説明

ブロック共重合体、インク、画像記録方法及び画像記録装置

【課題】印刷画像に生じるにじみやフェザリングを軽減し、印刷画像の保存性が良好であり、更に、記録媒体上で物理的外力に対して堅牢性を有するインクの構造体を形成する高分子化合物として好適なブロック共重合体を提供する。これを用いたインク、画像記録方法、画像記録装置を提供する。
【解決手段】ブロックセグメントを有するブロック共重合体であって、該ブロックセグメントが下記一般式(1)で表される基を有する繰り返し単位を有することを特徴とするブロック共重合体、これを用いたインク、画像記録方法及び画像記録装置。
−ANHCONHE (1)
(式中、Aは炭素原子数1から45の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種インクに使用可能なブロック共重合体、これを含むインク、特に、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像記録方法及び装置用インクに好適なブロック共重合体、インク、これを用いた画像記録方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンパクトで低消費電力という特徴により、染料インクを使用したインクジェット技術は比較的手軽な印刷方法として普及し、ノズルの微細化やインクの吐出方法等の進歩に伴い高画質印刷が可能となり、その画質は銀塩写真に迫る勢いである。しかしながら、インクジェット技術により記録媒体上に吐出された画像において、多色の染料インクの重ね合わせ時に、にじみを生じたり、吐出直後に毛細管現象により記録媒体上の繊維方向にインクが染み出す現象(フェザリング)が観測される場合がある。
【0003】
フェザリングを解決する目的で、染料と水溶性ベヒクルと平均直径100nm以下の粒子とを含むインク(特許文献1参照)が報告されている。しかしながら、にじみやフェザリングは軽減されたものの、印刷された画像は耐候性が低く、印刷画像の長期保存には問題があった。
【0004】
これらの問題を解決する手段として、染料インクに代え顔料分散インクを用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
一般的に、顔料インクは、高分子化合物によって顔料を分散させた分散体として使用されている。顔料インクを用いて、カオリン等を塗布したコート紙上にインクジェットプリンタにより画像を形成する場合、にじみやフェザリングは軽減され、印刷画像の保存性は向上する。しかしながら、爪による引っ掻きや、紙、布等による物理的外力に対する画像の堅牢性は不十分である。この現象の原因は明確にされてはいないが、原因の一つとして、構造体を形成している高分子化合物間の相互作用が不十分であることが考えられる。
【0006】
この高分子間相互作用を強化し記録媒体上の画像の強度を十分に向上させるために、高分子化合物に強い水素結合能を形成する置換基を導入することが必要と考えられる。そして、強い水素結合能を有するウレア結合を主鎖又は側鎖に有する高分子化合物を含有するインク(特許文献3、4)が報告されている。しかしながら、単にウレア結合を導入した高分子化合物を用いたインクでは、インクジェットプリンタにおいて分散安定性や吐出性能に問題を生じる、得られる画像の堅牢性等が不充分である等、充分に満足のいく結果が得られてない。
【特許文献1】第2957324号公報
【特許文献2】米国特許第5,085,698号公報
【特許文献3】特開平6―220381号公報
【特許文献4】特開2005―047076公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、印刷画像に生じるにじみやフェザリングを軽減し、印刷画像の保存性が良好であり、更に、記録媒体上で物理的外力に対して堅牢性を有するインクの構造体を形成する高分子化合物として好適なブロック共重合体を提供することにある。そして、これを用いたインク、画像記録方法、画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブロックセグメントを有するブロック共重合体であって、前記ブロックセグメントが下記一般式(1)で表される基を有する繰り返し単位を有することを特徴とするブロック共重合体である。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、Aは炭素原子数1から45の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。
【0011】
また、本発明は、上記ブロック共重合体と、機能性物質とを含有することを特徴とするインクである。
【0012】
また、本発明は、上記インクを記録媒体に付与する工程を含むことを特徴とする画像記録方法、及び上記インクを記録媒体に付与する画像記録機構を有することを特徴とする画像記録装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブロック共重合体は、印刷画像に生じるにじみやフェザリングを軽減し、印刷画像の保存性が良好であり、更に、記録媒体上で物理的外力に対して堅牢性を有するインクの構造体を形成する高分子化合物として好適に使用することができる。また、用いたインク、画像記録方法、画像記録装置は、印刷画像に生じるにじみやフェザリングを軽減し、印刷画像の保存性が良好であり、更に、記録媒体上で物理的外力に対して堅牢性を有する画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明におけるブロック共重合体は、ブロックセグメントによって構成されるブロック共重合体である。ブロックセグメントとは、単一モノマーの繰り返し単位により構成されるコポリマー構造、又は複数のモノマーの繰り返し単位により構成されるコポリマー構造を有するものである。また、ブロック共重合体は、2種以上のブロックセグメントを有していてもよい。ブロック共重合体においてブロックセグメントの機能を際立たせるためには、ブロックセグメントは単一モノマーで構成されることが好ましい。
【0015】
本発明のブロック共重合体は、ウレアブロックセグメントを有することを必須とし、ウレアブロックセグメントとは下記一般式(1)
【0016】
【化2】

