説明

プラスチックケース

【課題】本発明は、耐熱性の比較的低いポリ乳酸系重合体を主成分としながらも、商品等の収納物の出し入れが容易で、かつプラスチックケース自体のデザインを損なうことなく、商品等の出し入れ口におけるケースの太鼓化を防止しすることのできるプラスチックケースを提供せんとするものである。
【解決手段】プラスチックケースの外装体は、少なくとも5層からなるポリ乳酸系樹脂積層シートを用いて形成され、角筒状の胴部と前記胴部の両端開口部を覆う蓋部とを有するプラスチックケースにおいて、前記胴部の開口端の少なくとも一方に梁部を形成し、前記胴部に前記梁部を折り返して接着させてなるプラスチックケース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂積層シートを用いたプラスチックケースに関する。特に化粧品梱包用のプラスチックケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラスチック製品の多く、特にプラスチック包装材は、使用後すぐに廃棄されることが多く、その処理問題が指摘されている。一般包装用プラスチックとして代表的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等があげられるが、これら材料は燃焼時の発熱量が多く、燃焼処理中に燃焼炉を傷める恐れがある。さらに、現在でも使用量の多いポリ塩化ビニルは、その自己消化性のため燃焼することができない。また、このような焼却できない材料も含めプラスチック製品は埋め立て処理されることが多いが、その化学的、生物的安定性のためほとんど分解せず残留し、埋立地の寿命を短くする等の問題を起こしている。
【0003】
これに対し、PETの特性に比較的類似している樹脂であり、生分解性を有する樹脂として、ポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は、燃焼熱量はポリエチレンの半分以下、土中・水中で自然に加水分解が進行し、次いで微生物により無害な分解物となる。そこで、ポリ乳酸系重合体を主成分とするプラスチックケースの需要が高まっている。
【0004】
しかしながら、ポリ乳酸は従来の石油由来の原料、例えばPETに比べるとガラス転移点が約20℃低いという問題がある。通常、店頭において陳列する商品包装用のプラスチックケースは、包装経費を節約するために、肉薄のものが用いられている。従来のプラスチックケースの商品出し入れ口は、図2に示されるように、蓋部12の端部に形成された折返し部13を胴部11の開口部内に胴部に内接挿入して商品出し入れ口を閉じるようにされている。しかし、上述のような、図2に示される肉薄のポリ乳酸系重合体主体のプラスチックケースは、ガラス転移点の低さをケースの厚みで補うことができない。このため、ポリ乳酸シートを罫線加工して成るプラスチックケースの場合、ポリ乳酸シート自体の耐熱性不足から車両輸送中などに受ける熱により、シートが変形し胴部が膨れる現象、いわゆる太鼓化が起き易いという問題がある。その結果、図3に示されるように、商品の出し入れ口の折返し部13と胴部11との間隙15が大きく開いて、埃や虫などの異物が混入する虞が生じる。
【0005】
このケースの太鼓化を防止するため、商品の出し入れ口を粘着テープで止めるなどの方法が採られている。しかし、このテープ止めによる方法は、商品の出し入れの度に、テープの貼着及び剥離をすることになり、その操作は非常に繁雑である。しかも、用いるテープは、材質及びデザインにおいてケース素材のプラスチックシートとは異質のものであり、プラスチックケース自体のデザインを損なう問題もある。
【0006】
また、例えば、特許文献1にあるように、プラスチックケース胴部の開口端に差込み部を形成し、それを蓋部に形成されたスリットに差し込むことによって、胴部の太鼓化を防止する方法が提案されている。しかし、この方法は、常温ではある程度の効果が見られたが、車両輸送の際に受ける熱を想定した60℃以上の高温下では、必ずしもケース胴部の太鼓化を防止できるというものでは無かった。
【特許文献1】特開2000−85747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、上記の問題点を解決し、耐熱性の比較的低いポリ乳酸系重合体を主成分としながらも、商品等の収納物の出し入れが容易で、かつプラスチックケース自体のデザインを損なうことなく、商品等の出し入れ口におけるケースの太鼓化を防止することのできるプラスチックケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明は、以下(1)に示すものである。
【0009】
(1)ポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物からなる層A、層B及び層Cを有し、かつ、該層A、該層B、該層Cが、以下の条件を満たし、かつ、層A/層B/層C/層B/層Aの順に、順次積層されたことを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂積層シートを用いた角筒状の胴部と前記胴部の両端開口部を覆う蓋部とを有するプラスチックケースであり、
前記胴部の開口端に梁部を形成し、前記胴部に前記梁部を折り返し接着させてなることを特徴とするプラスチックケース、である。(図1)
7≧Xa(PLA)≧0、30≧Xb(PLA)≧10、100≧Xc(PLA)≧95
ただし、
Xa(PLA):該層Aを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
Xb(PLA):該層Bを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
Xc(PLA):該層Cを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
またより好ましい態様としてはさらに以下(2)を満たす場合である。
【0010】
(2)梁部の高さW(梁部の、胴部における両端開口部方向長さW)が、梁部接着部における胴部の開口部の長さLに対して5%以上、20%以下である、上記(1)に記載のプラスチックケース。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸をポリマーアロイとして積層することで、耐熱性、耐衝撃性に優れたポリ乳酸系樹脂積層シートを得ることができ、該シートを用いたプラスチックケースとすることで、耐熱性に優れバイオマス度の高いプラスチックケースを提供できる。さらに、本発明で得られるポリ乳酸系樹脂積層シートは、透明性が高く意匠性に優れているため、本発明のプラスチックケースは梱包用プラスチックケース、特に化粧品梱包用プラスチックケースに適している。また本発明のプラスチックケースは、胴部の開口端の少なくとも一方に梁部を形成し、前記胴部に前記梁部を折り返し接着させることで、胴部の垂直方向への剛性を高めることができる。その結果、胴部の膨れを抑制し、太鼓化の現象を軽減させる効果を持つ耐熱性に優れたプラスチックケースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、適度な製膜、延伸適性および実用的な機械特性を満足させるため、5万〜50万であることが好ましく、より好ましくは10万〜25万である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0014】
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として得ることができる構造を主たる構成成分とするポリマーであるが(つまりポリ乳酸を主体とするポリマーであるが)、乳酸以外の他の単量体(共重合成分)を含んでいてもよい。
【0015】
本発明のポリ乳酸系樹脂に用いられるかかる他の単量体(共重合成分)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記他の単量体(共重合成分)の共重合量は、ポリ乳酸を主体とするポリマーの全単量体成分(全共重合成分)100モル%に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
【0016】
本発明において、特に高い耐熱性を有するプラスチックケースを得るためには、ポリ乳酸系樹脂として乳酸成分の光学純度が高いものを用いることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂の総乳酸成分のうち、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることがより好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが特に好ましい。
【0017】
ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、詳細は後述するが、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0018】
