説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】高歪点薄板ガラス基板を用いて真空蒸着法によりパネル構成要素を形成する場合の基板の反りを防止して、高品質な画像表示が可能で且つ軽量なプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】基板1、2として高歪点薄板ガラス基板25を用い、高歪点薄板ガラス基板をその周縁部で基板保持具22、23によって支持することにより、高歪点薄板ガラス基板の面を水平方向に保持し、水平方向に保持した高歪点薄板ガラス基板の上面側に、高歪点薄板ガラス基板と同様の平面形状を有する補助基板26を接触させて載置し、その状態で高歪点ガラス基板の下面側に対して真空蒸着法によりパネル構成要素を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大画面で、薄型、軽量のディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルには、大別して、駆動方法についてAC型とDC型があり、放電形式については面放電型と対向放電型の2種類がある。高精細化、大画面化および製造の簡便性から、現状では、プラズマディスプレイパネルの主流は、3電極構造の面放電型のものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
面放電型のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPとも言う)の構造を、図3に示す。このPDPは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを有し、そして前面基板1上には、表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うように誘電体層5が形成され、誘電体層5上には保護層6が形成されている。走査電極3と維持電極4はそれぞれ、透明電極3a、4aと、金属材料からなるバス電極3b、4bとから構成される。前面基板1上に以上の要素が設けられることにより、前面板7が構成されている。
【0004】
また、背面基板2上には、絶縁体層8で覆われた複数のデータ電極9が設けられ、その絶縁体層8上には井桁状の隔壁10が設けられている。また、データ電極9の上部領域に相当する絶縁体層8の表面および隔壁10の側面には蛍光体層11が設けられている。背面基板2上に以上の要素が設けられることにより、背面板12が構成されている。
【0005】
上記構成の前面板7と背面板12とは、走査電極3および維持電極4とデータ電極9とが交差する部分にそれぞれ単位発光領域が形成されるように対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。蛍光体層11には、放電により赤色、緑色、青色に発光する蛍光体が用いられ、放電により発生する波長の短い真空紫外光によって蛍光体を励起し、赤色、緑色、青色の放電セルからそれぞれ赤色、緑色、青色の可視光を発することによりカラー表示を行っている。
【特許文献1】特開2003−131580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、前面基板1および/または背面基板2としては、プラズマディスプレイパネルを製造するプロセスでの熱履歴との整合を図る必要性から、歪点600℃以上のガラス基板、いわゆる高歪点ガラス基板が使用されており、そしてこの高歪点ガラス基板の厚みは、約2.8mmであった。
【0007】
パネルの重量を軽減するためには、2.8mmより薄い、例えば1.8mmや1.1mmの厚みの高歪点ガラス基板(以下、高歪点薄板ガラス基板と呼ぶ)を使用することが有効であるが、このような板厚の場合、例えば保護層6を形成する際に前面基板1が反ってしまい、良好に保護層6を形成できないばかりか、最悪の場合、前面基板1が割れてしまうという課題が発生する場合があった。
【0008】
すなわち、保護層6は、放電時の誘電体層5へのダメージを抑制するとともに、放電による二次電子放出を高める目的のため、MgO等の二次電子放出係数の高い材料を用いて、真空蒸着法等の形成方法で成膜して形成されるのが一般である。図4に、一般的な真空蒸着装置の概略図を示す。
【0009】
