説明

プラズマエッチング装置、プラズマエッチング方法およびコンピュータ読取可能な記憶媒体

【課題】SiC膜を下地膜としてSiOC系のLow−k膜をエッチングする場合等、下地膜に対して選択比を十分に取り難い場合であっても、高選択比および高エッチングレートで被エッチング膜をエッチングすることができるプラズマエッチング装置を提供すること。
【解決手段】真空排気可能な処理容器10内に、上部電極34と下部電極16を対向するように配置し、上部電極34プラズマ形成用の高周波電力を供給する第1の高周波電源48を接続し、下部電極16にイオン引き込みバイアス用の高周波電力を印加する第2の高周波電源90を接続し、第2の高周波電源90に制御器95を設け、制御器95は、パワー変調するパワー変調モードで動作させる際、プラズマ着火時に、最初に前記第2の高周波電源90を同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後パワー変調モードに切り換えるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等の被処理基板にプラズマエッチングを施すプラズマエッチング装置、プラズマエッチング方法およびコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハに形成された所定の層に所定のパターンを形成するために、レジストをマスクとしてプラズマによりエッチングするプラズマエッチング処理が多用されている。
【0003】
このようなプラズマエッチングを行うためのプラズマエッチング装置としては、種々のものが用いられているが、その中でも容量結合型平行平板プラズマエッチング装置が主流である。
【0004】
容量結合型平行平板プラズマエッチング装置は、チャンバ内に一対の平行平板電極(上部および下部電極)を配置し、処理ガスをチャンバ内に導入するとともに、電極の少なくとも一方に高周波電力を印加して電極間に高周波電界を形成し、この高周波電界により処理ガスのプラズマを形成して半導体ウエハの所定の層に対してプラズマエッチングを施す。
【0005】
具体的には、上部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加してプラズマを形成し、下部電極にイオン引き込み用の高周波電力を印加することにより、適切なプラズマ状態を形成するプラズマエッチング装置が知られており、これにより、高選択比で再現性の高いエッチング処理が可能である(例えば特許文献1)。
【0006】
ところで、 近時、半導体デバイスの高速化、配線パターンの微細化、高集積化の要求に対応して、配線寄生容量の低減を図る目的で低誘電率の層間絶縁膜の利用が進められている。このような低誘電率膜(Low−k膜)の中でも、従来のSiO膜のSi−O結合にメチル基(−CH)を導入して、Si−CH結合を混合させたSiOC系膜が注目を集めている。
【0007】
SiOC系膜などの有機系のLow−k膜にプラズマエッチングを行なう場合、重要となるのが下地膜やマスク層との選択比を十分に確保することである。通常は、下地膜との選択性が比較的高い処理ガスとしてフルオロカーボンガス系の混合ガスが用いられるが、それだけで十分な選択比を得ることは難しい。そこで、SiOC系膜のエッチングにおいて、Cu配線のバリア層である窒化珪素膜を下地エッチストップ層としてSiOC系層間絶縁膜をプラズマエッチングする際に、下地膜との選択比を向上させるため、処理ガスとしてC/Ar/NをArの流量比が80%以上となるように用い、窒化珪素膜との選択比を向上させるエッチング方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0008】
また、上記特許文献2と同様に、窒化珪素膜を下地エッチストップ層としてSiOC系層間絶縁膜をプラズマエッチングする際に、処理ガスとしてCHF/Ar/Nを用いる第1ステップのエッチングと、処理ガスとしてC/Ar/Nを用いる第2ステップのエッチングとを行ない、マスクと窒化珪素膜との双方に対する選択比を向上させるエッチング方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【0009】
しかしながら、上述したようにCu配線のバリア層として用いられている窒化珪素はバリア性は良いものの比誘電率が7.0と高いため、SiOC系膜などのLow−k膜の低誘電率特性を十分に活用するためには、さらに比誘電率が低いバリア層が求められており、その一つとして比誘電率が3.5の炭化珪素(SiC)がある。
【0010】
このような低誘電率バリア層であるであるSiCを下地エッチストップ層として使用して上層の被エッチング層であるLow−k膜をエッチングする際においても、十分なエッチング選択比を確保することが必要である。しかし、このようなSiC系の膜には通常10%程度の酸素が含まれており、SiOC系のLow−k膜と組成が近接しているため、前記特許文献2および特許文献3に記載されたフルオロカーボン系の処理ガスを用いるプラズマエッチングを採用しても、Low−k膜とSiC層とのエッチング選択比を確保することができるマージンが狭く、SiOC系Low−k膜を高選択比および高エッチングレートでエッチングすることが困難である。
【0011】
一方、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置を用いてビアホールやコンタクトホール等のエッチングを行う場合には、ホールサイズの大小によってエッチングレートが異なる、いわゆるマイクロローディング効果が生じる問題があり、エッチング深さのコントロールが困難であるという問題がある。特に、ガードリング(GR)のような大きいエリアではエッチングが速いことが多く、CF系ラジカルが入りにくいスモールビアではエッチレートが遅いことが多い。
【0012】
エッチストップ層がない場合には、このようなマイクロローディングの問題によりエッチングの深さがばらつくため、次の工程にもばらつきを持ち込む、電気特性にばらつきが生じる等の問題がある。エッチストップ層がある場合でも、オーバーエッチの時間を長く延ばして対応せざるを得ないため、さらに下地ロスが大きくなり、ばらつきも出るため、電気特性に影響を与える。
【0013】
このような不都合を防止するために、従来は、エッチングの際のチャンバ内の圧力を低下させて低圧・低流量プロセスを行うこと等のスモールビアのエッチングを促進する手法で対応してきた。しかし、低圧・低流量のプロセスの方向は、マスク・下地選択比を取り難い方向であるため、プロセスに制限がでるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−173993号公報
【特許文献2】特開2002−270586号公報
【特許文献3】特開2004−87875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高選択比および高エッチングレートで被エッチング膜をエッチングすることができるプラズマエッチング装置、プラズマエッチング方法を提供することを目的とする。
また、マイクロローディング効果を抑制することができるプラズマエッチング装置、プラズマエッチング方法を提供することを目的とする。
また、このようなプラズマエッチング方法を実行することができることができるコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に配置された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、前記第2電極にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記第2の高周波電力供給ユニットを制御する制御器とを具備し、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを第1のパワーと第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させる際、プラズマ着火時に、最初に前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換えるように制御することを特徴とするプラズマエッチング装置を提供する。
【0017】
上記プラズマエッチング装置において、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させた後、所定期間後に前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始し、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えるように制御するようにすることができる。
【0018】
このような構成において、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットによる同一パワーで連続的な高周波電力の供給開始時点では所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、前記第1の高周波電力供給ユニットによる高周波電力の供給開始時点でも所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、所定時間後に前記第1および第2の高周波電力供給ユニットからのパワーを上昇させ、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えるように制御することができる。
【0019】
また、前記プラズマエッチング装置は、前記第1電極に直流電圧を印加する可変直流電源をさらに具備し、前記制御器は、前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始する時点で前記可変直流電源による電圧印加を開始するように制御することができる。この場合に、前記制御器は、前記可変直流電源による電圧印加を開始する際に、電圧を徐々に上昇させるようにすることができる。
