説明

プラスチック成形品、プラスチック成形品の成形方法、および該プラスチック成形品を有する光走査装置

【課題】薄肉形状のプラスチック成形品における転写面の形状精度の向上を図る。
【解決手段】金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品10において、1または対向する2つの転写面11,12を有し、転写面11,12に垂直な断面形状14における、該転写面の垂直方向の成形品厚みaと該転写面の平行方向の成形品厚みbとは、a/b<1の関係を満たし、転写面11,12以外の面に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部21と凸形状の不完全転写部22とをそれぞれ少なくとも1つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形品、プラスチック成形品の成形方法、および該プラスチック成形品を有する光走査装置に関する。さらに詳述すると、レーザ方式のデジタル複写機、レーザプリンタ、又はファクシミリ装置の光学走査系や、ビデオカメラ等の光学機器、光ディスク等に適用される薄肉形状のプラスチック成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品の成形方法として、金型温度を成形用樹脂の熱変形温度前後とした一定容積のキャビティ内に、樹脂母材を挿入または溶融樹脂を射出充填し、保圧を制御しながら徐冷した後、金型を開いて成形品を取り出す射出成形方法が広く知られている。
【0003】
このような射出成形方法によれば、特殊な形状のプラスチック成形品であっても、該プラスチック成形品の形状に形成された金型を用いることにより、コストを抑えつつ大量生産することが可能となる。例えば、レンズやプリズムなどの光学素子は、光学面形状精度や内部の複屈折に関して高い精度が求められるため、従来は、ガラス製のものが主流であったが、製品のコストダウンの要求に従って、プラスチック製の光学素子(プラスチックレンズ、プラスチックミラー等)へと変化している。
【0004】
プラスチック成形品の形状は、その用途によっては、様々な形状が求められ、例えば、薄肉部を転写領域とする成形品でありながらも当該転写部に微細な凹凸形状を有するものや、高精度な金型形状の転写性を要求されるようになっている。特に、レーザプリンタなどの走査光学系に用いられるレンズにおいては、複数の機能を最小限の素子でまかなうために、その鏡面形状も球面のみならず複雑な被球面形状に形成されるようになっており、省スペース化の要求により薄肉形状に設計される場合が多い。
【0005】
このような薄肉形状のプラスチック成形品の成形加工においては、金型のキャビティ内の溶融樹脂を冷却固化させる工程において、キャビティ内での樹脂圧力や樹脂温度を均一にすることがプラスチック成形品を所望の形状に精度よく成形するのに望ましい。しかしながら、例えば、図1に示すように、転写面11の垂直方向の断面14において、転写面垂直方向の厚さ寸法をa、転写面平行方向の厚さ寸法をbとしたとき、a/b<1のようなアスペクト比の薄肉の部分においては、a方向の冷却速度の方がb方向の冷却速度よりも早いため、転写面に樹脂圧力が残った状態で冷却固化されてしまい、内部応力によって、成形品取出し時の金型とられや離型不良、取り出し後のそりなどの形状変形が発生する。特に、プラスチック光学素子においては内部歪みによる複屈折を発生させやすいという問題があった。以下、本明細書において、転写面垂直方向の厚さ寸法をa、転写面平行方向の厚さ寸法をbとしたとき、a/b<1の関係を有するプラスチック成形品を薄肉形状、の(または、薄肉部を有する)プラスチック成形品と呼ぶ。
【0006】
また、転写面に微細な凹凸を有するような薄肉形状のプラスチック成形品の場合(図4参照)は、凹凸形状への樹脂充填を行うのに充填樹脂圧力を高く設定する必要があるため、冷却固化による内部応力の残存が顕著になり、形状変形及び光学素子の場合は内部歪みによる複屈折を発生させやすくなってしまう。この残圧を低減するためには、樹脂圧力を低く抑えた射出成形(低圧射出成形)を行わなければならない。しかしながら、低圧射出成形においては、充填樹脂量がキャビティ容積に対して少なくなる為、成形品にひけが発生しやすくなり、収縮量の増大により、金型形状の転写精度が悪化するという欠点があった。
【0007】
この低圧射出成形における、ひけの問題を解決するための技術として、特許文献1には、通気口から空気圧を非転写部にかけ、転写部との圧力差を発生させて、ひけを非転写面に誘導することで、転写面のひけ発生を防止する発明が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、金型のキャビティを構成する入子の一部(キャビティ駒ともいう)を成形中に摺動させて、非転写面の樹脂を剥離させることで、射出充填によってキャビティ内に樹脂内圧を発生させ、転写面の密着が維持される適切な圧力を残した状態のときに、キャビティ駒を動作させて強制的に空隙をつくり、この部分にひけを誘導することが開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、厚肉、偏肉形状のプラスチック成形品に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより凹形状または凸形状に形成した不完全転写部を、転写面以外の面に有することにより、樹脂内圧や内部歪みの残存をなくす発明が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ひけは充填後の樹脂の冷却による樹脂内圧が非転写部にかけられた空気圧以下にならないと生じないため、特許文献1に記載の発明による薄肉形状のプラスチック成形品の成形では、薄肉部では初期の高圧下に樹脂が冷却固化してしまっているため、内部応力および内部歪みが残存してしまい、転写面精度の低下及び複屈折の悪化が生じるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に記載の発明によっても、薄肉形状のプラスチック成形品の成形では、転写面部分の樹脂が冷却固化する前に離隔動作をさせなければならず、樹脂は、離隔動作に伴いキャビティ容積が増大するため、キャビティ内樹脂圧が負圧となる。