説明

ブロックポリマーおよび皮膜形成剤を含む組成物

本発明は、化粧用として許容される有機液体媒体、少なくとも1種の皮膜形成線状エチレンブロックポリマーおよび別の皮膜形成剤を含む化粧品組成物に関する。前記有機液体媒体中には、前記皮膜形成剤を溶解または分散させることができる。本発明の組成物は、水相を含んでいてもよく、その場合、皮膜形成剤をその水相中に溶解または分散させることができる。また、本発明は、ケラチン物質上での前記組成物の性能を改善するために、このようなあるブロックポリマーおよび皮膜形成剤の組合せを使用できる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮を含むヒトの身体および顔の肌、口唇、または毛髪、眉毛、睫毛もしくは爪などの人間の表皮派生物に対するメイクアップまたはケア用化粧品組成物であって、他の皮膜形成剤(film former)と組み合わせた皮膜形成(film-forming)ブロックポリマーを含む化粧用として許容される媒体を含有する化粧品組成物に関する。
【0002】
この組成物は、ルースまたはコンパクトパウダー、ファンデーション、ルージュ、アイシャドー、コンシーラー、ブラッシャー、リップスティック、リップバーム、リップグロス、リップペンシル、アイペンシル、マスカラ、アイライナー、マニキュアさらにはボディメイクアップ製品もしくは皮膚着色製品となることができる。
【背景技術】
【0003】
既知の組成物は、時間の経過に関して、特に色調に関する持続力が乏しい。この乏しい持続力は通常、ファンデーションおよびルージュもしくはアイシャドーの場合における皮膚から分泌される皮脂および/または汗との相互作用、リップスティックの場合における唾液との相互作用の結果としての色調の変化(色彩変化、退色)によって特徴付けられる。この変化により、使用者は頻繁に新たなメイクアップをせざるをえず、時間の損失となりかねない。
【0004】
持続力、特にリップスティックの持続力は、揮発性オイルをシリコーン樹脂などの皮膜形成ポリマーと組み合わせることによって改善できる。しかし、結果として得られる持続力特性は、消費者の期待に答えるものとはなっていない。
【特許文献1】米国特許第5,725,882号
【特許文献2】米国特許第5,209,924号
【特許文献3】米国特許第4,972,037号
【特許文献4】米国特許第4,981,903号
【特許文献5】米国特許第4,981,902号
【特許文献6】米国特許第5,468,477号
【特許文献7】米国特許第5,219,560号
【特許文献8】欧州特許第0 388 582号
【特許文献9】米国特許第5,948,393号
【特許文献10】欧州特許第0 815 836号
【特許文献11】米国特許第5,849,318号
【特許文献12】フランス特許第2 077 143号
【特許文献13】フランス特許第2 393 573号
【特許文献14】米国特許第3,589,578号
【特許文献15】米国特許第4,031,307号
【特許文献16】米国特許第4,131,576号
【特許文献17】米国特許第3,836,537号
【特許文献18】米国特許第4,693,935号
【特許文献19】米国特許第4,728,571号
【特許文献20】米国特許第4,972,037号
【特許文献21】EP-A-0 412 704
【特許文献22】EP-A-0 412 707
【特許文献23】EP-A-0 640 105
【特許文献24】WO 95/00578
【特許文献25】EP-A-0 582 152
【特許文献26】WO 93/23009
【特許文献27】WO 95/03776
【特許文献28】米国特許第5,061,481号
【特許文献29】米国特許第5,849,275号
【特許文献30】米国特許第6,033,650号
【特許文献31】WO 93/23446
【特許文献32】WO 95/06078
【特許文献33】米国特許第4,887,622号
【特許文献34】フランス特許第2,796,529号
【特許文献35】フランス特許第2,722,380号
【特許文献36】米国特許第5,492,426号
【特許文献37】フランス特許第2,761,959号
【特許文献28】WO 01/03538
【特許文献39】フランス特許第2,806,273号
【特許文献40】フランス特許第2,775,566号
【特許文献41】フランス特許第2,727,609号
【特許文献42】WO 03/018423
【特許文献43】フランス特許第2,791,042号
【特許文献44】フランス特許第2,792,618号
【非特許文献1】「Polymer Handbook」第3版、1989年、John Wiley
【非特許文献2】「Encyclopaedia of Chemical Technology,Kirk-Othmer」、第3版、22巻、333〜432頁、1979年、Wiley
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケラチン物質上の良好な持続力を有する被覆物、特にメイクアップ効果に至らしめる化粧用製品が引き続き求められている。
【0006】
本発明の組成物は、特に、人間の身体、口唇または表皮派生物をメイクアップするための、特に非治療的処置および/またはケアの性質を有する製品を構成できる。組成物は、特に、リップスティックもしくはリップグロス、ルージュもしくはアイシャドー、タトゥー製品、マスカラ、アイライナー、マニキュア、人工のスキン日焼け製品、または毛髪染色もしくはヘアケア製品を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、特定のブロックポリマーを既知の皮膜形成剤と組み合わせることによって、ケラチン物質上に、皮膜形成剤を含む従来の組成物よりもその持続力が優れた被覆物を生じる化粧品組成物が得られることを見出した。
【0008】
より詳細には、本発明は、有機液体媒体、少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、およびその他少なくとも1種の皮膜形成剤を含む化粧品組成物を提供する。
【0009】
特に、本発明は、有機液体媒体、少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、および前記有機液体媒体に溶解可能なその他少なくとも1種の皮膜形成剤を含む化粧品組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、有機液体媒体、少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、およびその他少なくとも1種の水溶性皮膜形成剤を含む化粧品組成物を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、有機液体媒体、少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、および皮膜形成ポリマー粒子水性分散物の少なくとも1種を含む化粧品組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、有機液体媒体、少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、および皮膜形成ポリマー粒子非水性分散物の少なくとも1種を含む化粧品組成物を提供する。
【0013】
皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマーは、有利には、非エラストマー系である。皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマーは、有利には、スチレン単位を含まない。
【0014】
また、本発明は、皮膚および/または口唇および/または表皮派生物に、上記で定義した組成物を適用することからなる、皮膚および/または口唇および/または表皮派生物をメイクアップする方法に関する。
【0015】
本発明による組成物は、顔の皮膚、頭皮および身体、口唇などの粘膜、下まぶたの内側、および、爪、眉毛、毛髪、睫毛、さらには体毛などの表皮派生物に適用することができる。
【0016】
好ましくは、本発明による組成物は、洗い流される組成物ではない。
【0017】
さらに加えて、本発明は、皮膚および/または口唇および/または表皮派生物上のメイクアップの持続力を強化するための、上記で定義した組成物の化粧品としての使用に関する。
【0018】
特に、睫毛被覆組成物すなわちマスカラの場合には、この種の組成物により、睫毛に塗布した後に、特に、例えば入浴またはシャワー中の水に対する、特に指による摩擦に対する、および/または涙、発汗もしくは皮脂に対する良好な持続力を示すメイクアップ皮膜を得ることが可能である。
【0019】
本発明は、最後に、良好な肌合いを有し、適用が簡単で、口唇および/または表皮派生物上に良好な持続力を有する被覆物を生じさせる組成物を得るための、上記で説明したブロックポリマーを含む組成物中における皮膜形成剤の使用を規定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ブロックポリマー
本発明による組成物には、少なくとも1種のブロックポリマーが含まれる。「ブロック」ポリマーとは、少なくとも2つの互いに連続しないブロック、好ましくは少なくとも3つの互いに連続しないブロックを含むポリマーを意味する。
【0021】
実施形態の1つによれば、本発明による組成物のブロックポリマーはエチレン性ポリマーである。「エチレン性」ポリマーとは、エチレン性不飽和を有するモノマーを重合することによって得られるポリマーを意味する。
【0022】
実施形態の1つによれば、本発明による組成物のブロックポリマーは線状ポリマーである。逆に、線状でない構造を有するポリマーは、例えば、分岐状、星形状、グラフト状またはその他の構造を有するポリマーである。
【0023】
実施形態の1つによれば、本発明による組成物のブロックポリマーは皮膜形成ポリマーである。「皮膜形成」ポリマーとは、それ自体でまたは皮膜形成助剤の存在の下で、支持体、特にケラチン物質上に連続した粘着性皮膜を形成する能力のあるポリマーを意味する。
【0024】
実施形態の1つによれば、本発明による組成物のブロックポリマーは非エラストマー系ポリマーである。
【0025】
「非エラストマー系ポリマー」とは、それを引き伸ばそうとする(例えばその初期長さに対して30%まで)応力を加えた場合、その応力を取り去ってもその初期長さと実質的に同じ長さには戻らないポリマーを意味する。
【0026】
より具体的には、用語「非エラストマー系ポリマー」とは、30%の伸びを課した後に、瞬間回復Ri<50%および遅延回復R2h<70%を有するポリマーを意味する。好ましくは、Ri<30%およびR2h<50%である。
【0027】
より具体的には、そのポリマーの非エラストマー特性は、次の試験要領に従って決定される。
【0028】
「テフロン(登録商標)」を被覆した型の中に、そのポリマーの溶液を注入し、次いで、23±5℃および相対湿度50±10%に制御された環境中で7日間乾燥することによって、ポリマー皮膜を調製する。
【0029】
これによって、厚さがほぼ100μmの皮膜が得られ、この膜から幅15mm、長さ80mmで長方形の試験片を切断する(例えば、パンチを使用して)。
【0030】
このサンプルに、Zwickという引用名で販売されている装置を使用して乾燥の場合と同じ温度および湿度条件の下で引っ張り応力を加える。
【0031】
試験片は50mm/分の速さで引き伸ばされ、ジョウ間隔は試験片の初期長さ(l0)に相当する50mmである。
【0032】
瞬間回復Riは、次のように決定される、すなわち
・試験片を30%、すなわち初期長さ(l0)の約0.3倍の長さ分引き伸ばす(εmax)、
・引張り速さ、すなわち50mm/分に等しい復帰速さを適用して応力を解放し、応力がゼロに戻った後に、試験片の残留伸び(εi)をパーセントで測定する。
【0033】
瞬間回復%(Ri)は、次式
Ri=(εmaxi)/εmax)×100
で与えられる。
【0034】
遅延回復を決定するために、応力がゼロに戻ってから2時間後に試験片の残留伸び(ε2h)をパーセントで測定する。
【0035】
遅延回復%(R2h)は、次式
R2h=(εmax2h)/εmax)×100
で与えられる。
【0036】
単に指摘する意味で例を挙げれば、本発明の実施形態の1つによるポリマーは、10%の瞬間回復Riおよび30%の遅延回復R2hを有している。
【0037】
他の実施形態によれば、本発明による組成物のブロックポリマーは、スチレン単位を含んでいない。スチレン単位を含まないポリマーとは、重量で、10%以上、好ましくは5%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは1%以上のi)式-CH(C6H5)-CH2-のスチレン単位、またはii)置換スチレン単位、例えばメチルスチレン、クロロスチレンまたはクロロメチルスチレンを含まないポリマーを意味する。
【0038】
実施形態の1つによれば、本発明による組成物のブロックポリマーは、脂肪族エチレン性モノマーから得られる。脂肪族モノマーとは、芳香族基を含まないモノマーを意味する。
【0039】
実施形態の1つによれば、ブロックポリマーは、炭素-炭素二重結合および少なくとも1個のエステル基-COO-またはアミド基-CON-を含む脂肪族エチレン性モノマーから得られるエチレン性ポリマーである。前記エステル基は、炭素原子または酸素原子を経由して2個の不飽和炭素の一方に結合されてよい。前記アミド基は、炭素原子または窒素原子を経由して2個の不飽和炭素の一方に結合されてよい。
【0040】
実施方式の1つによれば、ブロックポリマーには、少なくとも1種の第一ブロックおよび少なくとも1種の第二ブロックが含まれる。
【0041】
「少なくとも」1種のブロックとは、1種または複数のブロックを意味する。
【0042】
以上および以下の字句で、用語「第一」および「第二」ブロックとは、決して、ポリマー構造中における前記ブロックの順序(または配列)を条件付けるものでないことを明記したい。
【0043】
実施方式の1つによれば、ブロックポリマーには、異なるガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1種の第一ブロックおよび少なくとも1種の第二ブロックが含まれる。
【0044】
この実施方式では、第一および第二ブロックが、第一および第二ブロックのガラス転移温度の中間のガラス転移温度を有する中間部分によって、互いに連結されていてもよい。
【0045】
実施方式の1つによれば、ブロックポリマーには、第一ブロックを構成するモノマーの少なくとも1種および第二ブロックを構成するモノマーの少なくとも1種を含む中間部分によって互いに連結された、少なくとも1種の第一ブロックおよび少なくとも1種の第二ブロックが含まれる。
【0046】
中間ブロックは、基本的に、第一ブロックおよび第二ブロックを構成するモノマーから得られることが好ましい。
【0047】
「基本的に」とは、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%程度まで、さらにより好ましくは100%までの程度を意味する。
【0048】
有利には、ポリマーの第一ブロックを構成する少なくとも1種のモノマーおよび第二ブロックを構成する少なくとも1種のモノマーを含む中間部分は、ランダムポリマーである。
【0049】
実施方式の1つによれば、ブロックポリマーには、本発明の組成物の有機液体媒体中で相溶しない、少なくとも1種の第一ブロックおよび少なくとも1種の第二ブロックが含まれる。
【0050】
「互いに相溶しないブロック」とは、第一ブロックに相当するポリマーからおよび第二ブロックに相当するポリマーから構成される混合物が、組成物の有機液体媒体中において重量で大部分を占める有機液体中、外界温度(25℃)および大気圧(105Pa)で、混合物(ポリマーおよび大部分を占める有機液体)の総重量に対して重量で5%以上のポリマー混合物含有量で混和できないことを意味する。但し、
i)前記ポリマー類は、混合物中にそれぞれの重量比が10/90〜90/10の範囲であるような量で存在し、
ii)第一および第二ブロックに相当するポリマーのそれぞれが、ブロックポリマー平均分子質量+/-15%に等しい平均分子質量(重量または数平均で)を有する。
【0051】
有機液体媒体が有機液体の混合物を含む場合、2種以上の液体が同様の質量比で存在するなら、前記ポリマー混合物は少なくともそれら液体の少なくとも1種と混和しない。
【0052】
有機液体媒体が単一の有機液体を含む場合、当該液体が、重量で大部分を占める液体を構成することは極めて明白である。
【0053】
「有機液体媒体」とは、少なくとも1種の有機液体、換言すれば、外界温度(25℃)および大気圧(105Pa)で液体である少なくとも1種の有機化合物を含む媒体を意味する。実施方式の1つによれば、有機液体媒体の大部分を占める液体は、揮発性または非揮発性オイル(脂肪)である。有機液体は化粧用として許容される(許容される耐性、毒性および感触)ことが好ましい。有機液体媒体は、化粧用組成物に一般的に採用されているオイルまたは有機溶剤のように、ケラチン物質に適合すると言う意味で化粧用として許容される。
【0054】
実施方式の1つによれば、有機液体媒体の大部分を占める液体は、以下で説明するようにブロックポリマーの重合溶剤または重合溶剤の1つである。
【0055】
重合溶剤とは、1種の溶剤または溶剤の混合物を意味する。重合溶剤は、特に、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノールおよびエタノールなどのアルコール、イソドデカンなどの脂肪族アルカン、およびこれらの混合物から選択できる。重合溶剤は、酢酸ブチルとイソプロパノールの混合物、またはイソドデカンであるのが好ましい。
【0056】
一般的に言って、ブロックポリマーは、組成物中に、処方が容易であるなら、組成物の総重量に対して、重量で典型的には10%より大きく、20%より大きく、より好ましくは30%より大きく、さらにより好ましくは45%より大きい、高い固形分含量で組み込んでよい。
【0057】
選択するなら、ブロックポリマーはその骨格にケイ素原子を含まない。「骨格」とは、ペンダント側鎖ではなくポリマーの主鎖を意味する。
【0058】
本発明によるポリマーは、水溶性でないこと、換言すれば、そのポリマーが、水、または水とエタノール、イソプロパノールもしくはn-プロパノールなど、2〜5個の炭素原子を有する直鎖または分岐低級モノアルコールとの混合物中に、pHを変えなければ、外界温度(25℃)で、重量で1%を超える活性物質含量で溶解しないことが好ましい。
【0059】
実施方式の1つによれば、ブロックポリマーは、2を超える多分散性指数Iを有する。
【0060】
有利には、本発明による組成物中で使用されるブロックポリマーは、2を超える、例えば2〜9の範囲の、好ましくは2.5以上、例えば2.5〜8の範囲の、さらに有利には2.8以上、特に2.8〜6の範囲の多分散性指数Iを有する。
【0061】
ポリマーの多分散性指数Iは、重量平均質量Mwの数平均質量Mnに対する比に等しい。
【0062】
重量平均(Mw)および数平均(Mn)モル質量は、ゲル浸透による液体クロマトグラフィー(THF溶剤、線状ポリスチレン標準を用いて確立した校正曲線、屈折率検出器)によって決定される。
【0063】
ブロックポリマーの重量平均質量(Mw)は、好ましくは、300,000以下、例えば35,000〜200,000、さらに有利には45,000〜150,000の範囲である。
【0064】
ブロックポリマーの数平均質量(Mn)は、好ましくは、70,000以下、例えば10,000〜60,000、さらに有利には12,000〜50,000の範囲である。
【0065】
ブロックポリマーの各ブロックまたは配列は、1種のモノマーから、または2種以上の異なる種類のモノマーから得られる。
【0066】
このことは、各ブロックが、ホモポリマーまたはコポリマーから構成されてよく、また、ブロックを構成するそのコポリマーも、ランダムまたは交互コポリマーでよいことを意味する。
【0067】
第一および第二ブロックに対して示されるガラス転移温度は、Polymer Handbook、第3版、1989年、John Wileyなどの参考便覧中に見出すことができる各ブロックを構成するモノマーの理論TgからFox則と呼ばれる次の関係に従って決定される理論Tgでよい。
【0068】
【数1】