【0020】
さらに、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換える際に、パワーを徐々に上昇させるように制御することができる。
【0021】
さらにまた、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットのパワー変調モードに同期させて、さらに前記第1の高周波電力供給ユニットを、第3のパワーと第4のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作するように制御することができる。
【0022】
また、本発明は、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に配置された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、前記第2電極にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、を具備するプラズマエッチング装置を用い、前記第1電極および前記第2電極の間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、前記第2の高周波電力供給ユニットを第1のパワーと第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させる際、プラズマ着火時に、最初に前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換えることを特徴とするプラズマエッチング方法を提供する。
【0023】
上記プラズマエッチング装置において、前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させた後、所定期間後に前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始し、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えるようにすることができる。
【0024】
このような構成において、前記第2の高周波電力供給ユニットによる同一パワーで連続的な高周波電力の供給開始時点では所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、前記第1の高周波電力供給ユニットによる高周波電力の供給開始時点でも所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、所定時間後に前記第1および第2の高周波電力供給ユニットからのパワーを上昇させ、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えるようにすることができる。
【0025】
また、前記プラズマエッチング装置は、前記第1電極に直流電圧を印加する可変直流電源をさらに具備し、前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始する時点で前記可変直流電源による電圧印加を開始するようにすることもできる。この場合に、前記可変直流電源による電圧印加を開始する際に、電圧を徐々に上昇させることができる。
【0026】
さらに、前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換える際に、パワーを徐々に上昇させることができる。
【0027】
さらにまた、前記第2の高周波電力供給ユニットのパワー変調モードに同期させて、さらに前記第1の高周波電力供給ユニットを、第3のパワーと第4のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させることができる。
【0028】
さらに、本発明は、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に配置された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、前記第2電極にイオン引き込み用の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備するプラズマエッチング装置を制御するためのコンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記プラズマエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマエッチング装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【0029】
プラズマエッチング装置としては、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に配置された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、前記第2電極にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記第2の高周波電力供給ユニットを制御する制御器とを具備し、前記第2の高周波電力供給ユニットは、第2の高周波電源と第2の整合器を有し、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを第1のパワーと第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させ、その際に、前記第2の整合器における整合動作を前記パワー変調に同期させて切り換えるように制御することを特徴とするものであってもよい。
【0030】
このようなプラズマエッチング装置において、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードで動作させているときに、第1のパワーの際には前記第2の整合器の動作を行わないように制御し、第2のパワーの際には前記第2の整合器が前記第2の高周波電源の内部インピーダンスと前記処理容器のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように制御することができる。また、前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードで動作させているときに、第1のパワーの際には、前記第2の高周波電源が出力するパワー値と、前記処理容器のプラズマを含めた負荷インピーダンスによって反射されるパワー値との差分である、前記第2電極に供給されるパワー値が常に一定になるように、前記第2の高周波電源を制御することができる。さらに、前記第1電極に直流電圧を印加する可変直流電源をさらに具備してもよい。
【0031】
プラズマエッチング方法は、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に配置された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、前記第2電極にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、を具備し、前記第2の高周波電力供給ユニットは、第2の高周波電源と第2の整合器を有するプラズマエッチング装置を用い、前記第1電極および前記第2電極の間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、前記第2の高周波電力供給ユニットを第1のパワーと第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させる際、前記第2の整合器における整合動作を前記パワー変調に同期させて切り換えるようにすることを特徴とするものであってもよい。
【0032】
このようなプラズマエッチング方法において、前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードで動作させているときに、第1のパワーの際には前記第2の整合器の動作を行わないようにし、第2のパワーの際には前記第2の整合器が前記第2の高周波電源の内部インピーダンスと前記処理容器のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うようにすることができる。また、前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードで動作させているときに、第1のパワーの際には、前記第2の高周波電源が出力するパワー値と、前記処理容器のプラズマを含めた負荷インピーダンスによって反射されるパワー値との差分である、前記第2電極に供給されるパワー値が常に一定になるようにすることができる。さらに、前記プラズマエッチング装置は、前記第1電極に直流電圧を印加する可変直流電源をさらに具備するものであってもよい。
【0033】
