説明

ブラックマトリックス用着色材及び該ブラックマトリックス用着色材を含有するブラックマトリックス用着色組成物並びにカラーフィルター

【課題】 本発明は、着色力及び漆黒性が高いとともに、ビヒクルへの分散性に優れ、高い電気抵抗値を有し、且つ、耐光性に優れたブラックマトリックス用着色材、該ブラックマトリックス用着色材を含むブラックマトリックス用着色組成物及びカラーフィルターを提供するものである。
【解決手段】 黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックにシリカが内包されていることを特徴とするブラックマトリックス用着色材で、該ブラックマトリックス用着色材の酸量が、0.3mol/kg以下であるブラックマトリックス用着色材、該ブラックマトリックス用着色材を溶剤に分散してなるブラックマトリックス用着色組成物及びカラーフィルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色力及び漆黒性が高いとともに、ビヒクルへの分散性に優れ、高い電気抵抗値を有し、且つ、耐光性に優れたブラックマトリックス用着色材、該ブラックマトリックス用着色材を含むブラックマトリックス用着色組成物及びカラーフィルターを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の情報化社会において、パーソナルコンピューターを始めとした各種情報機器がビジネス用、個人・家庭用を問わず普及しており、その端末には必ずディスプレイが組み込まれている。殊に、携帯型の情報機器は、軽量、省スペースが要求されることから、液晶表示素子(LCD)が用いられていると共に、カラー化が進んでいる。
【0003】
カラー液晶表示素子(LCD)は、ガラス基板上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色又はC(シアン)、Y(イエロー)、M(マゼンダ)の3原色を規則的に配列したカラーフィルター層と遮光用のブラックマトリックス層を形成することにより得られる。
【0004】
ブラックマトリックス層は、1)画素以外の部分でのバックライトの光を遮り、表示コントラストを向上する、2)隣接する各画素の混色を防止し、色純度の低下を防ぐ、3)光電流によるTFTの動作不全を防止する、4)表示面への背景光の映り込みによるコントラストの低下を防ぐ、等の目的のために設けられている。
【0005】
近年の液晶表示素子(LCD)の高画質化に伴い、ブラックマトリックス層にもより高性能化が求められており、上記目的を達成するために、高い遮光率、低反射率及びファインパターン性が要求されている。
【0006】
従来より、ブラックマトリックス材料として、クロム系材料を用いた金属薄膜が用いられていたが、近年、環境汚染等の問題から、カーボンブラックを樹脂中に配合した黒色樹脂膜が実用化されている。
【0007】
しかしながら、カーボンブラックを用いたブラックマトリックスは、反射率が低いという点では優れているが、一般にカーボンブラックは導電性を有しているため、これを用いたブラックマトリックスは、高抵抗であることが要求されるSTN方式やMIN方式の液晶パネルには適さない。
【0008】
また、カーボンブラックは一般に、微粒子であることに起因して、通常は凝集体として挙動するため、樹脂中に配合した場合、均一に分散させることが困難であり、遮光性が低下する傾向にあるため、優れた分散性を有するブラックマトリックス用着色材料が要求されている。
【0009】
これまでに、白色無機粒子の粒子表面が糊剤によって被覆されていると共に該被覆に有機顔料及び/又はカーボンブラックが付着している平均粒子径0.001〜1.0μmの複合粒子粉末からなり、前記有機顔料及び/又はカーボンブラックの全付着量が前記白色無機粒子100重量部に対して1〜500重量部であることを特徴とするブラックマトリックス用着色材料が提案されている(特許文献1)。
【0010】
また、カラーフィルター等の基板にブラックマトリックスを形成させる為の遮光性顔料含有着色組成物において、使用される遮光性顔料がカーボンブラック系顔料であって、その表面が、水和無定形シリカ、無水無定形シリカ、硬化重合体及び媒体に対して実質的に不溶性である重合体からなる群から選ばれた一種又は二種以上の被覆材料で表面処理されていることを特徴とするブラックマトリックス用着色組成物が提案されている(特許文献2)
【0011】
【特許文献1】特開2003−105226号公報
【特許文献2】特開平10−282311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
着色力及び漆黒性が高いとともに、ビヒクル中への分散性に優れ、高い電気抵抗値を有し、且つ、耐光性に優れたブラックマトリックス用着色材は、最も要求されるところである。
【0013】
即ち、特許文献1には、白色無機粒子の粒子表面に糊剤を介して黒色粒子が付着している複合粒子粉末をブラックマトリックス用着色材料として用いることが記載されているが、芯粒子が透明もしくは白色であるため、得られた複合粒子粉末の黒色度が十分ではなく、これを用いて得られたブラックマトリックスもまた、十分な着色力を得ることが困難である。
【0014】
また、特許文献2には、カーボンブラック系顔料の表面に、水和無定形シリカ、無水無定形シリカ等が被覆されたブラックマトリックス用着色組成物が提案されているが、後出比較例に示す通り、カーボンブラック系顔料表面に水和無定形シリカ、無水無定形シリカ等を被覆しているために、粒子表面に存在するシラノール基(≡Si−OH)が多くなり、粒子表面の酸量が0.3mol/kgを超えるため、本発明のブラックマトリックス用着色材とは粒子の表面特性が異なる。また、カーボンブラック系顔料表面に水和無定形シリカ、無水無定形シリカ等を被覆させているため、シリカはビヒクル中で透明〜半透明を呈するとはいえ、殊に、黒色を要求される用途において、未添加のものに比べ白みがかった色を呈する。即ち、原料カーボンブラック系顔料に比べL値が高くなるため、漆黒性の高い黒色顔料を得ることは困難であった。
【0015】
そこで、本発明は、着色力及び漆黒性が高いとともに、ビヒクルへの分散性に優れ、高い電気抵抗値を有し、且つ、耐光性に優れたブラックマトリックス用着色材、該ブラックマトリックス用着色材を含むブラックマトリックス用着色組成物及びカラーフィルターを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0017】
即ち、本発明は、黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックにシリカが内包されていることを特徴とするブラックマトリックス用着色材からなり、該ブラックマトリックス用着色材の酸量が0.3mol/kg以下であることを特徴とするブラックマトリックス用着色材である(本発明1)。
【0018】
また、本発明は、ブラックマトリックス用着色材に含まれるシリカが、ブラックマトリックス用着色材に対して、Si換算で0.01〜9.0重量%であることを特徴とする本発明1記載のブラックマトリックス用着色材である(本発明2)。
【0019】
また、本発明は、本発明1又は本発明2記載のブラックマトリックス用着色材を溶剤中に分散させてなることを特徴とするブラックマトリックス用着色組成物である(本発明3)。
【0020】
また、本発明は、本発明3記載のブラックマトリックス用着色組成物が、少なくとも一つの酸性基及び/又は潜在性酸性基を有する透明樹脂を含有することを特徴とするブラックマトリックス用着色組成物である(本発明4)。
【0021】
また、本発明は、本発明4記載のブラックマトリックス用着色組成物が、光ラジカル重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する多官能性モノマーを含有することを特徴とする感光性が付与されたブラックマトリックス用着色組成物である(本発明5)。
【0022】
また、本発明は、本発明4記載のブラックマトリックス用着色組成物が、光酸発生剤を含有することを特徴とする感光性が付与されたブラックマトリックス用着色組成物である(本発明6)。
【0023】
また、本発明は、本発明4乃至6のいずれかに記載のブラックマトリックス用着色組成物からなる塗膜形成物を含むことを特徴とするカラーフィルターである(本発明7)。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材は、着色力及び漆黒性が高いとともに、ビヒクルへの分散性に優れ、高い電気抵抗値を有し、且つ、耐光性に優れていることから、ブラックマトリックス用着色材として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係るブラックマトリックス用着色材について述べる。
【0026】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材は、黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックにシリカが内包されている複合粒子からなる。
【0027】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の酸量は、0.3mol/kg以下である。酸量が0.30mol/kgを超える場合、粒子表面に存在するシラノール基が多量であり、反応性が高くなるため好ましくない。好ましくは0.25mol/kg以下であり、より好ましくは0.20mol/kg以下である。
【0028】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材に含まれるシリカ量は、Si換算で、ブラックマトリックス用着色材に対して0.01〜9.0重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜7.0重量%であり、最も好ましくは0.1〜5.0重量%である。シリカ量がSi換算でブラックマトリックス用着色材に対して0.01重量%未満の場合には、ブラックマトリックス用着色材に内包されるシリカ量が少なすぎるため、ブラックマトリックス用着色材のζ電位がほぼゼロとなり、静電反発効果が得られないため、ビヒクル中における分散性が低下する。一方、9.0重量%を超える場合には、ブラックマトリックス用着色材に内包されるシリカ量が多すぎるため、十分な着色力を得ることが困難となる。
【0029】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の平均一次粒子径は、1〜50nmが好ましく、より好ましくは1〜40nm、更により好ましくは1〜30nmである。
【0030】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の個数換算平均粒子径は、200nm以下が好ましく、より好ましくは1〜150nm、更に好ましくは1〜100nm、最も好ましくは1〜50nmである。ブラックマトリックス用着色材の個数換算平均粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため着色力が低下する。
【0031】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の体積換算平均粒子径は、200nm以下が好ましく、より好ましくは1〜150nm、更に好ましくは1〜100nmである。ブラックマトリックス用着色材の体積換算平均粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため着色力が低下する。
【0032】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材のBET比表面積値は、20〜1000m/gが好ましく、より好ましくは25〜800m/g、更により好ましくは30〜500m/gである。BET比表面積値が20m/g未満の場合には、粒子が粗大であり、着色力が低下する。BET比表面積が1000m/gを超える場合には、粒子の微細化により凝集を起こしやすく、ビヒクル中への分散が困難となる。
