説明

ブレーキ前後配分制御装置

【課題】タイヤ内圧が低い場合の走行燃費を向上する。
【解決手段】前後輪のタイヤ内圧センサ20,21により検出された前後輪のタイヤ内圧信号が入力する各タイヤ内圧平均算出部42,43と、タイヤ内圧平均値の前後輪間の差に応じて前後のブレーキ力配分を設定するブレーキ配分変更設定部45と、ブレーキ圧に応じて前後の通常ブレーキ配分を設定するブレーキ前後配分設定部46と、タイヤ内圧により設定されたブレーキ力配分と通常ブレーキ配分との重みづけのゲインを設定するゲイン補正部47と、それらに基づいて前後のブレーキ力配分を設定するブレーキ前後配分設定部48とを設ける。前後輪の各タイヤ内圧の低い方を、ブレーキ力を大きくして内圧の上昇を早め、走行開始時から早い段階で前後輪の各タイヤ内圧を適正値にして、転がり抵抗の少ない走行を行うことができるようになり、走行燃費を向上し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後輪のブレーキ力の配分を制御するブレーキ前後配分制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行燃費を悪化させる原因の一つとしてタイヤの転がり抵抗の大きさが知られている。そこで、タイヤの転がり抵抗を低減させるために、タイヤのトレッドパターンやゴムの材質等の工夫によりタイヤの転がり抵抗を低減するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−181449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したようなトレッドパターンや材質等を工夫しても、タイヤ内圧(空気圧)が適正値以下の場合にはタイヤの性能を十分に発揮できず、その場合にはタイヤの転がり抵抗が増大して燃費が悪化してしまうという問題があった。
【0005】
一方、走行によりタイヤが発熱して暖まるとタイヤ内圧が高まることから、その状態で走行燃費に対するタイヤ内圧(タイヤの転がり抵抗)の適正値を設定している。そのため、タイヤが冷えている走行開始時にはタイヤ内圧が適正値よりも低いため、タイヤが暖まるまで燃費が悪い状態が続くという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、タイヤ内圧が低い場合の走行燃費を向上するために、本発明に於いては、前後輪(3,5)のタイヤ内圧を検出するタイヤ内圧検出手段(20,21)と、前後輪(3,5)のブレーキ力を配分するブレーキ力配分手段(42,43,45,48)とを有し、前記ブレーキ力配分手段(42,43,45,48)が、前記タイヤ内圧検出手段(20,21)により検出された前記タイヤ内圧が所定値より低い場合には、前記前後輪のブレーキ力の配分を前記前後輪の各タイヤ内圧の差に応じて、タイヤ内圧の高い方のブレーキ力の配分を大きくするものとした。
【0007】
これによれば、タイヤ内圧が低い場合に制動する時に、前後輪のタイヤ内圧の低い方のブレーキ力配分を大きくすることから、タイヤ内圧の低い方のブレーキによる発熱が大きくなり、タイヤ内圧の低い方のタイヤ内圧を積極的に高めることができ、前後輪全体としてのタイヤ内圧の適正値に達する時間を短縮化し得る。
【0008】
特に、前記ブレーキ力配分手段(42,43,45,48)が、前記タイヤ内圧が所定値より低い場合の前記前後輪(3,5)のブレーキ力の配分を、ブレーキ操作量の増大に応じてブレーキ力の前輪側の配分が大きくなる通常ブレーキ配分と前記タイヤ内圧の高い方のブレーキ力の配分を大きくするタイヤ内圧低下時ブレーキ配分とを合算して求め、かつ前記ブレーキ力の増大に応じて前記タイヤ内圧低下時ブレーキ配分の重みづけを減らすと良い。
【0009】
これによれば、ブレーキ力の増大に応じてタイヤ内圧低下時ブレーキ配分の重みづけを減らすことから、例えば後輪のタイヤ内圧方が低い場合に後輪のブレーキ力を大きくすることになる。その場合、例えばフロントエンジン搭載車では前輪荷重が後輪荷重よりも大く、後輪のブレーキ力を大きくする配分にすると後輪がロックし易くなるが、ブレーキ力の増大に応じてタイヤ内圧低下時ブレーキ配分の重みづけを減らすことから、上記の場合における後輪のブレーキ力を大きくする影響が低下するため、後輪のロック現象を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、タイヤ内圧が適正値より低い場合にブレーキの発熱によりタイヤを暖めてタイヤ内圧を高めることができると共に、前後輪の各タイヤ内圧の低い方のブレーキ力を大きくすることから、低い方のタイヤ内圧の上昇を早めることができる。それにより、前後輪の各タイヤ内圧に差があっても、全車輪のタイヤ内圧が適正値に達するまでの時間を早めることができ、早く転がり抵抗の少ない走行状態にすることができる。これにより、タイヤ内圧が低い状態による走行燃費の悪化状態を早期に解消し、走行燃費を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用された後輪操舵装置を適用した自動車の概略構成図である。
