説明

フロントフォーク

【課題】 部品構造の複雑化やそれによる組立工数の増加および製品コストのいたずらな上昇化を回避させる。
【解決手段】 車体側チューブ1と車輪側チューブ2とからなるフォーク本体が収装するコイルスプリングSの上端位置を上下動させるアジャスタ4を車体側チューブ1における上端開口を閉塞するキャップ部材11に有するフロントフォークにおいて、アジャスタ4がその回動中心線を車体側チューブ1における軸芯線に対してこの車体側チューブ1における径方向に偏芯させると共に、アジャスタ4にフォーク本体内への気体の封入を可能にする封入栓V2あるいはフォーク本体内における気圧あるいはガス圧の変更を可能にするエアバルブV1さらにはフォーク本体内への作動流体の注入を可能にする注入栓のいずれかが組み込まれてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに関し、特に、車体側チューブにおける上端部の内方に有するアジャスタを回動操作して所期の目的を達成するフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側チューブにおける上端部の内方に有するアジャスタを回動操作して所期の目的を達成するフロントフォークとしては、従来から種々の提案があるが、たとえば、特許文献1には、アジャスタの回動操作で、ダンパにおける減衰作用の変更を可能にする提案が開示されている。
【0003】
すなわち、この特許文献1に開示のフロントフォークは、車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体を有し、このフォーク本体が内蔵するダンパは、シリンダ体を上端側部材にすると共にロッド体を下端側部材する倒立型に設定される一方で、シリンダ体におけるボトム側部内に言わばベースバルブ部に相当する減衰部を有する。
【0004】
そして、このダンパにあって、減衰部は、減衰手段を迂回するバイパス路を有すると共に、このバイパス路中に制御バルブを有し、この制御バルブがコントロールロッドの作動でバイパス路における作動流体の通過流量の多少を調整し、減衰手段による減衰作用を高低変更する。
【0005】
このとき、コントロールロッドは、上記した特許文献1に開示されているところでは、シリンダ体におけるボトム側部の軸芯部に垂設されてベースバルブ部を言わば吊持するガイドロッドの軸芯部で上下動する。
【0006】
そして、このコントロールロッドの基端たる上端は、フォーク本体を構成する車体側チューブにおける上端開口を閉塞するキャップ部材側にアジャスタの配在下に係止され、したがって、このコントロールロッドは、アジャスタの回動操作時にこのアジャスタの上下動に同期して上下動する。
【0007】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案にあっては、アジャスタの回動操作でコントロールロッドの上下が可能になり、このコントロールロッドの上下動でバイパス路における制御バルブが作動し、ベースバルブ部における減衰手段で発現される減衰作用の所期の目的たる高低調整が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008‐232325公報(明細書中の段落0022,同0023,図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、アジャスタの回動操作で所期の目的を達成し得る点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0010】
すなわち、上記したフロントフォークがそうであるが、上記したアジャスタを配設させるキャップ部材に封入栓、すなわち、フォーク本体内にエアやガスを封入する封入栓を有することがあり、また、改めて示さないが、フォーク本体内に封入したエア圧やガス圧の変更を可能にするエアバルブや、さらには、フォーク本体内への作動流体の注入を可能にする注入栓をキャップ部材に有することがある。
【0011】
そして、上記のコントロールロッドの上下動を実現するアジャスタに加えて、上記の封入栓やエアバルブあるいは注入栓をキャップ部材に並列に有する設定の場合には、キャップ部材において構造が複雑になり、キャップ部材としてのいわゆる部品製作を面倒にするなどの不具合を招く。
【0012】