負圧になった際、転写面の密着力が低下するため、転写面にひけが発生するという問題があった。また、樹脂の体積収縮に追従させるように可動入子を可動させることも考えられるが、可動入子の安定性を保ちつつ、精度よく追従させることは困難であった。
【0012】
また、特許文献3に記載の発明によっても、薄肉形状のプラスチック成形品の成形では、特許文献2と同様に、冷却固化進行前の樹脂圧力が発生した状態において離隔動作をすると、キャビティ内圧が負圧となり、転写面にひけを発生させてしまうし、樹脂圧力が下がった状態においてヒケ誘導をしても、既に内部応力を残した状態で冷却固化が進行してしまっているという問題があった。
【0013】
以上のように、上記いずれの技術も薄肉形状のプラスチック成形品への適用が困難であり、薄肉形状のプラスチック成形品に適用した場合でも、転写面の形状精度や光学素子として用いる場合は複屈折の悪化という問題が残されていた。
【0014】
そこで本発明は、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品において、1または対向する2つの転写面を有し、転写面に垂直な断面形状における、該転写面の垂直方向の成形品厚みaと該転写面の平行方向の成形品厚みbとは、a/b<1の関係を満たし、転写面以外の面に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部と凸形状の不完全転写部とをそれぞれ少なくとも1つ有することにより、転写面にひけを発生させず転写面の形状精度の向上を図り、かつ、内部応力および内部歪みの発生を小さくして複屈折を小さくすることができるプラスチック成形品、プラスチック成形品の成形方法、および該プラスチック成形品を有する光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載のプラスチック成形品は、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品において、1または対向する2つの転写面を有し、転写面に垂直な断面形状における、該転写面の垂直方向の成形品厚みaと該転写面の平行方向の成形品厚みbとは、a/b<1の関係を満たし、転写面以外の面に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部と凸形状の不完全転写部とをそれぞれ少なくとも1つ有するものである。
【0016】
したがって、樹脂内圧を発生させた薄肉形状のプラスチック成形品において、転写面以外の領域に凸形状の不完全転写部を設けることにより、キャビティ壁面の転写後に樹脂圧力を抜くことが可能となる。また、凹形状の不完全転写部を設けることにより、樹脂圧力抜きの際、負圧となり発生するひけを吸収することが可能となる。また、薄肉形状であるので、この圧力抜きの状態で樹脂は冷却固化する。よって、薄肉プラスチック成形品においても、内部残留応力の低減が可能となり、取り出し時及び取り出し後の形状変形が抑えられ、優れた形状転写性を得るようにしている。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラスチック成形品において、成形品厚みaは、転写面の垂直方向の成形品厚みの最小値であり、成形品厚みbは、転写面の平行方向の成形品厚みの最大値であるものである。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプラスチック成形品において、凹形状の不完全転写部および凸形状の不完全転写部は、転写面以外の対向する面に形成されるものである。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のプラスチック成形品において、凹形状の不完全転写部および凸形状の不完全転写部は、転写面以外の同一面に形成されるものである。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、金型のキャビティ形状を転写した取り付け基準面をさらに有するものである。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5までのいずれかに記載のプラスチック成形品において、転写面のうち、少なくとも1つは、光学鏡面に形成された光学素子であるものである。
【0022】
また、請求項7に記載のプラスチック成形品の成形方法は、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法において、樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、少なくともキャビティ壁面の一部に設けられた通気部より圧縮空気を送り込み、かつ、少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させるようにしている。
【0023】
