説明

プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材

【課題】 焼結体表面の平滑性に優れ、スムーズな供給を可能とする、酸化マグネシウム焼結体からなる、プラズマディスプレイの保護膜用蒸着材を提供することである。
【解決手段】 酸化カルシウムを2〜50質量%含み、かつ相対密度が95%以上である酸化マグネシウム焼結体からなるプラズマディスプレイの保護膜用蒸着材であって、
酸化マグネシウム焼結体が、BET比表面積が5m/g以上、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.1〜0.5μm、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積10%粒子径(D10)と体積基準の累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が10以下である、純度99.5質量%以上の酸化マグネシウム微粒子を原料とする、プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)の保護膜用蒸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは2枚のガラス基板の間隙に密閉された微小な放電空間を多数設けた表示デバイスである。例えば、マトリックス表示方式のPDPでは、多数の電極が格子状に配列され、各電極の交差部の放電セルを選択的に発光させて画像を表示する。代表的な面放電型のAC型PDPでは、前面板の表示電極は誘電体層で被覆され、さらに誘電体層上に保護膜が形成されている。保護膜は、誘電体層が直接放電にさらされることで誘電体層表面が変化して放電開始電圧が上昇するのを防止する役割を有しており、イオン衝撃のスパッタリングによって変化しないという特性を示す層である。
【0003】
現在、PDP用の保護膜は、酸化マグネシウム等の焼結体をターゲット材とする電子ビーム蒸着法により誘電体層上に形成されることが一般的である。しかし、PDPを更に省電力化するために放電開始電圧を更に下げることが要求され、PDP用の保護膜としても、低い放電開始電圧を有し、二次電子放出係数が高く、スパッタリングに強い材料が求められている。
【0004】
このような観点から、保護膜を構成する材料として、酸化マグネシウムと酸化カルシウムや酸化バリウム等との混合酸化物からなる焼結体が提案されている。これらの保護膜材料は、放電開始電圧が比較的低く、耐スパッタ性が良好であるという利点があるが、その一方で、強度が低く、蒸着時の熱衝撃により焼結体の突起部分が破壊され、スプラッシュ(突沸)が発生しやすい、という問題があった。この点を解決すべく、相対密度が95%以上の酸化マグネシウム焼結体であって、平均結晶粒径が0.3〜100μmの酸化マグネシウムマトリックス中に、アルカリ土類金属酸化物粒子が0.5〜50体積%分散された酸化マグネシウム焼結体からなる蒸着材が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−290062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案される蒸着材は、焼結体表面の平滑性に欠け、大きな摩擦が発生するため、蒸着材がスムーズに供給できない等の問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、焼結体表面の平滑性に優れ、スムーズな蒸着材の供給を可能とするPDPの保護膜用蒸着材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酸化カルシウムを2〜50質量%含み、かつ相対密度が95%以上である酸化マグネシウム焼結体からなるプラズマディスプレイの保護膜用蒸着材であって、
酸化マグネシウム焼結体が、BET比表面積が5m/g以上、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.1〜0.5μm、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積10%粒子径(D10)と体積基準の累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が10以下である、純度99.5質量%以上の酸化マグネシウム微粒子を原料とする、プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のPDPの保護膜用蒸着材によれば、焼結体表面の平滑性に優れているため、摩擦の発生が少なく、蒸着材をスムーズに供給することができる。あわせて、成膜時のスプラッシュ発生が抑制され、得られた蒸着膜をPDP用の保護膜とした場合に放電開始電圧を低くすることができるという利点も有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のPDPの保護膜用蒸着材は、酸化カルシウムを2〜50質量%含み、かつ相対密度が95%以上である酸化マグネシウム焼結体からなる。
