説明

ブレーキロータ

【課題】シャフトとの結合領域における高い強度、及びブレーキ体との接触領域における高い摩擦係数を有するブレーキロータを提供する。
【解決手段】ブレーキロータ10は、シャフトを受けるための同心貫通孔20を有するハブ部16を有する、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1の材料組成の中央内側領域12と、中央内側領域の上に同心状に配置された、摩擦表面を有するブレーキング部24を有するファイバ強化された熱硬化性樹脂の第2の材料組成の環状外側領域14と、を備えている。中央内側領域と環状外側領域とは、材料結合でお互いに接続されている。中央内側領域は、環状外側領域からシャフトへ高トルクを伝達するように形成されており、環状外側領域は、そのトライボロジ特性に関して最適化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキロータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキロータは、ブレーキ対象のシャフトに回転可能に固定された軸方向に変位可能な方法で接続されて、ブレーキ動作は、ブレーキ対象のシャフトの回転速度を遅くするために、ブレーキロータが2つの摩擦ライニングの間で所望のブレーキ動作に従った可変の度合いまでクランプされることによって、得られる。このタイプのブレーキロータは、例えば、紡績機械のスピンドルブレーキとして、電気サーボモータの急速停止ブレーキとして、あるいは機械工学におけるカップリングシステムとして、使用され得る。
【0003】
特許文献1は、支持プレートが設けられたハブを有するレール車両のためのブレーキディスクを開示している。2つのブレーキ摩擦プレートが実際の接触摩擦表面を形成し、リムの形態で支持プレート上に配置される。ブレーキ摩擦プレートは、例えばねじボルト、リベット、又は接着剤のような適切な接続要素によって、支持プレートに形状フィット又はクランプ可能な方法で接続されている。
【0004】
特許文献2は既に摩擦体を開示しており、これは一般的に支持体又は支持プレートとそれに配置された少なくとも一つの摩擦ライニングとを有している。この場合、サポート及びそれに配置された少なくとも一つの摩擦ライニングの両方が、摩擦体が一つの部品に形成されるように、補強ファイバ、熱硬化性バインダ、及び従来のフィラーに基づく硬化摩擦材料からなっている。このタイプの摩擦体は、ブレーキ、クラッチ、又は他の摩擦ライニングとして使用されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第602005000056号明細書
【特許文献2】独国特許公開第10358320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファイバ硬化された熱硬化性樹脂(デュロプラスト)と、高いμ値、及び用途に応じて中程度のμ値にさえ最適化された材料組成とから一つの部品に製造されたブレーキロータの場合、非常に高い機械的な負荷は、ブレーキロータのハブ領域が対応して低い強度を有しているので、ロータの破裂につながることがある。この理由は、高い摩擦係数とともに、強度試験における高い圧縮率及び歪み印加時の高い伸びを有し、且つその結果として振動が誘引され難い傾向を有する摩擦材料は、高い強度を達成することができないからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、シャフトとの結合領域における高い強度、及びブレーキ体との接触領域における高い摩擦係数を有するブレーキロータを提供するという目的に基づいている。
【0008】
この目的は、請求項1に規定されているブレーキロータによって達成される。本発明の有利な構成及び発展は、従属請求項に規定されている。
【0009】
特に、本発明は、ブレーキ対象のシャフトを受けるための同心貫通孔を有するハブ部を有するファイバ強化された熱硬化性樹脂(デュロプラスト)の第1の材料組成の中央内側領域と、前記中央内側領域の上に同心状に配置された、摩擦表面を有するブレーキング部を有するファイバ強化された熱硬化性樹脂(デュロプラスト)の第2の材料組成の環状外側領域と、を備えており、前記中央内側領域と前記環状外側領域とが材料結合でお互いに接続されており、前記中央内側領域が高い内部強度を有し且つ前記環状外側領域が高いμ値、及び後の用途に応じて中程度のμ値を有することが可能になっている、ブレーキロータを提供する。
【0010】
