説明

ブラシレスDCモータの駆動装置と駆動方法

【課題】磁極検出用のホール素子を備えたブラシレスDCモータにおいて、ブラシレスDCモータを円滑に起動する駆動装置を提供すること。
【解決手段】ブラシレスDCモータ21の起動時は、周期算出部45が速度設定部41に設定した起動時の速度指令値Vsに基づいて電気角60度の周期Tsを算出し、その周期Ts毎に相切替信号発生部24の相切替信号によってインバータ22を切り替える。電圧設定部44には、起動時に必要な起動トルクを発生できる電圧指令値を設定してあり、PWM信号発生部25は、その電圧指令値に対応するPWM信号を発生して相切替信号発生部24へ送る。ブラシレスDCモータ21が所定の回転速度に達すると、スイッチSW1,SW2がa側へ切り替わり、PID43による速度制御に変わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、磁極検出センサにホール素子を用いたブラシレスDCモータの駆動装置と駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスDCモータは、一般に所定の励磁パターンの相切替信号を形成し、その相切替信号によりインバータをスイッチングし、3相コイルに順次励磁電流を供給して回転磁界を発生し、永久磁石からなる回転子がその回転磁界に追従して回転するように構成されている。そして相切替信号を形成する励磁パターンは、ホール素子(磁極検出センサ)の磁極検出信号を用いて形成する。その際励磁パターンは、ブラシレスDCモータが定常駆動状態にあるときはホール素子の磁極検出信号を用いて形成し、起動時にはホール素子の磁極検出信号を用いないで形成する駆動装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、ブラシレスDCモータの起動時にはホール素子の磁極検出信号を用いないで励磁パターンを形成するブラシレスDCモータの駆動装置のブロック図を示す。
図5において、11は、永久磁石の回転子R、3相コイルU,V,WからなるブラシレスDCモータ、12は、回転子Rの磁極(N,S)を検出する1個のホール素子(磁極検出センサ)である。13は、ホール素子12の出力に基づいて磁極検出信号を形成する磁極検出信号形成回路、14は、磁極検出信号の周期を測定するタイマー回路である。151は、静止している回転子Rを始動させるための励磁パターン(始動励磁パターン)を形成する始動励磁パターン形成回路、152は、定常駆動時の励磁パターンを形成する励磁パターン形成回路、16は、始動励磁パターン形成回路151又は励磁パターン形成回路152の励磁パターンを選択する励磁パターン選択回路である。17は、インバータ等からなる駆動回路である。
【0004】
駆動回路17は、始動励磁パターン形成回路151又は励磁パターン形成回路152の励磁パターンにしたがって相切替信号を形成し、その相切替信号によりインバータのスイッチングを制御して、ブラシレスDCモータ11の3相コイルU,V,Wへ励磁電流を順次供給する。
励磁パターン形成回路152は、磁極検出信号を用いて励磁パターンを形成するが、始動励磁パターン形成回路151は、磁極検出信号を用いないで始動励磁パターンを形成する。
【0005】
【特許文献1】特開平9−163787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のブラシレスDCモータの駆動装置は、ホール素子の磁極検出信号を用いないで起動時の始動励磁パターンを如何に作成するのか明らかでない。また起動時の電気角初期値を如何に取り込む(設定する)のか明らかでない。そのため、従来のブラシレスDCモータの駆動装置は、起動時に電気角で最大180度逆転することがあり、ブラシレスDCモータを円滑に起動し、円滑に回転速度を上昇させることが難しい。
本願発明は、この点に鑑み、ブラシレスDCモータを円滑に起動し、回転速度を円滑に上昇させることができるブラシレスDCモータの起動装置と起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載のブラシレスDCモータの駆動装置は、永久磁石の回転子と3相コイルからなり、回転子の磁極を検出する3個のホール素子を備えたブラシレスDCモータの駆動装置において、
3個のホール素子の出力により磁極検出信号を発生する磁極検出信号発生部、
磁極検出信号により電気角を判定する電気角判定部、
起動時の速度指令値により電気角60度の周期を算出する周期算出部、
