説明

プラスミド型ベクター、遺伝子プロモーター活性の検出方法、及びアッセイキット

【課題】遺伝子プロモーターの活性を高感度に検出すること。
【解決手段】プラスミド型ベクター1は、遺伝子プロモーター10を有している。遺伝子プロモーター10の下流には、レポーター遺伝子21、内部リボゾーム結合配列(IRES)23、複製開始蛋白質遺伝子25、及び転写終結シグナル配列27が配置されている。レポーター遺伝子21は、遺伝子プロモーター10の活性を可視化するためのレポーター蛋白質をコードする。複製開始蛋白質遺伝子25は、複製開始蛋白質をコードする。IRES23は、レポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25との間に配置される。転写終結シグナル配列27は、レポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25との転写を終結するためのシグナルをコードする。また、プラスミド型ベクター1は、複製開始配列30を有している。複製開始配列30は、複製開始蛋白質により認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラスミド型ベクター、遺伝子プロモーター活性の検出方法、及びアッセイキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムの塩基配列が決定されて以降、ゲノム情報を基盤とした疾患の新しい診断法の開発が期待されている。例えば、ゲノムの塩基配列情報に基づく遺伝子解析から、癌をはじめとする多くの疾患関連遺伝子が発見されている。これらの疾患関連遺伝子や疾患関連蛋白質は、癌などの疾患の診断用バイオマーカーとして注目されている。しかしながら、バイオマーカー検出による診断は、疾患の早期には必ずしも十分なバイオマーカーの発現が得られないなどの原因により、安定した結果が得られないのが現状である。
【0003】
疾患の早期診断は、治癒率の向上や患者の負担軽減の点からも、今後の医療において不可欠である。早期診断の一つのアプローチとして、疾患の早期に発現する遺伝子のプロモーター活性の変化を検出する方法が挙げられる。遺伝子プロモーターの活性が変化することにより、遺伝子の発現確率が制御される。遺伝子プロモーターの活性は、疾患関連遺伝子や疾患関連蛋白質の発現よりも早期に観察される。
【0004】
細胞内における遺伝子プロモーターの活性を検出する方法としては、レポータージーンアッセイが挙げられる。レポータージーンアッセイは、プロモーターの活性を可視化するためのレポーター遺伝子を連結した発現カセットを当該プロモーターの下流に組み込んだレポーターベクターを、被検細胞に導入してレポーター蛋白質の活性をもとに当該プロモーターの活性を定量化する方法である。レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子やβ−ガラクトシダーゼ遺伝子、蛍光蛋白質遺伝子などが採用されている。
【0005】
しかしながら、例えば、疾患早期においては、遺伝子プロモーターの活性が変化して前疾患化の状態にある細胞はごく少数であり、診断のために採取した血液や組織に当該細胞が含まれる確率は高いとはいえない。このため、疾患の早期診断などには、高感度な検出技術が求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kojima T.、JCL、2009年、第119巻、p3172−81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、高感度なレポータージーンアッセイとしては、遺伝子プロモーターと蛍光蛋白質とをウイルスのゲノムに組み込んだウイルス型レポーターベクターによる方法が報告されている。このレポータージーンアッセイでは、ウイルスベクターを感染させた宿主細胞の内部で当該ウイルスベクターを増殖させ、蛍光蛋白質の発現量を増やすことにより、レポータージーンアッセイを高感度化している。しかしながら、ウイルス型レポーターベクターは、ウイルスを使用するので、その取り扱いが簡便ではなく、操作者に感染の危険性があるなど安全性にも課題が残る。
【0008】
一方、プラスミド型レポーターベクターは、ウイルス型レポーターベクターよりも取り扱いが簡便で、かつ感染性も持たず安全性が高いベクターである。プラスミド型レポーターベクターを使用したレポータージーンアッセイも多数報告されており、疾患の早期診断への適用も期待されている。しかしながら、プラスミド型ベクターは、ウイルス型レポーターベクターと違って宿主細胞の内部で増殖しないので、その検出感度に問題がある。
【0009】
実施形態の目的は、遺伝子プロモーターの活性を高感度に検出可能なプラスミド型ベクター、遺伝子プロモーターの検出方法、及びアッセイキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係るプラスミド型ベクターは、遺伝子プロモーター、第1の遺伝子、第2の遺伝子、内部リボゾーム結合配列、転写終結シグナル配列、及び複製開始配列を有する。第1の遺伝子は、遺伝子プロモーターの下流に配置され、遺伝子プロモーターの活性を可視化するためのレポーター蛋白質をコードする。第2の遺伝子は、遺伝子プロモーターの下流に配置され、複製開始蛋白質をコードする。内部リボゾーム結合配列は、第1の遺伝子と第2の遺伝子との間に配置される。転写終結シグナル配列は、第1の遺伝子と第2の遺伝子との転写を終結するためのシグナルをコードする。複製開始配列は、複製開始蛋白質により認識される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るプラスミド型ベクターの構造を模式的に示す図。
【図2】図1のプラスミド型ベクターを使用した、遺伝子プロモーター活性の検出方法(レポータージーンアッセイ)の全体像を示す図。
【図3】本実施形態に係るプラスミド型ベクターpCMV−Luc−IRES−LTの作製方法の典型的な流れを模式的に示す図。
【図4】本実施形態の実施例に係るpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Luc−IRES−LT−E107KとpCMV−Luc−IRES−LT−D402Eとの構造を模式的に示す図。
【図5】本実施形態に係るネガティブコントロール用のベクターpCMV−Lucの作製方法の典型的な流れを模式的に示す図。
【図6】本実施形態の実施例に係るpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−LucとにおけるLT蛋白質の発現量の検出結果を示す図。
【図7】本実施形態の実施例に係るpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Lucとのコピー数の比較結果を示す図。
【図8】本実施形態の実施例に係るpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Lucとのレポーター蛋白質の発光シグナルの検出結果を示す図。
【図9】本実施形態の実施例に係るpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Luc−IRES−LT−E107KとpCMV−Luc−IRES−LT−D402EとのpCMV−Lucに対するレポーター蛋白質のシグナル強度の比較結果を示す図。