したがって、本発明は、ブレーキロータの放射状の内側部と放射状の環状外側部とが同様の支持材料から形成され、これがファイバ強化された熱硬化性樹脂であるが、放射状の環状外側部の材料組成が、外側部の表面が中程度の又は高いμ値を有することを確実にする摩擦材料を付加的に含む。2つの部分は材料結合でお互いに接続されており、それによって、内側部が高い内部強度に最適化され、且つ外側部が中程度の又は用途に応じて高いμ値に最適化される。しかし、ブレーキロータの内側領域及び外側領域の異なる特性にもかかわらず、一体的ロータは、それにもかかわらず、一つの同じ支持材料から製造されることができる。
【0011】
最適化された強度を有する中央内側領域を得るために、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1の材料組成が、1.0〜2.6g/cm3、好ましくは1.6〜2.3g/cm3、且つ特に2.1g/cm3の密度と、50〜200N/mm2、好ましくは80〜160N/mm2、且つ特に140N/mm2の引張強度と、70〜300N/mm2、好ましくは220〜260N/mm2、且つ特に240N/mm2の曲げ強度と、120〜375N/mm2、好ましくは300〜350N/mm2、且つ特に325N/mm2の圧縮強度と、を有していれば、好ましい。
【0012】
中央内側領域上に配置された環状外側領域の材料組成を最適化するときに、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第2の材料組成が、1〜2g/cm3、好ましくは1.4〜1.8g/cm3、且つ特に1.6g/cm3の密度と、10〜100N/mm2、好ましくは10〜50N/mm2、且つ特に29N/mm2の引張強度と、10〜100N/mm2、好ましくは50〜90N/mm2、且つ特に68N/mm2の曲げ強度と、50〜150N/mm2、好ましくは70〜110N/mm2、且つ特に86N/mm2の圧縮強度と、を有していると、有利である。
【0013】
本発明の単純で且つ好適な構成では、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成が、例えばフェノール樹脂、フェノール/メラミン樹脂、又はフェノール樹脂ベースのエポキシ樹脂のようなフェノールポリマ、又はアミノプラスチック、エポキシ樹脂、及び/又は架橋ポリアクリレートを含む。さらに、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の組成は、両方がメチルブリッジ(-CH2-)又はメチレンエーテルブリッジによってお互いに接続されているアミノプラスチック/フェノール樹脂改変化合物を含み得て、及びまた、エポキシ樹脂、架橋ポリアクリレート、及びさらに架橋ポリマを含み得る。
【0014】
その引張及び曲げ強度に関してブレーキロータを最適化するために、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成は、ブレーキロータの全体重量に対して、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の強化ファイバを含む。
【0015】
ここで、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成が、有機及び/又は無機の強化ファイバを含み、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成が、強化ファイバとして、ガラスファイバ、セラミックファイバ、アルミナファイバ、カーボンファイバ、アラミドファイバ、及び/又はメタリックファイバ、それに加えてセルロースファイバ、及びミネラルファイバを含めば、好都合である。
【0016】
ここで、強化ファイバが3〜15mm、好ましくは5〜10mmの平均ファイバ長を有すると有利である。
【0017】
ブレーキロータの環状外側領域の表面の、用途に応じて必要とされる中程度又は高いμ値を得るために、強化ファイバ及び熱硬化性樹脂とともに、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第2の材料組成が、添加物として、グラファイト、特別な硫黄化合物(硫化物)のような潤滑剤、例えば亜硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はそれらの混合物のような不活性フィラー、及びリサイトのような有機ベースの活性フィラー、及び窒化物、炭化物、酸化物、特別な硫黄化合物及び架橋又は未架橋エラストマのような無機の活性フィラーを含めば、有利である。
【0018】
