説明

プラズマを用いたイオン注入装置

【課題】 二次電子によって発生するウェハーの汚染を防止できるプラズマを用いたイオン注入装置を提供する。また、RF電界によってチェンバー内で発生するアーク放電を低減できるプラズマを用いたイオン注入装置を提供する。さらに、広い圧力条件で安定的なプラズマの生成を可能にし、薄い接合深さを維持しながら、多量のイオンをウェハーに注入するのに適したプラズマを生成できるプラズマを用いたイオン注入装置を提供する。
【解決手段】 プラズマ発生ユニットと、該プラズマ発生ユニットから生成されたプラズマのイオンを試料に注入するためのイオン注入ユニットと、該イオン注入ユニットに設けられ、帯電現象を防止するために接地された伝導体と、を含んでプラズマを用いたイオン注入装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入装置に関するもので、より詳しくは、プラズマを用いたイオン注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン注入(イオンインプランテーション)技術は、ドーピングしようとする不純物物質をイオン化させた後、加速させることで、高い運動エネルギーを有する不純物原子をウェハーの表面に強制に注入させる技術である。
【0003】
上記のようなイオン注入技術は、半導体製造工程に活用される。すなわち、半導体製造工程におけるイオン注入工程は、不純物をイオン粒子状に加速させた後、回路パターンに連結されたウェハーの部分に浸透させることで、電子素子の特性を生成する工程である。このような半導体製造工程におけるイオン注入工程は、従来のイオンビームを用いたイオン注入装置によって行われた。
【0004】
上記のような従来のイオンビームを用いたイオン注入装置は、一般的に、イオン発生源、加速装置、高真空装置を備えているが、装備が複雑であり、体積が大きく、高価の装置によって製造費用が上昇するという問題点があった。
【0005】
また、最近は、高集積の半導体素子が広く開発されているが、この半導体素子には、半導体単位素子の線幅が漸次狭くなるにつれて、より薄い接合深さ(ジャンクションデプス)が要求される。また、半導体素子の動作速度を向上させるために、より多量のイオン注入が必要となる。したがって、薄い接合深さを実現するために、低いエネルギーのイオンを用いるべきであるが、従来のイオンビームを用いたイオン注入装置においては、イオンエネルギーが低くなると、各イオン間の相互反発力によって発生するイオンビームの発散現象が増加し、イオン注入効率が低下するという問題点があった。すなわち、従来のイオンビームを用いたイオン注入装置においては、上記のような高集積の半導体を製造するためのイオン注入工程の要求条件を満足させる場合、工程特性が低下し、生産性が著しく低下するという問題点があった。
【0006】
上記のような従来のイオンビームを用いたイオン注入技術における問題点を克服するために、プラズマを用いたイオン注入技術が開発された。
【0007】
プラズマを用いたイオン注入技術は、注入しようとする物質を気体状態で導入してプラズマを形成した後、処理しようとする素材に高電圧のパルスを印加することで、プラズマ中の陽イオンを素材の表面に衝突させて注入させる技術である。
【0008】
素材に印加された高電圧パルスによって素材の周囲にプラズマシースが形成され、各イオンは、プラズマシースの境界に垂直な方向に素材の表面に入射される。このとき、素材の表面に入射された各イオンが、高い運動エネルギーで素材の表面に浸透することで、イオン注入が行われるようになる。
【0009】
プラズマを用いたイオン注入技術は、従来のイオンビームを用いたイオン注入技術と異なって、線形的な処理技法でないため、処理する素材をステッピングまたは回転する必要なしに、プラズマシースの大きさのみを制御することで、素材の表面に均一なイオン注入層を形成し、その結果、処理速度を大いに向上できる。また、プラズマを用いたイオン注入装置には、装備の構造が非常に単純であり、その大きさが相対的に小さく、価格が低廉であるという長所もある。
【0010】
図1は、従来のプラズマを用いたイオン注入装置の一例を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、従来のプラズマを用いたイオン注入装置は、その内部にプラズマ形成空間が設けられた円筒状の反応チェンバー1と、この反応チェンバー1の下部に設けられ、基板、例えば、ウェハーWを支持する支持台2と、反応チェンバー1の上部カバー3に設けられる絶縁体ウィンドウ4と、この絶縁体ウィンドウ4の上部に設けられ、反応チェンバー1の内部にプラズマを生成させるためにRF電源に連結されたコイルアンテナ5と、支持台2の背面に設けられ、支持台2に載置されたウェハーWに注入されるイオンのエネルギーを正確に調節するために、高電圧パルスをウェハーWに印加する高電圧電源部6と、を含んで構成される。