【図10】従来例に係る非増幅型のレポーターベクターを使用した、遺伝子プロモーター活性の検出方法の全体像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるプラスミド型ベクター、遺伝子プロモーターの検出方法、及びアッセイキットを説明する。
【0013】
本実施形態に係るプラスミド型ベクターは、検出対象の遺伝子プロモーターが活性化している宿主細胞で特異的に自己増幅することにより、検出シグナルを増強するプラスミド型のレポーターベクターである。
【0014】
[プラスミド型ベクターの構造]
図1は、本実施形態に係る自己増幅型レポーターベクターであるプラスミド型ベクター1の構造を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、検出対象となる遺伝子プロモーター10を有している。検出対象となる遺伝子プロモーター10の下流には、転写及び翻訳のための塩基配列20が配置されている。塩基配列20は、レポーター遺伝子21と内部リボゾーム結合配列(IRES:internal ribosome entry site)23と複製開始蛋白質遺伝子25と転写終結シグナル配列27とを含んでいる。レポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25との間にIRES23が配置されている。複製開始蛋白質遺伝子25の下流に転写終結シグナル配列27が配置されている。また、プラスミド型ベクター1は、レポーター遺伝子21や複製開始蛋白質遺伝子25を通る側の遺伝子プロモーター10と転写終結シグナル配列27との間以外の部位に複製開始配列30を有している。なお、IRES23の上流にレポーター遺伝子21が配置され、下流に複製開始蛋白質遺伝子25が配置されるとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、IRES23の上流に複製開始蛋白質遺伝子25が配置され、下流にレポーター遺伝子21が配置されてもよい。この場合、レポーター遺伝子21の下流に転写終結シグナル配列27が配置されるとよい。
【0015】
以下、プラスミド型ベクター1に含まれる個々の要素について詳細に説明する。
【0016】
検出対象の遺伝子プロモーター10は、RNAポリメラーゼの結合配列を有する塩基配列である。遺伝子プロモーター10は、RNAポリメラーゼの結合配列に機能的に連結された遺伝子の転写を活性化する。遺伝子プロモーター10は、目的に応じて任意の遺伝子プロモーターに選択されればよい。例えば、疾患の早期診断が目的であれば、遺伝子プロモーター10として、疾患の早期に活性化している任意の疾患関連遺伝子プロモーターを用いることができる。具体的には、疾患が癌の場合、遺伝子プロモーター10として、c−fosやc−myc、CD13、CD90、Snail、薬物耐性トランスポーター遺伝子(ABCG、MDR)等の遺伝子プロモーターなどが利用可能である。環境刺激、例えば、有害化学物質、温度、酸化ストレスの検出が目的であれば、遺伝子プロモーター10として、対象となる環境刺激に反応して活性化する遺伝子プロモーターを用いることができる。具体的には、環境刺激が有害化学物質の場合、検出対象の遺伝子プロモーター10として、チトクロムp450の遺伝子プロモーターなどが利用可能である。なお、遺伝子プロモーター10は、任意のエンハンサーを含んでよい。エンハンサーは、遺伝子プロモーター10に連結された塩基配列である。エンハンサーは、遺伝子プロモーター10による遺伝子の転写の活性化を増強する機能を有する。
【0017】
レポーター遺伝子21は、レポーター蛋白質をコードする遺伝子(塩基配列)である。レポーター遺伝子21は、遺伝子プロモーター10の活性を可視化する役割を有する。レポーター遺伝子21としては、当該技術分野において既知のあらゆるレポーター遺伝子が適用可能である。レポーター遺伝子21としては、その翻訳産物であるレポーター蛋白質の活性を簡単に測定でき、測定バックグラウンドの低いものが好ましい。具体的には、レポーター遺伝子21として、発光蛋白質遺伝子や、蛍光蛋白質遺伝子、発色蛋白質遺伝子、活性酸素生成酵素遺伝子、重金属結合蛋白質遺伝子等が挙げられる。レポーター遺伝子21は、レポーター蛋白質の検出装置に応じて適宜選択可能である。
【0018】
複製開始蛋白質遺伝子25は、複製開始蛋白質をコードする遺伝子である。複製開始蛋白質は、宿主細胞において、DNAの複製開始に機能しうる蛋白質である。複製開始蛋白質としては、例えば、宿主細胞に感染して増幅するウイルスに由来する蛋白質でも、宿主細胞と同じ或いは異なる動物種の蛋白質でもよい。
【0019】
IRES23は、レポーター遺伝子21の翻訳産物であるレポーター蛋白質と複製開始蛋白質遺伝子25の翻訳産物である複製開始蛋白質とを個別に合成可能にレポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25とを単一のmRNA(バイシストロニックなmRNA)に転写するための塩基配列である。より詳細には、IRES23は、哺乳類細胞において、mRNAの5’末端キャップ構造に依存せずに、mRNAの内部にリボゾームを結合させて蛋白質の翻訳を開始させる塩基配列である。IRES23が2つの遺伝子の間に配置されることにより、バイシストロニックなmRNAが合成される。すなわち、IRES23が2つの遺伝子の間に組み込まれることで、この2つの遺伝子がコードする2種類の蛋白質を1つのmRNAで翻訳させることができる。例えば、IRES23としては、脳心筋炎ウイルス(ECMV)のIRESなどが挙げられる。本実施形態に係るIRES23は、レポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25との間に配置され、レポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25とを連結する。従って、1つのバイシストロニックなmRNAからレポーター蛋白質と複製開始蛋白質とが翻訳される。
【0020】
転写終結シグナル配列27は、上流のレポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25との転写を終結するためのシグナルをコードする塩基配列である。転写終結シグナル配列27は、哺乳動物の遺伝子の転写終結に機能するものであればよい。例えば、転写終結シグナル配列27としては、シミアン・ウイルス40(SV40)の後期ポリ(A)付加シグナル配列や、牛成長ホルモン遺伝子のポリ(A)付加シグナル配列などが挙げられる。ただし、本実施形態において使用可能な転写終結シグナル配列27は、これに限定されるものではなく、転写終結シグナルとしての機能を損なわない限りにおいては、遺伝子配列を改変したものを用いてもよい。
【0021】
複製開始配列30は、複製開始蛋白質遺伝子25の発現により合成される複製開始蛋白質により認識可能な塩基配列である。複製開始蛋白質遺伝子25の発現により合成される複製開始蛋白質が複製開始配列30を認識し、結合することで、プラスミド型ベクター1の複製が開始される。複製開始配列30は、複製開始蛋白質の生物種と同じ源または異なる源に由来してよい。
【0022】