【0011】
本発明において、酸化マグネシウム焼結体は、構成成分として酸化マグネシウムを主体(50質量%以上)とし、さらに、バンドギャップを小さく、放電開始電圧を低下させる効果の高い酸化カルシウムを含有する。ここで、焼結体とは、粉末の集合体を、融点よりも低い温度で加熱することで、粉体の固相拡散、ネック部の成長、結晶粒界の移動等によって粉末同士が連結して製造された緻密な成形体のことをいう。
【0012】
酸化カルシウムの含有量は、酸化マグネシウム焼結体100質量%中、2〜50質量%である。この範囲であれば、蒸着膜をPDP用の保護膜とした際の放電開始電圧を充分に低下させることができ、また、酸化マグネシウム焼結体に充分な強度がもたらされ、成膜時のスプラッシュ発生を抑制することができる。酸化カルシウムの含有量は、好ましくは3〜20質量%である。
【0013】
本発明において、酸化マグネシウム焼結体の相対密度は95%以上であり、高い焼結体強度を有しているため、成膜時の熱衝撃による破壊が抑制され、また、スプラッシュ発生や破片の飛散を防止することが可能となる。
【0014】
本発明では、原料として特定の物性をもった酸化マグネシウム微粒子を使用することにより、成膜時のスプラッシュ発生も抑制することができるだけでなく、さらに、焼結体表面の平滑性を優れたものにできるため、摩擦の発生が少なく、蒸着材をスムーズに供給することができる。得られた蒸着膜を、PDP用の保護膜に使用した場合に放電開始電圧を低くすることができる。
【0015】
本発明において、酸化マグネシウム焼結体は、BET比表面積が5m/g以上、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.1〜0.5μm、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積10%粒子径(D10)と体積基準の累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が10以下である、純度99.5質量%以上の酸化マグネシウム微粒子を原料のひとつとする。
【0016】
本明細書において、純度は、対象微粒子中の不純物元素(Ag、Al、B、Ba、Bi、Cd、Cl、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、In、K、Li、Mn、Mo、Na、Ni、P、Pb、S、Si、Sr、Tl、V、Zn、Ti及びZr)の含有量を測定し、これらの合計含有量を100質量%から差し引いた値とする。本明細書において、高純度とは、上記のようにして算出した純度が99.5質量%以上であることをいうものとする。
測定対象となる不純物元素(Ag、Al、B、Ba、Bi、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、In、K、Li、Mn、Mo、Na、Ni、P、Pb、S、Si、Sr、Tl、V、Zn、Ti及びZr)は、ICP発光分析装置を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定し、Cl量は、分光光度計を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定した値とする。
【0017】
BET比表面積は、好ましくは20m/g以上、より好ましくは40m/g以上であり、D50は好ましくは0.2〜0.4μm、D90/D10は好ましくは5以下である。純度は好ましくは99.9質量%以上である。
【0018】
酸化マグネシウム微粒子は、Fe、Ti、Ni、Cr、Mo及びMnの合計含有量が500質量ppm以下であることが好ましい。これらの合計含有量が500質量ppm以下であると、プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材への金属不純物の混入が十分に小さい。合計含有量は、より好ましくは、450質量ppm以下である。
【0019】
酸化マグネシウム微粒子は、塩素の含有量が500質量ppm以下であることが好ましい。この含有量が500質量ppm以下であると、プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材への塩素の混入が十分に小さい。含有量は、より好ましくは、450質量ppm以下である。
【0020】
酸化マグネシウム微粒子は、体積平均粒子径(Dv)と数平均粒子径(Dn)との比Dv/Dnが1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8である。
【0021】