【0012】
反応チェンバー1の側壁には、反応ガスを反応チェンバー1の内部に注入するためのガス注入口1aが形成されている。また、反応チェンバー1の底壁には、真空ポンプ7に連結される真空吸入口1bが形成されており、反応チェンバー1の内部は、真空吸入口1bを通して真空ポンプ7によって真空状態になる。
【0013】
上記のような従来のプラズマを用いたイオン注入装置は、コイルアンテナ5を通して流れるRF電流によって磁場が発生し、この磁場の時間による変化に基づいて反応チェンバー1の内部に電場が誘導される。これと同時に、反応ガスがガス注入口1aを通して反応チェンバー1の内部に流入し、誘導電場によって加速された各電子の衝突過程を通して反応ガスをイオン化させることで、反応チェンバー1内にプラズマを生成する。
【0014】
上記のように形成されたプラズマの各イオンは、ウェハーWに印加された高電圧のパルスによってウェハーWの表面に入射される。また、この入射される各イオンが高い運動エネルギーでウェハーの表面に浸透することで、イオン注入が行われるようになる。
【0015】
このとき、ウェハーWに印加された高電圧パルスによって強く加速されたプラズマのイオンは、ウェハーW及び反応チェンバー1の内壁と衝突しながら二次電子を多く発生させる。この二次電子が、ウェハーWの周囲に形成された強い電場を有するプラズマシース領域で加速され、反応チェンバー1の上部に設けられた絶縁体ウィンドウ4を帯電させることで、絶縁体ウィンドウ4は高い陰電位を帯びるようになる。一般的に、従来のプラズマを用いたイオン注入装置において、約5kVの高電圧パルスによって帯電される絶縁体ウィンドウ4の電位は、約1〜2kVになる。
【0016】
上記のような高い陰電位を帯びる絶縁体ウィンドウ4は、周囲に分布したプラズマの各イオンを強く引き付けながら絶縁体ウィンドウ4のスパッタリングを誘発する。その結果、スパッタリングによって形成された副産物が、反応チェンバー1の内壁とウェハーWの表面を汚染させるという問題点があった。
【0017】
また、従来のプラズマを用いたイオン注入装置の反応チェンバー1は、単純な円筒状の構造となっており、コイルアンテナ5を通して流れるRF電流によってRF電界が反応チェンバー1に形成される。その結果、RF電界によって、反応チェンバー1にアーク放電(arcing)が発生するという問題点があった。
【0018】
また、RF電源を用いてプラズマを生成する場合、高い電子温度を有する高密度のプラズマが発生するが、高い電子温度を有するプラズマは、(注入ガスの解離を促進させることで)相対的に(質量の)軽いイオンの生成を促進させる。このように相対的に軽いイオンがウェハーの表面に注入されると、各イオンがウェハーに深く浸透することで深い接合深さが形成される。そのため、高い電子温度を有するプラズマは、薄い接合深さが要求される高集積半導体素子のイオン注入には適切でないという問題点があった。また、従来のプラズマを用いたイオン注入装置は、過度に高い密度を有するプラズマの各イオンがウェハーに直接衝突することで、ウェハーに損傷を与えるという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上述した従来の問題点を解決するためのもので、その目的は、二次電子によって発生するウェハーの汚染を防止できるプラズマを用いたイオン注入装置を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、RF電界によってチェンバー内で発生するアーク放電を低減できるプラズマを用いたイオン注入装置を提供することにある。
【0021】
本発明の更に他の目的は、広い圧力条件で安定的なプラズマの生成を可能にし、薄い接合深さを維持しながら、多量のイオンをウェハーに注入するのに適したプラズマを生成できるプラズマを用いたイオン注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するための本発明は、プラズマ発生ユニットと、該プラズマ発生ユニットで生成されたプラズマのイオンを試料に注入するためのイオン注入ユニットと、該イオン注入ユニットに設けられ、帯電現象を防止するために接地された伝導体と、を含むことを特徴とする。
【0023】
また、前記プラズマ発生ユニットは、プラズマが生成される空間を形成する1チェンバーと、該第1チェンバーの一側に設けられてプラズマを発生するコイルアンテナと、該コイルアンテナにエネルギーを供給するパワー供給部と、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、前記イオン注入ユニットは、前記プラズマ発生ユニットに生成されたプラズマのイオンを試料に注入するためのイオン注入空間を形成する第2チェンバーと、該第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、を含むことを特徴とする。