例えば、ヒトやサルなどの霊長類の細胞にプラスミド型ベクター1を導入する場合、複製開始蛋白質遺伝子25としてSV40のラージT抗原(LT)遺伝子が、複製開始配列30としてSV40のori配列が適用可能である。あるいは、ヒトやサルなどの霊長類の細胞にプラスミド型ベクター1を導入する場合、複製開始蛋白質遺伝子25としてエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)のEBNA−1蛋白質が、複製開始配列30としてEBウイルス潜在複製起点(oriP)が適用可能である。また、マウスなどのげっ歯類の細胞にプラスミド型ベクター1を導入する場合、複製開始蛋白質遺伝子25としてマウス・ポリオーマ・ウイルス(PyV)のラージT抗原(LT)遺伝子が、複製開始配列30としてPyVコア起点配列が適用可能である。
【0023】
上述のように、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、レポーター遺伝子21と複製開始蛋白質25と複製開始配列30とを同一のベクター内に含んでいる。これにより、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、自己増幅型のレポーターベクターとして機能する。
【0024】
[遺伝子プロモーター活性の検出]
本実施形態に係る遺伝子プロモーター10の活性の検出方法(レポータージーンアッセイ)は、本実施形態に係るプラスミド型ベクター(自己増幅型レポーターベクター)1を使用して、検出対象となる遺伝子プロモーター10の活性を検出する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るプラスミド型ベクターを使用したレポータージーンアッセイの全体像を示す図である。
【0026】
図2に示すように、まず、プラスミド型ベクター1は、宿主細胞に導入される。プラスミド型ベクター1を宿主細胞に導入する方法は、既知の細胞工学手法を用いればよい。例えば、プラスミド型ベクター1の宿主細胞の導入方法としては、生化学的方法や物理化学的方法がある。生化学的方法としては、カチオン脂質を用いるリポフェクション法や、磁性粒子を用いるマグネトフェクション法、塩化カルシウムを用いる方法などが挙げられる。物理化学的方法として、例えば、電気穿孔法などが挙げられる。プラスミド型ベクター1の宿主細胞への導入方法として、上述の生化学的方法や物理化学的方法を単独で用いるだけでなく、互いに組み合わせてもよい。例えば、生化学的な方法であるリポフェクション法とマグネトフェクション法とを組み合わせて用いてもよいし、生化学な方法であるリポフェクション法と物理化学的な方法である電気穿孔法とを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
プラスミド型ベクター1を宿主細胞に導入した後、宿主細胞が分裂して増殖しうる培養条件下において、宿主細胞を任意の期間に亘り培養する。この宿主細胞が分裂して増殖しうる培養条件がプラスミド型ベクター1を増幅可能な条件となる。この培養期間中において、宿主細胞の状態または宿主細胞がおかれている環境が遺伝子プロモーター10に固有の活性化条件を満たしている場合、遺伝子プロモーター10は活性化する。このように、活性化条件を満たしている宿主細胞(ターゲット細胞)において遺伝子プロモーター10が活性化状態にある場合、IRES23で連結されたレポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25とは、バイシストロニックなmRNAに転写され、翻訳される。この転写と翻訳とにより、レポーター蛋白質(測定対象のシグナル)と複製開始蛋白質とが合成される。複製開始蛋白質は、複製開始配列30を認識し、結合し、宿主細胞に含まれるDNA複製に係る複数の蛋白質(DNA複製装置)をリクルートする。リクルートされた複数の蛋白質により、宿主細胞内においてプラスミド型ベクター1の複製が行われる。このようにして、プラスミド型ベクター1は、宿主細胞内において次々に複製を繰り返し、個体数を増幅させる。個体数の増幅に伴い、プラスミド型ベクター1により合成されるレポーター蛋白質の数も増加する。
【0028】
一方、宿主細胞が遺伝子プロモーター10の活性化条件を満たさない場合、遺伝子プロモーター10は活性化しない。活性化条件を満たしていない宿主細胞(非ターゲット細胞)においてレポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25とは転写及び翻訳されないので、レポーター蛋白質と複製開始蛋白質とは合成されない。すなわち、非ターゲット細胞において測定シグナルは、不出である。また、複製開始蛋白質が合成されないので、プラスミド型ベクター1は、複製を行うことができない。
【0029】
このように、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、遺伝子プロモーター10の活性化条件を満たす宿主細胞(ターゲット細胞)内に限定して自己増幅する。一方、図10に示すように、複製開始蛋白質遺伝子と複製開始配列とを有さない従来型のプラスミド型ベクター(非増幅型レポーターベクター)は、ターゲット細胞内であっても自己増幅することができない。従って、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、従来型のプラスミド型ベクターに比べて、ターゲット細胞におけるレポーター蛋白質、すなわち測定対象のシグナルを増加させることができる。これにより、レポータージーンアッセイの高感度化が可能となる。
【0030】
以下に、レポーター蛋白質の発現量の検出について詳細に説明する。上述のように、レポーター遺伝子21として、発光蛋白質遺伝子や、蛍光蛋白質遺伝子、発色蛋白質遺伝子、活性酸素生成酵素遺伝子、重金属結合蛋白質遺伝子等が選択可能である。
【0031】
発光蛋白質遺伝子は、発光反応を触媒する酵素蛋白質をコードする遺伝子である。発光蛋白質遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が挙げられる。ルシフェラーゼ遺伝子の翻訳産物であるルシフェラーゼは、基質の一種であるルシフェリンを用いて発光反応をおこなう。
【0032】
蛍光蛋白質遺伝子は、蛍光蛋白質をコードする遺伝子である。蛍光蛋白質遺伝子としては、例えば、青色蛍光蛋白質遺伝子、緑色蛍光蛋白質遺伝子、赤色蛍光蛋白質遺伝子が挙げられる。青色蛍光蛋白質遺伝子の翻訳産物である青色蛍光蛋白質は、青色の蛍光を発する。緑色蛍光蛋白質遺伝子の翻訳産物である緑色蛍光蛋白質は、緑色の蛍光を発する。赤色蛍光蛋白質遺伝子の翻訳産物である赤色蛍光蛋白質は、赤色の蛍光を発する。
【0033】
発色蛋白質遺伝子は、発色反応を触媒する酵素蛋白質をコードする遺伝子である。発色蛋白質遺伝子としては、例えば、β−ガラクトシダーゼ遺伝子が挙げられる。β−ガラクトシダーゼ遺伝子の翻訳産物であるβ−ガラクトシダーゼは、5−ブルモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−Gal)やo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)などの基質を用いて発色反応をおこなう。
【0034】
発光蛋白質遺伝子や、蛍光蛋白質遺伝子、発色蛋白質遺伝子の翻訳産物は、光学検出装置により検出可能である。具体的には、レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子の場合、宿主細胞からルシフェラーゼ蛋白質を抽出して基質を加えた後に、ルミノメーターを用いて溶液の発光強度を測定すればよい。レポーター遺伝子が蛍光蛋白質遺伝子の場合、例えば、宿主細胞にレーザーを照射し、宿主細胞内において蛍光蛋白質から発生される蛍光の強度を蛍光測定装置により測定してもよい。或いは、レポーター遺伝子が蛍光蛋白質遺伝子の場合、宿主細胞から抽出した蛍光蛋白質を含む抽出液にレーザーを照射し、抽出液中の蛍光蛋白質から発生される蛍光の強度を蛍光測定装置により測定してもよい。レポーター遺伝子がβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の場合、β−ガラクトシダーゼ蛋白質を抽出して基質を加えた後に、吸光度測定装置を用いて溶液の吸光度を測定すればよい。