ブレーキの迅速な動作のためにブレーキロータの容易な軸方向の変位可能性を損なうことなくブレーキロータとブレーキングシャフトとの間の最適なねじれ強度を達成するために、ハブ部の貫通孔の内周表面に、ブレーキ対象のシャフト上に回転可能に固定されて搭載されるための駆動手段が設けられていれば、好都合である。
【0019】
原則として、ハブ部の貫通孔が、三角形、方形、軸方向の溝を有する平面などの任意の所望の非円形形状を有し、これがブレーキ対象のシャフトの外周に対応して、回転可能に固定された搭載に適していることが、想像される。しかし、駆動手段が、ブレーキ対象のシャフト上のシャフト歯を受けるための歯によって形成されていると、有利である。したがって、ハブ部の貫通孔の内周表面は、好ましくは、ブレーキ対象のシャフトのシャフト歯を受けるための歯を有している。
【0020】
本発明に従ってブレーキロータの慣性の重量及び質量モーメントの最適化を達成するために、第1及び第2の材料組成の間の材料結合された移行の境界領域における中央内側領域及び環状外側領域の両方が、中央内側領域のハブ部及び環状外側領域のブレーキング部よりも小さい厚さを有すると、有利である。
【0021】
材料結合に加えて、中央内側領域及び環状外側領域の間の形状フィットを達成して、ブレーキングの間にブレーキロータのディスク平面に生じるせん断力の改善された受領を許容するために、本発明に従って、中央内側領域が、その周状側部に、一つ又はそれ以上の放射状に外側に向いたドライバ延長部を有し、これが、環状外側領域の一つ又はそれ以上の放射状に内側に向いたドライバ延長部と形状フィッティング係合にある。
【0022】
円形の形状フィットによる動作試験において、移行部にて、有害な影響は見出されていない。2つの材料の使用が主要な効果であるように見えた。これは、振動を低減した。加えて、ポリゴン形状の数多くの半円状移行の使用が、予見されることができる。
【0023】
しかし、ドライバ延長部の代わりに、中央内側領域及び環状外側領域の間の境界領域におけるファイバ強化された第1の材料組成から第2の材料組成への移行領域に不規則構造を設けて、それによって、2つの領域の間に同様に効果的に形状フィットを達成することができることもまた、可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本発明の第1の例示的な実施形態によって提供される本発明に従ったブレーキロータの平面図である。
【図1B】図1Aの線I−Iにおける本発明に従ったブレーキロータの断面図である。
【図2A】本発明の第2の例示的な実施形態によって提供される本発明に従ったブレーキロータの平面図である。
【図2B】図2Aの線I−Iにおける本発明に従ったブレーキロータの断面図である。
【図3A】本発明の第3の例示的な実施形態によって提供される本発明に従ったブレーキロータの平面図である。
【図3B】図3Aの線I−Iにおける本発明に従ったブレーキロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明が以下に、例えば、図面に描写されている例示的な実施形態に基づいて記述される。図面の様々な図において、お互いに対応する構成要素には同じ参照番号が与えられている。
【0026】
図1Aには、本発明の第1の例示的な実施形態によって提供される本発明に従ったブレーキロータ10の平面図が示されている。本発明に従ったブレーキロータ10は円形ディスクの形状を取っており、中央内側領域12と、その中央内側領域上に同心状に設けられた環状外側領域14とを備えている。内側領域12は、中央ハブ部16と、そのハブ部16に隣接している第1のフランジ部18とを有している。ハブ部16は、ブレーキ対象のシャフト(図示せず)を受けるために、ブレーキロータ10の外周に関して同心状に配置された貫通孔20を備えている。環状外側領域14は、第2のフランジ部22、ブレーキング部24、及び第2のフランジ部22とブレーキング部24との間に位置する移行領域26を備えている。
【0027】
図1Bに示されるように、図示されている例示的な実施形態の場合、ハブ部16は、貫通孔20の軸方向に、ブレーキング部24の領域におけるブレーキロータ10の厚さの約2〜3倍の厚さを有している。図示されている実施形態の場合、ハブ部の厚さは、約5〜15mm、特に約10〜15mmの範囲にある。内側領域12のハブ部16に隣接する第1のフランジ部18は、約2〜10mmの範囲内、且つ特に5mmの厚さを有する。外側領域14の第2のフランジ部22は、内側領域12の第1のフランジ部18と同じ厚さを有している。しかし、ブレーキロータ10の一方の側で、第2のフランジ部22が、その厚さに関してブレーキング部24を次第に超えることも可能である。ブレーキング部24は、約5〜15mmの範囲内、且つ特に10mmの厚さを有する。
