燥プロセスを越えても良好に持ちこたえる。適切な表面は、特に織物、堅い表面、髪および皮膚である。
【0052】
従って、本発明は特に次のもの:
i) 芳香成分として、先に定義したようなデリバリーシステム;および
ii) 液体消費製品ベース;
を有する着香製品の形の消費製品にも関する。
【0053】
有利には、着香製品中では液体消費製品ベースは、デリバリーシステムのヒドラジン誘導体のモル量と等しいか、それより高いアルデヒドおよび/またはケトンの全モル量を有する。
【0054】
明確にするために、"液体消費製品ベース"とは、本明細書中では、香料または芳香成分と相溶性であり、かつ固体ではない、例えば、多少は粘性の溶液、懸濁液、エマルション、ゲルまたはクリームである消費製品を意味することに注目すべきである。言い換えると、本発明による着香製品は、機能性調製物ならびに場合により更なる利益を得る薬剤を有し、消費製品、例えば、コンディショナー、柔軟剤またはエアーフレッシュナーおよび本発明の動的混合物の臭覚的に有効量に相当する。
【0055】
液体消費製品ベースの成分の性質とタイプについて、ここではより詳細な説明をしないことにし、これらはいずれの場合にも網羅的ではなく、当業者はその一般知識に基づき、かつ前記物品の性質と所望の作用により選択できる。
【0056】
適切な消費製品は、液体洗剤や織物柔軟剤ならびに香料製造業おいて一般的な他の全ての物品、すなわち香水、コロンまたはアフターシェーブローション、着香液体石けん、シャワーまたはバスムース、オイルまたはジェル、衛生用品またはヘアケア製品、例えば、シャンプー、ボディーケア製品、液体ベースのデオドラントまたは制汗薬、液体芳香成分を有するエアーフレッシュナーおよび化粧品調製物を含む。洗剤は、これらが家庭用または工業用途用であっても、様々な表面を洗濯またはクリーニングするための洗剤組成物またはクリーニング製品のような用途向けであり、例えば織物、皿または堅い表面を処理するために意図されている。他の着香製品は、織物リフレッシュナー、アイロン水、ペーパー、布または漂白剤である。
【0057】
有利な消費製品は、香水、エアーフレッシュナー、化粧品調製物、柔軟剤ベースまたはヘアケア製品である。
【0058】
本発明の実施態様によれば、次のもの:
i) 式(I)のヒドラジン誘導体;
ii) 80〜230g/molから成る分子量を有する少なくとも1つの芳香性アルデヒドまたはケトンを含有する香料または芳香組成物;および
iii) 水の存在で使用することを意図した固形消費製品ベース
を有する着香製品を得ることができる。
【0059】
このような場合には、本発明の動的混合物は一旦消費製品が消費者により使用されると形成される。それというのも、水が存在ようになるからである。このような水の存在で使用することを意図した固形消費製品ベースの例には、粉末洗剤または"すぐ使用できる"粉末エアーフレッシュナーが含まれる。
【0060】
本発明の化合物を組込むことができる織物洗剤または柔軟剤組成物の一般的な例は、Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A8、315-448頁(1987)およびVol. A25、747-817頁(1994);Flick, Advanced Cleaning Product Formulations, Noye Publication, Park Ridge, New Jersey(1989); Showell, in Surfactant Science Series, Vol. 71:Powdered Detergents, Marcel Dekker, New York(1998); Proceedings of the World Conference on Detergents(4th, 1998, Montreux, Switzerland), AOCS出版に記載されている。
【0061】
上記文献の幾つかは、本発明の化合物にとって攻撃的な媒体を示しているかもしれないので、該化合物を例えばカプセル封入により早まった分解から保護する必要があるかもしれない。
【0062】
本発明によるデリバリーシステムを上記の様々な物品または組成物に組み込むことができる比率は、幅広い範囲の値で変わる。これらの値は、本発明の動的混合物をこの分野で一般に使用されている芳香性補助成分、溶剤または添加剤と混合する場合には、着香すべき物品または製品の性質と、所望の臭覚作用ならびに所定の組成物中の補助成分の性質による。
【0063】
例えば、一般的な濃度は、本発明のデリバリーシステムが組込まれた組成物の重量に対して、本発明のデリバリーシステム0.1質量%〜30質量%、またはそれ以上の大きさである。これらのデリバリーシステムを先に挙げた様々な消費製品の芳香に直接に利用する場合には、これらより低い濃度、例えば、0.01質量%〜5質量%の大きさを使用することができる。
【0064】
本発明の他の対象は、表面を芳香する方法に関し、この方法は先に定義した動的混合物の存在で表面を処理することを特徴とする。適切な表面は、特に織物、堅い表面、髪および皮膚である。
【0065】
さらに、本発明の更なる点は、先に定義したような芳香性アルデヒドまたはケトンの芳香作用を延長させる方法であり、この方法は、先に定義した式(I)の少なくとも1つのヒドラジン誘導体を、先に定義した少なくとも1つの芳香性アルデヒドまたはケトンおよび水を含有する芳香性組成物に添加することを特徴とする。言い換えると、先に定義した少なくとも1つの芳香化合物と水を含有する芳香組成物の芳香作用を延長するための先に定義したヒドラジン誘導体の、添加剤としての使用である。
【0066】
本発明を以下の例を用いて更に詳細に説明することにする。その際、略語はこの分野で通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示される。特記されない限り、NMRスペクトルデータは、DMSO-d6中Bruker AMX 400スペクトロメーターで1Hについては400MHzで、13Cについては100.6MHzで記録した。標準物としてのTMSに関する化学シフトδは、ppmで示し、カップリング定数JはHzで示した。UV/Visは、スペクトルは、Perkin-Elmer Lambda14またはLambda 35測定器においてエタノール中で記録し、λはnm(ε)で示されている。市販の薬剤および溶剤は、特記されない限り更に精製せずに使用された。反応は、標準のガラス製品中でN2下に行われた。以下のヒドラジン誘導体は、市場の発売元から得られた:ベンゾヒドラジド(1a、発売元:Fluka)、2−フロヒドラジド(2a、発売元:Fluka)、2−ヒドラジノ−N,N,N−トリメチル−2−オキソエタナミウムクロリド(3a、ジラード-T試薬、発売元:Fluka)、1−(2−ヒドラジノ−2−オキソエチル)ピリジニウムクロリド(4a、ジラード-P試薬、発売元:Aldrich)、エチルヒドラジンカルボキシレート(5a、発売元:Acros)、N−フェニルヒドラジンカルボキサミド(6a、発売元:TCI)、N−フェニルヒドラジンカルボチオアミド(7a、発売元:Acros)、4−メチル−1−ベンゼンスルホノヒドラジド(8a、発売元:Acros)、4−ヒドラジノ安息香酸(9a、発売元:Acros)、(1,1−ジオキシドテトラヒドロ−3−チエニル)ヒドラジン(10a、発売元:Lanxess)、4H−1,2,4−トリアゾール−4−アミン(11a、発売元:TCI)、オクタノヒドラジド(12a、カプリリックヒドラジド、発売元:Fluka)、テレフタロヒドラジド(13a、テレフタル酸ジヒドラジド、発売元:TCI)、ヘキサンジヒドラジド(14a、アジピン酸ジヒドラジド、発売元:AcrosまたはLanxess)およびN’,N’−ビス(フェニルメチレン)エタンジヒドラジド(15b、シュウ酸ビス(ベンジリデンヒドラジド)、発売元:Aldrich)。他の化合物は以下のように得られた。
【0067】
幾つかの化合物に関しては特異的な立体配座または立体配置が示されているが、これらの化合物の使用を記載された異性体だけに限定することを意味するのではない。本発明によれば、全ての可能性として有り得る立体配座または立体配置の異性体は同様の作用を有すると考えられる。
【0068】
市販されていないヒドラジン誘導体を以下のように調製した
(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシスクシノヒドラジド(16a)の調製
エタノール中(55ml)の(+)−ジエチル(R,R)−タルトレート(5.00g、24.2mmol)とヒドラジン水化物(水中51%、5.9ml=6.07g、96.7mmol、発売元:Acros)の混合物を、還流下に一晩加熱した。白色沈殿物の形成が観察された。室温まで冷却した後に、反応混合物を濾過し、かつ残留物を真空下に乾燥させて白色固体4.12g(96%)が得られた。
【0069】
【数1】