【図2】左後輪を示す背面図である。
【図3】第1の実施形態を示す後輪操舵制御部の概略ブロック図である。
【図4】前後輪タイヤ内圧差に対する前後のブレーキ配分を示す図である。
【図5】(a)はブレーキ圧に対する通常ブレーキ前後配分を示す図であり、(b)はブレーキ圧に基づく選択ゲインの設定を示す図である。
【図6】タイヤ内圧と転がり抵抗の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された後輪操舵装置としての後輪トー角可変制御装置10を適用した自動車Vの概略構成図である。説明にあたり、車輪やそれらに対して配置された部材、すなわち、タイヤや電動アクチュエータ等については、それぞれ数字の符号に左右を示す添字LまたはRを付して、例えば、後輪5L(左)、後輪5R(右)と記すとともに、総称する場合には、例えば、後輪5と記す。また、前後・左右・上下については車体1を基準とする。
【0013】
図1に示されるように、自動車Vは、タイヤ2L,2Rが装着された前輪3L・3Rと、タイヤ4L,4Rが装着された後輪5L,5Rとを備えている。これら前輪3L,3Rおよび後輪5L,5Rが、左右のフロントサスペンション6L,6Rおよびリヤサスペンション7L,7Rによってそれぞれ車体1に懸架されている。
【0014】
また、自動車Vには、ステアリングホイール8の操舵により、ラックアンドピニオン機構を介して左右の前輪3L,3Rを直接転舵する前輪操舵装置9と、左右のリヤサスペンション7L,7Rに対応して車体1の適所にそれぞれ取り付けられた左右の電動アクチュエータ11L,11Rとが設けられている。左右の電動アクチュエータ11L,11Rを駆動して後輪5L,5Rのトー角をそれぞれ独立に変化させる(制御する)ことができ、このようにして、後輪操舵装置としての後輪トー角可変制御装置10が設けられている。
【0015】
自動車Vには、各種システムを統括制御するECU(Electronic Control Unit)12が設けられていると共に、車速センサ13、操舵センサ14、その他の各種センサ(ヨーレイトセンサや横加速度センサ等)、ブレーキ圧センサ18がそれぞれ適所に配設されている。各センサの検出信号はECU12に入力して車両の挙動制御に用いられる。
【0016】
ECU12は、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成されており、通信回線を介して各センサ13・14・18等と接続され、また電動アクチュエータ11L,11Rとケーブル接続されている。またECU12は、通常走行時には、各センサ13・14・18等の検出結果に基づいて制御すべき後輪トー角を算出し、各電動アクチュエータ11L,11Rの変位量を決定した上で後輪5のトー角制御を行う。
【0017】
各電動アクチュエータ11L,11Rには、リヤサスペンション7L,7Rにそれぞれ連結された出力ロッドの位置を検出するアクチュエータ変位センサ17L,17R(トー角センサ)がそれぞれ設けられており、アクチュエータ変位センサ17L,17Rの信号がECU12に入力するようになっている。各電動アクチュエータ11L,11Rは、ECU12によって決定された所定量だけ出力ロッドを伸縮動し、後輪5L,5Rのトー角を正確に変化させることができる。
【0018】
このように構成された自動車Vによれば、左右の電動アクチュエータ11L,11Rを同時に対称的に変位させることにより、両後輪5L,5Rのトーイン/トーアウトを適宜な条件の下に自由に制御することができる。また、左右の電動アクチュエータ11L,11Rの一方を伸ばして他方を縮めれば、両後輪5L,5Rを左右に転舵することも可能である。
【0019】
