説明

ブレース構造、及び該ブレース構造を有する建物

【課題】ブレースの座屈を抑制することを目的とする。
【解決手段】ブレース16は、上下方向に隣接する上架構12と下架構14にまたがって取り付けられている。ブレース16と立面視にて交差する梁24には、規制部材が設けられている。この規制部材が粘弾性ダンパの保持材に当たることにより、当該粘弾性ダンパの架構12、14の面外方向の変位が規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレース構造、及び該ブレース構造を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架構に設けられるブレースが知られている。また、ブレースと粘弾性ダンパ(減衰機構)、又はブレースとオイルダンパとを直列に結合した制振装置が知れている(例えば、特許文献1、2)。これらの特許文献1、2の制振装置は、粘弾性ダンパ又はオイルダンパを梁内に設けることで、設備配管や通路等のための架構の開口スペースを広くしている。
【0003】
ここで、ブレースは、一般的に建物の各層に設けられることが多く、各ブレースの取り付けに手間がかかる。また、特許文献1、2の制振装置は、建物の一層分の層間変形を利用して、粘弾性ダンパ又はオイルダンパを作動させる。従って、粘弾性ダンパ又はオイルダンパ一つ当りが持つ制振性能を、建物への制振効果として効率良く作用させることに限界がある。
【0004】
一方、特許文献3に開示された制振構造では、直列に結合されたブレース及び鋼材ダンパ(履歴系ダンパ)が、鉛直方向に連なる複数の架構にまたがって設けられている。この制振構造では、複数層分の層間変形を利用して鋼材ダンパを変形させることにより、鋼材ダンパによるエネルギー吸収効率を向上させている。
【0005】
しかしながら、複数の架構にまたがってブレース等を設けると、必然的にブレースの座屈長さが長くなり、ブレースが座屈し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−166328号公報
【特許文献2】特開平11−172959号公報
【特許文献3】特開2006−225960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、ブレースの座屈を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のブレース構造は、上下方向に隣接する複数の架構にまたがって取り付けられるブレースと、前記架構を構成し、前記ブレースと立面視にて交差する水平部材と、前記水平部材に設けられ、前記ブレースの前記架構の面外方向の変位を規制する座屈抑制手段と、を備えている。
【0009】
上記の構成によれば、ブレースは、上下方向に隣接する複数の架構にまたがって取り付けられている。このブレースと立面視にて交差する架構の水平部材には、座屈抑制手段が設けられている。この座屈抑制手段によって、ブレースの架構の面外方向の変位が規制(制限)されている。
【0010】
ここで、ブレースは複数の架構にまたがって取り付けられる。従って、架構ごとにブレースを取り付ける場合と比較して、ブレースの変形量が大きくなるため、ブレース一つ当りの変形効率が向上する。一方、複数の架構にまたがってブレースを取り付けると、ブレースの座屈長さが長くなり、ブレースが座屈し易くなる。この対策として本発明では、水平部材に座屈抑制手段を設け、ブレースの架構の面外方向の変位を規制している。これにより、ブレースの架構の面外方向の剛性が大きくなるため、ブレースの座屈が抑制される。
【0011】
請求項2に記載のブレース構造は、請求項1に記載のブレース構造において、前記ブレースが、前記水平部材の上方に設けられる第1ブレース体と、前記水平部材の下方に設けられると共に、前記第1ブレース体に対して相対変位する第2ブレース体と、前記第1ブレース体と前記第2ブレース体とに連結される制振ダンパと、を有し、前記座屈抑制手段が、前記制振ダンパの前記架構の面外方向両側に配置される一対の規制部材を有している。
【0012】
上記の構成によれば、ブレースが、水平部材の上方に設けられる第1ブレース体と、水平部材の下方に設けられる第2ブレース体と、第1ブレース体と第2ブレース体とに連結される制振ダンパと、を有している。第2ブレース体は、第1ブレース体に対して相対変位可能とされている。従って、風や地震等によって架構に外力が作用すると、第1ブレース体と第2ブレース体とが相対変位し、制振ダンパが作動する。この制振ダンパによって、振動エネルギーが吸収される。
【0013】
ここで、本発明では、上下方向に隣接する複数の架構にまたがってブレースが取り付けられている。そのため、架構ごとにブレースを取り付ける場合と比較して、第1ブレース体と第2ブレース体との間の相対変位量が大きくなる。従って、制振ダンパの変形量が大きくなり、制振ダンパの振動エネルギー吸収効率が向上する。
【0014】
また、制振ダンパの架構の面外方向両側には、一対の規制部材が設けられている。この規制部材が、制振ダンパに接触することにより、制振ダンパの架構の面外方向の変位が規制される。従って、制振ダンパに連結された第1ブレース体及び第2ブレース体の座屈が抑制される。
【0015】