【0035】
活性酸素生成酵素遺伝子は、活性酸素を生成する酵素をコードする遺伝子である。活性酸素生成酵素遺伝子としては、例えば、一酸化窒素合成酵素遺伝子やキサンチンオキシダーゼ遺伝子などが挙げられる。一酸化窒素合成酵素遺伝子の翻訳産物である一酸化窒素合成酵素とキサンチンオキシダーゼ遺伝子の翻訳産物であるキサンチンオキシダーゼとは、活性酸素を生成する。
【0036】
活性酸素は、電子スピン共鳴装置(ESR装置)などで検出することができる。ESR装置による方法では、活性酸素の発生量を直接的に測定しても良いし、特異的なスピントラップ剤を利用して測定しても良い。スピントラップ剤を利用する場合、まず、活性酸素生成酵素をスピントラップ剤でトラップしてから、トラップされた活性酸素生成酵素から発生される活性酸素の発生量を測定する。
【0037】
重金属結合蛋白質遺伝子は、重金属に特異的に結合する蛋白質をコードする遺伝子である。重金属に結合された蛋白質の発生量は、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)や陽電子断層撮影装置(PET装置)や放射線断層撮影装置(CT装置)などの画像診断装置により測定可能である。重金属結合蛋白質の発生量は、例えば、以下のように行われる。まず、測定可能な重金属を予め宿主細胞の培養液に加える。次に、宿主細胞を洗浄したり、宿主細胞から重金属結合蛋白質を抽出したりする。次に、抽出された重金属結合蛋白質を、培養液に加えた重金属に対応した画像診断装置で撮像し、重金属結合蛋白質に関する画像を発生する。そして発生された画像に画像処理を施して重金属結合蛋白質の量を測定する。なお、重金属結合蛋白質は、宿主細胞の内部で発現させてもよいし、宿主細胞の外表面で発現させてもよい。
【0038】
重金属結合蛋白質遺伝子として、例えば、鉄やガドリニウムあるいはその錯体化合物などの強磁性金属を結合する蛋白質をコードする遺伝子を利用する場合、画像診断装置としては、MRI装置等の核磁気共鳴装置が良い。この場合、重金属結合蛋白質遺伝子として、上記の錯体化合物などの強磁性金属と特異的に結合する抗体遺伝子や一本鎖抗体遺伝子などでもよい。具体的には、重金属結合蛋白質遺伝子としては、鉄結合蛋白質であるフェリチンやトランスフェリン、あるいはガドリニウムに対して結合能を有する一本鎖抗体が適当である。
【0039】
重金属結合蛋白質遺伝子として、例えば、ストロンチウムや銅、テクネチウム、ガリウム、あるいはそれらの錯体化合物などの放射性同位体金属を結合する蛋白質をコードする遺伝子を利用する場合、画像診断装置としては、PET装置やCT装置等の放射線測定装置が良い。この場合、重金属結合蛋白質遺伝子として、上記の錯体化合物などの放射性同位体金属と特異的に結合する抗体遺伝子や一本鎖抗体遺伝子を用いてもよい。
【0040】
このように本実施形態に係るレポータージーンアッセイによれば、プラスミド型ベクター1からのレポーター蛋白質の発現量を、レポーター蛋白質に応じた検出装置により測定することができる。そして、検出装置を利用した発現量の測定値と閾値との比較により、遺伝子プロモーター10の活性の有無を検出することができる。例えば、発現量の測定値が閾値よりも大きい場合、遺伝子プロモーター10の活性が検出されたとし、発現量の測定値が閾値よりも小さい場合、遺伝子プロモーター10の活性が検出されないとするとよい。閾値は、遺伝子プロモーター10やレポーター遺伝子21、宿主細胞等に応じてユーザにより任意に設定可能である。
【0041】
上述のように、遺伝子プロモーター10は、検出対象に応じて任意に選択可能である。例えば、癌の診断の場合、遺伝子プロモーター10として、例えば、c−fosやc−myc、CD13、CD90、Snail、薬物耐性トランスポーター遺伝子(ABCG、MDR)などの癌関連遺伝子の遺伝子プロモーターが用いられるとよい。これにより、癌細胞においてプラスミド型ベクター1が増幅し、レポーター蛋白質の発現量が増加するので、宿主細胞に含まれる癌細胞を高感度に検出することができる。他の例として、環境刺激の検出の場合、遺伝子プロモーター10として、環境特異的なプロモーターが用いられるとよい。これにより、宿主細胞に化学物質や温度、酸化ストレスなどの所望の環境刺激を与えることにより、プラスミド型ベクター1が細胞内で増幅し、レポーター蛋白質の発現量が増加するので、環境刺激を高感度に検出することができる。
【0042】
また、宿主細胞として使用できる細胞は、例えば、ヒトおよびサルを含む霊長類、マウスおよびラットを含むげっ歯類などに由来する細胞が適用可能である。また、これらの細胞として、株化細胞や初代培養細胞も適用可能である。霊長類に由来する株化細胞の例としては、ヒト肝癌に由来するHuh−7やHepG2、ヒト血球細胞に由来するJurkatやHL60、ヒト乳癌に由来するMCF−7、サル腎臓に由来するCV−1、或いはこれらのサブクローンや遺伝子改変細胞などが挙げられる。げっ歯類に由来する株化細胞の例としては、マウス肝癌に由来するHepa−1、マウス神経芽腫に由来するNeuro2a、ラット褐色細胞腫に由来するPC12、或いはこれらのサブクローンや遺伝子改変細胞などが挙げられる。初代培養細胞の例としては、肝臓や肺や腎臓などの消化器系、白血球などの循環器系、甲状腺などの内分泌系、或いは脳や脊髄などの脳神経系の器官に由来する初代培養細胞や組織幹細胞などが挙げられる。
【0043】
本実施形態に係るレポータージーンアッセイに使用する宿主細胞は、プラスミド型ベクター1に組み込まれた複製開始蛋白質遺伝子25と複製開始配列30との種類に応じて選択されればよい。例えば、複製開始蛋白質遺伝子25がSV40のLT蛋白質遺伝子で、複製開始配列30がSV40oriの場合、或いは複製開始蛋白質遺伝子25がEBVのEBNA−1蛋白質で、複製開始配列30がEBVのoriPの場合、宿主細胞として、ヒトやサルなどの霊長類由来の細胞が選択されるとよい。また、複製開始蛋白質遺伝子25がPyVのLT蛋白質で、複製開始配列30がPyVコア起点配列の場合、宿主細胞として、マウスなどのげっ歯類由来の細胞が選択されるとよい。
【0044】
プラスミド型ベクター1と宿主細胞の動物種との組合せが正しければ、細胞の種類は特に限定されない。宿主細胞は、例えば、株化細胞や初代培養細胞でもよい。また、宿主細胞が由来する組織も特に限定されない。これは、検出対象となる遺伝子プロモーター10の種類に応じて選択されればよい。
【0045】
このように、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1を用いることにより、高感度な遺伝プロモーター10の活性の検出方法、すなわち高感度なレポータージーンアッセイを提供することが可能となる。
【0046】
[アッセイキット]
本実施形態に係るアッセイキットは、本実施形態に係るレポータージーンアッセイにおいて使用される。
【0047】
