説明

プラスチック油化用シリカアルミナ触媒及びそれを用いたプラスチック油化装置、プラスチック油化方法

【課題】熱分解したプラスチックから発生する分解ガスを効率よく低分子化させることが可能なシリカアルミナ触媒、プラスチック油化装置、プラスチック油化方法を提供する。
【解決手段】
熱分解したプラスチックから発生する分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化するプラスチック油化用のシリカアルミナ触媒において、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒を提供する。これにより、飛躍的に油化効率を高めることが可能となる。又、当該シリカアルミナ触媒を用いたプラスチック油化装置、プラスチック油化方法であっても、同様の効果を得ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック油化用シリカアルミナ触媒及びそれを用いたプラスチック油化装置、プラスチック油化方法に関し、詳しくは、熱分解したプラスチックから発生する分解ガスを効率よく低分子化させることが可能となるとともに、メンテナンスコスト、ランニングコストを低く抑えることが可能なプラスチック油化用シリカアルミナ触媒及びそれを用いたプラスチック油化装置、プラスチック油化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油の枯渇等のエネルギー問題が顕在化する中、石油等から既に製造されたプラスチックを、再度、石油等へ油化(改質)する(廃)プラスチック油化技術の開発が重要視されている。
【0003】
従来のプラスチック油化技術として、シリカアルミナ触媒、ゼオライト触媒等の固体酸触媒を使用する技術が知られている。このような固体酸触媒は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含むプラスチックを効果的に分解・低分子化することが出来るとしている。
【0004】
しかしながら、一般の固体酸触媒を用いる従来の方法では、当該固体酸触媒の触媒活性が十分とは言えないため、プラスチック又はプラスチック溶融状態・熱分解状態から発生する分解ガス(熱分解ガス)から低分子化油(油化物、油状物ともいう)又は低分子化ガス(油化ガスともいう)へ低分子化(油化、分解)する場合の分解速度(油化速度)やプラスチック全体に対する分解油又は分解ガスの割合(分解効率、油化効率、収率ともいう)が不十分であるという問題があった。
【0005】
当該問題を解決するために、特開平9−302358号公報(特許文献1)では、特定の計算式によって求められた結晶化度が5%以下、シリカとアルミナとの重量比(SiO/Al)が90/10〜65/35、酸価が0.4mgKOH/g以下のシリカ・アルミナ触媒を、金属イオン処理した金属イオン処理シリカ・アルミナ触媒の存在下に、プラスチックを接触熱分解して油状物を製造することを特徴とするプラスチックの油化方法が開示されている。当該構成により、プラスチック、特にポリオレフィン及びポリスチレンを含む混合プラスチックであっても、油化を効率よく行うことができるとしている。
【0006】
又、特開2001−152163号公報(特許文献2)では、廃プラスチックスをシリカ・アルミナ触媒の存在下において加熱分解し、軽質油を分離する廃プラスチックスの油化方法において、上記シリカ・アルミナ触媒は、その比重が0.2〜0.4の多孔質土からなり、二酸化珪素と酸化アルミニウムとの合計含有量が70重量%以下で、かつ、この二酸化珪素と酸化アルミニウムとの組成比が、重量比で0.7〜1.7:1である廃プラスチックスの油化方法が開示されている。当該構成により、園芸用として利用され難い粒度の細かい多孔体の火山性軽石をそのまま利用することができるので、安価な触媒を利用することができるとしている。
【0007】
更に、特開2005−187794号公報(特許文献3)では、平均粒子径が30μm〜5mmの範囲にあり、安息角が10〜50度の範囲にあり、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ等の複合酸化物、ゼオライトおよび/または粘土鉱物の少なくとも1種からなり、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂から選ばれる少なくとも1種の廃プラスチックを液化しうる触媒作用を有する廃プラスチックの液化用無機酸化物粒子(1)、及び当該液化用無機酸化物粒子(1)を用いた廃プラスチックの液化法が開示されている。当該構成により、流動性に富んだ微粒の無機酸化物粒子を加えて加熱することによって、低い温度で液化するとともに、残渣も少なく、着色、臭気等が低減した燃料油が高収率で得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−302358号公報
【特許文献2】特開2001−152163号公報
【特許文献3】特開2005−187794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、熱分解されたプラスチック8mlに対して、前記シリカアルミナ触媒により分解された分解油(油化物)は6.95gであり、反応器に残った残渣量は2.14gであるため、油化効率(収率)は、プラスチックの比重を1(−)として投入したプラスチック重量を8gとすると、約76重量%であり、油化効率はそれほど顕著ではないという問題がある。
【0010】
又、特許文献2に記載の技術では、油化効率に対応する回収率は81〜82重量%であり、特許文献1と同様に、油化効率はそれほど顕著ではないという問題がある。
【0011】
更に、特許文献3に記載の技術では、油化効率が87〜97重量%であり、非常に高いものの、廃プラスチックと特定の無機酸化物粒子との混合物を所定の温度で加熱する構成(方法)であるため、油化しきれなかった残渣物を処理する場合、残渣物に無機酸化物粒子が残存するため、当該無機酸化物粒子の再利用には不向きであるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明者が鋭意研究を行った結果、画期的なアイデアに基づき、熱分解したプラスチックから発生する分解ガスを効率よく低分子化させることが可能となるとともに、メンテナンスコスト、ランニングコストを低く抑えることが可能なプラスチック油化用シリカアルミナ触媒及びそれを用いたプラスチック油化装置、プラスチック油化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るシリカアルミナ触媒は、熱分解したプラスチックから発生する分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化するプラスチック油化用のシリカアルミナ触媒を前提とする。