周期算出部の周期と電気角判定部の電気角初期値によりその電気角初期値を基準に電気角を60度ずつ更新して更新した電気角の周期に対応する回転子位置設定信号を発生する回転子位置設定部、
起動時の電圧指令値を設定する電圧設定部、
定常時速度制御部、
起動時の電圧指令値又は定常時速度制御部の速度制御信号に対応するPWM信号を発生するPWM信号発生部、
回転子位置設定信号又は定常時の磁極検出信号とPWM信号とにより相切替信号を発生する相切替信号発生部、
相切替信号により駆動して3相コイルに励磁電流を供給する相切替部を備えていることを特徴とする。
請求項2に記載のブラシレスDCモータの駆動装置は、請求項1に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記起動時の電圧指令値と前記速度制御信号の切替スイッチ、前記回転子位置設定信号と前記定常時の磁極検出信号の切替スイッチ、及びそれらのスイッチを駆動するスイッチ駆動部を備えていることを特徴とする。
請求項3に記載のブラシレスDCモータの駆動装置は、請求項2に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記スイッチ駆動部は、ブラシレスDCモータの起動時には前記スイッチを前記起動時の電圧指令値側及び前記回転子位置設定信号側へ切り替えることを特徴とする。
請求項4に記載のブラシレスDCモータの駆動装置は、請求項2に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記スイッチ駆動部は、ブラシレスDCモータの回転速度が所定の速度より大きくなると前記スイッチを前記速度制御信号側及び前記定常時の磁極検出信号側へ切り替えることを特徴とする。
請求項5に記載のブラシレスDCモータの駆動装置は、請求項2に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記スイッチ駆動部は、ブラシレスDCモータの回転速度が所定の速度より小さくなると前記スイッチを前記起動時の電圧指令値側及び前記回転子位置設定信号側へ切り替えることを特徴とする。
請求項6に記載のブラシレスDCモータの駆動方法は、永久磁石の回転子と3相コイルからなり、回転子の磁極を検出するホール素子を備えたブラシレスDCモータの駆動方法において、
3個のホール素子の出力により発生する磁極検出信号により電気角初期値を判別し、
起動時の速度指令値を用いて電気角60度の周期を算出し、
前記周期と前記電気角初期値によりその電気角初期値を基準に電気角を60度ずつ更新して更新した電気角の周期に対応する回転子位置設定信号を発生し、
回転子位置設定信号と起動時の電圧指令値に対応するPWM信号とにより相切替信号を発生し、
相切替信号により相切替部を駆動して3相コイルに励磁電流を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、ブラシレスDCモータの加速度特性に基づいて起動時の速度指令値を設定し、その速度指令値に基づいて電気角60度の周期Tsを算出するとともに、3個のホール素子の出力により発生した磁極検出信号により電気角初期値を判定し、その電気角初期値を基準に周期Tsを更新し、更新した周期Ts毎に順次相切替信号を発生して3相コイルU,V,Wを励磁するから、回転子は、3相コイルU,V,Wの回転磁界に円滑に追従し、ブラシレスDCモータは、円滑に起動する。
【0009】
また本願発明は、起動時に用いる電圧設定部を設け、その電圧設定部の電圧指令値を用いて起動時の3相コイルU,V,Wの励磁電流を制御するから、ブラシレスDCモータは、起動時に大きな起動トルクを発生することができ、負荷が大きい場合或いは車椅子が坂道発進するような場合にも円滑に起動する。そして電圧設定部は、起動時のみ用いるから、定常駆動時に必要以上に大きな励磁電流を流すことがない。したがって無駄な消費電力をなくすことができる。
また本願発明は、減速時に起動時の速度指令値を逆に使用するのみで減速駆動することができるから、起動時と同じ装置を用いて円滑に減速駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図4により本願発明の実施例に係るブラシレスDCモータの駆動装置を説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例】
【0011】
図1は、本願発明の実施例に係るブラシレスDCモータの駆動装置の構成を示す。
