説明

フロントピラー下部構造

【課題】部品点数を増やすことなく、衝突荷重に対するフロントピラー下部の剛性を確保することができるフロントピラー下部構造を得る。
【解決手段】フロントピラーアウタ部40Xの車幅方向内側に配設されたヒンジリインフォース50には、連結部62が一体に形成されている。連結部62は、フロントピラーインナパネル32の被重合部とロッカインナ前端部28の上フランジ26Aとの結合部と、フロントピラーアウタ部40Xの外側壁40Aと、を略車幅方向に繋いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントピラー下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントピラーアウタとサイドシルアウタ(ロッカアウタ)とが一体でプレス成形されたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような部材を備えたフロントピラー下部では、例えば、アウタ側とインナ側との間に隔壁部材が設けられることで閉断面化により剛性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−194155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造では、衝突荷重に対するフロントピラー下部の剛性は高められるものの部品点数が増加してしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、部品点数を増やすことなく、衝突荷重に対するフロントピラー下部の剛性を確保することができるフロントピラー下部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明のフロントピラー下部構造は、車室前部の両サイドに略車両上下方向を長手方向として配置されたフロントピラーインナパネルと、車体側部の下端部で車両前後方向を長手方向として配置され、車両正面視で車幅方向外向きに開口された断面ハット形状を成すと共に、車両前後方向の前端部における上下フランジが前記フロントピラーインナパネルにおける車両上下方向の下部に車幅方向内側から結合されたロッカインナパネルと、前記フロントピラーインナパネルに対して車幅方向外側に配置されるフロントピラーアウタ部と前記ロッカインナパネルに対して車幅方向外側に配置されるロッカアウタ部とが一部材で一体に形成されて車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成し、車幅方向内端のフランジが前記フロントピラーインナパネル及び前記ロッカインナパネルに結合されたアウタパネルと、前記アウタパネルにおける前記フロントピラーアウタ部の車幅方向内側に配設され、前記フロントピラーアウタ部におけるドアヒンジの固定部分を補強するためのヒンジリインフォースと、を有する車体に適用されるフロントピラー下部構造であって、前記ヒンジリインフォースは、前記フロントピラーインナパネルと前記ロッカインナパネルの上フランジとの結合部と、前記フロントピラーアウタ部における車幅方向外側の部位を構成する外側壁と、を略車幅方向に繋ぐ連結部を備えている。
【0007】
請求項1に記載する本発明のフロントピラー下部構造によれば、ロッカインナパネルは、車両前後方向の前端部における上下フランジがフロントピラーインナパネルにおける車両上下方向の下部に車幅方向内側から結合されている。また、フロントピラーインナパネルに対して車幅方向外側に配置されるフロントピラーアウタ部とロッカインナパネルに対して車幅方向外側に配置されるロッカアウタ部とが一部材で一体に形成されたアウタパネルは、車幅方向内端のフランジがフロントピラーインナパネル及びロッカインナパネルに結合されている。
【0008】
ここで、アウタパネルのフロントピラーアウタ部における車幅方向内側に配設されたヒンジリインフォースは、フロントピラーアウタ部におけるドアヒンジの固定部分を補強するための部材とされると共に、連結部がフロントピラーインナパネルとロッカインナパネルの上フランジとの結合部と、フロントピラーアウタ部における車幅方向外側の部位を構成する外側壁と、を略車幅方向に繋いでいる。このため、フロントピラー下部においては、前記結合部と前記外側壁とを略車幅方向に繋ぐ部材を別途設けなくても、フロントピラーインナパネルとフロントピラーアウタ部とヒンジリインフォースとによって閉断面が形成されると共に、フロントピラーインナパネルとフロントピラーアウタ部との結合剛性が向上する。よって、例えば、フロントピラー下部構造が適用された車両の前面衝突に伴って車両前方側から衝突荷重が入力された場合、フロントピラー下部の変形が抑制される。