【0070】
(+)−(2R,3R)−2,3−ビス(ドデシルオキシ)スクシノヒドラジド(17a)の調製
a)(+)−(2R,3R)−2,3−ビス(ドデシルオキシ)−N,N,N’,N’−テトラメチルスクシンアミドの調製
DMF(150ml)と(+)−(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシ−N,N,N’,N’−テトラメチルスクシンアミド(9.2g、45.0mmol、発売元:Aldrich)を添加する前にナトリウムヒドラジド(3.60g、60%、90.0mmol)をペンタンで洗浄した(3回)。この反応混合物を室温で90分間撹拌し続け、次にDMF(50ml)中の1−ヨードドデカンの溶液(28.0g、94.5mmol)を添加した。反応混合物を室温でさらに2時間撹拌し続け、次に一晩80℃で加熱した。室温まで冷却した後に、反応混合物をエーテルで抽出し(4回)、水で洗浄し(2回)、乾燥させた(Na2SO4)、かつ濃縮した。カラムクロマトグラフィー(SiO2、ジクロロメタン/アセトン3:1)により、淡黄色の固体5.93g(28%)が得られた。
b)(+)−(2R,3R)−2,3−ビス(ドデシルオキシ)コハク酸の調製
a)で得られた化合物(6.63g、12.3mmol)、HCl(36%、110ml)および水(55ml)の懸濁液を還流下に4日間加熱した。室温まで冷却した後に、反応混合物を CH2Cl2で抽出し(3回)、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して生成物6.03g(定量)が得られた。
c)(+)−ジメチル(2R,3R)−2,3−ビス(ドデシルオキシ)スクシネートの調製
濃硫酸約1ml(55滴)をb)で得られたメタノール(275ml)中の化合物(4.18g、8.6mmol)の溶液に添加した。反応混合物を還流下に一晩加熱した。室温まで冷却した後に、生成物を濃縮し、かつ0℃で水700ml中に析出させた。濾過により白色固体3.98g(90%)が得られた。
d)(+)−(2R,3R)−2,3−ビス(ドデシルオキシ)スクシノヒドラジド(17a)の調製
エタノール(650ml)中のc)で得られた混合物(5.00g、9.7mmol)とヒドラジン水化物(水中51%、2.37ml=2,44g、38.8mmol)を還流下に一晩加熱した。室温まで冷却した後に、反応混合物を濃縮し、かつ濾過して白色固体2.76g(55%)が得られた。
【0071】
【数2】

【0072】
2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボヒドラジド(18a)の調製
エタノール(20ml)中のトリメチル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート(1.00g、4.3mmol、発売元:Fluka)と、ヒドラジン水化物(水中51%、1ml=1.03g、16.7mmol)の混合物を還流下に一晩加熱した。白色沈殿物の形成が観察された。室温まで冷却した後に、反応混合物を濾過し、かつ残留物を真空下に乾燥させて白色固体0.85g(85%)が得られた。
【0073】
【数3】

【0074】
(±)−ポリ(アクリロヒドラジド)(19a)の調製
トルエン中のポリ(メチルアクリレート)(発売元:Aldrich、Mw=30700、Mn=10600)を濃縮した。ヒドラジン水化物(水中51%、68ml=69.90g、1112.4mmol)をポリマー7.00g(81.3mmol)に添加し、かつ混合物を80℃で5時間加熱した。室温まで冷却した後に、反応混合物をメタノール700mlに注ぎ、白色沈殿物を濾過した。固体をジクロロメタン中(1回)とエーテル中(2回)に懸濁させ(音波破砕により)、残りのメタノールを除去し、最後に白色固体3.52g(50%)が得られた。
【0075】
【数4】

【0076】
ポリ((1→4)−6−ヒドラジノ−α−D−ガラクト−ヘキソジアルド−1,5−ピラノース)(20a)の調製
ヒドラジン水化物(水中51%、17.6=18.09g)を5分間にわたり添加する前に、ペクチン(リンゴから、20.00g、発売元:Fluka)を水250ml中に懸濁させ、かつ機械的に1時間撹拌した。反応混合物を室温で3時間撹拌し続け、次に30℃で更に140時間撹拌した。粗生成物をトルエンで洗浄した。トルエンをデカンテーションした後に、残りの生成物を真空下に乾燥させ、かつ一晩凍結乾燥させて固体21.5gが得られた。
【0077】
13C−NMR分析(D2O中0.1M NaOH)は、ペクチン中のメチルエステル基に相当する51.75でピークの消失を示した。
【0078】
市販されていないヒドラゾン誘導体を以下のように調製した
N’−[(1E)−フェニルメチレン]ベンゾヒドラジド(1b)の調製
エタノール(50ml)中の1a(3.00g、22.0mmol)とベンズアルデヒド(3.50g、33.0mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、かつ真空下に乾燥させて白色固体4.18g(85%)が得られた。
【0079】
【数5】

【0080】
N’−[(1E,2E)−3−フェニル−2−プロペニリデン]ベンゾヒドラジド(1c)の調製
ヘキサン(100ml)中の1a(3.00g、22.0mmol)とトランスシンナムアルデヒド(4.35g、32.9mmol、発売元:Aldrich)の混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を濾過し、残留物をヘキサンで洗浄し、真空下に乾燥させて白色固体4.95g(90%)が得られた。
【0081】
【数6】

【0082】
N’−[(1E)−3−フェニルブチリデン]ベンゾヒドラジド(1d)の調製
エタノール(28ml)中の1a(1.50g、11.0mmol)と3−フェニルブタナール(Trifernal(R)、2.45g、16.5mmol)の混合物を還流下に2時間加熱した。室温まで冷却した後に、反応混合物を真空中で濃縮した。生成物をエタノールで洗浄し、次にヘキサンで洗浄し、最後に真空下(0.17mbar)に乾燥させて、白色固体2.04g(70%)が得られた。
【0083】
【数7】

【0084】
N’−[(1E)−10−ウンデセニリデン]ベンゾヒドラジド(1e)の調製
エタノール(28ml)中の1a(1.50g、11.0mmol)と10−ウンデセナール(2.80g、16.5mmol)の混合物を還流下に2時間加熱した。室温まで冷却した後に、生成物を濃縮し、ヘキサンで洗浄し、真空下(0.20mbar)に乾燥させて白色固体2.78g(88%)が得られた。
【0085】
【数8】

【0086】
N’−[(1E)−フェニルメチレン]−2−フロヒドラジド(2b)の調製
エタノール(50ml)中の2a(3.00g、23.8mmol)とベンズアルデヒド(3.78g、35.6mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、真空下に乾燥させて白色固体4.74g(92%)が得られた。
【0087】
【数9】

【0088】
N’−[(1E,2E)−3−フェニル−2−プロペニリデン]−2−フロヒドラジド(2c)の調製
ヘキサン(75ml)中の2a(2.00g、15.9mmol)とトランスシンナムアルデヒド(3.14g、23.7mmol)の混合物を60℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空下に乾燥させて黄色固体3.51g(92%)が得られた。
【0089】
【数10】

【0090】
N’−[(1E)−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)メチレン]−2−フロヒドラジド(2d)の調製
エタノール(30ml)中の2a(1.50g、11.9mmol)とバニリン(2.71g、17.8mmol)の混合物を還流下に2時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をヘキサンで洗浄し、真空下(0.24mbar)に乾燥させてなおエタノールを含有している白色固体2.49g(80%)が得られた。
【0091】
【数11】

【0092】
N’−[(3R)−3,7−ジメチル−6−オクテニリデン]−2−フロヒドラジド(2e)の調製
エタノール(30ml)中の2a(1.50g、11.9mmol)と(R)−シトロネラール(2.74g、17.7mmol)の混合物を還流下に2時間加熱した。室温まで冷却した後に、生成物を濃縮し、かつ過剰のシトロネラールをクーゲルロール(Kugelrohr)蒸留(120℃、0.39mbarl)により除去し、黄色固体2.03g(55%)が2つの異性体の混合物(約7:1)として得られた。
【0093】
【数12】

