説明

プライマー組成物

【課題】架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材と各種基材を良好に接着させるためのプライマー組成物を提供することを目的とし、特に、シリコーン系シーリング材(先打ち)に、ビニル系重合体を主成分とするシーリング材(後打ち)を打継ぐ際に、接着性の良好なプライマー組成物を提供する。
【解決手段】(A)架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体、(B)シランカップリング剤、及び(C)シラノール縮合触媒を含有してなるプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体、シランカップリング剤及びシラノール縮合触媒を含有するプライマー組成物に関し、さらに詳しくは、建築用シーリング材に有用なプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性シーリング材は、近年、建築物・自動車両等に幅広く使用されるようになってきている。シーリング材は、各種部材間の接合部や隙間に充填し、水密・気密を付与する目的で使用されている材料である。従って、目地部や窓枠周り等を構成する各種基材、すなわち、ガラス、セラミックス、金属、セメント、モルタル等の無機材料やプラスチック等の有機材料(以下、これらをまとめて「基材」という。)に対して良好な接着性を示す必要がある。しかし、シーリング材自身の接着性は未だ不十分で、プライマーの使用が多くの場合必須となっている。一般建築物の内外装の目地部に適用されるシーリング材として、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系及びポリウレタン系等が良く知られている。これらのシーリング材は、目地の種類(基材の種類も含めて)別に適切なシーリング材を選んで使う「適材適所」の考え方に基づいて使い分けられており、それぞれのシーリング材に適合する専用プライマーが開発されている。上記の各種シーリング材に、異なる種類のシーリング材を打継ぐことは本来望ましいことではないが、適材適所の考え方によるシーリング材の選定あるいは工場施工において、やむを得ず異種シーリング材の打継ぎが生じる場合がある。また、シーリング目地を改修する際には、既存のシーリング材、すなわち、先打ちシーリング材(本発明では先打ちシーリング材も含めて「基材」という。)を除去した後に、新規のシーリング材(後打ちシーリング材)を施工するが、先打ちシーリング材を完全に除去できないために、やむを得ず異種シーリング材の打継ぎが生じる。この時、先打ちシーリング材がシリコーン系シーリング材である場合には、シリコーン系シーリング材以外のシーリング材では打継ぐことができないという問題があった。
一方、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体、及び/又は、架橋性シリル基を少なくとも1個有するポリエーテル系重合体を主成分として含有するシーリング材(特にビニル系重合体を主鎖骨格とするアクリル系シーリング材)が、最近開発された(特許文献1〜2参照)。このアクリル系シーリング材は、動的追従性、耐熱性、耐候性、耐水性、塗装性に優れ、目地周辺を汚染しない等の特徴を有し、万能シーリング材としての性能を有するが、これまで、アクリル系シーリング材専用プライマーは開発されていなかった。
【特許文献1】特開2002−294022号公報
【特許文献2】特開2003−313302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材と各種基材を良好に接着させるためのプライマー組成物を提供することを目的とし、特にシリコーン系シーリング材(先打ち)に、ビニル系重合体を主成分とするシーリング材(後打ち)を打継ぐ際に、接着性の良好なプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上述の現状に鑑み、鋭意検討した結果、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体、シランカップリング剤及びシラノール縮合触媒を含有するプライマー組成物を用いることにより、上記課題を改善できることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、下記成分を含有してなるプライマー組成物に関する。
(A)一般式(1)で示される架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体(以下、単に「(A)ビニル系重合体」と称することがある)
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
{式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}、
(B)シランカップリング剤、及び、
(C)シラノール縮合触媒。
【0006】
上記プライマー組成物は、さらに、(D)シリコーン樹脂を含有することができる。
また、上記プライマー組成物は、さらに、(E)一般式(1)で示される架橋性シリル基を少なくとも1個有するポリエーテル系重合体(以下、単に「(E)ポリエーテル系重合体」と称することがある)を含有することができる。
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
{式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
上記(C)シラノール縮合触媒が、有機錫化合物及び/又は有機チタン酸エステル類であることが好ましい。
【0007】
上記(A)ビニル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8未満であることが好ましい。
上記(A)ビニル系重合体の主鎖は(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
上記(A)ビニル系重合体の主鎖は、リビングラジカル重合法により製造されたものであることが好ましく、原子移動ラジラル重合法により製造されたものであることがより好ましい。
上記(A)ビニル系重合体は、一般式(1)で示される架橋性シリル基を分子鎖末端に少なくとも1個有することが好ましい。
【0008】
上記(A)ビニル系重合体が、以下の工程:
(1)有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒として、ビニル系モノマーをラジカル重合することにより、ハロゲンを末端に有するビニル系重合体を製造し、
(2)アルケニル基を有するオキシアニオンを反応させてハロゲンを置換することにより、末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を製造し、
(3)一般式(1)で示す架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を反応させる;
により得られる重合体であることが好ましい。
【0009】
上記(E)ポリエーテル系重合体の主鎖は本質的にポリプロピレンオキシドであることが好ましい。
上記(B)シランカップリング剤はアミノ基含有シランカップリング剤であることが好ましい。
本発明のプライマー組成物は、シリコーン系シーリング材表面に対する打ち継ぎ用であることが好ましい。
【0010】
以下に、本発明のプライマー組成物について詳述する。
本発明のプライマー組成物は、下記成分を含有してなる組成物である。
(A)一般式(1)で示される架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
{式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}、
(B)シランカップリング剤、及び、
(C)シラノール縮合触媒。
【0011】
<(A)ビニル系重合体>
(A)成分である、下記一般式(1)で表される架橋性シリル基を重合体1分子中に少なくとも1個有するビニル系重合体は、シロキサン結合を形成することにより架橋するものである。
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
{式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
【0012】
、Rの炭素数1〜20のアルキル基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル、テトラデシル、オクタデシル等が挙げられる。
、Rの炭素数6〜20のアリール基としては、特に限定されず、例えばフェニル基、ナフチル基、トルイル基等が挙げられる。
、Rの炭素数7〜20のアラルキル基としては、特に限定されず、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
R’の炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、特に限定されず、炭素数1〜20のアルキル基等が好ましく挙げられ、その具体例は上記のものと同様である。
【0013】
上記Yの加水分解性基としては、特に限定されず、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等を挙げることができる。これらのうち、加水分解性がマイルドで取り扱いやすいという点から、アルコキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。
ケトキシメート基としては、炭素数1〜20のものが好ましく挙げられる。
アルケニルオキシ基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えばビニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等が挙げられる。
【0014】
Yは1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができる。また、a、b及びmは、a+mb≧1を満足するものであり、すなわち、上記一般式(1)中に少なくとも1個のYを含む。さらに、Yの総和は1〜5個の範囲が好ましい。
上記架橋性シリル基を構成するケイ素原子は、1個存在していてもよく、2個以上存在していてもよい。シロキサン結合により連結されたケイ素原子の場合は20個程度まであってもよいことから、mは0〜19である。
【0015】
上記架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の主鎖を構成するモノマーとしては、ビニル系モノマーであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等を挙げることができる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
なお、上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示す。以下も同様である。
上記架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体としては、物性面から、上記モノマーのうち、(メタ)アクリル酸系モノマーを40重量%以上用いて合成することにより得られる(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
さらに、上記モノマーのうちアクリル酸系モノマーを30重量%以上用いて合成することにより得られるアクリル系重合体がより好ましい。
【0017】
上記架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の数平均分子量としては、特に限定されないが、500〜100000の範囲にあるのが好ましい。数平均分子量が500未満であると、ビニル系重合体の本来の特性が発現されにくくなる傾向があり、また、100000を超えると、取り扱いが困難になりやすい傾向がある。
