説明

ブレーキ装置

【課題】 前輪の制動力よりも後輪の制動力が小さくなるようにブレーキ液圧を調整するEBD(エレクトロニック・ブレーキフォース・ディストリビューション)の作動時に、スレーブシリンダの電動モータの制御量を適切に設定する。
【解決手段】 ブレーキペダルの操作量に応じてスレーブシリンダの電動モータの制御量マップ検索により決定する際に、スレーブシリンダが発生したブレーキ液圧を前輪の制動力よりも後輪の制動力が小さくなるように調整するEBDが作動すると、後輪の1輪あるいは2輪に対してEBDが作動するかに応じて電動モータの制御量を補正するので、後輪の制動力を変更したことでスレーブシリンダおよび後輪のホイールシリンダ間の液路の液損が減少しても、その液損の減少を補償するように電動モータの制御量を設定して適切な制動力が得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者により操作されるブレーキ操作子と、電動モータにより作動してブレーキ液圧を発生するスレーブシリンダと、前記ブレーキ操作子の操作量に応じて前記電動モータの制御量を決定する制御手段と、前記ブレーキ液圧により作動して前輪および後輪をそれぞれ制動するホイールシリンダと、前輪の制動力よりも後輪の制動力が小さくなるように前記ブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整手段とを備えた制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の制動操作を電気信号に変換してスレーブシリンダを作動させ、このスレーブシリンダが発生するブレーキ液圧でホイールシリンダを作動させる、いわゆるBBW(ブレーキ・バイ・ワイヤ)式ブレーキ装置が、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開2005−343366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、かかるBBW式ブレーキ装置では、運転者によるブレーキペダルの操作量(例えば、ブレーキペダルの踏力、ブレーキペダルのストローク、あるいはマスタシリンダの発生液圧等)に応じて、スレーブシリンダのピストンの目標ストロークを算出し、この目標ストロークが得られるように電動モータの目標回転角を決定してる。
【0004】
このとき、スレーブシリンダのピストンのストロークと、発生するブレーキ液圧との関係は、スレーブシリンダおよびホイールシリンダ間で発生する液損の影響を受けるため、つまりブレーキ液圧によるブレーキ配管の拡径の影響や、ホイールシリンダのシール部材の変形の影響を受けるため、前記液損を考慮してピストンの目標ストロークから電動モータの目標回転角を決定している。
【0005】
しかしながら、車両の積載状態等に応じて前後輪の制動力配分変化させて制動性能を向上させるEBD(エレクトロニック・ブレーキフォース・ディストリビューション)の機能を備えた車両では、EBDが作動して後輪のホイールシリンダへのブレーキ液圧の増加を抑制したような場合に、スレーブシリンダと後輪のホイールシリンダとを接続する液路の液損が減少するため、スレーブシリンダのピストンの目標ストロークから電動モータの回転角を従来どおりに算出していると、ピストンの目標ストロークが過大になって適切な制動力が得られなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、前輪の制動力よりも後輪の制動力が小さくなるようにブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整手段の作動時に、スレーブシリンダの電動モータの制御量を適切に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、運転者により操作されるブレーキ操作子と、電動モータにより作動してブレーキ液圧を発生するスレーブシリンダと、前記ブレーキ操作子の操作量に応じて前記電動モータの制御量を決定する制御手段と、前記ブレーキ液圧により作動して前輪および後輪をそれぞれ制動するホイールシリンダと、前輪の制動力よりも後輪の制動力が小さくなるように前記ブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整手段とを備えた制動装置において、前記制御手段は、前記ブレーキ液圧調整手段の作動時に前記電動モータの制御量を補正することを特徴とするブレーキ装置が提案される。