【0069】
式中、ωiは当該ブロック中のモノマーiの質量分率であり、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度である。
【0070】
特記しない限り、本明細書中で第一および第二ブロックに対して示されるTgは理論Tgである。
【0071】
第一および第二ブロックのガラス転移温度間の差は、一般に10℃より大きく、好ましくは20℃より大きく、より好ましくは30℃より大きい。
【0072】
とりわけ、ブロックポリマーは、少なくとも1種の第一ブロックおよび少なくとも1種の第二ブロックを含み、第一ブロックは、
a)40℃以上のTgを有するブロック
b)20℃以下のTgを有するブロック
c)20℃と40℃の間のTgを有するブロックから選択することができ、
第二ブロックは、第一ブロックと異なる部類a)、b)またはc)から選択できる。
【0073】
本発明で、表記「...と...の間」は、示された限界値を除外した数値範囲を意味し、表記「...〜...」および「...〜...の範囲」は、限界値を含む数値範囲を意味することを意図している。
【0074】
a)40℃以上のTgを有するブロック
40℃以上のTgを有するブロックは、例えば、40〜150℃の範囲の、好ましくは50℃以上、例えば50℃〜120℃の範囲の、より有利には60℃以上、例えば60℃〜120℃の範囲のTgを有する。
【0075】
40℃以上のTgを有するブロックは、ホモポリマーでも、あるいはコポリマーでよい。
【0076】
40℃以上のTgを有するブロックは、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得ることができる。
【0077】
このブロックがホモポリマーである場合、このブロックは、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するようなモノマーから得られる。この第一ブロックは、単一種類のモノマー(それに対応するホモポリマーのTgは40℃以上)から構成されるホモポリマーであってよい。
【0078】
第一ブロックがコポリマーの場合、このブロックは、生じるコポリマーのTgが40℃以上であるようにその種類および濃度を選択した1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得ることができる。コポリマーは、例えば、
・そのモノマーから調製されるホモポリマーが、40℃以上、例えば40〜150℃の範囲の、好ましくは50℃以上、例えば50℃〜120℃の範囲の、より有利には60℃以上、例えば60℃〜120℃の範囲のTgを有するようなモノマー、および
・そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃未満のTgを有し、後に説明するように、20℃と40℃の間のTgを有するモノマーおよび/または20℃以下、例えば-100〜20℃の範囲の、好ましくは15℃未満、特に-80℃〜15℃の範囲の、より有利には10℃未満、例えば-50℃〜0℃の範囲のTgを有するモノマーから選択されるようなモノマー
を含むことができる。
【0079】
そのホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマーは、好ましくは、主モノマーとしても知られている次のモノマー、すなわち、
・式CH2=C(CH3)-COOR1のメタクリレート(式中、R1は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチル基など、1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分岐の非置換アルキル基を表すか、あるいはR1はC4〜C12シクロアルキル基を表す)、
・式CH2=CH-COOR2のアクリレート(式中、R2は、アクリル酸イソボルニルのようにC4〜C12シクロアルキル基またはtert-ブチル基を表す)、
・次式の(メタ)アクリルアミド
【0080】
【化1】