【0033】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の黒色度は、後述する評価方法において、黒色度差ΔL値で100.0以上であることが好ましく、より好ましくはΔL値が101.0以上であり、更により好ましくはΔL値が102.0以上である。ΔL値が100未満の場合、原料である黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックに比べ漆黒性が低下するため好ましくない。
【0034】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の着色力は、後述する評価方法により103%以上が好ましく、より好ましくは104%以上であり、更により好ましくは105%以上である。
【0035】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の耐光性は、後述する評価方法において、ΔE値で5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.5以下であり、更に好ましくは4.0以下である。
【0036】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材の体積固有抵抗値は1.0×10Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは2.5×10Ω・cm以上、更により好ましくは5.0×10Ω・cm以上である。ブラックマトリックス用着色材の体積固有抵抗値が1.0×10Ω・cm未満の場合には、高い電気抵抗値を有するブラックマトリックスを得ることが困難となる。
【0037】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材のζ電位は、水系で測定した場合−5mV以下であることが好ましく、より好ましくは−8mV以下であり、更に好ましくは−10mV以下である。水系で測定した場合のζ電位が−5mVよりゼロに近くなると、水系分散体における静電反発効果による良好な分散性及び分散安定性を得ることは困難である。
【0038】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材のζ電位は、溶剤系で測定した場合、−2mV以下であることが好ましく、より好ましくは−3mV以下であり、更に好ましくは−5mV以下である。溶剤系で測定した場合のζ電位が−2mVよりゼロに近くなると、溶剤系分散体における静電反発効果による良好な分散性を得ることは困難である。
【0039】
次に、本発明に係るブラックマトリックス用着色材を含有するブラックマトリックス用着色組成物ついて述べる。
【0040】
本発明3に係るブラックマトリックス用着色組成物は、本発明に係るブラックマトリックス用着色材、溶剤から構成される。また、必要に応じて分散剤、顔料誘導体、消泡、界面活性剤等の添加剤を加えてもよい。
【0041】
本発明3に係るブラックマトリックス用着色組成物は、本発明に係るブラックマトリックス用着色材を分散体構成基材100重量部に対して3〜300重量部含有し、好ましくは4〜150重量部、より好ましくは5〜100重量部、更により好ましくは5〜75重量部、もっとも好ましくは5〜50重量部含有している。
【0042】
本発明における溶剤としては、本発明に係るブラックマトリックス用着色材及び透明樹脂、更には、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する多官能性モノマー、光重合開始剤及び光酸発生剤を溶解あるいは分散し、且つ、塗布後に揮発除去できるものであれば、適宜用いることができる。例えば、水;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類;乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸プロピルエステル等の乳酸エステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類等を用いることができる。これらの溶剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
本発明における分散剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレート等の非イオン性界面活性剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
殊に、溶剤が水の場合には、分散剤としてアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、アセチレングリコール系分散剤等を好適に用いることができる。
【0045】
本発明3に係るブラックマトリックス用着色組成物の個数換算分散平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜150nm、更により好ましくは1〜100nm、最も好ましくは1〜50nmである。個数換算分散粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎることから、着色力が低下するため、好ましくない。
【0046】
本発明3に係るブラックマトリックス用着色組成物の体積換算分散平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜150nmであり、更により好ましくは1〜100nmである。体積換算分散粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎることから、着色力が低下するため、好ましくない。
【0047】
本発明に係るブラックマトリックス用着色組成物の分散安定性は、後述する評価方法で、粘度の変化率は20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。粘度の変化率が20%より大きくなると、安定した分散状態で長期に亘って分散性を維持することが困難となる。
【0048】
本発明3に係るブラックマトリックス用着色材の着色力を表わす比吸光係数ε(重量基準)は、後述する評価方法で、1.10以上であることが好ましく、より好ましくは1.20〜5.00であり、更に好ましくは1.30〜5.00である。
【0049】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物は、本発明3に係るブラックマトリックス用着色組成物及び透明樹脂から構成される。
【0050】
本発明における透明樹脂としては、アルカリ現像液に可溶であり、可視波長領域に吸収帯を有さず、且つ、フィルム形成能を有する、という条件を満たすものであればいかなるものでもよい。このための透明樹脂としては、1つ以上の酸性基で置換されたポリマー、あるいは、酸の作用による脱保護反応によって酸性基に変換される潜在性酸性基を1つ以上有するポリマーが挙げられる。本発明における酸性基は、フェノール性水酸基及びカルボキシル基であり、その導入後はアルカリ水溶液への溶解性によって適時調節すればよい。
【0051】
フェノール性水酸基を有するポリマーとしては、ノボラック樹脂、4−ヒドロキシスチレンのホモポリマー及び共重合体を挙げることができる。
【0052】
カルボキシル基を有する透明樹脂としては、エチレン性不飽和モノマーと他の共重合可能な不飽和モノマーとのビニル系共重合体が好ましい。このためのカルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルフタレート、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。これらのカルボキシル基を有するモノマーと共重合する他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、スチレン、4−ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニルメチルエーテル等を挙げることができることができるが、この限りではない。
【0053】
該透明樹脂におけるカルボキシル基含有モノマーが占めるモル割合は、0.005〜0.5が好ましく、より好ましくは0.05〜0.4である。0.05未満のモル割合を持つ共重合体ではアルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、パターニングにおける地汚れが発生しやすくなる。一方、0.5を超えるモル割合では、得られる感光性組成物からなる塗膜を露光した後にアルカリ現像を施すと、不溶化した露光部の膨潤が起こるために解像性が低下したり、塗膜表面の平滑性が損なわれる。透明樹脂の重量平均分子量は2000〜500000、好ましくは3000〜300000である。
【0054】
カルボキシル基を含有する透明樹脂として、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重付加反応により得られるポリアミック酸を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物の例として、1,2,3,4―シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクルヘキセンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの二無水物を1種または2種以上を用いることができる。これらの二無水物と反応させるジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
ポリアミック酸の合成は、極性有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法により行われるが、その混合モル比によってポリアミック酸の重合度を調整することができる。
【0056】
潜在性酸性基を有する透明樹脂は、光酸発生剤から発生する酸の触媒作用によってカルボキシル基あるいはフェノール性水酸基を生成する置換基を有するポリマーであり、アルカリ現像性化学増幅型フォトレジストに用いられるベースポリマーを活用することができる。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、tert−アミル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチルベンジル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート等と(メタ)アクリル酸を含む他のアクリレートモノマーとの共重合体、4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、4−(1−メトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン等のホモポリマーあるいは4−ヒドロキシスチレンとの共重合体を挙げることができる。
【0057】
前記ブラックマトリックス用着色材に対するこれらの酸性基及び/又は潜在性酸性基で置換された透明樹脂の混合割合は、ブラックマトリックス用着色材100重量部に対して、通常、5〜500重量部が好ましく、より好ましくは7〜300重量部である。透明樹脂の混合割合が5重量部未満の場合には、製膜性及びアルカリ現像性が低下する。500重量部を超える場合には、相対的に顔料濃度が低下するので、ブラックマトリックスとしての着色力を確保するために膜厚が増大して均一膜厚を得るのが困難になる。