【0008】
尚、実施の形態のブレーキペダル12は本発明のブレーキ操作子に対応し、実施の形態のABS装置24は本発明のブレーキ液圧調整手段に対応し、実施の形態の電子制御ユニットUは本発明の制御手段に対応する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、ブレーキ操作子の操作量に応じてスレーブシリンダの電動モータの制御量を決定する制御手段が、スレーブシリンダが発生したブレーキ液圧を前輪の制動力よりも後輪の制動力が小さくなるように調整するブレーキ液圧調整手段の作動時に電動モータの制御量を補正するので、後輪の制動力を変更したことでスレーブシリンダおよび後輪のホイールシリンダ間の液路の液損が減少しても、その液損の減少を補償するように電動モータの制御量を設定して適切な制動力が得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図7は本発明の実施の形態を示すもので、図1は車両用ブレーキ装置の正常時の液圧回路図、図2は図1に対応する異常時の液圧回路図、図3はスレーブシリンダの制御系のブロック図、図4はピストンストロークと発生するブレーキ液圧との関係を示すマップ、図5はEBD作動時の作用を説明するタイムチャート、図6は図4に対応する、EBD作動時のマップ、図7はEBD作動時の作用を説明するフローチャートである。
【0012】
図1に示すように、タンデム型のマスタシリンダ11は、運転者がブレーキペダル12を踏む踏力に応じたブレーキ液圧を出力する二つの第1液圧室13A,13Bを備えており、一方の第1液圧室13Aは液路Pa,Pb,Pc,Pd,Peを介して例えば左前輪および右後輪のディスクブレーキ装置14,15のホイールシリンダ16,17に接続されるとともに、他方の第1液圧室13Bは液路Qa,Qb,Qc,Qd,Qeを介して例えば右前輪および左後輪のディスクブレーキ装置18,19のホイールシリンダ20,21に接続される。
【0013】
尚、液路Pc,Qcと液路Pd,Pe;Qd,Qeとの間には、車輪のロックを抑制するABS(アンチロック・ブレーキ・システム)装置24が介装され、このABS装置24は、左右の車輪の制動力に差を発生させることで車両の操縦安定性を高めるためのVSA(ビークル・スタビリティ・アシスト)の機能および車両の積載状態等に応じて前後輪の制動力配分を変化させて制動性能を向上させるEBD(エレクトロニック・ブレーキフォース・ディストリビューション)の機能も備えている。
【0014】
液路Pa,Pb間に常開型電磁弁である遮断弁22Aが配置され、液路Qa,Qb間に常開型電磁弁である遮断弁22Bが配置され、液路Pb,Qbと液路Pc,Qcとの間にスレーブシリンダ23が配置される。
【0015】
液路Qaから分岐する液路Ra,Rbには、常閉型電磁弁である反力許可弁25を介してストロークシミュレータ26が接続される。ストロークシミュレータ26は、シリンダ27にスプリング28で付勢されたピストン29を摺動自在に嵌合させたもので、ピストン29の反スプリング28側に形成された液室30が液路Rbに連通する。
【0016】
スレーブシリンダ23のアクチュエータ51は、電動モータ52の回転軸に設けた駆動ベベルギヤ53と、駆動ベベルギヤ53に噛合する従動ベベルギヤ54と、従動ベベルギヤ54により作動するボールねじ機構55とを備える。アクチュエータハウジング56に一対のボールベアリング57,57を介してスリーブ58が回転自在に支持されており、このスリーブ58の内周に出力軸59が同軸に配置されるとともに、その外周に従動ベベルギヤ54が固定される。
【0017】
スレーブシリンダ23のシリンダ本体36の内部に一対のリターンスプリング37A,37Bで後退方向に付勢された一対のピストン38A,38Bが摺動自在に配置されており、ピストン38A,38Bの前面に一対の第2液圧室39A,39Bが区画される。後側のピストン38Aの後端に前記出力軸59の前端が当接する。一方の第2液圧室39Aはポート40A,41Aを介して液路Pb,Pcに連通し、他方の第2液圧室39Bはポート40B,41Bを介して液路Qb,Qcに連通する。
【0018】