21は、3相コイルと永久磁石の回転子からなるブラシレスDCモータ、22は、ブラシレスDCモータ21の3相コイルに励磁電流を順次供給する相切替部(インバータ)、23は、直流電源、24は、インバータ22を順次切り替える6種類の相切替信号Vu±,Vv±,Vw±を、所定の励磁パターン(ブラシレスDCモータのコイルを励磁するパターン)にしたがって発生する相切替信号発生部、25は、相切替信号発生部24へ供給するPWM(パルス幅変調)信号(矩形波)を発生するPWM信号発生部である。
31は、ブラシレスDCモータ21の回転子の磁極(N極,S極)を検出する3個のホール素子(ホールセンサ)、32は、ホール素子31の出力に基づいて磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswを発生する磁極検出信号発生部、33は、その磁極検出信号に基づいてモータの電気角(以下本願において電気角と呼ぶ)θを判定する電気角判定部、34は、磁極検出信号に基づいて回転子の回転速度を算出する速度算出部、35は、スイッチSW1,SW2を切り替えるスイッチ駆動部である。
【0012】
41は、ブラシレスDCモータ21の回転子の速度指令値(速度目標値)Vsを設定する速度設定部、42は、速度設定部41の速度指令値Vsと速度算出部34の算出した速度との速度偏差を算出する速度偏差算出部、43は、速度偏差に応じて速度制御を行なうPID(比例・積分・微分)、44は、電圧設定部、45は、速度設定部41の速度指令値Vsに基づいて電気角60度(後述する)の周期(時間長)Tsを算出する周期算出部、46は、電気角判定部33が判定した電気角初期値を基準にして電気角θを60度ずつ更新し(周期Tsも更新する)、更新した60度の周期Tsに対応する回転子位置設定信号Vpu,Vpv,Vpwを発生する回転子位置設定部である。
ここで速度設定部41、速度算出部34、速度偏差算出部42及びPID43は、定常駆動時の速度制御を行なうから、これらを総称して定常時速度制御部と呼ぶ。
【0013】
スイッチSW1,SW2は、起動時はb側に切り替わっているが、定常駆動時はa側へ切り替わる。そしてスイッチSW1,SW2がb側へ切り替わっているとき、相切替信号発生部24には回転子位置設定部46が接続され、PWM信号発生部25には電圧設定部44が接続され、a側へ切り替わっているとき、相切替信号発生部24には磁極検出信号発生部32が接続され、PWM信号発生部25にはPID43が接続されている(即ち定常時速度制御部が接続されている)。そこでスイッチSW1,SW2のa側を定常時側、b側を起動時・減速時側と呼ぶ。
またスイッチSW3は、始動スイッチで、ブラシレスDCモータ21を起動するときに操作すると(押すと)、閉じる。
【0014】
速度設定部41の速度指令値Vsは、ブラシレスDCモータ21の定常駆動時の速度指令値と起動時と減速時(停止時)の速度指令値がある。定常駆動時の速度指令値Vsは、ブラシレスDCモータ21が、例えば車椅子用の場合、車椅子のジョイステックの操作量に対応して設定される。また起動時・減速時の速度指令値Vsは、ブラシレスDCモータの起動時の加速度特性(回転速度の立上がり特性)、減速特性に基づいて事前に設定する。起動時のブラシレスDCモータ21は、停止状態から回転速度が徐々に速くなるから、起動時の速度指令値Vsは、時間の経過とともに、Vs1<Vs2<Vs3<・・・<Vsnとなるように速度設定部41に設定する。減速時の速度指令値Vsは、起動時の速度指令値Vsの逆の指令値を用いる。
なお起動時の速度指令値は、始動スイッチSW3を操作したとき自動的に選択されるように構成してもよい。
【0015】
周期算出部45は、速度指令値Vsに基づいて電気角60度の周期Tsを、Ts(秒)=60度/Vs(度/秒)により算出する。したがってブラシレスDCモータ21の起動時の周期Tsは、速度指令値Vs1<Vs2<Vs3<・・・<Vsnに対応して、Ts1>TS2>Ts3>・・・>Tsnとなり、時間とともに変化し、回転速度が速くなるにしたがって短くなる。
ここで電気角60度は、インバータ22を3相120度通電方式によって駆動する場合の相切替信号の発生間隔に相当する。
【0016】
電圧設定部44には、ブラシレスDCモータ21を起動するとき、円滑に起動し回転速度が円滑に立ち上がるように、所定の最大負荷に対して充分な起動トルクを発生できる電圧を設定する。その設定電圧は、例えばブラシレスDCモータ21が車椅子用の場合、車椅子の走行可能な最大荷重、坂道の最大傾斜角、加速度特性に基づいて設定する。