酸化マグネシウム粒子は、BET比表面積が5m/g以上、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.1〜0.5μm、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積10%粒子径(D10)と体積基準の累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が10以下である、純度99.5質量%以上の水酸化マグネシウム微粒子を、焼成することにより得ることができる。焼成は、例えば、大気雰囲気中で、500〜1500℃で行うことができる。
【0022】
上記の特性を有する水酸化マグネシウム微粒子は、
塩化マグネシウム水溶液を用意する工程(A);
塩化マグネシウム水溶液を、1〜18Nのアルカリ水溶液と、反応率101〜210mol%で反応させて、水酸化マグネシウムスラリーを得る工程(B);
水酸化マグネシウムスラリーを、撹拌しながら、101〜200℃の温度で保持して、水熱処理された水酸化マグネシウムスラリーを得る工程(C);並びに
水熱処理された水酸化マグネシウムスラリーを濾過、水洗及び乾燥させて、水酸化マグネシウム微粒子を得る工程(D)
を含む方法により得ることができる。ここで、反応率とは、塩化マグネシウムすべてが、水酸化マグネシウムとなるのに必要なアルカリ量を100mol%として算出した値とする。
【0023】
酸化カルシウムを含有させた酸化マグネシウム焼結体は、所定量の酸化マグネシウム微粒子及びカルシウム化合物の微粒子、並びにバインダー溶液及び場合により分散剤等の添加剤を混合した後、造粒し、乾燥させ、所定の金型に導入して成形した後、これを焼結することにより得ることができる。
【0024】
カルシウム化合物の微粒子としては、カルシウムの酸化物、炭酸塩又は水酸化物の微粒子が挙げられ、高純度(例えば99質量%以上の純度、好ましくは99.9質量%以上の純度)のものが好ましい。カルシウム化合物の微粒子のレーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)は、0.5〜30μmが好ましい。この範囲であれば、焼結体表面の平滑性を維持できるためである。D50は、より好ましくは、1.5〜20μmである。
【0025】
酸化マグネシウム微粒子及びカルシウム化合物の微粒子は、酸化マグネシウム焼結体中の酸化カルシウムが所望の量になるような量で使用することができる。
【0026】
バインダー溶液は、特に限定されず、例えばCMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の溶液を使用することができるが、これらに限定されない。バインダー溶液の濃度は、5〜50重量%が好ましい。溶液の溶媒は、特に限定されず、エタノール等が挙げられる。バインダー溶液は、樹脂固形分で、酸化物換算した微粒子の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0027】
造粒は、転動造粒法やスプレー造粒法等によって行うことができるが、これらに限定されない。得られた造粒体を乾燥後、所定の金型に投入して成形する。成形は、1軸プレス装置等を使用して行うことができるが、これに限定されない。金型圧力は、得られる成形体の相対密度を調整するために、50〜600MPaに設定することが好ましい。得られた成形体を焼成することによって、酸化マグネシウム焼結体を得ることができる。焼成は、焼成温度1300〜1800℃、焼成時間0.5〜20時間で行なうことができる。焼成には、電気炉、ガス炉等が利用できる。
【0028】
本発明の酸化マグネシウム焼結体からなる蒸着材は、PDP用の保護膜の成膜原料として使用される。成膜の方法は、特に限定されず、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の真空蒸着法を使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について、実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
酸化マグネシウム微粒子の物性、蒸着材としての特性は、以下の方法によって測定した。
【0031】
(1)不純物の質量測定法
測定対象となる不純物元素(Ag、Al、B、Ba、Bi、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、In、K、Li、Mn、Mo、Na、Ni、P、Pb、S、Si、Sr、Tl、V、Zn、Ti及びZr)はICP発光分析装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ製)を使用して試料を酸に溶解した後、測定した。