請求項3に記載のブレース構造は、請求項2に記載のブレース構造において、前記制振ダンパが、立面視にて前記水平部材と重なっている。
【0016】
上記の構成によれば、制振ダンパが立面視にて水平部材と重なっている。従って、従来のように、梁下に制振ダンパを設ける場合と比較して、制振ダンパが水平部材と重なる分だけ架構の開口スペースを広く確保することができる。
【0017】
請求項4に記載のブレース構造は、請求項2又は請求項3に記載のブレース構造において、前記制振ダンパには、前記第1ブレース体と前記第2ブレース体との相対変位量を規制するストッパ手段が設けられている。
【0018】
上記の構成によれば、制振ダンパにストッパ手段が設けられている。このストッパ手段によって、第1ブレース体と第2ブレース体とに間に所定の相対変位量が生じたときに、第1ブレース体と第2ブレース体との相対変位が規制される。これにより、第1ブレース体及び第2ブレース体が地震等の外力に対して抵抗し、耐震性能を発揮する。従って、例えば、風や交通振動等の微小振動を制振ダンパで吸収する一方で、大地震時に、第1ブレース体及び第2ブレース体を耐震要素として機能させることができる。よって、耐震性能を確保しつつ、居住性能を向上することができる。
【0019】
請求項5に記載のブレース構造は、請求項2〜4の何れか1項に記載のブレース構造において、前記制振ダンパが、前記第1ブレース体に固定される第1保持材と、前記第2ブレース体に固定され、前記第1保持材と対向する第2保持材と、前記第1保持材と前記第2保持材との間で保持される粘弾性体と、を有している。
【0020】
上記の構成によれば、制振ダンパが、第1保持材と、当該第1保持材と対向する第2保持材と、これらの第1保持材と第2保持材との間で保持される粘弾性体と、を有している。第1保持材は第1ブレース体に固定されており、第2保持材は第2ブレース体に固定されている。即ち、第1保持材に対して、第2保持材が相対変位可能とされている。従って、風や地震等の外力が架構に作用し、第1保持材と第2保持材とが相対変位すると、これらの第1保持材及び第2保持材の間で保持された粘弾性体がせん断変形して、振動エネルギーを吸収する。
【0021】
請求項6に記載のブレース構造は、請求項2〜5の何れか1項に記載のブレース構造において、前記規制部材と前記制振ダンパとの接触面の少なくとも一方に、滑り手段が設けられる。
【0022】
上記の構成によれば、規制部材と制振ダンパとの接触面の少なくとも一方に、滑り手段が設けられている。この滑り手段によって、制振ダンパと規制部材との接触面に発生する摩擦力が低減されている。即ち、滑り手段を設けない場合と比較して、規制部材が制振ダンパの変形を阻害しない。従って、第1ブレース体及び第2ブレース体の座屈を抑制しつつ、制振ダンパの制振性能を向上することができる。
【0023】
また、制振ダンパと規制部材との接触面に発生する摩擦力を低減することにより、規制部材及び水平部材に発生する応力(軸力、曲げモーメント等)を小さくすることができる。
【0024】
請求項7に記載の建物は、請求項1〜6の何れか1項に記載のブレース構造を有している。
【0025】
上記の構成によれば、請求項1〜6の何れか1項に記載のブレース構造を有することにより、ブレースの座屈を抑制することができる。従って、耐震性能、制振性能が向上された建物を構築することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記の構成としたので、ブレースの座屈を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るブレース構造が適用された架構を示す、立面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るブレースと梁との交差部を示す、拡大斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るブレースと梁との交差部を示す、拡大斜視図である。
【図4】(A)は図1の1−1線断面図であり、(B)は図4(A)の拡大図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るブレースの変形状態を示す、立面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る制振ダンパの作動状態を示す、図5の拡大図であり、(A)は作動前の状態であり、(B)は作動後の状態である。
【図7】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態の変形例を示す図であり、図1の1−1断面図に相当する断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に変形例を示す図であり、図1の1−1線断面図に相当する断面図である
【図9】本発明の第1実施形態に変形例を示す図であり、ブレースと水平部材との交差部を示す立面図である。
【図10】(A)は本発明の第2実施形態に係るブレース構造が適用された架構の一部を示す立面図であり、(B)は図10(A)の9−9線断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るブレースと梁との分解斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態に変形例を示す、立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