ポリ乳酸系樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。ポリ乳酸系樹脂の融点は通常、乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点120℃以上のポリ乳酸系樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点150℃以上のポリ乳酸系樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより得ることができる。
【0019】
本発明におけるポリ(メタ)アクリレート系樹脂とは、アクリレートおよびメタクリレートから選ばれる少なくとも1種の単量体を構成単位とするものであり、2種以上の単量体を共重合して用いても構わない。ポリ(メタ)アクリレートを構成するアクリレートおよびメタクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノブチルアクリレートなどのアクリレート、およびメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのメタクリレートが挙げられるが、より高い高温剛性を付与するには、ポリメチルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0020】
これらの単量体を重合あるいは共重合する方法については特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等の公知の重合方法を用いることができる。
【0021】
ポリ(メタ)アクリレート系樹脂としてポリメチルメタクリレートを用いる場合、ポリ乳酸系樹脂との相溶性の観点、また、積層製膜時における各層の粘度調整の観点から、JIS K7210に準じて230℃で測定したポリメチルメタクリレートの流動性が、1〜22g/(10min)であるものが好ましく、1.5〜15g/(10min)であるものがさらに好ましく、2〜10g/(10min)であるものが特に好ましい。
【0022】
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリレート系樹脂は、重量平均分子量が2万〜50万であることが好ましく、10万〜20万であることがより好ましい。重量平均分子量が2万未満ではシートまたは成形品の強度が低下する場合があり、重量平均分子量が50万を超えると積層製膜時に粘度斑の発生や、成形時の流動性が低下する場合がある。
【0023】
本発明のプラスチックケースに用いるポリ乳酸系樹脂積層シートは、上記したポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物からなる層A、層B及び層Cを有し、かつ、該層A、該層B、該層Cが、以下の条件を満たし、かつ、層A/層B/層C/層B/層Aの順に、順次積層されたことを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂積層シートである。
7≧Xa(PLA)≧0、30≧Xb(PLA)≧10、100≧Xc(PLA)≧95
ただし、
Xa(PLA):該層Aを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
Xb(PLA):該層Bを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
Xc(PLA):該層Cを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
Xa(PLA)、Xb(PLA)、Xc(PLA)のいずれかが上記関係式を満たさない場合、シートの耐熱性、耐衝撃性、また植物度を全て満足させることができなくなることがあり、プラスチックケースの耐熱性も十分なものとならなくなることがある。
【0024】
つまり、ポリ乳酸系樹脂積層シート及びそれからなるプラスチックケースに所望の耐熱性を持たせるために、シートの全層にポリ(メタ)アクリレート系樹脂を高比率で配合すると、植物度が低くなってしまい、耐衝撃性も低下する。一般的にポリ乳酸系樹脂にポリ(メタ)アクリレート系樹脂を配合し均一に混合させると、ポリ乳酸系樹脂全体としての耐熱性は向上するが、耐衝撃性は悪化することが多い。
【0025】
以下に、ポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレートの含有量に関しての具体的な値を記す。
【0026】
該層Aについては、該層Aを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)をXa(PLA)とした時に、Xa(PLA)は0重量%以上7重量%以下が好ましく、より好ましくは、0重量%以上2重量%以下、さらに好ましくは0重量%以上1重量%以下である。Xa(PLA)が7重量%を上回った場合、耐熱性が低くなってしまうことがあるために好ましくない。さらに耐熱性の観点からは、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂に比べ耐熱性が低い特性を有するポリ乳酸系樹脂組成物Xa(PLA)が0重量%であることがもっとも好ましい。
【0027】
また、該層Bについては、該層Bを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)をXb(PLA)とした時に、Xb(PLA)は10重量%以上30重量%以下が好ましく、より好ましくは、10重量以上20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上15重量%以下である。Xb(PLA)が30重量%より大きい場合、シートの耐熱性が不十分となることがあるために好ましくない。またXb(PLA)が10重量%より小さい場合、粘度斑が発生し外観が悪くなることがあるために好ましくない。
【0028】
また、該層Cについては、該層Cを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)をXc(PLA)とした時に、Xc(PLA)は95重量%以上100重量%以下が好ましく、より好ましくは97重量%以上100重量%以下、さらに好ましくは98重量%以上100重量%以下、最も好ましくは100重量%である。Xc(PLA)が95重量%より小さい場合、バイオマス度が低くなってしまい燃焼時発生する炭酸ガス量をあまり軽減できず、ポリ乳酸系樹脂を使用するメリットが薄れてしまう。
【0029】
また、本発明のプラスチックケースに用いるポリ乳酸系樹脂積層シートは、以下の条件を満たすポリ乳酸系樹脂積層シートである場合がより好ましい。
【0030】
40≧Ya≧20、30≧Yb≧10、70≧Yc≧50
ただし、
Ya:シートの総厚みに対する該層Aの総厚み比率(%)
Yb:シートの総厚みに対する該層Bの総厚み比率(%)
Yc:シートの総厚みに対する該層Cの総厚み比率(%)
樹脂積層シートの総厚みに対する該層Aの総厚み比率(%)をYaとした場合、Yaは20%以上40%以下であることが好ましい。より好ましくは20%以上30%以下であり、さらに好ましくは20%以上26%以下である。ここでYaは、樹脂積層シートの総厚みに対する2層の層Aを合計した厚みの比率(%)である。Yaが40%より大きい場合は、シート全体の植物度が低くなることがある。また、20%より小さい場合は、耐熱性が低くなってしまうことがある
樹脂積層シートの総厚みに対する該層Bの総厚み比率(%)をYbとした場合、Ybは10%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは12%以上28%以下であり、さらに好ましくは15%以上25%以下である。ここでYbは、樹脂積層シートの総厚みに対する2層の層Bを合計した厚みの比率(%)である。Ybが30%より大きい場合は、シート全体のバイオマス度が低くなることがある。また、10%より小さい場合は、粘度斑が発生してしまうことがある。
【0031】
樹脂積層シートの総厚みに対する該層Cの厚み比率(%)をYcとした場合、Ycは50%以上70%以下であることが好ましい。より好ましくは55%以上65%以下であり、さらに好ましくは58%以上63%以下である。Ycが50%より小さい場合は、シート全体のバイオマス度が低くなることがあるために好ましくない。また、70%より小さい場合は、耐熱性が低くなってしまうことがあるために好ましくない。
【0032】
本発明の成形体に用いるポリ乳酸系樹脂積層シートは、層A/層B/層C/層B/層Aの順に順次積層されたことを特徴としている。
【0033】
層C/層B/層A/層B/層Cのように、PLAの含有量が多い層を外層とした場合、シート表面の耐熱性が不足するために、溶融状態にて粘着性を生じる問題が発生することがある。
【0034】