さらに、左右の後輪5L,5Rには、各タイヤ4L,4Rのタイヤ内圧(空気圧)を検出するタイヤ内圧検出手段としての各タイヤ内圧センサ21L,21Rが取り付けられている。タイヤ内圧センサ21L,21Rは、図では後輪5L,5Rに取り付けられた圧力センサ付き送信機として示されているが、送信機からのセンサ信号を受信する無線式の受信機との組み合わせであり、その受信機はECU12内に設けられていて良い。
【0020】
次に、後輪トー角可変制御装置10の具体的構成について左側リヤサスペンション7Lの背面図である図2を参照して説明する。なお、右側リヤサスペンションについても左右勝手違いだけで同一構造であって良いため、図2では左側サスペンションであるが、L・Rを省略して説明する。
【0021】
リヤサスペンション7は、ダブルウィッシュボーン式であって良く、後輪5が一体的に組み付けられたハブ22を回転自在に支持するナックル23と、ナックル23を上下動可能に車体1に連結するアッパアーム24およびロアアーム25と、後輪5の上下動に対する緩衝装置としての懸架スプリング付きダンパ26等で構成されている。そして、ナックル23と車体1との間には、後輪5のトー角を変化させるための上記電動アクチュエータ11が連結されている。
【0022】
なお、アッパアーム24およびロアアーム25の各基端部(車体連結部)はそれぞれゴムブッシュジョイント27・28を介して車体1に上下方向に回動自在に連結され、アッパアーム24およびロアアーム25の各先端部(ナックル連結部)はそれぞれボールジョイント29・30を介してナックル21の上下部に転舵方向に回動自在に連結されている。懸架スプリング付きダンパ26は、上端が車体1に結合され、下端がゴムブッシュジョイント31を介してナックル23の上部に連結されている。このようにして左側リヤサスペンションが構成されており、公知の四輪独立式サスペンションと同様に左後輪5Lは他の車輪とは独立して路面変化に追従可能である。また、上記したように右後輪5Rも同じである。
【0023】
そして、電動アクチュエータ11の一端がゴムブッシュジョイント31を介して車体1に連結され、その他端がゴムブッシュジョイント32を介してナックル23の車両後側部分に連結されている。このような構成を採ることにより、電動アクチュエータ11の出力ロッドが伸長駆動されると、ナックル23の車両後側部分が車幅方向外側に回動することから、後輪5のトー角は車両進行方向に対して内向き(トーイン側)に変化する。逆に、電動アクチュエータ11の出力ロッドが収縮駆動されると、ナックル23の後部が車幅方向内側に回動することにより、後輪5のトー角は車両進行方向に対して外向き(トーアウト側)に変化する。
【0024】
なお、本図示例のサスペンションは、電動アクチュエータ11を駆動することによりトー角を変えることができるが、電動アクチュエータ11を中立位置にした状態でトー角をパッシブ制御する公知の独立式サスペンションと同じジオメトリで組み立てられている。
【0025】
また、本図示例の車両のブレーキ形式は四輪ディスクブレーキであって良く、図1に示されるように各前後輪3,5にはそれぞれブレーキディスク33(L,R),34(L,R)が配設されている。図2に代表して示されるように、ブレーキディスク34(33)は、ハブ22と一体に形成されている。また、各ブレーキディスク33,34に対応して、ブレーキパッド及びブレーキピストンを備えるブレーキキャリパ35(L,R),36(L,R)がそれぞれ配設されている。
【0026】
自動車Vには、ブレーキペダル36に連動するマスターシリンダ37が設けられており、マスターシリンダ37と各ブレーキキャリパ35,36とが配管を介して接続されている。また、本実施の形態におけるマスターシリンダ37は、前後輪3,5に対する前後のブレーキ力の配分を可変可能な構造(例えば前後用の各油圧制御弁を備える)である。そして、ブレーキペダル36の踏み込み量に応じてマスターシリンダ37に発生する油圧(ドライバー要求ブレーキ圧)を、ECU12からのブレーキ配分信号に基づいて前後のブレーキ力として配分するようになっている。
【0027】
次に、本発明に基づく制御要領を図3の概略ブロック図を参照して説明する。図3に、第1の実施の形態として、ECU12における制御回路の一部を構成するブレーキ前後配分制御装置としてのブレーキ前後配分制御部41を示す。なお、そのブロック構成は、IC回路により構成されたり、CPUのプログラムにより構成されたりして良いものである。
【0028】
