説明

フローティングチャック装置及びフローティングチャックユニット

【課題】 簡易な構成でもってチャックのフローティングを可能としコンパクト化を図ることができるフローティングチャック装置及びフローティングチャックユニットを提供する。
【解決手段】 上下方向に延びる軸部21を有し、その先端の吸着部にワークを吸着させて該ワークWを保持するチャック20が、該チャック20を移動させる移動基板3に対してフローティング可能に支持されるフローティングチャック装置10又はこれが複数並設されたフローティングチャックユニット1において、チャック20にフランジ部22を設け、軸部21を挿通させるチャック挿通孔11cを有しフランジ部22を支持する第一ガイドブロック11と、該第一ガイドブロック11と対をなしフランジ部22を上方から挟み込む第二ガイドブロック12とを設け、第一ガイドブロック11とフランジ22との間、及びチャック挿通孔11cと軸部21との間にクリアランスn1、n2を形成する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを吸着によって保持するチャックを移動機構に対してフローティング可能に支持するフローティングチャック装置及びこれが複数並設されてなるフローティングチャックユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば精密機器等を製造する場合には微小部品を組み立てることになるため、これら微小部品を保持する小型のチャックが必要となる。このようなチャックとして、従来、例えば特許文献1に示されているように、バキュームによりワーク(微小部品)を吸着する構造のものが知られている。このチャックは、チャック先端部に多孔質の吸着部が配設され、この吸着部の先端面にワークを当接されるとともに、吸着部の基端面側からバキュームによってエア吸引し、吸着部の先端面にワークを吸着させるものである。
【0003】
このようなチャックにおいては、ワークとして例えば光学素子等の超精密部品を扱う際は、当該チャックとワークが設置されるトレーとの位置決め精度を高くすることが求められ、場合によってはチャックの移動機構の精度以上の位置決めが要求される。
この場合には、チャックの水平方向位置を最終的にトレー側でガイドすることによって両者のセンターを一致させることが有効であり、このためにはチャックを移動機構に対してフローティング可能に支持するフローティング機構を備える必要がある。
【0004】
フローティング機構としては、リニアガイドをX軸、Y軸に重ねてXY平面上を滑らせる手法(例えば特許文献2参照)、バネの力によって不動的に支持する手法(例えば特許文献3参照)、マグネット上を滑らせる手法等が一般的に知られている。
【特許文献1】特開2001−88075号公報
【特許文献2】特開平8−85089号公報
【特許文献3】実公平6−44588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チャックを用いた組立て工程においては、生産性を向上させるために当該チャックを複数並設させて複数のワークを同時に保持運搬するのが望ましい。しかしながら上記のフローティング機構としてリニアガイド重ねて使用する手法を採用した場合、機構自体の大型化は避けられないため、チャックを並設することはできず生産性が低下してしまうという問題があった。また、リニアガイドには、その動作を円滑にするため潤滑油等が用いられているため、これがワークを汚染してしまうおそれがあった。
また、バネを用いた場合には、その弾性により振動が生じる等してチャックの軸が傾いてしまうことがあり、高い位置決め精度を確保するのが困難であった。さらに、マグネットを用いる手法は場合には、ワークが磁化するおそれがあるため、精密部品を扱うには適切ではなかった。
【0006】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、チャックのフローティング機構のコンパクト化及び位置決め精度の向上を図ることができるとともに、ワークを適切な環境下で保持・運搬可能なフローティングチャック装置及びフローティングチャックユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るフローティングチャック装置は、上下方向に延びる軸部を有し、その先端の吸着部にワークを吸着させて該ワークを保持するチャックが、該チャックを移動させる移動機構に対してフローティング可能に支持されるフローティングチャック装置であって、前記チャックは前記軸部から径方向外側に張り出すフランジ部を有し、前記軸部を上下方向に挿通させる挿通孔を備え、前記フランジ部を下方から支持する第一ガイドブロックと、該第一ガイドブロックと対をなし、前記フランジ部を上方から挟み込む第二ガイドブロックとが設けられ、前記第二ガイドブロックと前記フランジとの間、及び前記挿通孔と前記軸部との間にクリアランスが形成されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴のフローティングチャック装置によれば、チャックのフランジ部を第一及び第二ガイドブロックによって挟み込むといった簡易な構成でもってフローティング機構を得ることができる。