説明

プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置

【課題】ビアホールやトレンチなどのエッチング形状をウエハ面内で均一化することが可能なエッチング方法を提供する。
【解決手段】エッチング処理対象の基板へ供給されるエッチングガスの供給条件を調節する供給条件調整部と、載置台上に載置される前記基板の温度を前記半径方向に沿って調整する温度調整部と、前記供給条件調整部及び前記載置台の間の空間にプラズマを発生させるプラズマ発生部とを有するエッチング装置において前記基板をエッチングするエッチング方法であって、前記基板の温度が前記基板面内で均一になるように前記温度調整部により制御する工程と、前記プラズマ発生部により発生されるプラズマ中の中性活性粒子の前記基板上方における濃度分布を前記供給条件調整部により調整することにより、前記基板面内でのエッチングレートを均一化する工程とを含むプラズマエッチング方法により上記の課題が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング対象にプラズマを照射することにより、エッチング対象をエッチングするプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、エッチング対象膜(又はエッチング対象基板)に対してプラズマを照射してエッチングするプラズマエッチングが不可欠である。プラズマエッチングでは、エッチングガスが高周波電界により活性化されプラズマが生成される。プラズマには、荷電粒子(以下「イオン」という。)及び中性粒子(以下「ラジカル」という。)等の活性種が含まれている。イオンやラジカルなどの活性種とウエハ表面が反応して反応生成物が生じ、生じた反応生成物が揮発することによってエッチングが進行する。
【0003】
近年の半導体ウエハの大口径化に伴い、ウエハ面内におけるエッチングレートの均一化が難しくなっている。面内均一性の改善のため、ウエハ面内の中心部領域及び周辺部領域における活性種の密度を、上部電極からのエッチングガス供給量を調整することにより均一化することが試みられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4701776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマエッチングによりビアホールやトレンチを形成する場合に、各々深さや幅がウエハ面内で均一になるようにエッチング条件(処理ガス供給量、エッチング時にチャンバ内圧力、ウエハ温度など)が調整される。例えば、デバイス製造開始前にテストウエハを用いて予備実験を行った結果、ビアホールの幅(内径)が、ウエハの周縁部において小さく、ウエハの中央部において大きくなった場合、これを矯正するためにエッチング条件が調整される。しかし、例えば処理ガスの供給量を調整することによりビアホールの幅をウエハ面内で均一にすることができたとしても、そのような調整の結果、例えばビアホールの深さのウエハ面内のバラツキが増大してしまうという問題がある。すなわち、ビアホールやトレンチの各形状パラメータ(幅、直径、深さなど)を独立に制御することは難しく、このため、ビアホールやトレンチのエッチング形状をウエハ面内で均一にすることは容易ではない。
【0006】
本発明は、上記の事情に照らし、ビアホールやトレンチなどのエッチング形状をウエハ面内で均一化することが可能なエッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、エッチング処理対象である基板へ供給されるエッチングガスの供給量を調節する供給量調整部と、載置台上に載置される前記基板の温度を前記半径方向に沿って調整する温度調整部と、前記供給量調整部及び前記載置台の間の空間にプラズマを発生させるプラズマ発生部とを有するエッチング装置において前記基板をエッチングするエッチング方法であって、前記温度調整部により前記基板の温度を第1の温度に前記基板面内で均一に制御する工程と、前記プラズマ発生部により発生されるプラズマ中の中性活性粒子の前記基板上方における濃度分布を前記供給量調整部により調整することにより、前記基板面内でのエッチングレートを均一化する工程と、を含むプラズマエッチング方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、ビアホールやトレンチなどのエッチング形状をウエハ面内で均一化することが可能なエッチング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法の実施に好適なプラズマエッチング装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のシャワーヘッドの構造の一例を説明するための概略図である。
【図3】図3は、図1のプラズマエッチング装置のガス供給装置を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法おけるウエハ径方向位置におけるペクレ数及びエッチングレートを示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法おけるウエハ径方向位置におけるペクレ数及びエッチングレートを示す他の図である。
【図6】図6は、比較例としてのエッチングレートの均一化を説明するための説明図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態におけるエッチングレートの均一化を説明するための他の説明図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
【0011】
(プラズマエッチング装置の概略構成)
始めに、図1を参照し、本実施形態に係るプラズマエッチング方法の実施に好適なプラズマエッチング装置について説明する。
【0012】
