説明

ブレードの製造方法

【課題】 2本同時に製造する場合であって、切断方向で寸法精度が良いブレードの製造方法を提供することである。
【解決手段】 2本のホルダーを向かい合わせて配置し、熱硬化性樹脂でブレード部材3を形成し、ブレード部材3を切断することにより2分割して得るブレードの製造方法であって、該ホルダー2本と該ブレード部材3を有する一体成型品が、一方のホルダーの熱硬化性樹脂接合部分での切断線方向先端部6から対向する他方のホルダーに向けた切断線7との垂線8上から、対向する他方のホルダーの先端部6がずれていることを特徴とするブレードの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられるブレードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真装置では、記録用紙に転写を行った後、感光体上に残存するトナーを除去して繰り返し複写を行うために、支持体にブレード部材が接合されたクリーニングブレードや、現像器内でトナーを摩擦帯電させながら薄膜を形成する現像ブレード等の、支持体に弾性部材が接合されたブレードが設けられている。
【0003】
クリーニングブレードは、装置等にブレードを取り付ける金属製のホルダーと、そのホルダーの片端部に弾性体からなるブレード部材とが一体化して形成されており、ブレード部材は、耐摩耗性や永久歪みの程度等に優れていることから、ポリウレタンエラストマーが通常使用される。
【0004】
ところで、このようなポリウレタン製のブレード部材を有してなるクリーニングブレードは、従来から、ポリウレタン形成材料を用いた注型成形操作を行うことによって、製造されている。すなわち上型と下型で構成されるクリーニングブレード用成形型を準備し、片端部に接着剤を塗布したホルダーを、金型キャビティ内にホルダーの接着剤塗布部分が突出した状態で配置し、この成形型内に、ポリイソシアネートとポリオールとを部分的に重合したプレポリマーと硬化剤を含有する液状組成物を注入し、これを硬化反応させ、ついで硬化物を脱型することによりクリーニングブレードを製造することができる。
【0005】
また、生産効率を上げるため、以下のような方法でも製造される。片端部に接着剤を塗布したホルダーを、金型キャビティ内にホルダーの接着剤塗布部分を突出した状態で2本向かい合わせて配置し、この成型型内に、ポリイソシアネートとポリオールとを部分的に重合したプレポリマーと硬化剤を含有する液状組成物を注入し、これを硬化反応させ、ホルダー2本がポリウレタンエラストマーによって一体化した成形品を得る。そして、この成形品の上記ウレタン部分を切断して2個に分離し、更に、ホルダーの長手方向両端部に沿ってウレタン部分を切断除去することにより、2個のクリーニングブレードを製造することができる。ところが、硬化反応は120〜150℃で行われるため、熱収縮による歪みが残る。このとき、熱収縮量は、金属製であるホルダーよりもポリウレタンエラストマーの方が大きいため、ホルダーに接着されている部分は、収縮しようとしても熱収縮量の小さい金属製ホルダーに固定されているため抑制されるが、ホルダーに固定されていない部分は大きく収縮する。
【0006】
このため、切断後のブレードは、ブレード長手方向の端部から中央部に向かって収縮して両端部付近がはね上がった形状となる。このため、図1で示されるホルダーの短手方向の基準となる線からブレード部材3のエッジまでの長さA(図1の5)が、長手方向において不均一で、両端部が長いものとなる。
【0007】
このため、クリーニングブレードを感光ドラムに押し付けた際、クリーニングブレードの長手方向でブレードニップ幅にバラツキが生じ、均一なクリーニング性が得られないという問題が生じる。特に、最近では、レーザビームプリンタのフルカラー化に伴いトナー粒径が縮小されたため、ブレード部材3の長手方向に対するエッジ位置が高精度なクリーニングブレードが求められている。また、ブレード長手方向の両端の寸法A(図1の5)が長いため、長手方向の両端部は、より強くドラムに押し付けられるため、めくれ易いという問題がある。このような問題に対し、ホルダーのウレタン接合部の長手方向両端に切り欠きを入れる方法や、中央部から端部に向かってテーパーを付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法では、ホルダーの形状が複雑になるため、ホルダーの精度を出すことが困難になることや、コストアップにつながるという問題がある。また、ホルダー自体の精度が低くなるとブレード自体の寸法精度も低くなってしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平11−194689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、2本同時に製造する場合であって、切断方向で寸法精度が良いブレードの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の手段により、其の目的を達成する。
【0010】
本発明の第1の形態は、2本のホルダーを向かい合わせて配置し、熱硬化性樹脂でブレード部材3を形成し、ブレード部材3を切断することにより2分割して得るブレードの製造方法であって、該ホルダー2本と該ブレード部材3を有する一体成型品が、一方のホルダーの熱硬化性樹脂接合部分での切断線方向先端部6から対向する他方のホルダーに向けた切断線7との垂線8上から、対向する他方のホルダーの先端部6がずれていることを特徴とするブレードの製造方法である。
【0011】
本発明の第2の形態は、対向するホルダーでの熱硬化性樹脂接合部分の切断方向先端部のずれ量が3〜100mmであるブレードの製造方法である。
【0012】
