説明

プラスチック製品の製造方法

【課題】モノマーの種類に関わらず、また微粒子原料の種類に関わらずモノマー中にナノ微粒子をさせそのモノマーを硬化させてプラスチックを得ることができるプラスチック製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】スパッタ法によって固体状態の原料物質、例えば金を気相化し熱硬化性プラスチックモノマーとしてのポリチオール化合物によってその気相化された金微粒子を受け止め、攪拌してイソシアネート化合物を添加し、所定の成形型枠内で硬化させるようにする。これによってナノ微粒子を分散させたプラスチックを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば成形品として筐体、各種部品あるいはレンズ等の光学製品に広く使用可能なプラスチック製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からプラスチックに対してナノレベルの例えば金属や金属酸化物の超微粒子(ナノ微粒子)を添加することでプラスチックの所定の特性の性能向上、例えば屈折率を上げたり色調をより鮮やかにすることが可能となっている。そのような物理的性質をプラスチックに発現させるためにはそれらナノレベルの金属微粒子等を凝集させずに分散媒体中に分散させる必要がある。例えば、プラスチックに発色をさせるために単にモノマー内に微粒子を投入し混錬しただけでは金属微粒子は凝集してしまいプラスチックが発色できない、あるいは予定した発色とならない場合がある。
微粒子を分散させる手段として従来より例えば特許文献1及び特許文献2に開示される手段が採用されていた。
特許文献1に開示された技術は、自己重合性のモノマーを金属錯体として合成するというものである。例えばこの特許文献1では金属原子とエピスルフィド基によって合成された錯体をモノマーとする技術である。
また、特許文献2に開示された技術はモノマーと金属酸化物との相溶性を向上させるために金属酸化物にモノマーとの相溶性を向上させる物質を付加する技術である。金属酸化物がモノマーに対して相溶性がなければ金属酸化物は分散できず、そもそも両者の相溶性がなければ光学プラスチックとしての透明性も得られない。そのため、特許文献2では具体的に重合性シランカップリング剤と金属アルコキシドから金属シラン縮合体を合成し、モノマーとの相溶性を向上させるようにしている。
【特許文献1】特開2006−169190号公報
【特許文献2】特開2007−126491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のような錯形成したモノマーを合成するのは非常に手間がかかり、製造コストが高価格化する傾向にある。また、あるモノマーを錯形成しようとした場合にモノマー毎に錯形成する方法が異なることとなるため合成作業が繁雑となり、必ずしも使用しようと考えているモノマーで錯形成が可能であるわけでもない。また、特許文献2でも特許文献1と同様に、付加する物質に汎用性がないため、あるモノマーに対して相溶性がよくなるかどうかは相溶性を向上させると予測される物質を実際に金属酸化物に付加させ、その生成物とモノマーとの相溶性のテストをしてみないと分からないわけである。また、ゾルゲル法などでモノマー中でナノ微粒子を合成する手段もあるが、合成制御が難しく、縮合反応によって生成される副生成物が不純物として混入し、必ずしも求める性能のプラスチックを得ることができない。また、ゾルゲル法では金属酸化物微粒子以外はナノ微粒子として取り出すことができない。
このようなことから、モノマーの種類に関わらず、また微粒子原料の種類に関わらずモノマー中にナノ微粒子を確実に分散させ、そのモノマーを硬化させてプラスチックを得る手段が求められていた。
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、その目的は、モノマーの種類に関わらず、また微粒子原料の種類に関わらずモノマー中にナノ微粒子をさせそのモノマーを硬化させてプラスチックを得ることができるプラスチック製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明では、物理的又は化学的な蒸着方法によって原料物質を気相化し、熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックによって気相化された微粒子状態の前記原料物質を受け止める第1の工程と、前記第1の工程で微粒子化した前記原料物質を取り込んだ前記熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを攪拌する第2の工程と、前記第2の工程で攪拌した前記熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを所定の成形型枠内で硬化させる第3の工程とを有することをその要旨とする。
また、請求項2に記載の発明では、物理的又は化学的な蒸着方法によって原料物質を気相化し、熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを攪拌しながら気相化された微粒子状態の前記原料物質を受け止める第1の工程と、前記第1の工程で攪拌した前記熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを所定の成形型枠内で硬化させる第2の工程とを有することをその要旨とする。
請求項3に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明において、前記物理的又は化学的な蒸着方法とはスパッタ法、真空蒸着法若しくは気相成長法のいずれかの方法であることをその要旨とする。
請求項4に記載の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記原料物質は単体又は複合金属であって、気相化した同金属は同金属に対して配位可能な孤立電子対を持つ官能基を末端に有する前記熱硬化性プラスチックモノマーによって受け止めるようにしたことをその要旨とする。