ちなみに、この不具合は、アジャスタがコントロールロッドを上下動させることに代えて、たとえば、フォーク本体内に収装される附勢バネたるコイルスプリングの上端位置を上下動させる場合であっても同様である。
【0013】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、部品構造の複雑化やそれによる組立工数の増加および製品コストのいたずらな上昇化を回避し得て、その汎用性の向上を期待するのに最適となるフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するために、この発明によるフロントフォークの構成を、車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体が収装するコイルスプリングの上端位置を上下動させるアジャスタを上記の車体側チューブにおける上端開口を閉塞するキャップ部材に有するフロントフォークにおいて、上記のアジャスタがその回動中心線を上記の車体側チューブにおける軸芯線に対してこの車体側チューブにおける径方向に偏芯させると共に、上記のアジャスタに上記のフォーク本体内への気体の封入を可能にする封入栓あるいは上記のフォーク本体内における気圧あるいはガス圧の変更を可能にするエアバルブさらには上記のフォーク本体内への作動流体の注入を可能にする注入栓のいずれかが組み込まれてなるとする。
【発明の効果】
【0015】
それゆえ、この発明にあっては、アジャスタがキャップ部材に配設される封入栓,エアバルブあるいは注入栓のいずれかを組み込ませるから、アジャスタが封入栓,エアバルブあるいは注入栓のいずれも組み込ませない場合に比較して、キャップ部材における構造の簡素化を可能にする。
【0016】
そして、この発明にあっては、アジャスタがキャップ部材に偏芯配置されるから、アジャスタに組み込まれない封入栓,エアバルブあるいは注入栓のキャップ部材への配設に際してスペース効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明によるフロントフォークの上端側部を一部破断して示す部分正面縦断面図である。
【図2】図1のフロントフォークにおける上端部を拡大して示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるフロントフォークは、二輪車(図示せず)の前輪側に架装されて下端部で懸架する前輪(図示せず)に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器として機能する。
【0019】
ちなみに、フロントフォークを二輪車の前輪側に架装するについては、図示しないが、左右となる二本のフロントフォークの上端側部をあらかじめブリッジ機構で一体化し、各フロントフォークにおける車輪側チューブ2(図1参照)の下端部を前輪の車軸に連結させて前輪を挟むようにして懸架する。
【0020】
そして、ブリッジ機構は、図示しないが、フロントフォークを構成する車体側チューブ1(図1参照)における上端部の上方側部に連結されるアッパーブラケットと、下方側部に連結されるアンダーブラケットとを有し、それぞれが両端部に形成の取り付け孔に車体側チューブ1における上端部を挿通させて一体的に把持する。
【0021】
また、このブリッジ機構は、同じく図示しないが、アッパーブラケットとアンダーブラケットとを一体的に連結する一本のステアリングシャフトを両者の中央に有し、このステアリングシャフトが二輪車における車体の先端部を構成するヘッドパイプ内に回動可能に導通され、これによって、ハンドル操作による二本のフロントフォークを介しての前輪における左右方向への転舵が可能になる。
【0022】
ところで、この発明によるフロントフォークは、図1に示すところにあって、上端側部材とされる車体側チューブ1内に下端側部材とされる車輪側チューブ2がテレスコピック型に出没可能に挿通されて伸縮可能とされるフォーク本体(符示せず)を有し、このフォーク本体が内装する懸架バネ(図示せず)の附勢力で車体側チューブ1内から車輪側チューブが突出する伸長方向に附勢される。
【0023】
このとき、図示するフォーク本体にあっては、車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間に上下となって離間配置とされる上方の軸受21と下方の軸受(図示せず)を有し、離間配置される上方の軸受21と下方の軸受が車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における同芯となる摺動性を保障する。