また、請求項8に記載のプラスチック成形品の成形方法は、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法において、少なくともキャビティ壁面の一部は、他のキャビティ壁面よりも樹脂との密着力が低い材料により形成した優先剥離部であって、樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、
少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させるようにしている。
【0024】
また、請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載のプラスチック成形品の成形方法において、通気部または優先剥離部、および/または可動入子を2以上有する金型を用いるようにしている。
【0025】
また、請求項10に記載の光走査装置は、被走査面を複数の光束で走査するマルチビーム型の光走査装置において、請求項6に記載のプラスチック成形品を、各光束の入射位置が副走査方向において異なる光学素子として有するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、薄肉形状のプラスチック成形品において、転写面にひけを発生させず転写面の形状精度の向上を図り、かつ、内部応力および内部歪みの発生を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るプラスチック成形品の一実施形態(第1の実施形態)を示す斜視図である。
【図2】図1に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の一例である。
【図3】図1に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の他の例である。
【図4】プラスチック成形品の他の実施形態(第2の実施形態)を示す斜視図である。
【図5】図4に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の一例である。
【図6】プラスチック成形品の他の実施形態(第3の実施形態)を示す斜視図である。
【図7】図6に示すプラスチック成形品および成形金型の断面図の一例である。
【図8】プラスチック成形品の他の実施形態(第4の実施形態)を示す斜視図である。
【図9】図8に示すプラスチック成形品の断面図である。
【図10】図8に示すプラスチック成形品の上面図である。
【図11】本発明に係る光走査装置の概略構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る構成を図1から図11に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(プラスチック成形品)
<第1の実施形態>
図1に本発明に係るプラスチック成形品の一実施形態の斜視図を示す。本実施形態に係るプラスチック成形品10は、転写面(第1転写面)11および転写面(第2転写面)12を上下に有し、凸形状の不完全転写部21と凹形状の不完全転写部22とを転写面11,12の側面の対向する2面に有した成形品である。なお、転写面11,12の側面の他の2面(側面23,24)については、キャビティ形状を転写した転写面とすればよいが、不完全転写部であっても良く、特に限られるものではない。
【0030】
また、プラスチック成形品10は薄肉形状、すなわち、転写面11,12に垂直なある面(一点鎖線13で示す)におけるプラスチック成形品の一断面14において、転写面垂直方向の成形品厚さ寸法aと転写面平行方向の厚さ寸法bとは、次式(1)を満たすものである。なお、aおよびbの値は、次式(1)を満たす限り特に限られるものではないが、例えば、a=5mm,b=10m等とすればよい。
a/b<1 …(1)
【0031】
[プラスチック成形品の成形方法(第1の成形方法)]
図1に示すプラスチック成形品10を例に、本発明に係るプラスチック成形品の成形方法の一例(第1の成形方法)について説明する。図2は、図1に示す断面におけるプラスチック成形品の一断面14およびプラスチック成形品10を画成する成形金型30の断面を示している。
【0032】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂を射出充填するものである。キャビティは、上下の被転写入子31,32と、側壁面33,34によって画成されている。
【0033】
側壁面33には、通気部、すなわち、エアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられており、通気口36は、図示しない成形金型30の外部にある気体圧縮装置等に接続され、圧縮空気をキャビティ側面に流入できるようになっている。
【0034】
他方の側壁面34は、可動入子34で画成されており、可動入子34は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0035】
可動入子34をキャビティ側に摺動させた状態(図2(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0036】
ここで、溶融樹脂の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、エアスリット35から圧縮空気に送り込むようにする。なお、溶融樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングは、樹脂の成分等に応じて最適なタイミングを得るようにすればよい。
【0037】