図1を参照すると、プラズマエッチング装置100は、例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムから成る円筒形状に成形されたチャンバ(処理容器)102を有している。チャンバ102は接地されている。
【0013】
チャンバ102内の底部には、セラミック等の絶縁板103を介して略円柱状のサセプタ支持台104が設けられている。また、サセプタ支持台104の上には、下部電極を構成するサセプタ105が設けられている。サセプタ105は、ハイパスフィルタ(HPF)105aを介して接地されている。
【0014】
サセプタ105は、その上側中央部が凸状の円板状に成形されている。サセプタ105の上には、被処理体の一例であるウエハWの直径と略同一の直径を有する静電チャック111が設けられている。静電チャック111は、円板状のセラミックス部材で構成される絶縁材と、これらの間に介在される静電電極112とを有している。また、静電チャック111の静電電極112には直流電源113が接続されている。例えば、1.5kVの直流電圧が直流電源113から静電電極112に印加されると、クーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWが静電チャック111に吸着保持される。
【0015】
また、サセプタ105には、第1の整合器115を介して第1の高周波電源114が接続され、第2の整合器117を介して第2の高周波電源116が接続されている。第1の高周波電源114は、比較的低い周波数、例えば、13.6MHzの周波数を有するバイアス電力をサセプタ105に印加する。第2の高周波電源116は、比較的高い周波数、例えば、40MHzの周波数を有するプラズマ生成電力をサセプタ105に印加する。このプラズマ生成電力により、チャンバ102の内部にプラズマが生成される。
【0016】
絶縁板103、サセプタ支持台104、サセプタ105、及び静電チャック111には、ウエハWの裏面に伝熱媒体(例えばHeガスなどのバックサイドガス)を供給するためのガス通路118が形成されている。この伝熱媒体を介して、サセプタ105とウエハWとの間の熱伝達がなされ、ウエハWが所定の温度に維持される。
【0017】
サセプタ105の上端周縁部には、静電チャック111上に支持されたウエハWを囲むように、環状のフォーカスリング119が配置されている。フォーカスリング119は、セラミックス又は石英等の誘電材料、若しくは、導電体、例えば、ウエハWを構成する材料と同じ単結晶シリコンなどの導電性材料によって構成されている。
【0018】
プラズマの分布域をフォーカスリング119上まで拡大することで、ウエハWの外周側におけるプラズマの密度を、ウエハWの中心側におけるプラズマの密度と同程度に維持することができる。これにより、ウエハWの面内におけるプラズマエッチングの均一性を向上することができる。
【0019】
サセプタ105の上方には、サセプタ105と平行に対向して設けられ、サセプタ105に支持されるウエハWに向けてエッチングガスを供給するシャワーヘッド140(後述)を兼ねる上部電極120が設けられている。上部電極120には直流電源123が接続されている。また、上部電極120は、ローパスフィルタ(LPF)124を介して接地されている。
【0020】
また、上部電極120は、上部電極駆動部200によって、例えば鉛直方向に駆動可能に構成されている。上部電極120を鉛直方向に駆動可能に構成することにより、上部電極120とサセプタ105との間の空間の距離(以下、「ギャップ」という。)Gを調整することができる。ギャップGは、エッチングガスの拡散及び流れに大きく影響を与えるパラメータである。そのため、ギャップGを調整可能な構造とすることにより、チャンバ102の内部の上部電極120とサセプタ105との間のプラズマ分布を制御することができる。例えば、サセプタ105に印加されるプラズマ電力によりプラズマ中のイオンがサセプタ105方向へ移動してサセプタ105上のウエハWにほぼ垂直に入射できるように、ギャップGを広く設定することが好ましい。この場合、イオンは、ウエハとほぼ垂直な方向のエッチングに主に寄与する。
【0021】
なお、上部電極駆動部200により駆動される上部電極120の鉛直方向に沿った移動量は、特に制限はない。一例として、上部電極120の鉛直方向に沿った移動量を70mmとし、ギャップGを20mm以上90mm以下に調整可能な構造とすることができる。
【0022】
なお、本実施形態におけるプラズマエッチング装置100は、被エッチング面を上に向けて(フェースアップで)サセプタ105に載置されるウエハWに対して、サセプタ105の上方に配置されたシャワーヘッド140からエッチングガスを供給するが、他の実施形態では、プラズマエッチング装置100は、ウエハが鉛直方向に沿って支持されるようにサセプタを配置し、このサセプタに支持されるウエハの横方向からエッチングガスを供給できるようにシャワーヘッドを配置しても良い。更に別の実施形態においては、ウエハがフェースダウンで支持されるようにサセプタを配置し、サセプタの下方に配置されるシャワーヘッドから、フェースダウンで支持されるウエハに対してエッチングガスを供給するようにしてもよい。
【0023】
上部電極120は、チャンバ102の上部内壁にベローズ122を介して支持されている。ベローズ122はチャンバ102の上部内壁に環状の上部フランジ122aを介してボルトなどの固定手段により取付けられるとともに、上部電極120の上面に環状の上部フランジ122bを介してボルトなどの固定手段により取付けられる。
【0024】
ギャップGを調節するための、上部電極駆動部200の構成について、詳細に説明する。上部電極駆動部200は、上部電極120を支持する略円筒状の支持部材204を有する。支持部材204は上部電極120の上部略中央にボルトなどで取付けられている。
【0025】