液路Pc,Qcと液路Pd,Pe;Qd,Qeとの間に配置されるABS装置24の構造は周知のもので、左前輪および右後輪のディスクブレーキ装置14,15の系統と、右前輪および左後輪のディスクブレーキ装置18,19の系統とに同じ構造のものが設けられる。その代表として左前輪および右後輪のディスクブレーキ装置14,15の系統について説明すると、液路Pcと液路Pd,Peとの間に一対の常開型電磁弁よりなるインバルブ42,42が配置され、インバルブ42,42の下流側の液路Pd,Peとリザーバ43との間に常閉型電磁弁よりなるアウトバルブ44,44が配置される。リザーバ43と液路Pcとの間に、一対のチェックバルブ45,46に挟まれた液圧ポンプ47が配置されており、この液圧ポンプ47は電動モータ48により駆動される。
【0019】
ABS装置24は、VSA機能を発揮するために、更に以下のような構成を備えている。即ち、液路Pcが液路Pd,Peに分岐する手前位置と、液路Qcが液路Qd,Qeに分岐する手前位置とに、それぞれ開度を任意に制御可能な常開型電磁弁よりなるレギュレータバルブ61,61が配置される。またチェックバルブ45,45に対して直列にチェックバルブ62,62が配置されており、チェックバルブ45,45とチェックバルブ62,62との間から分岐して前記レギュレータバルブ61,61の上流側の液路Pc,Qcに連なる液路Pf,Qfに、それぞれ常閉型電磁弁よりなるサクションバルブ63,63が配置される。
【0020】
図3は、スレーブシリンダ23の作動を制御する電子制御ユニットUのブロック図であって、スレーブシリンダ23に発生させるべき目標ブレーキ液圧が入力された液圧−ストローク変換手段71は、前記目標ブレーキ液圧を、その目標ブレーキ液圧を発生させるピストン38A,38Bのストロークに、マップ検索により変換する。ストローク−モータ回転角変換手段72は、前記ピストン38A,38Bのストロークに所定のゲインを乗算し、電動モータ52の目標回転角を算出する。そしてモータ回転角センサSbで検出した電動モータ52の実回転角と前記目標回転角との偏差を偏差算出手段73で算出し、その偏差算出手段73で算出した偏差に基づいて、PI演算手段74が前記偏差をゼロに収束させるための電動モータ52の制御量を演算する。
【0021】
尚、電子制御ユニットUには、前記モータ回転角センサSbに加えて、液路Qaに設けた液圧センサSaおよび各車輪に設けた車輪速センサSc…が接続されており、前記スレーブシリンダ23の電動モータ52に加えて、遮断弁22A,22B、反力許可弁25およびABS装置24の作動を制御する。
【0022】
図4は、液圧−ストローク変換手段71で用いられる液圧−ストローク変換マップの一例を示すもので、例えば、Aのブレーキ液圧を発生させるためのピストン38A,38BのストロークはBとなる。このときAのブレーキ液圧には、スレーブシリンダ23からホイールシリンダ16,17;20,21へのブレーキ液圧の伝達経路の液損、具体的には、ホースの拡張による液損、パイプの拡張による液損、右後輪のホイールシリンダ17における液損、左後輪のホイールシリンダ21における液損、右前輪のホイールシリンダ20における液損および左前輪のホイールシリンダ16における液損が含まれる。つまり、液圧−ストローク変換手段71で用いられる液圧−ストローク変換マップは、上記各液損を考慮して決定されている。
【0023】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0024】
システムが正常に機能する正常時には、図1に示すように、常開型電磁弁よりなる遮断弁22A,22Bが励磁されて閉弁し、常閉型電磁弁よりなる反力許可弁25が励磁されて開弁する。この状態で液路Qaに設けた液圧センサSaが運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、スレーブシリンダ23のアクチュエータ51が作動する。即ち、電動モータ52を一方向に駆動すると、駆動ベベルギヤ53、従動ベベルギヤ54およびボールねじ機構55を介して出力軸59が前進することで、出力軸59に押圧された一対のピストン38A,38Bが前進する。ピストン38A,38Bが前進を開始した直後に液路Pb,Qbに連なるポート40A,40Bが閉塞されるため、第2液圧室39A,39Bにブレーキ液圧が発生し、このブレーキ液圧はディスクブレーキ装置14,15;18,19のホイールシリンダ16,17;20,21に伝達されて各車輪を制動する。
【0025】
このとき、マスタシリンダ11の他方の第1液圧室13Bが発生したブレーキ液圧は開弁した反力許可弁25を介してストロークシミュレータ26の液室30に伝達され、そのピストン29をスプリング28に抗して移動させることで、ブレーキペダル12のストロークを許容するとともに擬似的なペダル反力を発生させて運転者の違和感を解消することができる。