コンピュータ読取可能な記憶媒体として、このようなエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマエッチング装置を制御させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、イオン引き込み用の第2の高周波電力供給ユニットを、被処理基板の所定の膜にポリマーが堆積される第1のパワーと被処理基板の所定の膜のエッチングが進行する第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させることにより、所定の膜に適度なポリマー層が堆積された状態とすることができ、エッチングの進行を抑制することができるので、高選択比および高エッチングレートでエッチングを行うことができる。例えば、下地膜の上に被エッチング膜が形成された構造の被処理基板において、被エッチング膜をエッチングした後、オーバーエッチングする際、あるいは被処理基板として被エッチング膜上にマスク層が形成された構造のものを用い、そのマスク層をマスクとして被エッチング膜をエッチングする際に、このパワー変調モードを採用することにより、高選択比および高エッチングレートで被エッチング膜をエッチングすることができる。また、プラズマ着火時に、最初に前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後パワー変調モードに切り換えるように制御することにより、パワー変調モードにおける第1のパワーのような低いパワーを供給する場合であっても、確実にプラズマを維持することができる。
【0035】
また、上記パワー変調モードを用いることにより、エッチングレートが大きいガードリング(GR)のような大きいエリアのエッチレートを抑制することができ、プロセス条件を変更することなくマイクロローディング効果を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
【図2】図1のプラズマエッチング装置において第1の高周波電源に接続された整合器の構造を示す図。
【図3】第2の高周波電源のパワー変調モードの典型例およびその際の設定電圧を示す図。
【図4】第2の高周波電源のパワー変調モードの際における出力電圧波形を示す図。
【図5】図1のプラズマエッチング装置において第2の高周波電源に接続された整合器の構造を示す図。
【図6】通常モードでバイアス印加した場合の被エッチング膜であるSiOC系Low−k膜とエッチングストップ膜であるSiC膜のエッチング特性を示すグラフ。
【図7】エッチングストップ膜であるSiC膜の上に被エッチング膜であるSiOC系Low−k膜を形成した構造においてSiOC系Low−k膜をエッチングした後にオーバーエッチングする際のエッチング状態を連続モードでバイアスを印加した場合とパワー変調モードでバイアスを印加した場合とで比較して示す図。
【図8】横軸にバイアスパワーをとり縦軸にポリマー層厚さをとって、ポリマー層厚さとイオン侵入深さとの関係を連続モードでバイアスを印加した場合とパワー変調モードでバイアスを印加した場合とを比較して示すグラフ。
【図9】パワー変調モードでバイアス印加した場合の被エッチング膜であるSiOC系Low−k膜とエッチングストップ膜であるSiC膜のエッチング特性を示すグラフ。
【図10】ポリマー膜厚とイオン(Arイオン)の吸収エネルギーとの関係をシミュレーションした結果をイオンの照射エネルギー毎に示したグラフ。
【図11】本実施形態の効果を確認した実験の結果を示すグラフ。
【図12】被エッチング膜のマスクに対する選択比を高めるために下部電極の高周波バイアスにパワー変調モードを利用した例に適用するための半導体ウエハの構造を示す断面図。
【図13】マイクロローディング効果を緩和するために下部電極の高周波バイアスにパワー変調モードを利用した例に適用するための半導体ウエハの構造を示す断面図。
【図14】マイクロローディング効果を緩和する効果を確認するためのエッチングに用いたホール形状およびサイズを示す図。
【図15】マイクロローディング効果を緩和するために下部電極の高周波バイアスにパワー変調モードを利用した場合および連続モードを利用した場合における図14のホール形状のエッチングレートを規格化したものを示すグラフ。
【図16】高周波電力および直流電圧の好ましい印加タイミングおよび印加手法の例について示す図。
【図17】高周波電力および直流電圧の好ましい印加タイミングおよび印加手法の他の例について示す図。
【図18】高周波電力および直流電圧の好ましい印加タイミングおよび印加手法のさらに他の例について示す図。
【図19】第2の高周波電源とともに第1の高周波電源もパワー変調モードにした例を示す図。
【図20】本発明の第2の実施形態に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【0038】
このプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
【0039】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。
【0040】
サセプタ16の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0041】
静電チャック18(半導体ウエハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0042】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a,30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。
【0043】
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0044】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部および下部電極34,16間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極であるサセプタ16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、つまり対向面を形成する。
【0045】
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成しかつ多数の吐出孔37を有する電極板36と、この電極板36を着脱自在に支持し、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる水冷構造の電極支持体38とによって構成されている。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体が好ましく、また、後述するようにレジストを強化する観点からはシリコン含有物質が好ましい。このような観点から、電極板36はシリコンやSiCで構成されるのが好ましい。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
【0046】
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理ガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)68および開閉バルブ70が設けられている(MFCの代わりにFCNでもよい)。そして、処理ガス供給源66から、エッチングのための処理ガスとして、例えばCガスのようなフロロカーボンガス(C)がガス供給管64からガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0047】
上部電極34には、第1の整合器46および給電棒44を介して、第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、27〜100MHzの周波数、例えば60MHzの高周波電力を出力する。第1の整合器46は、第1の高周波電源48の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。第1の整合器46の出力端子は給電棒44の上端に接続されている。
【0048】
一方、上記上部電極34には、第1の高周波電源48の他、可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50はバイポーラ電源であってもよい。具体的には、この可変直流電源50は、上記第1の整合器46および給電棒44を介して上部電極34に接続されており、オン・オフスイッチ52により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源50の極性および電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ52のオン・オフはコントローラ51により制御されるようになっている。
【0049】
第1の整合器46は、図2に示すように、第1の高周波電源48の給電ライン49から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ54と、給電ライン49のその分岐点の下流側に設けられた第2の可変コンデンサ56を有しており、これらにより上記機能を発揮する。また、第1の整合器46には、直流電圧電流(以下、単に直流電圧という)が上部電極34に有効に供給可能なように、第1の高周波電源48からの高周波電力(例えば60MHz)および後述する第2の高周波電源からの高周波電力(例えば2MHz)をトラップするフィルタ58が設けられている。すなわち、可変直流電源50からの直流電流がフィルタ58を介して給電ライン49に接続される。このフィルタ58はコイル59とコンデンサ60とで構成されており、これらにより第1の高周波電源48からの高周波電力および後述する第2の高周波電源からの高周波電力がトラップされる。
【0050】
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられており、この円筒状接地導体10aの天壁部分は筒状の絶縁部材44aにより上部給電棒44から電気的に絶縁されている。
【0051】