次いで、図2(b)に示すように、可動入子34をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。この可動入子34の後退によりキャビティ容積が膨張し、溶融樹脂もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子34の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、エアスリット35からの圧縮空気により、加圧されている側壁面33は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。
【0038】
このように、樹脂内圧低下による樹脂体積不足と、冷却固化促進による充填樹脂の体積収縮は、キャビティより剥離した凸形状および凹形状の不完全転写部21,22が自由面となり動くことで吸収、換言すれば、不完全転写部21,22に転写不良を誘導することにより、転写部11,12へのひけ発生を抑制することができる。また、射出充填に伴う樹脂内圧は、キャビティ体積膨張による内圧低下を発生させることにより、ほぼ0に近づけることができ、この状態において冷却固化されたプラスチック成形品10の内部応力及び内部歪みについてもほぼ0に近づけることが可能となる。よって、転写面11,12の形状精度の向上および複屈折の発生を抑えたプラスチック成形品とすることができる。
【0039】
[プラスチック成形品の成形方法(第2の成形方法)]
図1に示すプラスチック成形品10を例に、本発明に係るプラスチック成形品の成形方法の他の例(第2の成形方法)について説明する。図3は、図1に示す断面におけるプラスチック成形品の一断面14およびプラスチック成形品10を画成する成形金型30の断面を示している。
【0040】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂を射出充填するものである。キャビティは、上下の被転写入子31,32と、側壁面33,34によって画成されている。
【0041】
側壁面33は、固定入子33で画成されており、固定入子33の少なくとも溶液樹脂と接する表面は、他のキャビティ表面と比較して、樹脂との密着力が低い材料により形成されている(優先剥離部を有する)。当該樹脂との密着力が低い材料としては、例えば、TiN(窒化チタン)、TiCN(シアン化チタン)、テフロン(登録商標)樹脂含有金属等が挙げられる。本実施形態では、固定入子33の表面を樹脂との密着力が低い材料により表面処理を施し、固定入子33と充填樹脂とを離型しやすくなっている。
【0042】
他方の側壁面34は、可動入子34で画成されており、可動入子34は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0043】
可動入子34をキャビティ側に摺動させた状態(図3(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0044】
ここで、溶融樹脂の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、可動入子34をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。なお、溶融樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングは、樹脂の成分、固定入子33の表面材料等に応じて最適なタイミングを得るようにすればよい。
【0045】
この可動入子34の後退により、図3(b)に示すように、キャビティ容積が膨張し、溶融樹脂もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子34の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、他のキャビティ表面と比較して離形成の高い固定入子33の壁面は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。
【0046】
このように、樹脂内圧低下による樹脂体積不足と、冷却固化促進による充填樹脂の体積収縮は、キャビティより剥離した凸形状および凹形状の不完全転写部21,22が自由面となり動くことで吸収、換言すれば、不完全転写部21,22に転写不良を誘導することにより、転写部11,12へのひけ発生を抑制することができる。また、射出充填に伴う樹脂内圧は、キャビティ体積膨張による内圧低下を発生させることにより、ほぼ0に近づけることができ、この状態において冷却固化されたプラスチック成形品10の内部応力及び内部歪みについてもほぼ0に近づけることが可能となる。よって、転写面11,12の形状精度の向上および複屈折の発生を抑えたプラスチック成形品とするすることができる。
【0047】
以上説明したキャビティ形状および該キャビティ形状を用いた射出成形により成形可能なプラスチック成形品の形状は一例であって、上述のプラスチック成形品の成形方法を、他のキャビティ形状に適用することにより、様々な形状のプラスチック成形品を成形することができる。
【0048】
例えば、凸形状および凹形状の不完全転写部21,22とは、対向する面になくとも良く、例えば、側面23に対応する側に可動入子を設けて、側面23を凸形状の不完全転写部としても良い。また、凸形状および凹形状の不完全転写部21,22は、少なくとも各1箇所有していればよい。したがって、各不完全転写部を2箇所以上有しても良いし、また、凸形状の不完全転写部と凹形状の不完全転写部の形成数も同じでなくても良く、例えば、凸形状の不完全転写部を2箇所、凹形状の不完全転写部を1箇所有するようにしても良い。このように、不完全転写部を広くまたは多く設けるようにすることにより、不完全転写部への転写不良の誘導を可能とし、転写部の転写性能をさらに向上させることが可能となる。