【0081】
(ここで、R7およびR8は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、またはn-ブチル、t-ブチル、イソプロピル、イソヘキシル、イソオクチルまたはイソノニル基などの直鎖もしくは分岐のC1〜C12アルキル基を表し、あるいはR7がHを表し、R8が1,1-ジメチル-3-オキソブチル基を表し、R'がHまたはメチルを意味する。)(挙げることのできるモノマーの例には、N-ブチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジブチルアクリルアミドが含まれる)、および
・これらの混合物
から選択される。
【0082】
特に好ましい主モノマーは、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸イソブチルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニル、およびこれらの混合物である。
【0083】
b)20℃以下のTgを有するブロック
20℃以下のTgを有するブロックは、例えば-100〜20℃の範囲の、好ましくは15℃以下、特に-80℃〜15℃の範囲の、より有利には10℃以下、例えば-50℃〜0℃の範囲のTgを有する。
【0084】
20℃以下のTgを有するブロックは、ホモポリマーでも、あるいはコポリマーでもよい。
【0085】
20℃以下のTgを有するブロックは、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得ることができる。
【0086】
このブロックがホモポリマーである場合、このブロックは、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するようなモノマーから得られる。この第二ブロックは、単一種類のモノマー(その対応するホモポリマーのTgは20℃以下)から構成されるホモポリマーでよい。
【0087】
20℃以下のTgを有するブロックがコポリマーである場合、そのブロックは、生じるコポリマーのTgが20℃以下であるようにその種類および濃度を選択した1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得ることができる。
【0088】
ブロックは、例えば、
・その対応するホモポリマーが、20℃以下のTg、例えば-100℃〜20℃の範囲の、好ましくは15℃未満、特に-80℃〜15℃の範囲の、より有利には10℃未満、例えば-50℃〜0℃の範囲のTgを有する1種または複数のモノマー、および
・その対応するホモポリマーが、40℃以上のTg、例えば40〜150℃の範囲の、好ましくは50℃以上の、例えば50℃〜120℃の範囲の、より有利には60℃以上、例えば60℃〜120℃の範囲のTgを有するモノマーおよび/または前に記載したような20℃と40℃の間のTgを有するモノマーなど、20℃を超えるTgを有する1種または複数のモノマー
を含むことができる。
【0089】
20℃以下のTgを有するブロックは、ホモポリマーであるのが好ましい。
【0090】
そのホモポリマーが20℃以下のTgを有するモノマーは、好ましくは、次のモノマー、または主モノマー、すなわち、
・式CH2=CHCOOR3のアクリレート(R3は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によっては挿入された、tert-ブチル基を除く直鎖または分岐のC1〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式CH2=C(CH3)-COOR4のメタクリレート(R4は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によっては挿入された、直鎖または分岐のC6〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式R5-CO-O-CH=CH2のビニルエステル(ここで、R5は、直鎖または分岐のC4〜C12アルキル基を表す)、
・C4〜C12アルキルビニルエーテル、
・N-(C4〜C12アルキル)アクリルアミド(N-オクチルアクリルアミドなど)、および
・これらの混合物
から選択される。
【0091】
20℃以下のTgを有するブロックのために特に好ましい主モノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸イソブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルなど、そのアルキル鎖が1〜10個の炭素原子を含むがtert-ブチル基ではないアクリル酸アルキル類およびそれらの混合物である。
【0092】
c)20℃と40℃の間のTgを有するブロック
20℃と40℃の間のTgを有するブロックは、ホモポリマーでも、あるいはコポリマーでもよい。
【0093】
20℃と40℃の間のTgを有するブロックは、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃と40℃の間のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得ることができる。
【0094】
20℃と40℃の間のTgを有するブロックは、その対応するホモポリマーが40℃以上のTgを有するようなモノマーから、およびその対応するホモポリマーが20℃以下のTgを有するようなモノマーから全体的にまたは部分的に得ることができる。
【0095】
このブロックがホモポリマーの場合、ブロックは、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃と40℃の間のガラス転移温度を有するようなモノマー(または主モノマー)から得られる。この第一ブロックは、単一種類のモノマー(対応するホモポリマーのTgが20℃〜40℃の範囲)から構成されるホモポリマーでよい。
【0096】
そのホモポリマーが20℃と40℃の間のガラス転移温度を有するモノマーは、好ましくは、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸シクロデシル、アクリル酸ネオペンチルおよびイソデシルアクリルアミド、およびこれらの混合物から選択される。
【0097】
20℃と40℃の間のTgを有するブロックがコポリマーである場合、そのブロックは、生じるコポリマーのTgが20℃と40℃の間であるようにその種類および濃度を選択した1種または複数のモノマー(または主モノマー)から全体的にまたは部分的に得ることができる。
【0098】
有利には、20℃と40℃の間のTgを有するブロックは、
・その対応するホモポリマーが、前に記載したように、40℃以上のTg、例えば40℃〜150℃の範囲の、好ましくは50℃以上、例えば50〜120℃の範囲の、より有利には60℃以上、例えば60℃〜120℃の範囲のTgを有する主モノマー、および/または
・その対応するホモポリマーが、前に記載したように、20℃以下のTg、例えば-100〜20℃の範囲の、好ましくは15℃以下、特に-80℃〜15℃の範囲の、より有利には10℃以下、例えば-50℃〜0℃の範囲のTgを有する主モノマー
から全体的にまたは部分的に得られ、前記モノマーは第一ブロックを形成するコポリマーのTgが20℃と40℃の間であるように選択される。
【0099】
このような主モノマーは、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸およびメタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシル、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0100】
好ましくは、20℃以下のTgを有する第二ブロックの割合が、重量で、ポリマーの10%〜85%、より有利には20%〜70%、さらにより有利には20%〜50%の範囲である。
【0101】
好ましくは、第一および第二ブロックのそれぞれが、アクリル酸、アクリル酸のエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含む。
【0102】
有利には、第一および第二ブロックのそれぞれが、アクリル酸、アクリル酸のエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーから全体的に得られる。
【0103】
しかし、各ブロックは、他のブロックを構成する少なくとも1種のモノマーを小さな比率で含んでいてもよい。
【0104】
したがって、第一ブロックは、第二ブロックを構成する少なくとも1種のモノマーを含んでいてもよく、その逆も同じである。
【0105】
第一および/または第二ブロックのそれぞれは、上記のモノマーに加え、追加モノマーとして知られる、上記で挙げた主モノマーとは異なる1種または複数の別のモノマーを含んでいてもよい。
【0106】
このまたはこれらの追加モノマーの種類および量は、その追加モノマーの存在するブロックが所望のガラス転移温度を有するように選択される。
【0107】
この追加モノマーは、例えば、
a)親水性モノマー、例えば
・少なくとも1個のカルボン酸またはスルホン酸官能基を有するエチレン性不飽和モノマー;例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、およびこれらの塩、
・少なくとも1個の第三級アミン官能基を有するエチレン性不飽和モノマー;例えば、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、およびこれらの塩、
・式CH2=C(CH3)-COOR6のメタクリレート[式中、R6は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチル基など、1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分岐のアルキル基を表し、前記アルキル基はヒドロキシル基(例えばメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルおよびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの場合)およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)(例えばメタクリル酸トリフルオロエチルの場合)から選択される1個または複数の置換基で置換される]、
・式CH2=C(CH3)-COOR9のメタクリレート[式中、R9は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によっては挿入された直鎖または分岐のC6〜C12アルキル基を表し、前記アルキル基はヒドロキシル基およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)から選択される1個または複数の置換基で置換される]、
・式CH2=CHCOOR10のアクリレート[式中、R10は、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルの場合のように、ヒドロキシル基およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)から選択される1個または複数の置換基で置換された直鎖または分岐のC1〜C12アルキル基を表し、あるいはR10は、5〜30回のオキシエチレン単位の繰返しを有するC1〜C12アルキル-O-POE(ポリオキシエチレン)、例えばメトキシ-POEを表し、あるいはR10は、5〜30個のエチレンオキシド単位を含むポリオキシエチレン化基を表す]、
b)1個または複数のケイ素原子を含むエチレン性不飽和モノマー;例えば、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびメタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
およびこれらの混合物から選択される。
【0108】
特に好ましい追加モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸およびメタクリル酸トリフルオロエチル、およびそれらの混合物である。
【0109】
実施形態の1つによれば、ブロックポリマーの第一および第二ブロックのそれぞれは、(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマー、および場合によっては(メタ)アクリル酸などの少なくとも1種の追加モノマー、ならびにそれらの混合物を含む。
【0110】
別な実施形態によれば、ブロックポリマーの第一および第二ブロックのそれぞれは、その全部が、(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマー、および場合によっては(メタ)アクリル酸などの少なくとも1種の追加モノマー、ならびにそれらの混合物から全体的に得られる。
【0111】
好ましい実施形態の1つによれば、ブロックポリマーは、非シリコーンポリマー、すなわちケイ素原子を含まないポリマーである。
【0112】
このまたはこれらの追加モノマーは、一般に、第一および/または第二ブロックの総重量に対して、重量で30%以下、例えば1%〜30%、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%の量である。
【0113】
ブロックポリマーは、次の調製方法によるフリーラジカル溶液重合によって得られる。すなわち
・重合溶剤の一部を適当な反応器に導入し、重合に適した温度(典型的には60℃と120℃の間)に到達するまで加熱し、
・この温度に到達したら、重合開始剤の一部の存在下に第一ブロックを構成するモノマーを導入し、
・最大転化度90%に対応するT時間後に、第二ブロックを構成するモノマーおよび残りの開始剤を導入し、
・混合物をT'時間(3〜6時間)反応させ、その後混合物を外界温度まで冷却し、
・重合溶剤中の溶液状ポリマーが得られる。
【0114】
第一実施形態
第一実施形態によれば、ブロックポリマーは、前のa)に記載したような40℃以上のTgを有する第一ブロック、および前のb)に記載したような20℃以下のTgを有する第二ブロックを含んでいる。
【0115】
好ましくは、40℃以上のTgを有する第一ブロックは、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するようなモノマー、例えば前に記載したモノマーから得られるコポリマーである。
【0116】
有利には、20℃以下のTgを有する第二ブロックは、これらのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するようなモノマー、例えば前に記載したようなモノマーから得られるホモポリマーである。
【0117】
好ましくは、40℃以上のTgを有するブロックの割合が、重量で、ポリマーの20%〜90%、より有利には30%〜80%、さらにより有利には50%〜70%の範囲である。
【0118】
好ましくは、20℃以下のTgを有するブロックの割合が、重量で、ポリマーの5%〜75%、好ましくは15%〜50%、より有利には25%〜45%の範囲である。
【0119】
したがって、第一変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上のTg、例えば70〜110℃の範囲のTgを有し、メタクリル酸メチル/アクリル酸のコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば0〜20℃の範囲のTgを有し、アクリル酸メチルのホモポリマーである第二ブロック、および
・メタクリル酸メチル/アクリル酸/アクリル酸メチルのコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0120】
第二変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上、例えば70〜100℃の範囲のTgを有し、メタクリル酸メチル/アクリル酸/メタクリル酸トリフルオロエチルのコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば0〜20℃の範囲のTgを有し、アクリル酸メチルのホモポリマーである第二ブロック、および
・メタクリル酸メチル/アクリル酸/アクリル酸メチル/メタクリル酸トリフルオロエチルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0121】
第三変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上、例えば85〜115℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチルのコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば-85〜-55℃の範囲のTgを有し、アクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーである第二ブロック、および
・アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル/アクリル酸2-エチルヘキシルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0122】
第四変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上、例えば85〜115℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸メチルのコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば-85〜-55℃の範囲のTgを有し、アクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーである第二ブロック、および
・アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0123】
第五変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上、例えば95〜125℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソボルニルのコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば-85〜-55℃の範囲のTgを有し、アクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーである第二ブロック、および
・アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸2-エチルヘキシルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0124】
第六変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上、例えば85〜115℃の範囲のTgを有し、メタクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチルのコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば-35〜-5℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソブチルのホモポリマーである第二ブロック、および
・メタクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル/アクリル酸イソブチルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0125】
第七変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上、例えば95〜125℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソボルニルのコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば-35〜-5℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソブチルのホモポリマーである第二ブロック、および
・アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸イソブチルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0126】
第八変形形態によれば、本発明によるポリマーは、
・40℃以上、例えば60〜90℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチルのコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば-35〜-5℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソブチルのホモポリマーである第二ブロック、および
・アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル/アクリル酸イソブチルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0127】
次の実施例1から3は、前記第一実施形態に相当するポリマーを、非制約的に例示する。
【0128】
量は、グラムで表す。
【0129】
[実施例1]
ポリ(アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)ポリマーの調製
100gのイソドデカンを、1リットルの反応器に導入し、次いで温度を外界温度(25℃)から90℃になるように1時間かけて上昇させる。
【0130】
150gのアクリル酸イソボルニル、60gのメタクリル酸メチル、110gのイソドデカンおよび1.8gの2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(Akzo Nobel社のTrigonox(登録商標)141)を、90℃で1時間かけて逐次的に添加する。
【0131】
混合物を、90℃に1.5時間保持する。
【0132】
上の混合物に、そのまま90℃で30分かけて、90gのアクリル酸2-エチルヘキシル、90gのイソドデカンおよび1.2gの2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンを逐次的に導入する。
【0133】
混合物を、90℃に3時間保持し、次いで全体を冷却する。
【0134】
これにより、50%のポリマー活性物質を含むイソドデカン溶液が生じる。
【0135】
100℃のTgを有するポリ(アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸メチル)の第一ブロック、-70℃のTgを有するポリ-アクリル酸2-エチルヘキシルの第二ブロック、およびアクリル酸イソボルニル/メタクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシルのランダムポリマーである中間ブロックを含むポリマーが得られる。
【0136】
このポリマーは、76,500の重量平均質量および22,000の数平均質量を有し、3.48の多分散性指数Iを与える。
【0137】
[実施例2]
ポリ(アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸2-エチルヘキシル)ポリマーの調製
100gのイソドデカンを、1リットルの反応器に導入し、次いで温度を外界温度(25℃)から90℃になるように1時間かけて上昇させる。
【0138】
105gのアクリル酸イソボルニル、105gのメタクリル酸イソボルニル、110gのイソドデカンおよび1.8gの2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(Akzo Nobel社のTrigonox(登録商標)141)を、90℃で1時間かけて逐次的に添加する。
【0139】
混合物を、90℃に1.5時間保持する。
【0140】
上の混合物に、そのまま90℃で30分かけて、90gのアクリル酸2-エチルヘキシル、90gのイソドデカンおよび1.2gの2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンを逐次的に導入する。
【0141】
混合物を、90℃に3時間保持し、次いで全体を冷却する。
【0142】
これにより、50%のポリマー活性物質を含むイソドデカン溶液が生じる。
【0143】
110℃のTgを有するポリ(アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソボルニル)の第一ブロック、-70℃のTgを有するポリ-アクリル酸2-エチルヘキシルの第二ブロック、およびアクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸2-エチルヘキシルのランダムポリマーである中間ブロックを含むポリマーが得られる。
【0144】
このポリマーは、103,900の重量平均質量および21,300の数平均質量を有し、4.89の多分散性指数Iを与える。
【0145】
[実施例3]
ポリ(アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル/アクリル酸イソブチル)ポリマーの調製
100gのイソドデカンを、1リットルの反応器に導入し、次いで温度を外界温度(25℃)から90℃になるように1時間かけて上昇させる。
【0146】
120gのアクリル酸イソボルニル、90gのメタクリル酸イソブチル、110gのイソドデカンおよび1.8gの2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(Akzo Nobel社のTrigonox(登録商標)141)を、90℃で1時間かけて逐次的に添加する。
【0147】
混合物を、90℃に1.5時間保持する。
【0148】
上の混合物に、そのまま90℃で30分かけて、90gのアクリル酸イソブチル、90gのイソドデカンおよび1.2gの2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンを逐次的に導入する。
【0149】
混合物を、90℃に3時間保持し、次いで全体を冷却する。
【0150】
これにより、50%のポリマー活性物質を含むイソドデカン溶液が生じる。
【0151】
75℃のTgを有するポリ(アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル)の第一ブロック、-20℃のTgを有するポリメタクリル酸イソブチルの第二ブロック、およびアクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル/アクリル酸イソブチルのランダムポリマーである中間ブロックを含むポリマーが得られる。
【0152】
このポリマーは、144,200の重量平均質量および49,300の数平均質量を有し、2.93の多分散性指数Iを与える。
【0153】
第二実施形態
第二実施形態によれば、ブロックポリマーは、c)で説明したブロックと同じ20℃と40℃の間のガラス転移温度(Tg)を有する第一ブロック、および前にb)で説明したような20℃以下のガラス転移温度、または前にa)で説明したような40℃以上のガラス転移温度を有する第二ブロックを含んでいる。
【0154】
好ましくは、20℃と40℃の間のTgを有する第一ブロックの割合は、重量で、ポリマーの10%〜85%、より有利には30%〜80%、さらにより有利には50%〜70%の範囲である。
【0155】
第二ブロックが40℃以上のTgを有するブロックである場合には、そのブロックが、重量で、ポリマーの10%〜85%、より有利には20%〜70%、さらにより有利には30%〜70%の範囲の割合で存在することが好ましい。
【0156】
第二ブロックが20℃以下のTgを有するブロックである場合には、そのブロックが、重量で、ポリマーの10%〜85%、より有利には20%〜70%、さらにより有利には20%〜50%の範囲の割合で存在することが好ましい。
【0157】
好ましくは、20℃と40℃の間のTgを有する第一ブロックは、対応するホモポリマーが40℃以上のTgを有するようなモノマー、および対応するホモポリマーが20℃以下のTgを有するようなモノマーから得られるコポリマーである。
【0158】
20℃以下のTgを有する、あるいは40℃以上のTgを有する第二ブロックは、有利には、ホモポリマーである。
【0159】
したがって、この第二実施形態の第一変形形態によれば、そのブロックポリマーは、
・20℃と40℃の間のTg、例えば25〜39℃のTgを有し、少なくとも1つのアクリル酸メチルモノマー、少なくとも1つのメタクリル酸メチルモノマーおよび少なくとも1つのアクリル酸モノマーを含むコポリマーである第一ブロック、
・40℃以上、例えば85〜125℃の範囲のTgを有し、メタクリル酸メチルモノマーからなるホモポリマーである第二ブロック、および
・少なくとも1つのアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルモノマーを含む中間ブロック、および
・メタクリル酸メチル、少なくとも1つのアクリル酸モノマーおよび少なくとも1つのアクリル酸メチルモノマーを含む中間ブロック
を含んでいてよい。
【0160】
この第二実施形態の第二変形形態によれば、そのブロックポリマーは、
・20℃と40℃の間のTg、例えば21〜39℃のTgを有し、アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル/アクリル酸2-エチルヘキシルを含むコポリマーである第一ブロック、
・20℃以下、例えば-65〜-35℃の範囲のTgを有し、メタクリル酸メチルのホモポリマーである第二ブロック、および
・アクリル酸イソボルニル/メタクリル酸イソブチル/アクリル酸2-エチルヘキシルのランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0161】
この第二実施形態の第三変形形態によれば、そのブロックポリマーは、
・20℃と40℃の間のTg、例えば21〜39℃のTgを有し、アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸のコポリマーである第一ブロック、
・40℃以上、例えば85〜115℃の範囲のTgを有し、アクリル酸イソボルニルのホモポリマーである第二ブロック、および
・アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸のランダムコポリマーである中間ブロックを含んでいてよい。
【0162】
本発明による組成物は、好ましくは、重量で、0.1%〜60%、好ましくは0.5%〜50%、より好ましくは1%〜40%のポリマー活性物質(またはポリマー固形分)を含む。
【0163】
皮膜形成剤
本発明の組成物はまた、少なくとも1種の皮膜形成剤を含み、それは有機ポリマーでも無機ポリマーでよい。皮膜形成剤は、それが有機ポリマーなら、前に記載したような皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマーではない。
【0164】
実施形態の1つで、皮膜形成有機ポリマーは、
・有機液体媒体に可溶な皮膜形成ポリマー、その有機液体媒体が少なくとも1種のオイルを含む場合には特に脂溶性ポリマー、
・有機液体溶剤媒体に分散可能な皮膜形成ポリマー、特に、ポリマー粒子の非水性分散物、好ましくはシリコーンオイルまたは炭化水素をベースにしたオイル中の分散物の形態でのポリマー;実施形態の1つで、ポリマーの非水性分散物は、少なくとも1種の安定剤でその表面を安定化されたポリマー粒子を含み、「NAD」(非水性分散物)と呼ばれることが多い、
・「ラテックス」として知られていることの多い、皮膜形成ポリマー粒子の水性分散液;この場合、組成物が有機液体媒体の他にも水相を含むのは当然である、
・水溶性皮膜形成ポリマー;この場合、組成物が有機液体媒体の他に水相を含むのは当然である、
からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである。
【0165】
実施形態の1つで、皮膜形成剤は、有機液体媒体に可溶である皮膜形成有機ポリマーである。
【0166】
1/有機液体媒体に溶けるポリマー
組成物の有機液体媒体が少なくとも1種のオイルを含む場合、皮膜形成剤は、前記オイルに溶けるポリマーでよい。この場合、そのポリマーは脂溶性ポリマーと呼ばれる。脂溶性ポリマーは、任意の化学種でよく、特に次のものから選択される、すなわち、
a)オレフィンの、シクロオレフィンの、ブタジエンの、イソプレンの、スチレンの、ビニルエーテル、エステルもしくはアミドの、または直鎖、分岐もしくは環状のC4〜C50アルキル基を含み、好ましくは非晶質である(メタ)アクリル酸エステルもしくはアミドの、脂溶性、非晶質ホモポリマーおよびコポリマー。好ましい脂溶性ホモポリマーおよびコポリマーは、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸トリデシルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル、またはそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから得られる。挙げられる例には、Phoenix Chem.がGiovarez AC-5099 MLの名称で販売しているアクリル酸アルキル/アクリル酸シクロアルキルのコポリマー、およびC2〜C30アルケン、例えばC3〜C22アルケンのコポリマーなどのビニルピロリドンコポリマーが含まれ、かつそれらの組合せが使用できる。本発明で使用できるVPコポリマーの例としては、VP/ラウリン酸ビニル、VP/ステアリン酸ビニル、ブチル化ポリビニルピロリドン(PVP)、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンテンまたはVP/アクリル酸/メタクリル酸ラウリルのコポリマーが挙げられる。
【0167】
挙げることのできる特定の脂溶性コポリマーには、
i)3MからSA70.5の名称で販売され、米国特許第5,725,882号、5,209,924号、4,972,037号、4,981,903号、4,981,902号、および5,468,477号、ならびに米国特許第5,219,560号および欧州特許第0388582号に記載されている製品など、シリコーン骨格およびアクリル系接枝(graft)を有する、またはアクリル系骨格およびシリコーン接枝を有する、シリコーン-アクリルグラフトポリマー、
ii)上に記載した部類の1つに属し、フルオロ基をもつ脂溶性ポリマー、特に米国特許第5,948,393号に記載のポリマーおよび欧州特許第0815836号および米国特許第5,849,318号に記載の(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルのコポリマー、
iii)1個または複数のエチレン性、好ましくは共役した結合(またはジエン)を含むエチレン性モノマーの重合または共重合から得られるポリマーまたはコポリマー、
が含まれる。エチレン性モノマーの重合または共重合から得られるポリマーまたはコポリマーとして、ビニル系、アクリル系またはメタクリル系コポリマーを使用することが可能である。
【0168】
実施形態の1つで、皮膜形成剤は、スチレン単位またはスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、クロロスチレンまたはクロロメチルスチレン)から構成される少なくとも1種のブロックを含むブロックコポリマーである。少なくとも1種のスチレンブロックを含むコポリマーは、星型または放射状の、ジブロックまたはトリブロック、さらには多ブロックコポリマーでよい。少なくとも1種のスチレンブロックを含むコポリマーは、例えば、アルキルスチレン(AS)ブロック、エチレン/ブチレン(EB)ブロック、エチレン/プロピレン(EP)ブロック、ブタジエン(B)ブロック、イソプレン(I)ブロック、アクリレート(A)ブロック、メタクリレート(MA)ブロックまたはこれらのブロックの組合せを含んでもよい。スチレン単位またはスチレン誘導体から構成される少なくとも1種のブロックを含むコポリマーは、トリブロックコポリマー、特に、BASF社が「Luvitol HSB」の名称で販売または製造しているものなどのポリスチレン/ポリイソプレンまたはポリスチレン/ポリブタジエン型のトリブロックコポリマー、およびShell Chemical Co.が「Kraton」の商標で販売または製造しているものなどのポリスチレン/コポリ(エチレン-プロピレン)型または代わりとしてポリスチレン/コポリ(エチレン-ブチレン)型のトリブロックコポリマーでよく、あるいはPenreco社のGelled Permethyl 99Aを使用できる。また、スチレン-メタクリレートコポリマーも使用できる。
【0169】
スチレンまたはスチレン誘導体単位から構成される少なくとも1種のブロックを含むコポリマーは、例えば、Kraton G1650(SEBS)、Kraton G1651(SEBS)、Kraton G1652(SEBS)、Kraton G1657X(SEBS)、Kraton G1701X(SEP)、Kraton G1702X(SEP)、Kraton G1726X(SEB)、Kraton D-1101(SBS)、Kraton D-1102(SBS)、Kraton D-1107(SIS)、Gelled Permethyl 99A-750、Gelled Permethyl 99A-753-58(トリブロックポリマーおよび星型ブロックポリマーのブレンド)、Gelled Permethyl 99A-753-59(トリブロックポリマーおよび星型ブロックポリマーのブレンド)、Penreco社のVersagel 5970およびVersagel 5960(イソドデカン中トリブロックポリマーおよび星型ブロックポリマーのブレンド)、およびLubrizol社のOS 129880、OS 129881およびOS 84383(スチレン-メタクリレートコポリマー)でよい。
【0170】
実施形態の1つで、皮膜形成剤は、ビニルエステル(ビニル基はエステル基の酸素原子に直接に結合しており、ビニルエステルはエステル基のカルボニルに連結した炭素原子が1〜19個の飽和の直鎖または分岐した炭化水素をベースにした基を有する)と、ビニルエステル(既に存在するビニルエステル以外の)、α-オレフィン(8〜28個の炭素原子を含む)、アルキルビニルエーテル(そのアルキル基は2〜18個の炭素原子を含む)またはアリルもしくはメタクリルエステル(エステル基のカルボニルに連結した炭素原子数が1〜19個の飽和の直鎖もしくは分岐した炭化水素をベースにした基を含む)でよい、少なくとも1種のその他のモノマーとのコポリマーから選択される。
【0171】
これらのコポリマーは架橋剤を用いて部分的に架橋されていてもよく、架橋剤はテトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、オクタン二酸ジビニル、ドデカンジオン酸ジビニル、およびオクタデカンジオン酸ジビニルなど、ビニル型またはアリルもしくはメタリル型のいずれでもよい。