【0018】
上記架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の分子量分布、すなわち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)については、特に限定されない。しかし、プライマー組成物とした際の粘度を低く抑えて取扱いを容易にし、なおかつ十分な硬化物物性を得るためには、分子量分布は狭いことが好ましい。分子量分布の値としては1.8未満が好ましく、より好ましくは1.7以下、なお好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.4以下、最も好ましくは1.3以下である。
分子量分布の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定するのが最も一般的である。移動相としてはクロロホルムやテトラヒドロフラン(THF)を、カラムとしてはポリスチレンゲルカラムを用い、数平均分子量等はポリスチレン換算の値等で求めることができる。
【0019】
上記架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法は特に限定されず、種々の方法を用いることができる。しかし、モノマーの汎用性及び制御の容易性の点から、ラジカル重合法により主鎖に架橋性シリル基を直接導入する方法、及び、1段階又は数段階の反応で架橋性シリル基に変換できる特定の官能基を有するビニル系重合体をラジカル重合法により得た後、この特定の官能基を架橋性シリル基に変換する方法が好ましい。
【0020】
架橋性シリル基を含む特定の官能基を有するビニル系重合体を合成する方法において用いられるラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物等を用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端等の制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類することができる。
【0021】
「一般的なラジカル重合法」は簡便な方法であり本発明でも利用可能であるが、特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されない。このため、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、物性の制御範囲が狭くなるという問題がある。逆にこの特定の官能基を有するモノマーの使用量が少ないと、この特定の官能基が導入されない重合体の割合が大きくなるという問題がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題もある。
【0022】
「制御ラジカル重合法」は、さらに、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合をおこなうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と重合生長末端が停止反応等を起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
【0023】
「連鎖移動剤法」は、「一般的なラジカル重合法」と比較して官能化率の高い重合体を得ることが可能であり、本発明でも利用可能であるが、開始剤に対してかなり大量の特定の官能基を有する連鎖移動剤が必要であり、処理も含めて経済面で問題がある。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の高い重合体しか得られないという問題もある。
【0024】
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリング等による停止反応が起こりやすいため制御が難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量を自由にコントロールすることができる。
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
【0025】
なお、リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
【0026】
「リビングラジカル重合法」は、上述の定義に当てはまるラジカル重合法であれば特に限定されない。この「リビングラジカル重合法」は、近年様々なグループで積極的に研究がなされており、その例としては、例えばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物等のラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)等が挙げられる。
【0027】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。
この原子移動ラジカル重合法としては、例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁、サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報、WO97/18247号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁等に記載の方法が挙げられる。
【0028】
上記「原子移動ラジカル重合法」において用いる開始剤としては、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を挙げることができる。上記の特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物としては、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物等を挙げることができる。例えば、特開平11−130931号公報、特開平11−158449号公報等に記載されている開始剤を使用することができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記「原子移動ラジカル重合法」の触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されず、例えば、周期表第7族、8族、9族、10族、11族元素を中心金属とする錯体等を挙げることができる。好ましいものとしては、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体を挙げることができる。なかでも、銅の錯体がより好ましい。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記1価の銅化合物としては特に限定されず、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等を挙げることができる。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子を添加することができる。
【0031】
また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することができる。
さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
【0032】
上記重合反応は、無溶剤又は各種の溶剤中で行うことができる。上記溶剤としては特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また上記「原子移動ラジカル重合法」は、0〜200℃の範囲で行うことができる。好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0033】
次に、上記一般式(1)で示される架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の製法において、架橋性シリル基を導入する方法としては特に限定されないが、例えば、以下の[A]〜[E]の方法が好ましく用いられ、これらを具体的に説明する。
[A]ヒドロシリル化触媒存在下で、アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させる方法。
[B]水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体に、架橋性シリル基及びイソシアネート基等の水酸基と反応し得る官能基を併せ持つ化合物を反応させる方法。
[C]ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、所定のビニル系モノマーとともに、重合性のアルケニル基及び架橋性シリル基を併せ持つ化合物をも反応させる方法。
[D]架橋性シリル基を有する連鎖移動剤を用いて、ビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
[E]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、架橋性シリル基を有する安定なカルバニオンを反応させる方法。
【0034】
上記合成法[A]において用いられる、アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法としては特に限定されず、例えば次に述べる[A−a]〜[A−j]の方法等を挙げることができる。
【0035】
[A−a]ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、所定のビニル系モノマーとともに、下記一般式(2)等で表される重合性のアルケニル基及び重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物をも反応させる方法。
C=C(R)−R−R−C(R)=CH (2)
(式中、Rは水素又はメチル基を示す。Rは−C(O)O−、又はo−,m−もしくはp−フェニレン基を示す。Rは直接結合、又は1個以上のエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を示す。Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
なお、上記重合性のアルケニル基及び重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物を反応させる時期としては特に限定されないが、得られる架橋体にゴム的な性質を期待する場合には、リビングラジカル重合で、重合反応の終期又は所定のビニル系モノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0036】
[A−b]リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のビニル系モノマーの反応終了後に、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等の重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法。
【0037】
以下の[A−c]〜[A−f]の方法は、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体から、上記アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を得る方法である。なお、上記反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する重合体は、後述する[E−a]及び[E−b]の方法により得ることができる。
【0038】