【0024】
そして、このフォーク本体にあっては、離間配置される上方の軸受21と下方の軸受とで車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間に潤滑隙間を出現させ、この潤滑隙間に車輪側チューブ2に開穿の連通孔2aを介して車輪側チューブ2の内方の作動流体たる作動油の流入を許容し、この作動油を潤滑油にして、車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における潤滑を保障する。
【0025】
ちなみに、図示しないが、車体側チューブ1の下端部となる開口端部の内周には、下方の軸受が配設されると共に、この下方の軸受に直列してオイルシールとダストシールが配設され、オイルシールの配在でフォーク本体内を密封空間にする。
【0026】
なお、ダストシールは、車輪側チューブ2の外周に付着する微小な砂粒などのダストを掻き落し、このダストが上記のオイルシール側に侵入することを阻止して、オイルシールにおけるシール機能を保障する。
【0027】
また、車体側チューブ1内に車輪側チューブ2が大きいストロークで没入するフォーク本体の最収縮作動時には、それ以上の収縮を阻止するべく、図示するように、車輪側チューブ2の上端が車体側チューブ1側に当接される。
【0028】
そして、フォーク本体が最伸長するときには、図示しないが、多くの場合に、ダンパが収装する伸び切りバネが最収縮し、この伸び切りバネの最収縮でいわゆる衝撃吸収が実現される。
【0029】
さらに、上記のフォーク本体についてであるが、図示するところでは、車体側チューブ1が大径のアウターチューブからなり、車輪側チューブ2が小径のインナーチューブからなる倒立型に設定されるが、この発明が意図するところからすると、上記に代えて、図示しないが、車体側チューブ1が小径のインナーチューブからなり、車輪側チューブ2が大径のアウターチューブからなる正立型に設定されても良い。
【0030】
ところで、このフォーク本体にあっては、上記のオイルシールの配設で密封空間となる内方をリザーバ(符示せず)に設定し、このリザーバは、所定量の作動油を収容すると共に、作動油の油面(図示せず)を境にして画成される気室(符示せず)を有し、この気室は、フォーク本体の伸縮作動時に同期して膨縮して、この膨縮の際に所定のエアバネ力、すなわち、チューブ反力を発生する。
【0031】
ちなみに、上記の気室は、任意の圧力下に大気を封入してなるが、これに代えて、不活性ガスを任意の圧力下に封入するガス室とされても良く、また、気室であれ、あるいは、ガス室であれ、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11に配設されるエアバルブV1(図2参照)を介して封入された内圧を高低し得るとしても良い。
【0032】
一方、このフォーク本体は、作動油を収容してリザーバとされる内方にダンパ(符示せず)を有し、このダンパは、上端側部材とされる車体側チューブ1の軸芯部に垂設されるシリンダ体3内に下端側部材とされる車輪側チューブ2の軸芯部に起立するロッド体(図示せず)の上端側となる先端側を出没可能に挿通させる倒立型に設定される。
【0033】
そして、このダンパにあっては、作動油を充満するシリンダ体3内にピストン体(図示せず)が摺動可能に収装され、このピストン体には上記のロッド体の言うなれば図中で上端部となる先端部が連結される。
【0034】
ちなみに、ロッド体は、任意の方策で車輪側チューブ2の軸芯部に立設されて良く、また、シリンダ体3も、基本的には、任意の方策で車体側チューブ1の軸芯部に垂設されて良いが、図示するところでは、シリンダ体3の図中での上端部たるボトム端部が車体側チューブ1の上端部の内周に連結、すなわち、螺着される。
【0035】
また、このダンパにあっては、シリンダ体3内にピストン体によって画成されてピストン体の言うなれば図中で下方となるロッド側室(図示せず)と、このピストン体の図中で上方となるピストン側室(図示せず)とを有する。
【0036】
ちなみに、このダンパにあっては、凡そこの種のダンパがそうであるように、ピストン体が減衰手段を有し、それゆえ、ロッド側室とピストン側室とが減衰手段を介して連通するときに所定の減衰作用が具現化される。
【0037】