【0094】
N,N,N−トリメチル−2−オキソ−2−{(2E)−2−[(2E)−3−フェニル−2−プロペニリデン]−ヒドラジノ}エタナミニウムクロリド(3c)の調製
エタノール(12ml)中の3a(0.82g、4.9mmol)とトランスシンナムアルデヒド(0.5g、3.8mmol)の混合物を還流下に1時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空下に乾燥させて、アミド結合配座に関して、2つの異性体から成る白色固体0.32g(30%)が得られた(E:Z約2:1)。
【0095】
【数13】

【0096】
1−{2−[(2E)−2−ベンジリデンヒドラジノ]−2−オキソエチル}ピリジニウムクロリド(4b)の調製
エタノール(45ml)中の4a(3.00g、16.0mmol)とベンズアルデヒド(2.54g、23.9mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄した。濾液を再結晶し、かつ高真空圧下に乾燥させ、アミド結合配座に関して2つの異性体から成る白色固体が全部で4.28g(97%)得られた(E:Z約4:1)。
【0097】
【数14】

【0098】
1−(2−オキソ−2−{(2E)−2−[(2E)−3−フェニル−2−プロペニリデン]ヒドラジノ}エチル)ピリジニウムクロリド(4c)の調製
エタノール(20ml)中の4a(1.5g、8.0mmol)とトランスシンナムアルデヒド(1.6g、12.0mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空圧下(0.6mbar)に乾燥させて、アミド結合配座に関して、2つの異性体から成る淡黄色固体0.51g(21%)が得られた(E:Z約3:1)。
【0099】
【数15】

【0100】
(2E)−2−ベンジリデンヒドラジンカルボキシレート(5b)の調製
エタノール(85ml)中の5a(3.00g、28.8mmol)とベンズアルデヒド(4.60g、43.3mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、真空圧下に乾燥させて、白色固体4.82g(87%)が得られた。
【0101】
【数16】

【0102】
2−{(1E,2E)−3−フェニル−2−プロペニリデン]ヒドラジンカルボキシレート(5c)の調製
エタノール(100ml)中の5a(4.00g、38.4mmol)とトランスシンナムアルデヒド(7.60g、57.5mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空下に乾燥させて、白色固体6.77gが得られた。濾液の再濾過により更に残留物0.73gが得られ、全体で91%の収率であった。
【0103】
【数17】

【0104】
ベンズアルデヒドN−フェニルセミカルバゾン(6b)の調製
エタノール(45ml)中の6a(3.00g、19.8mmol)とベンズアルデヒド(3.16g、29.8mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、かつ真空下に乾燥させた。濾液の再結晶により、白色固体が全部で4.13g(87%)得られた。
【0105】
【数18】

【0106】
(1E,2E)−3−フェニルアクリルアルデヒドN−フェニルセミカルバゾン(6c)の調製
エタノール(35ml)中の6a(2.00g、13.2mmol)とトランスシンナムアルデヒド(2.60g、19.7mmol)の混合物を還流下に2.5時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空下に乾燥させて淡黄色固体2.89g(84%)が得られた。
【0107】
【数19】

【0108】
4−メチル−N’−[(1E)−フェニルメチレン]ベンゼンスルホノヒドラジド(8b)の調製
エタノール(38ml)中の8a(3.00g、16.1mmol)とベンズアルデヒド(2.56g、24.1mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、真空下に乾燥させた。濾液の再結晶により白色固体が全部で3.59g(81%)得られた。
【0109】
【数20】

【0110】
4−メチル−N’−[(1E)−1−フェニルエチリデン]ベンゼンスルホノヒドラジド(8d)の調製
エタノール(45ml)中の8a(3.00g、16.1mmol)と1−フェニル−1−エタノン(アセトフェノン、2.90g、24.1mmol)の混合物を還流下に4時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、真空下(0.10mbar)に乾燥させて白色固体2.84g(61%)が得られた。
【0111】
【数21】

【0112】
4−[(2E)−2−ベンジリデンヒドラジノ]安息香酸(9b)の調製
エタノール(50ml)中の9a(3.00g、19.7mmol)とベンズアルデヒド(3.14g、29.6mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、真空下(0.21mbar)に乾燥させて淡黄色固体2.14g(45%)が得られた。
【0113】
【数22】

【0114】
N’−[(1E)−3,5,5−トリメチルヘキシリデン]オクタノヒドラジド(12d)の調製
エタノール(48ml)中の12a(3.00g、19.0mmol)と3,5,5−トリメチルヘキサナール(4.05g、28.4mmol)の混合物を還流下に2時間加熱した。室温まで冷却した後に、生成物を濃縮し、エタノールで洗浄した。高真空下(0.33mbar)に乾燥させて、アミド結合配座に関して2つの異性体から成る無色の油が全部で4.69g(88%)得られた(E:Z約56:44)。
【0115】
【数23】

【0116】
N’,N’−ビス[(1E)−フェニルメチレン]ヘキサンジヒドラジド(14b)の調製
エタノール(95ml)中の14a(4.00g、22.9mmol)とベンズアルデヒド(7.30g、68.9mmol)の懸濁液を還流下に4時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空下に乾燥させて白色固体7.86(98%)が、アミド結合配座に関して3つの異性体の混合物として得られた(E/Z:E/E:Z/Z約1.4:1:1)。
【0117】
【数24】

【0118】
N’,N’−ビス[(1E)−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)メチレン]ヘキサンジヒドラジド(14d)の調製
エタノール(80ml)中の14a(4.00g、22.9mmol)とバニリン(10.48g、68.9mmol)の懸濁液を還流下に5時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空下に乾燥させて白色固体10.03g(99%)が、アミド結合配座に関して3つの異性体の混合物として得られた(E/Z:E/E:Z/Z約2:1:1)。
【0119】
【数25】

【0120】
N’,N’−ビス[(1E)−1−メチル−3−フェニルプロピリデン]ヘキサンジヒドラジド(14e)の調製
エタノール(22ml)中の14a(1.50g、8.6mmol)とベンジルアセトン(3.83g、25.8mmol)の混合物を還流下に4時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄し、真空下に乾燥させて白色固体2.94(79%)が、少量の他の異性体と共に1つのメジャーな異性体として得られた。
【0121】
【数26】

【0122】
2−ヒドロキシ−N’,N’,N’−トリス[(1E,2E)−3−フェニル−2−プロペニリデン]−1,2,3−プロパントリカルボヒドラジド(18c)の調製
エタノール(50ml)中の18a(0.80g、3.4mmol)とトランスシンナムアルデヒド(2.00g、15.3mmol)の混合物を還流下に3時間加熱した。室温まで冷却した後に、混合物を濾過し、残留物を真空下に乾燥させて淡黄色の固体1.77g(91%)が、アミド結合配座に関して3つの異性体の混合物として得られた(E/Z/Z:E/Z/E:Z/Z/Z約2:1:1)。
【0123】
【数27】