先ず、第1実施形態に係るブレース構造について説明する。
【0030】
図1、図2、及び図3には、第1実施形態に係るブレース構造が適用された建物の架構12、14が示されている。これらの架構12、14には、ブレース16が取り付けられている。架構12(以下、「上架構12」という)は、架構14(以下、「下架構14」という)の上に構築されている。上架構12及び下架構14を構成する柱18、20には、複数の梁22、24、26が架設されており、上架構12は柱18、20及び梁22、24から構成され、下架構14は柱18、20及び梁24、26から構成されている。なお、上架構12と下架構14とは、柱18、20及び梁24を共有している。また、柱18、20は角形鋼管で構成され、梁22、26はH形鋼で構成されている。なお、図示を省略するが、梁22、24、26の上には、コンクリートスラブが適宜構築される。
なお、柱18、20は角形鋼管に限定されず、円筒形の鋼管でも良い。また、梁22、26はH形鋼に限定されず、I形鋼でも良い。
【0031】
図2及び図3に示されるように、梁24(水平部材)は、H形鋼からなる2つの梁材28、30とC形鋼からなる一対の連結梁材32、34を接合して構成されている。梁材28は柱18に接合され、梁材30に柱20に接合されている。また、梁材28と梁材30とは、梁24の材軸方向(矢印B方向)に間を空けて配置されており、これらの梁材28と梁材30との間に後述する粘弾性ダンパ42(制振ダンパ)が配置されている。対向する梁材28、30の端部の各々には、架構12、14の面外方向(架構12、14の構面と直交する方向(矢印A方向))両側から連結梁材32、34が重ね合わせられており、溶接等で接合されている。
【0032】
梁材28、30及び連結梁材32、34で囲まれた空間(以下、「収容部36」という)には、ブレース16が配置されている。ブレース16は、上下方向に隣接する上架構12と下架構14にまたがって取り付けられており、立面視にて梁24と交差している。ブレース16と梁24との交差部では、梁24の収容部36にブレース16の一部が配置されており、即ち、ブレース16が梁24を貫通している。なお、ブレース16と梁24とは、梁24の材軸方向に縁が切られている。
【0033】
ブレース16は、梁24の上方に設けられた鉄骨ブレース体38(第1ブレース体)と、梁24の下方に設けられた鉄骨ブレース体40(第2ブレース体)と、これらの鉄骨ブレース体38と鉄骨ブレース体40とに連結される粘弾性ダンパ42と、を備えたX型ブレースとされている。鉄骨ブレース体38は、2本のH形鋼38A、38BをV型に結合したV型ブレースとされ、H形鋼38AとH形鋼38Bとの結合部(V型の頂部)を下にして上架構12の構面に配置されている。鉄骨ブレース体38の頂部は、粘弾性ダンパ42が連結される連結部38Cとされている。H形鋼38Aの一端は、柱18と梁22の仕口部に固定されており、H形鋼38Bの一端は柱20と梁22との仕口部に固定されている。
【0034】
鉄骨ブレース体40は、2本のH形鋼40A、40BをA型(逆V型)に結合したA型ブレースとされ、H形鋼40AとH形鋼40Bとの結合部(A型の頂部)を上にして下架構14の構面に配置されている。鉄骨ブレース体40の頂部は、粘弾性ダンパ42が連結される連結部40Cとされている。H形鋼40Aの一端は、柱18と梁26の仕口部に固定されており、H形鋼40Bの一端は柱20と梁26との仕口部に固定されている。なお、H形鋼38AとH形鋼38Bとの結合部、及びH形鋼40AとH形鋼40Bとの結合部は、リブプレート44によって補強されている。
【0035】
H形鋼38A、38B及びH形鋼40A、40Bと架構14、16との接合には、一般的なブレースの接合構造が適用可能であり、例えば、溶接接合しても良いし、仕口部に設けられたガセットプレートに、H形鋼38A、38B又はH形鋼40A、40Bの端部を高力ボルトで摩擦接合しても良い。また、PC鋼線、PC鋼棒等を用いて圧着接合しても良い。更に、H形鋼38A、38Bは仕口部に限らず、梁22にのみ接合しても良いし、柱18、20にのみ接合しても良い。これと同様に、H形鋼40A、40Bは、梁26にのみ接合しても良いし、柱18、20にのみ接合しても良い。
【0036】
図4(A)及び図4(B)に示されるように、鉄骨ブレース体38と鉄骨ブレース体40とは、これらの鉄骨ブレース体38、40の間には配置された粘弾性ダンパ42によって連結されている。粘弾性ダンパ42は、梁24の収容部36に配置されており、立面視(面外方向A)にて梁24と重なっている。この粘弾性ダンパ42は、対となる上側部材46と下側部材48を備えている。上側部材46は、鉄骨ブレース体38の連結部38Cに接合される鋼板46Aと、この鋼板46Aに設けられた複数(本実施形態では、3つ)の保持材46B(第1保持材)とを備えている。板状に形成された保持材46Bは、略水平に配置された鋼板46Aの下面から突出しており、架構12、14の面外方向に間を空けて配列されている。
【0037】