【0025】
また、前記パワー供給部は、RFパワーを供給することを特徴とする。
【0026】
また、前記電源部は、高電圧パルスを試料に印加することを特徴とする。
【0027】
また、前記第1チェンバーは、前記第2チェンバーの上部周縁に所定高さを有して環状に形成されることを特徴とする。
【0028】
また、前記第2チェンバーは、円筒状に形成されることを特徴とする。
【0029】
また、前記第1チェンバーは、絶縁体によって形成されることを特徴とする。
【0030】
また、前記第2チェンバーには、プラズマが前記第1チェンバーから第2チェンバーに拡散されるように、前記第1チェンバーの下側に対応する流入口が形成されることを特徴とする。
【0031】
また、前記イオン注入ユニットは、試料を装着するための載置台を含み、前記伝導体は、前記載置台と対向して設けられることを特徴とする。
【0032】
また、前記伝導体は、Siによって形成されることを特徴とする。
【0033】
また、前記第1チェンバーには、第1ガス注入口が形成され、前記第2チェンバーには、第2ガス注入口が形成されることを特徴とする。
【0034】
そして、本発明は、プラズマが形成される第1チェンバーと、該第1チェンバーからプラズマを拡散させるための流入口が形成され、プラズマのイオンを試料に注入するための第2チェンバーと、前記第1チェンバーの内部にプラズマを発生させるためのコイルアンテナと、前記第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、を含むことを特徴とする。
【0035】
また、前記コイルアンテナには、RFパワーが供給され、前記電源部は、高電圧パルスを試料に印加することを特徴とする。
【0036】
また、前記第1チェンバーは、前記第2チェンバーの上部周縁に所定高さを有して環状に形成され、前記第2チェンバーは、円筒状に形成されることを特徴とする。
【0037】
また、前記流入口は、前記第1チェンバーの下側が前記第2チェンバーに開放されるように、環状に形成されることを特徴とする。
【0038】
また、前記第2チェンバーは、帯電現象を防止するために接地された伝導体を含み、前記伝導体は、Siによって形成されることを特徴とする。
【0039】
また、前記第2チェンバーは、試料を装着する載置台を含み、前記伝導体は、前記載置台に装着された試料と対向して設けられることを特徴とする。
【0040】
また、前記第1チェンバーには、第1ガス注入口が形成され、前記第2チェンバーには、第2ガス注入口が形成されることを特徴とする。
【0041】
また、本発明は、プラズマが形成される第1チェンバーと、該第1チェンバーの内部にプラズマを発生させるためのコイルアンテナと、前記第1チェンバーからプラズマを拡散させるための流入口が形成され、載置台に装着される試料にプラズマのイオンを注入するための第2チェンバーと、該第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、前記試料との対向位置に接地されて設けられた伝導体と、を含むことを特徴とする。
【0042】
また、本発明は、プラズマが形成される環状の第1チェンバーと、該第1チェンバーの内部にプラズマを発生させるためのコイルアンテナと、前記第1チェンバーから拡散されたプラズマのイオンを試料に注入するための第2チェンバーと、該第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、を含み、前記第1チェンバーは、前記第2チェンバーの上部周縁に所定幅を有して環状に形成され、前記第2チェンバーと互いに連通されることを特徴とする。
【0043】
また、本発明は、プラズマが形成される上部チェンバーと、該上部チェンバーで形成されたプラズマのイオンを試料に注入するための下部チェンバーと、を含み、前記上部チェンバーは、前記下部チェンバーの上面に設けられ、プラズマが前記下部チェンバーに拡散されるように前記下部チェンバーと連通されることを特徴とする。
【0044】
また、前記上部チェンバーは、プラズマを発生させるための電界が前記下部チェンバーに伝播されないように、前記下部チェンバー内のアーク放電を抑制するように構成されることを特徴とする。
【0045】
また、本発明は、前記上部チェンバーを取り囲んで設けられ、前記上部チェンバーにプラズマを発生させるためのアンテナコイルと、前記試料の汚染を防止するために、前記下部チェンバーの内部及び前記試料の上部に設けられる伝導体プレートと、をさらに含むことを特徴とする。
【0046】