【0028】
外側領域14の第2のフランジ部22とブレーキング部24との間には移行領域26が設けられており、これは、第2のフランジ部22の厚さとブレーキング部24の厚さとの間の漸次的な移行を生成する。しかし、ブレーキロータ10の機能的な能力を損ねることなく、ハブ部16の厚さをブレーキング部24の厚さと同じに選ぶこともまた可能である。第1及び第2のフランジ部18及び22を備える狭められた中間領域は、単に、ブレーキロータ10の低減された重量及び慣性の低減された質量モーメントを提供する。特に、例示的な実施形態に示された厚さの寸法が、使用の範囲及びサイズ、すなわち特に、ブレーキロータ10の要求される直径に非常に依存することが、考慮に入れられるべきである。示されているブレーキロータ10の例示的な実施形態の直径は、約100mmである。より大きな直径を有するブレーキロータの場合、ブレーキロータ10の対応する大きな厚さもまた、要求される。
【0029】
ブレーキロータ10を回転可能に固定されているが軸方向に変位可能な方法でブレーキ対象のシャフト上に、例えばドライブのブレーキ対象のシャフト上に配置するために、貫通孔20の内周表面には歯28が設けられていて、これがブレーキ対象のシャフト上の歯に係合する。
【0030】
シャフトへのブレーキロータ10の回転可能に固定された搭載のために示された歯28の代わりに、任意の他の既知の非円形形状もまた選ばれ得る。例えば、シャフトは、方形の又は平坦になって且つ軸方向の舌部を有して形成されたシャフトスタブを有し得て、その上に、ブレーキディスクが、対応する方形の開口又は対向する溝を有する平坦な開口を有して、配置されている。
【0031】
図1Bに示されているように、中央内側領域12はファイバ強化された熱硬化性樹脂(デュロプラスト)の第1の材料組成から製造され、環状外側領域14はファイバ強化された熱硬化性樹脂(デュロプラスト)の第2の材料組成から製造されている。フェノール樹脂、フェノール/メラミン樹脂、又はフェノール樹脂ベースのエポキシ樹脂のようなフェノプラスチック樹脂が、例えばこのための熱硬化性樹脂として使用され得る。
【0032】
第1及び第2の材料組成は、好ましくは、ブレーキロータの全体重量に対して10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の強化ファイバを含む。強化ファイバは、有機及び/又は無機ファイバ、例えば、ガラスファイバ、セラミックファイバ、アルミナファイバ、カーボンファイバ、アラミドファイバ、メタリックファイバ、それに加えてセルロースファイバ、及びミネラルファイバ、あるいはこれらのファイバの混合物であり得る。強化ファイバは、好ましくは、3〜15mm、好ましくは5〜10mmの平均ファイバ長を有する。
【0033】
本発明に従ったブレーキロータの場合に環状外側領域14のために使用される第2の材料組成は、メタリック、無機、又は有機成分に基づき得る強化ファイバとともに、好ましくは改変フェノール樹脂に基づく熱硬化性バインダを含み、これは、メラミン樹脂、ポリアミド化合物、エポキシ樹脂、クレソル樹脂、油成分、ポリイミド、及び架橋可能なポリアクリレートなどと、1〜15重量%の量で混合され得る。これらの摩擦材料はまた、通常の添加物として、グラファイト、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はそれらの混合物のような潤滑剤を、10〜25重量%、好ましくは15〜20重量%の量で、例えばAl2O3、SiO3、Cr2O3、Fe2O3、Fe3O4、ZrO2、MgO、CaO、SiC、PM、PC、Si3N4、及びAlN、及びそれらの混合物のような酸化物、窒化物、又は炭化物に基づく研磨剤を、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の量で含む。さらに、第2の材料組成は、硫酸バリウム又は硫酸カルシウム、加硫又は未加硫天然ゴム又は合成ゴムのようなフィラーを、1〜15重量%、好ましくは5〜10重量%の量で含む。
【0034】
引き続いて、中央内側領域12の第1の材料組成は、ハブ部16からブレーキ対象のシャフトへの最適な力の伝達を確実にして、ブレーキロータ10の高負荷時の破裂を避け且つ振動を避けるために、この領域が高い強度、特に高い引張強度を有する程度に、最適化される。外側領域14の第2の材料組成は、0.2〜0.6、好ましくは0.3〜0.5の範囲内にある広い範囲の摩擦係数をカバーするように、最適化される。
【0035】