スイッチ駆動部35は、ブラシレスDCモータ21が起動して、その回転速度が所定の速度に達すると、スイッチSW1,SW2をb側(起動時・減速時側)からa側(定常時側)へ切り替える。即ち電圧設定部44側、回転子位置設定部46側から定常時速度制御部側、磁極信号発生部32側へ切替える。またブラシレスDCモータ21の減速時(停止時)、その回転速度が所定の速度よりも小さくなると、スイッチ駆動部35は、後述するようにスイッチSW1,SW2をa側からb側へ切り替える。
【0017】
次に図1のブラシレスDCモータの駆動装置の動作について説明する。
ブラシレスDCモータ21が停止しているとき、スイッチSW1,SW2は、b側に切り替わっている。そのとき始動スイッチSW3を操作すると、回転子位置設定部46は、電気角判定部33から回転子が停止しているときの電気角(電気角初期値)を取り込むとともに、周期算出部45から周期Tsを取り込む。周期Tsは、前記のようにTs1>TS2>Ts3>・・・>Tsnと変化する。
【0018】
その際電気角判定部33は、磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswを用いてブラシレスDCモータ21が停止しているときの電気角、即ち電気角初期値(回転子が停止しているときの磁極と3相コイルの位置関係)を判定する。回転子位置設定部46は、電気角判定部33の判定した電気角初期値を基準にして、電気角θを60度ずつ更新し、更新した60度の周期に対応する回転子位置設定信号Vpu,Vpv,Vpwを相切替信号発生部24へ送る。電気角θを60度ずつ更新すると更新した60度に相当する周期TsもTs1>TS2>Ts3>・・・>Tsnと更新する。したがって相切替信号発生部24は、PWM信号発生部25からPWM信号(矩形波)を取り込み、回転子位置設定信号Vpu,Vpv,Vpwにしたがって更新した周期Ts毎にPWM信号を用いて相切替信号Vu±,Vv±,Vw±を発生する。インバータ22は、相切替信号Vu±,Vv±,Vw±によって駆動し、その相切替信号により順次切り替わってブラシレスDCモータ21のコイルに励磁電流を供給する。その際PWM信号発生部25は、電圧設定部44の電圧指令値に対応するPWM信号を発生する。
【0019】
以上は、ブラシレスDCモータ21が起動するときの動作であるが、ブラシレスDCモータ21が減速(停止)するきも、回転子位置設定信号を用いて相切替信号発生部24を制御することができる。即ち減速時には、回転子位置設定部46は、速度設定部41に設定した減速時の速度指令値Vsに対応する回転子位置設定信号を発生する。減速時の速度指令値Vsは、起動時と逆で、Vs1>Vs2>Vs3>・・・>Vsnのように、時間とともに小さくなるように設定する。したがって周期Tsは、Ts1<TS2<Ts3<・・・<Tsnのように時間とともに大きくなる。速度指令値Vsをこのように設定することにより、ブラシレスDCモータ21は、滑らかに減速して停止する。
【0020】
ブラシレスDCモータ21が起動して所定の回転速度に達すると、スイッチ駆動部35は、速度算出部34からの信号によって動作し、スイッチSW1,SW2をa側へ切り替える。スイッチSW1,SW2がa側へ切り替わると、磁極検出信号発生部32から相切替信号発生部24へ磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswが送られる。以後相切替信号発生部24は、磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswに追従して電気角60度毎にPWM信号発生部25からのPWM信号を用いて相切替信号Vu±,Vv±,Vw±を発生する。
【0021】
一方速度偏差算出部42は、速度設定部41の定常駆動時の速度指令値Vsと速度算出部34が算出した速度との偏差(速度偏差)を算出してPID43へ送る。PID43は、その速度偏差に基づいて速度偏差に対応する大きさの速度制御信号を発生してPWM信号発生部25へ送り、PWM信号発生部25は、その速度制御信号に対応するPWM信号を発生する。なお速度設定部41における起動時の速度指令値から定常駆動時の速度指令値への切替えは、スイッチSW1,SW2の切替えに連動して行なうように構成してもよい。