[A−c]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、アリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫等の有機錫に代表されるアルケニル基含有有機金属化合物を反応させて、上記ハロゲンをアルケニル基含有置換基に置換する方法。
[A−d]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、下記一般式(3)等で表されるアルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させて上記ハロゲンをアルケニル基に置換する方法。
(R)(R)−R−C(R)=CH (3)
(式中、Rは上述したものと同じである。R及びRはともにカルバニオンCを安定化する電子吸引基、又は一方が上記電子吸引基で他方が水素又は炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基を示す。Rは直接結合、又は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。Mはアルカリ金属イオン、又は4級アンモニウムイオンを示す。)
及びRの電子吸引基としては、−COR、−C(O)R及び−CNが好ましい。ここでRは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。
【0039】
[A−e]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、亜鉛等の金属単体又は有機金属化合物を作用させて調製したエノレートアニオンに、ハロゲンやアセチル基等の脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基含有カルボニル化合物、アルケニル基含有イソシアネート化合物、アルケニル基含有酸ハロゲン化物等のアルケニル基含有求電子化合物を反応させる方法。
【0040】
[A−f]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、下記一般式(4)等で表されるアルケニル基含有オキシアニオン又は下記一般式(5)等で表されるアルケニル基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、上記ハロゲンをアルケニル基含有置換基に置換する方法。
C=C(R)−R10−O (4)
(式中、R及びMは上述したものと同じである。R10は、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
C=C(R)−R11−C(O)O (5)
(式中、R及びMは上述したものと同じである。R11は直接結合、又は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
【0041】
さらに、上記アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体から得ることもできるが、具体的な方法としては特に限定されず、例えば下記の[A−g]〜[A−j]の方法等を挙げることができる。なお上記水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体は後述する[B−a]〜[B−i]の方法により得ることができる。
【0042】
[A−g]水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体に、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基を作用させた後に、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物と反応させる方法。
[A−h]水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体を、アリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物と反応させる方法。
[A−i]ピリジン等の塩基存在下で、水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体を、(メタ)アクリル酸クロリド等のアルケニル基含有酸ハロゲン化物と反応させる方法。
[A−j]酸触媒の存在下で、水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体を、アクリル酸等のアルケニル基含有カルボン酸と反応させる方法。
【0043】
上記アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法においては、上述した[A−a]及び[A−b]の方法等の、アルケニル基を導入するに際してハロゲン原子が直接関与しない場合、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。この場合、制御がより容易である点から[A−b]の方法がより好ましい。リビングラジカル重合法の中でも原子移動ラジカル重合法がより好ましい。
【0044】
一方、上述した[A−c]〜[A−f]の方法等の、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することによりアルケニル基を導入する場合、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として用いるラジカル重合(原子移動ラジカル重合法)により得られる、末端に反応性の高い炭素―ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体を用いるのが好ましい。制御がより容易である点から[A−f]の方法がより好ましい。
【0045】
上記合成方法[A]において用いられる、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物としては特に限定されず、例えば下記一般式(6)で示される化合物等を挙げることができる。
H−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (6)
(式中、R、R、a、b、m及びYは上述したものと同じである。)
中でも入手容易な点から、下記一般式(7)で表される化合物が好ましく用いられる。
H−Si(R3−a(Y) (7)
(式中、R、Y及びaは上述したものと同じである。)
【0046】
上記合成法[A]において、上記架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を上記重合体のアルケニル基に付加させる際には、通常、ヒドロシリル化触媒として遷移金属触媒が用いられる。
上記遷移金属触媒としては特に限定されず、例えば、白金単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体;白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体;RhCl(PPh,RhCl,RuCl,IrCl,FeCl,AlCl,PdCl・HO,NiCl,TiCl等の白金化合物以外の化合物;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記合成方法[B]において、さらには上記方法[A−g]〜[A−j]においても用いられる、水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法としては特に限定されず、例えば次に述べる[B−a]〜[B−i]の方法等を挙げることができる。
【0048】
[B−a]ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、所定のビニル系モノマーとともに、下記の一般式(8)等で表される重合性のアルケニル基及び水酸基を併せ持つ化合物をも反応させる方法。
C=C(R)−R−R−OH (8)
(式中、R、R及びRは上述したものと同じである。)
なお、上記重合性のアルケニル基及び水酸基を併せ持つ化合物を反応させる時期としては特に限定されないが、得られる架橋体にゴム的な性質を期待する場合には、リビングラジカル重合で、重合反応の終期又は所定のビニル系モノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0049】
[B−b]リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールを反応させる方法。
[B−c]特開平5−262808号公報等に開示されているような方法で、水酸基含有ポリスルフィド等の水酸基含有連鎖移動剤を多量に用いて上述のビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
[B−d]特開平6−239912号公報、特開平8−283310号公報等に開示されている方法で、過酸化水素あるいは水酸基含有開始剤を用いて上記ビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
[B−e]特開平6−116312号公報等に開示されている方法で、アルコール類を過剰に用いてビニル系モノマーをラジカル重合させる方法。
【0050】
[B−f]特開平4−132706号公報等に開示されている方法で、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを、加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
[B−g]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、下記一般式(9)等で表される、水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させて、上記ハロゲンを水酸基含有置換基に置換する方法。
(R)(R)−R−OH (9)
(式中、R、R及びRは上述したものと同じである。)
及びRの電子吸引基としては、−COR、−C(O)R及び−CNが好ましい。ここでRは、上述したものと同じである。
【0051】
[B−h]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、亜鉛等の金属単体あるいは有機金属化合物を作用させて調製したエノレートアニオンに、アルデヒド類、又はケトン類を反応させる方法。
[B−i]反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、下記一般式(10)等で表される水酸基含有オキシアニオン又は下記一般式(11)等で表される水酸基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、上記ハロゲンを水酸基含有置換基に置換する方法。
HO−R10−O (10)
(式中、R10及びMは上述したものと同じである。)
HO−R11−C(O)O (11)
(式中、R11及びMは上述したものと同じである。)
【0052】
上記水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法においては、上述した[B−a]〜[B−e]等の水酸基を導入するに際してハロゲン原子が直接関与しない場合、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。この場合、制御がより容易である点から[B−b]の方法がより好ましい。リビングラジカル重合法の中でも原子移動ラジカル重合法がより好ましい。
【0053】
また、上述した[B−f]〜[B−i]の方法等の、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することにより水酸基を導入する場合には、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として用いるラジカル重合(原子移動ラジカル重合法)により得られる、末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体を用いるのが好ましい。この場合、制御がより容易である点から[B−i]の方法がより好ましい。