即ち、チャックのフランジ部が第一ガイドブロックとの間に形成されたクリアランスの範囲内を移動可能であるとともに、チャックの軸部は当該軸部が挿通する挿通孔との間に形成されたクリアランスの範囲内を移動可能であるため、チャック全体として第一及び第二ガイドブロックに支持されながらも水平面上をフローティングすることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るフローティングチャック装置は、前記チャックに、前記ワークが設置されるトレーとのセンター合わせを行う調芯機構が設けられたことを特徴としている。
上述のように、チャックがフローティング可能に支持されているため、最終的なトレーとの間でのセンター合わせを行うことが可能であり、これによりチャックの水平方向の位置をトレーに対して確実に合わせ、両者の軸線を一致させることが可能となる。
【0010】
さらに、本発明に係るフローティングチャック装置においては、前記調芯機構は、前記軸部に対し上下方向に摺動可能に外嵌され、その先端に、前記トレーに形成されたテーパ部に嵌合可能なテーパ凹部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
チャックがワークをトレーに載置する際又はトレーから搬出する際に、当該チャックがトレーに向けて降下すると、調芯機構のテーパ凹部がトレーのテーパ部に嵌合することによって、両者のセンター合わせを行うことができるため、チャックをトレーに対して一定位置に確実に位置決めすることが可能となる。
また、当該調芯機構はチャックに対して上下方向に摺動可能であるため、チャックによるワークの載置又は搬出の妨げになることはなく、チャックによる円滑な作業を確保することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係るフローティングチャック装置は、前記チャックを前記第二のガイドブロックに対して位置決めするチャック固定手段が設けられたことを特徴としている。
【0013】
上記のようにトレーにワークを載置又は搬出する際には、トレーとの間でセンター合わせを行う必要があるためチャックがフローティング可能であることが要求されるが、トレー以外の例えば平坦面等にワークを載置又は搬出する際には、当該チャック固定手段によってチャックを第二ガイドブロックに対して位置決めすることで安定した載置又は搬出を行うことができる。
【0014】
本発明に係るフローティングユニットは、上記いずれかのフローティングチャック装置が複数並設されてなることを特徴としている。
上述のように簡易な構成でもってチャックのフローティングを可能とするため、装置自体のコンパクト化を図ることができ、複数並設することが可能となる。これによって、同時に複数のワークを搬送することができるため、生産性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るフローティングチャック装置及びフローティングチャックユニットによれば、チャックのフランジ部を第一及び第二ガイドブロックによって挟み込むといった簡易な構成でもってチャックのフローティングを実現することができ、位置決め精度の向上を図ることが可能であるとともに、装置自体のコンパクト化を図ることができる。
また、ワークに潤滑油や磁力が及ぶことがないため、ワークにとってクリーンな環境での搬送を行うことができる。
さらに、このコンパクト化に伴い装置の並設が可能となるため、組立て工程における生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明に係るフローティングチャック装置の実施形態については、これが組み込まれた本発明に係るフローティングチャックユニットとともに説明する。