請求項5に記載の発明では請求項4に記載の発明において、前記金属はAu、Ag、CU、Pt、Pd及びTiから選ばれる単体又はこれらの複合金属であり、これに配位する熱硬化性プラスチックモノマーはポリオール化合物又はポリチオール化合物であることをその要旨とする。
請求項6に記載の発明では請求項5に記載の発明において、前記ポリオール化合物又はポリチオール化合物からなるモノマーはイソシアネート化合物を添加した後に熱硬化あるいは光硬化させることをその要旨とする。
【0005】
この発明の製造方法ではまず第1の工程で物理的又は化学的な蒸着方法によって原料物質を気相化することが必要である。
ここに原料物質は求めるプラスチックの性能によって異なるが、金属、複合金属(合金のような2種以上の金属)あるいは金属化合物(酸化物・窒化物・炭化物等)のような無機性の原料のみならず有機物であってもよい。1nm以下の気相化した単体又は複合金属は同金属に対して配位可能な孤立電子対を持つ官能基を末端に有する前記熱硬化性プラスチックモノマーによって受け止めることが好ましい。これによって1nm以下の単体又は複合金属からなる微粒子の凝集が防止されることとなる。
また、気相化された微粒子状態の前記原料物質を受け止めるには熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックである必要がある。熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックは微粒子状態の原料物質を受け止めてから攪拌しても、受け止めながら同時に攪拌してもいずれでもよいが、より均一でサイズの小さな微粒子を分散させ得るためには受け止めながら同時に攪拌することが好ましい。
第2又は第3の工程で攪拌した熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを所定の成形型枠内で硬化させる場合には、熱硬化性プラスチック用のモノマーでは熱又は光エネルギーを与えて公知の手段で重縮合をさせて硬化させる。また、液相状態の熱可塑性プラスチックは基本的に加熱によって液相化させているため常温に戻すことによって硬化する。
【0006】
ここに、物理的又は化学的な蒸着方法としては、例えばスパッタ法、真空蒸着法若しくは気相成長法が挙げられる。
スパッタ法とは、真空雰囲気中で、アルゴンガス粒子を微粒子化したい原料物質である固体状態のターゲットに衝突させ、その衝撃ではじき飛ばされたターゲット成分(微粒子)を取り出す方法であって、従来では基板上に基板上にナノレベルの微粒子を付着させて薄膜を形成させる方法であるが、本発明では基板上での成膜を図るのではなく、熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを基板の代わりとしてターゲット成分(微粒子)を樹脂内に取り込むこととなる。物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)の一種である。
また真空蒸着法とは、真空雰囲気中で、蒸着材料を加熱し気相化させて、離れた位置に置かれた基板の表面に付着させ、薄膜を形成させる方法である。やはり物理蒸着の一種である。加熱手段としては、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法がある。本発明では基板上での成膜を図るのではなく、熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを基板の代わりとして気相化した物質(微粒子)を樹脂内に取り込むこととなる。その他、真空ではなく所定のガス雰囲気中で蒸着を行うガス中蒸着法等がある。
また気相成長法とは、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)の一種であって、反応炉内で加熱した基板上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスをそのままあるいはキャリアガスとともに供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を形成する方法である。スパッタ法やスパッタ法ほどの真空度は必要としない。活性化エネルギーを与える手段として熱を与えるものを基本的にCVD(Chemical Vapor Deposition)とし、プラズマによるものを特にプラズマCVD、高エネルギーの光によるものを光CVDという。本発明では基板上での成膜を図るのではなく、熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを基板の代わりとして気相化した物質(微粒子)を樹脂内に取り込むこととなる。気相成長法の原料物質は液体状態又は気体状態であり、一例を挙げれば金属アルコキシド、金属塩化物、シラン化合物等である。
本発明はナノレベルの微粒子を原料から熱硬化性プラスチックモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックによって受け止めることができるのであれば、上記に限定されるものではない。
【0007】
本発明に使用可能な熱硬化性プラスチック用のモノマーとしては、例えば熱硬化性プラスチック用のモノマーとしてはチオウレタン系共重合体を得るためのポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物、ウレタン系共重合体を得るためのポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物、エピスルフィド系重合体を得るためのエピスルフィド系モノマー、エポキシ系重合体を得るためのエポキシ系モノマーが挙げられる。熱硬化性プラスチック用のモノマーは熱又は光エネルギーを得て重縮合して熱硬化性プラスチックに成形される。