Cl量は、分光光度計(商品名:UV-2550、島津製作所製)を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定した。
【0032】
(2)純度測定法
水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、カルシウム化合物の純度は、100質量%から上記の「不純物量測定法」で測定した不純物元素の質量の合計を差し引いた値として算出した。
【0033】
(3)BET比表面積測定法
比表面積測定装置(商品名:Macsorb1210、マウンテック社製)を使用して、ガス吸着法のBET法により比表面積を測定した。
【0034】
(4)粒子径の測定方法
レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(商品名:MT3300、日機装社製)を使用して、体積基準の累積10%粒子径(D10)、体積基準の累積50%粒子径(D50)及び体積基準の累積90%粒子径(D90)を測定した。体積平均粒子径(Dv)及び数平均粒子径(Dn)も同様に上記装置で測定した。
【0035】
(5)焼結体のかさ密度の算出方法
焼結体のかさ密度は、アルキメデス法により求めた。
【0036】
(6)焼結体の相対密度の算出方法
焼結体の相対密度は、アルキメデス法により求めた。ただし、酸化マグネシウムの理論密度を3.58g/cc、酸化カルシウムの理論密度を3.32g/cc、酸化アルミニウムの理論密度を3.97g/ccとして算出した。
【0037】
酸化カルシウムを含む酸化マグネシウム焼結体を蒸着材としてハース内に10kg充填した後、電子ビーム蒸着装置を使用して出力18kV、900mAで15分間、基板上に蒸着を行った。この成膜時にビューポートより目視でスプラッシュの発生状態を観察し、さらに、成膜後に薄膜表面を観察し、下記評価基準に基づいて3段階で評価した。
◎:スプラッシュ、膜表面への蒸着材破片の付着ともに観測されず。
○:スプラッシュは観測されたが、膜表面への蒸着材破片の付着は観測されず。
×:スプラッシュを多数観測し、膜表面への蒸着材破片の付着を確認。
【0038】
(最大静止摩擦力の測定方法)
焼結体の摩擦力を確認するため、角度を変化させ得るステンレス製の溝に蒸着材を投入し、滑り始める角度θから、焼結体にかかる力を最大静止摩擦力:Fとして下記の計算式より算出した。
F(×10−3N)=μ・m・g・cosθ
μ:静摩擦係数(μ=tanθとして算出)
m:焼結体重量
g:重力加速度
【0039】
酸化マグネシウム焼結体の調製を、以下のようにして行った。
【0040】
〔酸化マグネシウム微粒子1の調製〕
粗塩化マグネシウム水溶液として、純度90質量%以上、濃度3.5mol/Lのものを用意した。この塩化マグネシウム水溶液に純水(イオン交換樹脂に通して電気伝導率を0.1μS/cm以下まで精製した水)を添加することにより濃度を調整し、濃度2.0mol/Lの粗塩化マグネシウム水溶液とした。
【0041】
次に、濃度2.0mol/Lの粗塩化マグネシウム水溶液に対して、反応率20mol%となるように、濃度17.84mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応させ、さらに、凝集剤としてアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物を、生成水酸化マグネシウムに対して500質量ppm添加し、水酸化マグネシウムを凝集沈殿させ、上澄液を取り出すことにより、塩化マグネシウム水溶液を得た。
【0042】
得られた塩化マグネシウム水溶液の濃度を調整し、濃度2.0mol/Lの塩化マグネシウム水溶液とした。この塩化マグネシウム水溶液を、反応率200mol%となるように濃度17.84mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液と反応させて、濃度100g/Lの水酸化マグネシウムスラリーを調製した。
【0043】
得られた水酸化マグネシウムスラリーを、オートクレーブを用いて150℃で1時間攪拌しながら保持し、水熱処理(加熱攪拌処理)を行った。水熱処理された第一の水酸化マグネシウムスラリーを濾過し、水洗することにより、第一の水酸化マグネシウムケーキを得た。水洗は、乾燥水酸化マグネシウムに対して、質量基準で40倍の純水を濾過の後に投入することにより行った。
【0044】
次に、得られた第一の水酸化マグネシウムケーキに対して、リパルプ洗浄を行った。リパルプ洗浄では、まず、第一の水酸化マグネシウムケーキの乾燥水酸化マグネシウムに対して、質量基準で40倍の純水を投入し、第二の水酸化マグネシウムスラリーを得た。次に、この第二の水酸化マグネシウムスラリーを、常温で攪拌装置を用いて、500rpmの回転速度で1時間攪拌し、さらに攪拌終了後の第二の水酸化マグネシウムスラリーを、濾紙を用いて濾過し、乾燥水酸化マグネシウムに対して、質量基準で20倍の純水を濾過の後投入し、水洗することにより、第二の水酸化マグネシウムケーキを得た。上述のリパルプ洗浄を1回として、リパルプ洗浄をさらに10回繰り返すことにより、高純度水酸化マグネシウムケーキを得た。高純度水酸化マグネシウムケーキを乾燥して、高純度水酸化マグネシウム微粒子を得た。得られた高純度水酸化マグネシウム微粒子は、下記の特性を有するものであった。