【0014】
本発明者は、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒を前記分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを効率的に低分子化することが出来ることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒である。当該構成により油化効率を飛躍的に向上させることが可能となる。更に、分解ガスにシリカアルミナ触媒を接触させて低分子化させるから、当該シリカアルミナ触媒と熱分解後の残渣物との混合が生じることなく、シリカアルミナ触媒自体の再使用が可能となり、メンテナンスコスト、ランニングコストを低く抑えることが可能となる。
【0016】
又、本発明は、前記シリカアルミナ触媒の気孔径が20〜150μmである構成とすることが出来る。
【0017】
又、本発明は、前記シリカアルミナ触媒の体積が1mm〜50mmである構成とすることが出来る。
【0018】
又、本発明は、前記シリカアルミナ触媒を用いたプラスチック油化装置としても提供することが可能である。即ち、プラスチックを熱分解することによって分解ガスを発生する熱分解槽と、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒が充填され、当該シリカアルミナ触媒を前記熱分解槽より導かれた分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化する触媒槽とを備えたプラスチック油化装置を採用することが出来る。
【0019】
当該構成により、従来のプラスチック油化装置と比較して、構成を簡単、単純化することが出来るにも関わらず、油化効率を飛躍的に高くすることが可能となる。又、分解ガスにシリカアルミナ触媒を接触させる構成であるから、半永久的にシリカアルミナ触媒を再使用することが可能となり、メンテナンスコスト、ランニングコストを低く抑えることが可能となり、コストパフォーマンスを飛躍的に高めることも可能となる。
【0020】
又、前記プラスチック油化装置において、前記触媒槽は、雰囲気温度を300〜400度として前記シリカアルミナ触媒を前記分解ガスに当該分解ガス状態のままで接触させるよう構成することが出来る。
【0021】
又、本発明は、前記シリカアルミナ触媒を用いたプラスチック油化方法としても提供することが可能である。即ち、プラスチックを熱分解することによって分解ガスを発生する熱分解ステップと、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒を前記分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化する低分子化ステップとを含むプラスチック油化方法を採用することが出来る。
【0022】
当該構成により、従来のプラスチック油化方法と比較して、少ないステップ数(工程数)であるにも関わらず、油化効率を飛躍的に高くすることが可能となる。又、分解ガスにシリカアルミナ触媒を接触させる構成であるから、上記と同様に、メンテナンスコスト、ランニングコストを低く抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、熱分解したプラスチックから発生する分解ガスを効率よく低分子化させることが可能となるとともに、メンテナンスコスト、ランニングコストを低く抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るプラスチック油化装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例と比較例とにおける燃料液中のn−パラフィン相当炭素数分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、以下、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、以下に記述するシリカアルミナ触媒に、熱分解したプラスチックから発生する分解ガスを所定温度で接触させることによって、低分子化するものである。
【0026】
<シリカアルミナ触媒>
本発明に係るシリカアルミナ触媒の成分構成は、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が89〜100重量%である。
【0027】
本発明に係るシリカアルミナ触媒は、前記成分に対応する原料が混合(配合)され、所定温度で溶融されて、所定の形状に押出成形され、押出の際に溶融物が冷却されることによって得られ、多孔質セラミックに対応する。得られたシリカアルミナ触媒は、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%である。更に、当該シリカアルミナ触媒は、気孔径が20μm〜150μmである細孔を備えた多孔質セラミックである。
【0028】
前記押出成形品の形状は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はないが、基本的な体積は1mm〜50mm程度であり、この体積は、後述する触媒槽(充填槽)に充填した際に、分解ガスが前記シリカアルミナ触媒に十分に接触し、且つ、目詰まりを起こさない程度を意味する。
【0029】
本発明は、前記のような基本的な成分(組成)、見掛け比重、気孔率を有するシリカアルミナ触媒に対して分解ガスを所定温度で接触させることによって、低分子化する。
【0030】
ここで、本発明のシリカアルミナ触媒の成分は、上記したように、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有されることが必要である。上述した各成分(SiO、Al、CaO)をシリカアルミナ触媒全体に対してそれぞれ適切な重量比率(配合比率)で含有することにより、珪素(Si)、酸素(O)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)の各元素が適切な結合力で均衡して結合され、分解ガスを低分子化する触媒活性が生じる。これにより、分解ガスを効率よく低分子化することが可能となる。
【0031】
各成分の重量比率の制御は、例えば、シリカアルミナ触媒を製造する際の原料(例えば、珪石、アルミナ、石灰石等)の配合量、製造時の焼成温度、焼成時間等を変更することにより制御することが出来る。
【0032】
ここで、本発明のシリカアルミナ触媒の成分において、SiOを41〜44重量%、Alを14〜16重量%、CaOを37〜40重量%含有する構成とすると、より好ましい触媒効果を得ることができる。逆に、SiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%よりはずれた領域では、充分な触媒活性を発揮することができない。