図1は本実施形態に係るフローティングチャックユニットを示す側面図、図2は本実施形態に係るフローティングチャックユニットを示す側断面図、図3はフローティングチャックユニットを構成するフローティングチャック装置の側断面図、図4は図3の部分拡大図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態のフローティングチャックユニット1は、複数(本実施形態では5つ)のフローティングチャック装置10が並設されて構成されており、当該各フローティングチャック装置10がアングル2を介して移動基板3に取り付けられている。また、フローティングチャックユニット1の直上には、移動基板3に接続・固定されたシリンダ4が配設されている。
なお、本実施形態のフローティングチャックユニット1に搬送されるワークWとしては、光学素子や時計部品等の精密備品が対象となる。また、このようなワークWが載置されるトレー40は、図1から図3に示すように、上下方向に延びる円柱状をなし、その上端面にワークWが載置される窪部41(図3参照)が形成され、さらに、外周側面の上端側が上方に向かって縮径するテーパ部42とされている
【0018】
移動基板3は、フローティングチャックユニット1をX方向、Y方向及びZ方向へ三次元的に移動させるものであって、鉛直面に沿って配置される略板状をなし、その後方側(図1における左側)が図示しない駆動機構に接続されている。駆動機構としては、三次元方向に移動可能である限り、ロボットの主軸の他、XYZ方向の各方向に3本のリニアガイド重ねたもの等、使用する状況に応じて種々のものを採用することができる。
【0019】
アングル2は、側面視L字状をなし、ある程度の厚みを有する板状の部材であって、その後方側が移動基板3に接合され、前方側(図1における右側)に延設された部分が複数のフローティングチャック装置10が取り付けられるブラケット部5とされている。
このブラケット部5は、その上方又は下方を向く面はそれぞれ後述する第一及び第二のガイドブロック11、12が取り付けられる被取付面6、7とされており、当該二つの被取付面6、7に直交して配された前方側を向く面は、平坦状をなすブラケット前面8とされている。
【0020】
以下、フローティングチャックユニット1を構成する各フローティングチャック装置10について、図3及び図4を用いて説明する。このフローティングチャック装置10は、第一ガイドブロック11と、第二ガイドブロック12と、チャック20と、チャック固定手段30とから概略構成されている。
【0021】
第一ガイドブロック11は、アングル2に固定されてチャック20におけるフランジ部22を下方から支持する部材であり、前後方向(図3の左右方向)を長手方向とする四角柱形状をなしている。
【0022】
そして、この第一ガイドブロック11の上方を向く面のうち後方側に位置する面が、アングル2の被取付面6と当接してボルト13によって固定される固定面11aとされている。これにより、第一ガイドブロック11の前方側はアングル2のブラケット前面8よりも前方側に突出された状態となる。
【0023】
また、第一ガイドブロック11の上方を向く面のうち、固定面11aの前方側に位置する面は、後述するチャック20のフランジ部22が当接するフランジ当接面11bとされており、このフランジ当接面11bには、鉛直方向に略円形に貫通するチャック挿通孔11cが穿設されている。このチャック挿通孔11cには後述するチャック20の軸部が挿通されるようになっている。
【0024】
第二ガイドブロック12は、第一ガイドブロック11と対をなすようにブラケットぶ5の上側に配置される部材であって、第一ガイドブロック11と同様に前後方向を長手方向とする四角柱形状をなしている。
【0025】
そして、この第二ガイドブロック12の下方を向く面のうち後方側に位置する面は、アングル2の被取付面7と当接してボルト14によって固定される固定面12aとされている。これにより、第二ガイドブロックの前方側はアングル2のブラケット前面8よりも前方側に突出された状態となり、第一ガイドブロック11と第二ガイドブロック12とがアングル2のブラケット部5を介して上下に対向配置された構成となる。
【0026】
また、第二ガイドブロック12の下方を向く面のうち、固定面12aの前方側に位置する面は、後述するチャック20のフランジ部22と対向されるフランジ対向面12bとされている。さらに、該フランジ対向面12bには、鉛直方向に略円形に貫通するロッド挿通孔12cが穿設されており、後述するチャック固定手段30のロッド31が挿通されるようになっている。
【0027】
そして、チャック20は、ワークWを吸着によって保持するものであり、鉛直方向に延びる軸線Oに沿って上下に延設された略円柱状の軸部21と、該軸部21の上部において軸線O径方向外側に向けて平面視略四角形状に張り出すフランジ部22とを備え、全体として側断面視T字状をなしている。