また、層A/層C/層B/層C/層A、もしくは、層B/層A/層C/層A/層B とした場合、隣接する層間のPLA含有量が大きく異なるために、溶融状態にて各層間に大きな粘度差が生じ、厚み斑が大きく、ポリ乳酸系樹脂積層シートの外観品位が劣りやすく、結果としてプラスチックケースの外観品位が劣ることがある。
【0035】
また層Bを欠き、2種3層構成とした場合、すなわち、層A/層C/層A、もしくは、層C/層A/層Cであった場合も、隣接する層間のPLA含有量が大きく異なるために、溶融状態にて各層間に極度の粘度差が生じやすく、フローマーク等極度のポリ乳酸系樹脂積層シートに外観不良を発生させやすく、結果としてプラスチックケースに外観不良が発生しやすくなることがある。
【0036】
つまり本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートは、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂量が多い場合に発現する耐熱性と、ポリ乳酸系樹脂量が多い場合に発現する植物度・耐衝撃性、といった物性を両立するため、各層のポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂の配合量を特定範囲に制御した積層構成としている。さらに、外層(A層)と内層(C層)の粘度差の違いに起因する外観不良(フローマーク等)の発生を抑制するため、中間層(B層)を設けることで、隣り合う各層の粘度差を低減してポリ乳酸形樹脂積層シートの外観を向上し、結果として該シートから構成されるプラスチックケースの外観を向上した発明である。
【0037】
ポリ乳酸系樹脂はバイオマス、つまり再生可能な生物由来の資源であり、具体的には、トウモロコシやサツマイモなどの植物を原料として製造されている。よって、該樹脂の使用がそのままシートのバイオマス度向上につながる。バイオマスは空気中の二酸化炭素と水から植物が生み出すものなので、分解されても燃やされても大気中の二酸化炭素を増加させることがない。したがって、近年懸念されている地球温暖化防止に役立っており、また、石油資源の枯渇にも対応できる。
【0038】
本発明では、シートを積層構成とし、耐熱性向上に寄与する成分であるポリ(メタ)アクリレート系樹脂の各層への含有割合の関係を規定することで、耐熱性を維持したまま、高いバイオマス度とすることが可能となった。
【0039】
各層におけるポリ乳酸系樹脂やポリ(メタ)アクリレート系樹脂の正確な含有量を特定する方法の一つに、NMRによる特定が挙げられる。例えば、ポリ乳酸とポリメチルメタクリレートの配合量を特定するには、重クロロホルム溶媒中55℃でH核のNMR測定を行い、ポリ乳酸に由来するピーク(例えばメチン基に由来するピーク)とポリメチルメタクリレートに由来するピーク(例えばメトキシ基に由来するピーク)の強度比から算出することができる。H核のピークが重複して算出できない場合は、さらに13C核の測定を行い、特定することができる。
【0040】
本発明にかかるポリ乳酸系樹脂組成物は、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することも可能であるが、溶媒への原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要で、実用的な製造方法である、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法を採用することが好ましい。
【0041】
その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。またその混合順序についても特に制限はなく、例えばポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂をドライブレンド後、溶融混練機に供する方法や、予めポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸系樹脂とを溶融混練する方法等が挙げられる。また必要に応じて、その他の添加剤を同時に溶融混練する方法や、予めポリ乳酸系樹脂とその他の添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂とを溶融混練する方法を用いてもよい。また溶融混練時の温度は190℃〜250℃の範囲が好ましく、またポリ乳酸の劣化を防ぐ意味から、200℃〜240℃の範囲とすることがより好ましい。
【0042】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートの層Aおよび/または層Bおよび/または層Cには、本発明の目的、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、ポリ乳酸系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂以外の樹脂を混合してもよい。例えば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニル化合物などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0043】
その中でも特に、ガラス転移温度が60℃以上となるポリビニル化合物は、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐熱性を向上させる効果があるために好ましい。ガラス転移温度が60℃以上となるポリビニル化合物の具体例としては、ポリスチレン、ポリ(4−アセチルスチレン)、ポリ(2−メチルスチレン)、ポリ(3−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(4−メトキシスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)(ポリビニルフェノール)、ポリ(2−ヒドロキシメチルスチレン)、ポリ(3−ヒドロキシメチルスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシメチルスチレン)等の各種スチレン系重合体、およびポリ(ベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)、ポリ(4−エトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(2−メトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−メトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−フェニルベンゾイルオキシエチレン)等の各種ポリビニルエステル等が挙げられるが、これらの中でもポリ乳酸系樹脂との相溶性の観点からポリ(4−ヒドロキシスチレン)(ポリビニルフェノール)を用いるのが好ましい。
【0044】
本発明のプラスチックケースに用いるポリ乳酸系樹脂積層シートは、さらなる耐衝撃性付与、成形性向上の観点から、ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂を、積層された各層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物100重量%に対して、各層毎に好ましくは0.1重量%以上40重量%以下、より好ましくは0.2重量%以上30重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上20重量%以下含有する層を少なくとも1層有するのがよい。
【0045】
該層は前記層Aおよび/または前記層Bおよび/または前記層Cおよび/または前記層A、層B、層C以外の第4の層Dのいずれであっても構わない。かかるガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂の含有量が、該ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂を含有する層におけるポリ乳酸系樹脂組成物100重量%に対して40重量%を超える層を有すると、耐熱性、透明性が低下することがある。またかかるガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂の含有量が、該ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂を含有する層におけるポリ乳酸系樹脂組成物100重量%に対して0.1重量%未満である層を有すると、耐衝撃性の改良効果が低くなることがある。
【0046】
ポリマーの耐衝撃性と柔軟性は相関しており、ポリマーの柔軟性を評価する一つの目安としてガラス転移点があげられる。本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートの耐衝撃性を向上させるために、該ポリエステル系樹脂は、ポリ乳酸のガラス転移温度を考慮して、ガラス転移温度が60℃以下であることが好ましい。
