説明

ブラケットおよび線材の設置方法

【課題】外壁のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱を有するものの外側に線材を設置する場合において、その外壁の外側に足場を築く必要性を低下させる。
【解決手段】ブラケット20は、支柱に取付けられる。ブラケット20は、一対の鉤形材40,42と、ボルト44と、ナット46と、支持部30とを備える。一対の鉤形材40,42は、支柱の少なくとも一部を取り囲み得るよう配置される。ボルト44は、一対の鉤形材40,42を貫通する。ナット46は、ボルト44にねじ込まれる。支持部30は、鉤形材40の一端に設けられる。支持部30は、線材を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラケットおよび線材の設置方法に関し、さらに詳しくは、外壁のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱を有するものの外側に線材を設置する場合において、その外壁の外側に足場を築く必要性を低下させる、ブラケットおよび線材の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の壁面を緑化するために地面にかずらなどのつる性植物類を植えて外壁を植物で覆う方法が、昔から行われている。この方法には、植物に覆われていない箇所が生じやすいという問題点があった。これは、植物の生長方向が一様でないことに原因がある。そこで、壁面と所定の間隔を開けて線材を取付け、その線材に沿って植物を成長させることで壁面を緑化させるという手法が実用化されている。
【0003】
特許文献1は壁面と所定の間隔を開けて線材を取付けるための支持具を開示する。この支持具は、壁面から所定の間隔で突出する突出部材と、突出部材の先端に取付けられた押さえ部材とを備える。突出部材と押さえ部材とには、相対向する受け面と押さえ面とがそれぞれ形成される。線材が、受け面の一側端から他側端にわたって当った状態で、この受け面と押さえ面とによって挟持されている。
【0004】
特許文献1に開示された支持具によると、施工誤差による位置ずれを吸収でき、かつ、取付けられた線材を位置ずれし難くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−120161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された支持具では、建築構造物の外壁に足場を構築しなければならないという問題点がある。特許文献1に開示された支持具を取付けるためには、受け面と押さえ面との間に線材を入れた後、取付けボルトをねじ込むことによって受け面と押さえ面とで線材を強く挟まなくてはならない。この取付けボルトをねじ込む作業のために、建築構造物の外壁へ足場を構築する必要がある。
【0007】
しかも、特許文献1に開示された支持具では、壁面に予めアンカーボルトを突出させておかなくてはならない。壁面にアンカーボルトを予め取付けるためには、外壁の外側に足場を設けることが欠かせない。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、外壁のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱を有するものの外側に線材を設置する場合において、その外壁の外側に足場を築く必要性を低下させる、ブラケットおよび線材の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図面を参照して本発明のブラケットおよび線材の設置方法を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、ブラケット20は、支柱210に取付けられる。ブラケット20は、一対の鉤形材40,42と、ボルト44と、ナット46と、支持部30とを備える。一対の鉤形材40,42は、支柱210の少なくとも一部を取り囲み得るよう配置される。ボルト44は、一対の鉤形材40,42を貫通する。ナット46は、ボルト44にねじ込まれる。支持部30は、鉤形材40の一端に設けられる。支持部30は、線材252を支持する。
【0011】
ナット46をボルト44にねじ込むと、一対の鉤形材40,42は支柱210を把持することとなる。一対の鉤形材40,42が支柱210を把持することで、ブラケット20全体が支柱210に取付けられることとなる。これにより、ナット46をボルト44にねじ込むと、支持部30が支柱210へ固定されることとなる。外壁のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱210を有するものの場合、このような作用でブラケット20が支柱210に取付けられるのであれば、外壁の内側に立つ作業者がブラケット20を支柱210に取付けられる。
【0012】
その結果、本発明にかかるブラケット20は、外壁200のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱210を有するものの外側に線材252を設置する場合において、その外壁200の外側に足場を築く必要性を低下させる。
【0013】