下部電極であるサセプタ16には、第2の整合器88を介して第2の高周波電源90が電気的に接続されている。この第2の高周波電源90から下部電極サセプタ16に高周波電力が供給されることにより、半導体ウエハWにバイアスが印加され半導体ウエハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、例えば2MHzの高周波電力を出力する。この第2の高周波電源90には、第2の高周波電源90を制御するRF制御器95が接続されている。このRF制御器95は、第2の高周波電源90からの高周波電力が、半導体ウエハWの被エッチング膜にデポが堆積する第1のパワーと半導体ウエハWの被エッチング膜のエッチングが進行する第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するようにパワー制御を行うことが可能となっており、通常の連続モードとパワー制御モードとの間で切り換え可能となっている。パワー変調の典型例としては、図3に示すようなパルス状を挙げることができるが、これに限るものではない。なお、この例ではパルスのデューティー比が50%である。また、この際の出力電圧波形は、図4のようになる。一周期中の最大電圧値と最小電圧値との差がVPPとなる。なお、図4中のPsetは設定電圧を示す。
【0052】
なお、このRF制御器95は、第2の整合器88にも接続されており、第2の整合器88も制御する。また、RF制御器95は、第1の高周波電源48および第1の整合器46にも接続されており、これらも制御可能となっている。
【0053】
第2の整合器88は第2の高周波電源90の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。この第2の整合器88は、図5に示すように、第2の高周波電源90の給電ライン96から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ97と、給電ライン96のその分岐点の第2の高周波電源90側に設けられた第2の可変コンデンサ98と、分岐点の反対側に設けられたコイル99とを有している。本実施形態の場合、通常のプラズマエッチングと異なり、第2の高周波電源90は、高周波電力が所定周期でパワー変調されるパワー変調モードで動作するため、このパワー変調モードの際に、RF制御器95が、第2の整合器88における整合動作を前記パワー変調に同期させて切り換えるように制御する。この場合に、RF制御器95は、第2の高周波電力供給ユニット90をパワー変調モードで動作させているときに、第1のパワーの際には第2の整合器88の動作を行わないように制御し、第2のパワーの際には第2の整合器88が第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように制御する。具体的には、相対的にパワーが大きい第2のパワーのときのみ第1の可変コンデンサ97の容量C1と第2の可変コンデンサ98の容量C2とを独立に制御し、第1のパワーのときは容量C1、容量C2をそれぞれ固定とする。この場合に、通常の整合器のように順方向のパワーPfのみの制御ではハンチングが生じるため、第2の整合器88として反射パワーPrも加味したロードパワーPL(=Pf−Pr)制御付きのものを用いる。具体的には、第1のパワーの際には、第2の高周波電源90が出力するパワー値Pfと、チャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスによって反射されるパワー値Prとの差分である、下部電極であるサセプタ16に供給されるパワー値PLが常に一定になるように、第2の高周波電源90を制御する。第1の高周波電源46についても、第2の高周波電源からの高周波電力がパワー変調されている影響を受けるため、同様にロードパワー制御付きのものとして同様の制御を行うことが好ましい。
【0054】
上部電極34には、第1の高周波電源48からの高周波電力(60MHz)は通さずに第2の高周波電源90からの高周波電力(2MHz)をグランドへ通すためのローパスフィルタ(LPF)92が電気的に接続されている。このローパスフィルタ(LPF)92は、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成されるが、1本の導線だけでも第1の高周波電源48からの高周波電力(60MHz)に対しては十分大きなリアクタンスを与えることができるので、それで済ますこともできる。一方、下部電極であるサセプタ16には、第1の高周波電源48からの高周波電力(60MHz)をグランドに通すためのハイパスフィルタ(HPF)94が電気的に接続されている。
【0055】
チャンバ10の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
【0056】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWとほぼ同じ高さの部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより後述するような異常放電防止効果を発揮する。なお、この導電性部材91は、プラズマ生成領域に設けられていれば、その位置は図1の位置に限られず、例えばサセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極近傍に設けてもよい。
【0057】
プラズマ処理装置の各構成部、例えば電源系やガス供給系、駆動系、さらにはRF制御器95等は、制御部(全体制御装置)100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、工程管理者がプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース101が接続されている。
【0058】
さらに、制御部100には、プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部100の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部102が接続されている。レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0059】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース101からの指示等にて任意のレシピを記憶部102から呼び出して制御部100に実行させることで、制御部100の制御下で、プラズマ処理装置での所望の処理が行われる。なお、本発明の実施の形態で述べるプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)は、この制御部100を含むものとする。
【0060】
このように構成されるプラズマ処理装置においてエッチング処理を行う際には、まず、ゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介してエッチング対象である半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。そして、処理ガス供給源66からエッチングのための処理ガスを所定の流量でガス拡散室40へ供給し、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してチャンバ10内へ供給しつつ、排気装置84によりチャンバ10内を排気し、その中の圧力を例えば0.1〜150Paの範囲内の設定値とする。ここで、処理ガスとしては、従来用いられている種々のものを採用することができ、例えばCガスのようなフロロカーボンガス(C)に代表されるハロゲン元素を含有するガスを好適に用いることができる。さらに、ArガスやOガス等の他のガスが含まれていてもよい。
【0061】
このようにチャンバ10内にエッチングガスを導入した状態で、第1の高周波電源48からプラズマ生成用の高周波電力を上部電極34に印加するとともに、第2の高周波電源90よりイオン引き込み用の高周波電力を下部電極であるサセプタ16に印加する。そして、可変直流電源50から所定の直流電圧を上部電極34に印加する。さらに、静電チャック18のための直流電源22から直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWを静電チャック18に固定する。
【0062】
上部電極34の電極板36に形成されたガス吐出孔37から吐出された処理ガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの被処理面がエッチングされる。また、このように上部電極34にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給し、下部電極であるサセプタ16にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給するので、プラズマの制御マージンを広くすることができる。
【0063】
本実施形態では、このようにしてプラズマが形成される際に、上部電極34に27MHz以上の高い周波数領域の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
【0064】
また、このようにプラズマが形成される際に、コントローラ51により可変直流電源50から上部電極34に印加される直流電圧の極性および大きさを制御することにより、印加電極である上部電極34の表面つまり電極板36の表面に対する所定の(適度な)スパッタ効果が得られる程度にその表面の自己バイアス電圧Vdcが深くなるように、つまり上部電極34表面でのVdcの絶対値が大きくなるようにすることができる。第1の高周波電源48から印加される高周波電力のパワーが低い場合に、上部電極34にポリマーが付着するが、可変直流電源50から適切な直流電圧を印加することにより、上部電極34に付着したポリマーをスパッタして上部電極34の表面を清浄化することができ、かつ、半導体ウエハW上に最適な量のポリマーを供給することができる。これにより、フォトレジスト膜の表面荒れを解消することができ、かつ下地膜との間のエッチング選択比を高くすることができる。
【0065】