また、本発明は、前記上部チェンバーの上面に設けられ、前記上部チェンバーにプラズマを発生させるためのアンテナコイルと、前記試料の汚染を防止するために、前記下部チェンバーの内部及び前記試料の上部に設けられる伝導体プレートと、をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置は、ウェハーとの対向位置に接地された伝導体を設けることで、二次電子及びプラズマの各イオンのスパッタリングによって発生するウェハーの汚染を防止できるという効果がある。
【0048】
また、本発明は、第2チェンバーにRF電界が伝播されないので、イオン注入工程時に第2チェンバー内で発生するアーク放電を低減できるという効果がある。
【0049】
また、本発明は、第1チェンバーが環状を有して形成されるので、広い領域の圧力条件で安定的なプラズマ発生が可能であり、第2チェンバーの内部に拡散されたプラズマが低い電子温度及び適正なプラズマ密度を有するので、イオン注入工程、特に、薄い接合深さのイオン注入工程に適したプラズマを提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の好適な実施の形態を、添付の図面に基づいて詳しく説明する。
【0051】
図2は、本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置を示す断面図で、図3は、本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置を示す切開斜視図である。
【0052】
プラズマを用いたイオン注入装置は、注入しようとする物質を気体状態で反応チェンバーに導入してプラズマを形成した後、ウェハーに高電圧パルスを印加することで、プラズマ中の陽イオンをウェハーの表面に衝突させて注入させる半導体製造装置である。
【0053】
本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置10は、図1及び図2に示すように、プラズマを形成するために設けられるプラズマ発生ユニット30と、プラズマ発生ユニット30で形成されたプラズマを拡散させることで、プラズマ中の陽イオンをウェハーWに注入するイオン注入工程が行われるイオン注入ユニット20と、を含んで構成される。
【0054】
プラズマ発生ユニット30は、プラズマが生成される空間を形成する第1チェンバー35と、第1チェンバー35の上部に設けられ、プラズマを第1チェンバー35に誘導するコイルアンテナ34と、コイルアンテナ34にエネルギーを供給するパワー供給部37と、を含んで構成される。
【0055】
第1チェンバー35は、その内部にプラズマ形成空間を形成するために、円筒体の外周面を形成する外側絶縁体32と、円筒体の内周面を形成する内側絶縁体33と、外側絶縁体32と内側絶縁体33との間の円筒体上部を覆う絶縁プレート33と、から構成される。したがって、第1チェンバー35は、下部が開放された形態をなし、全体的に所定高さを有して環状に形成される。このとき、第1チェンバー35は、幅が約4cmで、高さが約7.5cmであることが好ましい。
【0056】
また、外側絶縁体32の一側には、プラズマ生成のための放電過程を円滑にする反応ガスを、第1チェンバー35の内部に注入するための第1ガス注入口36が形成される。この第1ガス注入口36は、内側絶縁体33に位置することもあり、設計によって設置高さが変化される。
【0057】
絶縁プレート33の上部には、円状または螺旋状にコイルが複数回巻かれたコイルアンテナ34が設置される。このコイルアンテナ34は、 第1チェンバー35の内部に注入された反応ガスのイオン化を通して、プラズマを生成させるための電場を誘導する。コイルアンテナ34には、RFパワーをコイルアンテナ34に供給するためのパワー供給部37が連結される。このとき、パワー供給部37から供給されるRFパワーの振動数は、約2MHzであることが好ましい。したがって、コイルアンテナ34をなす各コイルにRF電流が流れることで、アンペアの右ねじの法則によって磁場が発生し、この磁場の時間による変化によって、第1チェンバー35の内部には、ファラデー電磁気誘導法則による円周方向への電場が誘導される。誘導電場が反応ガス内で電子を加速させ、この電子が第1ガス注入口36を通して第1チェンバー35の内部に流入した反応ガスをイオン化させることで、プラズマが生成される。
【0058】
上記のような環状の第1チェンバー35は、従来の円筒状の反応チェンバーに比べて、広い領域の圧力条件で安定的なプラズマ発生が可能である
イオン注入ユニット20は、プラズマ発生ユニット30に生成されたプラズマのイオンがウェハーWに注入されるイオン注入空間を形成する第2チェンバー28と、第2チェンバー28内のウェハーWに高電圧電源を供給する電源部27と、を含む。
【0059】