下側部材48は、鉄骨ブレース体40の連結部40Cに接合される鋼板48Aと、この鋼板48Aに設けられた複数(本実施形態では、2つ)の保持材48B(第2保持材)とを備えている。板状に形成された保持材48Bは略水平に配置された鋼板48Aの上面から突出しており、架構12、14の面外方向に間を空けて配列されている。これらの上側部材46と下側部材48とは、各々の保持材46B、48Bが架構12、14の面外方向に交互に並ぶように組み合わせられている。なお、各保持材46B、48Bは少なくとも一つあれば良い。また、保持材46B、48Bは粘弾性体50を保持できれば良く、その形状は板状に限らない。例えば、粘弾性体50との一体性を高めるための凹凸や突起が表面に形成された部材でも良い。
【0038】
保持材46Bと保持材48Bとの間には、板状の粘弾性体50が設けられている。この粘弾性体50は、保持材46B及び保持材48Bに加硫接着等で固定されている。粘弾性体50及び保持材46B、48Bには貫通孔がそれぞれ形成されており、これらの貫通孔に貫通されるボルト52(ストッパ手段)及びナット54によって上側部材46と下側部材48とが連結されている。
【0039】
ここで、保持材46Bに形成された貫通孔56(ストッパ手段、図6(A)参照)は、梁24の材軸方向に延びる長孔とされており、当該貫通孔56内をボルト52の軸部が移動可能となっている。これにより、貫通孔56が許容する範囲内で上側部材46と下側部材48とが、梁24の材軸方向に相対変位可能に連結され、保持材46Bと保持材48Bとの間で保持された粘弾性体50が変形(せん断変形)可能になっている。一方、上側部材46と下側部材48との相対変位量が大きくなり(所定値を超え)、ボルト52が貫通孔56の内壁に当たると、上側部材46と下側部材48との相対変位が規制(制限)される。上側部材46と下側部材48との相対変位量の上限値(所定値)は、貫通孔56の水平方向の長さ(梁24の材軸方向の長さ)を増減することにより調整される。換言すれば、ストッパ手段が作動するタイミングは、貫通孔56の水平方向の長さによって決定される。
【0040】
また、図示を省略するが、保持材48B及び粘弾性体50に形成された貫通孔も、貫通孔56と同様に、梁24の材軸方向に延びる長孔とされている。なお、保持材46B及び保持材48Bに形成された貫通孔の少なくとも一方が、梁24の材軸方向に延びる長孔とされていれば良く、これにより、上側部材46と下側部材48とが梁24の材軸方向に相対変位可能に連結される。また、本実施形態では、上側部材46と下側部材48とをボルト52で連結したが、せん断ピン等を用いて連結しても良い。
【0041】
また、ボルト52は、必要に応じて適宜設ければ良いが、H形鋼38A及びH形鋼38Bの材軸(材軸の延長線)が交差する点(交点)と、H形鋼40A及びH形鋼40Bの材軸(材軸の延長線)が交差する点(交点)とが一致する位置、又はこれの周辺で上側部材46と下側部材48とを連結することが望ましい。H形鋼38A及びH形鋼38Bの材軸の交点と、H形鋼40A及びH形鋼40Bの材軸の交点とがずれていると、これらの交点間の距離に応じた偏心モーメントが生じるためである。なお、前述の交点が一致する位置以外の位置で、上側部材46と下側部材48とを連結しても良いことは勿論である。
【0042】
粘弾性ダンパ42の架構12、14の面外方向両側には、規制部材58(座屈抑制手段)がそれぞれ配置されている。鋼板からなる規制部材58は、上側部材46の最外側にある保持材46Bに対向して配置されており、連結梁材32、34のネジ孔に取り付けられたネジ部材60(座屈抑制手段)によって支持されている。ネジ部材60の先端に設けられた円盤状の端部プレート62(図4(B)参照)は、規制部材58に設けられた筒状の取付部64に回転可能に嵌め込まれている。このネジ部材60は調整手段としての機能を有しており、即ち、当該ネジ部材60の捻じ込み量によって、上側部材46の保持材46Bと規制部材58との距離が調整可能となっており、規制部材58が保持材46Bに接触した状態で保持されている。この規制部材58によって、上側部材46の架構12、14の面外方向の変位が規制(制限)されており、即ち、ブレース16の架構12、14の面外方向の変位が規制されている。なお、取付部64の開口径は、端部プレート62より直径よりも小さくなっており、端部プレート62が抜け出さないようになっている。また、梁24と粘弾性ダンパ42とは、梁24の材軸方向に縁が切られている。
なお、保持材46Bと規制部材58との間の距離を調整した後に、規制部材58とネジ部材60とを溶接等で一体化しても良い。また、本実施形態では、2つのネジ部材60で一つの規制部材58を支持したが、ネジ部材60ごとに規制部材を設けても良い。更に、取付部64は必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。例えば、ネジ部材60ごとに規制部材を設ける場合、ネジ部材60と規制部材とを溶接等で一体化し、規制部材をネジ部材60と共に回転させながら保持材46Bと規制部材58との間の距離を調整しても良い。
【0043】
なお、本実施形態では、保持材46Bに規制部材58を接触させているが、保持材46Bと規制部材58との間に隙間を設けても良い。この場合、架構12の面外方向へはらみ出した保持材46Bが、規制部材58に当たることにより、当該保持材46B及び鉄骨ブレース体38、40の架構12、14の面外方向の変位が規制される。