【0054】
上記合成方法[B]において用いられる、架橋性シリル基及びイソシアネート基等の水酸基と反応し得る官能基を併せ持つ化合物としては特に限定されず、例えばγ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記合成方法[B]における反応の際には、必要により公知のウレタン化反応の触媒を使用することもできる。
【0055】
上記合成方法[C]において用いられる重合性のアルケニル基及び架橋性シリル基を併せ持つ化合物としては特に限定されず、例えばトリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等の、下記一般式(12)で表される化合物等を挙げることができる。
C=C(R)−R−R12−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (12)
(式中、R、R、R、R、Y、a、b及びmは上述したものと同じである。R12は、直接結合、又は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記合成方法[C]において、上記重合性のアルケニル基及び架橋性シリル基を併せ持つ化合物を反応させる時期は特に限定されないが、得られる架橋体にゴム的な性質を期待する場合には、リビングラジカル重合で、重合反応の終期又は所定のビニル系モノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0057】
上記合成方法[D]において用いられる、架橋性シリル基を有する連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報等に開示されているような、架橋性シリル基を有するメルカプタン、架橋性シリル基を有するヒドロシラン等を挙げることができる。さらに架橋性シリル基の導入率を高めるため、架橋性シリル基を有するラジカル開始剤を併用してもよい。
【0058】
上記合成方法[E]において、さらには上記方法[A−c]〜[A−f]及び[B−f]〜[B−i]においても用いられる、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成法としては特に限定されず、例えば次に述べる[E−a]及び[E−b]の方法等を挙げることができる。
[E−a]特開平4−132706号公報等に開示されている方法で、四塩化炭素、塩化エチレン、四臭化炭素、臭化メチレン等のハロゲン化物を連鎖移動剤として用いてラジカル重合をおこなう方法(連鎖移動剤法)。
[E−b]有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法。
【0059】
上記合成方法[E]において用いられる、架橋性シリル基を有する安定なカルバニオンとしては特に限定されず、下記一般式(13)で表される化合物等を挙げることができる。
(R)(R)−R13−C(H)(R14)−CH−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (13)
(式中、R、R、R、R、Y、a、b、m及びMは上述したものと同じである。R13は、直接結合、又は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を示す。R14は水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
及びRの電子吸引基としては、−COR、−C(O)R及び−CNが好ましい。ここでRは、上述したものと同じである。
【0060】
本発明のプライマー組成物を発泡、硬化させてなる発泡体にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性シリル基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての架橋性シリル基を分子鎖末端に有するものである。
上記架橋性シリル基を分子末端に少なくとも1個有するビニル系重合体、中でも(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に開示されている。しかしながら、これらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、架橋性シリル基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、Mw/Mnで表される分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低いビニル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を得るためには、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましい。
【0061】
従って、上記架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を合成する際に用いる、水酸基、ハロゲンあるいはアルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、これらの官能基を分子鎖末端に有するものが好ましい。
上記「リビングラジカル重合法」の中でもより好ましい「原子移動ラジカル重合法」を用いて、上記架橋性シリル基を分子鎖末端に少なくとも1個有するビニル系重合体を得るためには、開始剤として、開始点を2個以上有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を用いることが好ましい。これにより得られる反応性の高い炭素−ハロゲン結合を分子鎖末端に少なくとも1個有するビニル系重合体は、上述の方法により、上記架橋性シリル基を分子鎖末端に少なくとも1個有するビニル系重合体に容易に変更することができる。
【0062】
上記開始点を2個以上有する有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、例えば下記の化合物を挙げることができる。
それらの具体例としては、
o−,m−,p−XCH−C−CHX、o−,m−,p−CHC(H)(X)−C−C(H)(X)CH、o−,m−,p−(CHC(X)−C−C(X)(CH
(上記式中、Cはフェニレン基を示す。Xは塩素、臭素、又はヨウ素を示す。)
ROC−C(H)(X)−(CH−C(H)(X)−COR、ROC−C(CH)(X)−(CH−C(CH)(X)−COR、RC(O)−C(H)(X)−(CH−C(H)(X)−C(O)R、RC(O)−C(CH)(X)−(CH−C(CH)(X)−C(O)R
(上記式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。nは0〜20の整数を示し、Xは塩素、臭素、ヨウ素を示す。)
XCH−C(O)−CHX、HC−C(H)(X)−C(O)−C(H)(X)−CH、(HC)C(X)−C(O)−C(X)(CH、CC(H)(X)−(CH−C(H)(X)C
(上記式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示し、nは0〜20の整数を示す。)
XCHCO−(CH−OCOCHX、CHC(H)(X)CO−(CH−OCOC(H)(X)CH、(CHC(X)CO−(CH−OCOC(X)(CH
(上記式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示し、nは1〜20の整数を示す。)
XCHC(O)C(O)CHX、CHC(H)(X)C(O)C(O)C(H)(X)CH、(CHC(X)C(O)C(O)C(X)(CH、o−,m−,p−XCHCO−C−OCOCHX、o−,m−,p−CHC(H)(X)CO−C−OCOC(H)(X)CH、o−,m−,p−(CHC(X)CO−C−OCOC(X)(CH、o−,m−,p−XSO−C−SO
(上記式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素を示す。)
等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0063】
また架橋性シリル基を両分子鎖末端に有するビニル系重合体を得るためには、上記「原子移動ラジカル重合法」における開始剤として、開始点を2個有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を用いる方法の他に、架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物を用いる方法も好ましい。
【0064】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば下記一般式(14)又は(15)で表される化合物等を挙げることができる。
1516C(X)−R17−R18−C(H)(R19)CH−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (14)
(式中、R、R、a、b、m、X及びYは上述したものと同じである。R15及びR16は、同一又は異なって、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R15とR16は、他端において相互に連結していてもよい。R17は−C(O)O−、−C(O)−、又は、o−,m−,p−フェニレン基を示す。R18は直接結合、又は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。R19は水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
(R3−a(Y)Si−[OSi(R2−b(Y)−CH−C(H)(R19)−R18−C(R15)(X)−R17−R16 (15)
(式中、R、R、R15、R16、R17、R18、R19、a、b、m、X及びYは上述したものと同じである。)
【0065】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物を開始剤として用いて上記「原子移動ラジカル重合法」をおこなうと、片末端に架橋性シリル基を有し、他の末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有するビニル系重合体が得られる。このビニル系重合体の末端ハロゲン原子を、上述した方法等を用いて架橋性シリル基含有置換基に変換すれば、架橋性シリル基を両分子鎖末端に有するビニル系重合体を得ることができる。
また上記停止末端のハロゲン原子を置換できる、同一又は異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、上記ビニル系重合体のハロゲン原子同士をカップリングさせることによっても、上記架橋性シリル基を両分子鎖末端に有するビニル系重合体を得ることができる。
上記停止末端のハロゲン原子を置換できる、同一又は異なった官能基を合計2個以上有する化合物としては特に限定されず、例えばポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、これらの塩;アルカリ金属硫化物等を挙げることができる。
【0066】
さらに上記「原子移動ラジカル重合法」において、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物を開始剤に用いれば、片末端にアルケニル基を有し、他の末端にハロゲン原子を有するビニル系重合体が得られる。このビニル系重合体の末端のハロゲン原子を、上述した方法を用いてアルケニル含有置換基に変換すれば、両分子鎖末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を得ることができる。これらのアルケニル基を上述の方法等で架橋性シリル基に変換すれば、上記架橋性シリル基を両分子鎖末端に有するビニル系重合体を得ることができる。