なお、上部電極34に直流電圧を印加することにより、上部電極34自体をスパッタしてフォトレジスト膜表面にカーバイドを形成してフォトレジスト膜を強化することや、自己バイアス電圧Vdcが深くなることにより、上部電極34側に形成されるプラズマシースの厚さが厚くなってプラズマが縮小化されることによる、半導体ウエハW上の実効レジデンスタイムの増加およびプラズマがウエハW上に集中することによる解離空間の減少によって、フロロカーボン系の処理ガスの解離抑制にともなうフォトレジスト膜の耐エッチング性を向上するといった効果を得ることもできる。また、上部電極34に直流電圧を印加することにより、上部電極34近傍に生成された電子が処理空間の鉛直方向へ加速され、シェーディング効果を抑制してボーイングのない良好な加工形状を得ることができるといった効果も得ることができる。なお、可変直流電源50からの印加電圧を制御する代わりに、印加電流または印加電力を制御するようにしてもよい。
【0066】
このように上部電極34に直流電極を印加することにより、種々の効果が得られ、特に被処理基板である半導体ウエハWに適切にポリマーを供給する効果によって、被エッチング膜と下地のエッチングストップ膜との選択比を大きくすることが可能となるが、低誘電率バリア膜であるSiC膜を下地エッチングストップ膜として使用して上層の被エッチング膜であるSiOC系Low−k膜をエッチングする場合には、両者の組成が極めて近接しているため、このように直流電圧を印加しても十分なエッチング選択比を確保することができる条件のマージンが極めて狭い。
【0067】
このことを具体的に説明する。
図6は、横軸に第2の高周波電源90から印加されるバイアス用高周波電力(13.56MHz)の自己バイアス電圧Vdcをとり、縦軸にエッチングレートをとった、SiOC系Low−k膜とSiC膜のエッチング特性を示すグラフである。このとき、処理ガスとしてはC、Ar、Nを用い、これらの流量をそれぞれ10mL/min(sccm)、500mL/min(sccm)、100mL/min(sccm)とし、圧力を6Paとし、第1の高周波電源48として周波数が60MHzのものを用いてパワーを1000Wとし、第2の高周波電源90として周波数が13.56MHzのものを用いてパワーを2000Wとした。チャンバ内にプラズマを生成すると、上部電極から半導体ウエハにポリマーが供給されバイアスが印加されていないとデポが生じるが、自己バイアス電圧Vdcの絶対値を上げて行くとエッチングが進行するようになる。このとき、SiOC系Low−k膜を高精度でエッチングするためには、SiOC系Low−k膜がエッチングされ、下地のSiC膜はエッチングされないようなVdcが求められる。しかし、SiOC系Low−k膜とSiC膜とは組成が近接しているため、図に示すようにエッチング挙動が似ており、通常のエッチングでは高選択比をとるためのエッチングを行うことができるマージンは極めて狭く、エッチングレートを上げることができない。
【0068】
エッチングはエッチング対象膜にバイアスを印加してイオンを引き込むことにより進行するが、上述したようにエッチング対象膜にはポリマーが供給されて堆積されるため、エッチングを進行させるためにはポリマーの厚さよりもイオン侵入深さのほうが大きくなるようにVdc(ウエハに入射するイオンエネルギー)を選択することが必要である。一方、エッチング対象膜がエッチングされた後は、下地膜に堆積されるポリマーの厚さがイオン侵入深さよりも厚ければ、下地膜のエッチングがストップし、選択性の高いエッチングが実現する。しかし、図6のようにエッチング挙動が被エッチング膜と下地膜とで近接している場合には、高いエッチングレートで被エッチング膜をエッチングした後、連続的にオーバーエッチングを行うと、被エッチング膜が抜けた時点で下地膜上のポリマー厚さがイオン侵入深さよりも薄くなっており、下地膜がエッチングされてしまう。
【0069】
そこで、本実施形態では、被エッチング膜が抜ける時点、すなわち被エッチング膜がエッチングされてオーバーエッチングに移行する時点におけるポリマー厚さがイオン侵入深さよりも厚くなるように、被エッチング膜にポリマーが堆積される第1のパワーと被処理基板の被エッチング膜がエッチングされる第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するようにする。この際には、制御部100の指令によりRF制御器95が第2の高周波電源90を通常モードからパワー変調モードに切り換える。これにより、第1のパワーでポリマーを堆積させ、第2のパワーでエッチングを進行させて、オーバーエッチング開始時にイオン侵入深さよりも厚いポリマー層が形成されるようにして、エッチングストップ膜を大きく浸食させることなくエッチングを停止させることができる。
【0070】
以上のことを図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、Cu配線層201の上にエッチングストップ膜であるSiC膜202が形成され、その上に被エッチング膜であるSiOC系Low−k膜203が形成され、フォトレジスト膜204をマスクとしてSiOC系Low−k膜203をエッチングする場合について説明する。
【0071】
まず、従来の連続モードの場合には、図7の(a)に示すメインエッチング末期の状態から図7の(b)に示すようなSiOC系Low−k膜203が抜けた瞬間(オーバーエッチングを始める瞬間)は、ホール底の下地のSiC膜202上に形成されているポリマー層205の厚さが薄く、SiC膜202がエッチングされ浸食されてしまう。そして、図7の(c)に示すようにSiC膜202膜がかなり浸食された時点でオーバーエッチングが飽和される(オーバーエッチング25%)。
【0072】
これに対して、図7の(a)に示すメインエッチング末期の状態でパワー変調モードに切り換えることにより、図7の(d)に示すオーバーエッチングの瞬間の第1のパワーの時には、ホール底のSiC膜202の上のポリマー層205の厚さが厚くなり、図7の(e)に示すように、その後第2のパワーのエッチングモードになってもイオン侵入深さがポリマー層205の厚さよりも小さくなるため、図7の(f)に示すようにエッチングストップ膜であるSiC膜202はほとんど浸食されない。
【0073】
図8は、横軸にバイアスパワーをとり縦軸にポリマー層厚さをとって、上記現象を模式的にまとめたグラフである。また、図8中に、ポリマー層205またはSiC膜202へのイオンの侵入深さも描いている(スケールはポリマー深さと同じ)。この図に示すように、連続モードの場合には、SiOC系Low−k膜203とSiC膜202のエッチング特性が類似している関係上、上述したように、イオンの侵入深さがSiC膜202上のポリマー層205の厚さより小さい、SiC膜202が浸食されない領域は極めて狭く、しかもバイアスパワーを小さくしてSiOC系Low−k膜203のエッチングレートを小さくせざるを得ないが、オーバーエッチング直前にバイアスパワーをパワー変調する場合には、SiC膜202が浸食されない領域を広くすることができ、しかもバイアスパワーを大きくしてSiOC系Low−k膜203のエッチングレートを高くすることができる。
【0074】
このようなバイアスのパワー変調を用いた場合のプロセスマージンを図6の連続モードの場合と比較して図9に示す。この図に示すように、オーバーエッチング直前にパワー変調を用いることにより、プロセスマージンが広がり、Vdcが−800V付近の高エッチングレートのエッチングでも、下地のSiC膜をほとんどエッチングすることなくエッチング対象膜であるSiOC系Low−k膜をエッチング可能となることがわかる。すなわち、下地膜に対する選択比が高くかつ高エッチングレートでエッチング対象膜であるSiOC系Low−k膜をエッチングすることができる。
【0075】
図10は、ポリマー膜厚とイオン(Arイオン)の吸収エネルギーとの関係をシミュレーションした結果をイオンの照射エネルギー毎に示したグラフである。通常のエッチングの場合、イオン照射エネルギー分布は500eV〜1keVまでの範囲が大部分であることが知られており、図10からポリマー厚さが1keVにおけるイオンエネルギー吸収範囲は5nm程度までであるから、ポリマー厚さが数nm以上、好ましくは5nm以上であればイオンの侵入深さをポリマー層の厚さよりも小さくすることができることが理解される。
【0076】
本実施形態において、第2の高周波電源90からの高周波電力をパワー変調する際の波形の典型例としては上述したようにパルス状を挙げることができる。ただし、これに限るものではなく第1のパワーと第2のパワーとで変調していれば、サインカーブ等の他の波形であってもよい。
【0077】
パワー変調の際には、パワーが低いほうの第1のパワーは0よりも大きいことが好ましい。パワーを0にするよりもある程度のパワーを保持していたほうがポリマーのデポを有効に供給することができる。第1のパワーおよび第2のパワーは、他のエッチング条件や膜の条件等によって適宜設定されるが、第1のパワーは10〜500Wの範囲が好ましく、第2のパワーは100〜5000Wの範囲が好ましい。さらには、第2のパワーは100〜1000Wの範囲がより好ましい。
【0078】
また、パワー変調の周波数は、0.25〜100Hzが好ましい。この範囲でポリマー層の生成が適度な範囲となる。すなわち、パワー変調(パルス)のデューティー比が50%の場合に、周波数が100Hzを超えるとポリマーのデポが生じる第1のパワーの時間が1周期で10mS未満となり、十分なデポが形成され難くなるおそれがあり、周波数が0.25Hz未満であると1周期あたりの第1のパワーの時間が2Sを超えてポリマー層が厚くなりすぎるおそれがある。
【0079】
パワー変調(パルス)のデューティー比(第2のパワーの時間/1周期の全体の時間)は典型例として50%を挙げることができるが、エッチングの条件や被エッチング膜および下地膜の条件等に応じて1〜99%の間で適切に調整することができる。
【0080】