BET比表面積:10.87m/g
粒子径:D50 0.47μm、D10 0.18μm、D90 0.84μm、
Dv/Dn 2.48
粒度分布:D90/D10 4.7
不純物量:Cl 307ppm
Fe、Ti、NI、Cr、Mo及びMnの合計含有量 421ppm
純度:>99.9質量%
【0045】
得られた高純度水酸化マグネシウム微粒子を、大気雰囲気中で、1000℃で1時間焼成することにより、酸化マグネシウム微粒子1を得た。酸化マグネシウム微粒子1の特性を、表1に示す。
【0046】
〔酸化マグネシウム微粒子2の調製〕
高純度水酸化マグネシウム微粒子の調製に当り、塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との反応における反応率を105mol%とし、水熱処理時間を3時間として高純度水酸化マグネシウム微粒子を得たこと、高純度水酸化マグネシウム微粒子の焼成を600℃で実施したこと以外は、上記酸化マグネシウム微粒子1と同様にして、酸化マグネシウム微粒子2を得た。酸化マグネシウム微粒子2の特性を、表1に示す。
なお、高純度水酸化マグネシウム微粒子は、以下の特性を有するものであった。
BET比表面積:17.15m/g
粒子径:D50 0.38μm、D10 0.18μm、D90 0.89μm、
Dv/Dn 2.4
粒度分布:D90/D10 4.9
不純物量:Cl 448ppm
Fe、Ti、NI、Cr、Mo及びMnの合計含有量 10ppm
純度:>99.9質量%
【0047】
〔酸化マグネシウム微粒子3の調製〕
高純度水酸化マグネシウム微粒子の調製に当り、塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との反応における反応率を150mol%とし、水熱処理時間を1時間として高純度水酸化マグネシウム微粒子を得たこと、高純度水酸化マグネシウム微粒子の焼成を800℃で実施したこと以外は、上記酸化マグネシウム微粒子1と同様にして、酸化マグネシウム微粒子3を得た。酸化マグネシウム微粒子3の特性を、表1に示す。
なお、高純度水酸化マグネシウム微粒子は、以下の特性を有するものであった。
BET比表面積:12.15m/g
粒子径:D50 0.33μm、D10 0.18μm、D90 0.81μm、
Dv/Dn 2.39
粒度分布:D90/D10 4.5
不純物量:Cl 188ppm
Fe、Ti、NI、Cr、Mo及びMnの合計含有量 10ppm
純度:>99.9質量%
【0048】
〔酸化マグネシウム微粒子4の調製〕
高純度水酸化マグネシウム微粒子の調製に当り、塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との反応における反応率を95mol%とし、水熱処理時間を3時間として高純度水酸化マグネシウム微粒子を得たこと、高純度水酸化マグネシウム微粒子の焼成を800℃で実施したこと以外は、上記酸化マグネシウム微粒子1と同様にして、酸化マグネシウム微粒子4を得た。酸化マグネシウム微粒子4の特性を、表1に示す。
【0049】
〔酸化マグネシウム微粒子5の調製〕
高純度水酸化マグネシウム微粒子の調製に当り、塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との反応における反応率を95mol%とし、水熱処理時間を2時間として高純度水酸化マグネシウム微粒子を得たこと、高純度水酸化マグネシウム微粒子の焼成を1000℃で実施したこと以外は、上記酸化マグネシウム微粒子1と同様にして、酸化マグネシウム微粒子5を得た。酸化マグネシウム微粒子5の特性を、表1に示す。
【0050】
〔酸化マグネシウム微粒子6の調製〕
高純度水酸化マグネシウム微粒子の調製に当り、塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との反応における反応率を90mol%とし、水熱処理時間を3時間として高純度水酸化マグネシウム微粒子を得たこと、高純度水酸化マグネシウム微粒子の焼成を1200℃で実施したこと以外は、上記酸化マグネシウム微粒子1と同様にして、酸化マグネシウム微粒子6得た。酸化マグネシウム微粒子6の特性を、表1に示す。
【0051】
酸化マグネシウム焼結体からなる蒸着材の調製を、以下にようにして行った。
【0052】
〔実施例1〕