例えば、熱可塑性プラスチック用モノマーとして(メタ)アクリル系重合体を得るための(メタ)アクリル系モノマー、ポリカーボネート重合体を得るためのビスフェノールA及び二塩化カルボニル又はジフェニルカーボネート、環状オレフィン重合体を得るための環状オレフィンモノマー、ポリエステル重合体を得るためのエステル多価カルボン酸及びポリアルコール等、ビニル共重合体を得るためのビニルモノマー及びビニルモノマーと共重合可能なモノマーが挙げられる。
熱可塑性プラスチックとしては例えばアクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0008】
ここで、熱硬化性プラスチックモノマーとしてより具体的には、ポリイソシアネート化合物として、例えばチオジエチルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ジメチルスルフォンジイソシアネート、ジチオジメチルジイソシアネート、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオジプロピルジイソシアネート等の非環式含硫脂肪族イソシアネートが挙げられる。また、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,2−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、1−エチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、シクロプロパン−1,2−ジイソシアネート、ジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′,5,5′−テトラメチルジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンイソシアネート、2,2,4,4−テトラエチル−1,3−シクロブタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0009】
ポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールエトキシレート、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、有機多塩基酸と前記ポリオールとの縮合反応生成物、ハロゲン置換体も含まれる。
また、カルボン酸と2以上のOH基を有するポリオール化合物としとして、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸一水和物、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)サリチル酸メチル、ピロガロール-4-カルボン酸が挙げられる。
また、アミノ基と2以上のOH基を有するポリオール化合物としとして、4,6−ジアミノレソルシノール二塩酸塩、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、2−アミノ−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
また、チオール基と2以上のOH基を有するポリオール化合物としとして、DL−ジチオトレイトール、α−チオグリセロールが挙げられる。
【0010】
ポリチオール化合物としては、例えばジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等の脂肪族ポリチオール及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換化合物が挙げられる。また、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,2′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトビフェニル、4,4′−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換化合物が挙げられる。
【0011】
エピスルフィド系モノマーとしては、例えばビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン等の鎖状有機化合物、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン等の分岐状有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物、1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン等の環状脂肪族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン等の芳香族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物等が挙げられる。
エポキシ系モノマーとしては、例えば多価フェノール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるフェノール系エポキシ化合物、多価アルコール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるアルコール系エポキシ化合物、多価カルボン酸化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるグリシジルエステル系エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ウレタン系エポキシ化合物等が広く含まれる。
【0012】