ファイバ強化された熱硬化性樹脂の最適化された第1の材料組成は、1.0〜2.6g/cm3、好ましく1.6〜2.3g/cm3、且つ特に2.1g/cm3の密度を有する。ブレーキロータ10の内側領域12のこの材料組成の引張強度は、50〜200N/mm2、好ましくは80〜160N/mm2、且つ特に140N/mm2の引張強度を有する。曲げ強度は、70〜300N/mm2の範囲、好ましくは220〜260N/mm2、且つ特に240N/mm2にある。ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1の材料組成はまた、本発明によれば、120〜375N/mm2、好ましくは300〜350N/mm2、且つ特に325N/mm2の圧縮強度を有する。
【0036】
ブレーキロータ10の外側領域14のためのファイバ強化された熱硬化性樹脂の第2の材料組成は、1〜2g/cm3、好ましくは1.4〜1.8g/cm3、且つ特に1.6g/cm3の密度を有する。さらに、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第2の材料組成の引張強度は10〜100N/mm2、好ましくは10〜50N/mm2、且つ特に29N/mm2である。この材料の曲げ強度は10〜100N/mm2、好ましくは50〜90N/mm2、且つ特に68N/mm2である。第2の材料組成の圧縮強度は50〜150N/mm2、好ましくは70〜110N/mm2、且つ特に86N/mm2である。
【0037】
ファイバ強化された熱硬化性樹脂に基づいて形成され且つその外側領域14に付加的な摩擦材料を有する上述のパラメータを有するブレーキロータ10は、高い機械的及び熱的負荷時に、摩擦係数を増加させる添加物が無いことによる内側領域12におけるハブ部16の最適な強度、及び外側領域14のブレーキング部24の最適な摩擦効果の両方を示す一方で、それら2つの領域の間の良好な材料結合が、共有結合に基づく高い反応親和性のために、付加的に可能である。
【0038】
図1A及び1Bに示されているように、第1の材料組成の中央内側領域12と第2の材料組成の環状外側領域14との間の移行領域30は、ブレーキロータ10の狭い領域に位置し、したがって第1のフランジ部18の放射状外側部と第2のフランジ部22の放射状内側部との間の境界領域によって形成される。2つの材料組成の間のこの移行領域30は、図1Aに示されるように、円周領域に沿って配置され、且つ軸方向にブレーキロータ10を通して直線状に延在し得る。
【0039】
図2A及び2Bに示されているように、本発明の第2の実施形態に従ったブレーキロータ32の場合、中央内側領域12と環状外側領域14との間の形状フィットは、2つの領域12、14の間の材料結合のみでなく、2つの相互係合領域の間の形状フィットを提供することによって、さらに改善されることができる。この構成はまた、生じる振動を低減する効果も有する。
【0040】
ブレーキロータ32は、本発明の第1の例示的な実施形態のブレーキロータ10に実質的に対応し、唯一の相違は、第1の材料組成を有する中央内側領域12と第2の材料組成を有する環状外側領域14との間の移行領域34が改変されている点である。図2Aに示されているように、内側領域12は、複数の放射状に外側に向いたドライバ延長部36を有しており、これらが、内側領域12の円形内側部から星形に延在している。環状外側領域14は放射状に内側に向いたドライバ延長部を有しており、これらが、内側領域12のドライバ延長部36と形状フィットして係合している。図2Bに示されるように、移行領域34は、軸方向にブレーキロータ32を通して直線状に延在している。
【0041】
本発明の第1の例示的な実施形態に従ったブレーキロータ10及び本発明の第2の例示的な実施形態に従ったブレーキロータ32は単に、中央内側領域12と環状外側領域14との間の単なる材料結合を有するブレーキロータ、及び中央内側領域12と環状外側領域14との間に組み合わされた材料結合及び形状フィットを有するブレーキロータの例としての役割を果たすことが意図されている。
【0042】
中央内側領域12と環状外側領域14との間の力のフィットを最適化し且つ振動を抑制するために、例えば円形セグメント形状、方形形状、長斜方形形状、ハート型の形状、楕円型の移行形状などのような他の適切な形状もまた、ドライバ延長部として提供され得る。原則として、ドライバ延長部36の配置及び数の両方が、望まれるように選ばれることができる。これに関して、より大きなブレーキロータ直径の場合には、より小さな直径の場合に比べて、より多くのドライバ延長部が提供され得る。約100mmの直径を有する示されたブレーキロータの場合には、ドライバ延長部の数は、効果的には2〜50の範囲、特に20〜40、且つ好ましくは32であり、これらはまたそれから、ブレーキロータの動的な振る舞いが回転の間及び軸方向変位の間の両方で最適化されるように、好ましくは周方向に均一に分布される。さらに、中央内側領域12と環状外側領域14との間に、内旋状又は台形状の歯を設けることも可能である。