第2チェンバー28は、円筒状の本体部21と、本体部21の上部周縁を覆う上部カバー22と、本体部21の下部を覆う下部カバー24と、を含んで、第2チェンバー28の内部にイオン注入空間を形成する。
【0060】
第2チェンバー28の内部は、真空状態で維持される。このために、第2チェンバー28の下部カバー24には、真空ポンプ25に連結される真空吸入口24aが形成され、本体部21には、イオン注入工程のための工程ガスを第2チェンバー28に注入するための第2ガス注入口21aが形成される。
【0061】
また、下部カバー24の中央側には、ウェハーWを支持するために設けられる載置台26が形成される。また、載置台26と対向する上部カバー22の中央側には、円板状の伝導体23が設けられ、この伝導体23は、二次電子による帯電及びプラズマのイオンによるスパッタリングによって不純物がウェハーなどを汚染させる現象を防止する。このとき、伝導体23は、帯電現象を防止するために接地Gによって接地され、一例としてSiを備えている。また、ウェハーの二次電子が伝導体23に向かうように、伝導体23の半径は、載置台26に装着されたウェハーの半径より大きくすることが好ましい。
【0062】
上記のように伝導体23が接地Gによって接地されることで、ウェハーから発生した二次電子による伝導体23の帯電現象が防止され、その結果、伝導体23のイオンによるスパッタリングによって発生するチェンバーの壁やウェハーの汚染現象を防止できるという効果がある。
【0063】
上部カバー22と伝導体23との間の空間には、第1チェンバー35で形成されたプラズマを第2チェンバー28に拡散させるための流入口29が形成されるが、この流入口29によって、第1チェンバー35の開放された下側と第2チェンバー28とが連通される。
【0064】
また、載置台26に装着されたウェハーに高電圧パルスを印加するために、電源部27が載置台26の一側に連結される。この電源部27から発生する高電圧パルスによって、第1チェンバー35で形成された後、流入口29を通して第2チェンバー28に拡散されたプラズマの陽イオンが加速されることで、載置台26に装着されたウェハーWにイオンが注入される。
【0065】
上記のような本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置10の構成により、環状の第1チェンバー35で高密度の誘導結合プラズマが発生し、このプラズマは、イオン注入工程が行われる円筒状の第2チェンバー28に拡散される。このとき、第1チェンバー35が環状で、これに対応する流入口29も環状であるので、第2チェンバー28に拡散されたプラズマがウェハーW上に均一に分布される。そして、電源部27からウェハーWに印加された高電圧パルスによって高いエネルギーで加速されたイオンがウェハーWの表面に衝突し、イオンがウェハーに注入される方式でイオン注入工程が行われる。
【0066】
本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置10において、環状の狭い幅を有する第1チェンバー35で生成された後、円筒状の第2チェンバー28に拡散されるプラズマの放電特性は、従来の円筒状の反応チェンバーで生成されたプラズマの放電特性とは異なった特徴を示す。
【0067】
特に、低圧(10mTorr以下)の放電条件で、第1チェンバー35と第2チェンバー28のプラズマは、電子温度(Te)、プラズマ密度(Np)、プラズマポテンシャル(Vp)などの主要因子において明確な差を示す。
【0068】
図4は、図2のZ−Z’軸に沿う電子温度測定結果を示すグラフで、図5は、図2のZ−Z’軸に沿うプラズマポテンシャル測定結果を示すグラフで、図6は、図2のZ−Z’軸に沿うプラズマ密度測定結果を示すグラフである。
【0069】
図4〜図6は、ラングミュアプローブを用いて、0.8〜10mTorrの圧力範囲でArプラズマの各主要因子を測定した結果を示している。図4〜図6に示すように、第1チェンバー35で形成されたプラズマは、高い電子温度(Te=4−13eV)、高いプラズマ密度(Np=2〜12 1011cm)、高いプラズマポテンシャル(Vp=20−50V)を示すことが分かる。特に、図4〜図6に示した任意の圧力において、第1チェンバー35の電子温度及びプラズマポテンシャルは、常に第2チェンバー28の電子温度及びプラズマポテンシャルより非常に高く、第1チェンバー35から第2チェンバー28に行くほど、プラズマの電子温度及びプラズマポテンシャルが低くなることが分かる。
【0070】
図7は、本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置のプラズマ密度の電算シミュレーション結果を示す図で、図8は、本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置のプラズマ電子温度の電算シミュレーション結果を示す図である。