89.99gの酸化マグネシウム微粒子1に、D50 18.95μmの炭酸カルシウム微粒子(関東化学試薬社製:炭酸カルシウム4N、純度99.99%以上)を17.85g(酸化カルシウム換算で10質量%相当)添加し、混合した。その後、造粒、乾燥後、プレス成形(成形圧力:200MPa)により8mm×8mm×3.5mmの直方体状に成形し、電気炉で1450℃×8時間焼成し、酸化カルシウムを含有する酸化マグネシウム焼結体を得て、これを蒸着材とした。
【0053】
〔実施例2〕
実施例1の炭酸カルシウム微粒子のD50を湿式粉砕により7.65μmに変更し、酸化カルシウム換算で3質量%添加した以外は、実施例1と同様に行ない、酸化カルシウムを含有する酸化マグネシウム焼結体を得て、これを蒸着材とした。
【0054】
〔実施例3〕
実施例1の炭酸カルシウム微粒子のD50を湿式粉砕により1.86μmに変更し、酸化カルシウム換算で15質量%添加した以外は、実施例1と同様に行ない、酸化カルシウムを含有する酸化マグネシウム焼結体を得て、これを蒸着材とした。
【0055】
〔実施例4〕
酸化マグネシウム微粒子1に代えて、酸化マグネシウム微粒子2を使用し、実施例1の炭酸カルシウム微粒子のD50を湿式粉砕により3.56μmに変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、酸化カルシウムを含有する酸化マグネシウム焼結体を得て、これを蒸着材とした。
【0056】
〔実施例5〕
酸化マグネシウム微粒子1に代えて、酸化マグネシウム微粒子3を使用したこと以外は、実施例1と同様に行い、酸化カルシウムを含有する酸化マグネシウム焼結体を得て、これを蒸着材とした。
【0057】
〔比較例1〜3〕
酸化マグネシウム微粒子4〜6を使用し、実施例1と同様に行い、酸化カルシウムを含有する酸化マグネシウム焼結体を得て、これを比較例の蒸着材とした。比較例2〜3については、実施例1の炭酸カルシウム微粒子のD50を湿式粉砕により、それぞれ、7.65μm及び1.86μmに変更したものを使用した。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化カルシウムを2〜50質量%含み、かつ相対密度が95%以上である酸化マグネシウム焼結体からなるプラズマディスプレイの保護膜用蒸着材であって、
酸化マグネシウム焼結体が、BET比表面積が5m/g以上、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.1〜0.5μm、レーザ回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積10%粒子径(D10)と体積基準の累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が10以下である、純度99.5質量%以上の酸化マグネシウム微粒子を原料とする、プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。
【請求項2】
酸化マグネシウム焼結体が、さらに、炭酸カルシウム、及び/又は水酸化カルシウムを原料とする、請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。
【請求項3】
酸化マグネシウム微粒子の純度が、99.9質量%以上である、請求項1又は2記載のプラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。
【請求項4】
酸化マグネシウム微粒子のFe、Ti、Ni、Cr、Mo及びMnの合計含有量が、500質量ppm以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載のプラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。
【請求項5】
酸化マグネシウム微粒子の塩素含有量が、500質量ppm以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載のプラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。
【請求項6】
酸化マグネシウム微粒子の体積平均粒子径(Dv)と数平均粒子径(Dn)との比Dv/Dnが1〜10である、請求項1〜5のいずれか1項記載のプラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。

【公開番号】特開2012−72428(P2012−72428A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217159(P2010−217159)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000108764)タテホ化学工業株式会社 (50)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】