【0033】
又、本発明のシリカアルミナ触媒の三成分(SiO、Al、CaO)の合計量が(シリカアルミナ触媒)全量(全体量)100重量%に対して89〜100重量%であることが必要である。上述した三成分がシリカアルミナ触媒全体に対して大部分を占めることにより、上述した触媒活性が生かされ、効率よく分解ガスを低分子化することが可能となる。尚、三成分の合計量が全量100重量%とならない場合は、当該シリカアルミナ触媒には、SiO、Al、CaO以外の成分(例えば、無機物)を含んだ触媒となるが、通常、シリカアルミナ触媒を製造するための原料には、純度に応じて、例えば、鉄、マンガン、マグネシウム等の無機物が少量含まれているため、これらを含む構成であっても問題はない。尚、三成分の合計量が前記シリカアルミナ触媒100重量%に対して89重量%未満の場合には、上述した触媒活性が損失する場合があり、好ましくない。
【0034】
本発明のシリカアルミナ触媒と分解ガスとの接触において、見掛け比重、気孔率は、大きな接触面積を得る上で重要である。
【0035】
本発明のシリカアルミナ触媒の見掛け比重は、上述したように、0.8〜1.5であることが必要である。この所定範囲の見掛け比重とすることにより、触媒活性が存在するシリカアルミナ触媒内部の比表面積を広げ、分解ガスを効率よく低分子化することが可能となる。
【0036】
更に、本発明のシリカアルミナ触媒の見掛け比重が1.0〜1.2である構成とすると、触媒活性を維持しつつシリカアルミナ触媒内部の比表面積を広げることとなり、分解ガスに対する分解効率(油化効率)が向上し、特に好ましい。逆に、見掛け比重が0.8未満あるいは1.5を越える場合には、シリカアルミナ触媒の各成分の均衡が崩れ、上述した触媒活性が損失する場合があり、好ましくない。
【0037】
尚、見掛け比重の測定方法は、典型的には、JIS K2151の少量法に基づいて測定することが出来る。又、SiO単体の比重が約2.0であり、Al単体の比重が約3.8であり、CaO単体の比重が約3.3であるため、シリカアルミナ触媒の各成分の重量比率等に応じて、シリカアルミナ触媒の見掛け比重は当然に変動するものの、当該見掛け比重の制御は、例えば、シリカアルミナ触媒を製造する際の原料の配合量、製造時の焼成温度、焼成時間等を変更することにより制御することが出来る。
【0038】
本発明のシリカアルミナ触媒の気孔率は、上述したように、50〜60%であることが必要である。上述した所定範囲の気孔率(空孔率)とすることにより、シリカアルミナ触媒内部に複数の細孔(孔、気孔)が存在し、分解ガスが接触するシリカアルミナ触媒の表面(細孔表面)の面積を広げ、分解ガスを効率よく低分子化ガスに分解することが可能となる。
【0039】
更に、本発明のシリカアルミナ触媒の気孔率が52〜57%である構成とすると、上述した触媒活性を維持しつつ細孔表面面積を広げることとなり、分解ガスに対する分解効率が更に向上し、好ましい。逆に、気孔率が50%未満あるいは60%を越える場合には、シリカアルミナ触媒の各成分の均衡が崩れ、上述した触媒活性が損失する場合があり、好ましくない。
【0040】
尚、気孔率の測定方法は、典型的には、水銀圧入式の水銀細孔計(水銀ポロシメータ)を用いてシリカアルミナ触媒の真比重を測定し、当該真比重と上述した見掛け比重と次式とに基づいて気孔率(単位:%)を算出することが出来る。
【0041】
気孔率(%)=100×[1−(見掛け比重/真比重)]
【0042】
又、前記気孔率の制御は、例えば、シリカアルミナ触媒を製造する際の原料の配合量、製造時の焼成温度、焼成時間、冷却速度等を変更することにより制御することが出来る。
【0043】
当然であるが、本発明は、分解ガスに当該分解ガス状態(気体状態)のままで前記シリカアルミナ触媒と接触させる。これにより、分解ガスが、分解ガスを構成する炭化水素(ポリオレフィン、n−パラフィン、所定の炭素数であるアルカン)の単結合(一重結合)が切断され易い状態で、前記シリカアルミナ触媒と接触し、当該接触により、炭化水素の単結合とシリカアルミナ触媒の触媒活性(点)との作用が効率よく実現され、当該単結合が容易に切断されて、分解ガスを低分子化することが可能となると推察される。ここで、分解ガスが低分子化された低分子化ガスは、いわゆる低沸点炭化水素(炭素数が20以下である炭化水素)を含むものである。又、分解ガスにシリカアルミナ触媒を接触させて低分子化させるから、当該シリカアルミナ触媒と熱分解後の残渣物との混合が生じることなく、シリカアルミナ触媒自体の再使用が可能となり、メンテナンスコスト、ランニングコストを低く抑えることが可能となる。
【0044】
前記分解ガスに前記シリカアルミナ触媒を接触させる方法は、どのような方法でも構わないが、例えば、前記シリカアルミナ触媒を前記分解ガスに接触させる際に雰囲気温度を300〜400度にして当該分解ガスに接触させるよう構成することが出来る。当該構成とすれば、分解ガスがシリカアルミナ触媒に接触した際に、当該分解ガスがシリカアルミナ触媒により自己の熱を奪われて冷却・凝縮される{つまり、分解ガスが気体状態から液体状態へ変態(遷移)する}ことを防止し、分解ガス状態のままで当該分解ガスとシリカアルミナ触媒とを作用させることが可能となる。尚、前記雰囲気温度は、分解ガスの発生源であるプラスチックの成分(組成)に応じて変動するものの、例えば、プラスチックの成分が汎用プラスチック(汎用ポリエチレン、汎用ポリプロピレン、汎用ポリスチレンを含むプラスチック)である場合、当該雰囲気温度が300〜400度とすると、プラスチックの成分の種類に限定を加えることなく低分子化・油化することが可能となる。
【0045】
ここで、雰囲気温度とは、シリカアルミナ触媒と分解ガスとが存在する空間の温度(周囲温度)に対応し、例えば、シリカアルミナ触媒を充填した触媒槽に分解ガスを送り込む場合、当該触媒槽内部又は外周近傍の温度に対応する。前記雰囲気温度が300〜400度とする場合、通常用いられる加熱装置を当該触媒槽外部又は外周近傍に設置して、触媒槽内部又は外周近傍の温度(雰囲気温度)を300〜400度にすればよい。尚、上述した雰囲気温度を300〜400度と設定する理由は、当該設定温度範囲では、分解ガスが炭化しない(分解ガスが焼けない)ためである。
【0046】
更に、本発明の前記雰囲気温度が340〜360度である構成とすると、分解ガスの液化及び炭化を適切に防止することが可能となり、分解ガスに対する油化効率が向上し、特に好ましい。一方、雰囲気温度が300度未満あるいは400度を超える場合には、分解ガスが液化するかあるいは炭化する場合があり、好ましくない。
【0047】
又、本発明のシリカアルミナ触媒を前記分解ガスに当該分解ガス状態のままで接触させる場合、本発明の目的を阻害しない限り、反応圧力(周囲圧力)はどのような値(大きさ)であっても構わない。例えば、シリカアルミナ触媒が分解ガスを当該分解ガス状態のままで接触させることが出来るのであれば、自然圧(例えば、標準大気圧である101.325kPa)であっても、当該自然圧に対して分解ガスの圧力を加圧しても減圧しても構わない。