【0071】
図7及び図8は、3mTorrの圧力条件で、Arガスを用いた放電シミュレーション結果を示している。図7及び図8によると、プラズマ密度及びプラズマ電子温度の分布が、図4及び図6に示した実験結果と類似していることが分かる。
【0072】
図4〜図8に基づく説明から分かるように、第1チェンバー35の内部に非常に高い電子温度及び高密度を有するプラズマが生成されても、プラズマの特性は、第2チェンバー28への拡散過程を通して変わり、低い電子温度及び適正な密度を有するプラズマが第2チェンバー28内に均一に分布される。このように低い電子温度を有するプラズマは、工程ガス(例えばBF3)の解離とイオン化を適切に誘発し、その結果、イオン注入工程に必要な重いイオン(BF2+)の生成を、他の軽いイオン(BF+及びB+)の生成よりより促進させる。したがって、重いイオンがウェハーに衝突しながらイオン注入が行われるため、薄い接合深さのイオン注入を実現することができる。また、環状の第1チェンバーには、広い領域の圧力条件(0.5〜100mTorr)で安定的なプラズマ発生が可能であるため、本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置は、イオン注入に適したプラズマを生成させることができる。
【0073】
また、上記のようなプラズマを用いたイオン注入工程に適したプラズマの生成は、第1チェンバー35に放電過程を円滑にする不活性ガス(例えばAr)を注入し、第1チェンバー35にプラズマを発生させ、第2チェンバー28に工程ガス(例えばBF3)を別途に注入する方式を通してより効果的に行われる。
【0074】
また、本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置10において、パワー供給部37から印加するRFパワーによるRF電界は、上部の第1チェンバー35に集中し、下部の第2チェンバー28に伝播されにくい構造であるため、イオン注入工程時、第2チェンバー28から発生するアーク放電問題を減少させることができる。
【0075】
上記のような本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置は、半導体製造工程のうち、ウェハーにイオンを注入する工程のみならず、試料の表面処理が必要な多様な工程、すなわち、フィルムの表面処理、静電気防止包装材の停電処理などに適用可能である。
【0076】
以下、本発明の他の実施形態に係るプラズマを用いたイオン注入装置に対して説明する。ここで、上記の実施形態と同一の構成要素には同一の図面符号を付与し、それに対する説明を省略する。
【0077】
図9は、本発明の他の実施形態に係るプラズマを用いたイオン注入装置を示す断面図である。
【0078】
本発明の他の実施形態に係るプラズマを用いたイオン注入装置は、図9に示すように、 RFパワーを印加するために、内側絶縁体31、外側絶縁体32及び絶縁プレート33の外部を取り囲む形態で設けられたコイルアンテナ34を含み、このコイルアンテナ34は、内側絶縁体31、外側絶縁体32及び絶縁プレート33によって形成される。また、外側絶縁体32の半径は、本体部21の半径と同一に構成される。図9には、外側絶縁体32が本体部21の上部カバー22に結合される場合を示したが、これに限定されることはない。また、外側絶縁体32が本体部21に直接結合されることで、本発明のプラズマを用いたイオン注入装置11の本体部21の上部カバー22を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】従来のプラズマを用いたイオン注入装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置を示す断面図である。
【図3】本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置を示す切開斜視図である。
【図4】図2のZ−Z’軸に沿う電子温度測定結果を示すグラフである。
【図5】図2のZ−Z’軸に沿うプラズマポテンシャル測定結果を示すグラフである。
【図6】図2のZ−Z’軸に沿うプラズマ密度測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置のプラズマ密度の電算シミュレーション結果を示す図である。
【図8】本発明に係るプラズマを用いたイオン注入装置のプラズマ電子温度の電算シミュレーション結果を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るプラズマを用いたイオン注入装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