【0172】
挙げることのできるこれらコポリマーの例には、次のコポリマー、すなわち、酢酸ビニル/ステアリン酸アリル、酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/ステアリン酸ビニル、酢酸ビニル/オクタデセン、酢酸ビニル/オクタデシルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸アリル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル/1-オクタデセン、酢酸ビニル/1-ドデセン、ステアリン酸ビニル/エチルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/セチルビニルエーテル、ステアリン酸ビニル/酢酸アリル、2,2-ジメチルオクタン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、2,2-ジメチルペンタン酸アリル/ラウリン酸ビニル、ジメチルプロピオン酸ビニル/ステアリン酸ビニル、ジメチルプロピオン酸アリル/ステアリン酸ビニル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋されたプロピオン酸ビニル/ステアリン酸ビニル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋されたジメチルプロピオン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、0.2%テトラアリルオキシエタンで架橋された酢酸ビニル/オクタデシルビニルエーテル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋された酢酸ビニル/ステアリン酸アリル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋された酢酸ビニル/1-オクタデセン、および0.2%のジビニルベンゼンで架橋されたプロピオン酸アリル/ステアリン酸アリルが含まれる。
【0173】
脂溶性皮膜形成ポリマーとしても挙げることのできるポリマーには、脂溶性コポリマー、特に、9〜22個の炭素原子を含むビニルエステルの、またはアクリル酸またはメタクリル酸アルキル(アルキル基は10〜20個の炭素原子を含む)の共重合から得られるコポリマーが含まれる。
【0174】
このような脂溶性コポリマーは、ポリステアリン酸ビニル、ジビニルベンゼン、ジアリルエーテルまたはフタル酸ジアリルで架橋されたポリステアリン酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリルのコポリマー、ポリラウリン酸ビニルおよびポリ(メタ)アクリル酸ラウリルコポリマーから選択され、これらのポリ(メタ)アクリレートはエチレングリコールジメタクリレートまたはテトラエチレングリコールジメタクリレートで架橋されてもよい。
【0175】
上記の脂溶性コポリマーは、既知であり、特に特許出願FR-A-2 232 303に記載されており、2,000〜500,000、好ましくは4,000〜200,000の範囲の重量平均分子量を有することができる。
【0176】
本発明で使用できる脂溶性ポリマーの例としては、ポリアルキレンおよびC2〜C20アルケンのコポリマー、特にポリブテンが挙げられる。
【0177】
b)好ましくは水素相互作用を供与するいかなる基も含まないような非晶質の脂溶性ポリ縮合物、特にC4〜50アルキル側鎖を有する脂肪族ポリエステル、あるいは脂肪酸二量体の縮合から得られるポリエステル、さらには、外界温度で固体であり、未公開のフランス特許出願第0113920号に記載されているような、シリコーンをベースにしたブロック、接枝または末端基の形態の部分を含むポリエステル。
【0178】
c)アルキル(エーテルまたはエステル)側鎖を有する非晶質の脂溶性多糖類、特に、エチルセルロースおよびプロピルセルロースなど、飽和または不飽和の直鎖または分岐のC1〜C8アルキル基を含むアルキルセルロース。
【0179】
皮膜形成ポリマーは、特に、ニトロセルロース、酢酸セルロース、アセト酪酸セルロース、アセトプロピオン酸セルロースまたはエチルセルロースなどのセルロースをベースにしたポリマーから、あるいはポリウレタン、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリビニルブチラール、アルキド樹脂、アリールスルホンアミド-ホルムアルデヒド樹脂(例えばトルエンスルホンアミド-ホルムアルデヒド樹脂)などのアルデヒド縮合生成物に由来する樹脂、およびアリールスルホンアミドエポキシ樹脂から選択できる。
【0180】
特に使用できる皮膜形成ポリマーには、特にHercules社が販売しているニトロセルロースRS 1/8秒、RS 1/4秒、1/2秒、RS 5秒、RS 15秒、RS 35秒、RS 75秒、RS 150秒、AS 1/4秒、AS 1/2秒、SS 1/4秒、SS 1/2秒、SS 5秒、Akzo社の「Ketjentflex MS80」またはFaconnier社の「Santolite MHP」および「Santolite MS80」またはPan Americana社の「Resimpol 80」トルエンスルホンアミド-ホルムアルデヒド樹脂、Dainippon社の「Beckosol Ode 230-70-E」アルキド樹脂、Rohm & Haas社の「Acryloid B66」アクリル樹脂、Baxenden社の「Trixene PR 4127」ポリウレタン樹脂が含まれる。
【0181】
d)シリコーンオイルによって溶けるかあるいは膨潤するシリコーン樹脂。これらの樹脂は、部分架橋ポリオルガノシロキサンであって、架橋度に応じて有機液体媒体のオイル相のシリコーンオイルによって溶けるかあるいは膨潤する。これらのシリコーン樹脂は、次の非制約的リスト、すなわちMQ樹脂またはトリメチルシロキシシリケート、ポリシルセスキオキサンまたは架橋ジメチコーン/ビニルジメチコーンポリマーから選択できる。
【0182】
II/ポリマー粒子の非水性分散物
組成物には、ポリマー粒子の非水性分散物から選択される皮膜形成剤を含めることができる。粒子は、一般に球状である。一般には、本発明の組成物中に組み込む前に、粒子を、炭化水素をベースにしたオイルまたはシリコーンオイルなどの生理学上許容される液状脂肪相中に分散させる。実施方式の1つによれば、これらの分散物は、ポリマーの水性分散物である網状組織とは対照的に、ポリマーのNAD(非水性分散物)として一般に知られている。これらの分散物は、特に、当該脂肪相で安定な分散物中のナノ粒子ポリマーの形態で存在できる。1つの実施形態で、ナノ粒子の粒径は、5nmと600nmの間である。しかし、粒径が1μmまでの範囲のポリマー粒子を得ることが可能である。
【0183】
本発明組成物のポリマー分散物の利点の1つは、ポリマーまたはポリマー系(ポリマーに可塑剤型添加剤を加えた)のガラス転移温度(Tg)を変更できる可能性、およびそれに伴って硬質ポリマーを幾分なりとも柔軟なポリマーに変え得る可能性であり、意図した応用分野および特に被覆皮膜に応じて組成物の機械的特性を調節することが可能になる。
【0184】
本発明の組成物中で使用できる分散物中のポリマーは、好ましくは、約2,000〜10,000,000の範囲の分子量、および-100℃〜300℃、より有利には-50℃〜50℃、好ましくは-10℃〜100℃の範囲のTgを有する。
【0185】
好ましくは皮膚温度以下、特に40℃以下の低いTgを有する皮膜形成ポリマーを使用することができる。それに伴って、支持体に塗布された場合に皮膜を形成できる分散物が得られる。
【0186】
単独または混合物として使用される、好ましくは40℃以下、特に-10℃〜30℃の範囲のTgを有する、アクリルまたはビニルのフリーラジカルホモポリマーまたはコポリマーは、挙げることのできる皮膜形成ポリマーの1つである。
【0187】
表記「フリーラジカルポリマー」とは、不飽和、特にエチレン性不飽和を含み、各モノマーが単独重合の(縮合重合ではない)能力のあるモノマーの重合によって得られるポリマーを意味する。フリーラジカルポリマーは、特に、ビニルのポリマーまたはコポリマー、特にアクリルポリマーでよい。
【0188】
ビニルポリマーは、少なくとも1個の酸基を含むエチレン性不飽和モノマーおよび/またはこれらの酸モノマーのエステルおよび/またはこれらの酸のアミドの重合から生じる。
【0189】
酸性基をもつモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはイタコン酸などのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸を使用することができる。好ましくは(メタ)アクリル酸およびクロトン酸、より優先的には(メタ)アクリル酸が使用される。
【0190】
酸モノマーのエステルは、有利には、(メタ)アクリル酸のエステル((メタ)アクリレートとしても知られる)、例えば、詳細にはC1〜C20、好ましくはC1〜C6アルキルからなる(メタ)アクリル酸アルキル、詳細にはC6〜C10アリールからなる(メタ)アクリル酸アリール、および詳細にはC2〜C6ヒドロキシアルキルからなる(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルから選択される。挙げることのできる(メタ)アクリル酸アルキルには(メタ)アクリル酸メチル、エチル、ブチル、イソブチル、2-エチルヘキシルおよびラウリルが含まれる。挙げることのできる(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルには、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが含まれる。挙げることのできる(メタ)アクリル酸アリールにはアクリル酸ベンジルまたはフェニルが含まれる。
【0191】
特に好ましい(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルである。
【0192】
好んで使用されるフリーラジカルポリマーは、(メタ)アクリル酸の、および、特にC1〜C4アルキルからなる(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマーである。より好ましくは、場合によってはアクリル酸メチルをアクリル酸と共重合させて使用できる。
【0193】
挙げることのできる酸モノマーのアミドには、(メタ)アクリルアミド、ならびに、特にN-エチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミドおよびN-オクチルアクリルアミド、N-ジ(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリルアミドなどの、特にC2〜C12アルキルからなるN-アルキル(メタ)アクリルアミドが含まれる。
【0194】
皮膜形成ビニルポリマーは、エチレン性不飽和を含み少なくとも1個の酸基を含むモノマーおよび/またはこれらの酸モノマーのエステルおよび/またはこれらの酸モノマーのアミドの重合から得ることができる。
【0195】
使用できる酸基をもつモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはイタコン酸などのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸である。好ましくは(メタ)アクリル酸およびクロトン酸、より好ましくは(メタ)アクリル酸が使用される。
【0196】
酸モノマーのエステルは、有利には、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリレートとしても知られている)、特に、詳細にはC1〜C30、好ましくはC1〜C20アルキルからなる(メタ)アクリル酸アルキル、詳細にはC6〜C10アリールからなる(メタ)アクリル酸アリール、および詳細にはC2〜C6ヒドロキシアルキルからなる(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルから選択される。
【0197】
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルおよびメタクリル酸シクロへキシルが挙げられる。
【0198】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0199】
アクリル酸ベンジルおよびアクリル酸フェニルは、挙げることのできる(メタ)アクリル酸アリール類の1つである。
【0200】
特に好ましい(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルである。
【0201】
本発明によれば、エステルのアルキル基はフッ素化または過フッ素化され(すなわちアルキル基の水素原子のいくつかまたは全部がフッ素原子で置換され)てもよい。
【0202】
酸モノマーのアミドの例としては、(メタ)アクリルアミド、特に、とりわけアルキルがC2〜C12のN-アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N-エチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-t-オクチルアクリルアミドおよびN-ウンデシルアクリルアミドは、挙げることのできるN-アルキル(メタ)アクリルアミドの1つである。
【0203】
皮膜形成ビニルポリマーは、ビニルエステルおよびスチレン系モノマーから選択されるモノマーの単独重合または共重合によって得ることもできる。特に、これらのモノマーを、上述のような酸モノマーおよび/またはそのエステルおよび/またはそのアミドと重合させ得る。
【0204】
ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニルおよびt-ブチル安息香酸ビニルが挙げられる。
【0205】
スチレンモノマー類としては、スチレンおよびアルファ-メチルスチレンが挙げられる。
【0206】
制約するものではないが、本発明の分散物中のポリマーは、次のポリマーまたはコポリマー、すなわち、ポリウレタン、ポリウレタン-アクリル、ポリウレア、ポリウレア-ポリウレタン、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルアミド、脂肪鎖ポリエステル、アルキド、アクリル酸および/またはビニルのポリマーまたはコポリマー、アクリル-シリコーンコポリマー、ポリアクリルアミド、シリコーンポリマー例えばシリコーンポリウレタンまたはシリコーンアクリル、およびフッ素ポリマー、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0207】
油性分散物中のポリマーは、(固形分または活性物質として)、組成物重量の0.1%〜60%、好ましくは2%〜40%、より有利には4%〜25%に相当してよい。安定剤が外界温度で固体である場合には、分散物中の固形分量はポリマーと安定剤の合計量に相当する。
【0208】
本発明の組成物中の脂溶性または分散可能ポリマーは、適切なら、組成物の総重量に対し、(活性物質として)0.01%〜20%、例えば1%〜10%の範囲の量で使用される。
【0209】
III/ポリマー粒子の水性分散物
別な実施形態によれば、本発明による組成物が水相を含む場合、ポリマー粒子の水性分散物から皮膜形成ポリマーを選択してもよい。
【0210】
1種または複数の皮膜形成ポリマーを含む水性分散物は、当業者がその通常の知識に基づいて、特に、乳化重合によってまたはあらかじめ形成しておいたポリマーの分散によって調製できる。
【0211】
本発明による組成物中で使用できる皮膜形成ポリマーとしては、縮合重合物型またはフリーラジカル型の合成ポリマー、天然起源のポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0212】
したがって、縮合重合物としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性または両性のポリウレタン、ポリウレタン-アクリル、ポリウレタン-ポリビニルピロリドン、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレア-ポリウレタン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0213】
ポリウレタンは、例えば、
・直鎖または分岐の脂肪族および/または環式脂肪族および/または芳香族ポリエステル起源の少なくとも1種のブロック、および/または
・脂肪族および/または環式脂肪族および/または芳香族ポリエーテル由来の少なくとも1種のブロック、および/または
・少なくとも1種の置換または非置換、分岐または非分岐シリコーンブロック、例えばポリジメチルシロキサンまたはポリメチルフェニルシロキサン、および/または
・フルオロ基を含む少なくとも1種のブロック
を、単独でまたは混合物として含む、脂肪族、環式脂肪族または芳香族ポリウレタン、ポリウレア/ポリウレタンまたはポリウレアコポリマーでよい。
【0214】
本発明で定義されるポリウレタンは、分岐または非分岐のポリエステルから、あるいは移動性水素を含むアルキドから得ることもでき、ジイソシアナートおよび二官能性有機共反応化合物(例えば、ジヒドロ、ジアミノまたはヒドロキシアミノ)との重付加によって改質され、カルボン酸もしくはカルボキシレート基、またはスルホン酸もしくはスルホネート基、あるいは中和可能な第三級アミン基または第四級アンモニウム基を含む。
【0215】
ポリエステル、ポリエステルアミド、脂肪鎖ポリエステル、ポリアミドおよびエポキシエステル樹脂を挙げることもできる。
【0216】
ポリエステルは、脂肪族または芳香族二塩基酸を脂肪族または芳香族ジオールとあるいはポリオールと縮合重合させることによって、周知の方法で得ることができる。脂肪族二塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸またはセバシン酸が使用できる。芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸またはイソフタル酸、あるいは別法として、無水フタル酸などの誘導体が使用できる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールおよび4,4-N-(1-メチルプロピリデン)ビスフェノールが使用できる。ポリオールとしては、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびトリメチロールプロパンが使用できる。
【0217】
ポリエステルアミドは、二塩基酸をジアミンまたはアミノアルコールと縮合重合させることによって、ポリエステルと類似の方法で得ることができる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたはメタ-もしくはパラ-フェニレンジアミンが使用できる。アミノアルコールとしては、モノエタノールアミンが使用できる。
【0218】
縮合重合の際に使用できるアニオン基をもつモノマーとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、トリメリト酸または無水トリメリト酸などの誘導体、ペンタンジオール-3-スルホン酸のナトリウム塩および5-スルホ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のナトリウム塩が挙げられる。脂肪鎖ポリエステルは、縮合重合の際に脂肪鎖ジオールを使用して得ることができる。エポキシエステル樹脂は、脂肪酸をα,ω-ジエポキシ末端を有する縮合物と縮合重合させることによって得ることができる。
【0219】
フリーラジカルポリマーは、詳細にはアクリルおよび/またはビニルのポリマーまたはコポリマーでよい。アニオンラジカルポリマーが好ましい。フリーラジカル重合の際に使用できるアニオン基をもつモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸または2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。
【0220】
アクリルポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルおよび/またはアミドから選択されるモノマーの共重合から得られる。エステル型モノマーの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルおよびメタクリル酸ラウリルが挙げられる。アミド型モノマーの例としては、N-t-ブチルアクリルアミドおよびN-t-オクチルアクリルアミドが挙げられる。
【0221】
アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルなど、好ましくはノニオン性の親水性基を含むエチレン性不飽和モノマーの共重合によって得られるアクリルポリマーが好んで使用される。
【0222】
ビニルポリマーは、ビニルエステル、スチレンまたはブタジエンから選択されるモノマーの単独重合または共重合から得られうる。ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニルおよびt-ブチル安息香酸ビニルが挙げられる。
【0223】
アクリル/シリコーンコポリマー、またはさらにニトロセルロース/アクリルコポリマーも使用できる。
【0224】
場合によっては修飾された天然起源のポリマーは、セラック、サンダラックガム、ダマール樹脂、エレミガム、コーパル樹脂、セルロース誘導体、およびこれらの混合物から選択できる。
【0225】
ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエステルアミドおよび/またはアルキドからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーのあらかじめ作製した粒子の内部および/または表面の一部での、1種または複数のフリーラジカルモノマーのフリーラジカル重合から得られるポリマーも挙げることができる。これらのポリマーは、一般に「ハイブリッドポリマー」と呼ばれる。
【0226】
ポリマー粒子の水性分散物を使用する場合、前記水性分散物の固形分含有量は、重量で約5%〜60%、好ましくは30%〜50%でよい。
【0227】
注目すべき光沢をもつ皮膜の作成を可能にするには、水性分散物中のポリマー粒子の粒径は、10nmと500nmの間、好ましくは20nmと150nmの間でよい。しかし、1ミクロンまでの範囲の粒径も採用できる。
【0228】
使用できる皮膜形成ポリマーの水性分散物には、Avecia-Neoresins社がNeocryl XK-90(登録商標)、Neocryl A-1070(登録商標)、Neocryl A-1090(登録商標)、Neocryl BT-62(登録商標)、Neocryl A-1079(登録商標)およびNeocryl A-523(登録商標)の名称で、Dow Chemical社がDow Latex 432(登録商標)の名称で、大東化成工業がDaitosol 5000 AD(登録商標)またはDaitosol 5000 SJの名称で、Interpolymer社がSyntran 5760の名称で販売しているアクリル分散物;またはAvecia-Neoresins社がNeorez R-981(登録商標)およびNeorez R-974(登録商標)の名称で、Goodrich社がAvalure UR-405(登録商標)、Avalure UR-410(登録商標)、Avalure UR-425(登録商標)、Avalure UR-450(登録商標)、Sancure 875(登録商標)、Sancure 861(登録商標)、Sancure 878(登録商標)およびSancure 2060(登録商標)の名称で、Bayer社がImpranil 85(登録商標)の名称で、Hydromer社がAquamere H-1511(登録商標)の名称で販売しているポリウレタン水性分散物;Eastman Chemical Products社がEastman AQ(登録商標)の商標で販売しているスルホポリエステル;およびビニル分散物例えばMexomere PAMが含まれる。
【0229】
IV/水溶性ポリマー
組成物が水相を含む場合、皮膜形成ポリマーは水溶性ポリマーでよい。したがって、その水溶性ポリマーは組成物の水相中に溶かされる。
【0230】
水溶性皮膜形成ポリマーとして、次のカチオン性ポリマーが挙げられる、すなわち、
(1)ポリアクリレートまたはポリメタクリレートなどのアクリルポリマーまたはコポリマー;部類(1)のコポリマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、低級アルキルが窒素上に置換されたアクリルアミドまたはメタクリルアミド、アクリルもしくはメタクリル酸またはそのエステル、ビニルピロリドンもしくはビニルカプロラクタムなどのビニルラクタム、またはビニルエステルの部類から選択できるコモノマーから誘導される1種または複数の単位を含んでいてもよい。
【0231】
したがって、これらの部類(1)のコポリマーとしては、
・Hercules社がHercoflocの名称で販売している製品など、アクリルアミドおよびジメチルアミノエチルメタクリレートの、硫酸ジメチルまたはジメチルハライドで第四級化したコポリマー、
・例えば特許出願EP-A-080 976に記載され、Ciba Geigy社がBina Quat P100の名称で販売している、アクリルアミドおよびメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドのコポリマー、
・Hercules社がRetenの名称で販売している、アクリルアミドおよびメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメトサルフェートのコポリマー、
・ISP社が「Gafquat」例えば「Gafquat 734」または「Gafquat 755」の名称で販売している製品、あるいは「Copolymer 845、958および937」と称される製品など、ビニルピロリドン/アクリル酸もしくはメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルの第四級化または非第四級化コポリマー。これらのポリマーは、フランス特許第2 077 143号および第2 393 573号に詳細に記載されている。
・ISP社がGaffix VC713の名称で販売している製品など、メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンのターポリマー、および
・ISP社が「Gafquat HS 100」の名称で販売している製品など、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドの第四級化コポリマーを挙げることができる。
(2)トリアルキルアンモニウムカチオン基を含むグアーガムなど、より詳細には米国特許第3,589,578号および第4,031,307号に記載の第四級化多糖類。このような製品は、詳細にはMeyhall社がJaguar C13 S、Jaguar C15およびJaguar C17の商品名で販売している。
(3)ビニルピロリドンおよびビニルイミダゾールの第四級コポリマー、
(4)キトサンおよびその塩
(5)特にメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩またはジメチルジアリルアンモニウム塩でグラフトされたヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-またはヒドロキシプロピルセルロースなど、第四級アンモニウムを含み詳細には米国特許第4,131,576号に記載の水溶性モノマーでグラフトされたセルロースまたはセルロース誘導体のコポリマーなどのカチオン性セルロース誘導体。この定義に一致し、販売されている製品は、より詳細には、National Starch社が「Celquat L200」および「Celquat H100」の名称で販売している製品である。
【0232】
水溶性皮膜形成ポリマーとして、次の両性ポリマーが挙げられる、すなわち、
(1)より詳細にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、α-クロロアクリル酸など、カルボキシル基をもつビニル化合物から誘導されるモノマーと、より詳細にはメタクリル酸およびアクリル酸ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドおよびアクリルアミドなど、少なくとも1個の塩基性原子を含む置換ビニル化合物から誘導される塩基性モノマーとの共重合から得られるポリマー。このような化合物が、米国特許第3,836,537号に記載されている。
(2)a)窒素上にアルキル基が置換されたアクリルアミドおよびメタクリルアミドから選択される少なくとも1種のモノマー
b)1個または複数の反応性カルボキシル基を含む少なくとも1種の酸性コモノマー、および
c)第一級、第二級、第三級および第四級アミン置換基を含む、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルなどの少なくとも1種の塩基性コモノマー、およびメタクリル酸ジメチルアミノエチルの硫酸ジメチルもしくはジエチルによる第四級化生成物
から誘導される単位を含むポリマー、
(3)ポリアミノアミドから全体的にまたは部分的に誘導される架橋アルキルポリアミノアミド
(4)双性イオン単位を含むポリマー
(5)キトサン誘導ポリマー
(6)Jan Dekker社が「Evalsan」の名称で販売しているN-カルボキシメチルキトサンまたはN-カルボキシブチルキトサンなど、キトサンのN-カルボキシアルキル化で得られるポリマー
(7)N,N-ジメチルアミノプロピルアミンなどのN,N-ジアルキルアミノアルキルアミンを用いた半-アミド化によって、またはN,N-ジアルカノールアミンを用いた半-エステル化によって部分修飾した、(C1〜C5)アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマー。これらのコポリマーはビニルカプロラクタムなど、その他のビニルコモノマーを含んでいてもよい。
【0233】
水溶性皮膜形成ポリマーは、好ましくは、次のものからなる群から選択される。すなわち
・タンパク質、例えば、小麦タンパク質および大豆タンパク質などの植物起源タンパク質;ケラチン例えばケラチン水解物およびスルホン化ケラチンなどの動物起源タンパク質
・アニオン、カチオン、両性またはノニオン性キチンもしくはキトサンポリマー
・ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、および第四級化セルロース誘導体
・ポリアクリレートまたはポリメタクリレートなどのアクリル系ポリマーまたはコポリマー
・ビニルポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマー、酢酸ビニルおよびクロトン酸のコポリマー、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマー
・ビニルピロリドンおよびカプロラクタムのコポリマー、ポリビニルアルコール
・次のような、場合によっては修飾された天然起源のポリマー
・アラビアガム、グアーガム、キサンタン誘導体、カラヤガム
・アルギン酸塩およびカラゲーニン
・グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸およびこれらの誘導体
・セラック、サンダラックガム、ダマール樹脂、エレミガムおよびコーパル樹脂
・デオキシリボ核酸
・ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、およびこれらの混合物などのムコ多糖類
【0234】
これらのポリマーは、水によって皮膜を多少なりともある程度除去することが望まれる場合に、特に使用される。
【0235】
油性または水性ポリマーの皮膜形成特性を向上させるために、ポリマー系に既知の合着剤から選択される合着剤を添加することが可能である。
【0236】
本発明の実施形態の1つによれば、皮膜形成ポリマーは、ポリシロキサンを含むモノマーでグラフトされた非シリコーン有機骨格を有するポリマーから選択できる。これらのポリマーは、適切なら、脂溶性でも、脂質に分散可能でも、水溶性または水性媒体に分散可能であってもよい。
【0237】
ポリシロキサンを含むモノマーでグラフトされた非シリコーン有機骨格を有するポリマーは、シリコーンを含まない有機モノマーから形成される有機主鎖からなり、その主鎖上に少なくとも1種のポリシロキサンマクロマーが、当該鎖の内側およびさらに場合によってはその末端の少なくとも1端でグラフトされる。
【0238】
以下の文章では、一般に認められていることに従って、表記「ポリシロキサンマクロマー」は、その構造中にポリシロキサン型ポリマー鎖を含む任意のモノマーを指すものと解釈される。
【0239】
シリコーングラフトポリマーの主鎖を構成する非シリコーン有機モノマーは、エチレン性不飽和を含むフリーラジカル重合が可能なモノマー、ポリアミド、ポリエステルまたはポリウレタンを形成するモノマーなどの縮合重合による重合が可能なモノマーおよびオキサゾリンまたはカプロラクタム型のモノマーなどの開環モノマーから選択できる。
【0240】
ポリシロキサンを含むモノマーでグラフトされた非シリコーン有機骨格を含む本発明に係るポリマーは、当業者に周知の任意の手段に従って、特に、(i)ポリシロキサン鎖上で適切に官能化された出発ポリシロキサンマクロマーと、(ii)それ自体が前記シリコーンに存在する官能基と反応して共有結合を形成する能力のある官能基で適切に官能化されている1種または複数の非シリコーン有機化合物との間の反応によって得ることができ、このような反応の典型例は、シリコーン末端の1つに存在するビニル基と、主鎖中にエチレン性不飽和を有するモノマーの二重結合との間のフリーラジカル反応である。
【0241】
ポリシロキサンを含むモノマーでグラフトされた非シリコーン有機骨格を含む本発明によるポリマーは、より好ましくは、米国特許第4,693,935号、同第4,728,571号、同第4,972,037号、およびEP-A-0 412 704、EP-A-0 412 707、EP-A-0 640 105、およびWO 95/00578に記載されたポリマーから選択される。これらのポリマーは、エチレン性不飽和を含むモノマーおよび末端ビニル基を有するモノマーで始まるフリーラジカル重合によって得られるコポリマー、あるいは、官能化基を含むポリオレフィンと当該官能化基と反応性のある末端官能基を有するポリシロキサンマクロマーとの反応によって得られるコポリマーである。
【0242】
本発明を実施するのに適したシリコーングラフトポリマーの特定部類の1つは、
a)重量で0%〜98%の、エチレン性不飽和を含み、極性の低い、フリーラジカル重合が可能な少なくとも1種の親油性モノマー(A)
b)重量で0%〜98%の、エチレン性不飽和を含み、(A)型のモノマーと共重合が可能な少なくとも1種の親水性極性モノマー(B)
c)重量で0.01%〜50%の、少なくとも1種の一般式
X(Y)nSi(R)3-mZm (I)
[式中、
Xは、モノマー(A)および(B)と共重合可能なビニル基を表し、
Yは、二価の結合基を表し、
Rは、水素、C1〜C6アルキルもしくはアルコキシ、またはC6〜C12アリールを表し、
Zは、数平均分子量が少なくとも500の一価ポリシロキサン単位を表し、
nは0または1であり、mは1〜3の範囲の整数である]のポリシロキサンマクロマー(C)
を含むシリコーングラフトポリマーからなる。パーセントはモノマー(A)、(B)および(C)の合計重量に対して算定される。
【0243】
これらのポリマーは、10,000〜2,000,000の範囲の数平均分子量、および好ましくは低くとも-20℃のガラス転移温度Tgまたは結晶溶融温度Tmを有する。
【0244】
親油性モノマー(A)の例としては、C1〜C18アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、C12〜C30アルコールのメタクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレンマクロマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルファ-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ブタジエン、シクロヘキサジエン、エチレン、プロピレン、ビニルトルエン、1,1-ジヒドロパーフルオロアルカノールまたはその同族体のアクリルもしくはメタクリル酸エステル、オメガ-ヒドロフルオロアルカノールのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、フルオロアルキルスルホンアミドアルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、フルオロアルキルアルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、フルオロエーテルアルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、あるいはそれらの混合物が挙げられる。好ましいモノマー(A)は、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-(N-メチルパーフルオロオクタンスルホンアミド)エチルおよびアクリル酸2-(N-ブチルパーフルオロオクタンスルホンアミド)エチル、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0245】
極性モノマー(B)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、第四級化したメタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、マレイン酸、無水マレイン酸およびそのヘミエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルピロリドン、ビニルエーテル、マレイミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、複素環ビニル極性化合物、スルホン化スチレン、アリルアルコール、ビニルアルコールおよびビニルカプロラクタム、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましいモノマー(B)は、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、第四級化したメタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびビニルピロリドン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0246】
モノマー(A)がC18〜C22アルコールとメタクリル酸のエステルから選択されるような、信越化学が販売している製品KP561またはKP562が、特に挙げられる。
【0247】
式(I)のポリシロキサンマクロマー(C)は、好ましくは、下記の一般式(II)
【0248】
【化2】