熱可塑性プラスチックモノマーとしてより具体的には、側鎖にカルボン酸を有するポリマーとして例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているようなアクリル系共重合体のものが挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2ヒドロキシプロピル(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ノニル,(メタ)アクリル酸デシル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸プロポキシエチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等のアクリル酸アルキルエステル;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
環状オレフィンモノマーとしては、例えば、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のカルボキシル基含有環状オレフィンが挙げられる。また、5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のヒドロキシ基含有環状オレフィンなどが挙げられる。また、5−アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のエステル基含有環状オレフィンが挙げられる。また、N−(4−フェニル)−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)などのN−置換イミド基含有環状オレフィン、8−メチル−8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのシアノ基含有環状オレフィンなどが挙げられる。また、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンおよび5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのノルボルネンおよびその置換体等の多環の環状オレフィンが挙げられる。
【0013】
ビニル共重合体を得るためのビニルモノマーとしては(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)と環状無水物(例えば、無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物)との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類(例えば、スチレン、スチレン誘導体等)、(メタ)アクリロニトリル、ビニル基が置換した複素環式基(例えば、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール等)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−アクリロイルオキシエチルエステル)、官能基(例えば、ウレタン基、ウレア基、スルホンアミド基、フェノール基、イミド基)を有するビニルモノマーなどが挙げられ、これらの中でもスチレン類が好ましい。
【0014】
ポリカーボネート用のモノマーとしてはジフェノール酸とホスゲンが挙げられる。ポリエステル用のモノマーとしては、ジカルボン酸…芳香族カルボン酸[テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸;メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸などのアルキル置換フタル酸;ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸など)、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸などのジフェニルカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸などのジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸などのジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸などのジフェニルアルカンジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数2〜40程度の脂肪族ジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素数8〜12程度の脂環族ジカルボン酸など)と熱硬化性樹脂用ポリオールのカルボン酸以外とを反応させたもの等が挙げられる。
【0015】
また、出願人は金属単体又は複合金属のナノ微粒子と特定の熱硬化性プラスチックモノマーとの関係でモノマー分子の金属配位が起こり、この結果金属微粒子のモノマーへの取り込み後に金属微粒子の凝集を防止できる知見を得た。従って、そのような金属配位が確認できるモノマーであれば金属微粒子のモノマーへの取り込み中の攪拌は必ずしも必要ではない。このような熱硬化性プラスチックモノマーの金属配位可能は官能基はSH基、COOH、NH2基若しくはOH基のいずれかであるが、特に好ましいのはSH基である。COOH基とNH2基では硬化段階でこれらの基が一種の触媒となって異常重合が発生する可能性があるためである。
例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Pd及びTiから選ばれる単体又はこれらの複合金属に対してポリチオール化合物は金属配位し、更に、ポリオール化合物はTiにも金属配位するため、これら金属について1nm以下のナノ微粒子を取り込む場合にはこの関係を利用すると有利である。
金属のナノ微粒子は電子のプラズマ振動に起因したプラズモン吸収により、特定の光を吸収するため、金属の種類や粒子の大きさによって色が異なって見える。例えば、金微粒子の色とそのサイズの関係は、
100nm以上:金色、75nm以上:黒色、10nm〜75nm:青色、1nm〜10nm程度:赤色、1nm以下:黄色
