説明

プラスチック材料からの成形品の製造方法

混入繊維で強化されたプラスチック輪郭体に基づいた成形品の製造方法において、プラスチック輪郭体は加熱されて、それぞれ外型や内型によって変形され、そのプラスチック輪郭体が好ましくは長手方向にストラップ状領域を備え、そのストラップ状領域は比較的硬質であり、かつプラスチック母材の変形温度においてプラスチック母材自体よりも可撓性が低いので、繊維の横方向の波状の変位を妨げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混入繊維で強化されたプラスチック輪郭体(形材)を基にした成形品の製造方法であって、プラスチック輪郭体が加熱されて、それぞれ外型や内型によって変形される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、特許文献1から知られている。
【0003】
公知の方法は、例えばテニスラケットの頭部など、全体的に一定の曲線を有するプラスチック成形品の製造に特に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】PCT/EP2007/003195号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに基づいて、本発明の目的は、正確、迅速かつ費用効果的に、より複雑な成形品の製造を提供するような方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明に従って、好ましくは長手方向に延在するストラップ状領域を有するプラスチック輪郭体であって、前記ストラップ状領域が比較的硬質であり、かつプラスチック母材の変形温度においてプラスチック母材自体よりも可撓性が低いので、繊維の横方向の波状の変位を妨げるプラスチック輪郭体によって達成される。
【0007】
これは、輪郭体の軸に対して繊維角度が0°〜90°である、エンドレス繊維の形状の実質的に非膨張性で高性能の繊維を基にした、いわゆる有機シート輪郭体によって行われる。本方法に従って製造された製品は、低重量における機械効率がとりわけ高いことを特徴としている。向きが軸方向に整列された(0°)繊維をかなりの量含む、すなわち編み上げ構造からならない有機シート輪郭体が、好ましくは使用される。外形形状を形成しかつ外型および内型によって形成される成形キャビティでの変形プロセス中、ブランクプラスチック輪郭体の形状のプラスチック輪郭体は、エンドレス繊維が伸縮された位置に留まるように、壁と整列するので、繊維束が横方向にしわになったり膨れたりせず、変形プロセスの完了時にも有機シートの特性が確実に保たれるようにする。
【0008】
本発明によれば、強化は、従来技術でよく使用される編み上げ構造によっては達成されない。そのような編み上げ構造は、本発明の範囲内においては有利であろうことから、以下説明するように、型が閉鎖される前に予圧力によって圧力が高まらないようにする。
【0009】
本発明の別の実施形態では、ストラップ状領域がプラスチック輪郭体と一体となっているかまたはそれに取り付けられて、形成プロセスの完了時にプラスチック母材の内側に留まるかまたはそこから取り外されてもよいことが提供される。
【0010】
好ましい第1の実施形態では、ストラップ状領域が、組み込まれた第2のプラスチック部品によって形成され、その第2のプラスチック部品が好ましくは、プラスチック母材の変形温度に達するときに、そのガラス転移点をちょうど超えるように選択されることが提供される。
【0011】
例えば、融点が223℃のポリアミド6をプラスチック母材に選択し、かつそれぞれガラス転移温度が225℃または180℃の非結晶のPESポリエーテルスルホンまたはPESポリエーテルイミドを第2のプラスチック部品に選択してもよい。
【0012】
好ましくは、プラスチック輪郭体にあるストラップ状領域は、後に続く熱変形プロセス中に輪郭体の曲線のアペックスライン(apex line)に従うように配置される。
【0013】
第2の実施形態では、ストラップ状領域を、周方向において輪郭体の周囲の1/8未満の領域に延在する弾性金属ストラップによって形成し得る。
【0014】
特定の応用では、これらの弾性金属ストラップは、変形プロセスの完了時にも、プラスチック輪郭体の内側に留まらせてもよい。この場合には、これらの弾性金属ストラップは、例えば、特に接地目的のためもしくは避雷保護のために導電性を与えることにより歪みゲージとしての、または破裂センサとしての機能を果たす。
【0015】
第3の実施形態は、ストラップ状領域が、それらの周囲の領域よりもこれらの領域の加熱を弱めることによって形成され、それゆえ、プラスチック母材に対してより硬質なフレームとして留まることを提供する。これらのより硬質な領域は、加熱プロセス中の冷却すなわち遮光によって形成され得る。
【0016】
このために、好都合にも、細長い領域が、周方向に延在するそれぞれリブまたはウェブ状のより幅広な部分を備え、その部分は周方向に、その周囲の1/8未満まで延在することを提供する。
【0017】
本明細書で説明する全ての実施形態では、好都合にも、変形プロセス中にプラスチック輪郭体の内部に50〜500mbarの圧力が作用することが提供される。
【0018】
上述の方法の変形例では、2つの異なるプラスチック部品を使用することによって、ストラップ状領域が、内側の第2のプラスチック部品が輪郭体の周囲の全体または大部分に延在するように、この第2のプラスチック部品によって形成され、それゆえ、変形プロセス中に両プラスチック部品がそれらの融点を超えるまで、例えば223℃を超えて加熱されるときに、プラスチック母材との層間接合を形成することを提供する。
【0019】
本発明による方法の別の変形例は、内部成形圧力を高めるために、プラスチック輪郭体の内部に、変形プロセスの完了時にプラスチック輪郭体の内側に留まる耐熱性の軽量な発泡体を備え、好ましくはかさ密度範囲が30〜50kg/mである硬質フォームポリエーテルスルホン材料を使用することを特徴とする。
【0020】
以下、図面と併せて例示的な実施形態によって本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のプラスチック輪郭体のセクションの概略的な斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図示のプラスチック輪郭体1はプラスチック母材2からなる。