なお、ピストン体が有する減衰手段で具現化される減衰作用については、これが高低調整可能とされても良いことはもちろんであり、このとき、図示しないが、たとえば、減衰手段を迂回してロッド側室とピストン側室との連通を許容するするバイパス路を設け、このバイパス路における作動油の通過流量を制御しても良い。
【0038】
すなわち、同じく図示しないが、上記のバイパス路にニードル弁体からなる制御バルブを配設すると共に、このニードル弁体をバイパス路中で進退させて、このニードル弁体の上方を向く尖端部の外周に出現する環状隙間を広狭させ、減衰手段を通過する作動油量を多少させても良い。
【0039】
さらに詳述すると、同じく図示しないが、上記のニードル弁体の下端たる後端には、ロッド体の軸芯部に開穿の透孔を挿通するコントロールロッドの上端たる先端が当接され、このコントロールロッドの下端たる後端が車輪側チューブ2の下端開口を閉塞するボトム部材内に臨在されると共にこのボトム部材内に回動可能に配在のアジャスタの上端に当接されるのが良い。
【0040】
このとき、アジャスタは、ボトム部材の軸芯部にあって、フォーク本体の軸芯線を回動中心にするように配設され、外部からの入力による回動時にボトム部材に対して上下動して、上記のコントロールロッドをロッド体の透孔内で昇降させて良い。
【0041】
一方、このダンパにあって、シリンダ体3におけるボトム端部側の内方にはフリーピストンFが配設され、このフリーピストンFによってこのフリーピストンFの図中で上方側となる背後側に気室Aを画成する。
【0042】
そして、この気室Aは、所定の気圧のエアを充満するのはもちろんだが、フリーピストンFを図中で下降する方向たる前進方向に附勢する附勢バネたるコイルスプリングSを有する。
【0043】
そしてまた、このフリーピストンFの図中で下方となる上流側には、減衰部(図示せず)が配設されて、ピストン側室を言わば画成してフリーピストンFの前室たる油室Rを画成する。
【0044】
それゆえ、フリーピストンFは、油室Rが高圧化されるとき、図中で上昇するように後退し、この後退量が所定のストローク量となると、フリーピストンFを摺接させるシリンダ体3に開穿の連通孔3aを介して油室Rを外方とたるリザーバに連通し、油室Rにおける高圧をリザーバに解放する。
【0045】
このとき、フリーピストンFを背後側から附勢するコイルスプリングSにおける上端位置が後述するアジャスタ4の回動操作でダンパの軸線方向に上下動するとき、このコイルスプリングSの附勢力によってフリーピストンFが上下方向に移動した基準位置に置かれることになり、フリーピストンFにおける後退ストローク量が変更される。
【0046】
なお、上記のコイルスプリングSは、フリーピストンFを背後側から附勢して油室Rを昇圧傾向に維持し、したがって、この油室Rに連通するシリンダ体3内が高圧傾向に維持され、たとえば、ピストン体が有する減衰手段が減衰作用のサボリ現象を発現させずして設定通り作動することを可能にする。
【0047】
ところで、上記のフリーピストンFの上流側にあってピストン側室を画成して油室Rを画成する上記の減衰部であるが、一般的には、従前の正立型のダンパにあって、シリンダ体のボトム端部内にベースバルブ部として設けられるものが相当する。
【0048】
なお、上記の減衰部にあっては、減衰作用の高低制御を可能にしても良く、その場合に、高低制御する方策については、任意の方策を選択できるが、一般的には、図示しないが、コントロールロッドが利用される。
【0049】
すなわち、図示しないが、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の連設されて垂下するガイドロッドがフリーピストンFの軸芯部を貫通してその下端部たる先端部に上記の減衰部を保持させる。
【0050】
その一方で、上記の減衰部は、減衰手段を迂回してピストン側室と油室Rとの連通を許容するバイパス路を有し、このバイパス路中に、たとえば、ニードル弁体からなる制御バルブを有し、この制御バルブがバイパス路中で進退してバイパス路における作動油の通過流量を多少する。
【0051】
そして、制御バルブのバイパス路における進退は、ガイドロッドの軸芯部を挿通するコントロールロッドの進退で具現化され、このコントロールロッドの進退は、たとえば、上記したキャップ部材11に配設のアジャスタに対する回動操作で具現化されるのが良い。
【0052】
ところで、図示するフォーク本体にあって、フリーピストンFは、図中で上方となる背後に配設のコイルスプリングSの附勢力によって図中で下方向となる前進方向に附勢される。