【0009】
請求項2に記載する本発明のフロントピラー下部構造は、請求項1記載の構成において、前記ヒンジリインフォースは、前記フロントピラーアウタ部の前記外側壁に対向して配設される外側縦壁と、前記外側縦壁における車両前後方向の前端から車幅方向内向きに延設された前壁と、を備えると共に、前記前壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が車両後方側に曲げられて前記連結部が形成されている。
【0010】
請求項2に記載する本発明のフロントピラー下部構造によれば、ヒンジリインフォースは、前壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が車両後方側に曲げられてフロントピラーインナパネル側とフロントピラーアウタ部側とを繋ぐ連結部が形成されている。このため、フロントピラー下部に形成される閉断面は、前記延設された部位の長さに応じて、ヒンジリインフォースにおける車両前後方向の前端側から車両後方側へ延ばすことができる。よって、前記閉断面を車両前後方向に延在させることで、衝突荷重が入力された場合には、フロントピラー下部の変形が効果的に抑制される。
【0011】
請求項3に記載する本発明のフロントピラー下部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記ヒンジリインフォースは、前記フロントピラーアウタ部の前記外側壁に対向して配設される外側縦壁と、前記外側縦壁における車両前後方向の後端から車幅方向内向きに延設された後壁と、を備えると共に、前記後壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が前記連結部における車両前後方向の中間部に結合されている。
【0012】
請求項3に記載する本発明のフロントピラー下部構造によれば、ヒンジリインフォースは、後壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が、フロントピラー下部でフロントピラーインナパネル側とフロントピラーアウタ部側とを繋ぐ連結部における車両前後方向の中間部に結合されている。このため、連結部の剛性が向上し、衝突荷重が入力された場合には、フロントピラー下部の変形が効果的に抑制される。
【0013】
請求項4に記載する本発明のフロントピラー下部構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記連結部における車両前後方向の後端部は、前記ロッカアウタ部における車両上下方向の上側の壁部に結合されている。
【0014】
請求項4に記載する本発明のフロントピラー下部構造によれば、連結部における車両前後方向の後端部は、ロッカアウタ部における車両上下方向の上側の壁部に結合されている。このため、例えば、車両前方側から衝突荷重が入力された場合、当該衝突荷重は、ヒンジリインフォースの連結部側からロッカアウタ部側へ効率的に伝達されるので、フロントピラー下部の変形が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のフロントピラー下部構造によれば、部品点数を増やすことなく、衝突荷重に対するフロントピラー下部の剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2に記載のフロントピラー下部構造によれば、ヒンジリインフォースにおける車両前後方向の前端側から車両後方側へ延びる閉断面がフロントピラー下部に形成されることで、衝突荷重が入力された場合にフロントピラー下部の変形を効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3に記載のフロントピラー下部構造によれば、連結部の剛性を向上させることができ、その結果として、衝突荷重が入力された場合にフロントピラー下部の変形を効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4に記載のフロントピラー下部構造によれば、車両前方側から衝突荷重が入力された場合に、当該衝突荷重をヒンジリインフォースの連結部側からロッカアウタ部側へ効率的に伝達させることで、フロントピラー下部の変形を効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るフロントピラー下部構造(図3の一点鎖線で囲んだ1線矢視部の一部)を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るフロントピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図(図3の2−2線に沿った拡大断面図)である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフロントピラー下部構造が適用された自動車の車体の一部を示す模式的な側面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるヒンジリインフォースが第一延設部の曲げ加工前の状態で示される斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るフロントピラー下部構造が適用された自動車が前面衝突した場合の作用を説明するための模式的な側面図である。
【図6】自動車をバリアに前面衝突させたときのF−S線図である。
【図7】対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るフロントピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【図8】対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るフロントピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係るフロントピラー下部構造について図1〜図8を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0021】
図3には、フロントピラー下部構造30が適用された自動車(車両)の車体10の一部が模式的な側面図にて示されている。また、図1には、図3の一点鎖線で囲んだ1線矢視部の一部が斜視図にて示されており、図2には、図3の2−2線に沿った拡大断面図が示されている。
【0022】
図3に示されるように、車体側部12には、フロント側から順にフロントピラー14(Aピラー)、センタピラー16(Bピラー)、及びリヤピラー18(Cピラー)が配設されている。フロントピラー14、センタピラー16、及びリヤピラー18は、それぞれ左右一対設けられている。フロントピラー14は、車体側部12に形成されたフロントサイドドア用開口部20の前側の縁部、すなわち、車室前部の両サイドに配置され、略車両上下方向を長手方向とする車体骨格部材とされている。
【0023】
より具体的には、フロントピラー14は、ウインドシールドガラス(図示省略)の幅方向の両端部に傾斜した状態で配置されるフロントピラーアッパ114と、フロントピラーアッパ114の下端部から車両下方側へ略垂直に垂下されたフロントピラーロア214と、によって構成されている。
【0024】
フロントピラー14におけるフロントピラーアッパ114の上端部14Aは、ルーフサイドレール部22における車両前後方向の前端に結合されている。ルーフサイドレール部22は、車両ルーフの両サイドにおいて略車両前後方向を長手方向として配置された骨格部材とされている。また、フロントピラー14におけるフロントピラーロア214の下端部14Bは、ロッカ24(「サイドシル」ともいう。)における車両前後方向の前端に結合されており、フロントピラー14とロッカ24とで略L字状になっている。ロッカ24は、車体側部12の下端部で車両前後方向を長手方向として配置された骨格部材とされている。
【0025】
図1に示されるように、ロッカ24は、ロッカインナパネル26を備えている。ロッカインナパネル26は、ロッカ24の車幅方向内側の部位を構成し、車体側部12の下端部で車両前後方向を長手方向として配置されてその前端が概ねフロントピラー14の下部前端に達しており、車両正面視で車幅方向外向きに開口された断面ハット形状を成している。ロッカインナパネル26の上端側で車幅方向外端には上フランジ26Aが形成され、ロッカインナパネル26の下端側で車幅方向外端には下フランジ26Bが形成されている。上フランジ26A及び下フランジ26Bは、その一般面が車幅方向に向けられている。
【0026】
ロッカ24に連続して設けられるフロントピラー14は、フロントピラーインナパネル32を備えている。フロントピラーインナパネル32は、フロントピラー14の車幅方向内側の部位を構成しており、車室前部の両サイドにおいて略車両上下方向を長手方向として配置されている。なお、図1では、フロントピラーインナパネル32における車両上下方向の下端側の後端部を符号32Zで示している。
【0027】