【0048】
又、本発明のシリカアルミナ触媒の気孔径(孔径、平均気孔径)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はないが、例えば、本発明のシリカアルミナ触媒の気孔径が20〜150μmである構成とすると、シリカアルミナ触媒内部に複数の細孔が密集した多孔質セラミックとなるから、当該シリカアルミナ触媒内を通過した分解ガスが接触する当該シリカアルミナ触媒内の接触面積を広げ、分解ガスを効率よく低分子化することが可能となる。一方、気孔径が20μm未満あるいは150μmを超える場合には、上述した油化効率が低下する場合があり、好ましくない。
【0049】
尚、気孔径の測定方法は、典型的には、市販の光学顕微鏡写真を用いて写真内の気孔の孔径を測定することにより算出することが出来る。例えば、本発明のシリカアルミナ触媒の気孔径は、以下の方法により測定した。即ち、シリカアルミナ触媒の表面の顕微鏡写真(50倍率)を所定数(例えば、3枚)撮影し、表面上に存在する気孔を特定後、特定した各気孔(例えば、数十個/枚)の直径を測定して平均値を算出することにより気孔径を算出した。尚、シリカアルミナ触媒の表面に存在する気孔を拡大した顕微鏡写真(100倍率)を撮影し、撮影された表面の気孔から観察されるシリカアルミナ触媒の気孔の直径と、先ほど算出された平均値(気孔径)とがほぼ同等であることを確認して、当該平均値をシリカアルミナ触媒の気孔径とした。
【0050】
本発明のシリカアルミナ触媒の体積(大きさ)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく許容される。即ち、上述したように、前記分解ガスが十分に本発明のシリカアルミナ触媒と接触するとともに、当該シリカアルミナ触媒が充填された触媒槽に分解ガスを通過させた際に当該分解ガスが目詰まりを起こさない範囲であれば、どのような体積でも構わない。例えば、本発明のシリカアルミナ触媒の体積が1mm〜50mmである構成とすると、当該シリカアルミナ触媒を所定体積の容器(例えば、体積1.2×10mmである円筒状の容器)に充填した場合、十分な充填率を確保することが可能となり、当該容器に分解ガスを通過させた際に当該分解ガスを当該シリカアルミナ触媒に十分に接触させることが可能となる。更に、当該容器に分解ガスを通過させても、当該分解ガスの風圧によりシリカアルミナ触媒が飛び散ったり、シリカアルミナ触媒同士が形成する空隙(空間)に飛び散ったシリカアルミナ触媒が詰まって容器全体として目詰まりを起こすことがなく、メンテナンス等が容易となるため、好ましい。一方、体積が1mm未満あるいは50mmを越える場合には、シリカアルミナ触媒の粒子間の空隙が大きくなり、当該シリカアルミナ触媒と分解ガスとの接触面積が低下したり、分解ガスが目詰まりを起こしたりして、油化効率が低下する場合があり、好ましくない。
【0051】
本発明のシリカアルミナ触媒の形状は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、例えば、球状、粒状、円柱状、粉状、粒状、平板状、ペレット状、パイプ(円筒)状、ハニカム状等が採用される。例えば、基本的には、直径1.0mm、長さ10.0〜15.0mm程度の円柱形状のシリカアルミナ触媒(体積15.7mm〜23.6mm程度のシリカアルミナ触媒)が許容される。
【0052】
更に、本発明のシリカアルミナ触媒の形状が円柱状であり、当該シリカアルミナ触媒が無数に存在する場合、当該円柱状の平均直径が0.5〜2.0mmの範囲であり、当該円柱状の平均長さが2.0〜15.0mmの範囲である構成(体積1.6mm〜47.1mm程度)としても良いし、本発明の目的を阻害しない限り、各シリカアルミナ触媒における円柱状の直径が0.5〜2.0mmの範囲に含まれ、各シリカアルミナ触媒における円柱状の高さが2.0〜15.0mmの範囲に含まれる構成としても良い。一方、前記円柱状の直径が0.5mm未満あるいは2.0mmを越える場合、又は前記円柱状の高さが2.0mm未満あるいは15.0mmを越える場合には、前記分解ガスの風圧で前記シリカアルミナ触媒が巻き散ったり、当該シリカアルミナ触媒が長すぎて所定の触媒槽に充填することが出来なくなる場合があり、好ましくない。
【0053】
<シリカアルミナ触媒の製造方法>
本発明のシリカアルミナ触媒を製造する方法は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、例えば、公知のシリカアルミナ触媒製造方法、特開2008−36616号公報に記載されているような多孔質セラミックの製造方法を採用しても構わない。
【0054】
例えば、市販の珪石(主としてSiO含有)を70重量部と、市販のアルミナ(主としてAl含有)を25重量部と、市販の石灰石(主としてCaCO含有、CaOはCaCO100重量%に対して約56重量%含有)を115重量部とを所定の溶解炉に投入し、市販のヒータを用いて溶解炉内部を常温25度から900度まで所定の時間(例えば、1〜3時間)で昇温し、配合した珪石、アルミナ、石灰石を溶解する。当該昇温過程が各配合成分の酸化焼成工程に対応する。次に、昇温完了後、更に、溶解炉内部を900度から1500度まで所定の時間(例えば、数時間)で昇温する。当該昇温過程が各配合成分の還元焼成工程に対応する。昇温後、溶融物を、直径1.0mm程度の孔を備えた口金を有する所定の押出機に投入し所定の吐出量で押出成形することにより、溶融物を固化、冷却して円柱状のシリカアルミナ触媒(多孔質セラミック)を得ることが出来る。前記溶融物は、自然冷却、所定の冷却器等で冷却しても構わない。又、上述した珪石、アルミナ、石灰石の配合量は、純度、焼成温度、焼成時間等に応じて適宜調整される。
【0055】
<プラスチック>
本発明のシリカアルミナ触媒が接触する分解ガスの発生源、即ち、(廃)プラスチックは、熱分解するプラスチックであれば、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、エチレン系ワックス状重合体、プロピレン系ワックス状重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム(NBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ポリブタジエンゴム(BR)等が挙げられる。これらのプラスチックは、農業用品では、温室フィルム、マルチ用フィルム等の農業用ポリフィルム、結束バンド、ポール、プラスチック容器等を、水産業用品では、魚網、養殖用網、海苔の簾、ロープ、バケツ、浮き、ブイ等の漁具、プラスチック容器等を、食品業用品では、食品トレー、卵、野菜等の包装ラップ、コンビニ袋、菓子袋等を、日用品では、洗剤容器、シャンプー容器、灯油容器、発泡スチロール、家電機器、OA機器、文具、玩具等を回収して使用される。尚、本発明では、分解ガスをシリカアルミナ触媒に接触させるため、前記プラスチックには、充填剤、各種添加剤、着色料、メタル層等を含んでいても構わない。