【0017】
で表される基を有する繰り返し単位を有するブロックセグメントである。この尿素誘導体基は、ウレアブロックセグメントの主鎖に結合していても、側鎖に結合していてもよい。
【0018】
一般式(1)中、Aは炭素原子数1から45の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、該アルキレン基中の炭素原子は、独立して酸素原子、硫黄原子、アミン、エステル、アミド、又は芳香族環で置換されていてもよい。また、Aのアルキレン基中の水素原子は、独立してアミン、エステル、アミド、芳香族環、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で置換されていてもよい。一般式(1)中のAの具体例としては、−OCH2CH2−、−OCH2CH2CH2−、−OCH2CH2CH2CH2−、−OCH2CH2CH2CH2CH2−、−OCH2C(CH32−、−OCH2CHCl−、−OCH2CHF−を挙げることができる。これらのうち、画像堅牢性の観点から、−OCH2CH−が好ましい。
【0019】
一般式(1)中、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、該アルキル基中の炭素原子は、独立して酸素原子、硫黄原子、アミン、エステル、アミド、又は芳香族環で置換されていてもよい。また、Eのアルキル基中の水素原子は、独立してアミン、エステル、アミド、芳香族環、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で置換されていてもよい。一般式(1)中のEの具体的としては、−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−Ph、−CH2CH2NHCH2CH3、−CH2CH2OCH2CH3、−CH2CH2SCH2CH3を挙げることができ、画像堅牢性の観点から、−Hがより好ましい。ここで−Phはフェニル基を示す。
【0020】
一般式(1)で表される基の好ましい具体例を以下に示す。
【0021】
【化3】

【0022】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(2)
【0023】
【化4】

【0024】
で表されるものであることが好ましい。この繰り返し単位を有するブロックセグメントを親水性ウレアブロックセグメント(D)と呼ぶ。一般式(1)で表される基が繰り返し単位に結合することによりウレアブロックセグメントが親水性を呈するようになる。
【0025】
一般式(2)中、主鎖を構成するX1は炭素数1から18の直鎖状、分岐状又は環状のアルカントリイル基を示し、該アルカントリイル基中の水素原子は、独立してフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で置換されていてもよい。一般式(2)中のX1の具体例としては、−CH2CH=、−CH2CH2CH=、−CH2CH2CH2CH=、−CH2CH2CH2CH2CH=、−CH2C(CH3)=、−CH2CCl=、−CH2CF=等を挙げることができる。これらのうち、合成上の観点から−CH2CH=を好ましいものとして挙げることができ、この構成は一般式(4)に挙げるものに相当する。
【0026】
一般式(2)、(4)中のAは一般式(1)におけるAと同じものを示し、具体的には、上記一般式(1)におけるAにおいて例示したものと同様のものを例示することができる。合成上あるいは画像堅牢性の観点から、−O−(CH2CH)n−(nは1から22の整数を示す。)が好ましい。具体的にそれぞれ下記一般式(3)、(5)で示すことができる。
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
一般式(2)〜(5)中のEは一般式(1)におけるEと同じものを示し、具体的には、上記一般式(1)におけるEにおいて例示したものと同様のものを例示することができる。
【0030】
一般式(2)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示す。
【0031】
【化7】

【0032】
また、本発明のブロック共重合体は、下記一般式(6)
【0033】
【化8】

【0034】
で表される繰り返し単位を有する疎水性ブロックセグメント(A)及び一般式(7)
【0035】
【化9】

【0036】
で表される繰り返し単位を有するイオン性親水ブロックセグメント(C)を有することが、連続印刷時の安定性の観点から好ましい。
【0037】
一般式(6)で表される繰り返し単位を有する疎水性ブロックセグメント(A)は、水分子との間に結合を作り難い構造を有するものである。メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖又は環状の飽和炭化水素基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基等の芳香族基が疎水性ブロックセグメント(A)に疎水性を付与している。
【0038】
一般式(6)中、X2は炭素数1から18の直鎖状、分岐状又は環状のアルカントリイル基を示す。該アルカントリイル基中の水素原子は、独立してフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。一般式(6)中、R1 は、炭素数1から18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基、フェニル基、ジフェニル基、ナフチル基、アントラニル基。−CHO、−CO−CH=CH2 、−CO−C(CH3 )=CH2、−(CH(R2 )−CH(R3)−O)m −R4、−(CH2p −OR4、又は−(CH2p −R4を示す。R2 、R3は独立して水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1から18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、フェニル基、ジフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、−CHO、−CO−CH=CH2 、又は−CO−C(CH3 )=CH2 を示す。フェニル基、ジフェニル基、ナフチル基、アントラニル基の水素原子は、独立して炭素数1から4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で置換されていてもよい。芳香族環中の炭素原子は、独立して窒素原子と置換されていてもよく、mは1から18の整数を示し、pは1から36の整数を示す。
【0039】
一般式(6)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示す。
【0040】
【化10】