支持部材204は、チャンバ102の上壁の略中央に形成された孔102aを出入自在に配設される。具体的には、支持部材204の外周面はスライド機構210を介してチャンバ102の孔102aの内部に支持されている。
【0026】
スライド機構210は、例えばチャンバ102の上部に断面L字状の固定部材214を介して固定部材214の鉛直部に固定された案内部材216と、この案内部材216に摺動自在に支持され、支持部材204の外周面に一方向(本実施形態では鉛直方向)に形成されたレール部212と、を有する。
【0027】
スライド機構210の案内部材216を固定する固定部材214は、その水平部が環状の水平調整板218を介してチャンバ102の上部に固定される。この水平調整板218により、上部電極120の水平位置が調整される。
【0028】
水平調整板218は、例えば、水平調整板218の周方向に等間隔で配置した複数のボルト等によりチャンバ102に固定される。また、水平調整板218の水平方向に対する傾き量を、これらのボルトの突出量により、調整することも可能である。水平調整板218が水平方向に対する傾きを調整し、上記スライド機構210の案内部材216が鉛直方向に対する傾きが調整することで、上部電極120の水平方向の傾きを調整することができる。即ち、上部電極120を常に水平位置に保つことができる。
【0029】
チャンバ102の上側には、上部電極120を駆動するための空気圧シリンダ220が、筒体201を介して取付けられている。即ち、筒体201の下端は、チャンバ102の孔102aを覆うようにボルト等で気密に取付けられており、筒体201の上端は、空気圧シリンダ220の下端に気密に取付けられている。
【0030】
空気圧シリンダ220は、一方向に駆動可能なロッド202を有している。ロッド202の下端は、支持部材204の上部略中央にボルト等で連設されている。ロッド202が駆動されることにより、上部電極120は、支持部材204によりスライド機構210に沿って移動することができる。ロッド202は、例えば円筒状に構成され、ロッド202の内部空間が支持部材204の略中央に形成された中央孔と連通して大気開放される。これにより、上部電極120とローパスフィルタ(LPF)124を介して接地する配線、及び上部電極120に直流電源123から直流電圧を印加するための給電線は、ロッド202の内部空間から支持部材204の中央孔を介して上部電極120に接続するように配線することができる。
【0031】
また、空気圧シリンダ220の側部には、例えばリニアエンコーダ205等の、上部電極120の位置を検出する位置検出手段が設けられている。一方、ロッド202の上端には、ロッド202から側方に延出する延出部207aを有する上端部材207が設けられている。上端部材207の延出部207aとリニアエンコーダ205の検出部205aとが当接している。上端部材207は上部電極120の動きに連動するため、リニアエンコーダ205により上部電極120の位置を検出することができる。
【0032】
空気圧シリンダ220は、筒状のシリンダ本体222、上部支持板224及び下部支持板226を含む。筒状のシリンダ本体222は、上部支持板224と下部支持板226とにより挟まれる構成となっている。ロッド202の外周面には、空気圧シリンダ220内を上部空間232と下部空間234に区画する環状の区画部材208が設けられている。
【0033】
空気圧シリンダ220の上部空間232には、上部支持板224の上部ポート236から圧縮空気が導入されるようになっている。また、空気圧シリンダ220の下部空間234には、下部支持板226の下部ポート238から圧縮空気が導入されるようになっている。上部ポート236及び下部ポート238から上部空間232及び下部空間234へと導入する空気量を制御することにより、ロッド202を一方向(例えば鉛直方向)へと駆動制御することができる。この空気圧シリンダ220へ導入する空気量は、空気圧シリンダ220の近傍に設けられた空気圧回路300により制御される。
【0034】
また、上部電極駆動部200は、制御部290を有しており、制御部290は、装置制御部190と接続されている。装置制御部190からの制御信号は制御部290に伝えられ、制御部290により、上部電極駆動部200の各部が駆動制御される。
【0035】
サセプタ支持台104の内部には、ウエハWの面内における温度分布を調節可能とする、温度分布調整部106が配置されている。温度分布調整部106は、ヒータ106a、106b、ヒータ用電源106c、106d、温度計106e、106f、冷媒流路107a、107bを有する。
【0036】
サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとが設けられている。中心側ヒータ106aには、中心側ヒータ用電源106cが接続され、外周側ヒータ106bには、外周側ヒータ用電源106dが接続されている。中心側ヒータ用電源106c、外周側ヒータ用電源106dは、各々、中心側ヒータ106a、外周側ヒータ106bに投入する電力を独立に調節することができる。これにより、サセプタ支持台104及びサセプタ105に、ウエハWの径方向に沿った温度分布を発生させることができる。即ち、ウエハWの径方向に沿った温度分布を調節することができる。
【0037】
また、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側温度計106e及び外周側温度計106fが設けられている。中心側温度計106e及び外周側温度計106fは、各々、サセプタ支持台104の中心側及び外周側の温度を計測し、これによりウエハWの中心側及び外周側の温度を導出できる。中心側温度計106e及び外周側温度計106fで計測された温度は、後述する装置制御部190に送られる。装置制御部190は、計測された温度から導出されたウエハWの温度が目標温度となるように、中心側ヒータ用電源106c及び外周側ヒータ用電源106dの出力を調整する。
【0038】