エッチングに際しては、まず、バイアスパワーを変調しない通常のモードで高エッチングレートにて被エッチング膜をエッチングし、被エッチング膜のエッチング終了前にバイアスパワーを上述のようなパワー変調モードへ切り換えるが、この切り換えは、被エッチング膜がエッチングされて下地膜が見えた際に適切な量のポリマー層が形成されているようなタイミングで行うことが必要である。オーバーエッチングに入る直前にパワー変調モードへ切り換えたのではオーバーエッチング時にポリマー層の厚さが不十分になり、逆に、早く切り換え過ぎた場合には、エッチングレートが低下してしまう。したがって、下地膜が見えた際に適切な量のポリマー層が形成することができる時間が確保できるように、オーバーエッチングに入る時点にできるだけ近いタイミングで切り換えを行うことが好ましく、エッチング条件等にもよるが、被エッチング膜の残膜が20〜30nmの時点で切り換えることが好ましい。
【0081】
このようなパワー変調モードでエッチングする際には、上部電極34に可変直流電源50から直流電圧を印加することにより、上述したようなポリマー供給の効果が得られるため、ポリマー層を確保する観点から有利である。また、直流電圧を印加していない時には、バイアスパワーが変調することにより上部電極34に第1の高周波電源から印加されるプラズマ生成用の高周波電力の反射波が増大してプラズマが不安定になるおそれがある。そこで、可変直流電源50から上部電極34に直流電圧を印加することで、上部電極34側に形成されるプラズマシースの厚さが固定されるので、上部電極34に印加されるプラズマ生成用の高周波電力の反射波が減少し、プラズマを安定させることができる。よって、プロセスの安定性や第1の高周波電源48の寿命を向上させることができ、その点からも直流電圧を印加することが有利である。
【0082】
上部電極34に印加される直流電圧は、エッチング条件に応じて適宜設定されるが、通常の連続モードの場合もパワー変調モードの場合も、−300〜−2kVの範囲が好ましい。
【0083】
なお、第1の高周波電源48から上部電極34に印加される高周波電力の周波数、および第2の高周波電源90からサセプタ16に印加される高周波電力の周波数の好ましい範囲は、通常の連続モードの場合およびパワー変調モードの場合によらず、上述したように前者が27〜100MHzの範囲、後者が400kHz〜13.56MHzの範囲が好ましい。また、第1の高周波電源48から供給される高周波電力のパワーは、通常の連続モードの場合もパワー変調モードの場合も500〜5000Wの範囲が好ましい。さらに、通常の連続モードの場合の第2の高周波電源90からのバイアス用高周波電力のパワーは、500〜5000Wの範囲が好ましい。
【0084】
次に、本実施形態の効果を確認した実験について説明する。
ここでは、下地膜であるSiC膜を30nm形成した後、その上にエッチング対象膜であるSiOC系Low−k膜を300nm形成し、その上にBARCおよびパターン化されたArFレジスト膜を形成したサンプルを用い、まずArFレジスト膜をマスクとしてBARCをエッチングした後、SiOC系Low−k膜をエッチングしてビアを形成した。
【0085】
エッチングの際の条件は、以下のとおりとした。なお、オーバーエッチングについては、本実施形態に従ってパワー変調モードで印加した場合(実施例)と、従来のようにバイアスを連続モードで印加した場合(比較例)とについて行った。
(1)メインエッチング(連続モード)
チャンバ内圧力:6.65Pa(50mT)
上部印加高周波パワー(60MHz):400W
下部印加高周波パワー(400kHz):500W
処理ガスおよび流量:C/Ar/N=4/1000/500mL/min(sccm)
上部直流電圧:−900V
時間:60sec
(2)オーバーエッチング
(a)実施例
チャンバ内圧力:6.65Pa(50mT)
上部印加高周波パワー(60MHz):400W
下部印加高周波パワー(400kHz):100W/800Wで変調
パワー変調の際のパルスパラメータ
周波数:15.0Hz
デューティー比:50%
Vpp:1.4V
処理ガスおよび流量:C/Ar/N=8/1000/80mL/min(sccm)
上部直流電圧:−900V
(b)比較例
チャンバ内圧力:6.65Pa(50mT)
上部印加高周波パワー(60MHz):400W
下部印加高周波パワー(400kHz):800W
処理ガスおよび流量:C/Ar/N=4/1000/500mL/min(sccm)
上部直流電圧:−900V
(3)共通条件
温度:上部電極/ウエハ/下部電極=60/60/0℃
【0086】
これらの条件でエッチングを行った後、サンプルを1%HF水溶液に30秒浸漬させて、SiCの浸食の浸食量を把握した。なお、実施例におけるバイアスパワー印加の通常モードからパワー変調モードへの切り換えは、オーバーエッチング開始時点から30sec前とした。
【0087】
結果を図11に示す。図11は、横軸にオーバーエッチングの時間をとり、縦軸にSiC膜の浸食量(nm)をとって、実施例と比較例を対比した図である。この図に示すように、比較例の場合には、オーバーエッチング開始直後に9nm程度まで大きく浸食したのに対し、実施例の場合には、初期に3nm程度浸食された後、オーバーエッチング40%までほぼ一定で飽和していることが確認された。このことから、本実施形態のバイアスのパワー変調モードの効果が確認された。
【0088】
なお、本実施形態では、被エッチング膜としてSiOC系(有機系)のLow−k膜を例示したが、無機系のLow−k膜であっても当然よい。また、下地膜としてSiC膜を例示したが、例えば窒化シリコン膜(SiN)であってもよい。さらに、本実施形態では被エッチング膜としてSiOC系Low−k膜、下地膜としてSiC膜の組み合わせを例示したが、被エッチング膜が下地膜に対して選択比を取り難い場合の全般に適用可能である。また、上記実施形態では、バイアスを連続モードからパワー変調モードに切り換える場合について示したが、十分なエッチングレートを得ることができれば、パワー変調モードのみを採用することもできる。
【0089】
次に、本実施形態における他の適用例について説明する。
ここでは、被エッチング膜のマスクに対する選択比を高めるために、上述したパワー変調モードを利用した例について説明する。
【0090】
図12はこの例に適用するための半導体ウエハの構造を示す断面図である。符号301はLow−k膜であり、その上にハードマスク層としてのTiN膜302が形成され、その上に無機犠牲膜303およびフォトレジスト膜304が形成されている。ハードマスク層としてはTiNの代わりにTi膜を用いてもよい。このような構造において、TiN膜302をマスクとしてLow−k膜301をエッチングしてホール305を形成する場合には、TiN膜302に対して大きな選択比でエッチングすることが望まれる。そのためには、Low−k膜301に対してはエッチングが進行し、TiN膜302に対してはポリマーの堆積が多くエッチングが進行し難くなるような条件のパワー変調モードとなるように第2の高周波電源90を制御しながらエッチングを行うことが有効である。
【0091】
次に、本実施形態のさらに他の適用例について説明する。
ここでは、マイクロローディング効果を緩和するために、上述したパワー変調モードを利用した例について説明する。
【0092】
図13に示すように、下地膜401の上にエッチングストップ膜であるSiC膜402が形成され、その上に被エッチング膜であるSiOC系Low−k膜403が形成され、フォトレジスト膜404をマスクとしてSiOC系Low−k膜403に小さいサイズのビア405と例えばガードリング(GR)等の大きいエリアのトレンチ406をエッチングする場合、マイクロローディング効果により、サイズの小さいビア405にはCF系ラジカルが入りにくく、そのエッチレートが遅くなり、逆にサイズの大きいトレンチ406ではエッチング速度が速くなる傾向にある。
【0093】
このようなマイクロローディング効果を抑制するために、上述のようなパワー変調モードでバイアスを印加しながらエッチングを行うことが有効である。このようなパワー変調モードでバイアスを印加することにより、大きいエリアのトレンチ406のエッチングレートのみを抑制してマイクロローディング効果を緩和することができる。具体的には、上述したように、パワー変調モードにおける高パワーである第2のパワーでエッチングが進行し、低パワーである第1のパワーではCF系プリカーサーが堆積してエッチングが抑制されるが、そのようなエッチングの抑制効果はエッチングエリアの大きいトレンチ406でより大きく発揮されるため、ビア405とトレンチ406のエッチングレートの差が小さくなり、マイクロローディング効果が緩和される。
【0094】
次に、本適用例を実際に適用した結果について説明する。
ここでは、エッチング対象膜としてSiOC系Low−k膜を用い、図14に示すようなサイズの(a)楕円形ビア、(b)円形のスモールビア、(c)トレンチ(GR)をエッチングした。ここでは、下部印加高周波電力パワー変調モードにした場合と連続モードにした場合とについて比較した。その際の条件は以下の通りとした。
(1)共通条件
チャンバ内圧力:6.65Pa(50mT)
上部印加高周波パワー(60MHz):400W
上部直流電圧:−900V
温度:上部電極/ウエハ/下部電極=60/60/0℃
処理ガスおよび流量:C/Ar/N=10/1000/100mL/min(sccm)
時間:30sec
(2)パワー変調モード
下部印加高周波パワー(13.56MHz):100W/700Wで変調
パワー変調の際のパルスパラメータ
周波数:15.0Hz
デューティー比:50%
(3)連続モード
下部印加高周波パワー(13.56MHz):700Wを連続印加
【0095】
これらエッチングを行った際のセンターおよびエッジのエッチングレートを表1にまとめて示す。また、図14(a)の楕円形ビアのエッチングレートを1.0として規格化した結果を表2に示す。さらに表2をグラフ化したものを図15に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