【0026】
そしてスレーブシリンダ23が発生するブレーキ液圧が、液路Qaに設けた液圧センサSaで検出したマスタシリンダ11によるブレーキ液圧に応じた大きさになるように、スレーブシリンダ23の電動モータ52の回転角をフィードバック制御することで、運転者がブレーキペダル12に入力する踏力に応じた制動力をディスクブレーキ装置14,15;18,19に発生させることができる。
【0027】
次に、ABS制御時の作用を説明する。正常時における制動中に車輪速センサSc…の出力に基づいて何れかの車輪のスリップ率が増加してロック傾向になったことが検出されると、スレーブシリンダ23を作動状態に維持した状態でABS装置24を作動させて車輪のロックを防止する。
【0028】
即ち、所定の車輪がロック傾向になると、その車輪のディスクブレーキ装置のホイールシリンダに連なるインバルブ42を閉弁してスレーブシリンダ23からのブレーキ液圧の伝達を遮断した状態で、アウトバルブ44を開弁してホイールシリンダのブレーキ液圧をリザーバ43に逃がす減圧作用と、それに続いてアウトバルブ44を閉弁してホイールシリンダのブレーキ液圧を保持する保持作用とを行うことで、車輪がロックしないように制動力を低下させる。
【0029】
その結果、車輪速度が回復してスリップ率が低下すると、インバルブ42を開弁してホイールシリンダのブレーキ液圧が増加させる増圧作用を行うことで、車輪の制動力を増加させる。この増圧作用により車輪が再びロック傾向になると、前記減圧、保持、増圧を再び実行し、その繰り返しにより車輪のロックを抑制しながら最大限の制動力を発生させることができる。その間にリザーバ43に流入したブレーキ液は、液圧ポンプ47により上流側の液路Pc,Qcに戻される。
【0030】
上述したABS制御を実行している間、遮断弁22A,22Bを励磁して閉弁することで、ABS装置24の作動による液圧変化がキックバックとなってマスタシリンダ11からブレーキペダル12に伝達されるのを防止することができる。
【0031】
次に、VSA制御時の作用を説明する。車両の旋回時にオーバーステア傾向になった場合には、旋回外輪のホイールシリンダを作動させてオーバーステアを抑制するヨーモーメントを発生させ、車両の旋回時にアンダーステア傾向になった場合には、旋回内輪のホイールシリンダを作動させてアンダーステアを抑制するヨーモーメントを発生させるべく、左右の車輪のホイールシリンダの制動力が個別に制御可能である。
【0032】
即ち、図1においてサクションバルブ63,63を励磁して開弁した状態で液圧ポンプ47,47を作動させると、マスタシリンダ11のリザーバからブレーキ液がサクションバルブ63,63介して吸引され、インバルブ42…の上流側にブレーキ液圧を発生させる。このブレーキ液圧は、レギュレータバルブ61,61を励磁して所定の開度に制御することで、所定の大きさに調圧される。
【0033】
この状態で、制動する必要がない車輪に対応するインバルブ42を閉弁してホイールシリンダにブレーキ液圧が伝達しないようにしながら、制動する必要がある車輪に対応するインバルブ42を開弁してホイールシリンダにブレーキ液圧を伝達することで、そのホイールシリンダを作動させて制動力を発生させることができる。ホイールシリンダに伝達されるブレーキ液圧の増圧・減圧・保持の制御は、ABS制御の場合と同じようにインバルブ42およびアウトバルブ44の開閉により行われる。
【0034】
このように、VSA制御で左右一方の車輪だけを制動することで、任意の方向のヨーモーメントを発生させて車両の操縦安定性を高めることができる。
【0035】
次に、EBD制御時の作用を説明する。図5のタイムチャートに示すように、時刻t0に運転者がブレーキペダル12を踏み始め、時刻t1に後輪のロックを抑制すべくEBDが作動して後輪のブレーキ液圧を一定値に維持し、前輪のブレーキ液圧だけをブレーキペダル12に踏み込みに応じて増加させるとする。一例として、図1において右後輪のホイールシリンダ17に連なるインバルブ42だけを閉弁し、右後輪の制動力が増加しないように制御する場合を考える。
【0036】
この場合、図6のマップに示すように、ピストン38A,38BのストロークがCに達したときにEBDが作動して右後輪へのブレーキ液圧の供給を遮断したとすると、それ以後の右後輪のホイールシリンダ17の液損は増加しないため、トータルの液圧も破線の状態から実線の状態に減少する。よって、図6のマップを使用してスレーブシリンダ23のピストン38A,38Bのストロークを制御すれば、EBDが作動して液損が変化しても、その変化分を補償して適切なピストン38A,38Bのストロークを可能にし、ブレーキペダル12の操作フィーリングの違和感を解消することができる。