更に、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側冷媒流路107a及び外周側冷媒流路107bを設けても良い。そして、各々に異なる温度の、例えば冷却水、フルオロカーボン系の冷媒を循環させても良い。冷媒を循環させる場合、冷媒は、中心側導入管108aを介して中心側冷媒流路107aに導入され、中心側排出管109aから排出される。一方、外周側冷媒流路107bには、外周側導入管108bを介して冷媒が導入され、外周側排出管109bから排出される。
【0039】
サセプタ105は、ヒータ106a、106bによる加熱と、冷媒からの冷却と、により、温度が調整される。したがって、ウエハWは、プラズマからの輻射やプラズマに含まれるイオンの照射などによる加熱分と、前述のサセプタ105との熱量の授受と、により、所定の温度になるように調整される。また、サセプタ支持台104は、中心側ヒータ106a(及び中心側冷媒流路107a)及び外周側ヒータ106b(及び外周側冷媒流路107b)を有する。そのため、ウエハWは、中心側と外周側とで独立して温度を調整することができる。
【0040】
また、図1には図示していないが、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は、中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間に、断熱層として断熱材又は空間を設けても良い。断熱層を設けることにより、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間が熱的に遮断される。即ち、ウエハWの中心側と外周側との間に、より大きな温度分布を生じさせることができる。
【0041】
チャンバ102の底部には排気管131が接続されており、排気管131には排気装置135が接続されている。排気装置135は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、チャンバ102内を所定の減圧雰囲気(例えば0.67Pa以下)に調整する。また、チャンバ102の側壁にはゲートバルブ132が設けられている。ゲートバルブ132が開くことによって、チャンバ102内へのウエハWの搬入、及び、チャンバ102内からのウエハWの搬出が可能となる。なお、ウエハWの搬送には例えば搬送アームが用いられる。
【0042】
(エッチングガスの供給条件を調節する調節部の概略構成)
次に、図2を参照しながらシャワーヘッド140について説明する。図示のとおり、シャワーヘッド140は、エッチングガス等のガスをウエハWに供給する多数のガス噴出孔h(ha〜hd)を有する円形状の電極板141(上部電極120)と、電極板141の上面側を着脱自在に支持する電極支持体142を備えている。電極支持体142は、電極板141の外径と等しい外径を有する円盤形状を有し、電極支持体142の内側に円形状のバッファ室143が形成されている。
【0043】
バッファ室143内では、電極板141上に、図2(a)に示すように、たとえばOリングから成る1つ以上の環状隔壁部材145が配置されている。具体的には、本実施形態においては、異なる直径を有する3つの環状隔壁部材145a、145b、146cが同心円状に配置されている。これにより、バッファ室143は、電極板141の径方向に沿って、センタ領域143a、中間領域143b、周縁領域143c、及び最外縁領域143dに分割される。
また、図2(b)に示すように、領域143a〜143dの夫々は、ガス供給装置150と接続され、これによりガス供給装置150から各領域143a〜143dに対してエッチングガスが供給される。各領域143a〜143dに供給されたエッチングガスは、対応するガス噴出孔hから、サセプタ105に支持されるウエハWに向かって噴出される。
【0044】
なお、ガス噴出孔hの数と配置については、ウエハWに対してエッチングガスが均一に噴出されるように決定して良い。これに限定されないが例えば、ガス噴出孔hは、シャワーヘッド140(電極板121)の中心を中心とし、同心円状に位置する複数の同心円の各円周上に配置して良い。具体的には、300mmの直径を有するウエハWを使用する場合、センタ領域143aにおいて、半径11mmの円の円周上に4つのガス噴出孔haが(例えば等間隔で)配置され、半径33mmの円の円周上に12個のガス噴出孔hbが(例えば等間隔で)配置されている。中間領域143bにおいては、半径55mmの円の円周上に24個のガス噴出孔hcが(例えば等間隔で)配置され、半径77mmの円の円周上に36個のガス噴出孔hdが(例えば等間隔で)配置されている。周縁領域143cにおいては、図示を省略するが、半径99mmの円の円周上に48個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置され、半径121mmの円の円周上に60個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置されている。最外縁領域143dにおいては、図示を省略するが、半径143mmの円の円周上に80個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置され、半径165mmの円の円周上に100個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置されている。
【0045】
次に、図3を参照しながら、バッファ室143の各領域143a〜143dに個別にエッチングガスを供給するガス供給装置150及びガス供給系について説明する。図示のとおり、ガス供給装置150は、第1のガスボックス161と、第2のガスボックス160とを備えている。第1のガスボックス161には、複数のガス供給源(図示せず)と接続される第1の集合バルブ303が収容されており、第2のガスボックス160には、第2の集合バルブ302と、第2の集合バルブ302の各バルブに対応して設けられる、例えばマスフローコントローラ等の流量制御器301と、第3の集合バルブ300とが収容されている。