図2に示されるように、フロントピラーインナパネル32における車両上下方向の下部(下端部)には、ロッカインナパネル26における車両前後方向の前端部を構成するロッカインナ前端部28が結合されている。より具体的には、ロッカインナ前端部28における上フランジ26A及び下フランジ26Bが、フロントピラーインナパネル32における車両上下方向の下部の上側及び下側の被重合部32C、32Dに車幅方向内側から重ね合わせられてスポット溶接により結合されている。
【0028】
図1に示されるように、フロントピラーインナパネル32は、ロッカ24よりも車両上方側の部位では、水平断面形状が車幅方向外向きに開口された略ハット形状とされている。フロントピラーインナパネル32の車両前後方向の前端側には、前フランジ32Aが形成され、フロントピラーインナパネル32の車両前後方向の後端側には、後フランジ32Bが形成されており、これらは結合用とされている。
【0029】
フロントピラーインナパネル32及びロッカインナパネル26の車幅方向外側(図1では手前側)には、これらに対向してアウタパネル40(サイメンアウタパネルリインフォース)が配置されている。なお、アウタパネル40のさらに車幅方向外側には、サイメンアウタ48(図1では図示省略、図2参照)が配置されている。
【0030】
アウタパネル40は、フロントピラーインナパネル32に対して車幅方向外側に配置されるフロントピラーアウタ部40Xとロッカインナパネル26に対して車幅方向外側に配置されるロッカアウタ部40Yとが一部材で一体に形成された強度部材とされている。すなわち、アウタパネル40は、フロントピラーインナパネル32の車幅方向外側でかつロッカインナパネル26の車幅方向外側に配置されるコーナ部42と、コーナ部42の車両上方側でフロントピラーインナパネル32の車幅方向外側に配置されるピラーアウタ長手部44と、コーナ部42の車両後方側でロッカインナパネル26の車幅方向外側に配置されるロッカアウタ長手部46と、を含んで一体に形成されており、長手方向に直交する断面視で車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成している。アウタパネル40のコーナ部42は、フロントピラーアウタ部40Xの下端部とロッカアウタ部40Yの前端部とを兼ねている。
【0031】
アウタパネル40は、当該アウタパネル40の車幅方向外側の部位を構成してフロントピラー14の下部側において車両側面視で略L字状とされた外側壁40Aを備え、外側壁40Aにおける長手方向に直交する方向の両端から車幅方向内向きに第一壁40B及び第二壁40Cが延設されると共に、第一壁40Bの車幅方向内端から第一フランジ40Dが張り出され、第二壁40Cの車幅方向内端から第二フランジ40Eが張り出されて構成されている。なお、外側壁40A、第一フランジ40D及び第二フランジ40Eは、その一般面が車幅方向に向けられている。
【0032】
アウタパネル40の第一フランジ40Dは、ピラーアウタ長手部44における車両前後方向の前端側で略車両上下方向に延在してコーナ部42の前下端側で車両後方側へ向けてR状に曲げられている。この第一フランジ40Dは、フロントピラーインナパネル32の前フランジ32A及びロッカインナパネル26の下フランジ26Bに車幅方向外側から重ね合わせられてスポット溶接により結合されている。また、図2に示されるように、第一フランジ40Dにおいてコーナ部42の下端に対応する部位は、フロントピラーインナパネル32の下側の被重合部32D及びロッカインナパネル26(ロッカインナ前端部28)の下フランジ26Bと重ね合わせられた状態でスポット溶接により結合されている。
【0033】
これに対して、図1に示されるアウタパネル40の第二フランジ40Eは、ピラーアウタ長手部44における車両前後方向の後端側で略車両上下方向に延在してコーナ部42の後上端側で車両後方側へ向けてR状に曲げられている。この第二フランジ40Eは、フロントピラーインナパネル32の後フランジ32B及びロッカインナパネル26の上フランジ26Aに車幅方向外側から重ね合わせられてスポット溶接により結合されている。
【0034】
アウタパネル40のフロントピラーアウタ部40Xにおける外側壁40Aの車幅方向内側には、ヒンジリインフォース50(ヒンジリインフォースメント)が配設されており、ヒンジリインフォース50は外側壁40Aにスポット溶接等によって取り付けられている。すなわち、フロントピラーアウタ部40Xは、ドアヒンジ70(図3参照)の固定部分を含む部位がヒンジリインフォース50によって補強されている。なお、図3に想像線にて模式的に示されるように、ドアヒンジ70は、フロントピラー14におけるフロントピラーロア214に上下で計二箇所取り付けられており、フロントサイドドア用開口部20を開閉するためのフロントサイドドア(図示省略)をフロントピラーロア214側に回動可能に連結している。