【0058】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物の個数換算分散平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜150nm、更により好ましくは1〜100nm、最も好ましくは1〜50nmである。個数換算平均粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎることから、着色力が低下するため、好ましくない。
【0059】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物の体積換算分散平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜150nmであり、更により好ましくは1〜100nmである。体積換算分散平均粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎることから、着色力が低下するため、好ましくない。
【0060】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物の粘度は、0.5〜1000mPa・sであることが好ましい。粘度が1000mPa・sを超える場合には、均一なコーティングが困難となる。0.5mPa・s未満の場合には、塗膜が薄くなりすぎるために好ましくない。
【0061】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物の分散安定性は、後述する評価方法で、粘度の変化率は20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。粘度の変化率が20%より大きくなると、安定した分散状態で長期に亘って分散性を維持するのが困難となる。
【0062】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物を用いて作製したブラックマトリックスの光沢値は、85以上であることが好ましく、より好ましくは87以上であり、更により好ましくは90以上である。
【0063】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物を用いて作製したブラックマトリックスの耐光性ΔE値は、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.5以下であり、更により好ましくは4.0以下である。
【0064】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物を用いて作製したブラックマトリックスの電気抵抗値は、1.0×10Ω/sq以上であることが好ましく、より好ましくは5.0×10Ω/sq以上、更により好ましくは1.0×10Ω/sq以上である。
【0065】
本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物の着色力を表わす比吸光係数ε(重量基準)は、後述する評価方法で、1.10以上であることが好ましく、より好ましくは1.20〜5.00であり、更に好ましくは1.30〜5.00である。
【0066】
本発明5に係るブラックマトリックス用着色組成物は、前記本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物に光ラジカル重合開始剤及びエチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する多官能性モノマーを添加したものからなる。
【0067】
また、本発明6に係るブラックマトリックス用着色組成物は、前記本発明4に係るブラックマトリックス用着色組成物に光酸発生剤を添加したものからなる。
【0068】
<エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する多官能性モノマー>
本発明におけるエチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する多官能性モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチレンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールメタ(ア)クリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能性モノマー等が挙げられる。更には、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等から得られるアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0069】
これらの多官能性モノマーに、単官能性モノマーを混合することができる。単官能性モノマーとしては、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルフタレート等を挙げることができる。これらの単官能性モノマーは前記多官能性モノマー100重量部に対して、0〜80重量%、好ましくは0〜40重量%である。この範囲を越えて単官能性モノマーを混合すると、露光後の皮膜をアルカリ現像処理する際に、膜が一部剥離したり、解像性が低下する。
【0070】
本発明における多官能性モノマーは、前記した透明樹脂のうち、とくに、カルボキシル基を有するビニル系共重合体に好適に混合される。多官能性モノマーの使用割合は、透明樹脂100重量部に対して5〜300重量部、より好ましくは10〜200重量部である。多官能性モノマーの混合割合が5重量部未満の場合には、アルカリ現像後の塗膜が一部剥離したり、解像性が低下する。混合割合が300重量部を超える場合には、アルカリ現像性が劣化して、未露光部での地汚れや膜残りといった不具合が生じる。
【0071】
<光重合開始剤>
本発明における光重合開始剤は、光照射によってラジカル種を効率よく発生する物質であって、これが前記した多官能性モノマーの重合を開始して架橋構造を形成し、酸性基を有する透明樹脂のアルカリ溶解性が低下することによって、ネガ型画像を与える。光重合開始剤としては、ケトン系化合物、トリクロロメチル基を有するトリアジン系化合物、電子移動型開始剤等を挙げることができるが、200〜450nmの範囲の紫外線によりラジカル種を発生する重合開始剤が選択される。
【0072】
ケトン系光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、2−モルホリノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−モルホリノ−2−メチル−1−(4−メトキシフェニル)プロパン−1−オン、2−モルホリノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−フェニル−2,2−ジメトキシ−1−(4−メチルチオフェニル)エタンー1−オン、ジフェニルメシチレンホスフィンオキサイド、フェナシルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0073】
トリクロロメチル基を有するトリアジン誘導体としては、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−フェニル−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(4−クロロフェニル)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(4−メトキシフェニル)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(4−ブトキシフェニル)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(4−メトキシナフチル−1)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(4−メトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(2−メトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(ビフェニル−1)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0074】
電子移動型開始剤は電子受容性化合物あるいは電子供与性化合物としてのラジカル発生剤と増感剤からなる。電子受容性化合物としては、前記のトリクロロメチル置換トリアジン誘導体、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’フェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’フェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール等のビイミダゾール化合物、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−メトキシフェニル)(4−オクチルオキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩を挙げることができる。増感剤としては、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、1,8−ジメチル−9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。更には、電子供与性化合物と増感剤からなる光重合開始剤を用いることができる。電子供与体として、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、ジエタノールアミン等であり、増感剤としてチオキサントン誘導体が好適に用いられる。以上の増感剤の1種あるいは2種以上を前記の電子受容性化合物あるいは電子供与性化合物と組み合わせて使用することができる。
【0075】
<光酸発生剤>