【0124】
活性アルデヒドまたはケトンの使用
以下の実施例は、活性アルデヒドまたはケトンとして芳香性または着香性成分を用いる動的混合物の形成を説明するものである。しかし、これらは、活性アルデヒドまたはケトンが昆虫駆除剤または誘引剤として、または殺菌剤または殺真菌剤として有用である本発明による動的混合物の世代の代表でもある。以下の実施例に記載された幾つかの化合物、例えば、ベンズアルデヒド、デカナール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキサン−1−カルバルデヒド、3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール)、2−フランカルバルデヒド(フルフラール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、メントン、1−(4−メチルフェニル)−1−エタノン(4−メチルアセトフェノン)、3−オクタノン、2−ペンチル−1−シクロペンタノン(デルフォン)、3−フェニル−2−プロペナール(シンナムアルデヒド)、または10−ウンデセナールは、昆虫誘引剤または駆除剤として(例えば:A. M. El-Sayed, The Pherobase 2005, http://www.pherobase.net参照)および/または細菌に対して活性である(例えば:WO 01/24769またはEP 1043968参照)ことも知られている。
【0125】
例1
芳香化合物としてのヒドラジン誘導体とシンナムアルデヒドとしてジラードT試薬を用いる動的混合物の形成
動的混合物の形成を、緩衝水溶液(D2O/CD3OD2:1(v/v))中でNMRスペクトロスコピーによりモニターした。重水素化した酸性緩衝ストック溶液を以下の生成物の量から調製した:
オルトリン酸(発売元:Fluka) 0.0412g
KH2PO4(一塩基性、発売元:Acros) 0.0290g
酸化ジューテリウム 1.5572g
CD3OD 0.6280g
ヒドラゾン3cの加水分解による形成
ヒドラゾン3cと水を接触することによる本発明の動的混合物の形成を、重水素化した緩衝液0.7mlを3c 9.6mgに添加することによりモニターした。ロックシグナルとしてナトリウム3−トリメチルシリルテトラジュウテリオプロピオネート(DSP)を使用して、1H−NMRスペクトルをBruker AV 500スペクトルメーターにより様々な時間差で記録した。
【0126】
9.58ppmでの二重項の出現は、シンナムアルデヒドの形成を示しており、この構造は、実験の終わりに13C−NMRスペクトルを記録することにより確認された。
【0127】
ヒドラジン誘導体3aとシンナムアルデヒドの反応による形成
同様に、重水素化した緩衝液0.7mlと、シンナムアルデヒド4.5mgとヒドラジン誘導体3aの混合物とを接触させることにより、本発明の動的混合物の形成をNMRによりモニターした。これは、結果として8.07ppmと7.84ppmでの2つの二重項の出現を生じ、ヒドラゾン3cの2つの異性体のN=CHプロトンに相応した。化合物3cの同一性は、平衡での反応混合物の13C−NMR分析により確認された。
【0128】
両方の場合に、所定の条件下で平衡は極めて迅速に達成された(約10〜15分間)。
【0129】
例2
動的混合物を形成するための運動速度定数の測定
動的混合物の形成は、UV/Visスペクトロスコピーによりモニターし、かつ運動速度定数を約1.7×10-5Mの生成物濃度で緩衝水溶液(水/エタノール2:1(v/v))中で測定した。
【0130】
a)反応媒体として使用されるクエン酸緩衝ストック溶液の調製
以下の生成物量をメスフラスコに計量供給した:
NaOH(無水ペレット、発売元:Carlo Erba) 0.65g
NaCl(発売元:Carlo Erba) 0.62g
クエン酸(無水、発売元:Fluka) 2.58g
脱塩水(MilliQ) 160.02g
エタノール(無水、発売元:Carlo Erba) 31.45g
緩衝ストック溶液10mlをエタノール2mlで希釈して、水/エタノール2:1(v/v)の混合物を得た(動的測定用に使用した最終反応溶液に相応)。この溶液のpH値は25.0℃で(±0.30)で4.48(±0.021)であった。
【0131】
b)反応媒体として使用されるリン酸緩衝ストック溶液の調製
以下の生成物量をメスフラスコに計量供給した:
オルトリン酸(発売元:Fluka) 1.97g
KH2PO4(一塩基性、発売元:Acros) 1.37g
NaCl(発売元:Carlo Erba) 0.60g
脱塩水(MilliQ) 160.01g
エタノール(無水、発売元:Carlo Erba) 31.45g
水/エタノール2:1(v/v)中の緩衝液(緩衝ストック溶液10mlをエタノール2mlで希釈することにより得られた)のpH値は、25.0℃で(±0.36)2.47(±0.045)であった。
【0132】
c)動的混合物の平衡の測定
ヒドラジン誘導体0.2mlおよびシンナムアルデヒド(CA)0.2mlまたはベンズアルデヒド(BA)(全て、エタノール中2.0×10-4M)を先に調製した緩衝ストック溶液2mlに添加することにより、または二者択一的に、相応のヒドラゾン0.4ml(エタノール中1.0×10-4M)を緩衝ストック溶液2mlに添加することにより、全ての反応を石英キュベット(1cm)中で実施した。240と450nmの一定の時間間隔でUV/Visスペクトルを記録した。1つめのスペクトルは、緩衝液に化合物を添加した後に2〜3分間記録し、その後のスペクトルは、それぞれ5もしくは10分間(pH2.47)または30もしくは60分間(pH4.48)の間隔で記録した。
【0133】
ヒドラゾンの完全な加水分解が行われた場合には、ヒドラジン誘導体とアルデヒド/ケトン(Aa+h)の混合物に相応するものを達成するために、所定の波長で純粋なヒドラゾン(Ah)のものとはUV吸収を変える必要があった。逆は、相応のアルデヒド/ケトンとヒドラジン誘導体からヒドラゾンが形成されると予想されている。反応の過程で、吸収がこれらの2つの極値の間にある一定の値に到達した場合には、平衡状態が達され、かつ"平衡値"xeqを定義することができ、これは、この点で所定の波長(λ)で反応がどちらかの方向に進むことを示している。
【0134】
【化4】

【0135】
所定の動的混合物に関しては、xeq fは、水中でヒドラジン誘導体とアルデヒドまたはケトンを接触することによる動的混合物の形成の平衡値であり、xeq hは、ヒドラゾン誘導体と水を接触することによる動的混合物の平衡値であり、かつAeqは、平衡で達した吸収である。上記の条件下では、ヒドラゾン(1c、2c、2bまたは14b)の加水分解によるか、またはそれぞれヒドラジン誘導体(1a、2aまたは14a)とベンズアルデヒドもしくはシンナムアルデヒドの間の反応による動的混合物の形成は、λ=290nm(BA)またはλ=320nm(CA)で以下の平衡値xeqを生じた。
【0136】
【表1】

【0137】
eqの値が1または0である場合には、ヒドラゾン形成またはヒドラゾン加水分解は、それぞれ完了する。分かる通りに、測定された"平衡値" xeqが0より大きいか、1未満であるので、混合物は様々な出発成分の間の可逆反応の結果得られる。
【0138】
約±0.1の測定値の実験エラーの範囲内で、出発点(すわなち、ヒドラジン誘導体、アルデヒドと水、またはヒドラゾンと水)とは独立に同じ平衡状態に達する。
【0139】
他の活性アルデヒド/ケトンまたはヒドラジン誘導体に関して、平衡が比較的に遅いこと、および実験の時間枠内で、このような平衡が完全に達成されないということが生じるかもしれないが、しかし、これは水中でヒドラジン誘導体と活性化合物を接触することにより得られるか、またはヒドラゾン誘導体と水を接触することにより得られる動的混合物が同じであるということを暗示しているのではない。
【0140】
ヒドラゾン誘導体1cの形成と加水分解に関して記録したUV/Visスペクトルは、図(I)に示されている。
【0141】
d)水中でヒドラジン誘導体と活性アルデヒド/ケトンを接触させることによる様々な動的混合物の形成に関する速度定数の測定
上記のような同じ反応条件を使用して(例2c)参照)、グッゲンハイム(Phil. Mag.[7]1926, 2, 538-543)により記載された方法により、290nm(ベンズアルデヒド)または320nm(シンナムアルデヒドとバニリン)で測定した吸収の変化からの速度定数を測定した。Δt=1もしくは2時間(pH 2.47)またはΔt=7.5もしくは15時間(pH 4.48)では、速度論は擬1次速度(r2>0.99)であり、かつ以下の速度定数は、ヒドラジン付加生成物の形成に関して得られることが分かった。
【0142】
【表2】

【0143】
e)ヒドラゾン誘導体と水を接触させることによる動的混合物の形成に関する速度定数の測定
UV/Visスペクトルを記録し、かつ上記のように測定した速度定数は、ヒドラゾンの加水分解に関して以下の値が得られた:
【表3】