また、上述した支持部30が、溝部50,51と、溝対向部52とを有していることが望ましい。溝部50,51は、線材252が嵌まる。溝対向部52は、線材252が通過可能な隙間110をあけて溝部50,51の口に対向する。
【0014】
支持部30が線材252を支える。その際、線材252は、溝対向部52と溝部50,51との隙間110を経て、溝部50,51に嵌まる。溝対向部52によって線材252の移動が妨げられるので、一度溝部50,51に嵌まった線材252は、支持部30から脱落しにくくなる。つまり、溝対向部52と溝部50,51との隙間110を線材252に通過させて溝部50,51に嵌めると線材252は支持部30に嵌まるが、一度嵌まった線材252は支持部30から外れ難い。
【0015】
もしくは、上述した支持部30が、線材脱落防止部54をさらに有することが望ましい。線材脱落防止部54は、溝部50,51から見て鉤形材40,42とは反対側に配置される。線材脱落防止部54は、溝対向部52と溝部50,51との隙間110に対向する。
【0016】
支持部30が線材脱落防止部54をさらに有するとき、線材脱落防止部54がない場合に比べ、一度溝部50,51に嵌まった線材252は、支持部30から外れ難くなる。
【0017】
また、上述したブラケット20が、遮蔽部材34をさらに備えることが望ましい。遮蔽部材34は、溝部50,51に線材252が嵌まっているとき溝対向部52と溝部50,51との隙間110を遮る。遮蔽部材34が、回転部60と、張出部62とを有する。回転部60は、溝部50,51から見て鉤形材40,42側にある軸100を回転中心として回転可能である。回転部60は、線材252の上に載せられる。張出部62は、回転中心からの距離が溝部50,51よりも遠い位置で回転部60から回転部60の回転方向へ張出す。張出部62は、線材252が溝部50,51から外れて回転部60を押し上げたとき、溝部50,51と溝対向部52との隙間110を遮る。
【0018】
ブラケット20が遮蔽部材34を備えるとき、遮蔽部材34がない場合に比べ、一度溝部50,51に嵌まった線材252は、支持部30から外れ難くなる。遮蔽部材34が溝対向部52と溝部50,51との隙間110を遮るためである。
【0019】
線材252が回転部60を押し上げても、線材252の溝部50,51と溝対向部52との隙間110における移動は、張出部62によって抑えられる。線材252の回転部60を押し上げる方向の動きは溝対向部52によって抑えられる。これにより、線材252の動きはごく限られた範囲に抑えられる。線材252の動きがごく限られた範囲に抑えられるので、遮蔽部材34が回転部60と張出部62とを有するものでない場合に比べ、線材252は支持部30から外れ難くなる。
【0020】
本発明の他の局面に従うと、線材の設置方法は、ブラケット取付け工程と、支持工程とを備える。ブラケット取付け工程は、複数の支柱210それぞれにブラケット20を取付ける工程である。支持工程は、ブラケット20に線材252を支持させる工程である。ブラケット20は、一対の鉤形材40,42と、ボルト44と、ナット46と、支持部30とを備える。一対の鉤形材40,42は、支柱210の少なくとも一部を取り囲み得るよう配置される。ボルト44は、一対の鉤形材40,42を貫通する。ナット46は、ボルト44にねじ込まれる。支持部30は、鉤形材40の一端に設けられる。支持部30は、線材252を支持する。
【0021】
ブラケット取付け工程において、ナット46をボルト44にねじ込むと、一対の鉤形材40,42は支柱210を把持することとなる。一対の鉤形材40,42が支柱210を把持することで、ブラケット20全体が支柱210に取付けられることとなる。これにより、ナット46をボルト44にねじ込むと、支持部30が支柱210へ固定されることとなる。外壁のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱210を有するものの場合、このような作用でブラケット20が支柱210に取付けられるのであれば、外壁の内側に立つ作業者がブラケット20を支柱210に取付けられる。
【0022】
その結果、本発明にかかる線材の設置方法によれば、外壁200のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱210を有するものの外側に線材252を設置する場合において、その外壁200の外側に足場を築く必要性を低下させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるブラケットおよび線材の設置方法によれば、外壁のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱を有するものの外側に線材を設置する場合において、その外壁の外側に足場を築く必要性を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例にかかるブラケットの斜視図である。
【図2】作業面の傍に複数の支柱を設置した状況を示す図である。
【図3】本発明の実施例にかかるブラケットを支柱に差込む工程を示す図である。
【図4】本発明の実施例にかかるブラケットが支柱に取付けられた状況を示す図である。
【図5】本発明の実施例にかかるブラケットにフェンスを支持させる工程を示す概念図である。