【0067】
上記架橋性シリル基を分子鎖末端に少なくとも1個有するビニル系重合体は、上述した方法等を随時組み合わせて得ることができるが、典型的な合成工程として下記合成例a及びbを挙げることができる。
【0068】
合成工程a
(a−1)有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として、ビニル系モノマーをラジカル重合することにより、ハロゲン原子を末端に有するビニル系重合体を合成する工程、
(a−2)前記工程(a−1)で得られるハロゲン原子を末端に有するビニル系重合体と、アルケニル基を有するオキシアニオンを反応させて、ハロゲンを置換することにより、末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を合成する工程、及び、
(a−3)前記工程(a−2)で得られる末端にアルケニル基を有するビニル系重合体の末端アルケニル基に、一般式(1)で表される架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させて、架橋性シリル基を含有する置換基に変換する工程
からなる合成工程。
【0069】
合成工程b
(b−1)ビニル系モノマーをリビングラジカル重合法により重合することにより、ビニル系重合体を合成する工程、
(b−2)前記工程(b−1)で得られるビニル系重合体と、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物とを反応させることにより、末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を合成する工程、及び、
(b−3)前記工程(b−2)で得られる末端にアルケニル基を有するビニル系重合体の末端のアルケニル基に、一般式(1)で表される架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させて、架橋性シリル基を含有する置換基に変換する工程
からなる合成工程。
【0070】
<(B)シランカップリング剤>
本発明のプライマー組成物は、(B)シランカップリング剤を含有する。シランカップリング剤は、(A)成分である架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体との反応等により強靭な被膜を形成するとともに、各種基材(ガラス、セラミックス、金属、セメント、モルタル等の無機材料、プラスチック等の有機材料等)と、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材との接着強度を向上させるものである。
【0071】
シランカップリング剤は、加水分解性基が結合したケイ素原子を含む基(以下、加水分解性ケイ素基という)及びそれ以外の官能基を有する化合物である。
この加水分解性ケイ素基の例としては、一般式(1)で表される基のうち、Yが加水分解性基である基を挙げることができる。具体的には、加水分解性基として既に例示した基を挙げることができるが、メトキシ基、エトキシ基等が加水分解速度の点から好ましい。加水分解性基の個数は、2個以上が好ましく、特に3個以上が好ましい。
加水分解性ケイ素基以外の官能基としては、1級、2級、3級のアミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲン等を例示できる。これらのうち、1級、2級、3級のアミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、イソシアヌレート等が好ましく、アミノ基が特に好ましい。
【0072】
シランカップリング剤の具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン類等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、ブロックイソシアネートシラン、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0073】
(B)成分のシランカップリング剤の配合量は、(A)ビニル系重合体、又は、(E)ポリエーテル系重合体をさらに含有する場合には(A)ビニル系重合体及び(E)ポリエーテル系重合体の総量(以下に、単に「架橋性シリル基を少なくとも1個有する重合体の総量」と称することがある)100重量部に対して、接着性の観点から、0.1〜500重量部が好ましく、0.5〜100重量部がより好ましい。
上記シランカップリング剤は、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
なお、本発明のプライマー組成物には、シランカップリング剤以外の接着性付与剤も用いることができる。
【0074】
<(C)シラノール縮合触媒>
本発明のプライマー組成物は、(C)シラノール縮合触媒を含有する。シラノール縮合触媒は、(A)ビニル系重合体、(E)ポリエーテル系重合体の硬化触媒として作用する。これによって、(A)ビニル系重合体、又は、(A)ビニル系重合体及び(E)ポリエーテル系重合体は、プライマー層として強固な被膜を形成する。
シラノール縮合触媒としては、錫系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒等が例示されるが、有機チタン酸エステル類及び/又は有機錫化合物が好ましい。
【0075】
有機チタン酸エステル類としては、有機チタン酸エステル、チタンのキレート化合物、チタンのケイ酸エステルによるキレート化合物、チタネート系カップリング剤、これらの部分加水分解縮合物等が挙げられる。
有機チタン酸エステル類の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラステアリルチタネート、テトラメチルチタネート、ジエトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロピルビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジ(2−エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、及びこれらの加水分解縮合物等を挙げることができる。
また、チタネート系カップリング剤の具体例として、
【0076】
【化1】

【0077】
で示される化合物、及びこれらの加水分解縮合物も挙げることができる。
上記の有機チタン酸エステル類の内、一般式(16)
Ti(OR) (16)
(式中、Rは、炭素数1〜20の置換あるいは非置換の炭化水素基を表し、複数個のRは同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で表される化合物は、接着性改善効果が特に高いためより好ましい。
【0078】
有機錫化合物の具体例としては、錫カルボン酸塩類、ジアルキル錫オキシド類、及び、一般式(17)
Sn(OZ)4−d、又は、[QSn(OZ)]O (17)
(式中、Qは炭素数1〜20の1価の炭化水素基を、Zは炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は自己内部にSnに対して配位結合を形成し得る官能性基を有する有機基を表す。dは0、1、2又は3を表す。また、Q、Zがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で示される化合物等が挙げられる。
なお、Q、Zの炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、特に限定されず、例えば上記R’で例示した基と同じもの等が挙げられる。
自己内部にSnに対して配位結合を形成し得る官能性基を有する有機基としては、特に限定されないが、例えばカルボニル基、アミノ基等が挙げられる。
【0079】
また、ジアルキル錫オキシドやジアルキル錫ジアセテート等の4価錫化合物と、テトラエトキシシランやメチルトリエトキシシランやジフェニルジメトキシシランやフェニルトリメトキシシラン等の加水分解性ケイ素基を有する低分子ケイ素化合物との反応物もまた、シラノール縮合反応を顕著に加速する硬化触媒として有効である。
これらの中でも、一般式(17)で示される化合物、すなわち、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート等のキレート化合物や錫アルコラート類は、シラノール縮合触媒としての活性が高く、プライマー組成物の被膜形成速度が速くなるのでより好ましい。
【0080】
前記錫カルボン酸塩類の具体例としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレート等が挙げられる。
前記ジアルキル錫オキシド類の具体例としては、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドや、ジブチル錫オキシドとフタル酸エステルとの混合物等が挙げられる。
前記キレート化合物を具体的に例示すると、
【0081】
【化2】

【0082】
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、ジブチル錫ビスアセチルアセトナートは、触媒活性が高く、低コストであり、入手が容易であるために最も好ましい。
前記錫アルコラート類を具体的に例示すると、
【0083】
【化3】

【0084】
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中ではジアルキル錫ジアルコキシドが好ましい。特に、ジブチル錫ジメトキシドは、低コストであり、入手が容易であるためにより好ましい。
【0085】
また、上記のチタン酸エステル類及び/又は有機錫化合物以外のシラノール縮合触媒を用いてもよい。具体的には、オクチル酸スズ等の無機錫系化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウム系硬化触媒;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート;オクチル酸鉛;ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系硬化触媒、あるいはこれらのアミン系化合物のカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;等のシラノール縮合触媒、さらには他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒等が例示できる。
【0086】
上記シラノール縮合触媒は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(C)成分のシラノール縮合触媒の配合量は、(A)ビニル系重合体、又は、(E)ポリエーテル系重合体をさらに含有する場合には(A)ビニル系重合体及び(E)ポリエーテル系重合体の総量(以下に、単に「架橋性シリル基を少なくとも1個有する重合体の総量」と称することがある)100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましく、10〜200重量部がより好ましい。シラノール縮合触媒の配合量が1重量部未満であると被膜形成速度が遅くなることがあり、また被膜が十分に形成し難くなる場合がある。一方、シラノール縮合触媒の配合量が1000重量部を超えるとオープンタイムが短くなり、作業性が低下する傾向がある。
【0087】
<(D)シリコーン樹脂>
本発明のプライマー組成物には、さらに、(D)成分としてシリコーン樹脂を含有させることができる。シリコーン樹脂は、ぬれ性を向上させ、接着性の発現を高める他、プライマー組成物の刷毛塗り適性を向上させる。