【0053】
このとき、コイルスプリングSの下端は、フリーピストンFの凹状となる内方の底部(符示せず)に担持されるが、上端は、図2に示すように、キャップ部材11に配設されたアジャスタ4の下端側に連結されるバネ受5の言わば下端側に係止される。
【0054】
それゆえ、フリーピストンFにあっては、アジャスタ4の回動操作でバネ受5が図中で上下動するように進退してコイルスプリングSの上端位置を上下動させることで、いわゆる静止時における基準位置が上下方向に変更される。
【0055】
そして、フリーピストンFにおける基準位置が変更されることで、このフリーピストンFにおける後退ストローク、すなわち、フリーピストンFの前室たる油室Rをシリンダ体3に開穿の連通孔3aを介して外方となるリザーバに連通して油室Rにおける高圧をリザーバに開放するストローク量が変更される。
【0056】
そして、図示するフォーク本体にあって、上記のアジャスタ4は、キャップ部材11に偏芯配置され、また、バネ受5は、キャップ部材11に対しては偏芯しないがアジャスタ4に対しては偏芯した状態で連結される。
【0057】
少し説明すると、図2に示すように、この発明にあって、アジャスタ4は、その軸芯線aがダンパにおける軸芯線bに対してダンパの径方向に任意の距離を有して偏芯する。
【0058】
その結果、キャップ部材11にあっては、アジャスタ4がキャップ部材11の軸芯部に配設される場合に比較して、封入栓V2のキャップ部材11への配設に余裕を持たせることが可能になる。
【0059】
したがって、この発明にあっては、キャップ部材11に対する封入栓V2の配設効率を良くし、キャップ部材11における部品構造の複雑化やそれによる組立工数の増加および製品コストのいたずらな上昇化を回避し得る。
【0060】
のみならず、封入栓V2に加えて注入栓(図示せず)をもキャップ部材11に配設する場合にも、その配設効率を良くすることになる。
【0061】
一方、このアジャスタ4は、キャップ部材11に回動可能に介装されるのはもちろんだが、このとき、このアジャスタ4の上端側部の外周部に嵌装されたストップリング41でキャップ部材11内への没入が阻止されると共に、軸線方向の中間部の外周に突設されたフランジ部4aでキャップ部材11からの脱け出しが阻止される。
【0062】
そして、このアジャスタ4は、上記のフランジ部4aの図中で下方部となる下端側部を外周に螺条4bを有する螺条部4cとし、この螺条部4cにバネ受5を螺装させる。
【0063】
それゆえ、このアジャスタ4にあっては、これが回動操作されると、バネ受5の回動が阻止される限りにおいて、このバネ受5のキャップ部材11に対する昇降を可能にする。
【0064】
ところで、バネ受5は、全体的に看ると、キャップ部材11の軸芯部に配設されるが、上記のアジャスタ4を偏芯連結させ、したがって、アジャスタ4の回動を許容する一方で、自らのキャップ部材11に対する回動が阻止される。
【0065】
すなわち、バネ受5は、図示するとことでは、フランジ付きのナット状に形成されるが、言わばナット状部とされてアジャスタ4の螺条部4cに螺合する本体部5aに形成の螺条孔5bがこのバネ受5における軸芯線、すなわち、キャップ部材11における軸芯線bに対して偏芯されてなる。
【0066】
その結果、このバネ受5にあっては、アジャスタ4に螺着する本体部5aにあって径方向に厚肉部と薄肉部とが形成され、したがって、アジャスタ4の回動に同期する回動が阻止され、図中で上下動するのみとなる。
【0067】
一方、上記のアジャスタ4は、図示するところにあって、ほぼ有頭筒状に形成され、上端部たる突出部4dにスプライン構造下に操作摘み42を連結させると共に軸芯部にエアバルブV1を螺装させてなる。
【0068】
つまり、この発明にあっては、アジャスタ4は、単独でキャップ部材11に配設されるのではなく、エアバルブV1を有した状態でキャップ部材11に配設される。
【0069】
その結果、この発明にあっては、従前であればキャップ部材11に独立して配設されていたエアバルブV1がキャップ部材11に配設のアジャスタ4に一体的に配設される。
【0070】
このことから、この発明にあっては、キャップ部材11には前記した封入栓V2と共に、また、要する場合に注入栓の配設と共に、アジャスタ4が配設されることでエアバルブV1を配設することが可能になる。
【0071】