【0047】
該ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂の重量平均分子量には特に制限は無いが、主に耐熱性を維持する観点とポリ乳酸系樹脂との相溶性の観点から、それぞれ下限と上限の好ましい値が存在し、2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000である。
【0048】
このガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂の種類については特に制限は無いが、芳香族および/または脂肪族ポリエステル、ポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントで構成される樹脂組成物であることが好ましい。
【0049】
ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンセバケート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/サクシネート、ポリプロピレンセバケート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/サクシネートなどが挙げられる。
【0050】
ポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントで構成される樹脂組成物は、ポリエーテル系および/またはポリエステル系樹脂とポリ乳酸系樹脂のブロック共重合体であることがさらに好ましい。またこのブロック共重合体一分子中に数平均分子量が1,500以上のポリ乳酸セグメントを一つ以上有することが好ましい。この場合、該ポリ乳酸セグメントが、母材であるポリ乳酸系重合体から形成される結晶中に取り込まれることで母材につなぎ止められる作用を生じ、該ブロック共重合体のブリードアウトを十分に抑制することができる。
【0051】
ポリエーテルの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体などが挙げられる。
【0052】
ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンセバケート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/サクシネート、ポリプロピレンセバケート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/サクシネートなどが挙げられる。
【0053】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートの層Aおよび/または層Bおよび/または層Cには、ポリ乳酸系樹脂の結晶の過大な成長を抑制し、微細化するため、また、結晶化速度を促進するために透明核剤を混合してもよい。かかる透明核剤は、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が良好である必要があり、また、結晶化速度を高め、結晶化した時は該樹脂の透明性を維持する必要がある。このような透明核剤としては、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール及び脂肪族カルボン酸エステルが挙げられる。
【0054】
透明核剤として用いられる脂肪族カルボン酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミドのようなN−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族ビスカルボン酸アミド類、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N´−ジステアリルテレフタル酸アミドのようなN−置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類、N−ブチル−N´−ステアリル尿素、N−プロピル−N´−ステアリル尿素、N−ステアリル−N´−ステアリル尿素、N−フェニル−N´−ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素のようなN−置換尿素類が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でも、脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、脂肪族ビスカルボン酸アミド類が好適に用いられ、特に、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドが好適に用いられる。
【0055】
透明核剤として用いられる脂肪族カルボン酸塩の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸水素カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸銀等のラウリン酸塩、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸水素カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸銀等のミリスチン酸塩、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸鉛、パルミチン酸タリウム、パルミチン酸コバルト等のパルミチン酸塩、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸タリウム、オレイン酸銅、オレイン酸ニッケル等のオレイン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸タリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ベリリウム等のステアリン酸塩、イソステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸ニッケル等のイソステアリン酸塩、ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、べヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸バリウム、ベヘニン酸アルミニウム、べヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸ニッケル等のベヘニン酸塩、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ニッケル等のモンタン酸塩等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に、ステアリン酸の塩類やモンタン酸の塩類が好適に用いられ、特に、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸カルシウムが好適に用いられる。
【0056】
透明核剤として用いられる脂肪族アルコールの具体例としては、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の脂肪族モノアルコール類、1,6−ヘキサンジオール、1,7−へプタンジール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族多価アルコール類、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の環状アルコール類等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に脂肪族モノアルコール類が好適に用いられ、特にステアリルアルコールが好適に用いられる。
【0057】