となっている。
従って、金属微粒子を含有するプラスチックについてその発色状態を視認することで、そのプラスチック内の金属微粒子のサイズの分布とそのばらつき状態がわかることとなる
【発明の効果】
【0016】
上記各請求項に記載の発明によれば、原料物質を気相化したナノ微粒子を硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックに取り込むようにしたため、微粒子化した原料物質を確実に分散媒体であるプラスチック中に分散させることができプラスチックの所定の特性の性能向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、一例としてスパッタ法により気相化された微粒子を受け止める実施の形態について説明する。
下記の実施例は図1のような模式図で示すスパッタ装置1によってモノマーにターゲット成分(微粒子)を取り込むようにしている。筐体2内下方位置にはアノードとなる電極3が配置されており、所定の間隔を空けて筐体2内上方位置にカソードとなるターゲット4が配置されている。電極3及びターゲット4は筐体2外部に設置された放電装置(本実施例ではマグネトロン)5に接続されている。ターゲット4に対向する位置には容器6が配置され内部に所定のモノマー(あるいは溶融プラスチック)7が収容されている。容器6の上方は大きく開口されている。容器6の底面外側位置にはモータ装置8が併設され、同モータ装置8によって回転させられるシャフト9が容器6内に導入されている。シャフト9先端には攪拌用のプロペラ10が装着されている。筐体2にはアルゴンガスが導入されるホース11が接続されている。また、外部の真空ポンプ12に接続された空気抜き用のホース13が接続されている。容器6の外周には容器6内のモノマー7を加温するためのヒータ装置14が配設されている。
このような構成においてはスパッタ装置1の駆動時において真空ポンプ12が駆動され筐体2は所定の真空度となるように設定される。一方、真空状態において化放電装置5によって放電動作が筐体2内で行われホース11からのアルゴンガスの導入に伴ってターゲット4から電極3側に高速でターゲット成分が高速で放出(スパッタ)される。ターゲット成分は容器6のモノマー7に取り込まれる。
このように所定のターゲット成分を取り込んだモノマー7をスパッタ装置1から取り出し、更に調製して成形用型枠に注入して公知の加熱炉中で加熱硬化させる。
尚、上記ではスパッタリングしながらモノマー7の攪拌処理を行ったが、スパッタリングしながら攪拌することの有無が求める粒子サイズに大きな影響がない場合であれば、スパッタリング処理の完了後に攪拌を行ってもよい。
【0018】
上記においてプラスチック製品をスパッタ法によって得た実施例について説明する。
(実施例1)
1.スパッタリング
あらかじめ加熱真空により脱泡した第1のモノマーとしてのペンタエリスリトールエトキシレート(数平均分子量270)(以下、PEELと略す)をスパッタ装置内にセットし、装置内を真空度10Paとし、ターゲットに金を用いてスパッタ装置のマグネトロン電極への放電電流は40mAとし3分間スパッタを行った。スパッタガスとしてアルゴンを使用しその導入量は10SCCMとした。
スパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、赤色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、520nm付近とわずかに600nm付近に吸収が見られた。これは金微粒子のプラズモン吸収であると考えられることから、数nmの金微粒子が主体で若干の数十nmの金微粒子がほとんど凝集せずに存在しているといえる。
2.第2のモノマーとの混合
1.で調製した溶液10.76gを秤量し、第2のモノマーとしてのm−キシリレンジイソシアナート(m−XDI)15.00gを添加し室温25℃の真空中でスターラー撹拌した。
3.加熱硬化
2.で調製した溶液を、撥水剤を塗布したガラスとテープで作成した型に入れ、18時間かけて25℃から130℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷して赤色の透明ウレタン樹脂を得た。この樹脂のUVスペクトルも520nm付近とわずかに?nm付近に吸収が見られたので、金微粒子は樹脂化しても凝集することなく数nm〜数十nmのナノ微粒子として存在していることが分かる。
【0019】
(実施例2)
1.スパッタリング
あらかじめ加熱真空により脱泡した第1のモノマーとしてのPEELをスパッタ装置内にセットし攪拌しながら、装置内を真空度10Paとし、ターゲットに金を用いてスパッタ装置のマグネトロン電極への放電電流は40mAとし3分間スパッタを行った。スパッタガスとしてアルゴンを使用しその導入量は10SCCMとした。
スパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し赤色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、520nm付近に吸収が見られた。これは金微粒子のプラズモン吸収であると考えられることから、数nmの金微粒子がほとんど凝集せずに存在しているといえる。
2.第2のモノマーとの混合
1.で調製した溶液10.76gを秤量し、第2のモノマーとしてのm−キシリレンジイソシアナート(m−XDI)15.00gを添加し室温25℃の真空中でスターラーで撹拌した。
3.加熱硬化
2.で調製した溶液を、撥水剤を塗布したガラスとテープで作成した型に入れ、18時間かけて25℃から130℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷して赤色の透明ウレタン樹脂を得た。この樹脂のUVスペクトルも520nm付近にピークが見られたので、金微粒子は樹脂化しても凝集することなく数nmのナノ微粒子として存在していることが分かる。
【0020】
(実施例3)