したがって、キャップ部材11に対する封入栓V2および注入栓さらにはアジャスタ4の配設に余裕を持たせることが可能になり、したがって、封入栓V2および注入栓さらにはアジャスタ4の配設効率を良くし、キャップ部材11における部品構造の複雑化やそれによる組立工数の増加および製品コストのいたずらな上昇化を回避し得る。
【0072】
ちなみに、アジャスタ4にスプライン構造下に連結される操作摘み42は、これを撤去すると、エアバルブV1における後端操作部を露呈させ、したがって、エアバルブV1の操作が可能になる。
【0073】
前記したところでは、コイルスプリングSがフリーピストンFを背後側から附勢する附勢バネとされる場合を例にして説明したが、この発明が意図するところからすると、図示しないが、コイルスプリングSがフォーク本体内に収装されてこのフォーク本体を伸長方向に附勢する懸架バネとされても良く、また、この発明の具現化が妨げられないのはもちろんである。
【0074】
ちなみに、コイルスプリングSが懸架バネとされる場合には、アジャスタ4の回動操作でその上端位置が上下動されるとき、フォーク本体におけるチューブ反力が高低され、たとえば、二輪車における前輪側の車高の高低調整が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
車体側チューブの上端部の内方に有するアジャスタを回動操作して所期の目的を達成するフロントフォークを提供するについて、部品構造の複雑化やそれによる組立工数の増加および製品コストのいたずらな上昇化を回避するのに向く。
【符号の説明】
【0076】
1 車体側チューブ
2 車輪側チューブ
2a,3a 連通孔
3 シリンダ体
4 アジャスタ
4a フランジ部
4b 螺条
4c 螺条部
4d 突出部
5 バネ受
5a 本体部
5b 螺条孔
11 キャップ部材
21 軸受
41 ストップリング
42 操作摘み
a アジャスタの軸芯線
b キャップ部材の軸芯線
A 気室
F フリーピストン
R 油室
S コイルスプリング
V1 エアバルブ
V2 封入栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体が収装するコイルスプリングの上端位置を上下動させるアジャスタを上記の車体側チューブにおける上端開口を閉塞するキャップ部材に有するフロントフォークにおいて、上記のアジャスタがその回動中心線を上記の車体側チューブにおける軸芯線に対してこの車体側チューブにおける径方向に偏芯させると共に、上記のアジャスタに上記のフォーク本体内への気体の封入を可能にする封入栓あるいは上記のフォーク本体内における気圧あるいはガス圧の変更を可能にするエアバルブさらには上記のフォーク本体内への作動流体の注入を可能にする注入栓のいずれかが組み込まれてなることを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
上記のコイルスプリングが上記のフォーク本体内に収装のフリーピストンを背後側から附勢する附勢バネとされ、あるいは、上記のコイルスプリングが上記のフォーク本体内に収装されてこのフォーク本体を伸長方向に附勢する懸架バネとされてなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
上記のアジャスタが上記のキャップ部材に対して上下動が阻止されながら回動可能に保持され、このアジャスタに連結されるバネ受がこのアジャスタに対する回動を阻止されながら上下動が許容されてなる請求項1または請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
上記のアジャスタが上記のエアバルブあるいは注入栓を有すると共に上方に向けて突出する突出部を有し、この突出部に操作摘みがスプライン構造下に分離可能に連結され、この操作摘みが撤去されるときに上記のエアバルブあるいは注入栓における後端操作部が露呈されてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載のフロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−58547(P2011−58547A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207874(P2009−207874)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】