透明核剤として用いられる脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ラウリン酸セチルエステル、ラウリン酸フェナシルエステル、ミリスチン酸セチルエステル、ミリスチン酸フェナシルエステル、パルミチン酸イソプロピリデンエステル、パルミチン酸ドデシルエステル、パルミチン酸テトラドデシルエステル、パルミチン酸ペンタデシルエステル、パルミチン酸オクタデシルエステル、パルミチン酸セチルエステル、パルミチン酸フェニルエステル、パルミチン酸フェナシルエステル、ステアリン酸セチルエステル、べヘニン酸エチルエステル等の脂肪族モノカルボン酸エステル類、モノラウリン酸グリコール、モノパルミチン酸グリコール、モノステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのモノエステル類、ジラウリン酸グリコール、ジパルミチン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのジエステル類、モノラウリン酸グリセリンエステル、モノミリスチン酸グリセリンエステル、モノパルミチン酸グリセリンエステル、モノステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのモノエステル類、ジラウリン酸グリセリンエステル、ジミリスチン酸グリセリンエステル、ジパルミチン酸グリセリンエステル、ジステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのジエステル類、トリラウリン酸グリセリンエステル、トリミリスチン酸グリセリンエステル、トリパルミチン酸グリセリンエステル、トリステアリン酸グリセリンエステル、パルミトジオレイン、パルミトジステアリン、オレオジステアリン等のグリセリンのトリエステル類等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でもエチレングリコールのジエステル類が好適であり、特にエチレングリコールジステアレートが好適に用いられる。
【0058】
これらの透明核剤の、各層あたりにおける具体的な添加量は、各層を構成する組成物全体100重量%に対して、0.1〜2.5重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜2重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。0.1重量%より小さいと、透明核剤としての効果が不十分となり、耐熱性が低くなることがある。2.5重量%より大きいと、透明性が低下するばかりか、外観や物性の変化を来す場合がある。
【0059】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートには、各種粒子を含有することができる。その平均粒子径は0.01〜10μmであることが好ましい。また、各種粒子の含有量はシート全体のポリ乳酸系樹脂100重量%に対して0.01〜10重量%であることが好ましい。平均粒子径は、より好ましくは0.02〜5μm、さらに好ましくは0.03〜2μmである。粒子の含有量は、シート全体のポリ乳酸系樹脂100重量%に対しては、より好ましくは0.02〜1重量%、さらに好ましくは0.03〜0.5重量%である。平均粒子径が0.01μmより小さいと、または粒子の含有量がシート全体のポリ乳酸系樹脂100重量%に対して、0.01重量%より少ないと、成形金型とフィルムとの滑りが悪くなり、成形ムラが生じたり、フィルムが破断したり、また、金型からの離型性が悪くなるなど、成形性が不良となることがある。一方、平均粒子径が10μmより大きいと、または混合質量部が10重量%より多いと、フィルムの透明性が低下することがある。
【0060】
かかる粒子の種類は、目的や用途に応じて適宜選択され、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。もちろん、各粒子は、それぞれ単独で使用しても、混合して用いても構わない。混合して用いる場合は、それぞれの種類の粒子が、上記平均粒子径の範囲内となるようにすればよく、また、全ての種類の粒子の総含有量が上記範囲内となるようにすればよい。
【0061】
無機粒子としては、特に限定されないが、シリカ等の酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の各種硫酸塩、カオリン、タルク等の各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の各種酸化物、フッ化リチウム等の各種塩等からなる微粒子を使用することができる。
【0062】
また有機粒子としては、シュウ酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などからなる微粒子が使用される。架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体からなる微粒子が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
【0063】
重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを反応系内に添加し、さらにリン化合物を添加する公知の方法で生成される粒子も使用される。
【0064】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートの全体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは50〜2000μm、より好ましくは200〜1000μm、特に好ましくは250〜500μmである。
【0065】
かかるフィルム厚みが50μmより小さい場合は、成形時にフィルム破れが発生しやすくなり成形性が悪化するだけでなく、成形できた場合でも成形体の強度が弱くなってしまうといった問題が発生しやすくなる。また、フィルム厚みが2000μmより大きい場合は、成形前の加熱が長時間必要になってしまい、うまく成形できた場合でも脆くなりやすいといった問題が発生しやすくなる。
【0066】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
【0067】
また、ブロッキング防止、帯電防止、離型性付与、耐傷付き性改良などの目的で、表面に主にシリコーン系のコーティング機能層を設けることが有効であり、この機能層の形成には、シートの製造工程内で行うインラインコーティング法、シートの巻き取り後に行うオフラインコーティング法を用いることができる。
【0068】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートは、シートおよびこれを用いて得られる成形体の分解による強度低下を抑制し、耐熱性を良好とする点から、該積層シートのカルボキシル基末端濃度が30当量/(10kg)以下であることが好ましく、より好ましくは20当量/(10kg)以下、さらに好ましくは10当量/(10kg)以下である。ポリ乳酸系樹脂中のカルボキシル基末端濃度が30当量/(10kg)を超える場合には、該積層シートおよび成形体が高温多湿条件下あるいは熱水との接触条件下で使用される際に加水分解により強度が低下し、容器などの成形体が脆くなり割れやすい等といった問題が発生する場合がある。
【0069】
該積層シートのカルボキシル基末端濃度を30当量/(10kg)以下とする方法としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂の合成時の触媒や熱履歴により制御する方法、シート製膜時の押出温度を低下あるいは滞留時間を短時間化する等熱履歴を低減する方法、反応型化合物を用いカルボキシル基末端を封鎖する方法等が挙げられる。
【0070】
反応型化合物を用いカルボキシル基末端を封鎖する方法では、シート中のカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されていることが好ましく、全量が封鎖されていることがより好ましい。反応型化合物としては、例えば、脂肪族アルコールやアミド化合物等の縮合反応型化合物やカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等の付加反応型化合物が挙げられるが、反応時に余分な副生成物が発生しにくい点で付加反応型化合物が好ましい。
【0071】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートは、該積層シート中に含まれるラクチド量がシート全体のポリ乳酸系樹脂100重量%に対して0.5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下である。該積層シート中に含まれるラクチド量が、シート全体のポリ乳酸系樹脂100重量%に対して0.5重量%を超えると、該積層シート中に残留しているラクチドが粉末状あるいは液状として析出したときに、ハンドリング性、透明性が悪化する場合がある。また、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を進行させ、シートの耐経時性が悪化する場合がある。
【0072】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートにおける、シート中に含まれるラクチドとは、上述したポリ乳酸を主体とするポリマーを構成する乳酸成分の環状2量体を意味するものであって、LL−ラクチド、DD−ラクチドおよびDL(メソ)−ラクチドが挙げられる。