本実施形態に係るアッセイキットは、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1と検出試薬とを有している。検出試薬は、細胞内のプラスミド型ベクター1に含まれるレポーター蛋白質をコードするレポーター遺伝子21の発現を検出するための試薬である。また、本実施形態に係るアッセイキットは、さらに、導入試薬や抽出試薬を有していても良い。導入試薬は、プラスミド型ベクター1を細胞に導入するための試薬である。抽出試薬は、細胞からレポーター蛋白質を抽出するための試薬である。また、本実施形態に係るアッセイキットは、反応容器や培養容器を含んでいても良い。反応容器は、検出試薬や導入試薬、抽出試薬による反応を行うための容器である。培養容器は、プラスミド型ベクター1を培養するための容器である。さらに本実施形態に係るアッセイキットは、培養のための培地やバッファーを更に含んでもよい。
【0048】
このように、本実施形態に係るアッセイキットは、本実施形態に係るレポータージーンアッセイにおいて使用されることにより、高感度に遺伝子プロモーター10の活性を検出することが可能となる。
【0049】
[実施例]
1.プラスミド型ベクターの塩基配列
次に、ヒトやサルなどの霊長類の細胞を宿主細胞とする場合を具体例に挙げて、本実施形態に係るプラスミド型ベクターについて説明する。この具体例に係るプラスミド型ベクター1として、pCMV−Luc−IRES−LTを採用する。このpCMV−Luc−IRES−LTの複製開始蛋白質遺伝子25としてSV40のLT遺伝子を、複製開始配列30としてLT遺伝子の翻訳産物であるLT蛋白質が認識可能な塩基配列を採用する。また、pCMV−Luc−IRES−LTの遺伝子プロモーター10としてサイトメガロウイルスのプロモーターを、レポーター遺伝子21としてホタルのルシフェラーゼ遺伝子を、IRES23として脳心筋炎ウイルスのIRESを、転写終結シグナル配列27として牛成長ホルモン遺伝子の転写終結シグナル配列を採用する。
【0050】
SV40のLT遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1(野生型)に示す。LT遺伝子の塩基配列は、LT蛋白質のDNA複製開始の機能を失わない限りにおいては、配列番号1の塩基配列と完全に一致している必要はない。例えば、DNA複製開始の機能を高める可能性がある任意の変異をLT遺伝子の塩基配列に導入した変異型LT遺伝子を作製し、当該遺伝子をプラスミド型ベクター1に組み込んでもよい。このような変異型LT遺伝子の塩基配列の例を、配列表の配列番号2(変異型1)、配列番号3(変異型2)、及び配列番号4(変異型3)に示す。配列番号2に係る変異型LT遺伝子は、配列番号1に係るLT遺伝子と比べて、319番目の塩基をグアニン(G)からアデニン(A)に置換し、321番目の塩基をアデニン(A)からグアニン(G)に置換したものである。この塩基の置換により、配列番号2に係るLT遺伝子の翻訳産物であるLT蛋白質は、配列番号1に係るLT遺伝子の翻訳産物であるLT蛋白質と比べて、107番目のアミノ酸をグルタミン酸からリジンに置換したものとなる。当該変異は、LT蛋白質のDNA複製機能を損なうことなく、LT蛋白質とRb蛋白質(癌化抑制機能を有する蛋白質)との相互作用を阻害するような変異の例である。配列番号3に係る変異型LT遺伝子は、配列番号1に係るLT遺伝子と比べて、1206番目の塩基をチミン(T)からグアニン(G)に置換したものである。この塩基の置換により、配列番号3に係るLT遺伝子の翻訳産物であるLT蛋白質は、配列番号1に係るLT遺伝子の翻訳産物であるLT蛋白質と比べて、402番目のアミノ酸をアスパラギン酸からグルタミン酸に置換したものとなる。当該変異は、LT蛋白質のDNA複製機能を損なうことなく、LT蛋白質とp53蛋白質(癌化抑制機能を有する蛋白質)との相互作用を阻害するような変異の例である。配列番号4は、配列番号1に係るLT遺伝子に配列番号2の置換と配列番号3の置換との両方を導入することにより作製された変異型LT遺伝子である。上記の変異型LT遺伝子は、一例であり、DNA複製開始の機能を高める可能性がある変異であれば、置換する塩基やアミノ酸配列の種類や場所は、ここに示した変異型LT遺伝子と完全に一致している必要はない。
【0051】
複製開始蛋白質遺伝子25がSV40のLT遺伝子の場合、複製開始配列30として、例えば、SV40のori配列が適当である。SV40のori配列の一例を配列表の配列番号5に示す。この塩基配列も、複製開始の機能を失わない限りにおいては、配列番号5の塩基配列と必ずしも完全に一致している必要はない。
【0052】
LT遺伝子や、変異型LT遺伝子、SV40のori配列等の塩基配列は、既知の遺伝子工学手法により取得可能である。例えば、これら取得対象の塩基配列に特異的なプライマーセットを利用したPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)により、取得対象の塩基配列を含むDNAを増幅して取得することが可能である。または、取得対象の塩基配列の全てを人工的に合成してもよい。また既にベクターに組込まれたものを利用してもよい。
【0053】
また、遺伝子プロモーター10であるサイトメガロウイルスのプロモーターの一例を配列表の配列番号6に、レポーター遺伝子21であるホタルのルシフェラーゼ遺伝子の一例を配列表の配列番号7に、脳心筋炎ウイルスのIRESの一例を配列表の配列番号8に、牛成長ホルモン遺伝子の転写終結シグナル配列の一例を配列表の配列番号9に示す。なお、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、これらの遺伝子や塩基配列に限定されるわけではない。また、遺伝子やシグナルの塩基配列も、その機能を失わない限りにおいて、上記配列番号に記載の塩基配列と完全に一致しなくともよい。
【0054】
2.ベクターの作製
次に、プラスミド型ベクターpCMV−Luc−IRES−LTの作製方法について説明する。図3は、プラスミド型ベクターpCMV−Luc−IRES−LTの作製方法の典型的な流れを模式的に示す図である。
【0055】
図3に示すように、ベクターPGV−B2(TOYO B−Net)とベクターpBSII−IRESとベクターpCMV−LT(w/oZeo)とを用意する。ベクターPGV−B2は、ホタルのルシフェラーゼ遺伝子41を含んでいる。ベクターpBSII−IRESは、脳心筋炎ウイルスのIRES43を含んでいる。ベクターpCMV−LTは、CMV(サイトメガロウイルス)の遺伝子プロモーター(CMVプロモーター)45、LT遺伝子47、牛成長ホルモン遺伝子の転写終結シグナル配列49、及びSV40ori配列51を有している。
【0056】
まず、制限酵素SacIと制限酵素XbaIとでPGV−B2を消化してルシフェラーゼ遺伝子41を切り出す。同様に、制限酵素SacIと制限酵素XbaIとでpBSII−IRESを切断する。そして、PGV−B2から切り出されたルシフェラーゼ遺伝子41を、制限酵素SacIと制限酵素XbaIとで切断されたpBSII−IRESにT4リガーゼで連結することによりpBSII−Luc−IRESを作製する。
【0057】