またブラシレスDCモータの減速時には、ブラシレスDCモータの回転速度が所定の速度よりも小さくなると、スイッチ駆動部35は、速度算出部34からの信号によってスイッチSW1,SW2をa側からb側へ切り替え、その切替えに伴って速度設定部41の速度指令値Vsを、定常駆動時の速度指令値から減速時の速度指令値へ切替える。
【0022】
図1のブラシレスDCモータの駆動装置は、ブラシレスDCモータの加速度特性に基づいて起動時の速度指令値Vsを設定し、その速度指令値Vsに基づいて周期Tsを算出し、その周期Ts毎に順次相切替信号Vu±,Vv±,Vw±を発生するから、ブラシレスDCモータ21の回転子は、3相コイルに発生する回転磁界に円滑に追従する。またブラシレスDCモータ21は、起動時に電圧設定部44の電圧指令値に基づいて大きな起動トルクを発生するから、負荷が大きい場合、或いは車椅子が坂道発進するような場合にも円滑に起動する。そして電圧設定部44は、起動時のみ用いるから、定常駆動時に必要以上の励磁電流を流すことがない。したがって定常駆動時の無駄な消費電流を小さくすることができる。
【0023】
図2は、図1のブラシレスDCモータ21、インバータ22等の具体的構成例を示す。
ブラシレスDCモータ21は、3相コイルU,V,Wと4極(N,S,N,S)の回転子Rからなり、回転子の磁極を検出する3個のホール素子Su,Sv,Swを配置してある。磁極検出信号発生部32は、ホール素子Su,Sv,Swの出力に基づいて磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswを発生する。インバータ22は、6個のトランジスタからなり、夫々のトランジスタには、相切替信号発生部24から6種類の相切替信号Vu-,Vu+,・・・,Vw+が所定の励磁パターンにしたがって供給される。6個のトランジスタは、順次導通して直流電源23からコイルU,V,Wへ順次励磁電流を供給する。
【0024】
次に図3、図4により、図1、図2の120度通電方式に対応して発生する相切替信号の発生状況と発生パターン(励磁パターン)を説明する。
図3は、ブラシレスDCモータの起動時の相切替信号を示し、図4は、定常駆動時の相切替信号を示す。
【0025】
図3において、図3(a)は、回転子位置設定信号Vpu,Vpv,Vpwと相切替信号Vu+,Vu-,・・・,Vw-の発生状況を示すタイミングチャートを示し、図3(b)は、そのタイムチャートを表に整理した回転子位置設定信号の発生パターンと相切替信号の発生パターン(励磁パターン)を示す。
図3において、電気角θは、60度ずつ更新し、更新した夫々の60度の周期Tsは、Ts1,TS2,Ts3,・・・Tsnと更新する。なお図3は、Ts1〜Ts6のみ示してある。
電気角60度の周期Tsは、回転子位置設定信号Vpu,Vpv,Vpwで決まる。即ち電気角60度毎に周期Ts1,Ts2,Ts3,・・・Tsnが、回転子位置設定信号Vpu,Vpv,Vpwのタイミングで発生する。そして相切替信号Vu+,Vu-,・・・,Vw-は、周期Ts1,TS2,Ts3,・・・Tsn毎に切り替わり、各周期において2種類(例えば周期Ts1ではVu+とVv-)が同時に発生する。その発生パターン(励磁パターン)は、図3(b)のようになり、360度毎に同じパターンを繰り返す。
【0026】
次に図4について説明する。
図4(a)は、磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswとその磁極検出信号に基づいて発生する相切替信号Vu+,Vu-,・・・,Vw-の発生状況を示すタイムチャートを示し、図4(b)は、そのタイムチャートを表に整理した磁極検出信号の発生パターンと相切替信号の発生パターン(励磁パターン)を示す。
図4において、電気角θと周期Tは、図3と同様に60度ずつ更新する。
ブラシレスDCモータが起動状態から定常駆動状態に切り替わると、電気角60度の周期Tは、磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswによって決まる。即ち電気角60度毎に周期T1,T2,T3,・・・Tn(T1〜T6のみ図示)が、磁極検出信号Vsu,Vsv,Vswのタイミングで発生する。周期T1,T2,T3,・・・Tnにおける相切替信号号Vu+,Vu-,・・・,Vw-の発生パターン(励磁パターン)は、図3(b)と同じである。
なお周期T1,T2,T3,・・・Tnは、ブラシレスDCモータ21が定速度で回転しているときは、略同じになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の実施例に係るブラシレスDCモータの駆動装置の構成を示す。