【0073】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートを構成する樹脂組成物全体に対するポリ乳酸系樹脂の含有量は、50重量%以上75重量%以下が好ましく、より好ましくは65重量%以上75重量%以下である。50重量%未満であるとバイオマス度が低くなってしまい燃焼時発生する炭酸ガス量をあまり軽減できず、ポリ乳酸系樹脂を使用するメリットが薄れてしまう。75重量%を超えてしまうと、耐熱性に劣る場合がある。
【0074】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートは、ヘイズが0%以上10%以下であることが好ましい。より好ましくは0%以上5%以下である。ヘイズが10%を超えると、透明性が悪化し、本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートを容器類に用いた際に、容器の内容物を確認することができなくなる場合があるために好ましくない。ヘイズは低いほど透明性が向上するために好ましいが、ヘイズを10%以下とすることで、透明性としては十分なポリ乳酸系樹脂積層シートとすることができる。本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートのヘイズを0%以上10%以下とすることにより、本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートを通してシートの内容物を観察することが可能となるため、本発明のシートを商品の展示包装用に用いられる包装材料やお弁当箱、飲料カップなどの食品容器類などに好適に使用することができる。ポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂は相溶性に優れるため、これらから形成されるポリ乳酸系樹脂積層シートは低ヘイズのシートとすることができる。さらに本願発明では、中間層を設けることでシートの外観欠陥も低減しているため、低ヘイズ性に非常に優れたシートとすることができる。
【0075】
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートは、主に耐経時性の観点から、延伸シートとしてもよく、その場合は、二軸延伸シートとすることが好ましい。
【0076】
延伸シートを得る場合は、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの既存の延伸シート製造法により行うことができるが、成形性と耐熱性を両立するシートの配向状態を制御しやすいこと、また、製膜速度を高速にできることから逐次二軸延伸法が好ましい。
【0077】
次に、ポリ乳酸系樹脂積層シートを製造する方法を具体的に説明する。
【0078】
本発明のポリ乳酸系樹脂であるポリ乳酸を主体とするポリマーは、次のような方法で得ることができる。原料としては、L−乳酸またはD−乳酸の乳酸成分を主体とし、前述した乳酸成分以外のヒドロキシカルボン酸を併用することができる。またヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、ラクチド、グリコリド等を原料として使用することもできる。更にジカルボン酸類やグリコール類等も使用することができる。
【0079】
ポリ乳酸を主体とするポリマーは、上記原料を直接脱水縮合する方法、または上記環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。
【0080】
また、ラクチド等の環状エステル中間体をオクチル酸錫等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
【0081】
以下に本発明の無延伸のポリ乳酸系樹脂積層シートを得る場合、さらにはテンター式逐次二軸延伸を行う場合の好ましい製膜方法を示すが、本発明は、かかる製膜方法に限定されるものではない。
【0082】
上記ポリ乳酸を主体とするポリマーであるポリ乳酸系樹脂と、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂を、性状に応じた計量装置を用いて、層A用、層B用、層C用として、それぞれ所定の比率で、独立した別々の二軸押出機に供給する。二軸押出機としては、ポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂を未乾燥で供給可能であるため、ベント式二軸押出機を好ましく用いることができる。供給されたポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂は、溶融粘度に応じて150〜300℃で溶融し、ダイ外またはダイ内で複合化し、例えばTダイ法によりリップ間隔2〜3mmのスリット状の口金から金属製冷却キャスティングドラム上に、直径0.5mmのワイヤー状電極を用いて静電印加して密着させ、無配向キャストシートを得る。
【0083】
金属製冷却ロールの表面温度の好ましい範囲は0〜30℃であり、より好ましい範囲は3〜25℃であり、さらに好ましい範囲は5〜20℃である。金属製冷却ロールの表面温度をこの範囲に設定することで良好な透明性を発現できる。
【0084】
延伸シートを得る場合は、こうして得られた無延伸キャストシートを加熱ロール上に搬送することによって縦延伸を行う温度まで昇温する。昇温には赤外線ヒーターなど補助的な加熱手段を併用しても良い。延伸温度の好ましい範囲は80〜95℃であり、より好ましくは85〜90℃である。このようにして昇温した未配向シートを加熱ロール間の周速差を用いてシート長手方向に1段もしくは2段以上の多段で延伸を行う。合計の延伸倍率は1.2〜3.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0倍である。
【0085】
このように一軸延伸したシートをいったん冷却した後、シートの両端部をクリップで把持してテンターに導き、幅方向の延伸を行う。延伸温度は75〜90℃が好ましく、より好ましくは80〜85℃である。延伸倍率は1.2〜3.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0倍である。
【0086】
シートの幅方向の性能差を低減するためには、長手方向の延伸温度よりも1〜15℃低い温度で幅方向の延伸を行うことが好ましい。
【0087】
さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0088】
次に、この延伸シートを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。主にシートに熱寸法安定性を付与する観点、また同時にシートに含有しているラクチドを飛散させラクチド量を低減させる観点から、好ましい熱処理温度は100〜160℃であり、より好ましくは120〜150℃である。時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。弛緩率は、幅方向の熱収縮率を低下させる観点から1〜8%であることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。熱固定処理を行う前にいったんシートを冷却することがさらに好ましい。
【0089】
さらに、シートを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、シートを冷やして巻き取り、目的とするポリ乳酸系樹脂積層シートを得る。
【0090】
上記のような製造方法を採用することにより、本発明のプラスチックケースに用いるポリ乳酸系樹脂積層シートを得ることができる。なお、本発明のプラスチックケースを製造するに際しては、延伸シートからプラスチックケースを形成しても、無延伸シートからプラスチックケースを形成しても構わないが、透明性と成形性において優位となる点から、無延伸シートからプラスチックケースを形成する方が好ましい。
【0091】
上記のポリ乳酸系樹脂積層シートは、折り曲げ罫線が設けられ、所定の形状のプラスチックケースに成型される。本発明のプラスチックケースは、角筒状の胴部と前記胴部の両端開口部を覆う蓋部とを有するプラスチックケースであり、前記胴部の開口端の少なくとも一方に梁部を有し、該梁部を折り返して梁部を胴部と接着させたことを特徴とする。ここで角筒状とは、図1に記載のように、胴部開口端が四角形のものが挙げられるが、そのほかにも前記胴部開口端が多角形のものも含まれる。以下、図面を参照して本発明のプラスチックケースの形状を詳細に説明する。
【0092】
図1は、本発明のプラスチックケースの一例を示す斜視図である。この図1で示されるケースは、図4に示す所定の形状に形成したシートを折り曲げ、図1に示すように胴部合わせ面2を接着して形成してなる。なお、3は角筒状の胴部、4は蓋部である。図1および図4から、蓋部を2箇所有することが分かる。また、このプラスチックケースの胴部3の上端には、蓋部4が胴部3と一体に形成してあると共に前記蓋部4の先端部には折返し部5が形成してある。そして、蓋部4と折返し部5との境界線の両端には、サイドノッチ6が形成してあることが好ましい。なお、図4に記載のポリ乳酸系樹脂積層シートから形成される図1に記載のプラスチックケースは、1枚のシートから形成されるプラスチックケースの具体例である。しかし、本発明のプラスチックケースは、1枚のポリ乳酸系樹脂積層シートから形成されるプラスチックケースであることが好ましいものの、1枚のポリ乳酸系樹脂積層シートから形成されるプラスチックケースには限定されず、複数のポリ乳酸系樹脂積層シートを接着剤などで貼り合せて形成されるプラスチックケースも含むものとする。