【0043】
図3A及び3Bには、本発明の第3の例示的な実施形態に従ったブレーキロータ38が示されている。このブレーキロータ38は、中央内側領域12と環状外側領域14との間の移行領域40の改変された形状を除いて、ブレーキロータ10及びブレーキロータ32に対応する。本発明のこの実施形態の場合、模式的に示された不規則構造42が、ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1の材料組成から第2の材料組成への移行領域に導入されている。これらの不規則構造42は、例えば、内側領域12と環状外側領域14との間の接続プロセスの前に既に存在し得るか、又は接続プロセスの間に機械的処理によって導入され得る。加えて、中央内側領域12と環状外側領域14との間の不規則構造42は、熱硬化性樹脂の流れによって生成され得る。したがって、本発明の実用的な構成では、移行領域30における内側領域12と外側領域14との間の不規則構造42は、ノルムで且つ完全に滑らかな移行領域30の例外である傾向にある。不規則構造42は、移行領域30における内側領域12と外側領域14との間の境界表面を提供し、その粗さ又は粒界がさらに、形成された形状フィットに基づく材料結合を強化する。それにもかかわらず、内側領域12と外側領域14との間に接続がなされると、2つの領域における樹脂の親和性が顕著な材料結合をもたらす結果となり、これは、大抵の機械的負荷に耐えることができる。
【0044】
したがって、本発明はブレーキロータ10、32、又は38を提供し、これらは、高い機械的負荷のための高い強度を有する内側領域と、約0.3〜0.5の間の高い摩擦係数並びに高い圧縮率及び良好なトライボロジ特性を有するブレーキング部を有する外側領域とを有しており、このブレーキロータは、製造が容易で、材料結合及び/又は形状フィットに基づく内側領域と外側領域との間の良好な形状フィットを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキロータ(10、32、38)であって、
ブレーキ対象のシャフトを受けるための同心貫通孔(20)を有するハブ部(16)を有するファイバ強化された熱硬化性樹脂(デュロプラスト)の第1の材料組成の中央内側領域(12)と、
前記中央内側領域(12)の上に同心状に配置された、摩擦表面を有するブレーキング部(24)を有するファイバ強化された熱硬化性樹脂(デュロプラスト)の第2の材料組成の環状外側領域(14)と、
を備えており、
前記中央内側領域(12)と前記環状外側領域(14)とが材料結合でお互いに接続されており、前記中央内側領域(12)が前記環状外側領域(14)から前記ブレーキ対象のシャフトへ高トルクを伝達するように形成されており、前記環状外側領域(14)がそのトライボロジ特性に関して最適化されている、ブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1の材料組成が、1.0〜2.6g/cm3、好ましくは1.6〜2.3g/cm3、且つ特に2.1g/cm3の密度と、50〜200N/mm2、好ましくは80〜160N/mm2、特に140N/mm2の引張強度と、70〜300N/mm2、好ましくは220〜260N/mm2、且つ特に240N/mm2の曲げ強度と、120〜375N/mm2、好ましくは300〜350N/mm2、且つ特に325N/mm2の圧縮強度と、を有することを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第2の材料組成が、1〜2g/cm3、好ましくは1.4〜1.8g/cm3、且つ特に1.6g/cm3の密度と、10〜100N/mm2、好ましくは10〜50N/mm2、且つ特に29N/mm2の引張強度と、10〜100N/mm2、好ましくは50〜90N/mm2、且つ特に68N/mm2の曲げ強度と、50〜150N/mm2、好ましくは70〜110N/mm2、且つ特に86N/mm2の圧縮強度と、を有することを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成が、フェノール樹脂、フェノール/メラミン樹脂、又はフェノール樹脂ベースのエポキシ樹脂のようなフェノプラスチックポリマを含むことを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成が、前記ブレーキロータ(10、32、38)の全体重量に対して、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の強化ファイバを含むことを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成が、有機及び/又は無機の強化ファイバを含むことを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項7】