【0056】
又、本発明において熱分解されるプラスチックは出来るだけ小さいもの、必要に応じて、粉砕、細断したもの、又は圧延して薄くしたものが好ましく、プラスチックの大きさは、例えば、2.0〜50.0mmが好ましい。
【0057】
又、本発明において前記プラスチックを熱分解して、分解ガスを発生させる方法は、どのような方法でも構わないが、例えば、プラスチックを投入した熱分解槽(例えば、溶融炉)を、通常用いられる加熱装置により、当該プラスチックの溶融温度よりも高く分解温度(解重合温度)よりも低い温度(以下、熱分解温度とする)で加熱し、加熱された熱分解槽内の溶融状態(液体状態)のプラスチックを撹拌することにより分解ガスを発生させる方法が挙げられる。熱分解温度は、プラスチックの成分に応じて変動するものの、例えば、プラスチックの成分が汎用プラスチックである場合、当該熱分解温度は、300〜500度とする構成とすると、プラスチックの成分の種類に限られずに油化することが可能となる。前記熱分解温度は、分解ガスとシリカアルミナ触媒とを接触させる際の雰囲気温度との関係から、340度〜460度が、特に好ましい。
【0058】
<低分子化ガス>
本発明のシリカアルミナ触媒により低分子化された低分子化ガスは、低沸点炭化水素を含むガスであるため、そのまま空気(酸素)とともに燃焼させるための燃料ガスとして利用しても構わないし、低分子化ガスを冷却することによって得られる低分子化液(液化油、油化物、炭化水素油)を燃料油として利用しても構わない。尚、低沸点炭化水素油を炭素数で分類する場合、炭素数が4〜10であれば、燃料油がガソリンとして使用され、炭素数が10〜14であれば、燃料油が灯油として使用され、炭素数が14〜20であれば、燃料油が軽油として使用される。
【0059】
本発明のシリカアルミナ触媒により得られた燃料ガス又は燃料油は、当該燃料ガス又は燃料油を空気(酸素)とともに燃焼することにより動力を得る燃焼装置に使用されるのであれば、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、例えば、船舶、フォークリフト等の輸送用機器、住宅、ホテル、旅館、プール、温浴施設、暖房等に使用される一般ボイラ、一般ストーブ、建設重機、農業用重機、航空機、製造業バーナー、小型発電機、小型コージェネレーター、ゴミ収集車、マイクロバス等の公用車、ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン,プロパンガスエンジン,ジェットエンジン等の各種の内燃機関、火力発電機、軽自動車、自動車(乗用車),小型トラック,大型トラック、バス,オートバイ等が挙げられる。尚、燃焼装置が採用される分野は、工業はもちろん、農業、医療、運輸、航空、宇宙産業等が挙げられる。
【0060】
<プラスチック油化装置>
本発明のシリカアルミナ触媒を用いたプラスチック油化装置は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はないが、上記したシリカアルミナ触媒を用いたプラスチック油化装置の一実施態様例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0061】
図1は、本発明の実施形態に係るプラスチック油化装置の概略図である。
【0062】
熱分解槽2は、略円筒形に構成され、当該熱分解槽2の上方に設けられた開閉可能な投入口21を介して、破砕・切断された(廃)プラスチックが当該熱分解槽2内部に投入されるよう構成される。投入口21には、例えばスクリュー軸の回転により一端から他端へプラスチックを搬送する搬送装置(スクリュー型押出装置、図示しない)が設けられ、原料となる(廃)プラスチックが、投入口21を介して熱分解槽2に、所定の時間、所定の量だけ投入されるよう構成になっている。
【0063】
前記熱分解槽2は、当該熱分解槽2の外周面を覆うように配置された電気ヒータ等の熱分解槽加熱装置22を備え、前記熱分解槽2内部に投入されたプラスチックを溶融、熱分解するよう構成される。尚、前記熱分解槽加熱装置22は、市販の電気ヒータでもよいし、熱効率の高い特殊な電気ヒータでも構わない。熱効率の高い特殊な電気ヒータを採用すれば、電気使用料を抑えながら油化効率を維持することが可能となる。
【0064】
前記熱分解槽2には、当該熱分解槽2の内部に配置された撹拌羽23を所定の回転速度で回転する撹拌装置24を備え、当該撹拌装置24が、溶融状態、熱分解状態のプラスチックを前記熱分解槽2内部で撹拌することにより、当該プラスチックに均等に熱が伝達するようにして、当該プラスチックの溶解効率、熱分解効率を高める。尚、前記撹拌装置24は、後述するプラスチック油化装置の駆動を制御する制御装置25により制御される。
【0065】
又、前記熱分解槽2は、当該熱分解槽2の下方に、溶融又は熱分解出来なかった残渣物(不揮発性の炭素質分、プラスチックに含まれる金属片、無機物、何らかの原因により炭化したプラスチック等)を外部に抜き出しする残渣物排出口26を備え、当該残渣物の抜き出しは、当該残渣物排出口26に取り付けた残渣物開閉バルブ27により調整される。
【0066】
又、前記熱分解槽2は、当該熱分解槽2の内部の温度(熱分解温度)を計測する熱分解温度センサ28を備え、当該熱分解温度センサ28により当該熱分解槽2の内部温度(熱分解温度)は随時測定、監視される。
【0067】
更に、前記熱分解温度センサ28と前記熱分解槽加熱装置22とは、前記制御装置25に接続され、例えば、当該制御装置25に備えられた操作パネル25aを介して、ユーザが熱分解温度として所定の温度(以下、熱分解設定温度とする)を設定すると、当該制御装置25が、前記熱分解温度センサ28からの測定温度と熱分解設定温度とが一致するように、前記熱分解槽加熱装置22を駆動(例えば、電気ヒータに電流を印加)するよう構成される。
【0068】
熱分解設定温度は、上述したように、熱分解されるプラスチックの種類に応じて適宜設計変更されるものの、例えば、300度〜450度に設定されると、投入するプラスチックのうち、大部分が汎用プラスチックであるから、効率よく熱分解することが可能となり好ましい。
【0069】
又、前記熱分解槽2は、当該熱分解槽2の上方に設けられた分解ガス放出口29を介して、内部で発生した分解ガスを前記改質槽3に放出(導入、案内)する。ここで、前記熱分解槽2の分解ガス放出口29と、前記改質槽3の下方に設けられた分解ガス導入口31とは、例えば、断熱材により外周が覆われた分解ガス案内配管51により接続され、当該熱分解槽2から発生した分解ガスが当該改質槽3へ導入されるとともに、当該改質槽3内部へ案内される途中の分解ガスが外気等により急冷・凝縮されることを防止する。