【0041】
一般式(7)で表される繰り返し単位を有するイオン性親水ブロックセグメント(C)は、イオン性置換基を有し水分子との間に結合を作り易い化学構造を有するものである。アニオン性又はカチオン性のスルホン酸、カルボン酸、水酸基、アンモニア、アミン、イミン、エーテル結合等を有する置換基、これらのカウンターイオンが、イオン性親水ブロックセグメント(C)にイオン性親水性を付与している。
【0042】
一般式(7)中、X3は炭素数1から18の直鎖状、分岐状又は環状のアルカントリイル基を示し、該アルカントリイル基中の水素原子は、独立してフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で置換されていてもよい。一般式(7)中、Gは炭素原子数1から15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、該アルキレン基中のメチレン基は、エーテル、エステル、アミド、芳香族環で置換されていてもよく、該アルキレン基中の水素原子は、アミン、エステル、アミド、芳香族環、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換されていてもよい。一般式(7)中、Jはカルボン酸、スルホン酸又はこれらの塩を示す。
【0043】
一般式(7)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示す。
【0044】
【化11】

【0045】
これら一般式(6)、(7)で表される繰り返し単位におけるカウンターイオンとしては、具体的には、原子や化合物等、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のカウンターカチオン、塩酸、硫酸、塩素、臭素、ヨウ素等のカウンターアニオン等を挙げることができる。
【0046】
上記ブロック共重合体は、イオン性親水ブロックセグメント (C)、親水性ウレアブロックセグメント(D)、疎水性ブロックセグメント(A)が順に結合した(A)(D)(C)型トリブロックポリマー構造であることが好ましい。これらのセグメントの重合比((A):(D):(C))は、40〜80:1〜30:5〜30であることが、分散性及び分散安定性の点で特に好ましい。
【0047】
(A)(D)(C)型トリブロックポリマー構造を有するブロック共重合体の好ましい具体例を以下に示す。
【0048】
【化12】

【0049】
また、本発明のブロック共重合体は、下記一般式(8)
【0050】
【化13】

【0051】
で表される繰返し単位を有するノニオン性親水ブロックセグメント(B)を含むことが、分散安定性の点で好ましい。
【0052】
一般式(8)中、X4はポリアルケニル基を示し、Kは炭素原子数1から15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、該アルキレン基中の水素原子は置換されていてもよく、R5は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、qは1から50の整数を示す。
【0053】
一般式(8)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示す。
【0054】
【化14】

【0055】
このようなノニオン性親水ブロックセグメント(B)を有する上記ブロック共重合体として、親水性ウレアブロックセグメント(D)、イオン性親水ブロックセグメント (C)、ノニオン性親水ブロックセグメント(B)、疎水性ブロックセグメント(A)が順に結合した(A)(B)(C)(D)型テトラブロックポリマー構造であることが好ましい。この構造であれば、グラフト共重合体がミセルを形成した際に、コア部分が疎水性で、シェル表面がウレア基になるため、各セグメントの機能を効率よく発現することができる。これらのセグメントの重合比((A)(B)(C)(D))は、40〜80:5〜30:5〜30:0.1〜30であることが、分散性及び分散安定性の点で特に好ましい。
【0056】
(A)(B)(C)(D)型テトラブロックポリマー構造を有するブロック共重合体の好ましい具体例を以下に示す。
【0057】
【化15】

【0058】
また、本発明のブロック共重合体として、疎水性ブロックセグメント(A)、ノニオン性親水ブロックセグメント(B)及びイオン性親水ブロックセグメント (C)を有し、末端に一般式(1)で表される置換基を有するものを挙げることができる。疎水性ブロックセグメント(A)、ノニオン性親水ブロックセグメント(B)、イオン性親水ブロックセグメント (C)が順次結合した(A)(B)(C)トリブロックポリマー構造を有することが好ましい。更に、イオン性親水ブロックセグメント(C)の末端に一般式(1)で表される置換基を有する(A)(B)(C)−ANHCONHE型構造であることが好ましい。この構造であれば、グラフト共重合体がミセルを形成した際に、コア部分が疎水性で、シェル表面がウレア基になるため、各セグメントの機能を効率よく発現することができる。これらのセグメントの重合比((A)(B)(C))は、40〜80:5〜30:5〜30であることが好ましい。
【0059】
(A)(B)(C)−ANHCONHE型のブロック共重合体の好ましい具体例を以下に示す。
【0060】
【化16】