【0044】
次に、第1実施形態に係るブレース構造の作用について説明する。
【0045】
図5には、地震時におけるブレース16の変形状態が示されている。また、図6(A)及び図6(B)は図5の拡大図であり、図6(A)には粘弾性ダンパ42の作動前の状態が示されており、図6(B)には粘弾性ダンパ42の作動後の状態が示されている。なお、図が煩雑となるため、図5では連結梁材32、34を省略し、図6(A)及び図6(B)では、連結梁材32、34の外形のみを2点鎖線で示している。
【0046】
風や地震等の外力によって、上架構12及び下架構14に層間変形が生じると、上架構12の梁22と下架構14の梁26との間に2層分の層間変形に応じた相対変位が生じる。また、梁22の仕口部に取り付けられた鉄骨ブレース体38が梁22と一体挙動し、梁26の仕口部に取り付けられた鉄骨ブレース体40が梁26と一体挙動するため、これらの鉄骨ブレース体38と鉄骨ブレース体40との間に相対変位(矢印B方向)が生じる。換言すると、鉄骨ブレース体38に対して鉄骨ブレース体40が相対変位する。これにより、鉄骨ブレース体38の連結部38Cと、鉄骨ブレース体40の連結部40Cとに連結された粘弾性ダンパ42が作動し、振動エネルギーが吸収される。具体的には、連結部38Cに接合された上側部材46と、連結部40Cに接合された下側部材48とが、貫通孔56がボルト52の移動を許容する範囲で相対変位する。これにより、保持材46Bと保持材48Bとの間に設けられた粘弾性体50がせん断変形し、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて振動が低減される。
なお、説明を省略するが、鉄骨ブレース体38と鉄骨ブレース体40とが逆方向(矢印B方向の逆方向)に相対変位した場合も、上記と同様に粘弾性体50がせん断変形し、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて振動が低減される。
【0047】
一方、上側部材46と下側部材48の相対変位量が大きくなり(所定値に達し)、これらの上側部材46と下側部材48とを連結するボルト52が貫通孔56の内壁に当たると、上側部材46と下側部材48との相対変位が規制される。これにより、これにより、鉄骨ブレース体38と鉄骨ブレース体40が風や地震等の外力に対して抵抗し、耐震性能を発揮する。
【0048】
従って、風や交通振動等の微小振動を粘弾性ダンパ42で吸収する一方で、大地震時に、鉄骨ブレース体38及び鉄骨ブレース体40を耐震要素として機能させることができる。よって、耐震性能を確保しつつ、居住性能を向上することができる。
【0049】
また、粘弾性ダンパ42は、梁24の収容部36に配置されている。従って、粘弾性ダンパ42と梁22とが立面視にて重なる分、上架構12及び下架構14の開口スペースを広く確保することができる。よって、設備配管・配線や、出入口を設け易くなり、建物の設計自由度が向上する。
なお、本実施形態では、粘弾性ダンパ42全体が、立面視にて梁24と重なっているが、粘弾性ダンパ42の少なくとも一部が立面視にて梁24と重なっていれば良く、これにより、架構12、14の開口スペースを広くすることができる。ただし、粘弾性ダンパ42と梁24とは、必ずしも立面視にて重なる必要はない。
【0050】
また、梁は、一般的に軸力を負担しないものとして設計されるところ、従来(例えば、特許文献1、2)の制振装置では、地震時にブレースに作用する軸力が、粘弾性ダンパ又はオイルダンパを内蔵した梁に軸力として伝達される。従って、当該梁の軸耐力と曲げ耐力が減少するため、設計強度の大きな材料、または大きな断面の梁を使用しなければならなくなる。これに対して、本実施形態に係る梁24とブレース16とは、梁24の材軸方向に縁が切られているため、地震時にブレース16に作用する軸力が梁24に伝達されない。即ち、梁24は、ブレース16が負担する軸力の伝達経路とされていない。従って、従来と比較して、設計強度の小さな材料、または小さな断面の梁24の設計が可能となる。
【0051】
更に、ブレース16は上架構12と下架構14にまたがって取り付けられる。そのため、粘弾性ダンパ42を構成する上側部材46と下側部材48との間に2層分の層間変形に応じた相対変位が生じる。従って、上架構12、下架構14ごとにブレース16を取り付ける場合と比較して、粘弾性体50の変形量が大きくなるため、粘弾性ダンパ42の制振性能が向上する。更に、粘弾性ダンパ42の制振性能を向上させることにより、建物に設置するブレース16の数を減らすことができる。よって、施工性が向上すると共に、工期の短縮化を図ることができる。
【0052】
ここで、複数の架構にまたがってブレースを取り付けると、ブレースの座屈長が長くなり、ブレースの座屈耐力が小さくなるところ、本実施形態では、粘弾性ダンパ42の架構12、14の面外方向両側に規制部材58が設けられている。この規制部材58によって粘弾性ダンパ42の架構12、14の面外方向の変位が規制されるため、ブレース16の座屈耐力が大きくなる。従って、ブレース16の耐震性能が向上する。更に、従来と比較して、小さな断面のブレース16の設計が可能となり、ブレース16をコンパクトな形状にすることができる。よって、架構12、14の開口率(開口スペース)を上げることができる。
【0053】