本発明における光酸発生剤としては、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物のうち、200〜430nmの範囲に吸収を持つ化合物が用いられ、オニウムカチオン化合物、ハロゲン化水素酸を発生する含ハロゲン化合物、スルホン酸を発生するスルホン化化合物を挙げることができる。オニウム塩としては、p−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム、フェナシルテトラメチレンスルホニウム、フェナシルジメチルスルホニウム、(2−ナフチルカルボニルメチル)テトラメチレンスルホニウム、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、フェニル{4−(tert―ブチル)フェニル}ヨードニウム、(4−ビス{4−(tert―ブチル)フェニル}ヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム等のBF,PF,AsF,SbF,CHSO,CFSO,パーフルオロブタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、(C塩が挙げられる。ハロゲン化水素酸を発生する化合物としては、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(4−メトキシナフチル−1)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(4−メトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(2−メトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−{2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)エテニル}−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(ビフェニル−1)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(4−ヒドロキシビフェニル−1)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−(4−メトキシビフェニル−1)−3,5−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。スルホン酸を発生する酸発生剤としては、N−トリフルオロメタンスルホニルオキシジフェニルマレイミド、N−p−トルエンスルホニルオキシサクシンイミド、N−カンファースルホニルオキシサクシンイミド、N−トルフルオロメタンスルホニルオキシサクシンイミド、N−パーフルオロブタンスルホニルオキシフタルイミド、N−p−トルエンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド、N−カンファースルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド、N−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド、N−パーフルオロブタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンカルボキシイミド等が挙げられる。
【0076】
これらの光酸発生剤は、単独、あるいは、以下に示す増感剤の共存下で用いることができる。増感剤としては、9−メチルアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、1−メチルピレン、チオキサントン誘導体等が挙げられる。
【0077】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物の個数換算分散平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜150nm、更により好ましくは1〜100nm、最も好ましくは1〜50nmである。個数換算平均粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎることから着色力が低下するため好ましくない。
【0078】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物の体積換算分散平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、より好ましくは1〜150nmであり、更により好ましくは1〜100nmである。体積換算分散平均粒子径が200nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎることから着色力が低下するため好ましくない。
【0079】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物の粘度は、0.5〜1000mPa・sであることが好ましい。粘度が1000mPa・sを超える場合には、均一なコーティングが困難となる。0.5mPa・s未満の場合には、塗膜が薄くなりすぎるため好ましくない。
【0080】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物の分散安定性は、後述する評価方法で、粘度の変化率は20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。粘度の変化率が20%より大きくなると、安定した分散状態で長期に亘って分散性を維持するのが困難となる。
【0081】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物の着色力を表わす比吸光係数ε(重量基準)は、後述する評価方法で、1.10以上であることが好ましく、より好ましくは1.20〜5.00であり、更に好ましくは1.30〜5.00である。
【0082】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物を用いて作製したブラックマトリックスの光沢値は、85以上であることが好ましく、より好ましくは87以上であり、更により好ましくは90以上である。
【0083】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物を用いて作製したブラックマトリックスの耐光性ΔE値は、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.5以下であり、更により好ましくは4.0以下である。
【0084】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物を用いて作製したブラックマトリックスの電気抵抗値は、1.0×10Ω/sq以上であることが好ましく、より好ましくは5.0×10Ω/sq以上、更により好ましくは1.0×10Ω/sq以上である。
【0085】
本発明5及び6に係るブラックマトリックス用着色組成物を用いて作製したブラックマトリックスの着色力を表わす比吸光係数ε(重量基準)は、後述する評価方法で、1.10以上であることが好ましく、より好ましくは1.20〜5.00であり、更に好ましくは1.30〜5.00である。
【0086】
次に、本発明に係るブラックマトリックス用着色材を用いたカラーフィルターについて述べる。
【0087】
本発明に係るカラーフィルターは、透明基板上に形成されたブラックマトリックス層、カラー表示用のR(赤)、G(緑)、B(青)等の有機顔料を樹脂中に分散させた各色の透明着色層又は/及び透明導電膜(ITO)から構成される。なお、必要に応じて着色層上に透明保護膜を形成してもよい。また、横電界によって液晶を駆動する方式の表示装置の場合には、ITO透明導電膜を省略することもできる。
【0088】
本発明における有機顔料としては、赤色、緑色、青色又はシアン、マゼンタ、イエローの各色を呈する有機顔料を用いることができる。また、有機顔料の分光特性を向上させるために、青色の補色である紫色系有機顔料などの他の色相を持つ有機顔料を併用してもよい。
【0089】
赤色系有機顔料としては、キナクリドンレッド等のキナクリドン顔料、パーマネントレッド等のアゾ系顔料、縮合アゾレッド等の縮合アゾ顔料、ジアンスラキノニルレッド、ジケトピロロピロール系顔料等の建染染料系顔料及びペリレンレッド等のペリレン顔料を用いることができる。緑色系有機顔料としては、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料を用いることができる。青色系有機顔料としては、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー等のフタロシアニン計顔料及びアルカリブルーを用いることができる。黄色系有機顔料としては、ハンザイエロー等のモノアゾ系顔料、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等のジスアゾ系顔料、縮合アゾイエロー等の縮合アゾ顔料及びイソインドリンイエロー等のイソインドリン系顔料を用いることができる。紫色系有機顔料としては、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料を用いることができる。本発明に用いられる有機顔料としては、以上に例示した顔料に限られるものではない。
【0090】
本発明に係るカラーフィルターは、各色の透過領域において、光透過率が80%以上であり、好ましくは83%以上、より好ましくは86%以上を有している。また、コントラストは、1600以上が好ましく、より好ましくは1800以上、更により好ましくは2000以上である。
【0091】
次に、本発明に係るブラックマトリックス用着色材の製造法について述べる。
【0092】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材は、芯粒子としてのシリカ粒子と表面改質剤とを混合攪拌してシリカ粒子の粒子表面に表面改質剤を被覆後、黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックを添加し、混合攪拌して前記表面改質剤が被覆されたシリカ粒子の粒子表面に黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックが付着している黒色複合粒子を得た後に、アルカリ溶液を用いて該複合粒子中のシリカ粒子及び表面改質剤の一部を溶解させることにより得ることができる。
【0093】
本発明におけるシリカ粒子の平均一次粒子径は、1〜100nmが好ましく、より好ましくは1〜50nm、最も好ましくは1〜30nmである。
【0094】
本発明におけるシリカ粒子のBET比表面積値は10〜1000m/gであることが好ましく、より好ましくは15〜500m/gである。
【0095】
本発明における表面改質剤としては、シリカ粒子の粒子表面へ黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックを付着できるものであれば何を用いてもよく、アルコキシシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤、低分子あるいは高分子界面活性剤等が好適に用いられる。より好ましくは、アルコキシシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物である。
【0096】
有機ケイ素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0097】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェートチタネート、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0098】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0099】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリボトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0100】
低分子系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩等が挙げられる。高分子系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。
【0101】
表面改質剤の被覆量は、芯粒子であるシリカ粒子に対してC換算で0.05〜15.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜12.0重量%、更により好ましくは0.15〜10.0重量%である。0.05〜15重量%とすることで、シリカ粒子100重量部に対して、黒色顔料を10〜500重量部付着させることができる。
【0102】
本発明における黒色有機顔料としては、ペリレンブラック、アニリンブラック等を、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0103】
なお、黒色をより鮮明にするために他の有機顔料を補色として併用してもよい。例えば、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー等のフタロシアニン系顔料からなる青色系有機顔料を使用することができる。但し、アルカリブルーのような耐アルカリ性の弱い顔料を用いることは好ましくない。