【0070】
尚、前記熱分解槽2の内圧は、本発明の目的を阻害しない限り、特に調整しておらず、自然圧であるが、必要に応じて、内部圧力センサや内圧制御装置を追加しても構わない。
【0071】
次に、前記改質槽3は、当該改質槽3の内部に、本発明に係るシリカアルミナ触媒33が充填され、下方から上方に向かって分解ガスが通過することが可能な触媒槽32を備え、当該触媒槽32内部を分解ガスが通過することにより、シリカアルミナ触媒33が分解ガスの低分子化を促進し、分解ガスを低分子化ガスとする。ここで、前記触媒槽32に充填されるシリカアルミナ触媒33の充填量は、分解ガスの発生源のプラスチックの種類、プラスチックの投入量、単位時間当たりの分解ガスの発生量、触媒槽32に対する分解ガスの透過量(透過流量)、触媒槽32の体積、シリカアルミナ触媒33の体積、形状、大きさ等に応じて異なるものの、1時間当たり5〜10リットルの低分子化液を得たい場合、触媒槽32の体積が1.2×10mmであり、シリカアルミナ触媒33の体積が1mm〜50mmであれば、500〜1000gが好ましく、700〜800gが特に好ましい。
【0072】
前記触媒槽32は、前記シリカアルミナ触媒33が充填され、一方向に向かって(例えば、下方から上方に向かって)分解ガスが通過することが可能な触媒槽32であれば、どのような構成でも構わないが、例えば、以下の構成が採用される。
【0073】
即ち、図1に示す触媒槽32は、上下の底面が開放され、前記改質槽3に納まる大きさである円筒321で構成されるとともに、当該円筒321の上面と下面とには、本発明に係るシリカアルミナ触媒の大きさよりも目の細かい耐熱フィルター32a、32b(例えば、ステンレス製の金網)がそれぞれ取り付けられ、本発明のシリカアルミナ触媒が、触媒槽32から抜き出ない(零れない)ようにしている。更に、下面に取り付けられた耐熱フィルター32bの上面には、直径10〜15mm程度のガラス球32cが所定数(例えば、三段層となる数)配置され、上面に取り付けられた耐熱フィルター32aの上面も同様に、所定数(例えば、二段層となる数)のガラス球32dが配置されている。当該構成により、ガラス球32c、32dの重みで、当該触媒槽32が分解ガスの圧(風圧)に対して当該触媒槽32が振動したり吹き飛ばされたりしないようにしており、触媒槽32を簡単にし、前記シリカアルミナ触媒33が飛散するのを確実に防止することが可能となる。
【0074】
又、前記触媒槽32は、下端部に、上端部の内径を当該触媒槽32の内径(円筒321の内径)とし、下端部の外径を前記改質槽3の内径とするダクト322が取り付けられ、当該ダクト322が、分解ガス導入口31から導入された分解ガスを確実に触媒槽32の下端部へ案内するよう構成される。
【0075】
続いて、前記改質槽3は、前記熱分解槽2と同様に、当該改質槽3の外周面を覆うように配置された改質槽加熱装置34を備え、当該改質槽加熱装置34が、改質槽3内部に導入された分解ガスを加熱して、当該分解ガスが触媒槽32を通過する際に当該分解ガスが当該分解ガスの状態のままで前記触媒槽32を通過するよう構成される。当該改質槽加熱装置34を設けることにより、分解ガスが改質槽3に導入された直後又はそれ以降、何らかの原因により冷却・凝縮されることを防止する。尚、前記改質槽加熱装置34は、前記熱分解槽加熱装置22と同様に、所定の断熱材(図示せず)により外部と断熱されている。
【0076】
又、前記改質槽3は、前記熱分解槽2と同様に、当該改質槽3内部(触媒槽33内部又は外周近傍)の温度(雰囲気温度)を計測する改質温度センサ35を備え、当該改質温度センサ35により当該改質槽3の内部温度(雰囲気温度)は随時測定、監視される。
【0077】
更に、前記改質温度センサ35と前記改質槽加熱装置34とは、上述した制御装置25に接続され、例えば、上述した操作パネル25aを介して、ユーザが雰囲気温度として所定の温度(以下、雰囲気設定温度とする)を設定すると、当該制御装置25が、前記改質温度センサからの測定温度と雰囲気設定温度とが一致するように、前記改質槽加熱装置34を駆動するよう構成される。
【0078】
雰囲気設定温度は、上述したように、熱分解されるプラスチックの種類に応じて適宜設計変更されるものの、例えば、300度〜400度に設定されると、分解ガスを効率よく低分子化することが可能となり好ましい。尚、350度前後が触媒の効果を高める上で特に好ましい。
【0079】
前記触媒槽32の上方には、上方開口部32eと連通した低分子化ガス放出口36が設けられ、当該低分子化ガス放出口36を介して低分子化ガスを冷却槽4に導入する。ここで、前記改質槽3の低分子化ガス放出口36と、前記冷却槽4の上方に設けられた低分子化導入口41とは、上述した分解ガス案内配管51と同様に、断熱材により外周が覆われた低分子化ガス案内配管52により接続され、当該改質槽3から放出された低分子化ガスが当該冷却槽4へ導入されるとともに、当該冷却槽4内部へ案内される途中の低分子化ガスが外気等により急冷・凝縮されることを防止する。
【0080】
尚、前記改質槽3の内圧は、本発明の目的を阻害しない限り、特に調整しておらず、自然圧であるが、前記熱分解槽2と同様に、必要に応じて、内部圧力センサや内圧制御装置を追加しても構わない。
【0081】
さて、前記冷却槽4の冷却方式は、どのような冷却方式でも構わないが、例えば、常温水(水道水)等の冷媒が循環される空間内を蛇行する蛇行配管に、低分子化ガスを導入して冷却・凝縮させる蛇管冷却器(コンデンサー、熱交換器)が採用される。
【0082】
即ち、図1に示す冷却槽4は、内部に、冷媒が導入・貯留され、貯留された冷媒内を蛇行する蛇管42を備え、当該蛇管42が上述した低分子化導入口41と接続されることにより、低分子化ガスが冷媒と混合することなく当該冷媒に熱を伝達し、当該冷媒の温度程度まで冷却される。尚、前記冷却槽4は、冷媒が、冷却槽4内に導入・貯留・放出を行なえるように、当該冷却槽4の上方に、冷媒導入口43が、当該冷却槽4の下方に、冷媒放出口44が設けられ、当該冷媒導入口43と当該冷媒放出口44とは、前記蛇管42と接続(連通)されることはない。
【0083】
又、前記冷却槽4は、当該冷却槽4の下方に、低分子化ガスが冷却された後の低分子化液を外部に抜き出しする低分子化液排出口45を備え、当該低分子化液排出口45は、蛇管42の開口部のうち、低分子化導入口41と接続されていない開口部と連通されている。低分子化液の抜き出しは、当該低分子化液排出口45に取り付けた低分子化液開閉バルブ46により調整される。
【0084】
以上が、最も典型的なプラスチック油化装置の一実施態様例の説明である。
【0085】