真空蒸着装置は、前面基板である処理基板13を予備加熱する加熱室14と、MgO等の材料を蒸着する蒸着室15と、処理基板13を冷却する冷却室16からなる。加熱室14および蒸着室15には、ヒーター17が設けられている。蒸着室15には、MgO等の蒸着材料18が設置されたリングハース19が設置され、またEBガン20が設置されている。
【0010】
処理基板13は、成膜範囲を制限する蒸着マスク22上に設置され、さらに蒸着マスク22ごと基板搬送トレー23に設置されて、基板搬送トレー23ごと搬送ローラー24上を搬送される。それにより、処理基板13を、加熱室14、蒸着室15、および冷却室16を通過させて、その間に蒸着処理が行われる。
【0011】
加熱室14では、処理基板13を蒸着時の温度に近い温度までヒーター17で加熱することで、物理吸着している水分を除去する、いわゆる脱ガスを行う。蒸着室15では、MgO等の蒸着材料18が設置されたリングハース19上にEBガン20からの電子ビーム21を照射して、蒸着材料からなる蒸発粒子を発生させ、リングハース19上を通過する処理基板13に蒸発粒子を入射させることで、処理基板13の露出表面上に蒸着材料の薄膜を形成する。
【0012】
この時、処理基板13がヒーター17により面内均一に加熱されることで、入射した蒸着粒子が均一に処理基板13上に成膜される。冷却室16では、加熱された処理基板13を次工程に受け渡すために支障のない温度まで冷却する。以上の方法で誘電体保護層を形成することが一般的である。
【0013】
しかしながら前述したような、前面基板として高歪点薄板ガラス基板を用いてプラズマディスプレイパネルを製造する場合には、保護層を前面基板に真空蒸着法によって形成する際に反りが発生してしまう場合があった。すなわち図5Aに示すように、前面基板として従来の厚みの高歪点ガラス基板を用いた場合に比べ、図5B、図5Cに示すように、高歪点薄板ガラス基板25を用いた場合には、基板温度の昇温時および降温時に、基板25の反りが激しくなるというものである。これは以下のことが原因と考えられる。
【0014】
すなわち、基板保持具である基板搬送トレー23上に、蒸着マスク22を介して設置した高歪点薄板ガラス基板板25は、温度勾配の激しい昇温もしくは降温過程において蒸着マスク22と接する部分と接しない部分で大きな温度差が生じる。これは、高歪点薄板ガラス基板25を用いることで、従来の厚みに比べ熱容量が小さく伝熱が速いため、蒸着マスク22に接する部分は基板搬送トレー23および蒸着マスク22の温度状態を維持しやすく、接しない部分は雰囲気の温度を伝達しやすいためであり、この結果、基板の面内での温度差が大きくなる。そして、基板面内で温度差が大きくなると、高温部と低温部での熱膨張量もしくは熱収縮量の差が大きくなるため、基板に反りが発生する、というものである。
【0015】
基板に反りが発生すると、蒸着時の蒸発粒子の入射角度および蒸発源と高歪点薄板ガラス基板間の距離が面内で異なってくるため、面内で同一品質の誘電体保護膜が生成できなくなり、プラズマディスプレイパネルとして、面内での均一な表示品質を維持できなくなる。また、基板面内で熱膨張量もしくは熱収縮量の差が大きくなると熱割れの可能性も発生するなど、歩留まりを低下させる要因となる。
【0016】
一方、温度差を緩和するために温度勾配を緩やかにするという方法を採ると、生産タクトが長くなり、生産エネルギーが増大してしまう。
【0017】
本発明は、高歪点薄板ガラス基板を用いて真空蒸着法によりパネル構成要素を形成する場合の基板の反りを防止して、高品質な画像表示が可能で且つ軽量なプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、放電空間を挟んで対向する一対の基板のうち、一方の前記基板上には、放電ギャップを介して互いに対向する表示電極の対が複数組配置されるとともに、前記表示電極対を被膜する誘電体層が形成され、他方の前記基板上には、前記表示電極と直交するように複数のデータ電極が配置されるとともに、前記データ電極の上部領域に蛍光体層が付設され、前記放電空間内に放電ガスが封入されるとともに、前記データ電極と前記表示電極対とが交差する部分の前記放電空間にそれぞれ単位発光領域が形成されるプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の製造方法は、前記基板として高歪点薄板ガラス基板を用い、前記高歪点薄板ガラス基板をその周縁部で基板保持具によって支持することにより、前記高歪点薄板ガラス基板の面を水平方向に保持し、前記水平