【0249】
[式中、
R1は、水素または-COOH(好ましくは水素)であり、
R2は、水素、メチルまたは-CH2COOH(好ましくはメチル)であり、
R3は、C1〜C6アルキル、アルコキシまたはアルキルアミノ、C6〜C12アリールまたはヒドロキシル(好ましくはメチル)であり、
R4は、C1〜C6アルキル、アルコキシまたはアルキルアミノ、C6〜C12アリールまたはヒドロキシル(好ましくはメチル)であり、
qは、2〜6の整数(好ましくは3)であり、
pは、0または1であり、
rは、5〜700の整数であり、
mは、1〜3の整数(好ましくは1)である]に相当するマクロマーから選択される。
【0250】
nが5〜700の範囲の数字であり、lが0と3の間の整数である、次式のポリシロキサンマクロマー
【0251】
【化3】

【0252】
を使用することが好ましい。
【0253】
本発明の実施形態の1つは、
a)重量で60%のアクリル酸tert-ブチル、
b)重量で20%のアクリル酸、
c)重量で20%の、nが5〜700の範囲の数字であり、lが0と3の間の整数である、次式のシリコーンマクロマー
【0254】
【化4】

【0255】
からなるモノマー混合物(但し、重量%はモノマーの合計重量に対して計算される)から出発するフリーラジカル重合によって得ることのできるコポリマーを使用することにある。
【0256】
本発明の別な特定の実施形態は、
a)重量で80%のアクリル酸tert-ブチル、
b)重量で20%の、nが5〜700の範囲の数字であり、lが0と3の間の整数である、次式のシリコーンマクロマー
【0257】
【化5】

【0258】
からなるモノマー混合物(但し、重量%はモノマーの合計重量に対して計算される)から出発するフリーラジカル重合によって得ることのできるコポリマーを使用することにある。
【0259】
本発明を実施するのに適した、非シリコーン有機骨格を含むシリコーングラフトポリマーの他の特定の部類は、ポリシロキサンマクロマーと、ポリシロキサンマクロマーの末端官能基と反応してポリオレフィン主鎖にシリコーンをグラフトするための共有結合を形成する能力のある反応基を含むポリオレフィン型ポリマー上の反応性末端官能基との反応押出し成型によって得ることのできるシリコーングラフトコポリマーからなる。これらのポリマーは、それらの調製方法と共に、特許出願、WO 95/00578に記載されている。
【0260】
反応性ポリオレフィンは、好ましくは、ポリシロキサンマクロマーの末端官能基と反応する能力のある反応性官能基を含む、ポリエチレン、および、プロピレン、スチレン、アルキルスチレン、ブチレン、ブタジエン、(メタ)アクリレート、ビニルエステルまたは相当物など、エチレンから派生するモノマーのポリマーならびにポリエチレンから選択される。反応性ポリオレフィンは、より好ましくは、エチレンもしくはエチレン誘導体、および、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル官能基を含むモノマー、無水マレイン酸などの酸無水物官能基を含むモノマー、(メタ)アクリロイルクロリドなどの酸クロリド官能基を含むモノマー、(メタ)アクリル酸エステルなどのエステル官能基を含むモノマー、イソシアネート官能基を含むモノマーから選択されるモノマーのコポリマーから選択される。
【0261】
シリコーンマクロマーは、好ましくは、ポリシロキサン鎖の末端またはその鎖の末端近くに、アルコール、チオール、エポキシ基ならびに第一級および第二級アミンからなる群から選択される官能化基を含むポリシロキサンから、とりわけ一般式
T-(CH2)6-Si-[-(OSiR5R6)t-R7]y (III)
[式中、Tは、NH2、NHRNおよびエポキシ、OH、またはSH官能基からなる群から選択され、R5、R6、R7およびRNは独立にC1〜C6アルキル、フェニル、ベンジル、またはC6〜C12アルキルフェニルまたは水素を表し、sは2〜100の数字であり、tは0〜1000の数字であり、yは1〜3の数字である]に相当するポリシロキサンから選択される。これらのポリシロキサンは、好ましくは5,000〜300,000、より好ましくは8,000〜200,000、さらに特には9,000〜40,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0262】
好ましい実施形態の1つによれば、皮膜生成ポリマーは、Minnesota Mining and Manufacturing Companyから「Silicone Plus」ポリマーの商品名で購入できる。例えば、ポリ(イソブチルメタクリレート-co-メチル FOSEA)-g-ポリ(ジメチルシロキサン)がSA70-5 IBMMFの商品名で販売されている。
【0263】
本発明の他の好ましい形態によれば、皮膜形成ポリマーは、非シリコーン有機モノマーでグラフトされたシリコーンポリマーから選択される。これらのポリマーは、適するなら、脂溶性でも、脂肪に分散可能でも、水溶性または水性媒体に分散可能でもよい。
【0264】
非シリコーン有機モノマーでグラフトされたポリシロキサン骨格を含む前記のシリコーングラフトポリマーは、シリコーンを含まない少なくとも1つの有機基が当該主鎖の内側および場合によってはその末端の少なくとも1つの末端でグラフトされたシリコーン(またはポリシロキサン(/SiO-)n)主鎖を含んでいる。
【0265】
本発明による、非シリコーン有機モノマーでグラフトされたポリシロキサン骨格を含むポリマーは、既存の商品でもよいし、あるいは当業者に周知の任意の手段に従って、詳細には、(i)1個または複数のこれらケイ素原子上で適切に官能化された出発シリコーン、および(ii)前記シリコーンに含まれる官能基と反応して共有結合を形成する能力のある官能基でそれ自体適切に官能化された非シリコーン有機化合物の間の反応によって得ることができ、このような反応の典型的な例は、/Si-H基とビニル基CH2=CH-の間のヒドロシリル化反応、あるいはチオ官能基-SHと前者と同じビニル基の間の反応である。
【0266】
非シリコーン有機モノマーでグラフトされたポリシロキサン骨格を含む、本発明を実施するのに適したポリマーの例、およびさらには具体的な調製方法が、EP-A-0 582 152、WO 93/23009およびWO 95/03776に詳細に記載されており、その教示のすべてを、非限定的参照として本明細書に含める。
【0267】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、非シリコーン有機モノマーでグラフトされたポリシロキサン骨格を含む使用されるシリコーンポリマーは、片方が、エチレン性不飽和を含む少なくとも1種のアニオン性非シリコーン有機モノマーおよび/またはエチレン性不飽和を含む非シリコーン有機疎水性モノマーで、他方が、その鎖中に、前記非シリコーンモノマーの前記のエチレン性不飽和と反応して共有結合を形成する能力のある少なくとも1個の、好ましくは数個の官能基、特にチオ官能基を含むシリコーンのフリーラジカル共重合の生成物を含んでいる。
【0268】
本発明によれば、エチレン性不飽和を含む前記のアニオン性モノマーは、好ましくは、場合によっては塩の形態で部分的にまたは全部が中和された、直鎖または分岐の不飽和カルボン酸から単独でまたは混合物として選択され、このまたはこれらの不飽和カルボン酸は、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸およびクロトン酸であることが可能である。適した塩は、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩である。また、最終のシリコーングラフトポリマーでは、不飽和カルボン酸型の少なくとも1種のアニオン性モノマーのフリーラジカル(単独)重合生成物を含むアニオン性を有する有機基を、反応後に、それを塩に変えるために塩基(水酸化ナトリウム、アンモニア水など)で後中和できることに留意されたい。
【0269】
本発明によれば、エチレン性不飽和を含む疎水性モノマーは、好ましくは、アルカノールのアクリル酸エステルおよび/またはアルカノールのメタクリル酸エステルから、単独でまたは混合物として選択される。アルカノールは、好ましくはC1〜C30、特にC1〜C22である。好ましいモノマーは、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸トリデシルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0270】
非シリコーン有機モノマーでグラフトされたポリシロキサン骨格を含む、本発明を実施するのに特に適したシリコーンポリマーの1つの部類は、その構造中に下式IVの単位
【0271】
【化6】