また、粘弾性ダンパ42と規制部材58との距離は、ネジ部材60で調整可能であるため、粘弾性ダンパ42の設置が容易となり、施工性が向上する。更に、ネジ部材60を調整し、粘弾性ダンパ42の両側から当該粘弾性ダンパ42に規制部材58を圧接して挟み込むことで、粘弾性ダンパ42の架構12、14の面外方向の変位をより強固に規制することができる。これにより、ブレース16の座屈抑制効果を高めることもできる。
【0054】
なお、ブレース16に作用する軸力に対して、当該ブレース16が架構12の面外方向へはらみ出そうとする力は微小であるが、規制部材58、及び当該規制部材58を支持する連結梁材32、34には、必要に応じて適宜補強を施しても良い。例えば、図7(A)に示されるように、連結梁材32、34のウェブ32A、34Aに、当該連結梁材32、34の長手方向に沿って一又は複数(図7(A)では、2つ)のリブ66を設け、ウェブ32Aの面外剛性を大きくしても良い。また、図7(B)に示されるように、C形鋼の連結梁材32、34に替えて、角形鋼管等の閉断面を有する連結梁材68、70を用いて良い。この場合、C形鋼等の開口断面と比較して、連結梁材68、70の面外剛性が大きくなり、規制部材58の座屈抑制効果を高めることができる。更に、架構12、14の面外方向に架設された小梁の端部を連結梁材32、34に突き当てて補強しても良い。
【0055】
なお、本実施形態では、制振ダンパとして粘弾性ダンパ42を用いたがこれに限らない。例えば、摩擦ダンパ、オイルダンパ、鋼材ダンパ、弾塑性ダンパ等を用いることができる。
【0056】
また、本実施形態において、鉄骨ブレース体38が梁24の上方に設けられるとは、鉄骨ブレース体38が梁24より上方にある部材(例えば、柱、梁、スラブ等)に取り付けられること意味し、鉄骨ブレース体38が架構12、14の面外方向において、梁24と部分的に重なっていても良い。これと同様に、鉄骨ブレース体40が梁24の下方に設けられるとは、鉄骨ブレース体38が梁24より下方にある部材(例えば、柱、梁、スラブ等)に取り付けられること意味し、鉄骨ブレース体40が架構12、14の面外方向において、梁24と部分的に重なっていても良い。
【0057】
次に、第1実施形態に係る規制部材の変形例について説明する。
【0058】
図8に示されるように、規制部材58の保持材46Bとの接触面には、滑り材72(滑り手段)が設けられている。この滑り材72によって、規制部材58と保持材46Bとの間に発生する摩擦力が低減されており、規制部材58に対して保持材46Bが梁24の材軸方向へ変位し易くなっている。従って、上側部材46と下側部材48との相対変位量が大きくなり、粘弾性体50による振動エネルギー吸収効果が大きくなる。更に、規制部材58と保持材46Bとの接触面に発生する摩擦力を低減することにより、規制部材58、ネジ部材60、及び連結梁材32、34に発生する応力(軸力、曲げモーメント等)を小さくすることができ、設計強度の小さな材料、または小さな断面の規制部材58、ネジ部材60、及び連結梁材32、34の設計が可能となる。
【0059】
滑り材72としては、例えば、四フッ化エチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリエチレン、ステンレス、テフロン(登録商標)、塗料等を使用することができる。また、滑り手段には、滑り材72を設ける場合だけでなく、規制部材58又は保持材46Bをステンレス等の低摩擦材料で形成する場合も含まれる。なお、滑り手段は、規制部材58と保持材46Bとの接触面の少なくとも一方に設けられていれば良い。
【0060】
次に、第1実施形態に係るブレースの変形例について説明する。
【0061】
第1実施形態のブレース16は、鉄骨ブレース体38、40と粘弾性ダンパ42とを直列に連結して構成したが、粘弾性ダンパ42は適宜省略可能である。具体的には、図9に示されるように、ブレース76は、鉄骨ブレース体38と、鉄骨ブレース体40と、これらの鉄骨ブレース体38、40に連結される連結部材78と、を備えている。連結部材78は鋼板からなり、当該連結部材78の外周に設けられたリブ82によって補強されている。この連結部材78には、架構12の面外方向両側から板状の規制部材80が当てられている。なお、図示を省略するが、規制部材80はネジ部材60によって連結梁材32(図4(A)参照)に支持されている。
【0062】
このように、規制部材80によって、連結部材78の架構12、14の面外方向の変位を規制することにより、ブレース76の座屈耐力が大きくなり、ブレース76の座屈を抑制することができる。なお、連結部材78を低降伏点鋼(例えば、LY225等)で形成することにより、ブレース76にエネルギー吸収性能を付与しても良い。即ち、鉄骨ブレース体38と鉄骨ブレース体40との間に生じる相対変位によって、連結部材78をせん断変形させ、鋼材の履歴ループによって振動エネルギーを吸収しても良い。
【0063】
次に、第2実施形態に係るブレース構造について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0064】