方向に保持した前記高歪点薄板ガラス基板の上面側に、前記高歪点薄板ガラス基板と同様の平面形状を有する補助基板を接触させて載置し、その状態で前記高歪点ガラス基板の下面側に対して真空蒸着法によりパネル構成要素を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来に比べ厚みの薄いガラス基板を用いることが可能となり、それにより、高品質な画像表示が可能で、且つ軽量なプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記構成の本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記高歪点薄板ガラス基板と前記補助基板との熱膨張係数が、室温から真空蒸着処理を行う処理温度までの温度範囲において、略同一となるように、前記補助基板を選択することが好ましい。
【0022】
また、前記補助基板と前記高歪点薄板ガラス基板とを合わせた板厚を、2.8mm±0.2mmの範囲に設定することが好ましい。
【0023】
以下、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルの製造方法について、図1〜図2を参照して説明する。ただし、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0024】
プラズマディスプレイパネルの構造は、図3を参照して説明した従来例のものと同様である。ただし、パネルの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものや、ブラックストライプを形成したものであってもよい。
【0025】
本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法においては、前面基板1および/または背面基板2としては、例えば厚みが1.8mmや1.1mmの高歪点薄板ガラス基板が使用される。本実施の形態において、高歪点薄板ガラス基板を用いたPDPは以下のように製造される。
【0026】
まず、例えばフロート法により形成された、厚み2.8mm以下、例えば約1.1mmの厚みを有する高歪点薄板ガラス基板を前面基板1として準備する。この前面基板1上にイオンスパッタ法等によりITO膜を成膜し、その上にレジストを形成して所望形状にパターニングしたあと、エッチングしてITOパターンを形成し、レジストを剥離して透明電極3a、4aを形成する。なお、透明電極材料としては、ITO以外の透明電極、例えばSnO2やZnO等の金属酸化膜を主体とした材料によるものも用いることができる。
【0027】
次に、バス電極3b、4bを形成する。黒色顔料や酸化ルテニウムなどの黒色材料とガラスフリットと樹脂を少なくとも含有する感光性黒色ペーストを用い、スクリーン印刷法等により成膜して100℃程度の温度で乾燥した後、少なくともAg粉末とガラスフリットと樹脂を含有する感光性Agペーストを用い、スクリーン印刷法等により成膜して100℃程度の温度で乾燥する。その後、所望のパターンを有する露光マスクを介して紫外光を照射した後、現像処理によりバス電極パターンを形成する。さらに、600℃程度の温度で焼成して、ペースト中の樹脂成分をその気化温度以上に昇温させることでペースト中から除去する、いわゆる脱バイを行うと共にガラスフリットを溶融させる。以上の工程により、バス電極3b、4bを形成する。
【0028】
なお、Ag層からなるバス電極は1層でなくともよく、複数層を積層しても良い。また、形成方法はスクリーン印刷法でなくともよく、構成要素が形成されたシートを用いてラミネート法により形成しても良い。また、バス電極材料を用いてインクジェット法などの直接描画法により形成しても良い。また、Ag以外にもCuなどを導電層とする材料を用いてスパッタやエッチングなどの方法により作成しても良い。
【0029】
次に、誘電体層5を形成する。まず、PbO−B23−SiO2系やZnO−B23−SiO2系などのガラスを主剤とした材料からなる誘電体ペーストを、印刷法やリバースコート法やダイコート法などにより塗布形成し、100℃程度の温度で乾燥したあと、600℃程度の温度で焼成することにより、誘電体層前駆体中の樹脂成分を脱バイすると共にガラスフリットを溶融させてることで誘電体層5を形成する。なお、誘電体層5は複数層に分けて形成しても良い。また、誘電体層5はシート形成された誘電体層前駆体をラミネート法によって貼り付けて前記と同様に焼成して形成しても良い。