【0061】
本発明のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、特に3,000〜500,000であることが好ましい。数平均分子量が1,000以上であれば充分な分散性を得ることができ、1,000,000以下であれば、液体組成物の粘度が高粘度になることを抑制し、取り扱いが容易となる。分子量の測定は定法のGPC測定により求めることができる。
【0062】
本発明のブロック共重合体の製造方法としては、各ブロックセグメントを重合した後、これらを結合する方法、ブロックセグメントの存在下で重合反応により順次ブロックセグメントを形成する方法等いずれであってもよい。均一なミセルの形成を可能とする、分散度指数が0.15以下、好ましくは0.10以下のブロック共重合体の分散体を得るためには、リビング重合法を用いることが好ましい。
【0063】
以下ポリアルケニルエーテル構造を含むブロック共重合体のリビング重合方法について説明する。ポリビニルエーテル構造を含むポリマー化合物の合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによる方法(Polymer Bulletin、15、417〜423(1986)、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。青島らの方法により高分子化合物の合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー化合物、グラフトポリマー化合物等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。
【0064】
本発明のブロック共重合体は、各種印刷、インクジェット、電子写真等の画像記録装置に用いるインクに含有させることにより、記録媒体上で顔料等の色材を強固に固着させ、摺擦等による画像の損傷を抑制することができる。その他、顔料等の色材を含有する化粧品、絵具、塗料等に適用することができる。
【0065】
[インク]
本発明のインクは、上記ブロック共重合体と、機能性物質とを含有する。
【0066】
上記インク中の上記ブロック共重合体の含有量は、含有する色材等の機能性物質、使用される画像記録装置の機種等により適宜選択することができ、0.5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上80質量%以下であり、インクジェットプリンタ用としては、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0067】
上記インクに用いられる機能性物質としては、近赤外線反射材料や酸化触媒、脱臭・抗菌、助熱、排煙脱塩、ダイオキシン抑制、除虫効果、液晶パネルのバックライト用光散乱剤、蛍光材料、光導電材料等を挙げることができる。更に、紫外線防止、吸着効果等の化粧品への応用、塗料、トナー、インク等の色材等を挙げることができる。
【0068】
これらのうち、色材が好ましく、上記ブロック共重合体により記録材上で強固に結着させ得る顔料を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0069】
上記色材として、具体的には以下のものを挙げることができる。無機顔料として、コバルトブルー、セルシアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリーン、マルスブラック等の酸化物顔料。ビリジャン、イェローオーカー、アルミナホワイト等の水酸化物顔料。ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン等のケイ酸塩顔料。金粉、銀粉、ブロンズ粉等の金属粉、カーボンブラック等。有機顔料として、βナフトール系、ナフトールAS系、モノアゾ型あるいはジスアゾ型アセト酢酸アリリド系、ピラゾン系、縮合系等のアゾ系顔料。フタロシアニン系、サブフタロシアニン系、ポルフィリン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、スレン系、ペリレン系、ぺリノン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、新規に合成した顔料。
【0070】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
【0071】
黒色の顔料として、Raven1060、Raven1080、Raven1170、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven3500、Raven5250Raven5750。Raven7000、Raven5000ULTRAII、Raven1190ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製)。BlackPearlsL、MOGUL−L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1300、Monarch1400。(以上、キャボット社製)。ColorBlackFW1、ColorBlackFW2、ColorBlackFW200、ColorBlack18、ColorBlackS160、ColorBlackS170。SpecialBlack4、SpecialBlack4A、SpecialBlack6、Printex35、PrintexU、Printex140U、PrintexV、Printex140V(以上デグッサ社製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)。
【0072】
シアン色の顔料として、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2。C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等。
【0073】
マゼンタ色の顔料として、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1。C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168。C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等。
【0074】
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17。C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.PigmentYellow−95、C.I.Pigment Yellow−97。C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment
Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151。C.I.Pigment Yellow−154等。
【0075】
更に、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがある。具体的には、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上キャボット社製)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製)等を挙げることができる。