図10(A)には、第2実施形態に係るブレース構造が適用された上架構12の下部と下架構14の上部が示されている。これらの上架構12及び下架構14には、ブレース86が取り付けられている。このブレース86はH形鋼で、上架構12及び下架構14にまたがって取り付けられており、上架構12及び下架構14が共有する梁88と立面視にて交差している。なお、図示を省略するが、ブレース86の材軸方向上端部は柱20と梁22(図1参照)の仕口部に固定されており、ブレース86の材軸方向下端部は柱18と梁26(図1参照)の仕口部に固定されている。
【0065】
図10(B)及び図11に示されるように、上架構12及び下架構14が共有する梁88はH形鋼とされている。この梁88とブレース86とは、梁88の長手方向中央部において、架構12、14の面外方向(図11において、矢印C方向)に重なって配置されている。梁88のウェブ88Aとブレース86のウェブ86Aの間には、規制部材90(座屈抑制手段)が設けられている。なお、この梁88とブレース86とは、施工誤差を吸収するために、架構12、14の面外方向に間を空けて配置されている。
【0066】
規制部材90は角形鋼管からなり、ブレース86の材軸方向に2つ並んで配置されている。ブレース86のウェブ86Aを間に置いて規制部材90と反対側には、規制部材92が設けられている。即ち、ブレース86の架構12、14の面外方向両側に規制部材90、92がそれぞれ配置されている。この規制部材92は鋼板からなる。ウェブ86A、88A及び規制部材90、92には、それぞれ貫通孔100、102、104、106(図11参照)が形成されており、これらの貫通孔100、102、104、106に貫通されるボルト94及びナット96によって、梁88とブレース86とが連結されている。この規制部材90、92によって、ブレース86の架構12、14の面外方向の変位が規制されている。
【0067】
また、ウェブ86A、88Aに形成された貫通孔100、102は、梁88の材軸方向(矢印D方向)に延びる長孔とされており、当該貫通孔100、102内をボルト94の軸部が移動可能となっている。これにより、貫通孔100、102が許容する範囲内で梁88とブレース86とが、梁88の材軸方向に相対変位可能になっている。これらの貫通孔100、102は、地震等におけるブレース86の変位量(梁88の材軸方向の変位量)を考慮して、貫通孔100、102の内壁とボルト94の軸部とが接触しないようになっている。即ち、梁88とブレース86とは、貫通孔100、102が許容する範囲内で、梁4の材軸方向に縁が切られており、ブレース86に作用する軸力が梁88に伝達されないようになっている。
【0068】
次に、第2実施形態に係るブレース構造の作用について説明する。
【0069】
風や地震等の外力によって、上架構12及び下架構14に層間変形が生じると、ブレース86が外力に対して抵抗し、耐震性能を発揮する。また、ブレース86は、上架構12と下架構14にまたがって取り付けられる。従って、ブレース86に2層分の層間変形に応じた変形(軸ひずみ)が生じるため、ブレース86一つ当りの変形効率が向上する。また、ブレース86の性能を向上させることにより、建物に設置するブレース16の数を減らすことができる。よって、工期の短縮化を図ることができる。
【0070】
また、ブレース86と梁88とは、貫通孔100、102が許容する範囲内で、梁88の材軸方向に縁が切られているため、ブレース86に作用する軸力が梁88に伝達されない。従って、設計強度の小さな材料、または小さな断面の梁88の設計が可能となる。なお、第1実施形態と同様に、規制部材90、92とブレース86との接触面の少なくとも一方に、滑り手段(例えば、図7における滑り材72)を設けても良い。これにより、規制部材90、92とブレース86との間に発生する摩擦力が低減され、当該摩擦力によって梁88に生じる応力を低減することができる。
【0071】
更に、ブレース86の架構12、14の面外方向両側には、規制部材90、92が設けられている。この規制部材90、92によってブレース86の架構12、14の面外方向の変位が規制されるため、ブレース86の座屈耐力が大きくなる。従って、ブレース86のエネルギー吸収能力を損なわずに済む。
【0072】
なお、規制部材90、92の形状、大きさは上記したものに限らない。ブレース86の面外方向に変位を規制できれば良く、例えば、規制部材90に替えてH形鋼、T形鋼、C形鋼等を用いることができる。また、規制部材90、92とウェブ86Aとの間に粘弾性体を設け、ブレース86にエネルギー吸収性能を付与しても良い。
更に、本実施形態では、梁88とブレース86とを架構12、14の面外方向に間を空けて配置したが、梁88にブレース86を接触させて配置し、梁88で直接的にブレース86の架構12、14の面外方向の変位を規制しても良い。
【0073】
なお、上記第1、第2実施形態は、前述したようにX型ブレースや片流れブレースに適用することができる。また、ブレース16、76、86と、梁24、88とは、立面視にて交差していれば良く、前述の構成に限定されない。例えば、第1実施形態では、梁24にブレース16を貫通させたが、第2実施形態(9(B)参照)のように、梁24の片側にブレース16を配置しても良い。また、第2実施形態では、梁88の両側にブレース86を配置し、各ブレース86と梁88とを規制部材90、92で連結しても良い。更に、ブレース86を当該ブレース86の中間部で二股に分岐させ、分岐したブレースの間に梁88を配置しても良い。
【0074】