【0030】
なお、バス電極3b、4bと誘電体層5とは、それぞれの工程で焼成を行わずに、いずれかの組合せもしくはすべてを乾燥状態で形成した後に一括で焼成しても良い。
【0031】
次に、保護層6を形成する。保護層6は、MgOを真空蒸着法により成膜することで形成する。図1に真空蒸着方法の概略図を示す。真空蒸着装置の構成は図4に示した従来例の場合と同様であり、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0032】
まず、誘電体層5まで形成した状態の前面基板である高歪点薄板ガラス基板25を誘電体層形成面側を下側にして、蒸着マスク22上に設置し、蒸着マスク22ごと基板搬送トレー23に設置する。
【0033】
次に、図2に示すように、高歪点薄板ガラス基板25と材質が同じ板厚約1.8mmの高歪点ガラスからなる補助基板26を、高歪点薄板ガラス基板の上面側に設置する。次に、高歪点薄板ガラス基板25、補助基板26および蒸着マスク22が設置された基板搬送トレー23を加熱室14に搬送し、真空引きすると同時にヒーター17により約250℃まで加熱して水分などを脱ガスする。
【0034】
次に、基板搬送トレー23を蒸着室15に一定速度で搬送する。この時蒸着室15内では、MgOの蒸着材料18がEBガン20からの電子ビーム21により蒸発粒子となり、リングハース19上空へ向けて蒸発している。それにより、上空で搬送されている高歪点薄板ガラス基板25における、蒸着マスク22より露出した部分にMgO薄膜が形成される。なお蒸着室15内は、電子ビーム21を安定に照射するために酸素などのガスを注入して、約3×10-2Paの圧力に調節すると共に、ヒーターにより基板温度が約350℃となるように加熱されている。次に、一定速度で蒸着室15内を通過した後の基板搬送トレー23は、冷却室16内で冷却される。なお、冷却室16は複数のゾーンに分かれていて、次工程に受け渡すときに約80℃以下に冷却されている。
【0035】
以上のようにして前面板7が完成する。なお、以上の工程は、前面板を個々に製造するように行っても、あるいは、大型基板上に複数の構成要素を同時に形成して、レーザー割断などの方法により割断して個々の前面板7としても良い。
【0036】
次に背面板12の形成方法について説明する。まず、例えばフロート法により形成された、厚み2.8mm以下の、例えば約1.1mmの厚みを有する高歪点薄板ガラス基板を背面基板2として準備する。
【0037】
次にデータ電極9を形成する。Ag粉末とガラスフリットと樹脂を少なくとも含有する感光性Agペーストを用い、スクリーン印刷法等により成膜し、100℃程度の温度で乾燥する。その後、所望のパターンを有する露光マスクを介して紫外光を照射した後、現像処理によりデータ電極パターンを形成する。さらに、600℃程度の温度で焼成してペースト中の樹脂成分を脱バイすると共にガラスフリットを溶融させることで、データ電極9を形成する。なお、データ電極は1層でなくともよく複数層を積層しても良い。また、形成方法はスクリーン印刷法でなくともよく、構成要素が形成されたシートを用いてラミネート法により形成しても良い。また、データ電極材料を用いてインクジェット法などの直接描画法により形成しても良い。また、Ag以外にもCuなどを導電層とする材料を用いてスパッタやエッチングなどの方法により作成しても良い。
【0038】
次に絶縁体層8を形成する。PbO−B23−SiO2系やZnO−B23−SiO2系などのガラスを主剤とし、TiO2やAl23等のフィラーを含有したペーストをスクリーン印刷法などの手法により成膜し、100℃程度の温度で乾燥する。その後、600℃程度の温度で焼成することにより、ペースト中の樹脂成分を脱バイすると共にガラスフリットを溶融させることで絶縁体層8を形成する。なお、絶縁体層8はシート形成された誘電体層前駆体を、ラミネート法によって貼り付けて上述の工程と同様に焼成して形成しても良い。
【0039】