次に、pBSII−Luc−IRESを制限酵素PstIで切断する。制限酵素PstIで切断されたpBSII−Luc−IRESの3’突出末端をT4DNAポリメラーゼで平滑化する。平滑化の後、pBSII−Luc−IRESを制限酵素NheIで切断することにより、ルシフェラーゼ遺伝子41とIRES43とからなるDNA断片をpBSII−Luc−IRESから切り出す。一方、pCMV−LTにもpBSII−Luc−IRESに対して施した処理を施す。すなわち、pCMV−LTを制限酵素PstIで切断し、3’突出末端をT4DNAポリメラーゼで平滑化し、pCMV−LTを制限酵素NheIで切断する。そして、pBSII−Luc−IRESから切り出されたDNA断片をpCMV−LTにT4リガーゼで連結することにより、本実施形態に係るプラスミド型ベクターpCMV−Luc−IRES−LTを作製する。上述の処理により、pCMV−Luc−IRES−LTは、CMVプロモーター45、ルシフェラーゼ遺伝子41、IRES43、LT遺伝子47、転写終結シグナル配列49、及び複製開始配列51を含んでいる。ルジフェラーゼ遺伝子41、IRES43、LT遺伝子47、及び転写終結シグナル配列49は、CMVプロモーター45の下流に組み込まれている。
【0058】
また、さらに他のプラスミド型ベクター1として、上述のプラスミド型ベクターpCMV−Luc−IRES−LTのLT遺伝子を変異型LT遺伝子に組み換えたpCMV−Luc−IRES−LT−E107KとpCMV−Luc−IRES−LT−D402Eとを作製した。図4は、pCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Luc−IRES−LT−E107KとpCMV−Luc−IRES−LT−D402Eとの構造を模式的に示す図である。図4の(a)に示すように、pCMV−Luc−IRES−LTのLT遺伝子47の319番目の塩基はグアニン(G)であり、321番目の塩基はアデニン(A)であり、1206番目の塩基はチミン(T)である。pCMV−Luc−IRES−LT−E107KのLT遺伝子47´の319番目の塩基はアデニン(A)であり、321番目の塩基はグアニン(G)であり、1206番目の塩基は、チミン(T)である。pCMV−Luc−IRES−LT−D402EのLT遺伝子47´´の319番目の塩基はグアニン(G)であり、321番目の塩基はアデニン(A)であり、1206番目の塩基は、グアニン(G)である。pCMV−Luc−IRES−LT−E107Kは、プラスミドの部位特異的変異導入法により、pCMV−Luc−IRES−LTのLT遺伝子の319番目の塩基をグアニン(G)からアデニン(A)に、321番目の塩基をアデニン(A)からグアニン(G)に置換することにより作製される。pCMV−Luc−IRES−LT−D402Eは、プラスミドの部位特異的変異導入法により、pCMV−Luc−IRES−LTのLT遺伝子の1206番目の塩基をチミン(T)からグアニン(G)に置換することにより作製される。
【0059】
以上で本実施形態に係るプラスミド型ベクター1の作製方法の具体例についての説明を終了する。
【0060】
なお、プラスミド型ベクター1、あるいは変異型LT遺伝子に組み換えたプラスミド型ベクター1とともに宿主細胞に導入されるネガティブコントロール用のベクターとしてpCMV−Lucが作製された。図5は、ベクターpCMV−Lucの作製方法の典型的な流れを模式的に示す図である。図5に示すように、pCMV−Lucは、pCMV−LT(w/oZeo)とベクターPGV−B2とから作製された。pCMV−LTは、CMVプロモーター61、LT遺伝子63、転写終結シグナル配列65、及びSV40ori配列67を含んでいる。PGV−B2は、ルシフェラーゼ遺伝子69を含んでいる。pCMV−Lucは、pCMV−LTのLT遺伝子63とPGV−B2のルシフェラーゼ遺伝子69とを組み換えることにより作製可能である。
【0061】
具体的には、まず、制限酵素HindIIIと制限酵素XbaIとでPGV−B2を切断してルシフェラーゼ遺伝子69を切り出す。同様に、制限酵素HindIIIと制限酵素XbaIとでpCMV−LTを切断し、pCMV−LTからLT遺伝子63を除去する。そして、切り出されたルシフェラーゼ遺伝子69を、制限酵素HindIIIと制限酵素XbaIとで切断されたpCMV−LTにT4リガーゼで連結することによりネガティブコントロール用のベクターpCMV−Lucを作製する。すなわち、pCMV−Lucは、CMVプロモーター61、ルシフェラーゼ遺伝子69、転写終結シグナル配列65、及びSV40ori配列67を含んでいる。ルシフェラーゼ遺伝子69と転写終結シグナル配列65とは、CMVプロモーター61の下流に組み込まれている。このように、pCMV−Lucは、複製開始蛋白質遺伝子と複製開始配列とを含んでおらず、非自己増幅型のレポーターベクターとして機能する。
【0062】
3.宿主細胞におけるLT蛋白質の発現
ヒト肝がん細胞(Huh−7)に、pCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Lucとを導入する。上述のように、pCMV−Lucは、pCMV−Luc−IRES−LTに対するネガティブコントロール用のベクターとして導入される。
【0063】
各プラスミド型ベクターの細胞への導入は、リポフェクション法で行われた。プラスミド型ベクターの導入試薬として、リポフェクタミン2000(life Technologies社)を使用した。リポフェクションの操作は、試薬のマニュアルに従った。簡単には、50μlのOpti−MEMに縣濁した1.0μlのカチオン脂質(リポフェクタミン2000)と、0.6μgのpCMV−Luc−IRES−LT或いは0.4μgのpCMV−Lucと,0.2μgのDNA(pUC19)を含む50μlのOpti−MEMとを混合してリポフェクタミン/ベクター複合体を形成した。リポフェクタミン/ベクター複合体の形成後、この複合体液50μlを培養プレート(24ウェルプレート)で予め一晩培養しておいた培地(Huh−7(8.0×10細胞/ウェルで播種))に加えることにより、細胞にpCMV−Luc−IRES−LTを導入した。
【0064】
リポフェクションから48時間後、培養プレートから培地を取り除き、培地内の細胞をリン酸緩衝液(PBS)中に縣濁した。縣濁後、リン酸緩衝液と細胞とを含む縣濁液を角速度14,000rpmで5分間に亘って遠心分離器で遠心分離し、縣濁液から細胞ペレットを回収した。この細胞ペレットにSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)用の細胞溶解液を加え、沸騰水中で5分間に亘ってインキュベートした後、8%のSDS−PAGEで電気泳動を行った。電気泳動後、サブマリン型ブロッティング装置でゲル中の蛋白質をPVDF膜に転写(ブロッティング)し、PVDF膜をブロックエース(Dainippon Sumitomo Pharma)でブロッキングした。ブロッキング後、一次抗体溶液(500倍希釈したマウス抗LTモノクローナル抗体(Clone9E10,Sigma))にPVDF膜を浸し、室温で1時間に亘って反応させた。そして、PVDF膜をトリス緩衝食塩水(TBS)で3回洗浄した。
【0065】
洗浄後、PVDF膜内のLT蛋白質の発現量をABCキット(Alkaline Phosphatase Universal,VECTASTAIN)を使用して測定した。ABCキットの操作は、販売メーカーのマニュアルに従った。PVDF膜(酵素標識二次抗体)は、BCIP/NBT(KPL社)で発色させた。
【0066】
図6は、pCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−LucとにおけるLT蛋白質のシグナルの検出結果を示す図である。図6に示したように、pCMV−Lucにおいては、LT蛋白質の発現は検出されていない。一方、pCMV−Luc−IRES−LTにおいては、LT蛋白質の発現が特異的に検出された。図6の例においては、LT蛋白質のシグナルの分子量は、約82kDaであると測定された。
