説明

フードリリースレバー取付構造

【課題】 締結強度のバラツキによる影響を排除できるとともに部品点数および取付工数を低減でき、さらにベース部を小型化することができるフードリリースレバー取付構造の提供。
【解決手段】 車両のフードロック装置のロックをケーブル18を介して解除するフードリリースレバー17の取付構造であって、車体側の取付部21に取り付けられるとともにケーブル18のケーブルアウタ44を係止するベース部22と、ベース部22に回動可能に軸支されるとともにケーブル18のケーブルインナ45を係止するレバー部23とを備え、ベース部22が、取付部21への仮止め用の係合部31と、取付部21への締結用の締結部32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードロック装置のロックを解除するフードリリースレバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内に設けられて車両のフードロック装置のロックを解除するフードリリースレバーは、通常、車体側に取り付けられるとともにケーブルの一端側のケーブルアウタを係止するベース部と、このベース部に回動可能に軸支されるとともにケーブルの同じく一端側のケーブルインナを係止するレバー部とを備えており、レバー部を揺動させることでケーブルインナを引き、フードロック装置のロックを解除するようになっている。そして、このようなフードリリースレバーを、ベース部の二カ所の締結部で車体側に固定する構造のものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−81472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにベース部の二カ所の締結部で車体側に固定する構造であると、締結強度が各締結部毎にばらついたり、部品点数および取付工数が多くなってしまうという問題があった。
【0004】
また、ケーブルが連結された状態ではレバー部の全体がベース部に近接することになり、このレバー部を回動させケーブルを引きながら締結工具を用いて二カ所の締結部においてベース部を車体側に固定するのは作業上無理がある。このため、レバー部がベース部に近接した状態でも締結工具を挿入可能とするために締結部をレバー部の範囲よりも外側に設けなければならず、ベース部が大型化し、スペース、重量および外観の点で不利になってしまうという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、締結強度のバラツキによる影響を排除できるとともに部品点数および取付工数を低減でき、さらにベース部を小型化することができるフードリリースレバー取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両のフードロック装置(例えば実施形態におけるフードロック装置13)のロックをケーブル(例えば実施形態におけるケーブル18)を介して解除するフードリリースレバー(例えば実施形態におけるフードリリースレバー17)の取付構造であって、車体側の取付部(例えば実施形態における取付部21)に取り付けられるとともに前記ケーブルのケーブルアウタ(例えば実施形態におけるケーブルアウタ44)を係止するベース部(例えば実施形態におけるベース部22)と、該ベース部に回動可能に軸支されるとともに前記ケーブルのケーブルインナ(例えば実施形態におけるケーブルインナ45)を係止するレバー部(例えば実施形態におけるレバー部23)とを備え、前記ベース部が、前記取付部への仮止め用の係合部(例えば実施形態における係合部31)と、前記取付部への締結用の締結部(例えば実施形態における締結部32)とを有することを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記係合部が前記ベース部の一側部に一体的に形成され、前記締結部が前記ベース部の逆側部に一体的に形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記ベース部における一端側に前記レバー部が軸支されており、前記係合部は前記ベース部における前記レバー部の軸支位置よりも他端側に形成されていて、前記係合部が前記取付部に対し前記他端側から前記一端側への方向に係合することを特徴としている。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、前記係合部および前記締結部を結ぶ方向における前記ベース部の両側部間の幅が、前記レバー部の該方向の幅以下とされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、レバー部を軸支するベース部をその係合部において車体側の取付部に仮止めし、この状態で、ベース部の締結部において取付部へ締結することができ、一カ所の締結でも精度良くベース部を取り付けることができる。よって、締結が一カ所で済むため、締結強度のバラツキによる影響を排除できるとともに部品点数および取付工数を低減できる。また、ベース部を係合部において取付部に仮止めすることによって、レバー部を回動させた状態でベース部の締結部を取付部へ締結することが容易にできる。よって、締結部をベース部におけるレバー部の範囲に設けることができ、締結部をベース部におけるレバー部の範囲外に設ける場合に比してベース部を小型化することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、係合部がベース部の一側部に一体的に形成され、締結部がベース部の逆側部に一体的に形成されているため、締結部の締結時におけるベース部のぐらつきを防止できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、ベース部における一端側のレバー部の軸支位置よりも他端側に形成された係合部が取付部に対し他端側から一端側への方向に係合するため、レバー部を引くことによりベース部に生じる力の方向と係合部の係合方向とが合うことになり、レバー部を引いても係合部の仮止め状態を確実に維持することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、係合部および締結部を結ぶ方向におけるベース部の両側部間の幅が、レバー部のこの方向の幅以下とされているため、幅方向においてレバー部でベース部を覆うことができ、見栄えが良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態のフードリリースレバー取付構造を図面を参照して以下に説明する。