【0049】
また、上記成形方法における樹脂充填の方法、樹脂圧力の発生方法や凸形状及び凹形状の不完全転写部の形成方法は、上述の例に限られるものではない。
【0050】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係るプラスチック成形品の他の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。上記第1の実施形態では、不完全転写部がそれぞれ一面を構成している場合を例に説明したが、凸形状および凹形状の不完全転写部を同一面に形成することも好ましい。
【0051】
図4に本実施形態に係るプラスチック成形品の斜視図を示す。このプラスチック成形品10は、微細で複雑な凹凸形状を有する転写面11を上面に設け、凸形状の不完全転写部21および凹形状の不完全転写部22を転写面11に対向する同一面内に設けたものである。
【0052】
また、プラスチック成形品10は薄肉形状、すなわち、転写面11に垂直なある面(一点鎖線13で示す)におけるプラスチック成形品の一断面14において、転写面垂直方向の成形品厚さ寸法の最小値aと、転写面平行方向の厚さ寸法の最大値bとは上記式(1)を満たすものである。
【0053】
[プラスチック成形品の成形方法]
図4に示すプラスチック成形品10の成形方法について説明する。図5は、図4に示す断面におけるプラスチック成形品の一断面14およびプラスチック成形品10を画成する成形金型30の断面を示している。
【0054】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂を射出充填するものである。キャビティは、上被転写入子31、下壁面38(38a,38b)、可動入子37と、側壁面33,34によって画成されている。また、下壁面38aには、エアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられており、通気口36は、図示しない成形金型30の外部にある気体圧縮装置等に接続され、圧縮空気をキャビティ下面に流入できるようになっている。また、下壁面38の一部は、可動入子37で画成されており、可動入子37は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0055】
可動入子37をキャビティ側に摺動させた状態(図5(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。
【0056】
ここで、溶融樹脂の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、エアスリット35から圧縮空気に送り込むようにする。
【0057】
次いで、図5(b)に示すように、可動入子37をキャビティ側面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。この可動入子37の後退によりキャビティ容積が膨張し、溶融樹脂もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子37の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、エアスリット35からの圧縮空気により、加圧されている下壁面38aには、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22が成形される。
【0058】
このように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、成形金型30を用いた射出成形法により、可動入子37に対応する部分に凸形状の不完全転写部21を、またエアスリット35に対応する部分に凹形状の不完全転写部22を、それぞれ形成することにより、転写部11にひけを発生させず、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11を有し、内部歪みの低いものとすることができる。特に、本実施形態においては、転写面11は微細な凹凸形状を有しているため、被転写面31の細かいパターンへの樹脂充填を正確に行うために樹脂圧を高く設定する必要があるが、当該成形方法を用いることで、高樹脂圧で転写面11を形成しても、樹脂圧力を抜くことができるため、残留内部応力のないプラスチック成形品10が得られる。よって、成形金型30から取り出す際、または取り出した後の形状変形を防止することができる。
【0059】
なお、転写面11以外の面形状については、特に限られるものではなく、凸形状および凹形状の不完全転写部21,22は、転写面11以外のいずれかの面に形成されるものでもよい。また、凸形状の不完全転写部21と凹形状の不完全転写部22の形成数も複数であっても良い。また、上記第2の成形方法を用いて成形するようにしても良い。
【0060】
以上説明したように、本発明に係るプラスチック成形品の成形方法によれば、高精度な光学鏡面や微細な凹凸のパターン等を有するプラスチック成形品を、低コストかつ高精度に金型形状を転写することができる。
【0061】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係るプラスチック成形品の第3の実施形態について説明する。なお、上記第1〜第2の実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
【0062】