【0272】
[式中、基G1は、同一または異なって、水素、C1〜C10アルキル基またはフェニル基を表し;基G2は、同一または異なってもよい、C1〜C10アルキレン基を表し、G3は、エチレン性不飽和を含む少なくとも1種のアニオン性モノマーの(単独)重合から生じるポリマー残基を表し、G4は、エチレン性不飽和を含む少なくとも1種の疎水性モノマーの(単独)重合から生じるポリマー残基を表し、mおよびnは0または1に等しく、aは0〜50の範囲の整数であり、bは10と350の間でよい整数であり、cは0〜50の範囲の整数であり、但し、パラメータaおよびcの一方は0でない]を含む、シリコーンポリマーから構成される。
【0273】
好ましくは、上文の式(IV)の単位が、次の特徴、すなわち
・基G1がアルキル基、好ましくはメチル基を意味し、
・nがゼロでなく、基G2が二価のC1〜C3基、好ましくはプロピレン基を表し、
・G3がエチレン性不飽和を含むカルボン酸型の少なくとも1種のモノマー、好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸の(単独)重合から生じるポリマー基を表し、
・G4が(メタ)アクリル酸C1〜C10アルキル型の少なくとも1種のモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸イソブチルまたはメチルの単独重合から生じるポリマー基を表す、
の少なくとも1つ、さらにより好ましくはすべてを所持する。
【0274】
式(IV)に相当するシリコーンポリマーの例は、詳細には、チオプロピレン型連結鎖を経由して、ポリ(メタ)アクリル酸型およびポリアルキル(メタ)アクリレート型の混合ポリマー単位がドラフトされたポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0275】
式(IV)に相当するシリコーンポリマーの他の例は、詳細には、チオプロピレン型連結鎖を経由して、ポリイソブチル(メタ)アクリレート型のポリマー単位がドラフトされたポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0276】
このようなポリマーには、少なくとも1種の次式の基
【0277】
【化7】

【0278】
[式中、a、bおよびcは、同一または異なってよく、それぞれ1〜100,000の範囲の数字であり、末端基は、同一または異なってよく、それぞれ直鎖C1〜C20アルキル基、C3〜C20分岐鎖アルキル基、C3〜C20アリール基、直鎖C1〜C20アルコキシ基および分岐C3〜C20アルコキシ基である]を含むポリマーが包含される。
【0279】
このようなポリマーは、米国特許第4,972,037号、同第5,061,481号、同第5,209,924号、同第5,849,275号、同第6,033,650号、WO 93/23446およびWO 95/06078に開示されている。
【0280】
非シリコーン有機モノマーでグラフトされたポリシロキサン骨格を有する、本発明を実施するのに特に適したシロキサンポリマーの他の部類は、その構造中に下式(V)の単位
【0281】
【化8】

【0282】
[式中、基G1およびG2は上記と同様の意味を有し、G5は少なくとも1種のエチレン性不飽和疎水性モノマーの(単独)重合から、または少なくとも1種のエチレン性不飽和アニオン性モノマーと少なくとも1種のエチレン性不飽和疎水性モノマーの共重合から生じるポリマー残基を表し、nは0または1に等しく、aは1〜50の範囲の整数であり、bは、aが0でないなら、10と350の間でよい整数である]を含むシリコーンポリマーから構成される。
【0283】
上文中の式(V)の単位は、好ましくは、次の特徴、すなわち
・基G1がアルキル基、好ましくはメチル基を意味し、
・nがゼロでなく、かつ、基G2が二価のC1〜C3基、好ましくはプロピレン基を表す、
の少なくとも1つ、さらに好ましくはすべてを所持する。
【0284】
非シリコーン有機モノマーでグラフトされたポリシロキサン骨格を持つ本発明のシリコーンポリマーの数平均分子質量は、好ましくは、約10,000〜1,000,000、さらにより好ましくは約10,000〜100,000の範囲である。
【0285】
組成物は、固形分重量で、2%〜60%、より有利には5%〜60%、好ましくは2%〜30%の皮膜形成ポリマーを含むことができる。より一般的には、ポリマーの総量は、皮膚および/または唇表面に剥離または亀裂を生じることなしに皮膚および/または唇の動きに追随する能力のある密着した皮膜を形成するに十分な量とすべきである。
【0286】
ポリマーが所望する用途に対してあまりにも高いガラス転移温度を有する場合には、可塑剤をそのポリマーと組み合わせて、使用される混合物の転移温度を低下させることができる。可塑剤は、適用分野で通常使用される可塑剤から、特にポリマーに対する溶剤となり得る化合物から選択できる。
【0287】
本発明による組成物には、水、または水と親水性有機溶剤例えばアルコール、特にエタノール、イソプロパノールまたはn-プロパノールなど、2〜5個の炭素原子を有する直鎖または分岐した低級モノアルコール、およびグリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、ペンチレングリコール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール、そうでなければ親水性であるC2エーテルおよびC2〜C4アルデヒドの混合物とを含む親水性媒体を含めることができる。
【0288】
水、または水と親水性有機溶剤との混合物は、本発明による組成物中に、組成物の総重量に対し、重量で0.1%〜99%、好ましくは10%〜80%の範囲の量で存在できる。
【0289】
本発明による組成物には、乳化用界面活性剤を含めてもよく、その界面活性剤は、詳細には組成物の総重量に対して、重量で2%〜30%、より有利には5%〜15%の範囲の割合で存在する。これらの界面活性剤は、アニオンおよびノニオン界面活性剤から選択できる。界面活性剤の性質および機能(乳化)の定義については、文献「Encyclopaedia of Chemical Technology,Kirk-Othmer」第3版、22巻、333〜432頁、1979年、Wileyを、アニオンおよびノニオン界面活性剤については、同上参照文献の特に347〜377頁を参照すればよい。
【0290】
本発明による組成物に好んで使用される界面活性剤は、
・ノニオン界面活性剤から;すなわち、脂肪酸、脂肪アルコール、ポリエトキシル化ステアリルもしくはセチルステアリルアルコールなどのポリエトキシル化およびポリグリセロール化脂肪アルコール、蔗糖の脂肪酸エステル、アルキルグルコースエステル、特にC1〜C6アルキルグルコースのポリオキシエチレン化脂肪エステル、およびこれらの混合物から、
・アニオン界面活性剤から;すなわち、アミン、アンモニア水またはアルカリ金属塩で中和されたC16〜C30脂肪酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0291】
実施形態の1つによれば、水中油または水中ワックス型乳液を得ることを可能にする界面活性剤を使用することが好ましい。
【0292】
本発明による組成物は、化粧品用として許容される(許容される耐性、毒性および感触)有機液体媒体を含む。
【0293】
特に好ましい実施形態の1つによれば、組成物の有機液体媒体には、前に記載したようなブロックポリマーの重合溶剤またはその1つである少なくとも1種の有機溶剤が含まれる。有利には、前記有機溶剤が、重量で、化粧用組成物の有機液体媒体中の主要液体である。
【0294】
実施形態の1つによれば、有機溶剤媒体には、外界温度(一般には25℃)で液体であり、オイルと呼ばれる脂肪物質が含まれる。これらの液状脂肪物質は、起源が動物、植物、鉱物または合成でよい。
【0295】
本発明で使用できるオイルとしては、パーヒドロスクアレンなどの動物起源炭化水素油;ヘプタン酸またはオクタン酸トリグリセリドなど、炭素原子4〜10個の脂肪酸の液状トリグリセリド、あるいはヒマワリ油、コーン油、大豆油、ブドウ種子油、ゴマ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ホホバ油、シアバター油などの植物性炭化水素油;流動パラフィンおよびその誘導体、ワセリン、ポリデセン、パーリアムのような水素化ポリイソブテンなどの鉱物または合成起源の直鎖または分岐した炭化水素;例えばパーセリン油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリルなど、特に脂肪酸の合成エステルおよびエーテル;乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチルなどのヒドロキシル化エステル;および脂肪アルコールのヘプタン酸エステル、オクタン酸エステルおよびデカン酸エステル;ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、およびジイソノナン酸ジエチレングリコールなどのポリオールエステル;およびペンタエリスリトールエステル;オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、およびオレイルアルコールなど、12〜26個の炭素原子を有する脂肪族アルコール;部分的に炭化水素をベースにしたおよび/またはシリコーンをベースにしたフッ素油;シクロメチコーン、ジメチコーンなどの線状または環状の、場合によっては、フェニルトリメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルメチルジメチルトリシロキサン、ジフェニルジメチコーン、フェニルジメチコーンおよびポリメチルフェニルシロキサンなど場合によってはフェニル基を含む、揮発性または非揮発性のポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンオイル、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0296】
これらのオイルは、組成物の総重量に対して、重量で0.01%〜90%、より有利には0.1%〜85%の範囲の量で存在できる。
【0297】
本発明による組成物の有機液体媒体は、化粧用として許容される(許容される耐性、毒性および感触)1種または複数の有機溶剤を含むこともできる。
【0298】
これらの溶剤は、一般に、組成物の総重量に対し、重量で0.1%〜90%、より好ましくは10%〜90%、さらに有利には30%〜90%の範囲の量で存在できる。
【0299】
本発明の組成物に使用できる溶剤としては、前記の親水性有機溶剤のほかにも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンおよびアセトンなどの外界温度で液体であるケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、およびジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなどの外界温度で液体であるプロピレングリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチルおよび酢酸イソペンチルなどの短鎖エステル(全部で3〜8個の炭素原子を有する)類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテルまたはジクロロジエチルエーテルなどの外界温度で液体であるエーテル類;デカン、ヘプタン、ドデカン、イソドデカンおよびシクロヘキサンなどの外界温度で液体であるアルカン類;トルエンおよびキシレンなどの外界温度で液体である芳香族環状化合物;およびベンズアルデヒドおよびアセトアルデヒドなどの外界温度で液体であるアルデヒド類、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0300】
本発明による組成物には、少なくとも1種のワックスを含めることができる。本発明でワックスとは、外界温度(25℃)で固体であり、可逆的な固体/液体の状態変化を示し、30℃以上で可能性としては120℃までの融点を有する親油性化合物を意味する。
【0301】
ワックスの融点は、例えばMettler社がDSC30の名称で販売している示差走査熱量計(DSC)を使用して測定できる。
【0302】
ワックスは、炭化水素ワックス、フッ素ワックスおよび/またはシリコーンワックスでよく、起源は植物、鉱物、動物および/または合成でよい。特に、ワックスは、25℃を超える、より有利には45℃を超える融点を有する。
【0303】
本発明の組成物中で使用できるワックスとしては、蜜蝋、カルナウバワックス、カンデリラワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セリシンまたはオゾケライト;ポリエチレンワックスまたはフィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;16〜45個の炭素原子を有するアルキル-またはアルコキシ-ジメチコーンなどのシリコーンワックスが挙げられる。
【0304】
ガムは、一般に、高分子量ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはセルロースガムまたは多糖類である。糊状物質は、一般に、ラノリンおよびその誘導体あるいはPDMSなどの炭化水素化合物である。
【0305】
固体脂肪物質の種類および量は、所望する機械的特性およびテクスチャーの関数である。目安として、組成物には、組成物の総重量に対し、重量で0%〜50%、より有利には1%〜30%のワックスを含めることができる。ポリマーは、1種または複数の皮膜形成助剤と組み合わせてもよい。この種の皮膜形成助剤は、所望の機能を満たす能力があるものとして当業者に周知のすべての化合物から選択することができ、特に可塑剤および合着剤(合着剤)から選択できる。
【0306】
本発明による組成物には、さらに、当業者に周知の水溶性染料、および顔料、真珠母およびフレークなどの微粉着色料から選択される1種または複数の着色料を含めてもよい。着色料は、組成物の総重量に対し、重量で0.01%〜50%、好ましくは0.01%〜30%の範囲の量で存在できる。
【0307】
顔料とは、生理媒体に不溶で、組成物の着色を目的とする、任意形態の、白色または色彩のある、有機または無機の粒子を意味する。
【0308】
真珠母とは、詳細にはある種の貝がその殻の中に作り出す、あるいは合成された任意形状の真珠光沢をもつ粒子である。
【0309】
顔料は、白色または色彩のある、有機および/または無機のものでよい。無機顔料としては、場合によっては表面処理された形態の二酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化セリウム、および酸化亜鉛、酸化鉄(黒、黄または赤)または酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリーンブルー、クロム水和物およびフェリックブルー、およびアルミニウム粉および銅粉などの金属粉末が挙げられる。
【0310】
有機顔料としては、カーボンブラック、D & C顔料、ならびにバリウム、ストロンチウム、カルシウムおよびアルミニウムのコチニールカルミンをベースにしたレーキが挙げられる。
【0311】
有機または無機の、天然または合成の基材、例えばガラス、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、セラミックスまたはアルミナを含む粒子などのエフェクト顔料を挙げることもでき、前記基材は、被覆されないか、あるいはアルミニウム、金、銀、白金、銅または青銅などの金属物質で、または二酸化チタン、酸化鉄もしくは酸化クロムなどの金属酸化物、またはこれらの混合物で被覆される。
【0312】
真珠母は、チタン被覆マイカまたはオキシ塩化ビスマスなどの白色真珠母、酸化鉄被覆チタンマイカ、特にフェリックブルーまたは酸化クロム被覆チタンマイカ、上記タイプの有機顔料で被覆されたチタンマイカなどの着色真珠母、およびオキシ塩化ビスマスをベースにした真珠母からも選択できる。干渉顔料、特に液晶顔料または多層顔料である干渉顔料を使用することも可能である。
【0313】
水溶性染料は、例えば、ビートルートジュースおよびメチレンブルーである。
【0314】
本発明による組成物には、さらに、1種または複数のフィラーを、詳細には組成物の総重量に対し重量で0.01%〜50%、好ましくは0.01%〜30%の範囲の量で含めてもよい。フィラーとは、組成物を製造する温度に関係なく組成物中の媒体に不溶である、任意形状の、無色または白色、鉱物質または合成の粒子を意味する。これらのフィラーは、特に組成物のレオロジーまたはテクスチャーを修正するのに役立つ。
【0315】
フィラーは、有機系または無機系でよく、結晶学的形態(例えば、葉状晶、立方晶、六方晶、斜方晶など)と関係なく、小板形、球状または横長状など、任意の形状でよい。タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド(Nylon(登録商標))粉末(AtochemのOrgasol(登録商標))、ポリ-β-アラニンおよびポリエチレン、テトラフルオロエチレンポリマー(Teflon(登録商標))の粉末、ラウロイルリシン、澱粉、窒化ボロン、ポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリル微小球などの中空高分子微小球、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industrie)、アクリル酸コポリマー(Dow Corning社のPolytrap(登録商標))およびシリコーン樹脂ミクロビーズ(例えば、東芝のTospearls(登録商標))、エラストマー性ポリオルガノシロキサン粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球(MaprecosのSilica Beads(登録商標))、セラミックまたはガラスマイクロカプセル、8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する有機カルボン酸から誘導される金属石鹸、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛およびミリスチン酸マグネシウムが挙げられる。
【0316】
本発明による組成物は、詳細には、スティック、懸濁物、分散物、溶液、ゲル、乳化物、特に水中油型(O/W)もしくは油中水(W/O)、または多相(O/W/Oもしくはポリオール/O/WもしくはW/O/W)、乳化物の形態、あるいは、クリーム、ペーストまたはムース、または特にイオン性またはノニオン性脂質のベシクル分散物、または二相もしくは多相ローション、スプレー、粉末もしくはペースト、特に柔軟ペースト(特に、コーン/プレート構造での測定の10分後に、剪断速度200/秒において、25℃で、0.1〜40Pa.s程度の動粘度を有するペースト)の形態でよい。組成物は無水状でもよく、例えば無水ペーストでもよい。
【0317】
当業者は、自らの通常の知識に基づいて、一方では使用される構成成分の性質、特にビヒクル中へのそれらの溶解性を、また、他方では組成物に対して想定される応用分野を考慮に入れて、適切な処方の種類、およびその調製方法を選択できるであろう。
【0318】
本発明による組成物は、コンプレクション(ファンデーション)、ルージュ、アイシャドー、リップスティック、コンシーラー、ブラッシャー、マスカラ、アイライナー、眉毛メイクアップ製品、リップペンシル、アイペンシル、マニキュアなどのネイル製品、ポディメイクアップ製品またはヘアメイクアップ製品(ヘアラッカーまたはマスカラ)などのメイクアップ組成物であってよい。
【0319】
また、本発明による組成物は、顔または身体のスキンケア製品、特に日焼け製品またはスキンカラー製品(セルフタンニング製品など)であってもよい。
【0320】
また、本発明による組成物は、ヘア製品、特にヘアスタイルを維持するためまたはヘアを仕上げるための製品でもよい。ヘア組成物は、好ましくはシャンプー、ゲル、セットローション、スタイリングローション、ラッカーまたはスプレーなどの固定用組成物および整形用組成物であってもよい。
【0321】
実施形態の1つによれば、本発明は、有機液体媒体、少なくとも1種の水相および少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマーおよび前記のような皮膜形成ポリマーの粒子分散物を含む、ケラチン繊維(睫毛、眉毛および毛髪)用被覆組成物を提供する。
【0322】
有利には、水に分散可能な皮膜形成ポリマーは、前に明らかにしたように、ポリウレタン、ポリウレタン-アクリル、ポリアクリル、ポリ(メタ)アクリルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン-ポリビニルピロリドン、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレア/ポリウレタン、およびこれらの混合物から選択される。
【0323】
有利には、組成物は、カチオン性セルロース誘導体および/または場合によっては修飾された天然起源のポリマー(アラビアガムなど)などの水溶性ポリマーから選択される少なくとも1種の第二皮膜形成剤を含有する。
【0324】
好ましくは、前記組成物はワックスを含有し、より好ましくは、界面活性剤を含有する。
【0325】
この種の組成物は、多様な形態、例えば二相、水中ワックス型またはワックス中水型乳化物、または水性もしくは無水分散物の形態で存在できる。
【0326】
有利には、組成物は、睫毛被覆またはマスカラ用の組成物である。
【0327】
本発明は、さらに、
・少なくとも1つのコンパートメントの範囲を定める容器(前記容器は封止部材で閉じられる)、
・前記コンパートメントの内部に配置された前記の組成物
を含む化粧品キットを提供する。
【0328】
容器は任意の適切な形状でよい。詳細には、ボトル、チューブ、ジャー、ケース、ボックス、サシェまたはカートン状でよい。
【0329】
封止部材は、取外しのできるストッパー、蓋、キャップ、特に容器に取り付けた本体および本体上で明確に区切られたカバーキャップを含む型式の引剥がしストリップまたはカプセルの形態でよい。また、容器を選択的に閉じるための部材、特にポンプ、バルブまたはバルブフラップの形態でもよい。
【0330】
容器は、特に撚り線で保持されたブラシ毛を配列したブラシ状の塗布具と組み合わせてもよい。この種の撚りブラシは、米国特許第4,887,622号に詳細に記載されている。また、特に成型により得られる複数の塗布素子を含む櫛状のものでもよい。この種の櫛は、例えば、フランス特許第2,796,529号に記載されている。塗布具は、例えばフランス特許第2,722,380号に記載されているような極小なブラシの形状でもよい。塗布具は、発泡物またはエラストマーの台盤、フェルトまたはさじの形態でもよい。塗布具は、例えば米国特許第5,492,426号に記載されているような、固定していない(ふさまたはスポンジ)、または封止部材で移動させる棒の付いた1つの部材からなってもよい。塗布具は、例えばフランス特許第2,761,959号で説明されているような容器の付いた1つの部材からなってもよい。
【0331】
製品は、容器に直接または間接的に収容できる。例を挙げれば、製品を、特に拭き紙またはパッドの形態の含浸支持体上に配置し、箱または袋の中に配置する(単一または複数の形で)。製品に組み込むこの種の支持体は、例えばWO 01/03538に記載されている。
【0332】
封止部材は、ネジ込みで容器に連結してもよい。別法として、封止部材と容器の間の連結はネジ込み以外で、特に、差し込みピン機構を介して、スナップ留め、グリップ継手、溶着、接着剤接合によって、または磁気引力によって行ってもよい。「スナップ留め」とは、特に封止部材の一部の弾性変形によるビードまたはコード材料の移動、それに続くビーズまたはコードの移動後の、前記部分の弾性応力のない位置への復帰を含む任意のシステムを意味する。
【0333】
容器は、少なくとも部分的には熱可塑性材料から作られ得る。挙げることのできる熱可塑性材料の例には、ポリプロピレンおよびポリエチレンが含まれる。
【0334】
別法として、容器は、非熱可塑性材料、特にガラスまたは金属(または合金)から作られる。
【0335】
容器は、堅い器壁を持つ容器でもよいし、特にチューブまたはチューブ状ボトルの形状の変形できる器壁を有してもよい。
【0336】
容器には、組成物の分配、または分配を容易にすることを目的とした手段を含めることができる。例を挙げれば、容器は、容器の器壁を弾性的(または非弾性的)に圧迫することによって生じる容器内部の陽圧に応じて組成物が外に出ることができるように、変形可能な器壁を有することができる。別法として、特に製品がスティック状の場合には、製品をピストン機構で動かすことができる。さらに、スティック、特にメイクアップ製品のスティック(リップスティック、ファンデーションなど)の場合には、容器に、容器開口部の方向に移動させることのできる機構、特にラック機構、またはネジを切り込んだロッドまたは螺旋溝を有する機構を含めることができる。この種の機構は、例えばフランス特許第2,806,273号、またはフランス特許第2,775,566号に記載されている。液体製品のためのこの種の機構は、フランス特許第2,727,609号に記載されている。
【0337】
容器は、組成物を収容する少なくとも1個の収容部の範囲を定める基体をもつカートン、および蓋、詳細には前記基体を少なくとも部分的に覆うことのできる、基体上で明確に区切られた蓋から構成される。この種のカートンは、例えばWO 03/018423またはフランス特許第2,791,042号に記載されている。
【0338】
容器には、容器の開口部領域に排液具を装備してもよい。この種の排液具により、塗布具を拭うことが可能になり、場合によっては1つの部材であってもよいロッドを一緒に拭うことが可能になる。この種の排液具は、例えばフランス特許2,792,618号に記載されている。
【0339】
組成物は、容器中で大気圧(外界温度で)の状態でもよいし、特に噴射ガスで加圧された状態でもよい(エアゾール)。後者の場合、容器には(エアゾールに使用される型の)バルブを取り付ける。
【0340】
以上で引用した特許または特許出願の内容を、参照として本特許出願に組み込む。
【0341】
以下の実施例により、本発明による組成物を例示するが、それに制約されるものではない。
【実施例】
【0342】
[実施例4]
液状リップスティック
【0343】
【表1】