20 イオン注入ユニット
21 本体部
21a 第2ガス注入口
23 伝導体
26 載置台
27 電源部
28 第2チェンバー
30 プラズマ発生ユニット
32 外側絶縁体
33 絶縁プレート
34 コイルアンテナ
35 第1チェンバー
36 第1ガス注入口
37 パワー供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生ユニットと、
該プラズマ発生ユニットで生成されたプラズマのイオンを試料に注入するためのイオン注入ユニットと、
該イオン注入ユニットに設けられ、帯電現象を防止するために接地された伝導体と、を含むことを特徴とするプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項2】
前記プラズマ発生ユニットは、プラズマが生成される空間を形成する第1チェンバーと、該第1チェンバーの一側に設けられてプラズマを発生するコイルアンテナと、該コイルアンテナにエネルギーを供給するパワー供給部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項3】
前記イオン注入ユニットは、前記プラズマ発生ユニットに生成されたプラズマのイオンを試料に注入するためのイオン注入空間を形成する第2チェンバーと、該第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項4】
前記パワー供給部は、RFパワーを供給することを特徴とする請求項2に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項5】
前記電源部は、高電圧パルスを試料に印加することを特徴とする請求項3に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項6】
前記第1チェンバーは、前記第2チェンバーの上部周縁に所定高さを有して環状に形成されることを特徴とする請求項3に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項7】
前記第2チェンバーは、円筒状に形成されることを特徴とする請求項3に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項8】
前記第1チェンバーは、絶縁体によって形成されることを特徴とする請求項3に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項9】
前記第2チェンバーには、プラズマが前記第1チェンバーから第2チェンバーに拡散されるように、前記第1チェンバーの下側に対応する流入口が形成されることを特徴とする請求項3に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項10】
前記イオン注入ユニットは、試料を装着するための載置台を含み、前記伝導体は、前記載置台と対向して設けられることを特徴とする請求項1に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項11】
前記伝導体は、Siによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項12】
前記第1チェンバーには、ガスを注入するための第1ガス注入口が形成されることを特徴とする請求項2に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項13】
前記第2チェンバーには、ガスを注入するための第2ガス注入口が形成されることを特徴とする請求項3に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項14】
プラズマが形成される第1チェンバーと、
該第1チェンバーからプラズマを拡散させるための流入口が形成され、プラズマのイオンを試料に注入するための第2チェンバーと、
前記第1チェンバーの内部にプラズマを発生させるためのコイルアンテナと、
前記第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、を含むことを特徴とするプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項15】
前記コイルアンテナには、RFパワーが供給されることを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項16】
前記電源部は、高電圧パルスを試料に印加することを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項17】