【0088】
シリコーン樹脂としては、シラン系プライマーの樹脂成分として一般に用いられているものを用いることができ、例えば、平均単位式が、
20SiO(4−e−f)/2(OR21
(式中、R20は炭素数1〜6の1価の炭化水素基、R21は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、eは0.8〜1.8、fは1分子中の珪素原子に結合した水酸基又はアルコキシ基の数が1価以上になる値を表す。)
で表される、珪素原子結合の水酸基又はアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
なお、R20の炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、特に限定されず、例えば炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素数2〜6のアルケニル基(ビニル基、アリル基等)等が挙げられる。また、R21の炭素数1〜6のアルキル基としては、特に限定されず、上述のR、Rのアルキル基の例示のうちの炭素数1〜6のもの等が挙げられる。
【0089】
本発明のプライマー組成物に(D)成分のシリコーン樹脂を含有させる場合、その配合量は、(A)ビニル系重合体、又は、(E)ポリエーテル系重合体をさらに含有する場合には(A)ビニル系重合体及び(E)ポリエーテル系重合体の総量(以下に、単に「架橋性シリル基を少なくとも1個有する重合体の総量」と称することがある)100重量部に対して、接着性の観点から、5〜1000重量部が好ましく、5〜200重量部がより好ましい。
【0090】
<(E)ポリエーテル系重合体>
本発明のプライマー組成物には、さらに、(E)成分として、一般式(1)で示される架橋性シリル基を重合体1分子中に少なくとも1個有するポリエーテル系重合体を含有させることができる。
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
{式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
【0091】
本発明のプライマー組成物は、(A)ビニル系重合体を主成分とするシーリング材(後打ち)を打継ぐ際に、(E)ポリエーテル系重合体を含有させることによって、低モジュラスで高伸びを有するゴム状硬化物を実現できるが、用途に応じて高モジュラスで低伸びを有するゴム状硬化物を与えることもできる。すなわち、本発明のプライマー組成物は、これを適用する後打ちシーリング材の組成成分等に応じて、(E)ポリエーテル系重合体の添加量や種類等を適宜設定することができる。
【0092】
(E)ポリエーテル系重合体の主鎖は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。このうち、(E)ポリエーテル系重合体の主鎖は、本質的にポリオキシアルキレンであることが好ましく、本質的にポリプロピレンオキシドであることがより好ましく、これは、プロピレンオキシド以外に、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、フェニレンオキシド等を含んでもよい。また、(E)ポリエーテル系重合体は、主鎖中にウレタン結合を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
ここで「主鎖が本質的にポリプロピレンオキシドである」とは、プロピレンオキシド単位が、主鎖を構成する繰り返し単位のうち50モル%以上を占めることをいい、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
より低粘度であれば取扱い性が良好になるので、ポリプロピレンオキシド系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下のものがより好ましい。
【0093】
(E)成分中の架橋性シリル基は、上述の一般式(1)で示されるものであるが、式中の各記号等は前述したものと同じである。(E)成分中の架橋性シリル基は、(A)成分の架橋性シリル基と同じ構造のものでもよいし、異なる構造のものでもよい。
(E)ポリエーテル系重合体が有する架橋性シリル基の個数は、重合体1分子中に少なくとも1個であるが、組成物の硬化性の観点から、平均して1個より多く有することが好ましく、より好ましくは平均して1.1〜4.0個、さらに好ましくは平均して1.5〜2.5個である。
また、架橋性シリル基は、硬化物のゴム弾性の観点から、ポリエーテル系重合体の末端にあることが好ましく、重合体の両末端にあることがより好ましい。
【0094】
(E)ポリエーテル系重合体の製造方法としては特に限定されず、従来公知のものであってよく、例えば、特開昭50−156599号公報、特開昭55−125121号公報等に記載されている製造方法等が挙げられる。
商品名で言えば、MSポリマーS−203、S−303((株)カネカ製)等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
本発明のプライマー組成物に(E)成分のポリエーテル系重合体を含有させる場合、その配合量は、後打ちシーリング材に含有される(A)ビニル系重合体と(E)ポリエーテル系重合体の混合比に合わせることが好ましく、重量比((A)/(E))で99/1〜1/99の範囲にあることが好ましく、95/5〜5/95の範囲にあることがより好ましく、70/30〜30/70の範囲にあることがさらに好ましい。(A)ビニル系重合体のブレンド比が少ないと、プライマー組成物の優れた耐候性が発現されにくい場合がある。
【0096】
<プライマー組成物>
本発明のプライマー組成物は、上述のように(A),(B)及び(C)成分を含有してなる組成物である。また、必要に応じて、(D),(E)成分を含有させることができる。
さらに、本発明のプライマー組成物には、必要に応じて、物性を調節するために、各種添加剤等を配合してもよい。
【0097】
本発明のプライマー組成物には、当該組成物をプライマー塗布作業に適した粘度に調節するために、溶剤を用いることができる。溶剤は、本発明の(A)成分〜(E)成分を溶解するものであればよく、その種類は特に限定されない。
かかる溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、石油系溶剤等の炭化水素系溶剤;トリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤等が例示される。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0098】
当該溶剤を用いる場合、その配合量は、(A)ビニル系重合体、又は、(E)ポリエーテル系重合体をさらに含有する場合には(A)ビニル系重合体及び(E)ポリエーテル系重合体の総量(以下に、単に「架橋性シリル基を少なくとも1個有する重合体の総量」と称することがある)100重量部(以下、「重量部」を単に「部」ということもある)に対して、50〜500000部程度が好ましく、500〜5000部がより好ましい。プライマー組成物の粘度をより低くし、より良好な作業性の点から、50部以上が好ましく、十分な接着性を得る点から、500000部以下が好ましい。
【0099】
本発明のプライマー組成物には、接着耐久性向上のために、各種老化防止剤を必要に応じて添加することができる。かかる老化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系ヒドロペルオキシド分解剤、リン系ヒドロペルオキシド分解剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ニッケル系光安定剤等が挙げられる。
【0100】
前記フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が例示できる。前記芳香族アミン系酸化防止剤の具体例としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等が例示できる。前記硫黄系ヒドロペルオキシド分解剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示できる。前記リン系ヒドロペルオキシド分解剤の具体例としては、ジフェニルイソオクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等が例示できる。前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が例示できる。前記サリシレート系紫外線吸収剤の具体例としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が例示できる。前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン等が例示できる。前記ヒンダートアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が例示できる。前記ニッケル系光安定剤の具体例としては、ニッケルジブチルジチオカルバメート、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−n−ブチルアミンニッケル(II)等が例示できる。
【0101】
これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。単独で使用した場合と比較して、併用することによってより有効に機能することがある。特に、フェノール系酸化防止剤とサリシレート系紫外線吸収剤とヒンダートアミン系光安定剤の組み合わせは、(A)成分であるビニル系重合体の耐候性を顕著に改善するためより好ましい。
【0102】
老化防止剤を用いる場合、その配合量は、(A)成分100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましく、1〜100重量部がより好ましい。配合量が1重量部未満の場合には、耐候性の改善効果が十分でないことがあり、1000重量部を超えるとプライマー組成物のコストが高くなったり、接着性が低下する傾向がある。
【0103】
さらに、本発明のプライマー組成物には、耐候接着性をより向上させるために、耐候接着性改良剤(空気中の酸素と反応することにより重合をおこす不飽和基を分子中に有する化合物又は光重合性物質)を、必要に応じて添加することができる。これらは単独で用いても効果があり、併用してもよい。
【0104】
前記の空気中の酸素と反応することにより重合をおこす不飽和基を分子中に有する化合物とは、酸化重合反応性物質を示す。酸化重合反応性物質の具体例としては、不飽和高級脂肪酸とアルコールとのエステル化合物;1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5〜C8ジエン等のジエン系重合体や共重合体;さらには該重合体や共重合体の各種変性物(マレイン化変性体、ボイル油変性体等)等が挙げられる。
【0105】
前記の不飽和高級脂肪酸のエステル化合物の具体例を挙げると、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リカン酸、リシノール酸、アラキドン酸、プニカ酸、カヌルピン酸等の不飽和高級脂肪酸と、メタノール、エタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール、ソルビッド等の6価アルコールや、ケイ素原子に結合した有機基を介して水酸基を有する有機ケイ素化合物等から選択されるアルコールとの、縮合反応より得られるエステル化合物がある。これらのエステル化合物の中でも、不飽和高級脂肪酸とグリセリンとのエステルであるトリグリセリンエステルを主成分とする、亜麻仁油、桐油、大豆油、アサ実油、イサノ油、ウルシ核油、エゴマ油、オイチシカ油、カヤ油、クルミ油、ケシ油、サクランボ種子油、ザクロ種子油、サフラワー油、タバコ種子油、トウハゼ核油、ゴム種子油、ヒマワリ種子油、ブドウ核油、ホウセンカ種子油、ミツバ種子油等の乾性油が、安価で、簡便に入手できるためにより好ましい。前記の乾性油の中でも、エレオステアリン酸、リカン酸、プニカ酸、カヌルピン酸等の共役系不飽和高級脂肪酸のトリグリセリンエステルを主成分として有する、桐油、オイチシカ油、ザクロ種子油、ホウセンカ種子油等は、耐候性改善効果が高いためにより好ましい。