実施例3では上記実施例1と同じ条件でターゲットに銀を用いた。実施例1と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、オレンジ色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、410nm付近に吸収が見られた。これは銀微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例1と同じ条件で硬化させたところ実施例1と同様にオレンジ色の透明ウレタン樹脂を得た。これから銀微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく数nmのナノ微粒子として存在していることが分かる。
【0021】
(実施例4)
1.スパッタリング
あらかじめ加熱真空により脱泡した第1のモノマーとしてのペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(以下、PEMPと略す)をスパッタ装置内にセットし、装置内を真空度10Paとし、ターゲットに金を用いてスパッタ装置のマグネトロン電極への放電電流は40mAとし15分間スパッタを行った。スパッタガスとしてアルゴンを使用しその導入量は10SCCMとした。
スパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、黄色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、400〜450nm付近に吸収が見られた。これは金微粒子のプラズモン吸収であって、色の違いから上記実施例1〜3よりも小さなナノ微粒子として1nm以下の金微粒子がほとんど凝集せずに存在しているものといえる。
2.第2のモノマーとの混合
1.で調製した溶液13.00gを秤量し、第2のモノマーとしてのm−キシリレンジイソシアナート(m−XDI)10.00gを添加し室温25℃の真空中でスターラーで撹拌した。
3.加熱硬化
2.で調製した溶液を、撥水剤を塗布したガラスとテープで作成した型に入れ、18時間かけて25℃から130℃まで加熱して硬化を促し、その後徐冷して黄色の透明チオウレタン樹脂を得た。このこの樹脂のUVスペクトルも400〜450nm付近に吸収が見られたので金微粒子は樹脂化しても凝集することなく1nm以下のナノ微粒子として存在していることが分かる。
【0022】
(実施例5)
実施例5では上記実施例4と同じ条件でターゲットに銀を用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、黄色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、400〜450nm付近に吸収が見られた。これは銀微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例4と同じ条件で硬化させたところ実施例4と同様に黄色の透明チオウレタン樹脂を得た。これから銀微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく1nm以下のナノ微粒子として存在していることが分かる。
(実施例6)
実施例6では上記実施例4と同じ条件でターゲットに白金を用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、黄色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、400〜450nm付近に吸収が見られた。これは白金微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例4と同じ条件で硬化させたところ実施例4と同様に黄色の透明チオウレタン樹脂を得た。これから白金微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく1nm以下のナノ微粒子として存在していることが分かる。
(実施例7)
実施例7では上記実施例4と同じ条件でターゲットに銅を用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、黄色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、400〜450nm付近に吸収が見られた。これは銅微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例4と同じ条件で硬化させたところ実施例4と同様に黄色の透明チオウレタン樹脂を得た。これから銅微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく1nm以下のナノ微粒子として存在していることが分かる。
(実施例8)
実施例8では上記実施例4と同じ条件でターゲットにパラジウムを用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、黄色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、400〜450nm付近に吸収が見られた。これはパラジウム微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例4と同じ条件で硬化させたところ実施例4と同様に黄色の透明チオウレタン樹脂を得た。これからパラジウム微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく1nm以下のナノ微粒子として存在していることが分かる。
【0023】
(実施例9)
実施例9では上記実施例1と同じ条件でターゲットに白金を用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、オレンジ色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、420nm付近に吸収が見られた。これは白金微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例1と同じ条件で硬化させたところオレンジ色の透明ウレタン樹脂を得た。これから白金微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく数nmのナノ微粒子として存在していることが分かる。