【0015】
図1は、車両の車体前部を示すもので、車体前部にはエンジンルーム11を上側から覆うボンネットフード(フード)12が開閉可能に設けられており、このボンネットフード12を閉状態でロックするフードロック装置13がエンジンルーム11の前方に設けられている。
【0016】
フードロック装置13は、図2に示す車室内のインストルメントパネル16に設けられたフードリリースレバー17に図3に示すケーブル18を介して接続されており、フードリリースレバー17はフードロック装置13によるボンネットフード12の閉状態でのロックをケーブル18を介して解除する。
【0017】
フードリリースレバー17は、車体側のインストルメントパネル16の取付部21に取り付けられるベース部22と、このベース部22に回動可能に軸支されるレバー部23とを備えている。
【0018】
ベース部22は、例えば金属製のもので、図4および図5にも示すように、取付板部25と、取付板部25の長さ方向の一端側における幅方向の両側部から取付板部25に対し略垂直に延出する一対の平行な腕板部26と、取付板部25の長さ方向の他端側から先端側ほど取付板部25から離れるように傾斜して突出する係止部27とを有しており、両腕板部26の先端側には図3に示す連結穴28が同軸に形成されている。
【0019】
また、ベース部22は、インストルメントパネル16の取付部21への仮止め用の係合部31と、インストルメントパネル16の取付部21への締結用の締結部32とを有している。具体的に、取付板部25の長さ方向の中間部における幅方向の一側部に取付部21への仮止め用の係合部31が一体に形成されており、取付板部25の長さ方向の中間部における幅方向の逆側部に取付部21への締結用の締結部32が一体に形成されている。
【0020】
係合部31は、取付板部25からその板厚方向における一側に若干切り起こされた後、取付板部25と平行に腕板部26の方向に突出する爪形状をなしている。締結部32は取付板部25の板厚方向に貫通する取付穴33を中央に有している。
【0021】
レバー部23は、例えば樹脂製のもので、主板部35と、主板部35の長さ方向における一側から主板部35に対し略垂直に立ち上がる一対の平行な取付片部36と、主板部35の長さ方向における中間部から主板部35に対し略垂直に立ち上がる係止部37とを有しており、取付片部36にはそれぞれ図示略の連結穴が同軸に形成されている。
【0022】
そして、レバー部23の取付片部36をベース部22の腕板部26の間に介在させるようにして、両取付片部36の連結穴と両腕板部26の連結穴28とに共通の連結ピン40を挿入させる。すると、レバー部23がベース部22に回動可能に軸支される。このようにして、レバー部23およびベース部22を連結ピン40で連結したフードリリースレバー17においては、ベース部22における長さ方向の一端側にレバー部23が軸支されることになり、係合部31および締結部32が、ベース部22におけるレバー部23の軸支位置よりも長さ方向の他端側に形成されている。また、ベース部22の側部にある係合部31は回動軸である連結ピン40と直交する方向に沿っている。
【0023】
なお、図6に示すように、係合部31および締結部32を結ぶ方向におけるベース部22の両側部間の幅W1は、レバー部23の該方向の幅W2以下とされており、ベース部22およびレバー部23の重なり方向から見た場合に、レバー部23でベース部22が幅方向においては完全に覆われるようになっている。また、図4および図5に示すように、係合部31の基端側と締結部32との間の取付板部25にはこれらを結ぶように延在する凹状のビード部42が形成されている。
【0024】
上記のようにレバー部23およびベース部22を連結ピン40で連結したフードリリースレバー17において、図4に示すように、ベース部22の係止部27にケーブル18の筒状のケーブルアウタ44を係止させるとともに、レバー部23の係止部37にケーブル18のケーブルアウタ44の内側に挿通されるケーブルインナ45の端部のタイコ部46を係止させる。これにより、レバー部23がベース部22に近接した状態ではケーブルインナ45のケーブルアウタ44からの突出量は小さくされ、図5に示すように、レバー部23がベース部22から離間するように回動させられると、ケーブルインナ45がケーブルアウタ44から引き出されて突出量を大きくし、その結果、ケーブル18の他端側に連結されたフードロック装置13によるボンネットフード12のロックを解除する。
【0025】
上記のようにケーブル18が装着された状態のフードリリースレバー17のベース部22の係合部31を、その突出方向(ベース部22の長さ方向の上記した他端側から一端側への方向)を進行方向として移動させて、図3に示すように、インストルメントパネル16の取付部21の係合板部50の裏側に挿入させると、係合部31と取付板部25との間にインストルメントパネル16の係合板部50が介在させられることになり、係合部31の基端側に係合板部50の縁部が当接することになって係合部31と係合板部50とが係合する。この状態では係合方向とは逆方向に移動させない限り係合部31が係合板部50から外れることはなく、フードリリースレバー17が、係合部31によってインストルメントパネル16の取付部21に仮止めされる。
【0026】
この仮止め状態でベース部22の締結部32の取付穴33がインストルメントパネル16の取付部21の取付穴51と位置が合うことになる。ここで、レバー部23をベース部22に近接させた状態では、レバー部23で取付穴33が覆われているため、図5に示すように、レバー部23を連結ピン40を中心に回動させて、取付穴33を含む締結部32を露出させるとともに締結ボルト53および図示略の締結工具の挿入経路を確保する。このとき、ベース部22における一端側のレバー部23の軸支位置よりも他端側に形成された係合部31が取付部21に対し他端側から一端側への方向に係合しているため、レバー部23を引くことによりベース部22に生じる力の方向と係合部31の取付部21への係合方向とが合うことになり、レバー部23を引いても係合部31の仮止め状態を確実に維持することができる。