【0067】
4.プラスミド型ベクターの増幅
上記の3と同様の方法で、Huh−7細胞に、同コピー数のpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Lucとを導入した。リポフェクションから72時間後、Dneasyキット(Qiagen)を使用して細胞からDNAを抽出した。DNAの抽出操作は、キットのマニュアルに従った。抽出されたDNA溶液200μlのうち、1.0μlを鋳型としてPCRをおこない、pCMV−Luc−IRES−LT、或いはpCMV−Lucの部分塩基配列を増幅した。PCRに使用したプライマーの塩基配列を以下に示す。
【0068】
フォワードプライマー:
5’−CGACTGTGCCTTCTAGTTGCCAGCC−3’
リバースプライマー:
5’−CCAGCATGCCTGCTATTGTCTTCCC−3’
PCR反応後のDNA溶液を、0.8%のアガロースゲルで電気泳動した。電気泳動後、DNA溶液を含むゲルをエチジウムブロマイドにより染色し、染色されたゲルの写真を撮影した。そして、エチジウムブロマイド染色写真に描出されたバンドの染色強度を画像解析ソフトウェア(ImageJ)で数値化した。
【0069】
図7に、細胞にプラスミド型ベクターを導入してから72時間後のpCMV−Lucに対するpCMV−Luc−IRES−LTのコピー数(バンドの染色強度)の比較結果を示す。図7(a)は、pCMV−LucとpCMV−Luc−IRES−LTとのエチジウムブロマイド染色写真を示す。図7(b)は、pCMV−LucとpCMV−Luc−IRES−LTとのコピー数を比較したグラフ(染色強度比のグラフ)を示す。図7(a)に示すように、pCMV−Luc−IRES−LTは、pCMV−Lucよりも写真の輝度が高い。従って、pCMV−Luc−IRES−LTは、pCMV−Lucよりもシグナル強度が高いことがエチジウムブロマイド染色写真から見出すことができる。また、図7(b)に示すように、pCMV−Luc−IRES−LTは、pCMV−Lucよりもシグナル強度が高い。このグラフから、pCMV−Luc−IRES−LTのコピー数は、pCMV−Lucのコピー数の4.2倍に増幅していることを見出すことができる。
【0070】
5.レポータージーンアッセイ−1−(ルシフェラーゼアッセイ)
上記の3と同様の方法で、Huh−7細胞とサル腎がん細胞(CV−1)とのそれぞれに、同コピー数のpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Lucとをリポフェクション法により導入し、培養プレートで培養した。リポフェクションから72時間後に、培養プレートから培地を取り除き、各細胞をPBSで2回洗浄してから、細胞からルシフェラーゼ(レポーター蛋白質)を抽出するための抽出試薬である細胞溶解液(PicaGene Cell lysis buffer LCβ,TOYO B−Net社)を添加した。室温で15分間に亘って細胞と細胞溶解液との縣濁液をインキュベートした後、角速度15,000rpmで5分間に亘って縣濁液を遠心分離器で遠心分離することによって、縣濁液から細胞残渣を取り除いた。そして、細胞残渣が取り除かれた縣濁液の上清にルシフェラーゼ基質溶液(PicaGene LT2.0,TOYO B−Net社)を加えた後、検出試薬であるルシフェラーゼ基質溶液(ルシフェリン溶液)が加えられた上清の発光強度をルミノメーター(Mithras LB940,Berthold社)で測定した。
【0071】
図8は、pCMV−LucとpCMV−Luc−IRES−LTとのレポーター蛋白質のシグナル強度の比較結果を示す図である。図8に示すように、宿主細胞がHuh−7の場合、pCMV−Lucに対するpCMV−Luc−IRES−LTのレポーター蛋白質のシグナル強度は、約5.7倍であった。宿主細胞がCV−1の場合、pCMV−Lucに対するpCMV−Luc−IRES−LTのレポーター蛋白質のシグナル強度は、約19.8倍であった。このように、本実施形態に係るプラスミド型ベクターは、非増幅型のプラスミド型ベクターに比べて最大で約19.8倍のレポーター蛋白質を発現することが可能である。従って本実施形態に係るレポータージーンアッセイは、従来型のレポータージーンアッセイに比べて高感度に遺伝子プロモーターの活性を検出することができる。
【0072】
6.レポータージーンアッセイ−2−(ルシフェラーゼアッセイ)
上記の3と同様の方法で、サル腎がん細胞(CV−1)に、同コピー数のpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Luc−IRES−LT−E107KとpCMV−Luc−IRES−LT−D402EとpCMV−Lucとをリポフェクション法により導入し、培養プレートで培養した。リポフェクションから72時間後に、培養プレートから培地を取り除き、各細胞をPBSで2回洗浄してから、細胞からルシフェラーゼ(レポーター蛋白質)を抽出するための抽出試薬である細胞溶解液(PicaGene Cell lysis buffer LCβ,TOYO B−Net社)を添加した。室温で15分間に亘って細胞と細胞溶解液との縣濁液をインキュベートした後、角速度15,000rpmで5分間に亘って縣濁液を遠心分離器で遠心分離することによって、縣濁液から細胞残渣を取り除いた。そして、細胞残渣が取り除かれた縣濁液の上清にルシフェラーゼ基質溶液(PicaGene LT2.0,TOYO B−Net社)を加えた後、検出試薬であるルシフェラーゼ基質溶液(ルシフェリン溶液)が加えられた上清の発光強度をルミノメーター(Mithras LB940,Berthold社)で測定した。
【0073】
図9は、pCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Luc−IRES−LT−E107KとpCMV−Luc−IRES−LT−D402EとのpCMV−Lucに対するレポーター蛋白質のシグナル強度の比較結果を示す図である。図10に示すように、pCMV−Lucに対するpCMV−Luc−IRES−LTとpCMV−Luc−IRES−LT−E107KとpCMV−Luc−IRES−LT−D402Eとのレポーター蛋白質のシグナル強度は、それぞれ約20倍と約108倍と約177倍とであった。このように、本実施形態に係るプラスミド型ベクターは、変異型LT遺伝子を用いることにより、非増幅型のプラスミド型ベクターに比べて最大で約177倍のレポーター蛋白質を発現することが可能である。従って本実施形態に係るレポータージーンアッセイは、従来型のレポータージーンアッセイに比べて高感度に遺伝子プロモーターの活性を検出することができる。
【0074】
[効果]
上述のように、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、検出対象となる遺伝子プロモーター10、レポーター遺伝子21、IRES23、複製開始蛋白質遺伝子25、転写終結シグナル配列27、及び複製開始配列30を有している。レポーター遺伝子21、IRES23、複製開始蛋白質遺伝子25、及び転写終結シグナル配列27は、遺伝子プロモーター10の下流に配置される。IRES23は、レポーター遺伝子21と複製開始蛋白質遺伝子25とを連結している。従って、プラスミド型ベクター1が遺伝子プロモーター10の活性化条件を満たす宿主細胞に導入された場合、遺伝子プロモーター10の活性化に伴ってプラスミド型ベクター1が複製を繰り返しながら、個々のプラスミド型ベクター1においてレポーター蛋白質が合成される。従って、従来の非増幅型レポーターベクターに比して、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、遺伝子プロモーター10の活性に起因して合成されるレポーター蛋白質の発現量、すなわち、測定シグナルの発現量を増大させることができる。また、本実施形態に係るプラスミド型ベクター1は、プラスミドを利用しているので、ウイルスを利用したベクターに比して、感染等の危険性がなく、取り扱いが簡便である。