【0035】
図1に示されるように、ヒンジリインフォース50は、プレート状に形成されており、その本体部52は、プレス成形によって車幅方向内向きに開口する断面「コ」字状を成している。より詳細に説明すると、ヒンジリインフォース50の本体部52は、フロントピラーアウタ部40Xの外側壁40Aに対向して配設される外側縦壁54と、この外側縦壁54における車両前後方向の前端から車幅方向内向きに延設されて(曲げられて)フロントピラーアウタ部40Xの第一壁40Bに対向する前壁56と、外側縦壁54における車両前後方向の後端から車幅方向内向きに延設されて(曲げられて)フロントピラーアウタ部40Xの第二壁40Cに対向する後壁58と、を備えている。なお、外側縦壁54には、ドアヒンジ固定用のボルト(図示省略)が挿通されるボルト挿通孔54Aが形成されている。
【0036】
また、ヒンジリインフォース50は、前壁56における車両上下方向の下端側から延設された第一延設部60が車両後方側に曲げられている。図2に示されるように、第一延設部60は、フロントピラーインナパネル32とロッカインナ前端部28(ロッカインナパネル26)の上フランジ26Aとの結合部36と、フロントピラーアウタ部40Xの外側壁40Aと、を略車幅方向に繋ぐ連結部62を形成している。以下、第一延設部60により形成される連結部62についてより具体的に説明する。
【0037】
図4には、第一延設部60を車両後方側に曲げ加工する前の状態におけるヒンジリインフォース50が斜視図にて示されている。図中においては、第一延設部60の曲げ方向を矢印Aで示している。図4に示されるように、第一延設部60の延設する方向に直交する方向の幅寸法は、前壁56の延在する方向に直交する方向の幅寸法に比べて長く(幅広に)設定されている。
【0038】
図1に示されるように、第一延設部60により形成される連結部62は、ロッカアウタ長手部46における上部の概ね車両前方側延長位置に相当する位置(換言すれば、ロッカ24の前端上部アウタ側に相当する位置)に配置され、その後端が概ねアウタパネル40のコーナ部42の後端付近に位置している。連結部62は、ロッカアウタ長手部46における上壁部46Aの概ね車両前方側延長位置に配置されて空間を上下に隔成する隔壁部62Aを備えている。隔壁部62Aは、ロッカアウタ長手部46における上壁部46Aと同様に、車両前後方向に延在すると共に、車両正面視で一般面が略車幅方向(略水平方向)を含む面を面方向として(より厳密には、車幅方向内側へ向けて車両上方側に若干傾斜して上壁部46Aと同様の傾斜角度で)配置されている。また、連結部62には、隔壁部62Aの車幅方向内側の端部から車両上方側に屈曲されたフランジ62Bが形成されると共に、隔壁部62Aの車幅方向外側の端部から車両下方側に屈曲されたフランジ62Cが形成されている。
【0039】
連結部62の車幅方向外側(図1では手前側)の部位を構成するフランジ62Cは、フロントピラーアウタ部40Xの外側壁40Aに直接又は外側縦壁54の下端部を介してスポット溶接(打点を「×」印で示す。)により結合されている。連結部62におけるフランジ62Cと隔壁部62Aとの接続部位である稜線62Dは、車両前後方向に延在しており、ロッカアウタ長手部46における上壁部46Aの車幅方向外側の端縁側に形成された稜線46Bにほぼ連続している。
【0040】
連結部62の隔壁部62Aにおける車両前後方向の後端部は、ロッカアウタ部40Yにおける第二壁40C(車両上下方向の上側の壁部)の下面にスポット溶接(打点を「×」印で示す。)により結合されている。連結部62における隔壁部62Aとフランジ62Bとの接続部位である稜線62Eは、車両前後方向に延在しており、ロッカアウタ長手部46における上壁部46Aの車幅方向内側の端縁側に形成された稜線46Cにほぼ連続している。
【0041】
また、図2に示されるように、連結部62の車幅方向内側の部位を構成するフランジ62Bは、フロントピラーインナパネル32の被重合部32Cとロッカインナ前端部28(ロッカインナパネル26)の上フランジ26Aとの結合部36に結合されている。連結部62のフランジ62Bの上端高さ位置は、ロッカインナ前端部28の上フランジ26Aの上端高さ位置に揃えられている。
【0042】
以上により、ロッカ24と一体化されたフロントピラー14の下部には、フロントピラーインナパネル32とフロントピラーアウタ部40Xとヒンジリインフォース50の連結部62とで閉断面38が形成されている(Aピラー下部ロッカ結合構造)。
【0043】