この空気中の酸素と反応することにより重合をおこす不飽和基を分子中に有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0106】
上記の光重合性物質とは、つまり、光を照射することによって分子内の二重結合が活性化することにより、重合反応を起こす不飽和基を有する化合物である。
この光重合性物質中に含まれる光重合性不飽和基の代表例としては、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基、アセチレン性不飽和基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、シンナモイル基等を挙げることができるが、これらの中でもアクリロイル基又はメタクリロイル基が、光開始効率が高いために好ましい。
【0107】
前記アクリロイル基又はメタクリロイル基を感光基とする光重合性物質の例としては、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらの中でも(メタ)アクリレートが、種類が多く入手しやすい等の理由からより好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称するものである。
前記(メタ)アクリレートの具体例としては、官能基を2個有するプロピレン(又はブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、官能基を3個有するトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、官能基を4個以上有するペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、前記(メタ)アクリレートのオリゴマーも光重合性物質であり、当該オリゴマーの具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、等の分子量10000以下のオリゴエステルを挙げることができる。1分子中のアクリル系又はメタクリル系不飽和基の数は、2個以上が好ましく、3個以上がさらに好ましい。前記不飽和アクリル系化合物の耐候接着性改善効果は、官能基の数が多いほど大きい。
光重合性物質は、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0108】
耐候接着性改良剤を用いる場合、その配合量は、(A)成分100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましく、1〜100重量部がより好ましい。配合量が1重量部未満の場合には、耐候接着性の改善効果が十分でないことがあり、1000重量部を超えるとプライマー組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
【0109】
本発明のプライマー組成物には、粘度調整のために、各種充填材を必要に応じて添加することができる。
充填材の具体例としては、例えば、木粉、パルブ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、ケイソウ土、白土、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸マグネシウム、石英、アルミニウム微粉末、フリント粉末、亜鉛末等が挙げられる。これら充填材のうちでは、沈降性シリカ、ヒュームシリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等が好ましい。これらの充填材は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
充填材を用いる場合、その配合量は、接着性の点から、(A)成分100重量部に対して、1〜10000重量部が好ましく、10〜1000重量部がより好ましい。
【0110】
本発明のプライマー組成物には、上記溶剤、老化防止剤、耐候接着性改良剤、充填材以外にも、他の添加剤を添加することができる。当該他の添加剤としては、例えば、生成する硬化被膜の引張特性を調整する物性調整剤、貯蔵安定性改良剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、タレ防止剤、滑剤、顔料、発泡剤等が挙げられる。このような添加剤の具体例は、例えば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特許公報第2512468号、特開昭64−22904号の各公報の明細書等に記載されている。
【0111】
本発明のプライマー組成物は、上記各成分を添加、混合すること等により得ることができる。
本発明のプライマー組成物は、通常採用されているコーティング法、例えば、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等を用いて、基材にコーティングできる。
本発明のプライマー組成物は、通常常温にて被膜形成しうるが、被膜形成速度を調整するために、各温度条件下で被膜形成を行っても良い。
【0112】
本発明のプライマー組成物は、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材のプライマーとして用いた場合に有効であり、特に架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材(例えば特開平11−80571号公報に開示されたビニル系重合体を主成分とするシーリング材)に適用した場合に、接着性が良好であるため好ましい。なお、ここでの「主成分」とは、ビニル系重合体が、シーリング材に用いる重合体全体の50重量%以上を占めることを意味する。
【0113】
本発明のプライマー組成物は、鉄,ステンレススチール,アルミニウム,ニッケル,亜鉛,銅等の各種金属、アクリル樹脂,フェノール樹脂,エポキシ樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリブチレンテレフタレート樹脂,アルカリ処理されたフッ素樹脂等の合成樹脂材料、ガラス,セラミック,セメント,モルタル等の無機材料、及び、変性シリコーン系,シリコーン系,ポリウレタン系,アクリルウレタン系,ポリサルファイド系,変性ポリサルファイド系,ブチルゴム系,アクリル系,SBR系,含フッ素系,イソブチレン系等のシーリング材と、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材とを、強固に接着させることができる。特に困難とされていた先打ちシリコーン系シーリング材等のシリコーンゴムに対する接着性を著しく改善できる。
【0114】
<用途>
本発明のプライマー組成物の用途は、特に限定されないが、建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、接着剤、弾性接着剤、コーティング材、ガスケット、注型材料、各種成形材料、人工大理石、及び、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車や船舶、家電等に使用される防振・制振・防音・免震材料、自動車部品、電機部品、各種機械部品等において使用される液状シール剤等の、様々な用途のプライマーとして利用可能である。なかでも、接着剤、シーリング材、液状ガスケットのプライマーとして、より好適に利用可能である。
【発明の効果】
【0115】
本発明のプライマー組成物は、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材等に適用した場合に、各種基材に対する接着性、及び、シリコーン系シーリング材に対する打継ぎ性等を著しく改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0116】
以下に本発明を実施例に基づき説明するが、下記実施例に限定されるものではない。
下記合成例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804;昭和電工製)、GPC溶剤としてクロロホルムを用いた。
また、合成例において調製された重合体の粘度は、(株)トキメック社製BS型粘度計を用いて、温度23℃で2rpmにおける粘度を測定した。
【0117】
(合成例1)
末端にハロゲンを有するポリ(アクリル酸n−ブチル)の合成
50mlフラスコに、臭化第一銅0.63g(4.4mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン0.76g(4.4mmol)、アセトニトリル5ml、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.6g(4.4mmol)、アクリル酸n−ブチル44.7g(349mmol)を仕込み、凍結脱気をおこなった後、窒素雰囲気下、70℃で7時間反応させた。活性アルミナのカラムを通して銅触媒を除去精製することにより、末端にBr基を有する重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量は10700、分子量分布1.15であった。
【0118】
末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)の合成
窒素雰囲気下、200mlフラスコに、上記で得た末端にBr基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)35g、ペンテン酸カリウム2.2g(16.1mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)35mlを仕込み、70℃で4時間反応させた。反応混合液中の未反応のペンテン酸カリウム及び生成した臭化カリウムを水抽出精製により除去し、末端にアルケニル基を有する重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量は11300、分子量分布1.12であった。またH−NMR分析より求めた重合体1分子あたりのアルケニル基の個数は1.82個であった。
【0119】
末端に架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)の合成
200ml耐圧反応管に、上記で得た末端にアルケニル基を有する重合体15g、メチルジメトキシシラン1.8ml(14.5mmol)、オルトギ酸メチル0.26ml(2.4mmol)、白金ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)10−4mmolを仕込み、100℃で4時間反応させ、末端に架橋性シリル基を有する重合体を得た。得られた重合体の粘度は44Pa・sであり、数平均分子量は11900、分子量分布1.12であった。またH−NMR分析により求めた重合体1分子あたりの架橋性シリル基の個数は1.46個であった。
【0120】
(合成例2)
水酸基末端ポリプロピレンオキシドの合成
オートクレーブに、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛−グライム錯体0.04g、ジプロピレングリコール2.0gのTHF溶液、プロピレンオキシド9.6gを添加し、窒素雰囲気下、76℃で反応させた。その後、プロピレンオキシド145.2gを反応系に追加した。未反応モノマーと溶剤を回収、精製し、油状の生成物150gを得た。得られた生成物は、GPC分析で単一ピークを示し、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。またその水酸基価は11.8mgKOH/gであった。