【図6】本発明の実施例にかかるブラケットの溝部の一方に水平線材が嵌まった状況を示す図である。
【図7】本発明の実施例にかかるブラケットの溝部に水平線材が嵌まったときの支柱とブラケットとフェンスとを示す図である。
【図8】本発明の実施例にかかるブラケットに新たなフェンスを支持させる工程を示す概念図である。
【図9】本発明の実施例にかかるブラケットの溝部の双方に水平線材が嵌まった状況を示す図である。
【図10】本発明の実施例にかかる遮蔽部材を水平線材に載せる工程を示す図である。
【図11】本発明の実施例にかかる遮蔽部材が水平線材の上に載った状況を示す平面図である。
【図12】フェンスの設置作業が完了した状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施例にかかるブラケット20を示している。図1を参照しつつ、本実施例にかかるブラケット20の全体の構造を説明する。
【0026】
本実施例にかかるブラケット20は、支柱210と外壁部材212とを備える建築構造物(図示せず)の外壁200のうち、支柱210に取付けられるものである。本実施例の場合、ブラケット20が対象とする支柱210は、高さ100mmで幅100mmのH鋼である。本実施例にかかるブラケット20は、支持部30と、把持部32と、遮蔽部材34とを備える。
【0027】
支持部30は、建築構造物の外壁200から張出すように配置される。支持部30は、後述する水平線材252を支持する。把持部32は、次に述べるような機構によって支柱210であるH鋼のフランジを把持する。これにより、把持部32は支持部30を外壁200に固定する。遮蔽部材34は、その水平線材252が外れないよう支持部30の溝前隙間110を遮る。溝前隙間110については後述する。
【0028】
把持部32の構成と把持部32が支柱210であるH鋼のフランジを把持するための機構とについて説明する。把持部32は、第1鉤形材40と、第2鉤形材42と、ボルト44と、ナット46とを有する。第1鉤形材40と第2鉤形材42とは、支柱210として直立しているH鋼のフランジ(本実施例におけるブラケット20の取付箇所)を取り囲むように配置されている。
【0029】
第1鉤形材40の一端とボルト貫通部120(本実施例では、第2鉤形材42の一端を「ボルト貫通部」と称する)とに図示しない孔が開いている。それらの孔をボルト44が貫通している。ナット46はボルト44にねじ込まれている。よってボルト44とナット46とを締め付けることで、第1鉤形材40と第2鉤形材42とが互いに引き寄せられる。これにより、把持部32は支柱210のフランジをしっかりと把持することとなる。
【0030】
支持部30について説明する。支持部30は、第1鉤形材40のボルト44が貫通する側の端部に設けられている。支持部30は、そこから張出している。支持部30は、第1溝部50と、第2溝部51と、溝対向部52と、線材脱落防止部54とを有する。第1溝部50および第2溝部51それぞれに、水平線材252が1本ずつ嵌る。本実施例においては、第1溝部50と第2溝部51とは平行に並ぶ。第1溝部50は第2溝部51よりも把持部32に近い。第2溝部51は第1溝部50よりも支持部30の先端に近い。溝対向部52は、第1溝部50および第2溝部51に溝前隙間110をあけて対向する。本実施例において溝前隙間110は水平線材252が通過可能な幅の隙間である。線材脱落防止部54は、第1溝部50および第2溝部51から見て支持部30の先端側すなわち建築構造物の外壁200とは反対側に配置される。線材脱落防止部54は、溝前隙間110に対向する。線材脱落防止部54は入口隙間112をあけて溝対向部52にも対向する。本実施例において、入口隙間112は、水平線材252が通過可能な幅の隙間である。
【0031】
図1から明らかなように、溝前隙間110と入口隙間112とはつながっている。水平線材252は、入口隙間112から溝前隙間110に移動することができる。
【0032】
遮蔽部材34について説明する。遮蔽部材34は、回転部60と、張出部62とを有する。回転部60は、第1鉤形材40の支持部30が設けられている側の一端とボルト貫通部120との間に配置される。これにより、回転部60は、支持部30と隣り合うこととなる。回転部60には図示しない孔が設けられている。この孔を上述したボルト44が貫通する。このため、回転部60は、そのボルト44の中心軸100を回転中心として回転可能である。図1より明らかなように、この中心軸100は、支持部30の第1溝部50および第2溝部51から見て把持部32側にある。図1に示した二点鎖線線より明らかなように、回転部60は、第1溝部50と第2溝部51とのうち少なくとも一方に水平線材252が嵌まった後、それらの水平線材252の上に載せられることとなる。張出部62は、回転部60から張出している。張出部62が張出す方向は、回転部60の回転方向である。張出部62の張出位置は、中心軸100からの距離が第2溝部51よりも遠い位置である。すなわち、張出部62は、第2溝部51よりも支持部30の先端側で張出す。張出部62は、水平線材252が第1溝部50あるいは第2溝部51から外れて回転部60を押し上げたとき、溝前隙間110を遮る。張出部62は、回転部60と共に回転可能である。
【0033】