【0093】
7は胴部3の上端に互いに対向して形成した、一対の縁部である。そして、これら縁部7の一側端8側は、先端に向うに従って幅狭に形成してあることが好ましい。これにより、蓋部4を閉じるとき、縁部7の側端8と前記サイドノッチ6とが互いに係合し易くなると共に、蓋部を閉じた後は不用意に蓋部4が開かないようにすることができる。
【0094】
一方、前記蓋部4が形成してある胴部と対抗する胴部の両端の開口端の少なくとも一方には、梁部1が胴部3と一体に形成されている。そして、図4に示すシートを使用して、プラスチックケースを成型する際には、梁部合わせ面9に、この梁部1を折り返して接着するものである。
【0095】
このとき、形成される梁部の高さW(Wは、梁部の、胴部における両端開口部方向長さである。)(図1)は、梁部接着部における胴部の開口部の長さL(図1)に対して、好ましくは5%以上、20%以下であり(5%≦W/L≦20%)、より好ましくは10%以上、15%以下である(10%≦W/L≦15%)。梁部高さWが、前記胴部開口辺の長さLの5%より短いと、太鼓化を防止する効果が弱くなる傾向がある。また、梁部高さWが、前記胴部開口辺の長さLの20%より長いと、プラスチックシートの使用量が増えることにより、プラスチックケース自体のコストアップになる。
【0096】
ちなみに、梁部1の形状は、直線状、曲線状、又はこれらを組み合わせた線状でもよい。
【0097】
また、梁部高さW(図1)の定義に関しては、梁部がいかなる形状の場合においても、梁部における、上下両端(両端開口部方向)を結ぶ直線が最大となる2点間の距離とする。
【0098】
また、他方の蓋部(底部)も前記蓋部4と同じ蓋構造になっており、また梁部も同様に有することが好ましい。
【0099】
図5に上記プラスチックケースの組立完成図を示す。
【0100】
次に、図4を参照して前記プラスチックシートについて補足説明する。この図4に示されるシートは中空直方体形状のケースを形成するように裁断したものである。図1に示されるケースを製造するに際しては、予めシート面に溝状に形成した折り曲げ罫線16a、16b、16c、16d、16e、16f、に沿ってシートを適宜折り曲げ、糊代部17で胴部合わせ面2と接着するものである。
【0101】
以上の構造を有する本例のプラスチックケースは、胴部3の開口端の少なくとも一方に梁部1を形成し、プラスチックケース成型時に胴部3へ折り返し接着することで、垂直方向の歪みに対する機械的強度が大きくなる。即ちケース自体の剛性が高いので、多少の熱を受けても、蓋を閉じたときに折返し部5と胴部3との間隙が広がらない利点を有する。そのため、収納物の出し入れ口におけるケースの太鼓化を防止できる。よって、ケースの太鼓化を防止するため、収納物の出し入れ口を粘着テープで止めるなどの方法を採る必要がないという効果を有する。なお、梁部の胴部への折り返しは、プラスチックシートをプラスチックケースとした際に、プラスチックケースの内側に梁部が配置されるように梁部を胴部に接着しても構わないし、プラスチックケースの外側に梁部が配置されるように梁部を胴部に接着しても構わないが、折り曲げた梁部が外部から見えないという外観の点から、プラスチックケースの内側に梁部が配置されるように梁部を胴部に折り返し接着することが好ましい。
【0102】
このように本発明のプラスチックケースは、プラスチックケース自体の腰が強くなるので、蓋部4を広くできるメリットもある。即ち収納物の出し入れ口の広いケースを形成できる。また、包装経費を節約するために、ケース素材のプラスチックシートには、肉薄のものを用いることができる利点も有する。
【0103】
従って、本発明のプラスチックケースは、収納物の出し入れに不便を来すことなく、かつプラスチックケース自体のデザインを損なうことなく、収納物の出し入れ口におけるケースの太鼓化を防止して収納物出し入れ口を確実に閉じることのできる安価なプラスチックケースである。
【0104】
続いて、上述したポリ乳酸系樹脂積層シートから本発明のプラスチックケースを作成する方法を以下に記載する。
【0105】
ポリ乳酸形樹脂積層シートは、例えば支持台や支持板等の上に位置させ、シートの肉厚や材質、強度、硬度等に応じた押圧力でもって、刃先角度θを略60度に設定した罫線刃及び外周打抜き刃を、前記無延伸シートの片側から押圧し、所定の形状の罫線加工したシートを作成する(図4)。
【0106】
上記の罫線加工を設けたポリ乳酸系樹脂積層シートを、折り曲げ罫線に沿って折り曲げて組み立てることにより、プラスチックケース(図1)を製造した。このとき、図4における貼り合わせ部17と胴部合わせ面2の端面同士と、梁部1と梁部合わせ面9の端面同士を、溶剤やホットメルト接着剤などにて接着した。
【0107】
この溶剤による接着は、上記の端面同士間に溶剤を流し込み、両者を互いに押し付ける。そして、溶剤を揮散させることにより、両者を接合させる接着方法である。このとき使用される溶剤としては、テトラヒドロフラン、シクロへキサン、酢酸エチル等があげられるが、これらに限定されるものではない。また、上記ホットメルト接着剤としては、反応性ウレタン系ホットメルト接着剤、ゴム系接着剤等があげられる。
【0108】
本発明のプラスチックケースは、太鼓化の現象を軽減させる効果を持つ耐熱性に優れたプラスチックケースであることから、玩具用、化粧品梱包用のプラスチックケースとして使用することができ、特に化粧品梱包用プラスチックケースに好適に使用することができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、以下の実施例により限定されるものではない。
[ポリ乳酸系樹脂]
実施例で用いたポリ乳酸系樹脂について示す。
PLA−1:
D体含有割合4.2mol%、PMMA換算の重量平均分子量19万のポリ乳酸樹脂。
[ポリ(メタ)アクリレート系樹脂]
実施例で用いたポリ(メタ)アクリレート系樹脂について示す。
PMMA−1:
ポリメチルメタクリレート系樹脂(住友化学製“スミペック”HT50Y 流動性:14g/10min)
〔実施例1〕
[シートの作成]
層A用として、ポリ乳酸(PLA−1)とポリメチルメタクリレート(PMMA−1)を0:100の比率で、また層B用として、ポリ乳酸(PLA−1)とポリメチルメタクリレート(PMMA−1)を10:90の比率で、また層C用として、ポリ乳酸(PLA−1)とポリメチルメタクリレート(PMMA−1)を95:5の比率で、それぞれ独立した別々のベント式二軸押出機に供給し、口金温度を230℃に設定したTダイ口金より共押出し、静電印加方式により、10℃に冷却したキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、層A/層B/層C/層B/層Aが10:5:70:5:10、厚み0.25mmの無延伸シートを作製した。
[プラスチックケースの形成]
作成された無延伸シートは、支持台の上に位置させ、刃先角度θを略60度に設定した罫線刃及び外周打抜き刃を、罫線の溝深が0.15mm(シート厚の60%)になるように、前記無延伸シートの片側から押圧し、図4に記載の形状の罫線加工シートを作成した。
【0110】
図6に、本実施例で作製した前記罫線加工シートを、各部分の長さを含めてさらに詳細に記した。今回、図1のような、角筒状のプラスチックケースにおいて、D×L×H=35mm×60mm×85mmのスケールとなるように成形するために(図1におけるプラスチックケースの、縦、横、高さをそれぞれD、L、Hとする。)、罫線加工シートを図6のスケールで用意した。
【0111】
上記の罫線加工を設けた無延伸シートを、折り曲げ罫線に沿って折り曲げて組み立てることにより、プラスチックケース(図1)を作成した。このとき、図4における貼り合わせ部17と胴部合わせ面2の端面同士と、梁部1と梁部合わせ面9の端面同士を、東亜合成化学株式会社製アロンアルファ(主成分:シアノアクリレート)にて接着した。なお、梁部の幅W(図1)は、6.0mm(Lの10%)に設定した。
〔実施例2〜8、比較例1〜3〕
実施例2〜8と比較例1〜3の両方において、実施例1の〔シートの作成〕に記載の方法によりシートを作製した。なお、前記実施例1以外に関する、各層を構成するポリ乳酸系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、及び、層構成、厚み及び厚み各層の比率は、表1及び表2のように変えて行った。
【0112】
また得られたシートは、上記実施例1の[プラスチックケースの形成]に記載された方法により、プラスチックケースを作成し評価した。