図3において、ブレーキ前後配分制御部41には、前輪3のタイヤ内圧センサ20により検出された前輪タイヤ内圧Pfl,Pfrの各信号が入力する前輪タイヤ内圧平均算出部42と、後輪5のタイヤ内圧センサ21により検出された後輪タイヤ内圧Prl,Prrの各信号が入力する後輪タイヤ内圧平均算出部43と、それら各算出部42,43により算出された各平均値Pf,Prの各信号が入力する減算器44と、その減算結果に基づいて前後輪3,5のブレーキ力の前後配分(タイヤ内圧基準前後比A)を設定するブレーキ配分変更設定部45と、ブレーキ圧センサ18からのブレーキ圧信号が入力しかつその信号値に基づいて通常走行時の前後輪3,5のブレーキ力の前後配分(通常走行時前後比B)を設定する通常ブレーキ配分設定部46と、ブレーキ圧信号が入力しかつその信号値に基づいて選択ゲインgを設定するゲイン補正部47と、ブレーキ配分変更設定部45と通常ブレーキ配分設定部46とゲイン補正部47とからの各信号値に基づいてブレーキ力の前後配分を最終的に設定しかつそのブレーキ力の前後配分による制御信号をマスターシリンダ37に出力するブレーキ前後配分設定部48とが設けられている。前輪タイヤ内圧平均算出部42と後輪タイヤ内圧平均算出部43とによりタイヤ内圧検出手段が構成され、ブレーキ配分変更設定部45とブレーキ前後配分設定部48とによりブレーキ力配分手段が構成されている。
【0029】
なお、オプションとして各平均値Pf,Prの各信号の平均値(前後輪のタイヤ内圧平均値)を算出してブレーキ配分変更設定部45に出力するタイヤ内圧平均算出部49を設けても良い。
【0030】
このようにして構成されたブレーキ前後配分制御部41では、前輪タイヤ内圧平均算出部42で前輪3のタイヤ内圧平均値Pf(=(Pfl+Pfr)/2)を算出すると共に、後輪タイヤ内圧平均算出部43で後輪5のタイヤ内圧平均値Pr(=(Prl+Prr)/2)を算出する。減算器44では前輪タイヤ内圧平均値Pfから後輪タイヤ内圧平均値Prを減算し、ブレーキ配分変更設定部45では、図4に示されるように減算値D(=Pf−Pr)に基づいてブレーキ力の前後配分(タイヤ内圧基準前後比)Aを設定する。
【0031】
図4では、減算値Dが0(Pf=Pr)の場合に前輪3のブレーキ圧を後輪5のブレーキ圧の0.6倍としている。そして、前輪タイヤ内圧平均値Pfが後輪タイヤ内圧平均値Prよりも大きい場合には減算値上限値D1に対応する前後配分Aの上限値A1を設定し、逆の場合には減算値下限値D2に対応する前後配分Aの下限値A2を設定し、上限値(D1,A1)と下限値(D2,A2)との間を線形に変化させるようにしている。この場合、前輪タイヤ内圧平均値Pfが後輪タイヤ内圧平均値Prよりも大きくなるに連れて前輪3のブレーキ力を増大させ、逆の場合には後輪5のブレーキ力を増大させる前後配分Aを設定する。
【0032】
また、ドライバーのブレーキ操作に応じてブレーキ圧が増減し、通常ブレーキ配分設定部46では、図5(a)に示されるようにブレーキ圧に応じて通常走行時のブレーキ力の前後配分(通常走行時前後比)Bを設定する。ブレーキ圧が高い程、急停止が要求されるため、前輪3のブレーキ力を高めるために前後配分Bが増大するように設定される。
【0033】
また、ゲイン補正部47では、図5(b)に示されるようにブレーキ圧の増大に応じて選択ゲインgを設定する。選択ゲインgは、ブレーキ圧が0で1.0、ブレーキ圧が上限値PB1で0になるように、ブレーキ圧の増大に反比例するように設定されている。
【0034】
そして、ブレーキ前後配分設定部48では、ブレーキ配分変更設定部45からの前後配分Aと、通常ブレーキ配分設定部46からの前後配分Bと、ゲイン補正部47からの選択ゲインgとを用いて、次式によりブレーキ力前後配分値Cを求める。
C=A×g+B×(1−g) …(1)
【0035】
上記式(1)により求められたブレーキ力前後配分値Cの信号がマスターシリンダ37に出力され、マスターシリンダ37では、ブレーキ力前後配分値Cに合わせて前後のブレーキ力の配分を行う。式(1)で選択ゲインgを、前後配分Aには積算し、通常ブレーキ前後配分Bには1に対する補数(1−g)を積算しており、ブレーキ圧が高くなるに連れて前後配分Aの重みづけが低下する。前後配分Aは、前後のタイヤ内圧平均値Pf,Prの偏差に基づいて設定される値であり、後輪5のブレーキ配分に重みを付ける場合がある。そのような場合にブレーキ圧を高くすると、後輪5がロックする不具合が考えられるため、ブレーキ圧が高くなるに連れて前後配分Aの重み付けを減らすようにしている。
【0036】