【0076】
上記インクに用いる顔料は、インクの全重量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましい。顔料の量が、0.1質量%以上であれば、好ましい画像濃度が得られ、50質量%以下であれば、好ましい定着性が得られる。より好ましい範囲としては0.5質量%から30質量%の範囲である。
【0077】
また、上記インクには、染料も使用することができる。以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、又は分散染料の不溶性色素を用いることができる。
【0078】
更に、上記インクにはその他の成分として有機溶剤、水、水性溶媒、添加剤等が含有されていてもよい。
【0079】
上記有機溶剤としては、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤等を挙げることができる。
【0080】
また、上記インクに含まれる水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水、純水、超純水が好ましい。
【0081】
上記水性溶剤は、特にインクジェット用インクの場合、インクのノズル部分での乾燥、インクの固化を抑制する機能を有する。上記水性溶剤はインクの全質量の0.1質量%以上60質量%以下、好ましくは1質量%以上40質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0082】
水性溶剤としては、例えば、以下のものを例示することができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類。エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等。また、水性分散物の記録媒体上での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
【0083】
上記インク中の上記有機溶剤、水及び水性溶媒の含有量は、含有する色材、用いられる画像記録装置の機種等により適宜選択することができる。具体的には、インクの全質量に対して、20質量%以上95質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは30質量%以上90質量%以下の範囲を挙げることができる。
【0084】
上記インクは、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を含有していてもよい。添加剤の一つとして、顔料を溶媒中で安定に分散させる分散安定剤を挙げることができる。上記インクにおいては、上記ブロック共重合体を含むことにより、粒状固体の顔料等の分散機能に適しているが、分散が不充分である場合には、他の分散安定剤を含有してもよい。
【0085】
他の分散安定剤として、親水性疎水性両部を持つ樹脂あるいは界面活性剤を使用することができる。親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。かかる親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸又は前記カルボン酸モノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等を挙げることができる。疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等を挙げることができる。これらのモノマーは、ランダム、ブロック、グラフト共重合体等として使用できる。
【0086】
上記界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。アニオン性活性剤としては以下のものを例示することができる。脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩。グリセロールボレイト脂肪酸エステル等。非イオン性活性剤としては以下のものを例示することができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等。カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等を挙げることができる。両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等を挙げることができる。
【0087】
上記インクには、その他の添加剤として、インク自体の安定化と画像記録装置中のインクの輸送管の安定性を得るためのpH調整剤、記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛け上の乾燥を促進させる浸透剤を挙げることができる。その他、インク内での黴の発生を抑制する防黴剤、インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を抑制するキレート化剤、循環、移動、製造時の泡の発生を抑制する消泡剤を用いることができる。更に、酸化防止剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等を含有させることができる。
【0088】
上記インクを調製するには、上記構成成分を混合し、均一に溶解又は分散する方法を使用することができる。具体的には、構成成分の複数を混合し、サンドミルやボールミル、ホモジナイザー、ナノマイザー等により破砕、分散しインク母液を作成し、これに溶媒や添加剤を加え物性を調整する方法を挙げることができる。
【0089】
[画像記録方法]
本発明の画像記録方法は、上記インクを記録媒体に付与する工程を含む方法である。
【0090】
上記画像記録方法は、本発明のインクを用いることにより優れた画像形成を行う方法であり、好ましくは、インク吐出部からインクを吐出して記録媒体上に付与することで記録を行う画像記録方法である。画像形成にはインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出するインクジェット法を用いる方法が好ましく用いられる。
【0091】
上記画像記録方法は、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像記録方法及び装置に使用でき、記録媒体上により描画を行う他、微細パターンの形成、薬物の投与等に適用することも可能である。
【0092】
[画像記録装置]
本発明の画像記録装置は、インクを記録媒体に付与する画像記録機構を有するものである。
【0093】
上記画像記録装置は、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行うバブルジェット方式(商標登録)等のインクジェット記録装置に適用することができる。
【0094】