尚、図1に示すプラスチック油化装置の熱分解槽加熱装置22、改質槽加熱装置34は、電気ヒータを採用しているが、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、ガスバーナー、熱風炉を用いても構わない。
【0086】
又、図1に示すプラスチック油化装置の改質槽3(触媒槽32)は、槽式(バッチ式)で構成しているが、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、スクリュー式等の形式であっても構わない。
【0087】
又、図1に示すプラスチック油化装置の改質槽3(触媒槽32)は、一槽としているが、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、改質槽3(触媒槽32)の油化能力に応じて、複数の改質槽を直列に接続したり並列に接続したりした多段式の改質槽を構成しても構わない。
【0088】
又、図1に示すプラスチック油化装置の冷却槽4は、蛇管冷却器を採用しているが、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、冷媒式、通風式等公知の冷却槽を採用しても構わない。又、図1に示すプラスチック油化装置の冷却槽4において、冷媒が冷媒放出口44から放出されると、当該冷媒は所定の温度まで加熱されているため、当該冷媒をクーラー等の冷却装置を用いて低分子化ガスを冷却可能な温度(例えば、25度)まで冷却し、当該冷却した冷媒を冷媒導入口43へ導入して、当該冷媒を再利用するよう構成しても構わない。
【0089】
又、図1に示すプラスチック油化装置の冷却槽4は、一槽としているが、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、冷却槽の冷却能力に応じて、複数の冷却槽を直列に接続したり並列に接続したりした多段式の冷却槽を構成しても構わない。
【0090】
又、図1に示すプラスチック油化装置の冷却槽4は、低分子化ガスが冷却された低分子化液をそのまま採取するよう構成しているが、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定はなく、例えば、低分子化液は低沸点炭化水素油を含むことから、当該低沸点炭化水素油を分留、精製する精製装置(回収装置)を、前記冷却槽4の低分子化液排出口45と接続して、低沸点炭化水素油を自動的に、ガソリン、灯油、軽油等の所定の燃料油に分離するよう構成しても構わない。
【0091】
<実施例、比較例等>
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はその適用が本実施例に限定されるものでない。
【0092】
<シリカアルミナ触媒の調整>
市販(例えば、JFE ミネラル 株式会社)の珪石(SiO)(SiOの純度96%)を75重量部と、市販(例えば、住友化学 株式会社)のアルミナ(Al)(Alの純度93%)を25重量部と、市販(例えば、奥多摩工業株式会社)の石灰石(CaCO)(CaCOの純度95%、CaCO100重量%に対してCaOは約56重量%含有)を115重量部とを溶解炉に投入し、溶解炉内部を25度から900度まで所定の時間(例えば、2時間)で昇温して、各成分を溶融し、更に、溶解炉内部を900度から1500度まで所定の時間(例えば、4時間)で昇温した。昇温後の溶融物を、開口径が1.0mmである口金を有する押出機に投入して吐出量(約数百g/分)で押し出し、当該溶融物を所定の円柱形として急冷、固化してシリカアルミナ触媒を得た。得られたシリカアルミナ触媒を適宜切断(破砕)することにより、形状が円柱状で、当該円柱状の直径が1.0mmであり、当該円柱状の高さが5.0〜10.0mmである、プラスチック油化用のシリカアルミナ触媒とした。
【0093】
得られたシリカアルミナ触媒の各成分(SiO、Al、CaO)の重量比率は、以下のようになった。即ち、珪石の70重量部に対してSiOの配合量は67.2重量部、不純物の配合量は2.8重量部であり、アルミナの25重量部に対してのAlの配合量は23.25重量部、不純物の配合量は1.75重量部であり、石灰石の115重量部に対してCaCOの配合量は109.25重量部、不純物の配合量は5.75重量部である。ここで、加熱(焼成)されたCaCOはCaO(CaCO100重量%に対してCaOは約56重量%含有)となるから、CaOの配合量は、溶解炉内では、61.18重量部となる。そのため、シリカアルミナ触媒の全重量部は161.93重量部、SiOの配合量は67.2重量部、Alの配合量は23.25重量部、CaOの配合量は61.18重量部、不純物の配合量は10.3重量部となる。従って、前記シリカアルミナ触媒100重量%に対してSiOの含有量は41.5重量%、Alの含有量は14.4重量%、CaOの含有量は37.8重量%、三成分の合計量は93.7重量%となった。
【0094】
又、得られたシリカアルミナ触媒の見掛け比重を測定すると1.1であり、真比重を測定すると2.4であり、気孔率を測定すると54%であった。又、得られたシリカアルミナ触媒の気孔径を測定すると、平均値が85μmであった。
【0095】
<分解ガスのシリカアルミナ触媒との油化反応>
上述で得られたシリカアルミナ触媒と、図1に示したプラスチック油化装置1とを用いて、プラスチック油化反応を実行した。当該プラスチック油化装置1において、熱分解設定温度を450度に、雰囲気設定温度を350度に設定した。次に、450度まで加熱した熱分解槽2に、主成分がポリプロピレンである廃プラスチック数kg(例えば、1kg)を投入し、熱分解槽2内部に配置された撹拌翼23を所定の回転速度(例えば、数十回転/分)で回転させながら、廃プラスチックを溶融・熱分解させ、分解ガスを発生させた。発生した分解ガスを、上述で得られたシリカアルミナ触媒が充填された触媒槽に通過させて、低分子化ガスを得、その後、冷却槽により冷却された低分子化液(燃料液)を得た。
【0096】
<低分子化液の炭素数分布>
得られた低分子化液中のn−パラフィン相当炭素数分布の各炭素数における重量割合を算出した。当該重量割合は、所定の物性測定機関(例えば、公的な工場試験場)に依頼することにより容易に得ることが出来る。ここで、n−パラフィン相当炭素数分布の各炭素数における重量割合は、次の方法に基づいて算出される。即ち、原子発光検出器付きガスクロマトグラフGC−AED(HEWLETTPACKARD社製、GC:HP6890、AED:HPG2350A、石油分析カラム:カラム液相HP―1,昇温条件:40℃で15min維持した後、5℃/minの昇温速度で300℃まで昇温し、25分間維持)により、炭素を検出元素として、炭素数4〜38のn−パラフィン(標準サンプル)の保持時間を測定し、n−パラフィンの炭素数と保持時間の関係を標準関係として算出する。当該標準関係は、炭素数の多いn−パラフィンほど、保持時間が長くなる関係となる。次に、前記原子発光検出器付きガスクロマトグラフGC−AEDにより、炭素を検出元素として、先ほど得られた低分子化液の保持時間を測定し、当該標準関係と対応付けることにより、当該低分子化液中のn−パラフィン相当炭素数分布の各炭素数における重量割合の結果を得た。