【0104】
カーボンブラックの添加量は、芯粒子であるシリカ粒子100重量部に対して10〜500重量部であり、好ましくは30〜400重量部、より好ましくは50〜300重量部である。
【0105】
本発明における黒色複合粒子は、シリカ粒子と表面改質剤とを混合し、シリカ粒子の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、次いで、表面改質剤によって被覆されたシリカと黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックを混合することによって得ることができる。添加した表面改質剤は、ほぼ全量がシリカ表面に被覆される。
【0106】
シリカ粒子と表面改質剤の混合攪拌、黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックと粒子表面に表面改質剤が被覆されているシリカ粒子とを混合攪拌するための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混錬機、ボール型混錬機、ブレード型混錬機、ロール型混錬を用いることができ、ホイール型混錬機がより効果的に使用できる。
【0107】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、このましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラー、であり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
【0108】
シリカ粒子の粒子表面を表面改質剤で被覆した後、黒色有機顔料及び/又はカーボンブラック、補色の有機顔料を添加し、混合攪拌して黒色有機顔料及び/又はカーボンブラック、補色の有機顔料を表面改質剤被覆シリカ粒子の粒子表面に付着させる。このとき、必要に応じて乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。黒色有機顔料及び/又はカーボンブラック、補色の有機顔料は少量ずつを、5分〜24時間、好ましくは5分〜20時間程度の時間をかけながら添加するか、若しくは、シリカ粒子100重量部に対して5〜25重量部の黒色有機顔料及び/又はカーボンブラック、補色の有機顔料を、所望の添加量となるまで分割して添加することが好ましい。
【0109】
乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常、40〜150℃が好ましく、より好ましくは60〜120℃であり、加熱時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0110】
得られた黒色複合粒子の一次粒子の平均粒子径は1〜100nmであり、より好ましくは1〜75nm、更により好ましくは1〜50nmである。
【0111】
黒色複合粒子のBET比表面積値は、10〜1000m/gであることが好ましく、より好ましくは15〜800m/g、更により好ましくは20〜500m/gである。
【0112】
黒色複合粒子の黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの脱離の程度は、後出評価方法における目視観察において、4又は3が好ましく、より好ましくは4である。黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの脱離の程度が2以下の場合には、脱離した黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックが再結晶化又は凝集等を起こすことにより粗大化したまま、最終生成物であるブラックマトリックス用着色材に混在するため、好ましくない。
【0113】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材は、上記黒色複合粒子をアルカリで処理して一部のシリカ成分が残存するように、シリカ又はシリカ及び表面改質剤を溶解することで得られる。
【0114】
溶解に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア等を使用することができる。
【0115】
溶解処理を行う際の溶解液中の黒色複合粒子濃度は、水100mlに対して1.0〜30.0重量部が好ましく、より好ましくは2.5〜25.0重量部、更に好ましくは5.0〜20.0重量部である。
【0116】
黒色複合粒子中のシリカ粒子又はシリカ粒子及び表面改質剤の溶解処理を行う際の溶解液のアルカリ量は、シリカ粒子又はシリカ粒子及び表面改質剤を全量溶解させるために必要なアルカリ量の0.01〜0.95倍が好ましく、より好ましくは0.02〜0.90倍、更に好ましくは0.05〜0.85倍である。0.95倍を超えるアルカリ量で処理した場合、残存Si量が少なくなりすぎるため、分散性及び分散安定性に必要なζ電位を得ることができない。アルカリ量が0.01倍より少ない場合、シリカ粒子又はシリカ粒子及び表面改質剤を、ブラックマトリックス用着色材に対してSi換算で9重量%以下となるまで溶解させるのに非常に長時間を有するために工業的に好ましくない。
【0117】
黒色複合粒子中のシリカ粒子又はシリカ粒子及び表面改質剤の溶解処理を行う際のpHは10.0〜13.8が好ましく、より好ましくは11.0〜13.6であり、更に好ましくは11.5〜13.4である。pHが13.8を超えると、アルカリによる黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックへのダメージが大きくなり、優れた漆黒性を有するブラックマトリックス用着色材を得ることが困難である。pHが10.0未満の場合、黒色複合粒子中のシリカ粒子又はシリカ粒子及び表面改質剤を、ブラックマトリックス用着色材に対してSi換算で9重量%以下となるまで溶解させるのに非常に長時間を有するために工業的に好ましくない。
【0118】
溶解処理を行う際の処理温度は、40〜100℃が好ましく、より好ましくは45〜90℃、更により好ましくは50〜80℃である。40℃未満の場合にはシリカの溶解に50時間を超えるような長時間を要するため、工業的に不利となる。100℃を超える場合には、黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックへのダメージにより優れた耐光性を有するブラックマトリックス用着色材を得ることが困難であるとともに、オートクレーブ等の装置を必要とするため工業的にも好ましくない。
【0119】
溶解処理を行う際の処理時間は、5分〜50時間が好ましく、より好ましくは10分〜30時間、更により好ましくは20分〜10時間である。処理時間が50時間より長い場合、長時間の溶解処理となるため工業的に好ましくない。
【0120】
溶解処理後、固形分と溶解液を濾別、洗浄後、通常の乾燥又は凍結乾燥させる方法を用いて取り出すことができる。本発明で得られたブラックマトリックス用着色材は、通常の乾燥を行った場合においてもシリカ又はシリカ及び表面改質剤による静電反発効果により分散が容易である。
【0121】
次に、本発明に係るブラックマトリックス用着色組成物の製造方法について述べる。
【0122】
本発明3のブラックマトリックス用着色組成物を調製するために、本発明1又は本発明2のブラックマトリックス用着色材を有機溶剤又は油性ビヒクル中に再分散させるか、あるいは、溶解処理後、固形分と溶解液を濾別、水洗したウェットケーキを有機溶剤又は油性ビヒクルでフラッシングした後、有機溶剤又は油性ビヒクル中に分散させることにより得ることができる。混合・分散は、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、エッジランナー、2本又は3本ロールミル、エクストルーダー及び高速衝撃ミル等を用いることができる。磨砕型ミルに用いられる磨砕媒体としては、ミルの材質に応じて、スチールビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ等が使用でき、その大きさは0.01〜10mmの範囲が好ましく、0.03〜3mmの範囲がより好ましい。磨砕温度は特に限定されず、室温から溶媒の沸点以下の範囲にあればよい。必要により、添加剤として、分散剤、顔料誘導体、消泡剤、界面活性剤等の添加剤を加えてもよい。
【0123】
本発明4のブラックマトリックス用着色組成物を調製するためには、本発明3のブラックマトリックス用着色組成物に酸性基を有する透明樹脂又は潜在性酸性基を有する透明樹脂を溶解すればよい。あるいは、あらかじめ酸性基を有する透明樹脂又は潜在性酸性基を有する透明樹脂を溶解した溶剤を用いてブラックマトリックス用着色材を混合分散することもできる。
【0124】
本発明5の感光性が付与されたブラックマトリックス用着色組成物を調製するためには、本発明4の酸性基を有する透明樹脂を含有する着色組成物に光重合開始剤及びエチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する多官能性モノマーを添加、混合すればよい。この場合、必要に応じて溶剤を添加して、顔料濃度、粘度等を調整することができる。さらに必要に応じて、重合禁止剤、2−メルカプトビエンゾイミダゾールなどの硬化促進剤等を使用することができる。
【0125】
本発明6の感光性が付与されたブラックマトリックス用着色組成物を調製するためには、本発明4の潜在性酸性基を有する透明樹脂を含有する着色組成物に光酸発生剤を添加、混合すればよい。
【0126】
次に、本発明のブラックマトリックス用着色組成物を用いたカラーフィルターの作製方法を説明する。
【0127】
本発明に係るカラーフィルターは、ブラックマトリックスのパターンを形成した透明基板上にカラー表示用のR(赤)、G(緑)、B(青)からなる各透明着色組成物を塗布した後に、プリベーク処理によって溶剤を十分に蒸発除去して着色塗膜を得る。感光性が付与されていない着色塗膜の場合には、その膜上にアルカリ現像可能なポジ型フォトレジスト層を設けて、二層構造からなる塗膜を得る。アルカリ現像性ポジ型フォトレジストとしては、キノンジアジド系フォトレジストが好適に用いられる。この着色塗膜にフォトマスクを介して光照射した後、アルカリ水溶液による現像処理を施す。ポジ型フォトレジスト層で被覆した塗膜の露光部はアルカリ可溶となるので、露出した着色層もアルカリ液によってエッチングされて着色ポジ画像となる。ついで、フォトレジスト層を溶剤で選択的に除去して着色パターンを得る。一方、光重合開始剤及び多官能性モノマーが添加された感光性透明着色組成物の場合には、それから調製される塗膜をそのまま着色感光層として用いる。同様に、フォトマスクを介して露光してからアルカリ現像を施せば、露光部が不溶化してネガ型の着色パターンを得ることができる。現像処理には、浸漬法、スプレー法、パドル法、シャワー法等が用いられ、アルカリ現像後は水洗し、乾燥させる。
【0128】
カラーフィルターを作製する透明基板として、シリカガラスの他、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。また、固体撮像素子作製のために、シリコン基板を用いることもできる。透明着色組成物をこれらの透明基板上に塗布するために、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の方法を適宜用いることができる。塗布膜の厚さは、透明着色組成物中の有機顔料の濃度にも依存するが、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5.0μmである。
【0129】
アルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の水溶液が好ましい。アルカリ水溶液にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、界面活性剤等を添加することもできる。
【実施例】
【0130】
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0131】
各粒子粉末の平均一次粒子径は、いずれも電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0132】
各粒子粉末の個数換算平均粒子径及び体積換算平均粒子径は、被測定粒子粉末と水を混合した水溶液を、超音波分散機を用いて1分間分散させた後、動的光散乱法「濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000」(大塚電子株式会社)を用いて測定した。
【0133】
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
【0134】
シリカ粒子の粒子表面に被覆されている表面改質剤の被覆量及び黒色複合粒子粉末に付着しているカーボンブラックの被覆量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
【0135】
ブラックマトリックス用着色材に内包されるシリカ量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K 0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0136】
各粒子粉末のζ電位は、水系の場合イオン交換水を、溶剤系の場合PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を用いて試料が0.5g/lの濃度になるように調製し、超音波分散機を用いて3分間分散させた後、「Model501」(PEN KEN社製)を用い、電気泳動法により測定した。
【0137】
各粒子粉末の酸量は、試料2gと、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)の10−2Nメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液30mlを三角フラスコにとり密栓した後、槽温度を20℃に制御した超音波洗浄器中で1時間、超音波分散を行い、この分散液から、試料を遠心分離して得た上澄み液10mlを、MIBK100mlで希釈した後、10−2Nの過塩素酸MIBK溶液で逆滴定することにより、試料表面の酸によって消費されたTBAHの量を求め、試料単位重量あたりの酸量を決定した。
【0138】
各粒子粉末の黒色度は、試料0.5gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗布片について「分光測色計CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数L値を測定した。なお、各黒色複合粒子粉末及びブラックマトリックス用着色材作製に用いた黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックについては、L値とした。
【0139】
黒色複合粒子及びブラックマトリックス用着色材の黒色度差ΔL値は、複合粒子及びブラックマトリックス用着色材の黒色度L値と黒色複合粒子及びブラックマトリックス用着色材を作製する際に用いた黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの黒色度L値の差として、下記数1に従って算出した。
【0140】
<数1>
ΔL値=L値/L値×100
ΔL値:黒色度差
:各黒色複合粒子及びブラックマトリックス用着色材を作製する際に用いた黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの黒色度
:各黒色複合粒子及びブラックマトリックス用着色材の黒色度
【0141】
黒色複合粒子及びブラックマトリックス用着色材の着色力は、まず下記に示す方法に従って作製した原色エナメルと展色エナメルのそれぞれを、キャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗布片について「分光測色計CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いてL値を測色し、その差をΔL値とした。
【0142】
次いで、ブラックマトリックス用着色材の標準試料として、ブラックマトリックス用着色材を作製する際に用いた黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックを用いて、上記と同様にして原色エナメルと展色エナメルの塗布片を作製し、各塗布片のL値を測色し、その差をΔLs値とした。
【0143】
得られたブラックマトリックス用着色材のΔL値と標準試料のΔLs値を用いて下記数2に従って算出した値を着色力(%)として示した。
【0144】
<数2>
着色力(%)=100+{(ΔLs値−ΔL値)×10}
【0145】
原色エナメルの作製:
上記試料粉体10gとアミノアルキッド樹脂16g及びシンナー6gとを配合して、3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで45分間混合分散した後、アミノアルキッド樹脂50gを追加し、更に5分間ペイントシェーカーで分散させて、原色エナメルを作製した。
【0146】
展色エナメルの作製:
上記原色エナメル12gとアミラックホワイト(二酸化チタン分散アミノアルキッド樹脂)80gとを配合し、ペイントシェーカーで15分間混合分散して、展色エナメルを作製した。
【0147】
各粒子粉末の耐光性は、前述の着色力を測定するために作製した原色エナメルを、ガラス板(0.8mm×70mm×150mm)に150μmの厚みで塗布、乾燥して塗膜を形成し、得られた測定用塗布片の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター SUV−W13」(岩崎電気株式会社製)を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、下記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0148】
<数3>
ΔE値=((ΔL値)+(Δa値)+(Δb値)1/2
ΔL値: 比較する試料の紫外線照射有無のL値の差
Δa値: 比較する試料の紫外線照射有無のa値の差
Δb値: 比較する試料の紫外線照射有無のb値の差
【0149】
各粒子粉末の体積固有抵抗値は、まず、粒子粉末0.5gを測り取り、KBr錠剤成形器(株式会社島津製作所)を用いて、1.372×10Pa(140Kg/cm)の圧力で加圧成形を行い、円柱状の被測定試料を作製した。
【0150】
次いで、被測定試料を温度25℃、相対温度60%の環境下に12時間以上暴露した後、この被測定試料をステンレス電極の間にセットし、電気抵抗測定装置(model 4329A 横河北辰電気株式会社製)で15Vの電圧を印加して抵抗値R(Ω)を測定した。
【0151】
次いで、被測定(円柱状)試料の上面の面積A(cm)と厚みt(cm)を測定し、下記数4にそれぞれの測定値を挿入して、体積固有抵抗値(Ω・cm)を求めた。
【0152】
<数4>
体積固有抵抗値(Ω・cm)=R×(A/t
【0153】
黒色複合粒子に付着している黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの脱離の程度は、下記の方法により4段階で評価した。4が黒色複合粒子の粒子表面からの黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの脱離量が少ないことを示す。
【0154】
被測定粒子粉末2gとエタノール20mlを50mlの三角フラスコに入れ、60分間超音波分散を行った後、回転数10,000rpmで15分間遠心分離を行い、被測定粒子粉末と溶剤部分とを分離した。得られた被測定粒子粉末を80℃で1時間乾燥させ、電子顕微鏡写真に示される視野の中に存在する、脱離して再凝集した黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの個数を目視で観察し、4段階で評価した。
【0155】
1:黒色複合粒子100個当たりに30個以上。
2:黒色複合粒子100個当たりに10個以上30個未満。
3:黒色複合粒子100個当たりに5個以上10個未満。
4:黒色複合粒子100個当たりに5個未満。
【0156】
ブラックマトリックス用着色組成物の個数換算分散平均粒子径及び体積換算分散平均粒子径は、動的光散乱法「濃厚系粒子径アナライザー FPAR−1000」(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。
【0157】
ブラックマトリックス用着色組成物の粘度は、得られた組成物の25℃における粘度を、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=383sec−1における値で示した。
【0158】
ブラックマトリックス用着色組成物の粘度変化率は、得られた分散体を60℃で1週間静置した後、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて、25℃でずり速度D=383sec−1における粘度値を測定し、静置前後の粘度の変化量を静置前の値で除した値を変化率として百分率で示した。
【0159】
ブラックマトリックス用着色組成物の着色力は、ブラックマトリックス用着色材の濃度を0.08重量%に調整したPGMEA溶液を、石英セルに入れ、波長550nmにおける吸光係数を、「自記光電分光光度計UV−2100」(株式会社島津製作所製)を用いてそれぞれ測定し、下記数5に従って算出した比吸光係数εによって示した。比吸光係数の値が大きいほど、ブラックマトリックス用着色組成物の着色力が高いことを示す。
【0160】
<数5>
ε=ε/ε
ε:比吸光係数
ε:各ブラックマトリックス用着色材の単位重量当たりの吸光係数
ε:各ブラックマトリックス用着色材の原料として用いている黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックの単位重量当たりの吸光係数
【0161】
ブラックマトリックスの光沢度は、前記測定用塗布片を「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角60°の時の光沢度で示した。光沢度が高いほど、ブラックマトリックス用着色材料を配合したブラックマトリックス用着色組成物の分散性が優れていることを示す。
【0162】
ブラックマトリックスの耐光性は、前述のノンアルカリ基板上に形成したブラックマトリックス層の半分を金属製フォイルで覆い、「アイ スーパーUVテスター SUV−W13」(岩崎電気株式会社製)を用いて、紫外線を照射強度100mW/cmで6時間連続照射した後、金属製フォイルで覆うことによって紫外線が照射されなかった部分と紫外線照射した部分との色相(L値、a値、b値)をそれぞれ測定し、紫外線が照射されなかった部分の測定値を基準に、前記数3に従って算出したΔE値によって示した。
【0163】
ブラックマトリックスの電気抵抗値は、後述する処方によって調製したブラックマトリックス用着色組成物をクリアフィルム上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布して塗布片を作製し、被測定塗布膜を温度25℃、相対湿度60%の環境下に12時間以上暴露した後、幅6.5mmの金属製の電極に、幅6mmにスリットした塗布膜を、塗布面が金属製電極に接触するように置き、その両端に各170gのおもりを付け、電極に塗布膜を密着させた後、電極間に500Vの直流電圧をかけて電気抵抗値を測定した。