【0028】
軸部21の下端部は、他の部分よりも一段小径とされ、その端面にワークWを吸着するための吸着部23が設けられている。また、チャック20内には吸着部23からエアを吸引するためのエア通路24が形成されており、該エア通路24は、吸着部23から軸部21内を軸線Oに沿って上方に延びる縦路24aと、軸部21の上部のフランジ部22まで至った縦路24aから水平方向に屈折して延びてフランジ部22のフランジ前面22aに開口する横路24bとから構成されている。このようにして縦路24aと横路24bは連通状態にあり、横路24bの開口部に設けられた接続部25に、図示しないエアホースが接続されて吸引を行うことによって、軸部の下端面の吸着部23がワークWを吸着できるように構成されている。
【0029】
また、詳しくは図4に示すように、軸部21におけるフランジ部22との境界となる基端部21aは、他の部分よりも大径に形成されており、その直径は前述の第一ガイドブロック11のチャック挿入孔11cの径よりも僅かに小さくなるように設定されている。
【0030】
フランジ部22は平面視矩形状にて上下方向に一定の厚さを有する角柱状をなしており、図4に示すように、その上下方向の厚さd1は、前述のアングル2におけるブラケット部5の上下方向の厚さd2よりも僅かに小さくなるように設定されている。また、フランジ部22における軸部22の基端部21aが接続された下方を向く面は、平坦状をなすフランジ下面22bとされており、該フランジ部22の上方を向く面はフランジ上面22cと、後方を向く面はフランジ背面22dとされている。
なお、フランジ上面22cには、後述するチャック固定手段30におけるロッド31の嵌合部32が嵌まり込む嵌合孔22eが形成されている。
【0031】
このような軸部21及びフランジ部22とを備えるチャック20は、その軸部22が第一ガイドブロックのチャック挿入孔11cを上方から下方に向かって挿通するように配され、これにより、フランジ部22のフランジ面22bが第一ガイドブロックのフランジ当接面11bと当接している。そして、フランジ部22のすぐ上方には第二ガイドブロック12が位置しており、これによりフランジ部22はその上下から第一及び第二のガイドブロック11、12によって挟み込まれるように配置されることになる。
【0032】
そして、上述のようにブラケット部5の厚さd2に比べてフランジ部22の厚さd1が僅かに小さく設定されていることから、図4に示すように、フランジ部22のフランジ上面22cと第二ガイドブロック12のフランジ対向面12bとの間にはクリアランスn1が形成される。
また、チャック20における軸部21の基端部21aの直径が、第一ガイドブロック11のチャック挿通孔11cの直径よりも僅かに小さく設定されているため、当該基端部21aとチャック挿通孔11cとの間にもクリアランスn2が形成される。なお、本実施形態においては、フランジ背面22dとブランケット前面8との間にもクリアランスn3が設けられている。
したがって、軸部21及びフランジ22はこれらクリアランスn1、n2、n3の範囲内で僅かに移動することができるようになっている。
【0033】
上記のような構成のチャック20の軸部21には、図1から図3に示すようにチャック20とワークWを載置するトレー40とのセンター合わせを行う調芯機構26が設けられている。この調芯機構26は筒状をなしており、軸部22と同軸にその外周面に摺動可能に外嵌されている。
また、この調芯機構26においては、図3に示すように、軸部21の外周面に上下方向に沿って形成されたキー溝21bに向かって、外周側からキー部材28が挿入されており、これによって調芯機構26の軸線O回りの回転が防止されるとともに、上下方向の移動がキー溝21bの上下の範囲内で制限されている。なお、このキー部材27の頭部27aは調芯機構26の外周面から径方向外側に突出している。
さらに、軸部21の外周には基端部21aから調芯機構26の上端部に至るバネ部材29が圧縮状態で配設されており、これにより調芯機構26は、下方に向かって付勢されることで通常はキー溝21bの範囲での最下方に位置している。
【0034】
また、調芯機構26の下端面における開口部には、軸線Oを中心としてテーパ状に凹むテーパ凹孔28が設けられている。このテーパ凹部28の径及びテーパ角度は上述のトレー40におけるテーパ部42と同一となるように形成されている。
したがって、チャック20がトレー40からワークWを搬出、又はトレー40に対してワークWを載置する際には、調芯機構26のテーパ凹部28とトレー40のテーパ部42がテーパ嵌合しすることで両者の軸線が一致させられ、センター合わせが行われる。