【0037】
具体的には、図3の液圧−ストローク変換手段71が複数の液圧−ストローク変換マップを備えており、EBDの作動状態に応じて前記複数の液圧−ストローク変換マップのうちから対応するマップを選択して使用することで、EBDの作動状態に応じて変化する液損を補償し、スレーブシリンダ23のピストン38A,38Bのストロークを適切に制御することができる。
【0038】
次に、上記作用を図7のフローチャートに基づいて更に説明する。
【0039】
先ずステップS1でEBDが作動し、ステップS2でブレーキペダル12が踏み増しされた場合、ステップS3でブレーキ液圧の増圧が抑制される後輪が一輪だけであれば、ステップS4で一輪分の液損を考慮したマップを採用し、ブレーキ液圧の増圧が抑制される後輪が二輪であれば、ステップS5で二輪分の液損を考慮したマップを採用する。そして前記ステップS2でブレーキペダル12が踏み増しされない場合には、ステップS7で通常のマップ(図4参照)を採用する。
【0040】
さて、電源の失陥等によりスレーブシリンダ23が作動不能になると、スレーブシリンダ23が発生するブレーキ液圧に代えて、マスタシリンダ11が発生するブレーキ液圧による制動が行われる。
【0041】
即ち、電源が失陥すると、図2に示すように、常開型電磁弁よりなる遮断弁22A,22Bは自動的に開弁し、常閉型電磁弁よりなる反力許可弁25は自動的に閉弁する。この状態では、マスタシリンダ11の第1液圧室13A,13Bにおいて発生したブレーキ液圧は、ストロークシミュレータ26に吸収されることなく、開弁した遮断弁22A,22Bと、スレーブシリンダ23の第2液圧室39A,39Bと、ABS装置24の開弁したレギュレータバルブ61,61およびインバルブ42…とを通過し、各車輪のディスクブレーキ装置14,15;18,19のホイールシリンダ16,17;20,21に支障なく制動力を発生させることができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0043】
例えば、ブレーキ操作子はブレーキペダル12に限定されず、ブレーキレバーであっても良く、またブレーキ操作量の信号を出力する信号出力手段であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】車両用ブレーキ装置の正常時の液圧回路図
【図2】図1に対応する異常時の液圧回路図
【図3】スレーブシリンダの制御系のブロック図
【図4】ピストンストロークと発生するブレーキ液圧との関係を示すマップ
【図5】EBD作動時の作用を説明するタイムチャート
【図6】図4に対応する、EBD作動時のマップ
【図7】EBD作動時の作用を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0045】
12 ブレーキペダル(ブレーキ操作子)
16 ホイールシリンダ
17 ホイールシリンダ
20 ホイールシリンダ
21 ホイールシリンダ
23 スレーブシリンダ
24 ABS装置(ブレーキ液圧調整手段)
52 電動モータ
U 電子制御ユニット(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により操作されるブレーキ操作子(12)と、
電動モータ(52)により作動してブレーキ液圧を発生するスレーブシリンダ(23)と、
前記ブレーキ操作子(12)の操作量に応じて前記電動モータ(52)の制御量を決定する制御手段(U)と、
前記ブレーキ液圧により作動して前輪および後輪をそれぞれ制動するホイールシリンダ(16,17;20,21)と、
前輪の制動力よりも後輪の制動力が小さくなるように前記ブレーキ液圧を調整するブレーキ液圧調整手段(24)と、
を備えた制動装置において、
前記制御手段(U)は、前記ブレーキ液圧調整手段(24)の作動時に前記電動モータ(52)の制御量を補正することを特徴とするブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190489(P2009−190489A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31298(P2008−31298)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】