【0144】
例3
本発明の動的混合物を有する柔軟剤ベースの性能
本発明の混合物の芳香成分としての使用を1つの織物柔軟剤中で試験した。
【0145】
織物柔軟剤ベースを以下の組成物を用いて調製した:
質量部
Stepantex(R) VS90またはVHR90(発売元:Stepan) 16.5
Stepanquat(R)F(発売元:Stepan) 0.4
染料(1%Sandolan Milling Blue N-LN 180;発売元Clariant) 0.3
82.6
100.0
遊離した芳香性アルデヒド/ケトンと本発明の混合物(すなわち、遊離した芳香性アルデヒド/ケトンと添加剤としてのヒドラジン誘導体)の時間を経過した芳香性能を以下の試験で測定した:
a)ヒドラジン誘導体3a含有の動的混合物からのフレグランス放出
上記の織物柔軟剤ベース1.80gをそれぞれ4個の小さなバイアルに計量供給した。次に、エタノール10ml中、当モル量(0.41mmol)の3−フェニルブタナール(Trifernal(R), 60.7mg)、10−ウンデセナール(69.0 mg)、(Z)−4−ドデセナール(74.7mg)、(R)−3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール、63.3mg)、4−フェニル−2−ブタノン(ベンジルアセトン、60.6mg)および1−フェニル−1−エタノン(アセトフェノン、48.9mg)を含有する溶液1mlを各バイアルに加えた。次に、水10ml中、ヒドラジン誘導体3a 415.0mg(2.48mmol)を含有する溶液1mlを2個のサンプルに加え、かつ水1mlを対照として用いる他の2個のサンプルに加えた。4個の全てのサンプルを閉じ、平衡になるまで室温で放置した。5日後に、脱塩した冷たい水道水600mlの入ったビーカー中にサンプルをそれぞれ分散させた。1枚のコットンタオル(EMPAコットン試験布 Nr.221、発売元:Eidgenoessische Materialpruefanstalt(EMPA)、無臭の粉洗剤で前洗いし、かつ約12×12cmシートに切ったもの)を各ビーカーに加え、相互に3分間撹拌し、2分間放置し、次に手で絞り、計量して一定量の残った水が得られた。2枚のタオル(1枚はヒドラジン誘導体有り、もう1枚は無しで)を柔軟剤で処理した直後に分析し、他の2枚は一晩乾燥させ、かつ次の日に分析した。各タオルを25℃に温度調節したヘッドスペースサンプリングセル(160ml)に入れ、それぞれ200ml/分の一定の空気流にさらした。空気を活性炭を通して濾過し、かつNaCl飽和溶液(約75%の一定の空気湿度を保証するため)を通して吸引した。15分間の間、ヘッドスペース系を平衡させ、次に揮発物を綺麗なTenax(R)カートリッジ上でそれぞれ5分間(湿ったタオル)または15分間(乾いたタオル)吸収した。サンプリングを50分おき(湿ったタオル)、または1時間おき(乾いたタオル)に7回繰り返した。J&W Scientific DB1キャピラリーカラム(30m、内径0.45mm、フィルム0.42μm)とFID検出器を備えたCarlo Erba MFC 500ガスクロマトグラフに連結したPerkin Elmer TurboMatrix ATD 脱着装置上でカートリッジを脱着した。3℃/分で70℃〜130℃から始めて、次に25℃/分で260℃まで2工程の温度勾配を用いて揮発物を分析した。射出温度は240℃であり、検出器の温度は260℃であった。ヘッドスペース濃度(ng/l)は、5つの様々な濃度のエタノール溶液を用いて、相応のフレグランスのアルデヒドとケトンの外部標準キャリブレーションにより得られた。各キャリブレーション溶液0.2μlをTenax(R)カートリッジに注入し、ヘッドスペースサンプリングから得られる物のように、これを直ちに同じ条件下で脱着した。ヒドラジン誘導体3a不含の対照サンプル(カッコ内)と比べて、以下の量のアルデヒドとケトンが3a含有のサンプルから検出された:
【表4】

【0146】
データーは、ヒドラジン誘導体3aの存在が、フレグランスのアルデヒドとケトンの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。特に、実験の終わりに乾いた織物の上で測定されたヘッドスペース濃度は、3aの存在では、それが無いものよりも1.4倍((Z)−4−ドデセナール)〜20倍(アセトフェノン)高いことが分かった。
【0147】
乾いた織物の上で測定したフレグランス放出の速度論は図(II)に記載されている。
【0148】
b)ヒドラジン誘導体14a含有の動的混合物からのフレグランス放出
エタノール20ml中、当モル量(0.81mmol)の2−フランカルバルデヒド(フルフラール、78.2mg)、3−オクタノン(105.3mg)、2,4,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(125.5mg)、1−(4−メチルフェニル)−1−エタノン(4−メチルアセトフェノン、110.5mg)、2−ペンチル−1−シクロペンタノン(デルフォン、126.2mg)および(±)−エキソ−トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8エキソ−カルバルデヒド(Vertral(R), 135.2mg)を含有する溶液1mlを、それぞれ上記の織物柔軟剤ベース1.80gを含有する4個のバイアルに添加することにより上記のように実験を実施した。次に、水10ml中、ヒドラジン誘導体14a 214.4mg(1.23mmol)を含有する溶液1mlを2個のサンプルに加え、かつ水1mlを対照として用いる他の2個のサンプルに加えた。
【0149】
ヒドラジン誘導体14a不含の対照サンプル(カッコ内)と比べて、以下の量のアルデヒドとケトンが14a含有サンプルから検出された。
【0150】
【表5】

【0151】
データーは、ヒドラジン誘導体14aの存在が、フレグランスのアルデヒドとケトンの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。湿った織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、14aの存在では、その不在の場合よりも幾つかの成分については高く、更に幾つかの成分については僅かに低かった。しかし、実験の終わりに乾いた織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、14aの存在では、その不在の場合よりも一般に高かった。
【0152】
c)ヒドラジン誘導体16a含有の動的混合物からのフレグランス放出
エタノール10ml中、当モル量(0.41mmol)の(−)−メントン(63.8mg)、(±)−エキソ−トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8エキソ−カルバルデヒド(Vertral(R), 67.8mg)、3,5,5−トリメチルヘキサナール(58.0mg)、(+)−(S)−1(6),8−p−メタジエン−2−オン(カルボン、61.4mg)、4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブタノン(α−ジヒドロイオノン、80.1mg)およびデカナール(63.3mg)含有の溶液1mlを、それぞれ上記の織物柔軟剤ベース1.80gを含有する4個のバイアルに添加することにより上記のように実験を実施した。次に、水10ml中、ヒドラジン誘導体16a 218.9mg(1.23mmol)を含有する溶液1mlを2個のサンプルに加え、かつ水1mlを対照として用いる他の2個のサンプルに加えた。
【0153】
ヒドラジン誘導体16a不含の対照サンプル(カッコ内)と比べて、以下の量のアルデヒドとケトンが16a含有のサンプルから検出された。
【0154】
【表6】

【0155】
データーは、ヒドラジン誘導体16aの存在が、フレグランスのアルデヒドとケトンの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。湿った織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、16aの存在では、その不在の場合よりも幾つかの成分については高く、更に幾つかの成分については僅かに低かった。しかし、実験の終わりに乾いた織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、16aの存在では、その不在の場合よりも一般に高かった。
【0156】
d)ヒドラジン誘導体18a含有の動的混合物からのフレグランス放出
エタノール10ml中、当モル量(0.41mmol)の2−フランカルバルデヒド(フルフラール、39.1mg)、10−ウンデセナール(69.0mg)、ベンズアルデヒド(44.0mg)、(R)−3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール、63.4mg)、2−ペンチル−1−シクロペンタノン(デルフォン、62.7mg)および1−(4−メチルフェニル)−1−エタノン(4−メチルアセトフェノン、54.6mg)を含有する溶液1mlを、それぞれ上記の織物柔軟剤ベース1.80gを含有する4個のバイアルに添加することにより上記のように実験を実施した。次に、水10ml中、ヒドラジン誘導体18a 192.1mg(0.82mmol)を含有する溶液1mlを2個のサンプルに加え、かつ水1mlを対照として用いる他の2個のサンプルに加えた。
【0157】
ヒドラジン誘導体18a不含の対照サンプル(カッコ内)と比べて、以下の量のアルデヒドとケトンが18a含有のサンプルから検出された。
【0158】
【表7】