前記第1チェンバーは、前記第2チェンバーの上部周縁に所定高さを有して環状に形成されることを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項18】
前記第2チェンバーは、円筒状に形成されることを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項19】
前記流入口は、前記第1チェンバーの下側が前記第2チェンバーに開放されるように、環状に形成されることを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項20】
前記第2チェンバーは、帯電現象を防止するために接地された伝導体を含むことを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項21】
前記第2チェンバーは、試料を装着する載置台を含み、前記伝導体は、前記載置台に装着された試料と対向して設けられることを特徴とする請求項20に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項22】
前記伝導体は、Siによって形成されることを特徴とする請求項20に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項23】
前記第1チェンバーには、ガスを注入するための第1ガス注入口が形成されることを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項24】
前記第2チェンバーには、ガスを注入するための第2ガス注入口が形成されることを特徴とする請求項14に記載のプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項25】
プラズマが形成される第1チェンバーと、
該第1チェンバーの内部にプラズマを発生させるためのコイルアンテナと、
前記第1チェンバーからプラズマを拡散させるための流入口が形成され、載置台に装着される試料にプラズマのイオンを注入するための第2チェンバーと、
該第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、
前記試料との対向位置に接地されて設けられた伝導体と、を含むことを特徴とするプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項26】
プラズマが形成される環状の第1チェンバーと、該第1チェンバーの内部にプラズマを発生させるためのコイルアンテナと、前記第1チェンバーから拡散されたプラズマのイオンを試料に注入するための第2チェンバーと、該第2チェンバーの試料に高電圧電源を供給する電源部と、を含み、前記第1チェンバーは、前記第2チェンバーの上部周縁に所定幅を有して環状に形成され、前記第2チェンバーと互いに連通されることを特徴とするプラズマを用いたイオン注入装置。
【請求項27】
プラズマが形成される上部チェンバーと、
該上部チェンバーで形成されたプラズマのイオンを試料に注入するための下部チェンバーと、を含み、
前記上部チェンバーは、前記下部チェンバーの上面に設けられ、プラズマが前記下部チェンバーに拡散されるように前記下部チェンバーと連通されることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項28】
前記上部チェンバーは、プラズマを発生させるための電界が前記下部チェンバーに伝播されないように、前記下部チェンバー内のアーク放電を抑制するように構成されることを特徴とする請求項27に記載のイオン注入装置。
【請求項29】
前記上部チェンバーを取り囲んで設けられ、前記上部チェンバーにプラズマを発生させるためのアンテナコイルと、
前記試料の汚染を防止するために、前記下部チェンバーの内部及び前記試料の上部に設けられる伝導体プレートと、をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載のイオン注入装置。
【請求項30】
前記上部チェンバーの上面に設けられ、前記上部チェンバーにプラズマを発生させるためのアンテナコイルと、
前記試料の汚染を防止するために、前記下部チェンバーの内部及び前記試料の上部に設けられる伝導体プレートと、をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載のイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−28360(P2008−28360A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12702(P2007−12702)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】