【0046】
本実施形態において、ガス供給源には、例えば、フロロカーボン系のフッ素化合物(CF系)、例えばCF、C、C、CH、CHF等のガスが封入されている。他にも、例えばCF系の反応生成物の付着を制御するガスとして例えば酸素(O)ガスが封入されている。さらに、キャリアガスとして例えばArガス、Nガス、Heガスが封入されている。
【0047】
各ガス供給源からの配管は、第1のガスボックス161内の第1の集合バルブ303における対応するバルブに接続されている。また、本実施形態では、第1の集合バルブ303の下流側において、CHFガス配管とOガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170a、171a、172a、173aに分岐している。分岐管170a〜173aには、第1の集合バルブ303を制御することにより、CHFガス及びOガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0048】
また、同様にして、第1の集合バルブ303の下流側において、CFガス配管とNガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170b、171b、172b、173bに分岐している。分岐管170b〜173bには、第1の集合バルブ303を制御することにより、CFガス及びNガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0049】
同様に、第1の集合バルブ303の下流側において、Oガス配管とArガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170c、171c、172c、173cに分岐している。分岐管170c〜173cには、第1の集合バルブ303を制御することにより、Oガス及びArガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0050】
さらに第1の集合バルブ303の下流側において、Cガス配管とCガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170d、171d、172d、173dに分岐している。分岐管170d〜173dには、第1の集合バルブ303を制御することにより、Cガス及びCガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0051】
分岐管170a〜173a、170b〜173b、170c〜170c、及び170d〜170dは、第2のバルブボックス160内の第2の集合バルブ302における対応するバルブに接続され、さらに、対応する流量制御器301を介して、第1の集合バルブ300の対応するバルブに接続されている。
第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管170a、170b、170c、及び170dに対応した配管が配管170に合流し、配管170は、シャワーヘッド104のセンタ領域140aに連通している(図2(b)参照)。また、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管171a、171b、171c、及び171dに対応した配管が配管171に合流し、配管171は、シャワーヘッド104の中間領域143bに連通している(図2(b)参照)。同様に、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管172a、172b、172c、及び172dに対応した配管が配管172に合流し、配管172は、シャワーヘッド104の周縁領域143cに連通している(図2(b)参照)。さらに、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管173a、173b、173c、及び173dに対応した配管が配管173に合流し、配管173は、シャワーヘッド104の最外縁領域143dに連通している(図2(b)参照)。
【0052】
以上の構成により、第1の集合バルブ300、第2の集合バルブ302、及び第3の集合バルブ303を適宜開閉することにより、シャワーヘッド140の各領域143a〜143dに対して、各エッチングガス(混合ガスを含む)を選択的に供給することができる。即ち、図3の例においては、各ガス供給源に接続される配管は、配管170〜173のように4つに分岐されている。また、配管は第1の集合バルブ303が接続されており、所望するプロセスに応じて、ガス種を切り替えることが可能な構造となっている。このような構造にすることにより、新たなガス供給源を追加する場合や、プロセスにより不要なエッチングガスのガス供給を停止する場合も、簡易な操作で実行することができる。
【0053】
前述の通り、プラズマエッチング装置100は装置制御部190(図1)を有する。装置制御部190は、例えばCPUよりなる図示しない演算処理装置と、例えばハードディスクよりなる図示しない記録媒体を備えている。装置制御部190は、前述した、第1の高周波電源114、第2の高周波電源116、温度分布調整部106、上部電極駆動部200、ガス供給条件調整部130の各部の動作を制御する。そして、装置制御部190は、上記各部を動作させる際は、例えば装置制御部190のCPUが、例えば装置制御部190のハードディスクに記録されている、それぞれのエッチング処理に対応するプログラムに応じて、各部を制御する。
【0054】
(プラズマエッチング方法)
次に、プラズマエッチング装置100におけるエッチングガス供給制御について説明する。