上記画像記録装置の一例として、図1のブロック図に示すインクジェット記録装置を挙げることができる。図1に示すインクジェット記録装置は、装置全体の動作を制御するCPU50に、ヘッド70をXY方向に駆動させるX方向駆動モーター56、Y方向駆動モーター58が、それぞれXモーター駆動回路52、Yモーター駆動回路54を介して接続される。ヘッドにはインクを吐出させるエネルギーを発生するインク吐出素子が設けられ、CPUの制御により、インク吐出素子へ駆動信号を送出するヘッド駆動回路60が設けられる。更にCPU50には、ヘッドの位置を検出するためのXエンコーダー62及びYエンコーダー64と、プログラムメモリ66とが接続され、ヘッド70の移動距離からその位置情報と、制御プログラムとがCPUに入力されるようになっている。
【0095】
CPUからの制御信号によりXモーター駆動回路52、Yモーター駆動回路54からそれぞれX方向駆動モーター56、Y方向駆動モーター58へ駆動信号が送出されると、X方向駆動モーター56、Y方向駆動モーター58の作動によりヘッド70が移動する。ヘッドがインクの吐出を行う記録媒体の位置に対向する位置まで移動した後、CPUからの制御信号によりヘッド駆動回路60からインク吐出素子へ駆動信号が送出され、インクの吐出を行う。CPU50は、この制御プログラムとXエンコーダー62及びYエンコーダー64からの位置情報に基づいて、ヘッド70を移動させ、インクの吐出を行う記録媒体上の対向位置に順次ヘッドを配置してインクの吐出を行う。このようにして記録媒体上に所望の描画を行うことができる。また、ヘッドが複数色のインクを装填する場合、各色のインク毎に上記操作を行うことにより、記録媒体上に所望の描画を行うことができる。
【0096】
また、上記画像記録装置に、ヘッドに付着した余剰インクの除去を行うワイピング等の除去手段(図示せず)を設け、インク吐出後、必要に応じて除去手段の配置された位置にヘッドを移動させ、ヘッドの清浄化を行うことも可能である。更に、画像記録装置に備えられる記録媒体の搬送機構により、描画終了済の記録媒体を装置外へ搬送し、新たな記録媒体をインク吐出領域に搬送するようになっている。
【0097】
上記画像記録装置において、必要に応じてその形態を変更したものとできる。例えば、ヘッド70をXY軸方向に移動させず、X軸方向又はY軸方向いずれか一方向に移動させ、記録媒体をY軸方向又はX軸方向に移動させ、これらを連動させて描画を行うようにすることもできる。
【0098】
上記画像記録装置におけるインク吐出素子として、電気熱変換体やレーザ光等の熱エネルギー発生素子や、圧電素子等を利用することができるが、上記インクを適用するインク吐出素子として熱エネルギー発生素子は描画の高精細化を得ることができる。
【0099】
上記熱エネルギー発生素子を用いた画像記録装置として、米国特許第4723129号、同第4740796号に開示されている原理を利用した構成を有するものが好ましい。この画像記録装置はオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。特に、オンデマンド型の場合には、インク流路に対応して配置されている電気熱変換体に、吐出情報に対応した核沸騰を越える急峻な温度上昇を与える一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生させる。これにより、ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的に駆動信号に一対一で対応した液体内の気泡を形成することができ、有効である。形成された気泡の成長及び収縮により吐出口から液体を吐出させて、少なくとも1つの滴を記録材上に形成する。電気熱変換体に印加する駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた吐出を行うことができる。
【0100】
上記画像記録装置のヘッドの形態はどのようなものであってもよく、具体的には、直線状液流路又は直角液流路を有するもの、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成(米国特許第4558333号、米国特許第4459600号)であってもよい。また、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを吐出部とする構成(特開昭59−123670号公報)や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成(特開昭59−138461号公報)であってもよい。記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプのヘッドも適用することができ、フルラインタイプヘッドとして、具体的には、複数のヘッドを組み合わせてその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個のヘッドを挙げることができる。また、シリアルタイプ、装置本体に固定されたヘッド、装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプのヘッドでもよい。
【0101】
また、上記画像記録装置の構成として、インク吐出の安定化を図る上で予備的な補助手段等を設けることが好ましい。具体的には、ヘッドに対してのキャッピング手段、加圧又は吸引手段、電気熱変換体とは別の加熱素子、予備加熱手段、吐出を行うための予備吐出手段などを挙げることができる。
【0102】
上記画像記録装置は、各吐出口から吐出されるインクの量が、0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲であることが好ましい。
【0103】
また、上記画像記録装置は、中間転写体にインクを転写した後、紙等の記録媒体に転写する記録方式等を用いた間接記録装置、直接記録方式による直接記録装置にも適用することができる。
【実施例】
【0104】
以下に、本発明のブロック共重合体を用いたインクを、具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0105】
[合成例1]
9mmolのイソブチルビニルエーテル(IBVE:Aブロック)、0.10mmolのIBEA(イソブトキシエチルアセテート)、0.50mmolのエチルアルミニウムダイクロライドを0.10 M 酢酸エチルを含む500mlの無水トルエン中でリビングカチオン重合を行った。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、ブロックセグメント(A)の重合の完了を確認した。次いで、ブロックセグメント(D)成分として1.4mmolの化合物(20)(PIVE:Bブロック)を添加、GPCを用いてモニタリングし、ブロックセグメント(B)の重合の完了を確認した。ブロックセグメント(D)の重合終了後、2.8mmolのエトキシ安息香酸エチル(EBVE:Cブロック)のトルエン溶液を添加し24時間後、分子量を時分割にGPCを用いてモニタリングし、ブロックセグメント(C)の重合完了を確認した後、アンモニア/メタノール溶液で反応を停止した。
【0106】
次に、ブロックセグメント(D)の置換基であるフタルイミドをヒドラジン還元でアミンに変えた。更に、ブロックセグメント(C)のエステルをアルカリ加水分解後、アミノ基をシアン酸ナトリウムと反応させることによりブロック共重合体Iを得た。化合物の同定はGPC及びNMRにより行った。ブロックセグメントの重合比は、A:D:C=70:10:20、数平均分子量(Mn)は20,000、分散度指数(Mw/Mn)は1.25となった。
【0107】
【化17】