【0027】
そして、締結ボルト53を、図3に示すように、露出したベース部22の取付穴33と取付部21の取付穴51とに挿通させた後、図示略の締結工具を用いて取付部21の裏側に固定されたウェルドナット54に螺合させると、締結ボルト53がベース部22の締結部32を取付部21とで挟持することになり、ベース部22つまりフードリリースレバー17がインストルメントパネル16の取付部21に取り付けられる。このとき、右回転で締結される締結ボルト53の回転によってベース部22には締結ボルト53を中心とした右回りの力が生じることになるが、このベース部22に生じる力の方向と係合部31の取付部21への係合方向とが合うことになり、係合部31を確実に仮止め状態に維持したままベース部22つまりフードリリースレバー17をインストルメントパネル16の取付部21に取り付けることができる。つまり、係合部31が締結ボルト53の螺合時におけるフードリリースレバー17の回り止めを行うことになり一カ所の締結部32での締結としてもフードリリースレバー17の位置精度を確保できることになる。
【0028】
以上に述べた本実施形態によれば、レバー部23を軸支するベース部22をその係合部31において車体側の取付部21に仮止めし、この状態で、ベース部22の締結部32において取付部21へ締結することができ、一カ所の締結でも精度良くベース部22を取り付けることができる。よって、締結が一カ所で済むため、締結強度のバラツキによる影響を排除できるとともに部品点数および取付工数を低減できる。また、ベース部22を係合部31において取付部21に仮止めすることによって、レバー部23を回動させた状態でベース部22の締結部32を取付部21へ締結することが容易にできる。よって、締結部32をベース部22のレバー部23の範囲に設けることができ、レバー部23の範囲外に設ける場合に比してベース部22を小型化することができる。
【0029】
加えて、係合部31がベース部22の一側部に一体的に形成され、締結部32がベース部22の逆側部に一体的に形成されているため、締結部32の締結時におけるベース部22のぐらつきを防止できる。
【0030】
さらに、ベース部22における一端側のレバー部23の軸支位置よりも他端側に形成された係合部31が取付部21に対し他端側から一端側への方向に係合するため、レバー部23を引くことによりベース部22に生じる力の方向と係合部31の係合方向とが合うことになり、レバー部23を引いても係合部31の仮止め状態を確実に維持することができる。
【0031】
加えて、係合部31および締結部32を結ぶ方向におけるベース部22の両側部間の幅が、レバー部23のこの方向の幅以下とされているため、幅方向においてレバー部23でベース部22を覆うことができ、見栄えが良くなる。
【0032】
なお、以上においては、ボンネットフード12のフードロック装置13用のフードリリースレバー17を例にとり説明したが、トランクリッド等、他の種々の車両用のフードのフードロック装置用のフードリリースレバーに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態のフードリリースレバー取付構造が適用された車両の車体前部を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態のフードリリースレバー取付構造が適用された車両のインストルメントパネルを示す部分正面図である。
【図3】本発明の一実施形態のフードリリースレバー取付構造を示す側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態のフードリリースレバー取付構造におけるフードリリースレバーの一状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態のフードリリースレバー取付構造におけるフードリリースレバーの別の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態のフードリリースレバー取付構造におけるフードリリースレバーのレバー部とベース部との位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
13 フードロック装置
17 フードリリースレバー
18 ケーブル
21 取付部
22 ベース部
23 レバー部
31 係合部
32 締結部
44 ケーブルアウタ
45 ケーブルインナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフードロック装置のロックをケーブルを介して解除するフードリリースレバーの取付構造であって、
車体側の取付部に取り付けられるとともに前記ケーブルのケーブルアウタを係止するベース部と、
該ベース部に回動可能に軸支されるとともに前記ケーブルのケーブルインナを係止するレバー部とを備え、
前記ベース部が、前記取付部への仮止め用の係合部と、前記取付部への締結用の締結部とを有することを特徴とするフードリリースレバー取付構造。
【請求項2】
前記係合部が前記ベース部の一側部に一体的に形成され、前記締結部が前記ベース部の逆側部に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載のフードリリースレバー取付構造。
【請求項3】
前記ベース部における一端側に前記レバー部が軸支されており、前記係合部は前記ベース部における前記レバー部の軸支位置よりも他端側に形成されていて、前記係合部が前記取付部に対し前記他端側から前記一端側への方向に係合することを特徴とする請求項1または2記載のフードリリースレバー取付構造。
【請求項4】
前記係合部および前記締結部を結ぶ方向における前記ベース部の両側部間の幅が、前記レバー部の該方向の幅以下とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のフードリリースレバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−63542(P2006−63542A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244264(P2004−244264)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】