一方、図1に示されるように、ヒンジリインフォース50は、後壁58における車両上下方向の下端側から延設された第二延設部64を備えている。第二延設部64は、略車両下方側に垂下される垂下部64Aと、垂下部64Aの車両上下方向の下端から車両後方側に屈曲されたフランジ64Bと、を備えている。第二延設部64のフランジ64Bは、連結部62の隔壁部62Aにおける車両前後方向の中間部(本実施形態では、車両前後方向の略中央部)に面接触状態で重ね合わせられてスポット溶接(打点を「×」印で示す。)により結合されている。
【0044】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
上記構成の図1に示されるフロントピラー下部構造30では、フロントピラーインナパネル32に対して車幅方向外側に配置されるフロントピラーアウタ部40Xとロッカインナパネル26に対して車幅方向外側に配置されるロッカアウタ部40Yとがアウタパネル40によって一部材で一体に形成されているため、部品点数を減らすことができ、組付工程も減らすことができる。
【0046】
ここで、対比構造と比較して補足説明すると、衝突荷重に対する強度を高くするために、例えば、図7に示す対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るフロントピラー下部構造100では、フロントピラーアウタリインフォース102を設けると共にこれとは別に車幅方向内向きに開口された断面ハット形状のロッカアウタリインフォース104を設け、このロッカアウタリインフォース104とフロントピラーインナパネル32とで閉断面106を形成しているので(Aピラー・ロッカ分割構造)、アウタ側に配設される強度部材がフロントピラーアウタリインフォース102及びロッカアウタリインフォース104の二部材となる。
【0047】
これに対して、図2に示されるフロントピラー下部構造30では、前記対比構造における二部材に代えて、アウタパネル40を設けて部品統合をしているため、前記対比構造に比べて部品点数を減らすこと及び軽量化を図ることができる。また、組付工程を減らすことができるので、生産性が向上する。
【0048】
また、フロントピラーアウタ部40Xの車幅方向内側に配設されたヒンジリインフォース50には、連結部62が一体に形成されており、連結部62は、フロントピラーインナパネル32の被重合部32Cとロッカインナ前端部28の上フランジ26Aとの結合部36と、フロントピラーアウタ部40Xの外側壁40Aと、を略車幅方向に繋いでいる。このため、フロントピラー14の下部においては、前記結合部36と前記外側壁40Aとを略車幅方向に繋ぐ部材を別途設けなくても、フロントピラーインナパネル32とフロントピラーアウタ部40Xとヒンジリインフォース50とによって閉断面38が形成されると共に、フロントピラーインナパネル32とフロントピラーアウタ部40Xとの結合剛性が向上する。よって、衝突荷重に対するフロントピラー14の下部の強度が高められる。
【0049】
例えば、図5に示されるように、車両の前面衝突時には、フロントピラー14の下端部における前端側部分に対してタイヤ72を介して車両後方向きの衝突荷重fが入力されるが、この部分は閉断面38(図2参照)が形成された構造となっているので、変形しにくい。すなわち、ロッカ24を軸圧縮させる方向の衝突荷重fにより、フロントピラー14の下部のアウタ側には、面外方向(車幅方向外側)へ凸状に変形させるような荷重が作用するが、図2に示される閉断面38が形成されることでフロントピラー14の下部が効率的に補強されるので、フロントピラー14の下部は断面崩れしにくい。このため、閉断面38が形成されない対比構造に比べて、反力(荷重レベル)の低下が抑えられる(衝突性能の向上)。
【0050】
この点について、他の対比構造と比較しながら補足説明すると、部品点数を減らすために、例えば、図8に示す対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るフロントピラー下部構造110では、フロントピラーアウタ部とロッカアウタ部とをアウタパネル112によって一体化するが、アウタパネル112は、先の対比構造に示すロッカアウタリインフォース104(図7参照)の上部側に相当する部位を備えずに車両上下方向に延在している。この図8に示す対比構造では、ロッカと一体化されたフロントピラー下部が車両上下方向に開放された開断面(開放断面)形状になっているため、衝突荷重f(図5参照)に対するフロントピラー下部の強度が閉断面形状の場合に比べて低くなる。よって、この対比構造では、閉断面形状の場合に比べて正面衝突時に早期に断面崩れしやすく、その結果として、ロッカが衝突時の機能(エネルギー吸収機能や荷重伝達機能等)を十分には発揮できなくなる可能性も考えられる。
【0051】