ここで、図6に示されるように、タイヤ内圧に対する転がり抵抗の関係には、走行燃費に悪影響を与えない所定値Rdに対するタイヤ内圧の適正下限値Ptがある。タイヤ内圧が適正下限値Pt以上の範囲では転がり抵抗が走行燃費に対して悪影響を及ぼさない範囲とすることができる。そして、走行開始時にタイヤが冷えている場合には、走行によりタイヤが発熱することによりタイヤ内圧が高くなり、タイヤが暖まってタイヤ内圧が適正下限値Pt以上になったら、走行燃費が良好な状態となる。
【0037】
タイヤが暖まるには、走行によるタイヤ自身の発熱の他に、ブレーキ時に発生するブレーキ熱がある。図2に示される後輪5を例にすると、ブレーキ熱はハブ22から後輪(ホイール)5に伝わり、タイヤ4に伝達される。それにより、ブレーキ作動時にタイヤ4が暖められる。この場合、より効果的にするために、例えばホイールの材質を熱伝達率高い材料で製作し、スポーク部分からの放熱を抑制するために熱伝達率の低い材料で覆うと良い。
【0038】
また、タイヤ内圧に対する転がり抵抗の関係は、図6に示されるようにタイヤ内圧が低い場合には転がり抵抗が大となる。転がり抵抗が大きい場合には走行燃費が悪化する。そこで、走行燃費に悪影響を与えない所定値Rdに対するタイヤ内圧の適正下限値を図のPtとすると、タイヤ内圧が適正下限値Pt以上の範囲では転がり抵抗が走行燃費に対して悪影響を及ぼさない範囲とすることができる。
【0039】
この場合、ブレーキ配分変更設定部45で、上記したタイヤ内圧平均算出部49から出力されるタイヤ内圧平均値が適正下限値Pt以上か否かを判別するようにし、下回っていると判定した場合には、減算器44から出力される減算値Dに基づいて図4のマップによるブレーキ力の配分Aを用いるようにすることができる。この場合、タイヤ内圧平均値が適正下限値Pt以上であると判定された場合には配分Aは出力されず、ブレーキ前後配分設定部48では、ブレーキ力前後配分値Cを(B×(1−g))とする。
【0040】
また、後輪トー角可変制御装置10との協調手法を用いることができる。例えば、ECU12により、タイヤ内圧平均値に応じて後輪5L,5Rのトーイン量δを求めるようにする。そのトーイン量δは、タイヤ内圧平均値が低いほど大きく(上限値は設定する)、適正下限値Pt以上では0として良い。そして、タイヤ内圧平均値が適正下限値Ptより低い場合には、ブレーキ時にトーイン量δを設定し、そのトーイン量δになるように電動アクチュエータ11L,11Rを駆動する。後輪5にトーインが付くことによりタイヤ4に引きずりが生じてタイヤ4自身の発熱が大きくなり、走行開始後に制動場面がある場合に、より早期にタイヤ内圧を高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
3 前輪
5 後輪
20,21 タイヤ内圧センサ(タイヤ内圧検出手段)
42 前輪タイヤ内圧平均算出部(タイヤ内圧検出手段)
43 後輪タイヤ内圧平均算出部(タイヤ内圧検出手段)
45 ブレーキ配分変更設定部(ブレーキ力配分手段)
48 ブレーキ前後配分設定部(ブレーキ力配分手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪のタイヤ内圧を検出するタイヤ内圧検出手段と、前後輪のブレーキ力を配分するブレーキ力配分手段とを有し、
前記ブレーキ力配分手段が、前記タイヤ内圧検出手段により検出された前記タイヤ内圧が所定値より低い場合には、前記前後輪のブレーキ力の配分を前記前後輪の各タイヤ内圧の差に応じて、タイヤ内圧の高い方のブレーキ力の配分を大きくすることを特徴とするブレーキ前後配分制御装置。
【請求項2】
前記ブレーキ力配分手段が、
前記タイヤ内圧が所定値より低い場合の前記前後輪のブレーキ力の配分を、ブレーキ操作量の増大に応じてブレーキ力の前輪側の配分が大きくなる通常ブレーキ配分と前記タイヤ内圧の高い方のブレーキ力の配分を大きくするタイヤ内圧低下時ブレーキ配分とを合算して求め、かつ前記ブレーキ力の増大に応じて前記タイヤ内圧低下時ブレーキ配分の重みづけを減らすことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ前後配分制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−221851(P2010−221851A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71411(P2009−71411)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】