【0159】
データーは、ヒドラジン誘導体18aの存在が、フレグランスのアルデヒドとケトンの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。先の例のように、プラスの効果は湿った織物の上で5つのフレグランス分子に関して、および乾いた織物の上で6つの全ての化合物に関して見つかった。実験の終わりに、乾いた織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、18aの存在で、その不在の場合よりも全て4倍(シトロネラール)〜60倍(4−メチルアセトフェノン)高かった。
【0160】
同じ実験を約33%(MgCl2の飽和溶液を通して空気を吸引することにより)の空気湿度で実施した。乾いた織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、75%の空気湿度で記録したものと同じ大きさの程度であることが分かった。
【0161】
e)ヒドラジン誘導体19a含有の動的混合物からのフレグランス放出
エタノール10ml中、当モル量(0.41mmol)の5−メチル−3−ヘプタノン(52.9mg)、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Triplal(R),
56.3mg)、4−エチルベンズアルデヒド(55.1mg)、6−メトキシ−2,6−ジメチルヘプタナール(メトキシメロナール、70.4mg)、(+)−(S)−1(6),8−p−メンタジエン−2−オン(カルボン、61.5mg)および2−メチルデカナール(69.8mg)を含有する溶液1mlを、それぞれ上記の織物柔軟剤ベース1.80gを含有する4個のバイアルに添加することにより上記のように実験を実施した。次に、水10ml中、ヒドラジン誘導体19a 211.5mg(2.46mmol)を含有する溶液1mlを2個のサンプルに加え、かつ水1mlを対照として用いる他の2個のサンプルに加えた。
【0162】
ヒドラジン誘導体1 9a不含の対照サンプル(カッコ内)と比べて、以下の量のアルデヒドとケトンが19a含有のサンプルから検出された。
【0163】
【表8】

【0164】
データーは、ヒドラジン誘導体19aの存在が、フレグランスのアルデヒドとケトンの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。湿った織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、19aの存在で、その不在の場合よりも幾つかの成分については高かったが、更に幾つかの成分では低かった。しかし、実験の終わりに、乾いた織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、19aの存在で、その不在の場合よりも一般に高かった。
【0165】
f)ヒドラゾン誘導体1d、1e、2e、8d、9bおよび14e含有の動的混合物からのフレグランス放出
エタノール10ml中、ヒドラゾン誘導体1d(112.8mg)、1e(118.0mg)、2e(107.6mg)、8d(117.8mg)、9b(98.3mg)および14e(89.2mg)含有の溶液1mlを、それぞれ上記の織物柔軟剤ベース1.80gを含有する2個のバイアルに添加することにより上記のように実験を実施した。次に、エタノール10ml中、当モル量(0.41mmol)の(R)−3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール、63.3mg)、3−フェニルブタナール(Trifernal(R)、60.9mg)、10−ウンデセナール(69.5mg)、ベンズアルデヒド(43.6mg)、4−フェニル−2−ブタノン(ベンジルアセトン、60.9mg)および1−フェニル−1−エタノン(アセトフェノン、48.7mg)を含有する溶液1mlを、それぞれ上記の織物柔軟剤ベース1.80gを含有する他の2個のバイアルに添加し、かつ対照として用いた。
【0166】
相応のフレグランス分子を有する対照サンプル(カッコ内)と比べて、以下の量のアルデヒドとケトンがヒドラゾン誘導体の混合物含有のサンプルから検出された。
【0167】
【表9】

【0168】
データーは、ヒドラゾン誘導体から得られる動的混合物が、変性していない遊離フレグランス分子と比べてフレグランスのアルデヒドとケトンの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。湿った、または乾いた織物の上で測定したヘッドスペース濃度は、1つを除いて全ての成分に関して、フレグランスを有するサンプルよりも、ヒドラゾン誘導体含有のサンプル中で高かった。1つの例外は、10−ウンデセナールであったが、それでも動的混合物のプラスの効果は乾いた織物の上で得られた。
【0169】
例4
本発明の動的混合物を有する柔軟剤ベースを用いる洗濯サイクル
本発明の動的混合物の芳香性成分としての柔軟剤ベースにおける使用は、機械の洗濯サイクルの後に織物の上で臭覚的に測定することにより試験した。以下の組成物を有する織物柔軟剤ベースを調製した:
質量部
Stepantex(R) VK 90(発売元:Stepan) 16.5
塩化カルシウム 0.2
83.3
100.0
以下の組成物を有する他の芳香性補助成分と一緒に活性アルデヒドとケトンを含有するフレグランスアコードを使用した:
アコード1: 質量部
メチルベンゾエート 15
クマリン 60
Iralia Total(R) 30
3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール(リナロール) 180
1−メトキシ−4−メチルベンゼン(メチルパラクレゾール) 5
Hedione(R) 290
Nirvanol(R)(発売元:Firmenich SA) 20
2−フェニルエタノール 200
800
アコード2: 質量部
10−ウンデセナール 100
メチルベンゾエート 15
4−フェニル−2−ブタノン(ベンジルアセトン) 100
クマリン 60
Iralia Total(R) 30
リナロール 180
メチルパラクレゾール 5
Hedione(R) 290
Nirvanol(R) 20
2−フェニルエタノール 200
1000
10−ウンデセナール100mg、または二者択一的に上記のアコードのうちの1つ1gを、それぞれ上記の織物柔軟剤ベース100gに添加することにより動的混合物を調製した。次に、混合物中の活性アルデヒドまたはケトンの全体量に関して0.5または1.0モル当量のヒドラジン誘導体4aまたは14aを加えた。得られた混合物を5分間振り、次に洗濯試験で使用する前に、少なくとも5日間室温に放置して平衡させた。
【0170】
臭覚的評価のために、以下の動的混合物を調製した:
【表10】