【0164】
カラーフィルターの透過率は、後述する方法によって作製したカラーフィルターを用いて、530nm、460nm及び620nmの各波長の透過率を、「自記光電分光光度計UV−2100」(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0165】
カラーフィルターのコントラストは、後述する方法によって作製したカラーフィルターをバックライト上で、2枚の偏光板の間に挟み、該偏光板の向きをパラレルにしたときの輝度(A)とクロスにしたときの輝度(B)を測定し、(A)/(B)で示した。
【0166】
<黒色複合粒子1:黒色複合粒子の製造>
シリカ1(平均一次粒子径:16nm、BET比表面積値:204.3m/g、耐光性ΔE値:5.36)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:TSF484:GE東芝シリコーン株式会社製)140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cmの線荷重で30分間混合攪拌を行った。なお、このときの攪拌速度は22rpmで行った。
【0167】
次に、黒色顔料C−1(種類:カーボンブラック、平均一次粒子径:22nm、BET比表面積値:103.0m/g、L値:23.12、耐光性ΔE値:6.42、体積固有抵抗値:2.0×10Ω・cm、酸量:0.09mol/kg、水系のζ電位:−4.1mV、溶剤系のζ電位:−1.6mV)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら30分間かけて添加し、更に392N/cmの線荷重で100分間混合攪拌を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆に黒色顔料C−1を付着させ、黒色複合粒子1を得た。なお、このときの攪拌速度は22rpmで行った。
【0168】
得られた黒色複合粒子1は、平均一次粒子径が18nmであり、BET比表面積値は114.2m/g、黒色顔料1の脱離の程度は4であった。黒色度L値は23.36、黒色度差ΔL値は99.0、着色力は94%、耐光性ΔE値は2.31、体積固有抵抗値は2.1×10Ω・cm、酸量は0.26mol/kg、水系におけるζ電位は−23.9mV、溶剤系におけるζ電位は−7.1mVであった。また、メチルハイドロジェンポリシロキサンの被覆量はC換算で0.54重量%であった。付着している黒色顔料C−1はC換算で49.94重量%(シリカ粒子粉末100重量部に対して100重量部に相当する)であった。
【0169】
得られた黒色複合粒子の電子顕微鏡写真の観察結果より、添加した黒色顔料C−1の粒子がほとんど認められないことから、黒色顔料C−1のほぼ全量がメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆に付着していることが認められた。
【0170】
<実施例1−1:ブラックマトリックス用着色材の製造>
3lのビーカーに、上記で得られた黒色複合粒子200gと0.65mol/lの水酸化ナトリウム水溶液2l(芯粒子であるシリカ粒子及び表面改質剤を溶解できる理論量の0.2倍)を入れ、pHを13.1とし、60℃で30分間攪拌した。これを濾過、水洗後、乾燥させてブラックマトリックス用着色材を得た。
【0171】
得られたブラックマトリックス用着色材は、平均一次粒子径が14nm、個数換算平均粒子径が20nm、体積換算平均粒子径が72nm、BET比表面積値が119.4m/gであった。ブラックマトリックス用着色材が内包するシリカ量は、Si換算で1.12重量%、黒色度L値は22.38、黒色度差ΔL値は103.3、着色力は105%、耐光性ΔE値は3.54、体積固有抵抗値は8.9×10Ω・cm、酸量は0.10mol/kgであり、水系におけるζ電位は−14.2mV、溶剤系におけるζ電位は−6.3mVであった。
【0172】
<実施例2−1:ブラックマトリックス用着色組成物(I)の製造>
前記ブラックマトリックス用着色材(実施例1−1)100.0重量部、分散剤(変性アクリルブロック共重合体)(商品名:DYSPERBYK−2001:ビックケミー製)30.0重量部、PGMEA270.0重量部を、ビーズミルを用いて4時間混合分散させて、ブラックマトリックス用着色組成物(I)を得た。
【0173】
得られた、ブラックマトリックス用着色組成物(I)の個数換算分散粒子径は18nmであり、体積換算分散粒子径は44nm、粘度の変化率は4.1%、比吸光係数ε(重量基準)は1.46であった。
【0174】
<実施例3−1:ブラックマトリックス用着色組成物(II)の製造>
前記ブラックマトリックス用着色組成物(I)400.0重量部、メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体100.0重両部を。ビーズミルを用いて2時間混合分散し、得られた混練物を5μmのグラスフィルターで濾過して、ブラックマトリックス用着色組成物(II)を得た。
【0175】
得られたブラックマトリックス用着色組成物(II)の個数換算分散粒子径は19nmであり、体積換算分散粒子径は47nm、粘度は17.3mPa・s、粘度の変化率は3.9%、波長550nmのε(重量基準)は1.48であった。
【0176】
ノンアルカリガラス基板(厚さ0.7mm)上に前記ブラックマトリックス用着色組成物(II)をスピンコートし、90℃で4分間、ホットプレートを用いてプリベークを行った後、超高圧水銀灯2.50kWを用い、400mJ/cmの光量でパターン露光を行った。次いで、炭酸ナトリウム水溶液で現像し、未露光部分のフォトレジスト層を除去し、更に、得られた着色膜を窒素雰囲気中で250℃で30分間加熱処理することによってブラックマトリックス(II)を得た。
【0177】
得られたブラックマトリックス(II)の光沢度は94%、耐光性はΔE値は3.49、電気抵抗値は7.4×10Ω/sq,比吸光係数ε(重量基準)は1.42であった。
【0178】
<実施例4−1:ブラックマトリックス用着色組成物(III)の製造>
前記ブラックマトリックス用着色組成物(II)(実施例2−1)500.0重量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート100.0重量部、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン5.0重量部をビーズミルを用いて2時間混合分散し、得られた混練物を1μmのグラスフィルターで濾過して、ブラックマトリックス用着色組成物(III)を得た。
【0179】
得られたブラックマトリックス用着色組成物(III)の個数換算分散粒子径は17nmであり、体積換算分散粒子径は44nm、粘度は17.1mPa・s、粘度の変化率は3.8%、波長550nmのε(重量基準)は1.51であった。
【0180】
ノンアルカリガラス基板(厚さ0.7mm)上に前記ブラックマトリックス用着色組成物(III)をスピンコートし、90℃で4分間、ホットプレートを用いてプリベークを行った後、超高圧水銀灯2.50kWを用い、400mJ/cmの光量でパターン露光を行った。次いで、炭酸ナトリウム水溶液で現像し、未露光部分のフォトレジスト層を除去し、更に、得られた着色膜を窒素雰囲気中で250℃で30分間加熱処理することによってブラックマトリックス(III)を得た。
【0181】
得られたブラックマトリックス(III)の光沢度は95%、耐光性はΔE値は3.45、電気抵抗値は7.5×10Ω/sq,比吸光係数ε(重量基準)は1.43であった。
【0182】
<実施例5−1:ブラックマトリックス用着色組成物(IV)の製造>
前記ブラックマトリックス用着色組成物(II)(実施例3−1)500.0重量部、p−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオアセテート5.0重量部を、サンドグラインダーを用いて分散し、得られた混練物を1μmのグラスフィルターで濾過して、ブラックマトリックス用着色組成物(IV)を得た。
【0183】
得られたブラックマトリックス用着色組成物(IV)の個数換算分散粒子径は18nmであり、体積換算分散粒子径は46nm、粘度は17.3mPa・s、粘度の変化率は3.9%、波長550nmのε(重量基準)は1.48であった。
【0184】
ノンアルカリガラス基板(厚さ0.7mm)上に前記ブラックマトリックス用着色組成物(IV)をスピンコートし、90℃で4分間、ホットプレートを用いてプリベークを行った後、超高圧水銀灯2.50kWを用い、400mJ/cmの光量でパターン露光を行った。次いで、炭酸ナトリウム水溶液で現像し、未露光部分のフォトレジスト層を除去し、更に、得られた着色膜を窒素雰囲気中で250℃で30分間加熱処理することによってブラックマトリックス(IV)を得た。
【0185】
得られたブラックマトリックス(IV)の光沢度は95%、耐光性はΔE値は3.49、電気抵抗値は7.5×10Ω/sq、比吸光係数ε(重量基準)は2.25であった。
【0186】
<実施例6−1:カラーフィルターの作製>
ノンアルカリガラス基板(厚さ0.7mm)上に形成したブラックマトリックス(II)上に、後述する組成によって作製した透明着色組成物(G)をスピンコートし、90℃で4分間、ホットプレートを用いてプリベークを行った後、超高圧水銀灯2.50kWを用い、400mJ/cmの光量でパターン露光を行った。次いで、炭酸ナトリウム水溶液で現像し、未露光部分のフォトレジスト層を除去し、更に、得られた着色膜を窒素雰囲気中で250℃で30分間加熱処理することによって着色膜(G)を得た。
【0187】
その後、同様にして、透明着色組成物(B)及び透明着色組成物(R)を用いて、それぞれの着色膜のパターンを形成した。
【0188】
得られたカラーフィルターの透過率は、波長530nmが91.6%、波長460nmが90.8%、波長620nmが92.9%であり、コントラストは2280であった。
【0189】
<透明着色組成物(G)の製造>
着色顔料(G−1)100.0重量部、分散剤(変性アクリルブロック共重合体)(商品名:DYSPERBYK−2001:ビックケミー製)30.0重量部、PGMEA270.0重量部を、ビーズミルを用いて4時間混合分散させて、透明着色組成物(I−G)を得た。
【0190】
前記透明着色組成物(I−G)400.0重量部、メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体100.0重両部を。ビーズミルを用いて2時間混合分散し、得られた混練物を5μmのグラスフィルターで濾過して、透明着色組成物(II−G)を得た。
【0191】
前記透明着色組成物(II−G)500.0重量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート100.0重量部、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン5.0重量部をビーズミルを用いて2時間混合分散し、得られた混練物を1μmのグラスフィルターで濾過して、透明着色組成物(G)を得た。
【0192】
<透明着色組成物(B)の製造>
着色顔料として着色顔料B−1を用いた以外は前記透明着色組成物(G)と同様にして、透明着色組成物(B)を得た。
【0193】
<透明着色組成物(R)の製造>
着色顔料として着色顔料R−1を用いた以外は前記透明着色組成物(G)と同様にして、透明着色組成物(R)を得た。
【0194】
前記実施例1〜6に従ってブラックマトリックス用着色材、ブラックマトリックス用着色組成物及びカラーフィルターを作製した。各製造条件及び得られたブラックマトリックス用着色材、ブラックマトリックス用着色組成物及びカラーフィルターの諸特性を示す。
【0195】
シリカ1〜3:
芯粒子として、表1に示す特性を有するシリカ粒子粉末1〜3を用意した。
【0196】
【表1】