次に、図2ないし図12を参照しつつ、ブラケット20を建築構造物の外壁200に取付け、そのブラケット20に後述するフェンス250ごと水平線材252を支持させるための手順を説明する。
【0034】
本実施例にかかるブラケット20は、支柱210が設置された段階でその支柱210に取付けられる。図2は、作業面202(たとえば躯体の床面や足場)の傍に複数の支柱210を設置した状況を示す図である。本実施例の場合、支柱210は等間隔に設置されている(支柱210が等間隔に設置されていることはあくまで本実施例の場合の話であって、支柱210が等間隔に設置されていなくとも良いことは言うまでもない)。このとき、外壁部材212はまだ設置されていない。
【0035】
支柱210が設置されると、ブラケット20のナット46を緩めた上で、図3に示すように、ブラケット20の把持部32を支柱210に差し込む。ブラケット20の把持部32が支柱210に差し込まれると、ブラケット20のナット46を締める。これにより、ブラケット20の把持部32が支柱210のフランジをしっかりと把持することとなる。本実施例の場合、ブラケット20は、後述するフェンス250の上部付近にあたる位置と下部付近にあたる位置とに設置される。図4は、ブラケット20が支柱210に取付けられた状況を示す図である。
【0036】
支柱210 にブラケット20が取付けられると、作業員が手で持つなどして、フェンス250をブラケット20に支持させる。その際、作業面202に立つ作業員は、フェンス250をいったん支柱210よりも躯体の外側に出してから、そのフェンス250をブラケット20に支持させる。図5は、この工程を示す概念図である。
【0037】
ここで、フェンス250の構成を説明する。本実施例にかかるフェンス250は、水平線材252と、垂直線材254とからなる。本実施例の場合、水平線材252と垂直線材254とを格子状に組み合わせて水平線材252と垂直線材254とをそれらの交点で一体化したものがフェンス250である。ブラケット20は、水平線材252を支持することにより、フェンス250全体を支持することとなる。ちなみに、言うまでもないことではあるが、フェンス250の設置にあたり、水平線材252が完全に水平となるよう管理する必要性はない。垂直線材254が完全に垂直となるよう管理する必要性はない。
【0038】
ここで、水平線材252ひいてはフェンス250を支持するための具体的な手順を説明する。準備として、まず、ブラケット20の遮蔽部材34を、すべて、図1に実線で示すように立ちあげる。準備が整うと、フェンス250をブラケット20に近づける。フェンス250がブラケット20に近づくと、フェンス250の水平線材252に入口隙間112を通過させる。引き続き、水平線材252を溝前隙間110の奥へ移動させる。水平線材252が溝前隙間110の奥に移動すると、フェンス250を下降させる。これにより、フェンス250を構成する水平線材252は第1溝部50に嵌まる。図6は、水平線材252が第1溝部50に嵌まった状況を示す図である。図7は、このときの支柱210とブラケット20とフェンス250とを示す図である。
【0039】
水平線材252が第1溝部50に嵌まると、新たなフェンス250をブラケット20に支持させる。その際、作業面202に立つ作業員は、フェンス250をいったん支柱210よりも躯体の外側に出してから、そのフェンス250をブラケット20に支持させる。図8は、この工程を示す概念図である。新たなフェンス250をブラケット20に支持させるための具体的な手順は、上述したものと同様なので、ここではその詳細な説明を繰り返さない。ただし、図8から明らかなように、新たなフェンス250の一方の端部は、すでに別のフェンス250を支持しているブラケット20によって支持されることとなる。このため、新たなフェンス250の水平線材252は、第2溝部51に嵌め込まれる。図9は、第1溝部50および第2溝部51の双方に水平線材252が嵌まっている状況を示す図である。
【0040】
新たなフェンス250の水平線材252が第2溝部51に嵌まると、作業者は、ブラケット20の遮蔽部材34を、支持部30の先端側へ、図10に示したように倒す。これにより、遮蔽部材34が水平線材252の上に載る。これと同時に溝前隙間110が遮蔽部材34によって遮られる。図11は、遮蔽部材34が水平線材252の上に載った状況を示す平面図である。この状態においては、何かの拍子にフェンス250が浮き上がり、遮蔽部材34を押し上げても、遮蔽部材34の張出部62が溝前隙間110の端を遮る。このため、フェンス250の水平線材252が第1溝部50あるいは第2溝部51から浮き上がったとしても、水平線材252が入口隙間112へ移動する可能性はきわめて低い。
【0041】
ブラケット20の遮蔽部材34をすべて倒すと、水平線材252の設置作業ひいてはフェンス250の設置作業は完了である。図12は、フェンス250の設置作業が完了した状況を示す。この後、支柱210の間に周知の方法で外壁部材212を設けると建築構造物の外壁200が完成する。
【0042】