図6に本実施形態に係るプラスチック成形品の斜視図を示す。このプラスチック成形品10は、凹形状を有する転写面11を上面に設け、凸形状の不完全転写部21を下部に、凹形状の不完全転写部22a,22bを転写面側面の2面に設けたものである。
【0063】
また、プラスチック成形品10は薄肉形状、すなわち、転写面11に垂直なある面(一点鎖線13で示す)におけるプラスチック成形品の一断面14において、転写面垂直方向の成形品厚さ寸法の最小値aと、転写面平行方向の厚さ寸法の最大値bとは上記式(1)を満たすものである。
【0064】
[プラスチック成形品の成形方法]
図6に示すプラスチック成形品10の成形方法について説明する。図7は、図6に示す断面におけるプラスチック成形品の一断面14およびプラスチック成形品10を画成する成形金型30の断面を示している。
【0065】
成形金型30は、上下一対の金型により開閉可能なキャビティを画成して、その内部に溶融樹脂を射出充填するものである。キャビティは、上被転写入子31、下壁面38(38a,38b)、可動入子37と、側壁面33,34によって画成されている。また、側壁面33,34には、それぞれエアスリット35とそれに連通する通気口36が設けられており、通気口36は、図示しない成形金型30の外部にある気体圧縮装置等に接続され、圧縮空気をキャビティ側面に流入できるようになっている。また、下壁面38の一部は、可動入子37で画成されており、可動入子37は、キャビティに対し、図中矢印方向に摺動可能に設けられている。
【0066】
可動入子37をキャビティ側に摺動させた状態(図7(a))において、成形金型30のキャビティ内に射出充填された溶融樹脂は、キャビティ壁面に樹脂圧力を発生させて密着した状態で冷却固化を始める。ここで、溶融樹脂の射出充填より一定時間経過後であって、樹脂が冷却固化しきらず、樹脂内圧を保って流動可能な状態にあるタイミングにおいて、両側のエアスリット35から圧縮空気に送り込むようにする。
【0067】
次いで、図7(b)に示すように、可動入子37をキャビティ下面から離れる方向(図中矢印方向)に摺動させる。この可動入子37の後退によりキャビティ容積が膨張し、溶融樹脂もそれに伴い体積膨張を起こす。その結果、可動入子37の後退部分には、凸形状の不完全転写部21が成形される。また、溶融樹脂の体積膨張により急激に樹脂内圧は低下し、キャビティ壁面との密着力が低下する。その際、エアスリット35からの圧縮空気により、加圧されている側壁面33,34は、優先的に樹脂が剥離され、凹形状の不完全転写部22a,22bが成形される。
【0068】
このように、本実施形態においても、上記第1〜第2の実施形態と同様に、成形金型30を用いた射出成形法により、可動入子37に対応する部分に凸形状の不完全転写部21を、またエアスリット35に対応する部分に凹形状の不完全転写部22a,22bを、それぞれ形成することにより、転写部11にひけを発生させず、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11を有し、内部歪みの低いものとすることができる。
【0069】
<第4の実施形態>
次に、本発明に係るプラスチック成形品の第4の実施形態について説明する。なお、上記第1〜第3の実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
【0070】
図8に本実施形態に係るプラスチック成形品の斜視図を示す。また、図9(a)はプラスチック成形品10の転写面11に垂直なある面(一点鎖線13aで示す)における断面14、図9(b)はプラスチック成形品10の転写面11に垂直なある面(一点鎖線13bで示す)における断面15での断面図である。また、図10に、図8に示すプラスチック成形品10の金型キャビティ内における転写面11側から見た上面図を示す。なお、図10(a)は、可動入子の摺動直後の樹脂内圧が抜けた瞬間の上面図、図10(b)は冷却固化後の上面図を示している。
【0071】
このプラスチック成形品10は、短手方向における端部の側面に凸形状の不完全転写部21a,21bを、長手方向における端部の側面に凹形状の不完全転写部22a,22bを設けた成形品である。ただし、凸形状の不完全転写部21a,21bは、図9(b)の断面15に示すように長手端部においては、凸形状を有するが、図9(a)の断面14に示すように長手中央に近づくにつれて凹形状の不完全転写部22c,22dに連続的に変化している(図10(b))。
【0072】
また、プラスチック成形品10は、長手端部の両側面に、金型形状を転写した取り付け基準面16を設けている。さらに、プラスチック成形品10は薄肉形状、すなわち、転写面11に垂直なある面(一点鎖線13a,13bで示す)におけるプラスチック成形品の断面14,15において、転写面垂直方向の成形品厚さ寸法の最小値aと、転写面平行方向の厚さ寸法の最大値bとは上記式(1)を満たすものである。
【0073】
本実施形態に係るプラスチック成形品10の成形方法は、上記実施形態と同様の方法によれば良く、凸形状の不完全転写部21a,21bは、成形金型(図示せず)の可動入子に対応し、凹形状の不完全転写部22a,22bは、成形金型のエアスリットに対応する。上述のように、この成形方法によれば、可動入子の後退動作直後のタイミングにおいて、プラスチック成形品は樹脂体積膨張に伴い、図10(a)に示すように可動入子に対応する凸形状の不完全転写部21a,21bは長手方向の全域において凸形状に、エアスリットに対応する不完全転写部22a,22bが凹形状になる。
【0074】