【0035】
次にチャック固定手段30について説明する。チャック固定手段30は、ロッド31と、該ロッド31の下端に設けられた嵌合部32と、ロッド31を上方に付勢するバネ部材33とを有している。
ロッド31は、図3に示すように、第二ガイドブロック12のロッド挿通孔12cに挿入されており、その際、下端面の嵌合部32はフランジ部22の嵌合孔22e内に収容されている。また、ロッド31の上部には径方向外側に張り出す縁部31aが備えられており、ロッド31の外周には該縁部31aから第二ガイドブロック12に至るバネ部材33が圧縮状態で配設され、これによりロッド31が上方向に付勢されている。また、この際、ロッド31よりも一段大径に形成された嵌合部32が、第二ガイドブロック12のフランジ対向面12bに当接するため、ロッド31の上方向への動きが制限されている。
【0036】
また、嵌合部35は下方に向かって縮径する多段円錐形状をなし、フランジ22の嵌合孔22eもこれに対応する多段円筒面を有する凹状をなしているが、嵌合部35の方が僅かに小さく形成されているため、ロッド31がバネ部材33によって上方向に付勢されている状態では、図4に示すように、嵌合部35と嵌合孔22eとの間にはクリアランスn4が形成されている。
【0037】
また、チャック固定手段30におけるロッド31の直上には、シリンダ4が配設されており、このシリンダ4のシリンダロッド4aが下方に突出してロッド31の上端部に当接した際には、該ロッド31は下方に向かって押され、嵌合部35と嵌合孔22eとがそれぞれの頂点を一致させるようにして密着嵌合する。これにより、フランジ22が第二ガイドブロック12に対して一定位置に位置決めされることになる。
【0038】
以下、本実施形態に係るフローティングチャックユニット1の機能について説明する。
フローティングチャックユニット1によって、ワークWをトレー40に載置又はトレー40から搬出にあたっては、フローティングチャックユニット1は、移動基板3のXYZ方向の移動によって、図1から図3に示すような、チャック20の軸部21の軸線Oがトレー40と略同軸になる位置まで移動される。この際、移動基板3により位置決めがなされるものの、移動基板3のXYZ座標の精度以上の位置決めをすることはできない。
【0039】
ここで、本実施形態の各フローティングユニット1の各フローティングチャック装置10においては、チャック20とこれを支持する第一ガイドブロック11、第二ガイドブロック12及びブラケット部5との関係においては、フランジ部22のフランジ下面22bが第一ガイドブロック11のフランジ当接面11bに当接して支持されている他は、図4に示すように、クリアランスn1、n2、n3が介されているため接するものはない。したがって、チャック20はこれらクリアランスn1、n2、n3の範囲内で自由に移動することが可能となり、XY平面上を滑らかにフローティングすることが可能となる。
【0040】
そして、このようにチャック20がフローティング可能に支持された状態で、当該チャック20が移動基板3によりトレー40に向かって降下させられると、調芯機構26のテーパ凹部28がトレー40のテーパ部に嵌合しようとする。この際、チャック20がXY平面上をフローティング可能であることから、軸部21の軸線Oをトレー40側に従って合わせることができる。このようにして、チャック20をトレー40による案内に追従させることができるため、容易にチャック20とトレー40とのセンター合わせを行うことが可能となる。
また、調芯機構26は軸部21に対して上下方向に摺動可能であるため、チャック20がトレー40に向かって降下した際に、当該調芯機構26がチャック20によるワークWの載置又は搬出の妨げることはない。
【0041】
以上のようにして、本実施形態のフローティングチャック装置10においては、チャック20のフランジ部22を第一及び第二のガイドブロック11、12によって挟み込むといった簡易な構成でもって、チャック20のフローティング機構を得ることができる。これにより、装置自体をコンパクトにすることができるため、図2に示すように複数のフローティングチャック装置10を並設してフローティングチャックユニット1を構成することが可能となり、これによって同時に複数のワークWの搬送を行えるため、組立て工程における生産性を向上させることができる。