シャワーヘッド140のガス噴出孔hから、シャワーヘッド140とサセプタ105との間の空間にエッチングガスが供給されると、エッチングガスは、排気管131を通して排気装置135により吸引され、サセプタ105の外周に向かって広がっていく。このとき、エッチングガス成分(例えば、ラジカル)の濃度分布は、エッチングガスが「拡散」と「流れ」のいずれに支配されて輸送されるかにより異なる。「拡散」と「流れ」のいずれかにどの程度依存しているかを定性的に示す、無次元数としてペクレ数(Pe)が知られている。ペクレ数は下記の式(1)で表される。
【0055】
Pe=uL/DAB 式(1)
ここで、u:ガスの流速(m/s)
AB:ガス種の相互拡散係数
L:代表長さ(m)
ペクレ数Peが1より小さい場合、主に「拡散」によりガスが輸送され、ペクレ数Peが1以上の場合、主に「流れ」によりガスが輸送される。
【0056】
なお、相互拡散係数DABは、ガスAとガスBの混合ガスの場合には、下記の式(2)で表される。
【0057】
【数1】

例えば、温度150(℃)及び圧力80mTorr(1.05x10-4atm)において、ArとCを含むエッチングガスの相互拡散係数DABは1.23×10−1/sであり、温度150(℃)及び圧力30mTorr(3.95x10-5atm)において、ArとCHFを含むエッチングガスの相互拡散係数DABは、0.66m/sである。
【0058】
具体的な例により説明するために、図4(a)に、プラズマエッチング装置100における、ウエハの径方向に沿ったペクレ数Peの変化を示す。図4(a)は、ArとCのエッチングガス(相互拡散係数DAB=1.23×10−1/s)を用い、代表長さL(即ち、サセプタ105と上部電極120との間のギャップG)を30mmとし、ガスの流速uを計算により算出したペクレ数Peを示す。なお、図4(a)において、横軸は、直径300mmのウエハの中心を原点(0mm)としている。
図4(a)から、ウエハの中心から径が86mmに位置でペクレ数Peが1となり、これを境に「拡散」が支配的である領域(0mmから86mmまでの領域)と「流れ」が支配的である領域(86mmから150mmまでの領域)とに区分されることがわかる。ただし、「拡散」が支配的である領域と「流れ」が支配的である領域とがペクレ数Pe=1を境に明りょうに区別される分けではなく、ペクレ数Peが例えば0.7から1.3までの範囲においては、過渡的な領域となっていると考えられる。
【0059】
また、図4(b)に、ウエハの径方向に沿ったエッチングレートを示す。具体的には、プラズマエッチング装置100におけるセンタ領域143a、中間領域143b、周縁領域143c、及び最外縁領域143d(図2参照)の各々からエッチングガスを供給し、高周波電力によりプラズマを生成してウエハ(直径300mmのベアウエハ)をエッチングし、ウエハ面内のエッチングレートを測定した。なお、図4(b)において、縦軸には、最もエッチングレートが大きい位置を1として、規格化した規格化エッチングレートをとっている。
【0060】
図4(b)を参照すると、センタ領域143aからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(△印)は、センタ領域143aの下方位置においてエッチングレートが大きくなっている。また、中間領域143bからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(◇印)においても、中間領域143bの下方位置においてエッチングレートが大きくなっている。
【0061】
また、センタ領域143aからエッチングガスを供給した場合には、センタ領域143aだけでなく、中間領域143bにおいても比較的大きなエッチングレートでウエハがエッチングされている。さらに、中間領域143bからエッチングガスを供給した場合には、周縁領域143c及び最外縁領域143dだけではなく、センタ領域143aにおいても比較的大きなエッチングレートでウエハがエッチングされることが分かる。これは、センタ領域143a及び中間領域143bに対応する領域においては、エッチングガスの「拡散」が支配的であり、他の領域にまでエッチングガスが拡散したためと考えられる(図4(a)参照)。
【0062】
一方、周縁領域143cからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(□印)は、周縁領域143cよりも外側の最外縁領域143dの下方位置におけるエッチングレートには増加が認められるものの、周縁領域143cよりも内側のセンタ領域143a及び中間領域143bの下方位置におけるエッチングレートは殆ど増加しない。また、最外縁領域143dからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(○印)にも、センタ領域143a及び中間領域143bの下方位置においてはエッチングレートの増加は殆ど認められない。これは、周縁領域143c及び最外縁領域143dからのエッチングガスは、センタ領域143a及び中間領域143bへは拡散せずに、主に「流れ」によりエッチングガスが輸送されるためと考えられる(図4(a)参照)。
【0063】
また、ArとCの混合ガスに代わり、ArとCHFの混合ガス(相互拡散係数DABは0.66m/s)を用いた場合のペクレ数Peの変化と、エッチングレートの変化とを図5に示す。ArとCHFの混合ガスの相互拡散係数DABは、ArとCの混合ガスの相互拡散係数DABよりも小さく、図5(a)に示すように、ウエハの全面に対応した領域においてペクレ数Peは1よりも小さくなっている。すなわち、このArとCHFの混合ガスを用いた場合には、ウエハの全面に対応した領域において、ガスの輸送が「拡散」に支配されることとなる。このため、図5(b)に示すように、周縁領域143c及び最外縁領域143dにおいても、それぞれの領域の下方位置においてエッチングレートが最大となる傾向が認められる。
【0064】