【0108】
[合成例2]
ブロックセグメント(B)の重合時間を合成例1より長くし、ブロックセグメント(B)の重合度を大きくした以外は合成例1と同じ方法で、ブロック共重合体IIを合成した。化合物の同定はGPC及びNMRにより行った。ブロックセグメントの重合比はA:D:C=70:20:20、数平均分子量(Mn)は22,000、分散度指数(Mw/Mn)は1.26となった。
【0109】
[合成例3]
15mmolのイソブチルビニルエーテル(IBVE:Aブロック)、0.1mmolのIBEA(イソブトキシエチルアセテート、0.50mmolのエチルアルミニウムダイクロライドを0.10 M 酢酸エチルを含む500mlの無水トルエン中でリビングカチオン重合を行った。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、ブロックセグメント(A)の重合の完了を確認した。次いで、ブロックセグメント(B)成分として2.8mmolの2−メトキシエトキシエチルビニルエーテル(MOEOVE:Bブロック)を添加、GPCを用いてモニタリングし、ブロックセグメント(B)の重合の完了を確認した。ブロックセグメント(B)の重合終了後、2.8mmolのエトキシ安息香酸エチル(EBVE:Cブロック)のトルエン溶液を添加し24時間後、0.28mmolの化合物(20)(PIVE:Dブロック)を添加した後、分子量を時分割にGPCを用いてモニタリングすることで、ブロックセグメント(D)の繰り返し単位数が2個であることを確認した後、アンモニア/メタノール溶液で反応を停止した。
【0110】
次に、ブロックセグメント(D)の置換基であるフタルイミドをヒドラジン還元でアミンに変えた。更に、ブロックセグメント(C)のエステルをアルカリ加水分解後、アミノ基をシアン酸ナトリウムと反応させることによりブロック共重合体IIIを得た。化合物の同定はGPC及びNMRにより行った。ブロックセグメントの重合比は、A:B:C:D=100:20:20:2、数平均分子量(Mn)は20,500、分散度指数(Mw/Mn)は1.25となった。
【0111】
[合成例4]
ブロックセグメント(D)の繰り返し単位数が4となった段階で、アンモニア/メタノール溶液による反応停止を行った以外は合成例1と同様の方法で、ブロック共重合体IIを得た。なお、ブロックセグメントの重合比は、A:B:C:D=100:20:20:4、数平均分子量(Mn)は21,000、分散度指数(Mw/Mn)は1.27となった。
【0112】
[合成例5]
15mmolのイソブチルビニルエーテル(IBVE:Aブロック)、0.1mmolのIBEA(イソブトキシエチルアセテート)、0.50mmolのエチルアルミニウムダイクロライドを0.10 M酢酸エチルを含む500mlの無水トルエン中でリビングカチオン重合を行った。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、ブロックセグメント(A)の重合の完了を確認した。次いで、ブロックセグメント(B)成分として2.8mmolの2−メトキシエトキシエチルビニルエーテル(MOEOVE:Bブロック)を添加、GPCを用いてモニタリングし、ブロックセグメント(B)の重合の完了を確認した。ブロックセグメント(B)の重合終了後、2.8mmolのエトキシ安息香酸エチル(EBVE:Cブロック)のトルエン溶液を添加し24時間後、重合停止剤であるTetrahedron Letters,2001,42(8),1445より合成された化合物(21)とアンモニア水の混合液を用いて反応を停止した。次に、ブロックセグメント(C)のエステルをアルカリ加水分解することにより、ブロックセグメント(C)の末端にウレア基を有するブロック共重合体IIIを得た。化合物の同定はGPC及びNMRにより行った。ブロックセグメントの重合比は、A:B:C=100:20:20、数平均分子量(Mn)は19,900、分散度指数(Mw/Mn)は1.23となった。
【0113】
【化18】