【0344】
発泡体塗布具を使用して、問題なく塗布することが可能であり、良好な持続力を有する均一被覆物が生じる。
【0345】
[実施例5]
日焼け組成物
【0346】
【表2】

【0347】
[実施例6〜11]
乳化マスカラ
本発明および従来技術によって次のマスカラ組成物を調製した。
実施例6の従来技術組成物は、ブロックポリマー、皮膜形成ポリマー粒子水性分散物のいずれも含まない。
実施例10の組成物は、皮膜形成ポリマー粒子水性分散物を含むが、ブロックポリマーを含まない。
本発明に係る実施例7〜9および11の組成物は、ブロックポリマーおよび皮膜形成ポリマー粒子水性分散物を含む。
【0348】
【表3】

【0349】
各組成物について、乾燥抽出物量、in vitro付着量および持続力を下記の方法に従って測定する。
【0350】
in vitro付着量を、カールした白人の毛髪試料(1cmの距離に渡って配置した長さ1cmの毛髪30本)について重量測定により測定した。
【0351】
2分間の間隔を置いた3×10回のマスカラ処理を実施して、試料を化粧し、それぞれ10回1組どうしの間に製品を採集する。
【0352】
試料を外界温度で10分間乾燥し、次いで秤量する。
【0353】
この測定を6種の試料について実施する。
【0354】
付着量は、試料上に被覆された材料の量(=化粧した試料の質量-化粧していない試料の質量)である。
【0355】
平均付着量は、6種の試料について測定した測定値の平均値である。
【0356】
固形分含量、換言すれば非揮発性材料、または組成物の乾燥抽出物の量は、Mettler Toledo HG53天秤(ハロゲン水分計)で測定される。マスカラのサンプル(2〜3g)をアルミニウムボートに乗せ、120℃の温度に60分間さらす。乾燥エキストラクトの測定値は、時間に対してサンプルの質量を監視することに相当する。したがって、最終固形分含量は、初期質量に対する最終質量(60分後)の割合:すなわち、SC=(最終質量/初期質量)×100である。
【0357】
本発明による組成物によって形成される皮膜の持続力は、ガラス板上に塗り拡げ、水性媒体中での撹拌にさらした組成物皮膜の耐水性を、時間に対して測定することによって評価する。実験要領は次の通りである。
【0358】
外界温度(25℃)で、表面が10cm×10cmのガラス板上に、9cm×9cmの表面を有する厚さ300μm(乾燥前)の組成物の層を塗り拡げ、次いで、30℃、相対湿度50%で24時間乾燥させる。乾燥後、その板を、直径が19cmの2リットル晶析器に入れ、この晶析器を1リットルの水で満たし、IKA Labortechnik社がRCT Basicの名称で販売している加熱磁気撹拌器上に据える。次に、皮膜上に平滑な円筒状磁気PTFE棒(長さ6cm、直径1cm)を置く。撹拌スピードを5の位置に設定する。温度計を使用して水温を20℃または40℃の温度に調節する。時刻t0=0で撹拌を開始する。皮膜が脱離または剥離が始まる時刻、または磁気撹拌棒の大きさの穴が観察される時刻、換言すれば穴の大きさが直径6cmである時点の時刻t(分で表した)を計測する。
【0359】
皮膜の耐水性は、計測された時刻tに対応する。
【0360】
得られた結果は次の通りである。
【0361】
【表4】

【0362】
皮膜形成ポリマー粒子水性分散物およびブロックポリマーの組合せを含む、本発明による実施例7〜9および11の組成物は、ブロックポリマーを含まない実施例10の組成物に優る良好な持続力を示すことがわかる。さらに、本発明の組成物は、高い固形分含量と高水準のin vitro付着量を有するので、本発明による組成物によって、睫毛を濃く化粧することが可能になる。
【0363】
[実施例12]
耐水マスカラ
本発明により、次のマスカラを調製した。
【0364】
【表5】

【0365】
本明細書中に前記した測定方法に従って、固形分含量、in vitro付着量および持続力を測定した。
【0366】
次の結果が得られた。
【0367】
【表6】

【0368】
このマスカラは、睫毛に対して良好なシックニング(付着)効果を有すると同時に、良好な持続力を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機液体媒体、スチレン単位の存在しない少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、および前記有機液体媒体に可溶または分散可能な少なくとも1種の他の皮膜形成剤を含有する化粧品組成物。
【請求項2】
有機液体媒体、少なくとも1種の水相、スチレン単位の存在しない少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、および前記水相に可溶または分散可能な少なくとも1種の他の皮膜形成剤を含有する化粧品組成物。
【請求項3】
前記ブロックポリマーが非エラストマー系であることを特徴とする、請求項1または2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
前記ブロックポリマーが、炭素-炭素二重結合および少なくとも1個のエステル基-COO-またはアミド基-CON-を含む脂肪族エチレン性モノマーから得られるエチレン性ポリマーであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、水に、または水と2〜5個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐低級モノアルコールの混合物に、pHの変化がなければ、外界温度(25℃)で多くても重量で1%の実質量では溶けないことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
前記ブロックポリマーが、第一ブロックを構成するモノマーの少なくとも1種および第二ブロックを構成するモノマーの少なくとも1種を含む中間部分によって互いに連結された第一および第二ブロックを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
前記ブロックポリマーが、異なるガラス転移温度(Tg)を有する第一および第二ブロックを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
前記第一および第二ブロックが、第一および第二ブロックのガラス転移温度の間のガラス転移温度を有する中間部分によって互いに連結されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ブロックポリマーが、前記有機液体媒体中で非相溶である第一および第二ブロックを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記ブロックポリマーが、2を超える多分散性指数Iを有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
ポリマーの前記第一ブロックが、
a)40℃以上のTgを有するブロック
b)20℃以下のTgを有するブロック
c)20℃と40℃の間のTgを有するブロック
から選択され、前記第二ブロックが、第一ブロックとは異なる部類a)、b)またはc)から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
40℃以上のTgを有するブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
その対応するホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマーが、次のモノマー、すなわち、
・式CH2=C(CH3)-COOR1のメタクリレート(式中、R1は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチル基のような、1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分岐の非置換アルキル基を表すか、あるいはR1はC4〜C12シクロアルキル基を表す)、
・式CH2=CH-COOR2のアクリレート(式中、R2は、アクリル酸イソボルニルのようにC4〜C12シクロアルキル基を表すか、あるいはtert-ブチル基を表す)、
・次式の(メタ)アクリルアミド
【化1】

(ここで、R7およびR8は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、またはn-ブチル、t-ブチル、イソプロピル、イソヘキシル、イソオクチルもしくはイソノニル基のような、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基を表し、あるいは、R7がHを表し、R8が1,1-ジメチル-3-オキソブチル基を表し、R'はHまたはメチルを意味する)、および
・これらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
その対応するホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマーが、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
20℃以下のTgを有するブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
その対応するホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するモノマーが、次のモノマー、すなわち、
・式CH2=CHCOOR3のアクリレート(R3は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によって挿入された、tert-ブチル基を除く直鎖または分岐のC1〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式CH2=C(CH3)-COOR4のメタクリレート(R4は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によって挿入された直鎖または分岐のC6〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式R5-CO-O-CH=CH2のビニルエステル(ここで、R5は直鎖または分岐のC4〜C12アルキル基を表す)、
・C4〜C12アルキルビニルエーテル、
・N-(C4〜C12アルキル)アクリルアミド(N-オクチルアクリルアミドなど)、および
・これらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
その対応するホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するモノマーが、そのアルキル鎖が1〜10個の炭素原子を含みtert-ブチル基を除く、アクリル酸アルキルから選択されることを特徴とする、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
20℃と40℃の間のTgを有するブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃と40℃の間のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
20℃と40℃の間のTgを有するブロックが、対応するホモポリマーが40℃以上のTgを有するようなモノマーから、および対応するホモポリマーが20℃以下のTgを有するようなモノマーから、全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
20℃と40℃の間のTgを有するブロックが、メタクリル酸メチル、アクリル酸およびメタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
組成物が少なくとも1種の第一ブロックおよび少なくとも1種の第二ブロックを含むブロックポリマーを含み、前記第一ブロックが40℃以上のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ前記第二ブロックが20℃以下のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項11から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記第一ブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第一ブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するようなモノマーから得られるコポリマーであることを特徴とする、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
その対応するホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマーが、次のモノマー、すなわち、
・式CH2=C(CH3)-COOR1のメタクリレート(式中、R1は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチル基のような、1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分岐の非置換アルキル基を表すか、あるいはR1はC4〜C12シクロアルキル基を表す)、
・式CH2=CH-COOR2のアクリレート(式中、R2は、アクリル酸イソボルニルのようにC4〜C12シクロアルキル基を表すか、あるいはtert-ブチル基を表す)、
・次式の(メタ)アクリルアミド
【化2】