請求項4に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第1及び第2の材料組成が、強化ファイバとして、ガラスファイバ、セラミックファイバ、アルミナファイバ、カーボンファイバ、アラミドファイバ、及び/又はメタリックファイバ、それらに加えてセルロースファイバ、及びミネラルファイバを含むことを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項8】
請求項6または7に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記強化ファイバが3〜15mm、好ましくは5〜10mmの平均ファイバ長を有することを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記強化ファイバ及び熱硬化性樹脂とともに、前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の第2の材料組成が、添加物として、グラファイト、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はそれらの混合物のような潤滑剤、酸化物、窒化物、又は炭化物に基づく研磨剤、及び硫酸バリウム又は硫酸カルシウム、加硫又は未加硫の天然ゴム又は合成ゴムのようなフィラーを含むことを特徴とするたブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記ハブ部(16)の前記貫通孔(20)の内周表面に、ブレーキ対象のシャフト上に回転可能に固定されて搭載されるための駆動手段(28)が設けられていることを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項11】
請求項10に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記駆動手段(28)が、ブレーキ対象のシャフト上のシャフト歯を受けるための歯によって形成されていることを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記第1及び第2の材料組成の間の材料結合された移行の境界領域における前記中央内側領域(12)及び前記環状外側領域(14)の両方が、前記中央内側領域(12)の前記ハブ部(16)及び前記環状外側領域(14)の前記ブレーキング部(24)よりも小さい厚さを有することを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記中央内側領域(12)が、その周側部に一つ又はそれ以上の放射状に外側に向いたドライバ延長部(36)を有し、これが、前記環状外側領域(14)の一つ又はそれ以上の放射状に内側に向いたドライバ延長部と形状フィッティング係合にあることを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のブレーキロータ(10、32、38)であって、
前記中央内側領域(12)及び前記環状外側領域(14)が、前記ファイバ強化された熱硬化性樹脂の前記第1の材料組成から前記第2の材料組成への移行領域(40)における不規則構造(42)による形状フィットで、お互いに接続されていることを特徴とするブレーキロータ(10、32、38)。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−226639(P2011−226639A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−58949(P2011−58949)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(504453144)レックス インダストリー−プロダクト グラフ フォン レックス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】