次に隔壁10を形成する。Al23等のフィラーとガラスフリットを主剤とするペーストをリバースコート法や印刷法やダイコート法などにより成膜し、100℃程度の温度で乾燥する。その後、成膜した隔壁膜上に耐磨耗性を有したレジストを形成して、所望の隔壁パターンを有する露光マスクを介してレジストに紫外光を照射した後、現像処理によりレジストをパターニングする。さらに、サンドブラスト法等により不要部分を除去してパターニングした後、レジストを剥離し、その後550℃程度の温度で焼成することにより隔壁膜中の樹脂成分を脱バイすると共にガラスフリットを溶融させることで隔壁を形成する。なお、前記ペーストとして感光性を有する材料を用い、成膜した隔壁膜に直接所望の隔壁パターンを有する露光マスクを介して紫外光を照射した後、現像処理によりパターニングして焼成する方法を採用することもできる。また、前記ペーストを主とする材料を用いて、隔壁パターンが形成されたモールド内にペーストを充填し、型押し転写によって隔壁前駆体を形成したあと前記方法で焼成を行って隔壁を形成しても良い。
【0040】
なお、データ電極と絶縁層と隔壁とは、それぞれの工程で焼成を行わずに、いずれかの組合せもしくはすべてを乾燥状態で形成した後に、一括して焼成しても良い。
【0041】
次に蛍光体層11を形成する。樹脂成分及び溶剤等と赤色、緑色、青色の各色蛍光体粉末とからなる各色蛍光体ペーストを、印刷法により隔壁の間の所望位置に塗布し、100℃程度の温度で乾燥する工程を各色順番に行って3色の蛍光体前駆体を形成する。その後、450℃程度の温度で焼成して、樹脂成分を脱バイして蛍光体層を形成する。なお、塗布方法はディスペンサー法やラインジェット法等の方法でも良い。
【0042】
次に、樹脂成分及び溶剤等とガラスフリットを主体とするペーストからなるシールフリットを、ディスペンサー法や印刷法などの方法により、前面板7および/または背面板12の周縁部に塗布(図示せず)し、100℃程度の温度で乾燥する。その後、450℃程度の温度で仮焼成を行って、シールフリット中の樹脂を脱バイする。
【0043】
なお、蛍光体層11とシールフリットは、それぞれを乾燥状態で形成した後に一括して焼成しても良い。
【0044】
以上のようにして背面板12が完成する。なお、背面板12は前面板7と同様、個々に作成しても、大型基板上にまとめて作成し、その後割断しても良い。
【0045】
以上のようにして形成した前面板および背面板を所望の位置でアライメントを行いながら貼り合わせ、500℃程度の温度で焼成することにより、シールフリットを溶融させて前面板と背面板を封着すると同時に、貼り合わされた内部を真空排気して不要なガスを除去した後に、Ne-Xe等の放電ガスを53200Pa(400Torr)〜79800Pa(600Torr)の圧力で封入してプラズマディスプレイパネルが完成する。
【0046】
以上のように、パネルの重量を軽減するためには、2.8mmより薄い、例えば1.8mmや1.1mmの厚みの、高歪点薄板ガラス基板を使用することが有効である。しかし、このような板厚の場合、例えば保護層6を形成する際に前面基板1が反ってしまい、良好に保護層6を形成できないばかりか、最悪の場合、前面基板が割れてしまうという課題が発生する場合があったことは、「発明が解決しようとする課題」の項に説明したとおりである。
【0047】
これに対して、上述の本発明の実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの製造方法によれば、高歪点薄板ガラス基板の蒸着工程における反りの発生を防止することができる。すなわち、前面基板に保護層を形成する際に、補助基板26を前面基板である高歪点薄板ガラス基板25の膜形成面とは逆の面に接触させて真空蒸着することにより、成膜時のそりを大幅に抑制することが可能となる。これは、補助基板26により高歪点薄板ガラス基板25の熱容量を擬似的に増大することとなり、この結果、昇温時もしくは降温時の基板面内温度差が緩和され、それにより基板の反りを抑制することが可能となるものであると考えられる。
【0048】
また、前面板の高歪点薄板ガラス基板25と補助基板26の熱膨張係数について、室温から真空蒸着処理を行う処理温度までの温度範囲において、略同一となるように、前記補助基板を選択しておくことにより、処理温度における補助基板26の熱膨張量もしくは熱収縮量は、面接触させている高歪点薄板ガラス基板25の熱膨張量もしくは熱収縮量と略同一となるため、処理中に熱膨張、熱収縮する際にも高歪点薄板ガラス基板25と補助基板26とが熱膨張差により擦れ合うことによる傷等の発生が大幅に抑制され、基板割れの発生を防ぐことができる。
【0049】
また、前面基板である高歪点薄板ガラス基板と補助基板とを合わせた板厚を約2.8mmにすると、従来、一般的に使用されている高歪点ガラス基板の板厚と略同一とすることができるため、従来の真空蒸着装置の構造、蒸着条件などの変更を行うことなく同一品質のパネル構成要素を形成することが可能となる。