また、第1、第2実施形態では、上架構12と下架構14とにまたがってブレース16、76、86を取り付けたがこれに限らない。これらのブレース16、76、86は、上下方向に隣接する2つ以上の架構にまたがって取り付けられていれば良い。この際、ブレース16、76、86が立面視にて交差する水平部材(梁やスラブ)に、規制部材58等の座屈防止手段を設ければ良い。また、ブレース16、76、86が立面視にて複数の水平部材(梁やスラブ)と交差する場合には、少なくとも一つの水平部材に座屈防止手段を設ければ良い。
【0075】
更に、ブレース16、76、86は、上下方向に隣接する架構にまたがると共に、水平方向に隣接する架構にまたがって取り付けることもできる。例えば、図12に示されるように、上下左右に隣接する4つの架構112、114、116、118にブレース16が取り付けられている。架構112、114は、柱120、122と、これらの柱120、122の間に架設された梁130、132、134によって構成されており、架構116、118は、柱122、124とこれらの柱122、124の間に架設された梁136、138、140によって構成されている。そして、ブレース16は、立面視にて梁132と交差しており、当該梁132に座屈防止手段としての規制部材(不図示)が設けられている。なお、図12に示す構成では、H形鋼38A、40Aが柱122を貫通しているが、H形鋼38A、40AをこれらH形鋼38A、40Aの中間部で二股に分岐させ、分岐したブレースの間に柱122を配置しても良い。
【0076】
また、第1、第2実施形態では、鉄骨造の上架構12、下架構14を例に説明したが、これらの架構12、14は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレストレスコンクリート造、CFT造、更には現場打ち工法、プレキャスト工法等の種々の工法を用いることができる。また、梁24、88に替えてスラブを用いても良い。更に、柱
【0077】
更に、第1、第2実施形態に係るブレース構造は、耐震構造、免震構造等の種々の構造の新築建物、改築建物に適用することができる。これらのブレース構造を適用することにより、耐震性能、制振性能が向上された建物を構築することができる。
【0078】
以上、本発明の第1、第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1、第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
12 上架構(架構)
14 下架構(架構)
16 ブレース
24 梁(水平部材)
38 鉄骨ブレース体(第1ブレース体)
40 鉄骨ブレース体(第2ブレース体)
42 粘弾性ダンパ(制振ダンパ)
46B 保持板
48B 保持板
50 粘弾性体
52 ボルト(ストッパ手段)
56 貫通孔(ストッパ手段)
58 規制部材(座屈抑制手段)
60 ネジ部材(座屈抑制手段)
72 滑り材(滑り手段)
86 ブレース
88 梁(水平部材)
90 規制部材(座屈抑制手段)
92 規制部材(座屈抑制手段)
矢印A 架構の面外方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に隣接する複数の架構にまたがって取り付けられるブレースと、
前記架構を構成し、前記ブレースと立面視にて交差する水平部材と、
前記水平部材に設けられ、前記ブレースの前記架構の面外方向の変位を規制する座屈抑制手段と、
を備えるブレース構造。
【請求項2】
前記ブレースが、
前記水平部材の上方に設けられる第1ブレース体と、
前記水平部材の下方に設けられると共に、前記第1ブレース体に対して相対変位する第2ブレース体と、
前記第1ブレース体と前記第2ブレース体とに連結される制振ダンパと、
を有し、
前記座屈抑制手段が、前記制振ダンパの前記架構の面外方向両側に配置される一対の規制部材を有する請求項1に記載のブレース構造。
【請求項3】
前記制振ダンパが、立面視にて前記水平部材と重なっている請求項2に記載のブレース構造。
【請求項4】
前記制振ダンパには、前記第1ブレース体と前記第2ブレース体との相対変位量を規制するストッパ手段が設けられている請求項2又は請求項3に記載のブレース構造。
【請求項5】
前記制振ダンパが、
前記第1ブレース体に固定される第1保持材と、
前記第2ブレース体に固定され、前記第1保持材と対向する第2保持材と、
前記第1保持材と前記第2保持材との間で保持される粘弾性体と、
を有する請求項2〜4の何れか1項に記載のブレース構造。
【請求項6】
前記規制部材と前記制振ダンパとの接触面の少なくとも一方に、滑り手段が設けられる請求項2〜5の何れか1項に記載のブレース構造。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のブレース構造を有する建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−6965(P2011−6965A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152717(P2009−152717)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】