これらに示すように、下部電極に連続モードで高周波バイアスを印加した場合には、大きいエリアのトレンチ(GR)のエッチングレートが楕円形ビアおよびスモールビアに比べて大きくなり、マイクロローディング効果が生じていたが、高周波バイアスをパワー変調モードにすることにより、トレンチ(GR)のエッチングレートが他に比べて大きく低下し、マイクロローディング効果が緩和することが確認された。
【0099】
ところで、本実施形態において第2の高周波電源90をパワー変調モードにしたプラズマを形成する場合、より確実にプラズマを維持するために、第2の高周波電源90をプラズマ着火の際には同一パワーの連続モードで動作させ、その後パワー変調モードで動作させることが好ましい。この場合に、高周波電力および直流電圧の印加タイミングおよび印加手法も問題となる。以下、高周波電力および直流電圧の好ましい印加タイミングおよび印加手法について図16〜18を参照して説明する。
【0100】
図16の例では、第2の高周波電源90から高パワーの第2のパワーよりも低いパワーで高周波電力を連続モードで下部電極であるサセプタ16に供給開始し、所定時間経過後の時刻T1に、第1の高周波電源48から高周波電力を上部電極34に印加する。それと同時に可変直流電源50から上部電極34に直流電圧を印加する。この状態でプラズマが着火し、プラズマが安定した時点の時刻T2において第2の高周波電源90をパワー変調モードにする。これにより、プラズマが安定した後にパワー変調モードにすることになるので、パワー変調モードにおける第1のパワーのような低いパワーを供給する場合であっても、確実にプラズマを維持することができる。なお、これらの制御はRF制御器95により行われる。以下の図17および図18の例でも同様である。
【0101】
図17の例では、第2の高周波電源90のパワーを高パワーの第2のパワーの値までスローアップし、その後パワー変調モードにしている。また、可変直流電源50の直流電圧をスローアップしている。このようにスローアップすることにより、ウエハや電源へのダメージを軽減することができる。なお、これらいずれかをスローアップするようにしてもよい。
【0102】
図18の例では、まず、第2の高周波電源90から高パワーの第2のパワーよりも低いパワーで高周波電力を連続モードで下部電極であるサセプタ16に供給開始し、所定時間経過後の時刻T1′に、第1の高周波電源48から設定値よりも低い高周波電力を上部電極34に印加する。それと同時に可変直流電源50から上部電極34に直流電圧を印加する。この状態でプラズマが着火し、プラズマが安定した時点の時刻T2′において第1の高周波電源48を設定値まで上昇させ、第2の高周波電源90のパワーを所定値(例えば第2のパワーの値)まで上昇させる。この場合に、第2の高周波電源90のパワーは図示するようにスローアップとすることが好ましい。そして、時刻T2′以降の所定のタイミングで第2の高周波電源90をパワー変調モードにする。これによっても、プラズマが安定した後にパワー変調モードにすることになるので、パワー変調モードにおける第1のパワーのような低いパワーを供給する場合であっても、確実にプラズマを維持することができる。なお、この例においても可変直流電源50の直流電圧をスローアップしてもよい。
【0103】
次に、第2の高周波電源90とともに第1の高周波電源48もパワー変調モードにした例について説明する。
プラズマの安定性等の観点から、第2の高周波電源90をパワー変調モードとした時に、それに対応して第1の高周波電源48をもパワー変調モードにすることが好ましい場合も考えられる。この際には、RF制御器95により第2の高周波電源90のみならず第1の高周波電源48をもパワー変調するように制御する。具体的には、第1の高周波電源48を第2の高周波電源90のパワー変調モードに同期させて、第3のパワーと第4のパワーとの間でパワー変調するように制御する。この場合に、例えば図19の(a)に示すように、第1の高周波電源48と第2の高周波電源90とで、高パワーと低パワーとを同じタイミングとなるようにしてもよいし、図19の(b)に示すように、第1の高周波電源48と第2の高周波電源90とで、高パワーと低パワーとを逆のタイミングにしてもよい。
【0104】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図20は、本発明の第2の実施形態に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【0105】
このプラズマエッチング装置は、プラズマ生成用の高周波電力が下部電極であるサセプタに印加されるようになっている点が上記第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置とは異なっているが、他の構成については基本的に第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置と同様であるから、図20において、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0106】
本実施形態においては、下部電極であるサセプタ16にプラズマを生成するための第1の高周波電源48′およびバイアスを印加してイオンを引き込むための第2の高周波電源90の両方が接続されている。第1の高周波電源48′は第1の整合器89を介してサセプタ16に接続されており、第1の整合器89は第2の整合器88と同様の構成を有し、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48′の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。第1の高周波電源48′は、第1の実施形態の第1の高周波電源48と同様の機能を有しており、その周波数は27〜100MHzの範囲が好ましい。
【0107】
一方、上部電極34に高周波電源が接続されておらず、可変直流電源50は、ローパスフィルタ(LPF)46aを介して上部電極34に接続されている。ローパスフィルタ(LPF)46aは第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0108】
本実施形態では、下部電極にプラズマ形成用の第1の高周波(RF)電力およびイオン引き込み用の第2の高周波(RF)電力を印加する下部RF二周波印加型のプラズマエッチング装置を示しているが、その他の容量結合型プラズマエッチング装置に対する優位点として、以下の点を挙げることができる。
【0109】
まず、本実施形態のように下部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加することで、ウエハにより近いところでプラズマを形成することができ、またプラズマが広い領域に拡散せず処理ガスの解離を抑えることができるので、処理容器内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件であっても、ウエハに対するエッチングレートを上昇させることができる。また、プラズマ形成用の高周波電力の周波数が高い場合でも、比較的大きなイオンエネルギーを確保することができるので高効率である。これに対して、第1の実施形態のように上部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加する場合には、上部電極近傍にプラズマが生成されるので、処理容器内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件では、ウエハに対するエッチングレートを上昇させることが比較的困難である。
【0110】
また、本実施形態のように下部電極にプラズマ形成用の高周波電力とイオン引き込み用の高周波電力を別々に印加することで、下部電極に一周波の高周波電力を印加するタイプの装置とは異なり、プラズマエッチングに必要なプラズマ形成の機能とイオン引き込みの機能とを独立に制御することが可能となる。したがって、高い微細加工性が要求されるエッチングの条件を満たすことが可能となる。
【0111】
本実施形態では、このような機能を有する二周波印加型のプラズマエッチング装置を基本とし、上部電極へ直流電圧を印加することによって、上述したような機能を発揮するので、近年のエッチング微細加工に適合したより高性能のエッチングが可能となるとともに、第1の実施形態と同様にバイアス用の高周波のパワー変調を行うことにより、例えばSiOC系Low−k膜とSiC膜との組み合わせのように被エッチング膜と下地膜とで組成が近接している場合であっても、被エッチング膜を高選択比および高エッチングレートでエッチングすることができる。
【0112】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、SiC膜を下地膜としてSiOC膜をエッチングする場合等、被エッチング膜と下地膜との選択比を高めたい場合や、TiN膜をマスクとしてLow−k膜をエッチングする場合等、マスクに対して選択性の高いエッチングを行いたい場合に適用可能であるし、マイクロローディング効果を緩和したい場合にも適用可能である。また、図16で示したようなプラズマ着火シーケンスも適用可能であるし、第1の高周波電源48′をパワー変調モードで動作させることも可能である。なお、本実施形態では、被エッチング膜としてSiOC系(有機系)のLow−k膜を例示したが、無機系のLow−k膜であっても当然よい。また、下地膜としてSiC膜を例示したが、例えば窒化シリコン膜(SiN)であってもよい。さらに、本実施形態では被エッチング膜としてSiOC系Low−k膜、下地膜としてSiC膜の組み合わせを例示したが、被エッチング膜が下地膜に対して選択比を取り難い場合の全般に適用可能である。
【0113】