これに対して、図2に示されるフロントピラー下部構造30では、フロントピラー14の下部が閉断面化されているので、衝突荷重f(図5参照)に対するフロントピラー14の下部の強度・剛性が図8に示される前記対比構造に比べて高くなる。その結果として、前記対比構造に比べて、衝突時における反力(荷重レベル)が高められ、ロッカ24も衝突時の機能を発揮しやすくなる。
【0052】
また、図1に示されるように、本実施形態に係るフロントピラー下部構造30では、ヒンジリインフォース50は、前壁56における車両上下方向の下端側から延設された第一延設部60が車両後方側に曲げられてフロントピラーインナパネル32側とフロントピラーアウタ部40X側とを略車幅方向に繋ぐ連結部62が形成されている。このため、フロントピラー14の下部に形成された閉断面38は、第一延設部60の長さに応じて、ヒンジリインフォース50における車両前後方向の前端側から車両後方側へ延ばすことができる。本実施形態では、閉断面38は、フロントピラー14の下部とロッカ24の前端部とを兼ねる部位で車両前後方向の略全長に亘って延びているので、車両前方側からの衝突荷重fに対するフロントピラー14の下部の変形が効果的に抑制される。また、連結部62は曲げ加工(折り曲げ細工)により成形されるので、例えば、絞り加工等により連結部が成形される場合に比べて成形が容易である。
【0053】
また、本実施形態に係るフロントピラー下部構造30では、連結部62における隔壁部62Aの車両前後方向の後端部は、ロッカアウタ部40Yにおける第二壁40Cの下面に結合されている。このため、連結部62とアウタパネル40との結合剛性が向上すると共に、例えば、車両前方側から衝突荷重fが入力された場合、当該衝突荷重fは、ヒンジリインフォース50の連結部62側からロッカアウタ部40Y側へ効率的に伝達されるので、フロントピラー14の下部の変形が効果的に抑制される。
【0054】
また、本実施形態に係るフロントピラー下部構造30では、ヒンジリインフォース50は、後壁58における車両上下方向の下端側から延設された第二延設部64が、フロントピラーインナパネル32側とフロントピラーアウタ部40X側とを繋ぐ連結部62における車両前後方向の中間部に結合されている。このため、衝突荷重fに対する連結部62の剛性が向上し、フロントピラー14の下部の剛性が一層向上する。
【0055】
ここで、図6のグラフ(F−S線図)を参照しながら、フロントピラー下部構造30の作用について補足説明する。図6には、自動車をバリアに前面衝突させたときのF−S線図、すなわち、荷重FとストロークSとの関係を示すグラフが示されている。
【0056】
図6において、二点鎖線の線図は、図7に示される対比構造のF−S線図を示し、点線の線図は、図8に示される対比構造のF−S線図を示し、実線の線図は、本実施形態に係るフロントピラー下部構造30のF−S線図を示す。図6に示されるように、本実施形態に係るフロントピラー下部構造30では、反力(荷重レベル)が向上している。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る図1等に示されるフロントピラー下部構造30によれば、部品点数を増やすことなく、衝突荷重fに対するフロントピラー14の下部の剛性を確保することができる。
【0058】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、ヒンジリインフォース50の連結部62は、ヒンジリインフォース50の前壁56における車両上下方向の下端側から延設された第一延設部60が車両後方側に曲げられて形成されており、成形性の観点からはこのような構成が好ましいが、ヒンジリインフォースの連結部は、例えば、絞り加工により突出させた有底角筒部等で構成されてもよい。
【0059】
また、ヒンジリインフォースは、例えば、外側縦壁における車両前後方向の後端から車幅方向内向きに延設された後壁を備えると共に、前記後壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が車両前方側に曲げられて連結部が形成されてもよく、また、外側縦壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が車幅方向内側に曲げられて連結部が形成されてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、ヒンジリインフォース50は、後壁58における車両上下方向の下端側から延設された第二延設部64が連結部62における車両前後方向の中間部に結合されており、連結部62の剛性を向上させる観点からはこのような構成がより好ましいが、ヒンジリインフォースは、後壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が連結部における車両前後方向の中間部に結合されていない構成であってもよい。