(実施例10)
実施例10では上記実施例1と同じ条件でターゲットに銅を用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、赤色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、570nm付近に吸収が見られた。これは銅微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例1と同じ条件で硬化させたところ赤色の透明ウレタン樹脂を得た。これから銅微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく数nmのナノ微粒子として存在していることが分かる。
(実施例11)
実施例11では上記実施例1と同じ条件でターゲットにパラジウムを用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、オレンジ色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、420nm付近に吸収が見られた。これはパラジウム微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例1と同じ条件で硬化させたところオレンジ色の透明ウレタン樹脂を得た。これからパラジウム微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく数nmのナノ微粒子として存在していることが分かる。
【0024】
(実施例12)
実施例12では上記実施例4と同じ条件でターゲットにチタンを用いた。実施例4と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、黄色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、400〜450nm付近に吸収が見られた。これはチタン微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例4と同じ条件で硬化させたところ実施例4と同様に黄色の透明チオウレタン樹脂を得た。これからチタン微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく1nm以下のナノ微粒子として存在していることが分かる。
(実施例13)
実施例13では上記実施例1と同じ条件でターゲットにチタンを用いた。実施例1と同様にスパッタリング終了後、この溶液をスパッタ装置から取り出し、スターラーで撹拌することで、黄色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、400〜450nm付近に吸収が見られた。これはチタン微粒子のプラズモン吸収が生じていると考えることができる。また、上記実施例1と同じ条件で硬化させたところ実施例1と同様に黄色の透明ウレタン樹脂を得た。これからチタン微粒子も金微粒子と同様に樹脂化しても凝集することなく1nm以下のナノ微粒子として存在していることが分かる。
【0025】
(比較例1)
1.金微粒子の製造
比較例1では金微粒子をまず、次の方法で精製した。
10mMの塩化金酸水溶液180mLにテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)0.6562gを溶解させたトルエン溶液を加えてスターラーで2時間撹拌して第1の溶液を調製した。次いで、ヘキサンチオール0.2128gを溶解させたトルエン溶液60mLを第1の溶液に加え、3時間攪拌し第2の溶液を調製した。併せて、撹拌中の第2の溶液に0.6809gのナトリウムボロハイドライドを加えた水溶液180mLを少しずつ滴下し、滴下完了後の攪拌時間を2時間とした。このように調製した溶液を第3の溶液とした。そして、分液ロートで第3の溶液からトルエン層のみを取り出し、エバポレータでトルエンを除去した。得られた個体を大量のエタノールに溶解させ、−18℃で1晩放置し、その溶液を再度ろ過し、得られる赤黒色の固体をエタノールで数回洗浄した後、乾燥させることで数nmサイズの金微粒子粉末を得た。この金属微粒子粉末は、金にヘキサンチオールのチオール部位が配位しているため、ヘキサンチオールのアルキル部位は金微粒子の外側に向いている。したがって金微粒子は見かけ上アルキル基で覆われた形となり、疎水性の性質を示す。
2.金微粒子のモノマーへの添加
1.で精製された金微粒子をm−XDI15gに対して0.026gを秤量して添加し、スターラーで撹拌して赤色透明溶液を得た。この溶液のUVスペクトルを取ると、520nm付近に吸収が見られた。これは金微粒子のプラズモン吸収であると考えられることから、数nmの金微粒子がほとんど凝集せずに存在しているといえる。
そこにPEEL10.76gを加え、室温真空中でスターラーで撹拌した。得られた溶液をあらかじめ撥水剤を塗布したガラスとテープで作成した型に混合溶液を入れ、室温から130℃まで18時間かけて加熱して硬化を促し、その後徐冷して金微粒子が不均一に分散したウレタン樹脂を得た。
この樹脂を透過で確認すると青色を呈していたことから、樹脂中で凝集した金微粒子が存在していることがわかった。
(比較例2)
比較例1で精製された金微粒子0.023gをm−XDI10gに添加しスターラーで撹拌し、そこにPEMP13.00gを加え、室温真空中でスターラーで撹拌した。得られた溶液をあらかじめ撥水剤を塗布したガラスとテープで作成した型に混合溶液を入れ、室温から130℃まで18時間かけて加熱して硬化を促し、その後徐冷して金微粒子が沈殿したチオウレタン樹脂を得た。
【0026】
結果.