【0171】
洗濯試験用に、3枚の大きなテリーコットンタオル(45×90cm)と3枚の小さなテリーコットンタオル(28×28cm)を無香料の粉末洗剤(Via、発売元:Unilever、ストックホルム、スウェーデン)85gを用いて、900rpmのスピンサイクルで40℃にて短いサイクルを使用し、Miele Novotronic W300-33CH洗濯機で洗濯した。一旦サイクルが終わると、水2.5リットルを分配トレーを通して洗濯機に加え、"ammidonage"と呼ばれる新たな短いサイクルを始めた。洗濯機が排水し次第、水2.5リットル中に希釈した織物柔軟剤ベース35g(上記の動的混合物のうち1つを含有)の溶液を分配トレーを介して加えた。一旦サイクルが終わると、テリーコットンタオルを24時間ライン乾燥し、次に2人の専門家により評価した。
【0172】
全ての評価は、ヒドラジン(またはヒドラゾン)誘導体を含んでいない対照サンプルと比較して行った。アコードを、ヒドラジン誘導体を含んでいない相応のアコードと比較した。以下の結果が得られた:
項目1:洗濯機から取り出した時に、10−ウンデセナールの香りは、アルデヒドだけで着香したサンプルと比べてヒドラジン誘導体14aの存在では、かなり弱かった。しかし、3、7および14日後に、本発明の動的混合物を含有するサンプルは、ヒドラジン誘導体不含の対照サンプルよりも明らかに強かった。
【0173】
項目2、3および4:項目1と同じ効果が観察された。アルデヒド様のノートの認知は、動的混合物の存在では延長されたのに対して、ヒドラジン誘導体不含の対照サンプルは3日間の乾燥後には臭わなかった。
【0174】
項目5:3、7および14日後に、動的混合物含有のサンプルは、ヒドラジン誘導体14a不含の対照サンプルよりも良好なボリュームで明らかに強く、かつよりフレッシュな香りを有することが分かった。
【0175】
項目6:動的混合物含有のサンプルから得られる香りは、ヒドラジン誘導体14a不含の対照サンプルよりも、より強くかつフレッシュであることが認められ、かつ多くのボリュームを有した。
【0176】
本発明による動的混合物含有のサンプルは、洗濯した後3、7および14日後にも、強くかつフレッシュに常に位置付けられた。ヒドラジン誘導体の存在から生じる効果が明らかに認められ、よって本発明の動的混合物の存在は、乾いた織物の上でよりフレッシュなノートが残るように助長する。
【0177】
例5
本発明の動的混合物を有するシャンプーベースの性能
本発明の混合物の芳香成分としての使用をシャンプーで試験した。
【0178】
以下の組成物を有するシャンプーベースを調製した:
質量部
Texapon(R) NSO IS,ラウリル硫酸ナトリウム(発売元:Henkel) 48.0
Dehyton(R) AB-30,ココベタイン(発売元:Henkel) 7.0
Dow Corning 2-1691 エマルション(発売元:Dow Corning) 3.0
Rewomid IPP 240、コカミドMIPA(発売元:Witco Surfactants) 1.2
セチルアルコール 1.2
Cithrol EGDS 3432、エチレングリコールジステアレート
(発売元:Croda) 0.7
Jaguar Excel、グアールヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
(発売元:Rhodia) 0.4
Glydant(R) Plus Liquid、防腐剤(発売元:Lonza) 0.3
脱イオン水 38.2
100.0
遊離した芳香性アルデヒド/ケトンおよび本発明の混合物(すなわち、添加剤としてのヒドラジン誘導体との遊離した芳香性アルデヒド/ケトン)の時間を経過した芳香性能は、以下の実験で測定した:
a)ヒドラジン誘導体20a含有の動的混合物からのフレグランス放出
上記のシャンプーベース2.00gをそれぞれ4個の小さなバイアルに計量供給した。次に、エタノール10ml中、等モル量(0.6mmol)の3,5,5−トリメチルヘキサナール(85.3mg)、(R)−3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール、92.6mg)、デカナール(93.9mg)、4−フェニル−2−ブタノン(ベンジルアセトン、89.0mg)、10−ウンデセナール(100.9mg)および(±)−エキソ−トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8エキソ−カルバルデヒド(Vertral(R))含有の溶液200μlを、各バイアルに加えた。さらに、2個のサンプルにヒドラジン誘導体20a13.7mg(0.072mmol)を加えた。次に4個のサンプルを閉じ、平衡になるまで5日間室温で放置した。4個のヘア見本(約5g、発売元:A. & C. Secher Fesnoux, Industrie du cheveu, Chaville, France)を水道水(約35℃で)で湿らせ、それぞれ上記の無香料のシャンプーベース1.0gで洗い、水ですすいだ。次に2個のヘア見本を、ヒドラジン誘導体20aと一緒に芳香性アルデヒドとケトンを含有するシャンプーベース0.5gで1分間洗い、他の2個を芳香性アルデヒドとケトンだけを含有するシャンプーベース0.5gで1分間洗った。ヘア見本をそれぞれ30秒間すすいだ。それぞれシャンプーベース0.5gを用いて2回目の洗浄を更に繰り返した。2分間放置した後、見本を水(25℃で)で1分間すすぎ、家庭用ペーパーで短く予備乾燥した。2個の見本(1つは、ヒドラジン誘導体20a有りで、もう1つは無しで)をシャンプーで処理した直後に分析し、他の2個の見本は一晩乾燥させ、かつ次の日に分析した。各ヘア見本を25℃に温度調節したヘッドスペースサンプリングセル(160ml)に入れ、それぞれ200ml/分の一定の空気流にさらした。空気を活性炭を通して濾過し、かつNaCl飽和溶液(約75%の一定の空気湿度を保証するため)を通して吸引した。55分間の間、ヘッドスペース系を平衡させ、次に揮発物を綺麗なTenax(R)カートリッジ上でそれぞれ10分間(湿った見本)または15分間(乾いた見本)吸収した。サンプリングを30分おきに8回繰り返した。Agilent HP 5 HSキャピラリーカラム(30m、内径0.25mm、フィルム0.25μm)とAgilent MSD 5973N高感度マス検出器を備えたAgilent 6890Nガスクロマトグラフに連結したPerkin Elmer ATD-400脱着装置上でカートリッジを脱着した。3℃/分で70℃〜130℃から始めて、次に25℃/分で260℃まで2工程の温度勾配を用いて揮発物を分析した。射出温度は240℃であり、検出器の温度は260℃であった。インレット圧は62kPaであった。ヘッドスペース濃度(ng/l)は、5つの様々な濃度のエタノール溶液を用いて、相応のフレグランスのアルデヒドとケトンの外部標準キャリブレーションにより得られた。各キャリブレーション溶液0.1μlをTenax(R)カートリッジに注入し、ヘッドスペースサンプリングから得られる物のように、これを直ちに同じ条件下で脱着した。
【0179】
ヒドラジン誘導体20a不含の対照サンプル(カッコ内)と比べて、以下の量のアルデヒドとケトンが20a含有のサンプルから検出された。
【0180】
【表11】

【0181】
データーは、ヒドラジン誘導体20aの存在が、フレグランスのアルデヒドとケトンの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。湿ったおよび乾いたヘアで測定したヘッドスペース濃度は、ヒドラジン誘導体の存在では、それが無いものよりも一般に高かった(または少なくとも等しかった)。それに対して、10−ウンデセナールの場合には、等しいヘッドスペース濃度が両方の場合に測定され、ヒドラジン誘導体20aの存在では、3,5,5−トリメチルヘキサナールのヘッドスペース濃度は、20a不含の対照サンプルと比べて3倍(乾いたヘア)〜4倍(湿ったヘア)増大した。従って、芳香性複合組成物を使用し、かつ他のものを変えないまま、成分の一部だけの蒸発挙動を変性することができる。
【0182】
b)ヒドラゾン誘導体12d含有の動的混合物からのフレグランス放出
エタノール10ml中3,5,5−トリメチルヘキサナール(85.4mg)含有の溶液200μlを2個のバイアルに添加し、かつヒドラゾン誘導体12d 3.4mg(0.012mmol)を他の2個のバイアルに添加することにより実験を上記のように実施した。
【0183】
相応のフレグランス分子(カッコ内)を有する対照サンプルと比べて、以下の量のアルデヒドがヒドラゾン誘導体12d含有のサンプルから検出された。
【0184】
【表12】

【0185】
ヒドラゾン誘導体12dから得られる動的混合物が、変性していない遊離フレグランス分子と比べてフレグランスのアルデヒドの長期持続性にプラスの効果があることを明らかに説明している。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1は、ヒドラジン誘導体(I)と活性アルデヒドを混合することによる動的混合物の形成で得られるUV/Visスペクトル(上)と、相応のヒドラゾン誘導体1cをpH2.47で加水分解することにより得られるUV/Visスペクトル(下)を表す図である。
【図2】図2は、動的ヘッドスペース分析により得られたように、乾いた織物の上でヒドラジン誘導体3aの存在および不在で比較した香料アルデヒドとケトンのヘッドスペース中の濃度を表す図である(3aの存在−実線;3aの不在- - -破線)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水含有媒体中で、
i)少なくとも1つの式
【化1】

[式中、
a)R1は、水素原子、場合により3個までのR3基により置換されたC1〜C5−アルキル基またはフェニル基を表し;
3は、OR、NR2、SO3R、C1〜C4−アルキル基およびCOORから成るグループから選択される基を表し;
Rは、水素原子、C1〜C10−アルキルまたはポリエチレン−またはポリプロピレン−グリコール基、フェニル基またはC6〜C9−アルキルアリール基を表し;
Aは、C=O、SO2、C=SおよびC=NRから成るグループから選択される官能基を表し;かつ
I) mは、0または1であり;nは1、2、3または4であり、かつR2は、場合により1個、2個または3個の窒素原子または酸素原子を有するC1〜C18−線状、分枝または環状炭化水素基から誘導されるか、またはフェニル基から誘導されるか、またはC4〜C5−ヘテロ芳香族基から誘導されるモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−ラジカルを表し、前記R2は、場合により3個までのR3基により置換されている;または
II) mは、1であり;nは、1、2または3であり、かつR2は、N(R43-n基を表し、R4は、R1基またはR3CO基を表し;または
III) mは、1または2であり;nは1であり;かつR2は、NR1NH2基を表し;
IV) mは、1であり;nは1であり;かつR2はNR3Xまたは(NC54)X基により置換されたC1〜C6−線状、分枝または環状炭化水素基であり、Xはハロゲン原子またはスルフェートを表す;または
V) mは、0または1であり;nは、2〜5000を変化する整数であり;かつR2はポリアルキレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたは多糖類鎖を表し、これは2〜5000個のモノマー単位を有する;または
b)R1、AおよびR2は、一緒になって場合により4個までの酸素、窒素または硫黄原子を含有する5員または6員環を表す]
のヒドラジン誘導体を、
ii)80〜230g/molから成る分子量を有し、かつ芳香成分、着香成分、昆虫駆除剤または誘引剤、殺菌剤または殺真菌剤成分である少なくとも1つの活性アルデヒドまたはケトンと反応させることにより得られる動的混合物の形のデリバリーシステム。
【請求項2】
水含有媒体は、水を少なくとも30%w/w有している、請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項3】
ヒドラジン誘導体は、
1が、水素原子、メチル基またはエチル基を表すか、または場合により1個または2個のR3基により置換されたフェニル基を表すか;
3が、OR、NR2、SO3R、C1〜C4−アルキル基およびCOORから成るグループから選択される基を表し;
Rが、水素原子、C1〜C5−アルキルまたはポリエチレン−またはポリプロピレン−グリコール基、フェニル基またはC6〜C7−アルキルアリール基を表し;
Aが、C=O、C=SおよびSO2から成るグループから選択される官能基を表し;かつ
I) mが0または1であり;nが1、2、3または4であり、かつR2が場合により3個までの窒素原子または酸素原子を有するC1〜C6−線状、分枝または環状アルキル基から誘導されるか、またはフェニル基から誘導されるか、またはC4〜C5−ヘテロ芳香族基から誘導されるモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−ラジカルを表し、前記R2が場合により3個までのR3基により置換されていて、R3基は上記と同じ意味を有する;または
II) mが1であり;nが1または2であり;かつR2がN(R43-n基を表し、R4がR1基またはR3CO基を表し;または
III) mが1または2であり;nが1であり;かつR2がNR1NH2基を表し;
IV) mが1であり;nが1であり;かつR2がNR3Xまたは(NC54)X基により置換されたC1〜C3−線状、分枝または環状アルキル基であり、Xはハロゲン原子を表す;または
V) mが0または1であり;nが2〜5000を変化する整数であり;かつR2がポリアルキレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたは多糖類鎖を表し、これは2〜5000個のモノマー単位を有する
式(I)の化合物である、請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項4】
ヒドラジン誘導体が、式
【化2】