【0050】
以上のとおり、本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの製造方法によれば、従来に比べ板厚の薄い高歪点薄板ガラス基板である前面基板へ保護膜を真空蒸着法により形成する際においても、基板面内温度差によるものと考えられる反りの発生、基板の割れを大幅に抑制することが可能となる。その結果、前面基板面内に均一に保護膜を形成することが可能となり、高品質な画像表示が可能で且つ軽量なプラズマディスプレイパネルを実現することができる。
【0051】
なお以上の説明においては、前面基板に保護膜としてMgOを真空蒸着する場合を例として説明したが、これに限るものではなく、ガラス基板に、その周縁部を保持し、ガラス基板の温度が上昇する状態で成膜する成膜方法に対しては同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように本発明は、表示デバイスとして知られているプラズマディスプレイパネルを提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルの製造方法を説明するための概略図
【図2】図1における高歪点薄板ガラス基板の保持状態を示す断面図
【図3】プラズマディスプレイパネルの概略構成を示す斜視図
【図4】従来例のプラズマディスプレイパネルの製造方法を説明するための概略図
【図5】同製造方法において高歪点薄板ガラス基板を使用した時の課題を示す断面図
【符号の説明】
【0054】
1 前面基板
2 背面基板
3 走査電極
4 維持電極
3a、4a 透明電極
3b、4b バス電極
5 誘電体層
6 保護層
7 前面板
8 絶縁体層
9 データ電極
10 隔壁
11 蛍光体層
12 背面板
13 処理基板
14 加熱室
15 蒸着室
16 冷却室
17 ヒーター
18 蒸着材料
19 リングハース
20 EBガン
21 電子ビーム
22 蒸着マスク
23 基板搬送トレー
24 搬送ローラー
25 高歪点薄板ガラス基板
26 補助基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を挟んで対向する一対の基板のうち、一方の前記基板上には、放電ギャップを介して互いに対向する表示電極の対が複数組配置されるとともに、前記表示電極対を被膜する誘電体層が形成され、他方の前記基板上には、前記表示電極と直交するように複数のデータ電極が配置されるとともに、前記データ電極の上部領域に蛍光体層が付設され、前記放電空間内に放電ガスが封入されるとともに、前記データ電極と前記表示電極対とが交差する部分の前記放電空間にそれぞれ単位発光領域が形成されるプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記基板として高歪点薄板ガラス基板を用い、
前記高歪点薄板ガラス基板をその周縁部で基板保持具によって支持することにより、前記高歪点薄板ガラス基板の面を水平方向に保持し、
前記水平方向に保持した前記高歪点薄板ガラス基板の上面側に、前記高歪点薄板ガラス基板と同様の平面形状を有する補助基板を接触させて載置し、
その状態で前記高歪点ガラス基板の下面側に対して真空蒸着法によりパネル構成要素を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記高歪点薄板ガラス基板と前記補助基板との熱膨張係数が、室温から真空蒸着処理を行う処理温度までの温度範囲において、略同一となるように、前記補助基板を選択した請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記補助基板と前記高歪点薄板ガラス基板とを合わせた板厚を、2.8mm±0.2mmの範囲に設定する請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−10195(P2008−10195A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176928(P2006−176928)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(503411576)株式会社次世代PDP開発センター (65)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】