なお、上記いずれの実施形態においても、上記第1の高周波電力および第2の高周波電力の採り得る周波数を例示すると、第1の高周波電力としては、27MHz、40MHz、60MHz、80MHz、100MHzを挙げることができ、第2の高周波電力としては、400kHz、800kHz、1MHz、2MHz、3.2MHz、12.88MHz、13.56MHzを挙げることができ、プロセスに応じて適宜の組み合わせで用いることができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、上部電極に直流電圧を印加する例について示したが、直流電圧の印加は必須ではない。
【符号の説明】
【0115】
10…チャンバ(処理容器)
16…サセプタ(下部電極)
34…上部電極
44…給電棒
46、89…第1の整合器
48…第1の高周波電源
50…可変直流電源
66…処理ガス供給源
84…排気装置
88…第2の整合器
90…第2の高周波電源
95…RF制御器
100…制御部
102…記憶部
W…半導体ウエハ(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な処理容器と、
処理容器内に配置された第1電極と、
前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、
前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、
前記第2電極にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、
前記第2の高周波電力供給ユニットを制御する制御器と
を具備し、
前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを第1のパワーと第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させる際、プラズマ着火時に、最初に前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換えるように制御することを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させた後、所定期間後に前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始し、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えるように制御することを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットによる同一パワーで連続的な高周波電力の供給開始時点では所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、前記第1の高周波電力供給ユニットによる高周波電力の供給開始時点でも所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、所定時間後に前記第1および第2の高周波電力供給ユニットからのパワーを上昇させ、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えるように制御することを特徴とする請求項2に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項4】
前記プラズマエッチング装置は、前記第1電極に直流電圧を印加する可変直流電源をさらに具備し、前記制御器は、前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始する時点で前記可変直流電源による電圧印加を開始するように制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項5】
前記制御器は、前記可変直流電源による電圧印加を開始する際に、電圧を徐々に上昇させることを特徴とする請求項4に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項6】
前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換える際に、パワーを徐々に上昇させるように制御することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項7】
前記制御器は、前記第2の高周波電力供給ユニットのパワー変調モードに同期させて、さらに前記第1の高周波電力供給ユニットを、第3のパワーと第4のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作するように制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項8】
真空排気可能な処理容器と、
処理容器内に配置された第1電極と、
前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、
前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、
前記第2電極にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、
を具備するプラズマエッチング装置を用い、前記第1電極および前記第2電極の間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、
前記第2の高周波電力供給ユニットを第1のパワーと第2のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させる際、プラズマ着火時に、最初に前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換えることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させた後、所定期間後に前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始し、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えることを特徴とする請求項8に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
前記第2の高周波電力供給ユニットによる同一パワーで連続的な高周波電力の供給開始時点では所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、前記第1の高周波電力供給ユニットによる高周波電力の供給開始時点でも所定のパワーよりも低いパワーで電力供給を行い、所定時間後に前記第1および第2の高周波電力供給ユニットからのパワーを上昇させ、その後、所定期間後に前記第2の高周波電力供給ユニットを前記パワー変調モードに切り換えることを特徴とする請求項9に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項11】
前記プラズマ処理装置は、前記第1電極に直流電圧を印加する可変直流電源をさらに具備し、前記第1の高周波電力供給ユニットによる電力供給を開始する時点で前記可変直流電源による電圧印加を開始することを特徴とする請求項9または請求項10に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項12】
前記可変直流電源による電圧印加を開始する際に、電圧を徐々に上昇させることを特徴とする請求項11に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項13】
前記第2の高周波電力供給ユニットを同一パワーで連続的に高周波電力を供給するモードで動作させ、その後前記パワー変調モードに切り換える際に、パワーを徐々に上昇させることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項14】
前記第2の高周波電力供給ユニットのパワー変調モードに同期させて、さらに前記第1の高周波電力供給ユニットを、第3のパワーと第4のパワーとの間で所定周期でパワー変調するパワー変調モードで動作させることを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項15】
真空排気可能な処理容器と、処理容器内に配置された第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた被処理基板を支持する第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を供給する第1の高周波電力供給ユニットと、前記第2電極にイオン引き込み用の高周波電力を供給する第2の高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備するプラズマエッチング装置を制御するためのコンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に、請求項8から請求項14のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマエッチング装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−84994(P2013−84994A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16925(P2013−16925)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2007−254058(P2007−254058)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】