しかしながら、図10(a)に示すような形状から冷却固化による樹脂収縮が起こると、成形品端部においては、エアスリットに相当する凹形状の不完全転写部22が自由面として動いて収縮を吸収するが、成形品中央部においては、収縮を吸収するのは、可動入子より剥離した凸形状の不完全転写部21a,21bになるため、凸形状の不完全転写部21a,21bは収縮に伴い、凹形状の不完全転写部22c,22dに変化する。
【0075】
その結果、図10(b)に示すように、可動入子に対応する不完全転写部は、端部凸形状21a,21bから連続的に中央部にかけて凹形状22c,22dへと変化した成形品が成形される。
【0076】
このように、本実施形態においても、上記第1〜第3の実施形態と同様に、成形金型を用いた射出成形法により、可動入子に対応する部分に凸形状の不完全転写部21a,21bおよび凹形状の不完全転写部22c,22dを、またエアスリットに対応する部分に凹形状の不完全転写部22a,22bを、それぞれ形成することにより、転写面11,12にひけを発生させず、かつ樹脂内圧が残存することなく、要求される形状精度で形成した転写面11,12を有し、内部歪みの低いものとすることができる。
【0077】
ここで、凸形状及び凹形状の不完全転写部21,22は、成形金型の形状を転写していない自由曲面である。したがって、不完全転写部の領域を使用したプラスチック成形品の空間内の位置決めは、不安定となり、精度が得られないこととなる。そこで、本実施形態に係るプラスチック成形品10のように、不完全転写部とは別に、凸形状または凹形状の不完全転写部21,22の両端に、凸形状を超える高さの金型形状を転写した取り付け基準面16を設けることが好ましい。これにより、凸形状及び凹形状の不完全転写部を使用することなくプラスチック成形品を高精度に空間内での位置決め及び取り付けが可能となる。
【0078】
また、この取り付け基準面16にも、上述の内部残留応力除去による、形状の高精度化の効果は及ぶこととなるので、取り付け基準面16の形状転写精度も優れたプラスチック成形品を提供することができる。なお、取り付け基準面16の位置、形状、数は特に限られるものではなく、転写面とは異なるいずれかの位置に設けるようにすればよい。
【0079】
(光学素子)
以上説明した本発明に係るプラスチック成形品を、その転写面の少なくとも1つを光学鏡面に形成した光学素子(プラスチックレンズ、プラスチックミラー等)として用いることが好ましい。光学素子としてのプラスチック成形品は、高い形状精度の要求に加えて、内部歪みの低減も要求される。上述のように、本発明に係るプラスチック成形品は、内部残留応力が非常に低いため、内部歪みも非常に小さい成形品とすることが可能となる。よって、このプラスチック成形品を光学素子として用いることにより、複屈折の少ない優れた効果を有する光学素子とすることができる。また、取り付け基準面を有することにより、位置決め精度および光学特性をさらに優れたものとすることができる。
【0080】
例えば、図4に示したプラスチック成形品10は、転写面11を光学鏡面とした光学素子(光学ミラー)に適用することができる。該光学素子によれば、微小な散乱効果を有する回折格子を構成できる。また、図6に示したプラスチック成形品10は、転写面11を凹型の光学鏡面としたプラスチックミラーに適用することができる。また、図8に示したプラスチック成形品10は、転写面11を光学鏡面(例えば、入射面)、転写面12を光学鏡面(例えば、出射面)としたプラスチックレンズに適用することが好適である。
【0081】
(マルチビーム走査光学装置)
さらに、本発明に係るプラスチック成形品を適用した光学素子は、光学鏡面の高形状精度の効果に加え、低内部歪みによる低複屈折が実現できるため、その光学性能も優れたものとすることができる。
【0082】
例えば、通常の成形によって得られるプラスチックレンズの内部歪みは、成形品内の場所ごとに偏在するため、マルチビームを用いる走査光学系においては、各ビームの副走査方向の光束入射位置が異なる。このため、マルチビームのビーム間に与える複屈折の影響が異なることとなり、ビーム毎の強度や偏光特性などの光学性能に差異を生み出すという問題があった。しかしながら、本発明に係るプラスチック成形品を適用したプラスチックレンズは内部歪みが無い為、マルチビーム走査光学系に活用することで、より優れた効果を発揮することができる。
【0083】
図11に、本発明に係る光走査装置の一実施形態であるマルチビーム走査光学装置の装置構成図を示す。このマルチビーム走査光学装置100は、複数の発光源101(ch1〜ch4)からのビームを、共通のカップリングレンズ102により以後の光学系にカップリングし、カップリングされた複数ビームを、共通の線像結像光学系(シリンドリカルレンズ104)により、光偏向器105の偏向反射面近傍に主走査方向に長く、副走査方向に分離した複数の線像として結像させ、光偏向器105により同時に等角速度的に偏向させ、偏向ビームを共通の走査光学系(第1走査レンズ106,第2走査レンズ107)を透過し、折り曲げミラー108により光路を折り曲げられ、被走査面(感光体109)上に、副走査方向に分離した複数の光スポットとして集光し、これら複数の光スポットとにより複数走査線を同時走査するものである。なお、符号103は、光束周辺部を遮断してビーム整形するアパーチュアである。また、ビームの1つは、光走査に先立ってミラー110に入射し、レンズ111により受光素子112に集光され、受光素子12の出力に基づき、各ビームの光走査の書込み開始タイミングが決定される。
【0084】
ここで、本発明に係るプラスチック成形品を適用したプラスチックレンズは、薄肉形状のレンズであるため、例えば、第2走査レンズ107に用いることが好適である。
【0085】