[式中、
I) nは1、2、3または4であり、かつR2は、場合により2個までの窒素原子または酸素原子を有するC1〜C6−線状、分枝または環状炭化水素基から誘導されるか、またはフェニル基から誘導されるか、またはC4〜C5−ヘテロ芳香族基から誘導されるモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−ラジカルを表し、前記R2は、場合により1個または2個のR3基により置換されている;
3は、OR、NR2、SO3R、C1〜C4−アルキル基およびCOORから成るグループから選択される基を表し;
Rは、水素原子、C1〜C5−アルキルまたはポリエチレン−またはポリプロピレン−グリコール基、フェニル基またはC6〜C7−アルキルアリール基を表し;または
II) nは、1、2または3であり、かつR2は、N(R43-n基を表し、R4は、水素原子、メチル基またはエチル基を表すか、またはR3CO基を表し;または
V) nは、2〜3000を変化する整数であり;かつR2は48〜80000から成る分子量を有するポリアルキレン、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール鎖またはガラクツロン酸から誘導される2〜1000個の間のモノマー単位を有する多糖類鎖を表す]
の化合物である、請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項5】
nは1であり、かつR2は、CH2NMe3XまたはCH2−(NC54)X基を表し、Xはハロゲン原子を表す、請求項4に記載のデリバリーシステム。
【請求項6】
ヒドラジン誘導体は:
i) ArCONHNH2またはArNHNH2、その際、ArはフェニルまたはトリルまたはC64COOHのような置換または非置換のC6〜C9フェニル基であるか、またはフランのようなC3〜C5芳香族複素環である;
ii) ジラード−Tまたは−P試薬;
iii) セミカルバゾンAr−NH−CO−NHNH2、チオセミカルバゾンAr−NH−CS−NHNH2またはアレーンスルホニルヒドラジンAr−SO2−NHNH2、式中、Arは先に定義した通りである;
iv) R5OCONHNH2、式中、R5はC1〜C4アルキル基であり;
v) 4H−1,2,4−トリアゾール−4−アミン誘導体;
vi) (NH2NHCO)n−Alk、式中、nは1〜4から成り、かつAlkはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C8、C12、C16、C18、(CHOH)2、CH2(CHOH)2CH2のように場合により2個のOH基により置換され、かつ場合により1個または2個の窒素原子を含有するC2〜C18線状、分枝または環状炭化水素基であり;
vii) (NH2NHCOCH2n(R62-nNCH2CH2N(R62-n(CH2CONHNH2nまたは(NH2NHCOCH2(R63-mN、式中、nは1または2であり、mは1、2または3であり、かつR6は水素原子またはR5基であり;
viii) Q((CH2)COOR63-n((CH2)CONHNH2n、式中、R6は、先に定義した通りであり、nは1、2または3であり、かつQはNまたはCOR6であり、dは0または1であり;または
ix) H2NNR6CONR6NH2またはH2NNR6COCONR6NH2、式中、R6は、先に定義した通りであり;
x) ペクチンのポリヒドラジン誘導体;または
xi) ポリ(メチルメタクリレート)およびそのコポリマーのポリヒドラジン誘導体、ポリ(メチルアクリレート)およびそのコポリマーのポリヒドラジン誘導体、またはポリ(4−ビニルベンゾエート)およびそのコポリマーのポリヒドラジン誘導体である、請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項7】
活性アルデヒドまたはケトンは、100〜220g/molから成る分子量を有し、かつエナール、エノン、CH2CHOまたはCHMeCHO部分を有するアルデヒド、芳香族アルデヒドまたはケトンおよび環式または非環式ケトンから成るグループから選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項8】
活性アルデヒドまたはケトンは、2.0Paを上回る蒸気圧を有する、請求項7に記載のデリバリーシステム。
【請求項9】
活性アルデヒドまたはケトンは、5.0Paを上回る蒸気圧を有する、請求項8に記載のデリバリーシステム。
【請求項10】
活性アルデヒドおよび/またはケトンの全モル量ならびにヒドラジン誘導体の全モル量は、1:2〜50:1から成る、請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項11】
活性アルデヒドまたはケトンは、C6〜C20−芳香性アルデヒドおよびC6〜C20−芳香性ケトンから成るグループから選択される、請求項1から10までのいずれか1項に記載のデリバリーシステム。
【請求項12】
次のもの:
i)芳香成分として、請求項11に定義したようなデリバリーシステム;
ii)香料キャリヤーおよび香料ベースから成るグループから選択される少なくとも1つの成分:および
iii)場合により少なくとも1つの香料助剤
を有する芳香組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のデリバリーシステムを有する消費製品。
【請求項14】
i) 芳香成分として、請求項1に定義したようなデリバリーシステム;および
ii) 液体消費製品ベース;
を有する着香製品の形の、請求項13に記載の消費製品。
【請求項15】
消費製品ベースは、液体洗剤または織物柔軟剤、香水、コロンまたはアフターシェーブローション、着香液体石けん、シャワーまたはバスムース、オイルまたはジェル、衛生用品またはヘアケア製品、シャンプー、ボディーケア製品、液体ベースデオドラントまたは制汗薬、液体芳香成分を有するエアーフレッシュナー、化粧品調製物、織物リフレッシュナー、アイロン水、ペーパー、布または漂白剤である、請求項14に記載の着香製品。
【請求項16】
着香製品の形で、次のもの:
i) 式(I)のヒドラジン誘導体;
ii) 80〜230g/molから成る分子量を有する少なくとも1つの芳香性アルデヒドまたはケトンを含有する香料または芳香組成物;および
iii) 水の存在で使用することを意図した固形消費製品ベース
を有する、請求項13に記載の消費製品。
【請求項17】
芳香成分、着香成分、昆虫駆除剤または誘引剤、殺菌剤または殺真菌剤成分としての、請求項1に記載のデリバリーシステムの使用。
【請求項18】
請求項1に記載の少なくとも1つの芳香性化合物と水を含有する芳香組成物の芳香作用を延長するための添加剤としての、請求項1に記載のヒドラジン誘導体の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−509128(P2008−509128A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524422(P2007−524422)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002325
【国際公開番号】WO2006/016248
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【出願人】(507038777)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE LOUIS PASTEUR
【住所又は居所原語表記】4, rue Blaise Pascal, F−67000 Strasbourg, France
【出願人】(500379381)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシャルシュ シアンティフィク (17)
【Fターム(参考)】