【0023】
長手方向に平行に複数の強化繊維が延在しており(明確には図示せず)、母材2に混入されている。
【0024】
さらに、第2のプラスチック部品からのストラップ状領域3が組み込まれており、ストラップ状領域3は長手方向に延在し、かつ周方向に延在する横断方向ウェブ4を備える。第2のプラスチック部品の融点は第1のプラスチック部品の融点よりも高く、それにより、第1のプラスチック部品が溶融されて変形されるときでも、第2のプラスチック部品は依然として残留安定度を確実に保有するので、変形プロセス中に強化繊維を波状に変位させないようにすることを保証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混入繊維で強化されたプラスチック輪郭体を基にした成形品の製造方法であって、前記プラスチック輪郭体が加熱されて、それぞれ外型や内型によって変形される方法において、
前記プラスチック輪郭体が、好ましくは長手方向に延在するストラップ状領域を備え、そのストラップ状領域は比較的硬質であり、かつプラスチック母材の変形温度にて前記プラスチック母材自体よりも可撓性が低く、前記繊維が横方向に波状に変位することを防止することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ストラップ状領域が、前記プラスチック輪郭体と一体となっているかまたは前記プラスチック輪郭体に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストラップ状領域が、形成プロセスの完了時に前記プラスチック母材の内側に留まるか、または前記プラスチック母材から除去されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ストラップ状領域が、組み込まれた第2のプラスチック部品によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プラスチック母材の変形温度に達したときに前記第2のプラスチック部品のガラス転移点をちょうど超えるように、前記第2のプラスチック部品を選択することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック母材がポリアミド6であり、前記第2の部品が非結晶のPESポリエーテルスルホンまたはPESポリエーテルイミドであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ストラップ状領域が、後に続く熱変形プロセス中に前記輪郭体の曲線のアペックスラインに従うように前記プラスチック輪郭体に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ストラップ状領域が、前記輪郭体の周囲の1/8未満の領域にわたって周方向に延在する弾性金属ストラップによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
例えば、特に接地目的のためもしくは避雷保護のために導電性を与えることにより歪みゲージとしての、または破裂センサとしての機能を果たす変形プロセスの完了時に、前記弾性金属ストラップが前記プラスチック輪郭体の内側に留まることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ストラップ状領域が、これらの周囲の領域よりもこれらの領域の加熱を弱めることによって形成され、それゆえ、前記プラスチック母材に対してより硬質なフレームとして留まることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ストラップ状領域が、冷却や遮光によって形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ストラップ状領域がそれぞれ、周方向にリブ状やウェブ状のより幅広な部分を備え、その部分は周方向に、周囲の1/8未満まで延在することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
変形プロセス中に前記プラスチック輪郭体の内側は、50〜500mbarの低い圧力の作用を受けることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ストラップ状領域が、内側の第2のプラスチック部品が前記輪郭体の周囲の全体または大部分に延在するように、この第2のプラスチック部品によって形成され、それにより、両プラスチック部品が変形プロセス中にそれらの融点を超える温度まで、例えば223℃を超えて加熱されるとき、前記プラスチック母材と層間接合を形成することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項15】
内部成形圧力を高めるために、前記プラスチック輪郭体の内側に、変形プロセスの完了時に前記プラスチック輪郭体の内側に留まる耐熱性の軽量な発泡体を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記発泡体が、かさ密度範囲が30〜50kg/m3の硬質フォームのポリエーテルスルホン材料であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法に従って製造されたプラスチック成形品。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540289(P2010−540289A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527340(P2010−527340)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007252
【国際公開番号】WO2009/046795
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510091273)サーモプラスト コンポジット ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】