【0114】
[合成例6]
リビングラジカル重合により、化合物(22)をブロックセグメント(A)、化合物(23)をブロックセグメント(D)、化合物(24)をブロックセグメント(C)とする、ブロック共重合体を合成した。LiAlH4によりブロックセグメント(D)のCN基をCNH2基へと変換し、ブロックセグメント(C)のアミド基を加水分解後、ブロックセグメント(D)のアミノ基をシアン酸ナトリウムによりウレア基へと変換することにより、ブロック共重合体(25)を得た。化合物の同定はGPC及びNMRにより行った。ブロックポリマーの重合比はl:m:n=70:10:20、数平均分子量(Mn)は9,800、分散度指数(Mn/Mw)は1.35であった。
【0115】
【化19】

【0116】
[合成例7]
リビングラジカル重合により、化合物(26)と化合物(27)をブロックセグメントとするロック共重合体(28)を得た。ブロックセグメントの重合比はl:n=70:20、数平均分子量(Mn)は8,800、分散度指数(Mn/Mw)は1.38であった。
【0117】
【化20】

【0118】
[実施例1]
カーボンブラック(モーグルL、キャボット社製)5部と合成例1記載のブロック共重合体5部を100部のテトラヒドロフランに共溶解し、蒸留水400部を用いて水相へ変換しインクを得た。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液を0.1ml加えさらに超音波ホモジナイザーで10分間分散した後、減圧蒸留によりテトラヒドロフランを除去後、次いで1μmのフィルターを通して加圧濾過することで顔料分散体を製造した。次いで前述した顔料分散体67部に7部のグリセリン、5部のジエチレングリコール、7部のトリメチロールプロパン、0.5部のアセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)、13.5部のイオン交換水を用いて、目的とするインクを調製した。
【0119】
得られたインクを、キヤノン(株)製バブルジェット(登録商標)プリンタ(商品名 BJF800)のインクタンクに充填し、光沢紙(PR−101、キヤノン製)上にベタ画像を吐出、次いで室温で1時間静置した。室温下、得られた各ベタ画像を、引っ掻き球0.5mmとしてアクリル球、荷重500g、引っ張り速度10mm/秒の条件で堅牢性試験を行った。以下の基準により堅牢性を評価した。結果を表1に示す。
◎:白地が全く発生しなかった
○:引っ掻き面積に対し、白地を発生した面積の割合が5%未満
△:引っ掻き面積に対し、白地を発生した面積の割合が5%以上30%未満
×:引っ掻き面積に対し、白地を発生した面積の割合が30%以上100%以下
[実施例2]
合成例2記載のブロック共重合体を用いて顔料分散体の製造を行ったこと以外は、実施例1記載と同様の方法でインクを調製し、実施例1と同様に画像形成し、その堅牢性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
[実施例3]
合成例3記載のブロック共重合体を用いて顔料分散体の製造を行ったこと以外は、実施例1記載と同様の方法でインクを調製し、実施例1と同様に画像形成し、その堅牢性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
[実施例4]
合成例4記載のブロック共重合体を用いて顔料分散体の製造を行ったこと以外は、実施例1記載と同様の方法でインクを調製し、実施例1と同様に画像形成し、その堅牢性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
[実施例5]
合成例5記載のブロック共重合体を用いて顔料分散体の製造を行ったこと以外は、実施例1記載と同様の方法でインクを調製し、実施例1と同様に画像形成し、その堅牢性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
[実施例6]
合成例6記載のブロック共重合体を用いて顔料分散体の製造を行ったこと以外は、実施例1記載と同様の方法でインクを調製し、実施例1と同様に画像形成し、その堅牢性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
[比較例1]
合成例7記載のブロック共重合体を用いて顔料分散体の製造を行ったこと以外は、実施例1記載と同様の方法でインクを調製し、実施例1と同様に画像形成し、その堅牢性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0125】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の画像記録装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0127】
20 インクジェット装置(画像記録装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックセグメントを有するブロック共重合体であって、前記ブロックセグメントが下記一般式(1)で表される基を有する繰り返し単位を有することを特徴とするブロック共重合体。
【化1】

(式中、Aは炭素原子数1から45の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記繰り返し単位が、下記一般式(2)で表される請求項1記載のブロック共重合体。
【化2】

(式中、X1は炭素数1から18の直鎖状、分岐状又は環状のアルカントリイル基を示し、Aは炭素原子数1から45の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項3】
前記繰り返し単位が、下記一般式(3)で表される請求項2記載のブロック共重合体。
【化3】

(式中、X1は炭素数1から18の直鎖状、分岐状又は環状のアルカントリイル基を示し、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項4】
前記繰返し単位が、下記一般式(4)で表される請求項2記載のブロック共重合体。
【化4】

(式中、Aは炭素原子数1から45の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項5】
前記繰り返し単位が、下記一般式(5)で表される請求項2記載のブロック共重合体。
【化5】

(式中、Eは水素原子、又は炭素原子数1から45の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のブロック共重合体と、機能性物質とを含有することを特徴とするインク。
【請求項7】
機能性物質が色材である請求項6記載のインク。
【請求項8】
請求項6又は7記載のインクを記録媒体に付与する工程を含むことを特徴とする画像記録方法。
【請求項9】
請求項6又は7記載のインクを記録媒体に付与する画像記録機構を有することを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−201835(P2008−201835A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36404(P2007−36404)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】