【0197】
黒色顔料及び補色の有機顔料:
黒色顔料として、表2に示す特性を有する黒色顔料C−1〜C−3を、また補色としての有機顔料B−1を用意した。
【表2】

【0198】
<黒色複合粒子粉末の製造>
黒色複合粒子2〜4:
芯粒子の種類、表面改質剤の種類及び添加量、表面改質剤の被覆工程におけるエッジランナー処理の線荷重及び時間、黒色顔料の付着工程における黒色顔料の種類及び添加量、補色としての有機顔料の添加の有無及び添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間を種々変化させた以外は、前記黒色複合粒子1と同様にして黒色複合粒子を得た。
【0199】
このときの製造条件を表3に、得られた黒色複合粒子の諸特性を表4に示す。
【0200】
【表3】

【0201】
【表4】

【0202】
<ブラックマトリックス用着色材の製造>
実施例1−2〜1−9、比較例1−1〜1−3:
黒色複合粒子の種類、アルカリ溶解時における溶解液のpH及び添加するアルカリの理論量対比量、処理温度及び処理時間を種々変化させた以外は前記実施例1−1と同様にしてブラックマトリックス用着色材を得た。なお、黒色複合粒子の濃度(g/100ml)は、溶解液100mlに対する黒色複合粒子の重量(g)である。なお、実施例1−2は、乾燥工程として、凍結乾燥を行ったものである。
【0203】
このときの製造条件を表5に、得られたブラックマトリックス用着色材の諸特性を表6に示す。
【0204】
比較例1−4(特開平10−282311号公報 合成例1 追試実験)
カーボンブラックC−1(種類:カーボンブラック、平均粒子径:22nm、BET比表面積値:103.0m/g、L値:23.12、酸量:0.09mol/kg、水系のζ電位:−4.1mV、溶剤系のζ電位:−1.6mV)500部を50部のアニオン性分散剤を含む10%メタノール水溶液1,000部を加えて湿潤させ、更に4,000部の水を加え、スチールボールを充填したアトライターで均一で粘稠なスラリーになるまで充分に分散させた。得られたスラリーを網を通してスチールボールと分離し、水で希釈して10,000容量部とした。別に珪酸ナトリウム水溶液(無水珪酸として30%)334部を水で希釈して2,000容量部とした。又、2.50%硫酸水溶液2,000部を準備した。上記の顔料分散液を90℃に加熱し、希水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpHを10.0に調整した。そこへ上記で調製した希釈珪酸ナトリウム水溶液及び希硫酸水溶液を同時に滴下した。滴下量は反応液がアルカリ性を保つ様に制御して添加した。上記の両液の添加終了後、更に2時間攪拌を続け、希硫酸を加えpHを6.5〜7.0に調整する。次いでスラリーを濾過し、可溶性塩がなくなるまで洗浄し、乾燥し、表面処理カーボンブラック顔料600部を得た。
【0205】
得られた表面処理カーボンブラック顔料の諸特性を表6に示す。
【0206】
【表5】

【0207】
【表6】

【0208】
<ブラックマトリックス用着色組成物(I)>
実施例2−2〜2−9、比較例2−1〜2−8:
ブラックマトリックス用着色材の種類、分散剤の種類及び配合量並びに溶剤の配合量を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にしてブラックマトリックス用着色組成物(I)を得た。
【0209】
このときの製造条件を表7に、得られたブラックマトリックス用着色組成物(I)の諸特性を表8に示す。
【0210】
実施例2−10:
ブラックマトリックス用着色材100重量部、分散剤(変性アクリルブロック共重合体)(商品名:DYSPERBYK−2001:ビックケミー製)20.0重量部、PGMEA100重量部を混合し、50℃の加熱条件下で3本ロールミルを用いて混練分散させることにより、ブラックマトリックス用着色組成物(I)を得た。
【0211】
このときの製造条件を表7に、得られたブラックマトリックス用着色組成物(I)の諸特性を表8に示す。
【0212】
【表7】

【0213】
【表8】

【0214】
<ブラックマトリックス用着色組成物(II)>
実施例3−2〜3−9、比較例3−1〜3−8:
ブラックマトリックス用着色組成物(I)の種類及び樹脂の配合量を種々変化させた以外は、前記実施例3−1と同様にしてブラックマトリックス用着色組成物(II)を得た。
【0215】
このときの製造条件を表9に、得られたブラックマトリックス用着色組成物(II)の諸特性及びブラックマトリックス用着色組成物(II)を塗布して得られたブラックマトリックス用着色膜(II)の諸特性を表10に示す。
【0216】
実施例3−10:
実施例2−10に記載のブラックマトリックス用着色組成物(I)220.0重量部、とメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体100.0重量部を混合し、50℃の加熱条件下で3本ロールミルを用いて混練分散させることにより、ブラックマトリックス用着色組成物(II)を得た。
【0217】
このときの製造条件を表9に、得られたブラックマトリックス用着色組成物(II)の諸特性及びブラックマトリックス用着色組成物(II)を塗布して得られたブラックマトリックス用着色膜(II)の諸特性を表10に示す。
【0218】
【表9】

【0219】
【表10】

【0220】
<ブラックマトリックス用着色組成物(III)>
実施例4−2〜4−9、比較例4−1〜4−8:
ブラックマトリックス用着色組成物(II)の種類及び重合開始剤の配合量を種々変化させた以外は、前記実施例4−1と同様にしてブラックマトリックス用着色組成物(III)を得た。
【0221】
このときの製造条件を表11に、得られたブラックマトリックス用着色組成物(III)及びブラックマトリックス用着色組成物(III)を塗布して得られたブラックマトリックス用着色膜(III)の諸特性を表12に示す。
【0222】
実施例4−10:
実施例3−10に記載のブラックマトリックス用着色組成物(II)320.0重量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート100.0重量部及び2−(4−メトキシ−βスチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン2.5重量部を混合し、50℃の加熱条件下で3本ロールミルを用いて混練分散させることにより、ブラックマトリックス用着色組成物(III)を得た。
【0223】
このときの製造条件を表11に、得られたブラックマトリックス用着色組成物(III)の諸特性及びブラックマトリックス用着色組成物(III)を塗布して得られたブラックマトリックス用着色膜(III)の諸特性を表12に示す。
【0224】
【表11】

【0225】
【表12】

【0226】
<ブラックマトリックス用着色組成物(IV)>
実施例5−2〜5−9、比較例5−1〜5−14:
ブラックマトリックス用着色組成物(II)の種類及び配合量並びに光酸発生剤の種類及び配合量を種々変化させた以外は、前記実施例5−1と同様にしてブラックマトリックス用着色組成物(IV)を得た。
【0227】
このときの製造条件を表13に、得られたブラックマトリックス用着色組成物(IV)及びブラックマトリックス用着色組成物(IV)を塗布して得られたブラックマトリックス用着色膜(IV)の諸特性を表14に示す。
【0228】
実施例5−10:
実施例3−10で得られたブラックマトリックス用着色組成物(II)320.0重量部とp−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート2.5重量部を混合し、50℃の加熱条件下で3本ロールミルを用いて混練分散させることにより、ブラックマトリックス用着色組成物(IV)を得た。
【0229】
このときの製造条件を表13に、得られたブラックマトリックス用着色組成物及びブラックマトリックス用着色組成物(IV)を塗布して得られたブラックマトリックス用着色膜(IV)の諸特性を表14に示す。
【0230】
【表13】

【0231】
【表14】

【0232】
<カラーフィルター>
実施例6−2〜6−10、比較例6−1〜6−8:
ブラックマトリックス用着色膜の種類を種々変化させた以外は、前記実施例6−1と同様にしてカラーフィルターを得た。
【0233】
用いた有機顔料を表15に、このときの製造条件及び得られたカラーフィルターの諸特性を表16に示す。
【0234】
【表15】

【0235】
【表16】

【産業上の利用可能性】
【0236】
本発明に係るブラックマトリックス用着色材は、着色力及び漆黒性が高いとともに、ビヒクルへの分散性に優れ、高い電気抵抗値を有し、且つ、耐光性に優れているため、ブラックマトリックス用着色材として好適である。
また、該ブラックマトリックス用着色材を含むブラックマトリックス用着色組成物から得られたブラックマトリックス用着色膜は、着色力が高く、高い電気抵抗値を有し、且つ、耐光性に優れているため、ブラックマトリックス用着色膜として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色有機顔料及び/又はカーボンブラックにシリカが内包されていることを特徴とするブラックマトリックス用着色材であって、該ブラックマトリックス用着色材の酸量が0.3mol/kg以下であることを特徴とするブラックマトリックス用着色材。
【請求項2】
ブラックマトリックス用着色材に含まれるシリカが、ブラックマトリックス用着色材に対して、Si換算で0.01〜9.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のブラックマトリックス用着色材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のブラックマトリックス用着色材を溶剤に分散してなることを特徴とするブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項4】
請求項3記載のブラックマトリックス用着色組成物が、少なくとも一つの酸性基及び/又は潜在性酸性基を有する透明樹脂を含有することを特徴とするブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項5】
請求項4記載のブラックマトリックス用着色組成物が、光ラジカル重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する多官能性モノマーを含有することを特徴とする感光性が付与されたブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項6】
請求項4記載のブラックマトリックス用着色組成物が、光酸発生剤を含有することを特徴とする感光性が付与されたブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載のブラックマトリックス用着色組成物からなる塗膜形成物を含むことを特徴とするカラーフィルター。


【公開番号】特開2008−150428(P2008−150428A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337154(P2006−337154)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】