本発明の第3の形態は、熱硬化性樹脂がポリウレタンエラストマーであるブレードの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、切断方向で寸法精度が良いブレードを生産効率良く製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を詳述する。
【0015】
本発明において製造される電子写真装置用ブレードは、金属製のホルダーとブレード部材であるポリウレタンエラストマーからなっている。これらは、上型と下型で構成されるクリーニングブレード用成形型を準備し、ホルダーの片端部に接着剤を塗布し、金型のブレード部形成用のキャビティ内にこの部分を突出させた状態で2本向かい合わせて配置し、この成形型内に、プレポリマーと硬化剤とを含有する液状組成物を注入し、これを120℃〜150℃で硬化反応させ、ホルダー2本がポリウレタンエラストマーによって一体化した成形品を得る。そして、この成形品の上記ウレタン部分の短手方向中央部を切断して2個に分離し、更に、ホルダーの長手方向両端部に沿ってウレタン部分を切断除去することにより、2個のクリーニングブレードを製造することができる。
【0016】
このホルダーを配置するときに、ホルダーのウレタン接合部分での切断方向先端部6から、対向するホルダーに向けた切断線との垂線上から、対向するホルダーの接合部分での切断方向先端部6をずらすことにより、ホルダーの短手方向の基準となる線からブレード部材3のエッジまでの長さAを長手方向で精度良くすることができる。ホルダーの接合部分での切断方向先端部6から、対向するホルダーに向けた、切断線との垂線上に対向するホルダーの接合部分での切断方向先端部6がある場合には、ホルダー2本がポリウレタンエラストマーによって一体化した成形品のウレタン部分は、ブレード長手方向で両端から中央部に向かって収縮する。しかし、ホルダーの接合部分での切断方向先端部6をずらすことにより、向かい合うホルダーの長手方向での端部の環境が変わり、ブレード長手方向で端部の収縮の方向が分散するため、ホルダー長手方向の両端部付近での跳ね上がりが軽減されると思われる。
【0017】
ずれる距離は3〜100mmが好ましく、3mm未満ではホルダー基準からエッジまでの距離を精度良くする効果が殆ど無く、100mmを超えると、効果はあるものの、製品としては使えない長手方向両端部のウレタン量が増えてしまうことや、金型が大きくなり過ぎるため、好ましくない。また、ホルダーの形状は、向かい合わせる2本が同一の形状でもよく、そうでなくてもよい。例えば、ホルダー長手方向の長さ違いのものを向かい合わせて金型に配置し、注型してもよい。
【0018】
ブレード部を形成するポリウレタンとしては、ポリイソシアネート、ポリオールからなるプレポリマーとポリオール、鎖延長剤、及び触媒からなる硬化剤の混合物である。
【0019】
ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート(PAPI)等が挙げられる。これらの中でも、MDIを用いることが好ましい。
【0020】
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができ、数平均分子量1500〜5000であることが好ましい。これは、1500未満であると、得られるウレタンゴムの物性が低下する傾向が見られ、また5000を超えると、プレポリマーの粘度が高くなりハンドリングが困難になる傾向が見られるからである。
【0021】
鎖延長剤としては、例えば、グリコールが使用され、このようなグリコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)及びトリエチレングリコール等が挙げられる。また、上記グリコールの他に、多価アルコールが使用され、このような多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。
【0022】
触媒としては、一般に用いられるポリウレタン硬化用のものを使用することができ、例えば三級アミン触媒が挙げられる。トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコール、トリエチレンジアミン、ピペラジン系、トリアジン系、4級アミンの有機酸塩、フェノール塩等が例示できる。また、酢酸カリウムやオクチル酸カリウムアルカリ等の金属の有機酸塩を用いてもよい。また、通常、ウレタンに用いられる金属触媒でもよく、ジブチル錫ジラウレート等を例示することができる。これらは単独で用いてもよく、何種類か混合してもよい。
【0023】
硬化剤には必要に応じて、触媒、顔料、可塑剤、防水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
【0024】
本発明に係るブレード部材のポリウレタンエラストマーは、上記材料を用い、常法に準じて製造することができる。具体的には、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法に準じて製造できる。
【0025】
本発明に用いられるホルダーとしては、一般に電子写真装置用ブレードに用いられるものであればよく、剛性の高い鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛メッキクロメート皮膜鋼板及びクロムフリー鋼板等が挙げられる。
【0026】
本発明に使用することのできる接着剤は、一般的なポリウレタンと金属との接着剤であればよく、フェノール系やウレタン系等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
<熱硬化性ポリウレタン原料の調製>
イソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用い、ポリオールとして、数平均分子量2000のアジペート系ポリエステルポリオールを用いたNCO%が7.0%のプレポリマーと、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンの質量比が65:35の混合物にP15(エアープロダクツジャパン社製)1000ppm、トリエチレンジアミン(TEDA)3000ppmを加えた硬化剤を準備した。
【0029】
<クリーニングブレードの成型>
上型と下型で構成されるクリーニングブレード用成形型を準備し、ホルダーの片端部にフェノール系接着剤を塗布し、金型のブレード部形成用のキャビティ内にこの部分を突出した状態で2本向かい合わせて配置した。このとき、注入口側を上に、エッジ面を手前にした状態で、左側のホルダーを(1)、右側のホルダーを(2)とすると、ホルダー(1)のウレタンが接合する切断方向での先端部(注入口側)を、ホルダー(2)に対し、10mm注入口側に配置した。この成形型内に、プレポリマーと硬化剤とを含有する液状組成物を注入し、これを120℃〜150℃で硬化反応させ、ホルダー2本がポリウレタンエラストマーによって一体化した成形品を得た。そして、この成形品の上記ウレタン部分を中央部で切断して2個に分離し、更に、ホルダーの長手方向両端部に沿って、ブレード部材を切断除去することにより、2個のクリーニングブレード(1)、(2)を得た。
【0030】
<エッジ位置の測定>
得られたクリーニングブレード(1)、(2)の、ブレード部材3の長手方向両端部(図4の10、11)と中央の位置(図4の12)における、ホルダーの短手方向の基準となる線からブレード部材3のエッジまでの長さAを測定し、長手方向両端部と中央部での距離Aの差を計算した。その差がブレードの両端とも30μm以下なら◎、片方でも31〜50μmの場合は〇、片方でも51μm以上の場合は×、とした。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
ホルダー(1)のウレタンが接合する長手方向での端部(注入口側)を、ホルダー(2)に対し、10mm注入口側の実施例1と逆側に配置した以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
ホルダー(1)のウレタンが接合する長手方向での端部(注入口側)を、ホルダー(2)に対し、3mm注入口側に配置した以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
ホルダー(1)のウレタンが接合する長手方向での端部(注入口側)を、ホルダー(2)に対し、100mm注入口側に配置した以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
ホルダー(1)のウレタンが接合する長手方向での端部(注入口側)を、ホルダー(2)と同じ位置に配置した以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1からわかるように、端部と中央の差が、実施例1〜4では小さく、ホルダーの短手方向の基準となる線からブレード部材3のエッジまでの長さAが、長手方向で精度が良いことがわかる。これに対し、比較例1では端部と中央の差が大きく、ホルダーの短手方向の基準となる線からブレード部材3のエッジまでの長さAが、長手方向での両端が長く、精度が低いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の電子写真装置用のブレードの製造方法により得られたクリーニングブレードの概略図である。
【図2】本発明の電子写真装置用のブレードの製造方法の実施の形態を示す説明図である。
【図3】従来の電子写真装置用のブレードの製造方法の形態を示す説明図である。
【図4】ブレードの実施例におけるエッジ位置測定を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 電子写真装置用ブレード
2 ホルダー
3 ブレード部材
4 ホルダーの短手方向の基準となる線
5 ホルダーの短手方向の基準となる線からブレード部材3のエッジまでの長さA
6 ホルダーの熱硬化性樹脂接合部分での切断線方向先端部
7 切断線
8 切断線との垂線
9 注入口側
10 寸法Aの測定個所であるブレード部材の左端
11 寸法Aの測定個所であるブレード部材の右端
12 寸法Aの測定個所であるブレード部材の中央

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のホルダーを向かい合わせて配置し、熱硬化性樹脂でブレード部材3を形成し、ブレード部材3を切断することにより2分割して得るブレードの製造方法であって、該ホルダー2本と該ブレード部材3を有する一体成型品が、一方のホルダーの熱硬化性樹脂接合部分での切断線方向先端部6から対向する他方のホルダーに向けた切断線7との垂線8上から、対向する他方のホルダーの先端部6がずれていることを特徴とするブレードの製造方法。
【請求項2】
前記対向するホルダーでの熱硬化性樹脂接合部分の切断方向先端部のずれ量が3〜100mmである請求項1記載のブレードの製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂がポリウレタンエラストマーである請求項1又は2記載のブレードの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−198887(P2006−198887A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12799(P2005−12799)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】