以上の結果から、エッチングガスの供給条件を調整することによりエッチングレートの面内均一性の改善を図る場合、エッチングガスの拡散が支配的となる領域と、エッチングガスの流れが支配的となる領域とでは、エッチングガスを供給する位置を変える必要があることがわかる。すなわち、拡散が支配的な領域においては、その位置に対応する(略真上にある)ガス噴出孔hからのエッチングガス供給量を調整することによりエッチングレートを制御することができ、流れが支配的な領域においては、その位置に対応するガス噴出孔hよりもむしろウエハ中心側に位置するガス噴出孔hからのエッチングガス供給量を調整することによりエッチングレートを制御することができる。
【0065】
また、上述のとおり、使用するエッチングガス(混合ガス)により相互拡散係数DABが異なり、その結果、同一のチャンバ内において、エッチングガスの拡散が支配的となる領域と、エッチングガスの流れが支配的となる領域とが大きく異なることとなる。これは、同じチャンバを用いても、エッチング対象膜により、エッチングレートのウエハ面内均一性が異なり得ることを示唆しており、このことから、ペクレ数Peに基づく検討、及びその検討に基づいてガスの供給条件を変えることの重要性が理解される。特に、エッチングガスの拡散が支配的となる領域と、エッチングガスの流れが支配的となる領域とがチャンバ内に存在する場合に、どのようにガスの供給条件を変えるかはエッチングレートを均一化するために重要である。本実施形態によるプラズマエッチング装置100においては、3つの環状隔壁部材145によりシャワーヘッド140のバッファ室143が4つの領域143a〜143dに分割され、各々から異なる流量でエッチングガスを供給することができるため、上記の検討に基づいたガス供給条件の変更が可能となり、エッチングレートのウエハ面内での均一性を改善できるという利点がある。また、エッチング対象膜ごとに異なるエッチングガス(混合ガス)に対応して、ガス供給条件を変更することにより、ウエハ面内の均一性を改善できるため、異なる複数のエッチング対象膜を連続してエッチングすることが可能となる。
【0066】
また、ビアホールやトレンチの各形状パラメータを独立に制御することが困難という事情を踏まえ、各形状パラメータを独立に制御し得るエッチング条件を見出すために実験を繰り返した結果、本発明の発明者らは以下の知見を得た。
エッチングのために生成されるプラズマ中にはイオン(荷電粒子)とラジカル(中性粒子)とが含まれている。イオンは、例えばサセプタに印加されるバイアス電圧により加速され、上部電極120とサセプタ105との間の空間のギャップGが十分に大きい場合、サセプタに対して直交する方向に沿って、サセプタ上に載置されるエッチング対象膜に照射される。一方、ラジカルは、バイアス電圧によって加速されることはなく、濃度勾配により拡散しながらエッチング対象膜に吸着する。そして、エッチング対象膜の表面(ビアホールやトレンチがある場合は、これらの内表面も含む)から反応副生成物が離脱することにより、エッチングが進行する。これらを考慮すると、エッチング対象膜の深さ方向のエッチングレートERvは、以下の式(3)で表すことができる。
【0067】
【数2】

一方、エッチング対象膜の平面方向のエッチングレートERhは、以下の式(4)で表すことができる。
【0068】
【数3】

式(3)及び式(4)を比較すると、深さ方向のエッチングレートにはイオン衝撃による離脱が影響するのに対して、平面方向のエッチングレートには、そのような影響はなくラジカルの吸着と熱エネルギーによる離脱と依存する。言い換えると、イオンは深さ方向のエッチングに寄与し、ラジカルは深さ方向と平面方向の双方に寄与すると考えられる。したがって、プラズマエッチングによりビアホールやトレンチ(以下、ビア等)を形成する場合、ビア等の幅の制御に関しては、ビア等の側壁表面のラジカルによるエッチング量の制御が重要となる。ラジカルによるエッチング量は、ラジカルを発生させるための処理ガスの供給量や処理ガスの混合比により制御され得る。
【0069】
一方、プラズマエッチングによりビア等をエッチングする場合には、ビア等の側壁に反応副生成物やエッチングガスの分解により生じたポリマーなど(以下、副生成物等)が吸着し、ラジカルの吸着を妨げる場合がある。副生成物等の側壁への吸着は吸着係数に依存し、吸着係数は温度に依存するため、ビアホールやトレンチの幅を制御する上で、ウエハ温度の制御を欠かすことはできない。
【0070】
例えば、図6(a)に示すように、ラジカルの供給量Γradicalがウエハ表面上で中央部から周縁部にかけて上昇する場合には、図6(b)に示すようにウエハ周縁部に近づくに従ってウエハ温度が高くなるように調整し、吸着係数γを図6(a)のように変えれば、Γradicalの変化を相殺することができ、図6(c)に示すようにラジカルの吸着(γ・Γradical)をウエハ面内において均一化することが可能となる。しかし、吸着係数γを変化させるために図6(b)に示すようにウエハ温度を調整すると、図6(d)に示すように、熱反応速度Kdをウエハ面内において均一にすることができなくなる。そのため、エッチングレートERv及びERhをウエハ面内において均一にすることができない。
【0071】
上述のプラズマエッチング装置100によれば、3つの環状隔壁部材145によりシャワーヘッド140のバッファ室143が4つの領域143a〜143dに分割され、各々から異なる流量でエッチングガスを供給することができる。したがって、例えば図7(a)中の線Aのようにラジカルの供給量Γradicalが変化する場合であっても、ウエハの温度を変化させることなく(図7(b)参照)、線Bのようにラジカルの供給量Γradicalを均一化することが可能となる。その結果、図7(c)に示すようにラジカルの吸着(γ・Γradical)をウエハ面内において均一化することができる。しかも、ウエハ温度は均一のままであるため、熱反応速度Kdをウエハ面内において均一にすることができる(図7(d)参照)。すなわち、ラジカルの吸着をウエハ面内で均一化しても、エッチングレートに影響を与える他の要因を変化させることがない。したがって、エッチングレートERv及びERhをウエハ面内において均一にすることが可能となる。