【0121】
不飽和基末端ポリプロピレンオキシドの合成
上記で得られた水酸基末端ポリプロピレンオキシド120gに、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(28wt%)5.8g(30.2mmol)を加え、オートクレーブ中で130℃で1時間反応させた後、減圧脱揮した。窒素雰囲気下に戻し、塩化アリル2.8g(36.2mmol)を添加し、2時間反応させた。この反応混合物をヘキサンに溶解し、ケイ酸アルミニウムで吸着処理した後、ヘキサンを減圧留去することにより、不飽和基末端ポリプロピレンオキシドを得た。
【0122】
架橋性シリル基末端ポリプロピレンオキシドの合成
上記で得られた不飽和基末端ポリプロピレンオキシド120gを、耐圧ガラス製反応容器に仕込み、塩化白金酸のイソプロパノール溶液(25gのHPtCl・6HOを500gのイソプロパノールに溶解したもの)0.02gを添加後、30分間攪拌した。メチルジメトキシシラン2.1g(20.2mmol)を滴下し、90℃で2時間反応させた。減圧することにより揮発分を除去し、架橋性シリル基末端ポリプロピレンオキシドを得た。この重合体の粘度は6Pa・sであり、数平均分子量は17300、分子量分布は1.14であった。
【0123】
(実施例1〜4及び比較例1〜3)
合成例1で得られた(A)成分の架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体、(B)成分のシランカップリング剤であるγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、商品名:A−1120)、又は、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー(株)製、商品名:A−1310)、(C)成分のシラノール縮合触媒である有機チタン酸エステル類であるテトラ−n−ブチルチタネート(和光純薬工業(株)製)、又は、有機錫化合物であるジブチル錫ビスアセチルアセトナート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタンU−220H)、(D)成分のシリコーン樹脂である水酸基含有シリコーンレジン(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:233FLAKE)、及び、溶剤としてn−ヘキサン(和光純薬工業(株)製)、トルエン(和光純薬工業(株)製)を、下記表1に示す重量比で混合し、プライマー組成物を調製した。
【0124】
(実施例5)
合成例1で得られた(A)成分の架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体、(B)成分のシランカップリング剤であるγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、商品名:A−1120)、又は、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー(株)製、商品名:A−1310)、(C)成分のシラノール縮合触媒である有機チタン酸エステル類であるテトラ−n−ブチルチタネート(和光純薬工業(株)製)、又は、有機錫化合物であるジブチル錫ビスアセチルアセトナート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタンU−220H)、(D)成分のシリコーン樹脂である水酸基含有シリコーンレジン(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:233FLAKE)、合成例2で得られた(E)成分の架橋性シリル基を少なくとも1個有するポリエーテル系重合体、及び、溶剤としてn−ヘキサン(和光純薬工業(株)製)、トルエン(和光純薬工業(株)製)を、下記表1に示す重量比で混合し、プライマー組成物を調製した。
【0125】
一方、以下の方法により(A)成分のビニル系重合体を含有するシーリング材の主剤と硬化剤を作成し、このシーリング材を用いて接着性試験を行った。
合成例1で得られた(A)成分の架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体100重量部に対して、可塑剤としてジイソデシルフタレート(新日本理化(株)製、商品名:サンソサイザーDIDP)50重量部、エポキシ系可塑剤(新日本理化(株)製、商品名:サンソサイザーE−PS)20重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR)120重量部、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名:ホワイトンSB)20重量部、チクソ性付与剤(楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305)2重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:チヌビン327)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(三共(株)製、商品名:サノールLS770)1重量部を、それぞれ計量、混合して充分混練りした後、3本ペイントロールで3回混練して、得られた組成物を主剤とした。
また、オクチル酸錫(日東化成製、商品名:U−28)/ラウリルアミン(=3重量部/0.75重量部)、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR−820)10重量部を、それぞれ計量、混合し、小型ホモジナイザーで混練して、得られた組成物を硬化剤とした。
【0126】
接着性試験は、以下の方法により行い、評価した。JIS A−5758に準拠したフロートガラス(広苑社製:日本シーリング材工業会指定、寸法(cm):5×5×0.5)を、アセトン(和光純薬工業(株)製)で洗浄し、表1のプライマー組成物を1回塗布した。また、十分に硬化養生された、寸法(cm):4×3×10の大きさのシリコーン系シーリング材(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:トスシール361)をカッターナイフで2つに切断し(寸法(cm):2×3×10)、その切断面をトルエン(和光純薬工業(株)製)で洗浄した後に、表1のプライマー組成物を1回塗布した。23℃で30分間以上放置し、被膜形成した各プライマー層上に、上記のビニル系重合体シーリング材の主剤と硬化剤を主剤/硬化剤=100/10の重量比で秤量して充分混練したものを、5mmの厚さで塗布し、室温(23℃)で硬化させた。養生条件はいずれも、23℃×7日間である。養生後、接着面に切り込みを入れて、切り込み部位を手で掴み、約90度に引っ張りながら、接着界面をカッターナイフで切り込みながら手剥離試験を行った。剥離された基材の表面を観察し、接着面全体に対する、凝集破壊した部分の面積比率を凝集破壊率(%)とした。プライマー組成物の配合組成、及び、接着性試験の測定結果を表1に示す。
【0127】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のプライマー組成物は、架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を主成分とするシーリング材等に適用した場合に、各種基材に対する接着性、及び、シリコーン系シーリング材に対する打継ぎ性等を著しく改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で示される架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
{式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}、
(B)シランカップリング剤、及び、
(C)シラノール縮合触媒
を含有してなるプライマー組成物。
【請求項2】
さらに、(D)シリコーン樹脂を含有してなる請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
さらに、(E)一般式(1)で示される架橋性シリル基を少なくとも1個有するポリエーテル系重合体を含有してなる、請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) (1)
{式中、R、Rは、同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
【請求項4】
前記(C)シラノール縮合触媒が、有機錫化合物及び/又は有機チタン酸エステル類である請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
(A)成分のビニル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8未満である請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
(A)成分のビニル系重合体の主鎖が(メタ)アクリル系重合体である、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
(A)成分のビニル系重合体の主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたものである、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項8】
(A)成分のビニル系重合体の主鎖が原子移動ラジカル重合法により製造されたものである、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項9】
(A)成分のビニル系重合体が、一般式(1)で示される架橋性シリル基を分子鎖末端に少なくとも1個有するものである、請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項10】
(A)成分のビニル系重合体が、以下の工程:
(1)有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒として、ビニル系モノマーをラジカル重合することにより、ハロゲンを末端に有するビニル系重合体を製造し、
(2)アルケニル基を有するオキシアニオンを反応させてハロゲンを置換することにより、末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を製造し、
(3)一般式(1)で示す架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を反応させる;
により得られる重合体である、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項11】
(E)成分のポリエーテル系重合体の主鎖が本質的にポリプロピレンオキシドである、請求項2〜10のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項12】
(B)成分のシランカップリング剤がアミノ基含有シランカップリング剤である、請求項1〜11のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項13】
シリコーン系シーリング材表面に対する打ち継ぎ用である、請求項1〜12のうちいずれか1項に記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2007−277311(P2007−277311A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102343(P2006−102343)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】