次に本実施例にかかるブラケット20とこれを用いた水平線材252の設置方法とが奏する効果を説明する。本実施例にかかるブラケット20を用いることにより、外壁200のうち作業者が両手を裏へ回すことができるような細い支柱210を有するものの外側に線材252を設置する場合において、その外壁200の外側に足場を築く必要性を低下させることができる。また、本実施例にかかるブラケット20を用いることにより、水平線材252を外れ難いよう設置することが容易となる。また、本実施例にかかる水平線材252の設置方法を用いることにより、作業の迅速性を向上させることができる。作業の迅速性を向上させることができるのは、水平線材252がブラケット20から外れて作業のやり直しが生じる可能性が低いことによる。作業のやり直しが生じる可能性が低いのは、フェンス250の水平線材252が第1溝部50あるいは第2溝部51から浮き上がったとしても、水平線材252が入口隙間112へ移動する可能性は低いためである。また、本実施例にかかる水平線材252の設置方法を用いると、支柱210に穴をあけて取付けるタイプのブラケットを用いる場合や支柱210に溶接することで取付けるタイプのブラケットを用いる場合に比べ、作業の迅速性を大幅に向上させることができる。これは、本実施例にかかるブラケット20を支柱210に取付ける作業そのものが、支柱210に穴をあけてブラケットを取付けるという作業や、溶接によってブラケットを支柱210に取付けるという作業に比べ、迅速に完了するためである。
【0043】
本実施例にかかるブラケットおよび線材の設置方法は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部材の形状や構造、配置などをこの実施形態のものに限定するものではなく、種々の変更を加え得るものである。以下、本実施例にかかるブラケットおよび線材の設置方法の変形例について説明する。
【0044】
遮蔽部材34は取付けられていなくてもよい。把持部32はボルト44とナット46とを用いてH鋼製の支柱210を把持するものに限定されない。
【0045】
本発明にかかるブラケットが支持可能な線材の直径は特に限定されるものではない。それは1〜2mmの細いものであってもよいし、5mmをゆうに超える太いものであってもよい。もちろん、それは3〜5mm程度のものであってもよい。
【0046】
上述した実施例では、支持部30は、第1鉤形材40と一体となっている。しかしながら、支持部30と第1鉤形材40とが一体である必要はない。
【符号の説明】
【0047】
20 ブラケット
30 支持部
32 把持部
34 遮蔽部材
40 第1鉤形材
42 第2鉤形材
44 ボルト
46 ナット
50 第1溝部
51 第2溝部
52 溝対向部
54 線材脱落防止部
60 回転部
62 張出部
100 中心軸
110 溝前隙間
112 入口隙間
120 ボルト貫通部
200 外壁
202 作業面
210 支柱
212 外壁部材
250 フェンス
252 水平線材
254 垂直線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に取付けられるブラケットであって、
前記支柱の少なくとも一部を取り囲み得るよう配置される一対の鉤形材と、
前記一対の鉤形材を貫通するボルトと、
前記ボルトにねじ込まれるナットと、
前記鉤形材の一端に設けられ、線材を支持する支持部とを備えていることを特徴とする、ブラケット。
【請求項2】
前記支持部が、
前記線材が嵌まる溝部と、
前記線材が通過可能な隙間をあけて前記溝部の口に対向する溝対向部とを有していることを特徴とする、請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
前記支持部が、前記溝部から見て前記鉤形材とは反対側に配置され、前記溝対向部と前記溝部との前記隙間に対向するよう配置される、線材脱落防止部をさらに有していることを特徴とする、請求項2に記載のブラケット。
【請求項4】
前記ブラケットが、前記溝部に前記線材が嵌まっているとき前記溝対向部と前記溝部との前記隙間を遮る遮蔽部材をさらに備え、
前記遮蔽部材が、
前記溝部から見て前記鉤形材側にある軸を回転中心として回転可能であり、かつ、前記線材の上に載せられる回転部と、
前記回転中心からの距離が前記溝部よりも遠い位置で前記回転部から前記回転部の回転方向へ張出し、前記線材が前記溝部から外れて前記回転部を押し上げたとき、前記溝部と前記溝対向部との前記隙間を遮る、張出部とを有していることを特徴とする、請求項1に記載のブラケット。
【請求項5】
複数の支柱それぞれにブラケットを取付けるブラケット取付け工程と、
前記ブラケットに線材を支持させる支持工程とを備える、線材の設置方法であって、
前記ブラケットが、
前記支柱の少なくとも一部を取り囲み得るよう配置される一対の鉤形材と、
前記一対の鉤形材を貫通するボルトと、
前記ボルトにねじ込まれるナットと、
前記鉤形材の一端に設けられ、線材を支持する支持部とを備えていることを特徴とする、線材の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−163076(P2011−163076A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30035(P2010−30035)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(399081718)ダイト工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】