(ここで、R7およびR8は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、またはn-ブチル、t-ブチル、イソプロピル、イソヘキシル、イソオクチルもしくはイソノニル基のような、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基を表し、あるいは、R7がHを表し、R8が1,1-ジメチル-3-オキソブチル基を表し、R'はHまたはメチルを意味する)、
・およびこれらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
その対応するホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項22から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記第一ブロックの割合が、重量でポリマーの20%〜90%、より好ましくは30%〜80%、さらに有利には50%〜70%の範囲であることを特徴とする、請求項22から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記第二ブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項21から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記第二ブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するようなモノマーから得られるホモポリマーであることを特徴とする、請求項21から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
その対応するホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するモノマーが、次のモノマー、すなわち、
・式CH2=CHCOOR3のアクリレート(R3は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によって挿入された、tert-ブチル基を除く直鎖または分岐のC1〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式CH2=C(CH3)-COOR4のメタクリレート(R4は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によって挿入された直鎖または分岐のC6〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式R5-CO-O-CH=CH2のビニルエステル(ここで、R5は直鎖または分岐のC4〜C12アルキル基を表す)、
・C4〜C12アルキルビニルエーテル、
・N-(C4〜C12アルキル)アクリルアミド(N-オクチルアクリルアミドなど)、および
・これらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項27または28に記載の組成物。
【請求項30】
その対応するホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するモノマーが、そのアルキル鎖が1〜10個の炭素原子を含みtert-ブチル基を除く、アクリル酸アルキルから選択されることを特徴とする、請求項27から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
20℃以下のTgを有する第二ブロックの割合が、重量でポリマーの5%〜75%、より有利には15%〜50%、さらにより有利には25%〜45%の範囲であることを特徴とする、請求項21から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
組成物が少なくとも1種の第一ブロックおよび少なくとも1種の第二ブロックを含むブロックポリマーを含み、前記第一ブロックが20℃と40℃の間のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ前記第二ブロックが20℃以下のガラス転移温度または40℃以上のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項11から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
20℃と40℃の間のTgを有する第一ブロックが、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃と40℃の間のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
20℃と40℃の間のTgを有する第一ブロックが、その対応するホモポリマーが40℃以上のTgを有するようなモノマーおよびその対応するホモポリマーが20℃以下のTgを有するようなモノマーから得られるコポリマーであることを特徴とする、請求項32または33に記載の組成物。
【請求項35】
20℃と40℃の間のTgを有する第一ブロックが、メタクリル酸メチル、アクリル酸およびメタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、ならびにこれらの混合物から選択されるモノマーから得られることを特徴とする、請求項32から34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
20℃と40℃の間のTgを有する第一ブロックの割合が、重量でポリマーの10%〜85%、より有利には30%〜80%、さらにより有利には50%〜70%の範囲であることを特徴とする、請求項32から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記第二ブロックが40℃以上のTgを有し、かつ、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項32から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記第二ブロックが、40℃以上のTgを有し、かつ、そのモノマーから調製されるホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するようなモノマーから得られるホモポリマーであることを特徴とする、請求項32から37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
その対応するホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマーが、次のモノマー、すなわち、
・式CH2=C(CH3)-COOR1のメタクリレート(式中、R1は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチル基のような、1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分岐の非置換アルキル基を表すか、あるいはR1はC4〜C12シクロアルキル基を表す)、
・式CH2=CH-COOR2のアクリレート(式中、R2は、アクリル酸イソボルニルのようにC4〜C12シクロアルキル基を表すか、あるいはtert-ブチル基を表す)、
・次式の(メタ)アクリルアミド
【化3】

(ここで、R7およびR8は、同一または異なって、それぞれ、水素原子、またはn-ブチル、t-ブチル、イソプロピル、イソヘキシル、イソオクチルもしくはイソノニル基など、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基を表し、あるいは、R7がHを表し、R8が1,1-ジメチル-3-オキソブチル基を表し、R'はHまたはメチルを意味する)、および
・これらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項37および38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
その対応するホモポリマーが40℃以上のガラス転移温度を有するモノマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項36から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
40℃以上のTgを有する第二ブロックの割合が、重量でポリマーの10%〜85%、好ましくは20%〜70%、より有利には30%〜70%の範囲であることを特徴とする、請求項37から40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記第二ブロックが、20℃以下のTgを有し、かつ、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するような1種または複数のモノマーから全体的にまたは部分的に得られることを特徴とする、請求項32から41までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記第二ブロックが、20℃以下のTgを有し、かつ、そのモノマーから調製されるホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するようなモノマーから得られるホモポリマーであることを特徴とする、請求項32から41までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
その対応するホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するモノマーが、次のモノマー、すなわち、
・式CH2=CHCOOR3のアクリレート(R3は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によって挿入された、tert-ブチル基を除く直鎖または分岐のC1〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式CH2=C(CH3)-COOR4のメタクリレート(R4は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によって挿入された直鎖または分岐のC6〜C12非置換アルキル基を表す)、
・式R5-CO-O-CH=CH2のビニルエステル(ここで、R5は直鎖または分岐のC4〜C12アルキル基を表す)、
・C4〜C12アルキルビニルエーテル、
・N-(C4〜C12アルキル)アクリルアミド(N-オクチルアクリルアミドなど)、および
・これらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項42または43に記載の組成物。
【請求項45】
その対応するホモポリマーが20℃以下のガラス転移温度を有するモノマーが、そのアルキル鎖が1〜10個の炭素原子を含みtert-ブチル基を除く、アクリル酸アルキルから選択されることを特徴とする、請求項42から44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
40℃以上のガラス転移温度を有するブロックの割合が、重量でそのポリマーの20%〜90%、より有利には30%〜80%、さらにより有利には50%〜70%の範囲であることを特徴とする、請求項42から45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記第一ブロックおよび/または前記第二ブロックが少なくとも1種の追加モノマーを含むことを特徴とする、請求項6から46のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項48】
前記追加モノマーが、親水性モノマーおよび1個または複数のケイ素原子を含むエチレン性不飽和モノマー、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記追加モノマーが、
a)親水性モノマー、例えば
・少なくとも1個のカルボン酸またはスルホン酸官能基を含むエチレン性不飽和モノマー;例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、およびこれらの塩、
・少なくとも1個の第三級アミン官能基を含むエチレン性不飽和モノマー;例えば、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、およびこれらの塩、
・式CH2=C(CH3)-COOR6のメタクリレート[式中、R6は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチル基のような、1〜4個の炭素原子を含む直鎖または分岐のアルキル基を表し、前記アルキル基は、ヒドロキシル基(例えばメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルおよびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの場合)およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)(例えばメタクリル酸トリフルオロエチルの場合)から選択される1個または複数の置換基で置換される]、
・式CH2=C(CH3)-COOR9のメタクリレート[R9は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子が場合によって挿入された直鎖または分岐のC6〜C12のアルキル基を表し、前記アルキル基は、ヒドロキシル基およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)から選択される1個または複数の置換基で置換される]、
・式CH2=CHCOOR10のアクリレート[R10は、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルの場合のように、ヒドロキシル基およびハロゲン原子(Cl、Br、IまたはF)から選択される1個または複数の置換基で置換された直鎖または分岐のC1〜C12のアルキル基を表し、あるいはR10は、5〜30回のオキシエチレン単位の繰返しを有するC1〜C12のアルキル-O-POE(ポリオキシエチレン)、例えばメトキシ-POEを表し、あるいはR10は、5〜30回のエチレンオキシド単位を含むポリオキシエチレン化基を表す]、
b)1個または複数のケイ素原子を含むエチレン性不飽和モノマー、例えば、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびメタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ならびにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項47または48に記載の組成物。
【請求項50】
前記第一および第二ブロックのそれぞれが、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸トリフルオロエチル、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の追加モノマーを含むことを特徴とする、請求項47および48のいずれかに記載の組成物。
【請求項51】
前記第一および第二ブロックのそれぞれが、(メタ)アクリル酸のエステルから選択される少なくとも1種のモノマー、および場合によっては(メタ)アクリル酸など少なくとも1種の追加モノマー、ならびにこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項47および48のいずれかに記載の組成物。
【請求項52】
前記第一および第二ブロックのそれぞれが、(メタ)アクリル酸のエステルから選択される少なくとも1種のモノマー、および場合によっては(メタ)アクリル酸など少なくとも1種の追加モノマー、ならびにこれらの混合物から全体的に得られることを特徴とする、請求項47および48のいずれかに記載の組成物。
【請求項53】
前記追加モノマーまたはモノマー群が、重量で前記第一および/または第二ブロックの総重量の1%〜30%に相当することを特徴とする、請求項47から52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
前記第一および第二ブロックのガラス転移温度(Tg)の差が、10℃より大きく、有利には20℃より大きく、極めて好ましくは30℃より大きく、より有利には40℃より大きいことを特徴とする、請求項7から53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
前記ブロックポリマーが、2.5以上、好ましくは2.8以上の多分散性指数を有することを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項56】
2.8と6の間の多分散性指数を有することを特徴とする、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記ブロックポリマーが、300,000以下の重量平均質量(Mw)を有することを特徴とする、請求項1から56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
前記重量平均質量(Mw)が、35,000〜200,000、より有利には45,000〜150,000の範囲であることを特徴とする、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記重量平均質量(Mw)が、70,000以下であることを特徴とする、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
組成物の重量平均質量(Mw)が、10,000〜60,000、より有利には12,000〜50,000の範囲であることを特徴とする、請求項57から59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
組成物が、重量で0.1%〜60%、好ましくは5%〜50%、より好ましくは10%〜40%のポリマー活性物質を含むことを特徴とする、請求項1から60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記皮膜形成剤が、前記有機液体媒体に溶解する皮膜形成ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項63】
前記皮膜形成剤が、脂溶性皮膜形成ポリマーであることを特徴とする、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、オレフィン、シクロオレフィン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルエーテル、ビニルエステルもしくはビニルアミド、または直鎖、分岐もしくは環状のC4〜C50アルキル基を含み好ましくは非晶質である、(メタ)アクリル酸のエステルもしくはアミドの、脂溶性、非晶質ホモポリマーおよびコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、またはこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから得られるホモポリマーおよびコポリマーから、特にアクリル酸アルキル/アクリル酸シクロアルキルのコポリマーおよびビニルピロリドン/デカデセンのコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、好ましくは水素相互作用を供与するいかなる基も含まない、非晶質で脂溶性の縮合重合物から、特にC4〜C50アルキル側鎖を有するポリエステル、または脂肪酸二量体の縮合により生じるポリエステル、さらにはブロック、接枝もしくは末端基の形態のシリコーンをベースにした部分を含むポリエステルから選択され、外界温度で固体であることを特徴とする、請求項63に記載の組成物。
【請求項67】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、アルキル(エーテルまたはエステル)側鎖を含む非晶質脂溶性多糖、特にエチルセルロース、またはシリコーン骨格とアクリル接枝もしくはアクリル骨格とシリコーン接枝を有するシリコーン-アクリルのグラフトポリマーから選択されることを特徴とする、請求項63に記載の組成物。
【請求項68】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、フルオロ基を持つことを特徴とする、請求項63に記載の組成物。
【請求項69】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、1個または複数のエチレン性、好ましくは共役した結合を含むエチレン性モノマーの重合または共重合で生じるポリマーまたはコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項63に記載の組成物。
【請求項71】
エチレン性モノマーの重合または共重合で生じるポリマーまたはコポリマーが、ポリスチレン/共重合(エチレン/ブチレン)から選択されることを特徴とする、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記脂溶性皮膜形成ポリマーが、ポリシロキサンを含むモノマーでグラフトされた非シリコーン有機骨格を含むポリマーから選択されることを特徴とする、請求項63に記載の組成物。
【請求項73】
前記の少なくとも1種の脂溶性皮膜形成ポリマーが、非シリコーン有機モノマーでグラフトされたシリコーンポリマーから選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項74】
前記皮膜形成剤が、前記有機液体媒体に分散可能な皮膜形成ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項75】
前記有機液体媒体が少なくとも1種のオイルを含むこと、前記皮膜形成剤が前記オイルに分散可能であること、および前記皮膜形成剤がポリマー粒子の非水性分散物の形態であることを特徴とする、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
前記皮膜形成剤が、水相に分散可能な皮膜形成ポリマーであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項77】
前記水に分散可能な皮膜形成ポリマーが、ポリウレタン、ポリウレタン-アクリル、ポリウレタン-ポリビニルピロリドン、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレア/ポリウレタン、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記水に分散可能な皮膜形成ポリマーが、
・直鎖もしくは分岐の脂肪族および/または環式脂肪族および/または芳香族ポリエステル起源の少なくとも1つのブロック、および/または
・脂肪族および/または環式脂肪族および/または芳香族ポリエーテル起源の少なくとも1つのブロック、および/または
・少なくとも1つの置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐のシリコーンブロック、例えばポリジメチルシロキサンまたはポリメチルフェニルシロキサン、および/または
・フルオロ基を含む少なくとも1つのブロック
を単独でまたは混合物として含有する、脂肪族、環式脂肪族もしくは芳香族ポリウレタンコポリマー、またはポリウレア/ポリウレタンもしくはポリウレアコポリマーであることを特徴とする請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
前記水相に分散可能な皮膜形成ポリマーが、ポリエステル、ポリエステルアミド、脂肪鎖ポリエステル、ポリアミドおよびエポキシエステル樹脂から選択されることを特徴とする、請求項76に記載の組成物。
【請求項80】
前記水相に分散可能な皮膜形成ポリマーが、アクリルポリマー、アクリルコポリマーおよびビニルポリマーから選択されることを特徴とする、請求項76に記載の組成物。
【請求項81】
皮膜形成剤の割合が、組成物の総重量に対し、乾燥化合物の重量で2%〜60%、好ましくは5%〜60%、より好ましくは2%〜30%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項82】
組成物が、水溶性染料ならびに顔料、真珠母およびフレークのような微粉着色料から選択される1種または複数の着色料をさらに含むことを特徴とする、請求項1から81のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項83】
組成物が、懸濁物、分散物、溶液、ゲル、乳化物、特に水中油(O/W)型もしくは油中水(W/O)型、または多相(W/O/Wもしくはポリオール/O/WもしくはO/W/O)型、乳化物の形態、あるいはクリーム、ペーストもしくはムース、または特にイオン性もしくはノニオン性脂質の小胞分散物、または二相もしくは多相ローション、スプレー、粉末もしくはペースト、特にフレキシブルペーストもしくは無水ペースト、またはスティックもしくは注型固体の形態であることを特徴とする、請求項1から82のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項84】
無水の形態であることを特徴とする、請求項1から83のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項85】
ケラチン物質をメイクアップまたはケアするための組成物であることを特徴とする、請求項1から84のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項86】
口唇メイクアップ製品であることを特徴とする、請求項1から85のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項87】
アイメイクアップ製品であることを特徴とする、請求項1から86のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項88】
肌メイクアップ製品であることを特徴とする、請求項1から87のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項89】
ネイルメイクアップ製品であることを特徴とする、請求項1から88のいずれか一項に記載の組生物。
【請求項90】
有機液体媒体、少なくとも1種の水相、少なくとも1種の皮膜形成エチレン性線状ブロックポリマー、および前記水相に溶解または分散可能な少なくとも1種の他の皮膜形成剤を含む、ケラチン繊維用、特に、睫毛および眉毛用被覆組成物。
【請求項91】
前記ブロックポリマーが、請求項1から61のいずれか一項に係ることを特徴とする、請求項1から90のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項92】
前記皮膜形成剤が、水相に分散可能な皮膜形成ポリマーであることを特徴とする、請求項90または91に記載の組成物。
【請求項93】
前記水に分散可能な皮膜形成ポリマーが、ポリウレタン、ポリウレタン-アクリル、ポリウレタン-ポリビニルピロリドン、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレア/ポリウレタン、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
ワックスを含むことを特徴とする、請求項90から93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項90から94のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項96】
水溶性ポリマーから選択される少なくとも1種の第二皮膜形成剤を含むことを特徴とする、請求項90から95のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項97】
前記水溶性ポリマーまたはポリマー群が、カチオン性セルロース誘導体および/またはアラビアガムのような天然起源の場合によっては修飾されたポリマーから選択されることを特徴とする、請求項96に記載の組成物。
【請求項98】
着色料を含むことを特徴とする、請求項90から97のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項99】
マスカラであることを特徴とする、請求項90から98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
a)少なくとも1つのコンパートメントの範囲を定める容器(前記容器は封止部材で封じられる)、
b)前記コンパートメントの内部に配置された組成物(前記組成物は請求項1から99のいずれか一項に係る)、
を含む化粧品キット。
【請求項101】
前記容器が、少なくとも部分的には、少なくとも1種の熱可塑性材料から形成されることを特徴とする、請求項100に記載の化粧品キット。
【請求項102】
前記容器が、少なくとも部分的には、少なくとも1種の非熱可塑性材料から、特にガラスまたは金属から形成されることを特徴とする、請求項100に記載の化粧品キット。
【請求項103】
前記容器の封止位置において、前記封止部材を前記容器にネジ留めすることを特徴とする、請求項100から102のいずれか一項に記載のキット。
【請求項104】
前記容器の封止位置において、前記封止部材を、ネジ留め以外で、特に、スナップ留め、粘着剤接合または溶着で前記容器と合体させることを特徴とする、請求項100から102のいずれか一項に記載のキット。
【請求項105】
前記組成物が、前記コンパートメントの内部で実質上大気圧の状態で存在することを特徴とする、請求項100から104のいずれか一項に記載のキット。
【請求項106】
前記組成物が、前記容器の内部で加圧されていることを特徴とする、請求項100から104のいずれか一項に記載のキット。
【請求項107】
ケラチン物質に請求項1から99のいずれか一項に記載の化粧品組成物を適用する工程を含む、ケラチン物質をメイクアップまたはケアする化粧方法。

【公表番号】特表2006−507367(P2006−507367A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501936(P2005−501936)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002849
【国際公開番号】WO2004/028487
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】