【図2】図1のブラシレスDCモータ、インバータ等の具体的構成例を示す。
【図3】図1、図2の起動時の相切替信号の発生状況と発生パターン(励磁パターン)示す。
【図4】図1、図2の定常駆動時の磁極検出信号の発生状況と発生パターン、及び相切替信号の発生状況と発生パターン(励磁パターン)示す。
【図5】従来のブラシレスDCモータの駆動装置の構成を示す。
【符号の説明】
【0028】
21 ブラシレスDCモータ
22 相切替部(インバータ)
23 直流電源
24 相切替信号発生部
25 PWM信号発生部
31 ホール素子
32 磁極検出信号発生部
33 電気角判定部
34 速度算出部
35 スイッチ駆動部
41 速度設定部
42 速度偏差算出部
43 PID
44 電圧設定部
45 周期算出部
46 回転子位置設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石の回転子と3相コイルからなり、回転子の磁極を検出する3個のホール素子を備えたブラシレスDCモータの駆動装置において、
3個のホール素子の出力により磁極検出信号を発生する磁極検出信号発生部、
磁極検出信号により電気角を判定する電気角判定部、
起動時の速度指令値により電気角60度の周期を算出する周期算出部、
周期算出部の周期と電気角判定部の電気角初期値によりその電気角初期値を基準に電気角を60度ずつ更新して更新した電気角の周期に対応する回転子位置設定信号を発生する回転子位置設定部、
起動時の電圧指令値を設定する電圧設定部、
定常時速度制御部、
起動時の電圧指令値又は定常時速度制御部の速度制御信号に対応するPWM信号を発生するPWM信号発生部、
回転子位置設定信号又は定常時の磁極検出信号とPWM信号とにより相切替信号を発生する相切替信号発生部、
相切替信号により駆動して3相コイルに励磁電流を供給する相切替部を備えていることを特徴とするブラシレスDCモータの駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記起動時の電圧指令値と前記速度制御信号の切替スイッチ、前記回転子位置設定信号と前記定常時の磁極検出信号の切替スイッチ、及びそれらのスイッチを駆動するスイッチ駆動部を備えていることを特徴とするブラシレスDCモータの駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記スイッチ駆動部は、ブラシレスDCモータの起動時には前記スイッチを前記起動時の電圧指令値側及び前記回転子位置設定信号側へ切り替えることを特徴とするブラシレスDCモータの駆動装置。
【請求項4】
請求項2に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記スイッチ駆動部は、ブラシレスDCモータの回転速度が所定の速度より大きくなると前記スイッチを前記速度制御信号側及び前記定常時の磁極検出信号側へ切り替えることを特徴とするブラシレスDCモータの駆動装置。
【請求項5】
請求項2に記載のブラシレスDCモータの駆動装置において、前記スイッチ駆動部は、ブラシレスDCモータの回転速度が所定の速度より小さくなると前記スイッチを前記起動時の電圧指令値側及び前記回転子位置設定信号側へ切り替えることを特徴とするブラシレスDCモータの駆動装置。
【請求項6】
永久磁石の回転子と3相コイルからなり、回転子の磁極を検出するホール素子を備えたブラシレスDCモータの駆動方法において、
3個のホール素子の出力により発生する磁極検出信号により電気角初期値を判別し、
起動時の速度指令値を用いて電気角60度の周期を算出し、
前記周期と前記電気角初期値によりその電気角初期値を基準に電気角を60度ずつ更新して更新した電気角の周期に対応する回転子位置設定信号を発生し、
回転子位置設定信号と起動時の電圧指令値に対応するPWM信号とにより相切替信号を発生し、
相切替信号により相切替部を駆動して3相コイルに励磁電流を供給することを特徴とするブラシレスDCモータの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−306879(P2008−306879A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153431(P2007−153431)
【出願日】平成19年6月10日(2007.6.10)
【出願人】(592026473)株式会社昭和電業社 (6)
【Fターム(参考)】