上記のように、実施例はいずれもナノ微粒子が分散した良好な樹脂が得られた。特にPEMPをモノマーとして使用した実施例ではチオール基が金属微粒子に配位するため、モノマーに取り込まれてからの微粒子同士の凝集が生じにくくなり、極めてサイズの小さなナノ微粒子を分散させることができる。このような1nm以下のサイズであればナノ微粒子は蛍光を発するようになるため、製造されるプラスチックは蛍光プラスチックとして利用することが可能である。
一方、PEELをモノマーとして使用した実施例では数nmの大きさに凝集するが、ナノレベルの微粒子の分散が確認された。また、PEELをモノマーとして使用した実施例1と実施例2を比較するとスパッタリングしながら攪拌した場合により安定した大きさの微粒子の分散が確認された。
また、特異的にチタンをターゲットとした場合にはPEELでも1nm以下のサイズのナノ微粒子を分散させることができた。これはチタンのみポリオールのOH基が配位するためPEEL内での凝集が生じないためであると考えられる。
一方、比較例ではナノレベルの微粒子を得る際には金分子の回りにチオール疎水性の基が配位することとなるため、モノマー段階では分散できても加熱硬化させる段階でその疎水基の存在によって金微粒子は縮合してしまうこととなる。そのため、数nm以下、更には1nm以下のいわゆる超微粒子といわれるサイズの金微粒子由来の発色を製品レベルで確認することはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態において使用するスパッタ装置の模式図。
【符号の説明】
【0028】
1…スパッタ法を実現するスパッタ装置、7…モノマー(あるいは溶融プラスチック)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的又は化学的な蒸着方法によって原料物質を気相化し、熱硬化性プラスチックモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックによって気相化された微粒子状態の前記原料物質を受け止める第1の工程と、
前記第1の工程で微粒子化した前記原料物質を取り込んだ前記熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを攪拌する第2の工程と、
前記第2の工程で攪拌した前記熱硬化性プラスチックモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを所定の成形型枠内で硬化させる第3の工程とを有することを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項2】
物理的又は化学的な蒸着方法によって原料物質を気相化し、熱硬化性プラスチック用のモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを攪拌しながら気相化された微粒子状態の前記原料物質を受け止める第1の工程と、
前記第1の工程で攪拌した前記熱硬化性プラスチックモノマー又は液相状態の熱可塑性プラスチックを所定の成形型枠内で硬化させる第2の工程とを有することを特徴とするプラスチック製品の製造方法。
【請求項3】
前記物理的又は化学的な蒸着方法とはスパッタ法、真空蒸着法若しくは気相成長法のいずれかの方法であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック製品の製造方法。
【請求項4】
前記原料物質は単体又は複合金属であって、気相化した同金属は同金属に対して配位可能な孤立電子対を持つ官能基を末端に有する前記熱硬化性プラスチックモノマーによって受け止めるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック製品の製造方法。
【請求項5】
前記金属はAu、Ag、CU、Pt、Pd及びTiから選ばれる単体又はこれらの複合金属であり、これに配位する熱硬化性プラスチックモノマーはポリオール化合物又はポリチオール化合物であることを特徴とする請求項4に記載のプラスチック製品の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール化合物又はポリチオール化合物からなる前記熱硬化性プラスチックモノマーはイソシアネート化合物を添加した後に熱硬化あるいは光硬化させることを特徴とする請求項5に記載のプラスチック製品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−115813(P2010−115813A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289271(P2008−289271)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】