また、従来のフローティング機構のように、ワークWに潤滑油や磁力が及ぶことがないため、ワークWにとってクリーンな環境での搬送を行うことが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態のフローティングチャックユニット1においては、上記のようにチャック20をフローティング可能として最終的にトレー40側に案内されることによりセンター合わせを行っているが、これに限られず、トレー40のようなテーパ部42を有しない平坦面にワークを載置又は搬出することも可能である。
【0043】
その際には、シリンダ4のシリンダロッド4aを作動させることで、チャック固定手段30のロッド31を下方に押圧し、嵌合部32をフランジ部20の嵌合孔22eに嵌合させる。これによって、チャック20を第二ガイドブロック12に対して一定位置に位置決めすることが可能となるため、チャック20はフローティングすることなく移動基板3と一体に移動するようになる。
このようにすれば、チャックの位置決め精度は移動基板3のXYZ座標の精度に依存するものの、チャック20が不用意にぐらつくことはなく、安定してワークWの載置及び搬出ができるようになる。
なお、このようにトレー40以外との間でワークの載置及び搬出を行う際には、調芯機構26が妨げになることを避けるため、チャック20が降下した際に該調芯機構26のキー部材27の頭部27aを他の部材に当接させる等して、調芯機構26をチャック20の軸部21に対して上方に摺動させておくことが望ましい。
【0044】
以上、本発明であるフローティングチャック装置及びフローティングチャックユニットの実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係るフローティングチャックユニットを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係るフローティングチャックユニットを示す側断面図である。
【図3】フローティングチャックユニットを構成するフローティングチャック装置の側断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
1 フローティングチャックユニット
3 移動基板(移動機構)
10 フローティングチャック装置
11 第一ガイドブロック
11c チャック挿通孔(挿通孔)
12 第二ガイドブロック
20 チャック
21 軸部
21a 基端部
22 フランジ部
23 吸着部
26 調芯機構
28 テーパ凹部
30 チャック固定手段
40 トレー
32 テーパ部
n1 クリアランス
n2 クリアランス
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる軸部を有し、その先端の吸着部にワークを吸着させて該ワークを保持するチャックが、該チャックを移動させる移動機構に対してフローティング可能に支持されるフローティングチャック装置であって、
前記チャックは前記軸部から径方向外側に張り出すフランジ部を有し、
前記軸部を上下方向に挿通させる挿通孔を備え、前記フランジ部を下方から支持する第一ガイドブロックと、
該第一ガイドブロックと対をなし、前記フランジ部を上方から挟み込む第二ガイドブロックとが設けられ、
前記第二ガイドブロックと前記フランジとの間、及び前記挿通孔と前記軸部との間にクリアランスが形成されていることを特徴とするフローティングチャック装置。
【請求項2】
前記チャックに、前記ワークが設置されるトレーとのセンター合わせを行う調芯機構が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のフローティングチャック装置。
【請求項3】
前記調芯機構は、前記軸部に対し上下方向に摺動可能に外嵌され、その先端に、前記トレーに形成されたテーパ部に嵌合可能なテーパ凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフローティングチャック装置。
【請求項4】
前記チャックを前記第二のガイドブロックに対して位置決めするチャック固定手段が設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフローティングチャック装置。
【請求項5】
請求項1から4のフローティングチャック装置が複数並設されてなることを特徴とすフローティングチャックユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−202294(P2009−202294A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47928(P2008−47928)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】