以上のように、本発明に係るプラスチック成形品を適用した光学素子は内部歪みがないため、副走査方向のどの位置を光束が透過したとしても、光束への複屈折の影響はほとんどなく、ビーム毎の光学性能の差異もほとんどなくなる。よって、当該光学素子を、マルチビーム走査光学系に活用することで、より優れた効果を発揮させることができる。
【0086】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0087】
例えば、本発明に係るプラスチック成形品を光学素子に適用した例に説明したが、これに限られるものではなく、転写面が高い形状精度を要求される種々のプラスチック成形品に適用することができる。例えば、携帯電話等の電子機器等の外装部品にも適用することが好適である。
【符号の説明】
【0088】
10 プラスチック成形品(光学素子)
11 転写面(第1転写面)
12 転写面(第2転写面)
14,15 断面
16 取り付け基準部
21,21a,21b 凸形状の不完全転写部
22,22a,22b,22c,22d 凹形状の不完全転写部
23,24 側面
30 成形金型
31 上被転写入子
32 下被転写入子
33 側壁面(固定入子)
34 側壁面(可動入子)
35 エアスリット
36 通気口
37 可動入子
38a,38b 下壁面
100 光走査装置
101 発光源
102 カップリングレンズ
103 アパーチュア
104 シリンドリカルレンズ
105 光偏向器
106 第1走査レンズ
107 第2走査レンズ
108 折り曲げミラー
109 感光体
110 ミラー
111 レンズ
112 受光素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開平6−304973号公報
【特許文献2】特開平11−28745号公報
【特許文献3】特開2000−84945号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品において、
1または対向する2つの転写面を有し、
前記転写面に垂直な断面形状における、該転写面の垂直方向の成形品厚みaと該転写面の平行方向の成形品厚みbとは、a/b<1の関係を満たし、
前記転写面以外の面に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した凹形状の不完全転写部と凸形状の不完全転写部とをそれぞれ少なくとも1つ有することを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項2】
前記成形品厚みaは、前記転写面の垂直方向の成形品厚みの最小値であり、
前記成形品厚みbは、前記転写面の平行方向の成形品厚みの最大値であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品。
【請求項3】
前記凹形状の不完全転写部および前記凸形状の不完全転写部は、前記転写面以外の対向する面に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形品。
【請求項4】
前記凹形状の不完全転写部および前記凸形状の不完全転写部は、前記転写面以外の同一面に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形品。
【請求項5】
金型のキャビティ形状を転写した取り付け基準面をさらに有することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項6】
前記転写面のうち、少なくとも1つは、光学鏡面に形成された光学素子であることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載のプラスチック成形品。
【請求項7】
金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法において、
樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、
少なくともキャビティ壁面の一部に設けられた通気部より圧縮空気を送り込み、
かつ、少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させるようにしたことを特徴とするプラスチック成形品の成形方法。
【請求項8】
金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、被転写面を転写することにより形成した転写面を有するプラスチック成形品の成形方法において、
少なくともキャビティ壁面の一部は、他のキャビティ壁面よりも前記樹脂との密着力が低い材料により形成した優先剥離部であって、
樹脂の射出充填後の所定タイミングにおいて、
少なくともキャビティ壁面の一部を構成する可動入子を該キャビティから離れる方向に摺動させるようにしたことを特徴とするプラスチック成形品の成形方法。
【請求項9】
前記通気部または前記優先剥離部、および/または前記可動入子を2以上有する金型を用いた請求項7または8に記載のプラスチック成形品の成形方法。
【請求項10】
被走査面を複数の光束で走査するマルチビーム型の光走査装置において、
請求項6に記載のプラスチック成形品を、各光束の入射位置が副走査方向において異なる光学素子として有することを特徴とする光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−140148(P2011−140148A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1272(P2010−1272)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】