【0113】
なお、実施例2〜5と比較例1〜2に関して、梁部の幅W(図1)を6.0mm(Lの10%)に設定した。また実施例6〜8に関しては、実施例6でWを12.0mm(Lの20%)、実施例7で3.0mm(Lの5%)、実施例8で1.8mm(Lの3%)に設定した。比較例3に関しては、前記梁部を除いた形(図2)に設定した。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)各層における樹脂成分の特定
あらかじめ使用した各々の樹脂のH−NMR、13C−NMRを測定してから、ポリ乳酸系樹脂積層シートの各層の樹脂のH−NMR、13C−NMRを測定し、含有樹脂を特定した。
(2)Xa(PLA)、Xb(PLA)、Xc(PLA)ならびに各層における各樹脂の含有量
(1)で測定したH−NMRチャートを用いて、各樹脂に由来するピークの強度比から算出した。
(3)PMMAの流動性
JIS K7210に従って、230℃、37.3Nでの流動性(g/10min)を測定した。
(4)プラスチックケース厚み及び各層の厚み測定
大和光機工業(株)製大型回転式ミクロトーム(RV−240)を用いて、試料を作成する。プラスチックケースの一部を切り抜き、シートの段面をキーエンス(株)製・デジタルマイクロスコープ VHX−500にて観察し、シート全体の厚み及び各層の厚みを計測した。
(5)バイオマス度
(1)、(2)、(4)により求めた、各層のポリ乳酸系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、含有割合(重量%)、層構成、ならびに厚み比から、プラスチックケースの樹脂組成物全体に対するポリ乳酸系樹脂の含有割合(バイオマス度)を求め、以下の基準にて判断した。
○:バイオマス度が60%以上
△:バイオマス度が50%以上60%未満
×:バイオマス度が50%未満。
(6)耐熱変形性
実施例および比較例で得られたプラスチックケースを、一定の温度に設定された恒温槽で24時間熱を与え続けた。
【0117】
24時間後、前記プラスチックケースを恒温槽から取り出し、図3における胴部11と蓋折返し部13との間の隙間の有無を確認した。また隙間が発生した場合は、その距離を測定した(距離は、胴部11と蓋折返し部13との最長の距離を求めた。)。
【0118】
○:65℃で胴部と蓋折返し部との間に隙間が生じない。
【0119】
△:60℃で胴部と蓋折返し部との間に隙間が生じないが、65℃では胴部と蓋折返し部との間に隙間が生じる。
【0120】
×:60℃で胴部と蓋折返し部との間に隙間が生じる。
【0121】
(7)透明性(ヘイズ)
実施例および比較例で得られたプラスチックケースから、250mm片を切り抜き、スガ試験機(株)製自動“ヘーズコンピューターTMダブルビーム方式”HZ−2にて、測定した。測定は1水準につき7回行い、最大値と最小値を除いた5回の測定の平均値を用いて、以下の基準にて評価した。
【0122】
○:ヘイズが5%以下
△:ヘイズが5%を超え10%以下
×:ヘイズが10%を超える。
(8)ポリ乳酸の重量平均分子量
本発明に使用したポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0123】
具体的には、日本Warters(株)製、Warters2690を用い、PMMAを標準とし、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒を用いて測定した
[結果]
実施例1〜7のポリ乳酸系樹脂積層シートを用いたプラスチックケースは、当該シートから得られる耐熱変形性は良好で、ヘイズに関しても実用範囲内に収まった。また、バイオマス度は50%以上であった。
【0124】
また、実施例8に関しても、耐熱変形性の面において、実用範囲内であった。ただし、耐熱変形性とコストの点に関して、クリアケースの実用性を考慮すると、より好ましくは、梁部高(W)が梁部接着部における胴部開口辺(L)に対して5%以上、20%以下である方がよいと考えられる。
【0125】
表2より、比較例1は耐熱変形性とヘイズにおいて実用範囲内ではあったが、バイオマス度の点で実用範囲内から外れる結果となった。
比較例2に関しては、プラスチックケースの樹脂組成に起因する耐熱性の低さにより、耐熱変形性の評価の際、プラスチックケースの太鼓化以前に、罫線の溝がケースの膨張によって埋まる結果となった。そのため、プラスチックケースとしての外観は大きく損なわれ、また、プラスチックケース胴部84と蓋折り返し部88との距離にいたっても、8.7mmあった。これは前記プラスチックケース蓋部縦の長さDに対して、25.0%胴部が縦方向に膨らんだことになる。このため、熱変形性に関してはプラスチックケースとしての実用範囲内から外れる結果となった。
【0126】
比較例3は、ヘイズやバイオマス度に関しては実用範囲内であったが、プラスチックケース胴部84と蓋折り返し部88との距離は4.2mmあり、これは前記プラスチックケース蓋部縦の長さDに対して、12.0%胴部が縦方向に膨らんだことになる。このため、比較例4も熱変形性に関してはプラスチックケースとしての実用範囲内から外れる結果となった。
【0127】
比較例3は、実施例1で実用範囲内と判定されたシートの形状を、従来の梁部がない形状(図2)で評価したものであり、今回この形状を変えただけで、実用範囲内にあったもの(実施例1)が実用範囲外のもの(比較例4)になった。このためプラスチックケースの形状が熱変形性に大きな影響を及ぼすことを裏付ける結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明のプラスチックケースの一例を示す斜視図である。
【図2】従来のプラスチックケースの一例を示す斜視図である。
【図3】従来のプラスチックケースの太鼓化の一例を示す平面図である。
【図4】図1のプラスチックケースの展開図である。
【図5】図1のプラスチックケースの組立完成図である。
【図6】実施例に用いたプラスチックケースの展開図である。
【符号の説明】
【0129】
1 梁部
2 胴部合わせ面
3 胴部
4 蓋部
5 折返し部
6 サイドノッチ
7 縁部
8 側端
9 梁部合わせ面
10 胴部合わせ面
11 胴部
12 蓋部
13 折返し部
14 縁部
15 間隙
16a 梁胴部間折り曲げ罫線
16b 縁胴部間折り曲げ罫線
16c 蓋胴部間折り曲げ罫線
16d 胴胴部間折り曲げ罫線
16e 糊代胴部間折り曲げ罫線
16f 折返し胴部間折り曲げ罫線
17 糊代部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(メタ)アクリレート系樹脂およびポリ乳酸系樹脂組成物からなる層A、層Bおよび層Cを有し、かつ、該層A、該層B、該層Cが、以下の条件を満たし、かつ、層A/層B/層C/層B/層Aの順に、順次、積層されたことを特徴とするポリ乳酸系樹脂積層シートを用いた、角筒状の胴部と前記胴部の両端開口部を覆う蓋部とを有するプラスチックケースであり、
前記胴部の開口端の少なくとも一方に梁部を形成し、前記胴部に前記梁部を折り返して接着させてなるプラスチックケース。
7≧Xa(PLA)≧0、30≧Xb(PLA)≧10、100≧Xc(PLA)≧95
ただし、
Xa(PLA):該層Aを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
Xb(PLA):該層Bを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
Xc(PLA):該層Cを構成するポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂組成物の総量(重量)に対するポリ乳酸系樹脂の含有量(重量%)
【請求項2】
梁部の高さW(梁部の、胴部における両端開口部方向長さW)が、梁部接着部における胴部の開口部の長さLに対して5%以上、20%以下である、請求項1に記載のプラスチックケース。
【請求項3】
以下の条件を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載のプラスチックケース。
40≧Ya≧20、30≧Yb≧10、70≧Yc≧50
ただし、
Ya:シートの総厚みに対する該層Aの総厚み比率(%)
Yb:シートの総厚みに対する該層Bの総厚み比率(%)
Yc:シートの総厚みに対する該層Cの総厚み比率(%)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のケースを用いた、化粧品梱包用プラスチックケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137139(P2009−137139A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315383(P2007−315383)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】