【0061】
さらにまた、上記実施形態では、連結部62における隔壁部62Aの車両前後方向の後端部は、ロッカアウタ部40Yにおける第二壁40Cの下面に結合されており、荷重伝達性等の観点からはこのような構成がより好ましいが、連結部における車両前後方向の後端部は、ロッカアウタ部における車両上下方向の上側の壁部に結合されていない構成であってもよい。
【0062】
なお、請求項1の「略車幅方向に繋ぐ」の概念には、連結部の繋ぎ部分の一般面が車両正面視で車幅方向を含む面を面方向として配置された状態で繋ぐ場合の他、上記実施形態のように、ロッカアウタ長手部46における上壁部46Aの面方向に応じて、連結部62の繋ぎ部分(隔壁部62A)の一般面が車両正面視で車幅方向に対して若干傾斜して配置された状態で繋ぐ場合も含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10 車体
12 車体側部
14 フロントピラー
26 ロッカインナパネル
30 フロントピラー下部構造
32 フロントピラーインナパネル
36 結合部
40 アウタパネル
40A 外側壁
40X フロントピラーアウタ部
40Y ロッカアウタ部
50 ヒンジリインフォース
54 外側縦壁
56 前壁
58 後壁
62 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部の両サイドに略車両上下方向を長手方向として配置されたフロントピラーインナパネルと、
車体側部の下端部で車両前後方向を長手方向として配置され、車両正面視で車幅方向外向きに開口された断面ハット形状を成すと共に、車両前後方向の前端部における上下フランジが前記フロントピラーインナパネルにおける車両上下方向の下部に車幅方向内側から結合されたロッカインナパネルと、
前記フロントピラーインナパネルに対して車幅方向外側に配置されるフロントピラーアウタ部と前記ロッカインナパネルに対して車幅方向外側に配置されるロッカアウタ部とが一部材で一体に形成されて車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成し、車幅方向内端のフランジが前記フロントピラーインナパネル及び前記ロッカインナパネルに結合されたアウタパネルと、
前記アウタパネルにおける前記フロントピラーアウタ部の車幅方向内側に配設され、前記フロントピラーアウタ部におけるドアヒンジの固定部分を補強するためのヒンジリインフォースと、
を有する車体に適用されるフロントピラー下部構造であって、
前記ヒンジリインフォースは、前記フロントピラーインナパネルと前記ロッカインナパネルの上フランジとの結合部と、前記フロントピラーアウタ部における車幅方向外側の部位を構成する外側壁と、を略車幅方向に繋ぐ連結部を備えているフロントピラー下部構造。
【請求項2】
前記ヒンジリインフォースは、前記フロントピラーアウタ部の前記外側壁に対向して配設される外側縦壁と、前記外側縦壁における車両前後方向の前端から車幅方向内向きに延設された前壁と、を備えると共に、前記前壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が車両後方側に曲げられて前記連結部が形成されている請求項1記載のフロントピラー下部構造。
【請求項3】
前記ヒンジリインフォースは、前記フロントピラーアウタ部の前記外側壁に対向して配設される外側縦壁と、前記外側縦壁における車両前後方向の後端から車幅方向内向きに延設された後壁と、を備えると共に、前記後壁における車両上下方向の下端側から延設された部位が前記連結部における車両前後方向の中間部に結合されている請求項1又は請求項2に記載のフロントピラー下部構造。
【請求項4】
前記連結部における車両前後方向の後端部は、前記ロッカアウタ部における車両上下方向の上側の壁部に結合されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフロントピラー下部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−136593(P2011−136593A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295996(P2009−295996)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】