【0075】
本実施形態に係るレポータージーンアッセイは、プラスミド型ベクター1に含まれる遺伝子プロモーター10の活性に伴ってプラスミド型ベクター1が増幅可能な条件下で宿主細胞を培養し、培養された宿主細胞内でのプラスミド型ベクター1に含まれるレポーター遺伝子21の発現量を測定する。従って、本実施形態に係るレポータージーンアッセイは、従来の非増幅型レポーターベクターを利用したレポータージーンアッセイに比して、遺伝子プロモーターの活性を高感度に検出することができる。
【0076】
また、本実施形態に係るアッセイキットは、プラスミド型ベクター1と、宿主細胞における、プラスミド型ベクター1に含まれるレポーター遺伝子21の発現を検出するための試薬とを含んでいる。従って、本実施形態に係るアッセイキットは、従来の非増幅型レポーターベクターを利用したアッセイキットに比して、遺伝子プロモーターの活性を高感度に検出することができる。
【0077】
例えば、疾患早期における前疾患化状態にある細胞において特異的に活性化する遺伝子プロモーター10をプラスミド型ベクター1に組み込んだ場合、この前疾患化状態にある細胞の単位個数あたりのレポーター蛋白質の発現量を従来に比して大幅に増大することできる。発現量の増大により、レポーター蛋白質の発現を容易に検出することができ、結果的に遺伝子プロモーター10の活性を容易に検出することができる。このように、本実施形態によれば、極微量の病変細胞の変化を高感度に検出することができる。
【0078】
かくして本実施形態によれば、遺伝子プロモーターの活性を高感度に検出可能なプラスミド型ベクター、遺伝子プロモーターの検出方法、及びアッセイキットを提供することができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1…プラスミド型ベクター、10…遺伝子プロモーター、21…レポーター遺伝子、23…内部リボゾーム結合配列(IRES)、25…複製開始蛋白質遺伝子、27…転写終結シグナル配列、30…複製開始配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子プロモーターと、
前記遺伝子プロモーターの下流に配置された、前記遺伝子プロモーターの活性を可視化するためのレポーター蛋白質をコードする第1の遺伝子と、
前記遺伝子プロモーターの下流に配置された、複製開始蛋白質をコードする第2の遺伝子と、
前記第1の遺伝子と前記第2の遺伝子との間に配置された内部リボゾーム結合配列と、
前記第1の遺伝子と前記第2の遺伝子との転写を終結するためのシグナルをコードする転写終結シグナル配列と、
前記複製開始蛋白質により認識される複製開始配列と、
を具備するプラスミド型ベクター。
【請求項2】
前記第1の遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、一酸化窒素合成酵素遺伝子、キサンチンオキシダーゼ遺伝子、青色蛍光蛋白質遺伝子、緑色蛍光蛋白質遺伝子、赤色蛍光蛋白質遺伝子、または重金属結合蛋白質遺伝子である、請求項1記載のプラスミド型ベクター。
【請求項3】
前記第2の遺伝子は、シミアン・ウイルス40のラージT抗原遺伝子であり、
前記複製開始配列は、シミアン・ウイルス40の複製開始配列である、
請求項1記載のプラスミド型ベクター。
【請求項4】
前記ラージT抗原遺伝子は、配列番号1に記載の塩基配列よりなるラージT抗原遺伝子、あるいは、DNA複製開始の機能を高める可能性を有する任意の変異を配列番号1に記載の塩基配列に導入した変異型のラージT抗原遺伝子である、請求項3記載のプラスミド型ベクター。
【請求項5】
前記変異型のラージT抗原遺伝子は、配列番号2、配列番号3、または配列番号4に記載の塩基配列よりなる、請求項4記載のプラスミド型ベクター。
【請求項6】
前記第2の遺伝子は、エプスタイン・バー・ウイルスのEBNA−1遺伝子であり、
前記複製開始配列は、エプスタイン・バー・ウイルスの複製開始配列である、
請求項1記載のプラスミド型ベクター。
【請求項7】
前記第2の遺伝子は、マウス・ポリオーマ・ウイルスのラージT抗原遺伝子であり、
前記複製開始配列は、マウス・ポリオーマ・ウイルスの複製開始配列である、
請求項1記載のプラスミド型ベクター。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のプラスミド型ベクターを細胞に導入し、
前記プラスミド型ベクターに含まれる遺伝子プロモーターの活性に伴って前記プラスミド型ベクターが増幅可能なように、前記細胞が分裂して増殖する条件下で前記細胞を培養し、
前記培養された細胞内での、前記プラスミド型ベクターに含まれるレポーター遺伝子の発現量を測定する、
ことを具備する遺伝子プロモーター活性の検出方法。
【請求項9】
前記細胞は、ヒトまたはサル由来の細胞である、請求項8記載の検出方法。
【請求項10】
前記細胞は、マウスまたはラット由来の細胞である、請求項8記載の検出方法。
【請求項11】
前記レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、青色蛍光蛋白質遺伝子、緑色蛍光蛋白質遺伝子、または赤色蛍光蛋白質遺伝子であり、
前記測定することは、前記発現量として、前記レポーター遺伝子の翻訳産物の発光量または蛍光量を、光学検出装置を利用して測定する、
請求項8記載の検出方法。
【請求項12】
前記第レポーター遺伝子は、一酸化窒素合成酵素遺伝子、またはキサンチンオキシダーゼ遺伝子であり、
前記測定することは、前記発現量として、前記レポーター遺伝子の翻訳産物により生成される活性酸素量を、電子スピン共鳴装置を利用して測定する、
請求項8記載の検出方法。
【請求項13】
前記レポーター遺伝子は、重金属結合蛋白質遺伝子であり、
前記測定することは、前記発現量として、前記レポーター遺伝子の翻訳産物に結合した重金属量を、磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置、またはX線コンピュータ断層撮影装置を利用して測定する、
請求項8記載の検出方法。
【請求項14】
請求項1から7の何れか一項に記載のプラスミド型ベクターと、
細胞における、前記プラスミド型ベクターに含まれるレポーター蛋白質をコードする遺伝子の発現を検出するための試薬と、
を具備するアッセイキット。
【請求項15】
前記プラスミド型ベクターを細胞に導入するための試薬、をさらに具備する請求項14記載のアッセイキット。
【請求項16】
前記細胞からレポーター蛋白質を抽出するための試薬、をさらに具備する請求項14記載のアッセイキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−42721(P2013−42721A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183896(P2011−183896)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】