【0072】
また、ウエハ温度に分布を設けることによりラジカルの吸着をウエハ面内で一定とする場合においては、エッチング対象膜によって異なるエッチングガスを用いる場合には、そのエッチングガスに合わせてウエハの温度分布を変える必要が生じる。すなわち、エッチング対象膜毎に異なる温度分布となるようにウエハ温度を調整しなければならない。そのような温度分布を実現するようにウエハ温度を変更するには時間がかかるという問題がある。
【0073】
しかし、本発明の実施形態においては、エッチング対象膜が変わってもウエハの温度を面内で均一に変更すればよいので、ウエハ温度の変更が容易であり、エッチングレートを容易に均一化できるという利点が提供される。また、ウエハ面内で温度分布を設ける場合には、その分布からずれると、均一性が悪化する一方で、所定の温度分布に維持することは一般に難しい。これに比べ、ウエハ面内で温度を均一化することはむしろ容易である。
【0074】
以上から、上述のプラズマエッチング装置100を用いて行う、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法においては、まず、ウエハWをサセプタ105に載置し、温度分布調整部106(図1)によりサセプタ105に載置されるウエハWの面内温度を均一に維持して(図8のステップS81)、所定のエッチング条件にてエッチング対象をエッチングする(ステップS82)。そのエッチング対象について求めたエッチング形状のウエハWの面内分布と、上述のペクレ数に基づく検討とからシャワーヘッド140の各領域143a〜143dにおけるガスの供給条件を得ることができる(ステップS83)。そして、半導体デバイスの製造用のウエハに対し、得られた条件でプラズマエッチングを行うことにより、すなわち、温度分布調整部106によりサセプタ105上のウエハの面内温度を均一に維持し、得られた供給条件でシャワーヘッド140(各領域143a〜143d)からエッチングガス(混合ガス)を供給し、プラズマを生成してエッチングすることにより(ステップS84)、ウエハWの面内でのエッチングレートを均一化することができる。
【0075】
以上、幾つかの実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲の記載に照らし、種々に変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
W ウエハ
105 サセプタ(支持部)
106 温度分布調整部
120 上部電極
122 ベローズ
130 調節部
140 シャワーヘッド
143 バッファ室
145 環状隔壁部材
150 ガス供給装置
190 装置制御部
200 上部電極駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング処理対象である基板へ供給されるエッチングガスの供給量を調節する供給量調整部と、載置台上に載置される前記基板の温度を前記半径方向に沿って調整する温度調整部と、前記供給量調整部及び前記載置台の間の空間にプラズマを発生させるプラズマ発生部とを有するエッチング装置において前記基板をエッチングするエッチング方法であって、
前記温度調整部により前記基板の温度を第1の温度に前記基板面内で均一に制御する工程と、
前記プラズマ発生部により発生されるプラズマ中の中性活性粒子の前記基板上方における濃度分布を前記供給量調整部により調整することにより、前記基板面内でのエッチングレートを均一化する工程と
を含むプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記供給量調整部が、前記載置台の上方に設けられ、前記載置台の径方向中心側の部分にエッチングガスを供給する第1の供給部と、前記中心側の部分よりも前記載置台の径方向外周側の部分にエッチングガスを供給する第2の供給部と、
を有し、
前記調整する工程において、前記第2の供給部によりエッチングガスが供給される領域の活性種濃度分布において、前記供給されたエッチングガスの拡散の影響が支配的であるなら、前記供給量調整部により、前記第2の供給部により供給されるエッチングガスの供給量が調整され、
前記第2の供給部よりエッチングガスが供給される前記領域の活性種濃度分布において、前記供給されたエッチングガスの流れの影響が支配的であるなら、前記供給量調整部は、前記第1の供給部により供給されるエッチングガスの供給量が調整される、
請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記第2の供給部により処理ガスが供給される前記領域における、処理ガスの流速をuとし、処理ガスの拡散係数をDとし、前記保持部と前記電極板との間隔をLとしたときに、
前記処理ガスの拡散の影響が支配的である条件は、uL/Dにより演算されるペクレ数が1より小さいときであり、
前記処理ガスの流れの影響が支配的である条件は、uL/Dにより演算されるペクレ数が1以上のときである、
請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記エッチングガスを変更する工程と、
前記エッチングガスの変更に合わせて前記温度調整部により前記基板の温度を第1の温度と異なる第2の温度に前記基板面内で均一に制御する工程と
を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−74031(P2013−74031A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210945(P2011−210945)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】