【0097】
<比較例>
上述した実施例に対応する比較例として、本発明のシリカアルミナ触媒に全く接触していない分解ガスを冷却することによって得られる分解液(燃料液)を採用した。当該分解液中のn−パラフィン相当炭素数分布の各炭素数における重量割合の結果と、実施例でのそれとを比較することにより、本発明のシリカアルミナ触媒の油化効率を算出することが出来る。
【0098】
尚、比較例における分解液は、例えば、上述した実施例において使用したプラスチック油化装置1の改質槽3を取り外すとともに、熱分解槽2の分解ガス排出口29と、冷却槽4の低分子化ガス排出口41とを、例えば、断熱材により外周が覆われた配管により接続することによって得ることが出来る。尚、熱分解設定温度等は、実施例の条件と同様である。比較例で得られた分解液中のn−パラフィン相当炭素数分布の各炭素数における重量割合の結果も、実施例と同様に得た。
【0099】
図2は、本発明の実施例と比較例とにおける燃料液中のn−パラフィン相当炭素数分布を示す図である。
【0100】
図2から明らかなように、例えば、比較例に係る燃料液において、炭素数20から38までの炭化水素が約半分程度(相当量)含まれていることに対し、実施例に係る燃料液において、炭素数20から38までの炭化水素が殆ど含まれていないことが示されている。又、炭素数が5の炭化水素における比較例の重量割合は約0.6重量%であるのに対し、実施例の重量割合は約28.1重量%であり、炭素数が5の炭化水素の油化効率は約97.9%となるから、本発明のシリカアルミナ触媒を分解ガスに当該分解ガス状態で接触させることにより、分解ガスの低分子化が著しく促進され、飛躍的に油化効率を向上させることが出来ることが理解される。
【0101】
このように、本発明では、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒をプラスチック油化用のシリカアルミナ触媒として採用する。当該構成により、分解ガスを効率よく低分子化(油化)することが可能となる。
【0102】
又、本発明では、プラスチックを熱分解することによって分解ガスを発生する熱分解槽と、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒が充填され、当該シリカアルミナ触媒を前記熱分解槽より導かれた分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化する触媒槽とを備えたプラスチック油化装置を採用することが出来る。当該構成であっても、上記と同様の効果を得ることが可能となる。
【0103】
又、本発明では、プラスチックを熱分解することによって分解ガスを発生する熱分解ステップと、全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒を前記分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化する低分子化ステップとを含むプラスチック油化方法を採用することが出来る。当該構成であっても、上記と同様の効果を得ることが可能となる。尚、プラスチック油化方法では、本発明の目的を阻害しない限り、熱分解ステップの前後、低分子化ステップの前後に、他のステップ、例えば、所定の炭素数を有するガスだけを精製するガス精製ステップ、何らかの原因で冷却された分解ガスを所定の温度まで加熱する加熱ステップ、加熱し過ぎた分解ガスを所定の温度まで冷却する冷却ステップ、ガスの圧力を調整する圧力調整ステップ、所定の炭素数を有するガスだけを選択的に取り出すガス選択ステップ等が存在しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本発明に係るシリカアルミナ触媒は、工業、農業、漁業等の様々な分野で使用されるプラスチック油化装置等においても有用であり、熱分解したプラスチックから発生する分解ガスを効率よく低分子化させることが可能なシリカアルミナ触媒及びそれを用いたプラスチック油化装置、プラスチック油化方法として有効である。
【符号の説明】
【0105】
1 プラスチック油化装置
2 熱分解槽
3 改質槽
4 冷却槽
32 触媒槽
33 シリカアルミナ触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解したプラスチックから発生する分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化するプラスチック油化用のシリカアルミナ触媒において、
全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%である
シリカアルミナ触媒。
【請求項2】
前記シリカアルミナ触媒の気孔径が20〜150μmである
請求項1に記載のシリカアルミナ触媒。
【請求項3】
前記シリカアルミナ触媒の体積が1mm〜50mmである
請求項1又は2に記載のシリカアルミナ触媒。
【請求項4】
プラスチックを熱分解することによって分解ガスを発生する熱分解槽と、
全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒が充填され、当該シリカアルミナ触媒を前記熱分解槽より導かれた分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化する触媒槽と、
を備えたプラスチック油化装置。
【請求項5】
前記触媒槽は、雰囲気温度を300〜400度として前記シリカアルミナ触媒を前記分解ガスに当該分解ガス状態のままで接触させる
請求項4に記載のプラスチック油化装置。
【請求項6】
プラスチックを熱分解することによって分解ガスを発生する熱分解ステップと、
全量100重量%に対してSiOが40〜45重量%、Alが13〜17重量%、CaOが36〜45重量%含有され、含有された三成分の合計量が全量100重量%に対して89〜100重量%であり、見掛け比重が0.8〜1.5であり、気孔率が50〜60%であるシリカアルミナ触媒を前記分解ガスに接触させることによって当該分解ガスを低分子化する低分子化ステップと、
を含むプラスチック油化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−212648(P2011−212648A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86246(P2010−86246)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(302066467)株式会社三共刃型工業 (5)
【Fターム(参考)】