プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
【課題】水素ラジカルを被処理基板に効率良く作用させて効率的なプラズマ処理を行えるとともに、水素イオンによる誘電体窓のダメージ及びプラズマからの入熱による高周波コイルのダメージを軽減することのできるプラズマ処理装置等を提供する。
【解決手段】水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させて処理を施すプラズマ処理装置であって、高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、プラズマ生成室とプラズマ処理室とを隔てる隔壁部材は、水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、板状部材の開口は夫々他の板状部材の開口と重ならないようにずらして配置して構成されている。
【解決手段】水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させて処理を施すプラズマ処理装置であって、高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、プラズマ生成室とプラズマ処理室とを隔てる隔壁部材は、水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、板状部材の開口は夫々他の板状部材の開口と重ならないようにずらして配置して構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野等においては、半導体ウエハ等の基板に、成膜処理やエッチング処理等の処理を行う装置として、プラズマを用いたプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
上記のプラズマ処理装置において、水素ガスのプラズマを発生させ、この水素ガスのプラズマ中の水素ラジカルを被処理基板に作用させて、レジストのアッシングや、低誘電率膜のエッチングを行う技術が知られている。このように水素ガスのプラズマを使用する場合、平行平板型などの容量結合型のプラズマ処理装置を使用すると、電極が水素プラズマにより大きなダメージを受ける。このため、誘導結合プラズマ(ICP)を生成する誘導結合型のプラズマ処理装置が使用されている。
【0004】
このような誘導結合型のプラズマ処理装置として、円筒状のプラズマ発生室の側壁部にコイルスプリング状の高周波コイルを設け、このプラズマ発生室と、処理を行う半導体ウエハ等の被処理基板が配置された処理室とを、貫通孔を有する複数の遮蔽板(隔壁部材)によって仕切り、プラズマ中のラジカルのみを選択的に基板に作用させるプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上記のように、側壁部に高周波コイルを設けた円筒状のプラズマ発生室と、処理室とを遮蔽板によって仕切った構成のプラズマ処理装置では、側壁部に高周波コイルを設ける都合上、プラズマ発生室の形状が縦長となる。そして、この縦長のプラズマ発生室で発生させたプラズマ中からラジカルのみを移動させて被処理基板に作用させると、ラジカルの移動距離が長くなり、効率良くラジカルを被処理基板に作用させ、効率的に処理を行うことが難しい。
【0006】
このため、効率的に水素ラジカルによる処理を行うという点では、処理室の天井部に誘電体窓を設け、ここに平面状の高周波アンテナを設けたプラズマ処理装置を用いることが好ましい。しかしながら、このような構成のプラズマ処理装置では、誘電体窓に平面状の高周波アンテナを近接して配置する必要がある。このため、高周波アンテナの電圧によってプラズマ中のイオンが引き付けられ誘電体窓が損傷を受けるという問題と、プラズマからの入熱により高周波アンテナの温度が上昇し、高周波アンテナを冷却するための冷却機構が必要となるという問題が生じる。
【0007】
なお、処理室の天井部に平面状の高周波アンテナを設けたプラズマ処理装置において、高周波アンテナの両端を開放するとともに、中点又はその近傍を接地し、高周波の1/2波長で共振するようにして、加速されたイオンによる被処理基板のダメージを抑制するようにしたプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−16453号公報
【特許文献2】特開2010−153274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したとおり、従来においては、水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理する際に、効率的に水素ラジカルを被処理基板に作用させることが困難となる問題があった。また、誘電体窓が水素イオンによってダメージを受けるという問題や、プラズマからの入熱により高周波アンテナがダメージを受けるため、冷却機構が必要になる等の問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、水素ラジカルを被処理基板に効率良く作用させて効率的なプラズマ処理を行えるとともに、水素イオンによる誘電体窓のダメージを軽減することができ、かつ、高周波アンテナのための冷却機構を不要とすることのできるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、を備え、前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のプラズマ処理方法の一態様は、水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、を備え、前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されているプラズマ処理装置を用いて前記被処理基板にプラズマ処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水素ラジカルを被処理基板に効率良く作用させて効率的なプラズマ処理を行えるとともに、水素イオンによる誘電体窓のダメージを軽減することができ、かつ、高周波アンテナのための冷却機構を不要とすることのできるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の断面概略構成を示す図。
【図2】図1のプラズマ処理装置の高周波アンテナの概略構成を示す図。
【図3】図2の高周波アンテナにおける電圧と電流の関係を示す図。
【図4】図1のプラズマ処理装置の要部断面構成を模式的に示す図。
【図5】図1のプラズマ処理装置の要部断面構成を模式的に示す図。
【図6】誘電体窓のスパッタ量を測定した結果を示すグラフ。
【図7】エッチングレートを測定した結果を示すグラフ。
【図8】エッチングレートを測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置1の構成を模式的に示す図である。同図に示すように、プラズマ処理装置1は、処理チャンバー10を具備している。処理チャンバー10は、表面を陽極酸化処理されたアルミニウム等から略円筒状に構成されている。処理チャンバー10の内側の底部には、半導体ウエハW等の被処理基板を載置するための載置台15が配設されている。載置台15の基板載置面には、被処理基板を吸着するための図示しない静電チャック等が設けられている。
【0017】
処理チャンバー10の天井部には、載置台15と対向するように、石英又はセラミックス等の誘電体(絶縁体)材料からなる誘電体窓13が設けられている。誘電体窓13は、円板状に形成されており、処理チャンバー10の天井部に形成された円形の開口を気密に閉塞するように配設されている。
【0018】
処理チャンバー10の内部には、載置台15が配置された下方のプラズマ処理室20と、上方のプラズマ生成室30とを仕切るように、隔壁部材40が配設されている。この隔壁部材40の詳細な構成については、後述する。
【0019】
プラズマエッチング装置1には、処理チャンバー10のプラズマ生成室30内に水素ガスを含む処理ガスを供給するためのガス供給部120が設けられている。処理チャンバー10の側壁部にはガス導入口121が形成されており、ガス導入口121には、ガス供給配管123を介してガス供給源122が接続されている。ガス供給配管123の途中には、処理ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ124、開閉バルブ126が介挿されている。ガス供給源122からの処理ガスは、マスフローコントローラ124により所定の流量に制御されて、ガス導入口121から処理チャンバー10のプラズマ生成室30内に供給される。
【0020】
図1では説明を簡単にするため、ガス供給部120を一系統のガスラインで表現しているが、ガス供給部120は単一のガス種の処理ガスを供給する場合に限られるものではなく、複数のガス種を処理ガスとして供給するものであってもよい。また、ガス供給部120は、処理チャンバー10の側壁部からガスを供給する構成のものに限られず、処理チャンバー10の天井部からガスを供給する構成であってもよい。この場合には、例えば、誘電体窓13の例えば中央にガス導入口を形成し、そこからガスを供給するようにしてもよい。
【0021】
処理チャンバー10の底部には、処理チャンバー10内を排気するための排気部130が排気管132を介して接続されている。排気部130は例えば真空ポンプ等によって構成され、処理チャンバー10内を所定の圧力まで減圧し得るようになっている。処理チャンバー10の側壁部には、ウエハ搬出入口30が形成されており、このウエハ搬出入口30には、ウエハ搬出入口30を気密に閉塞し、開閉自在とされたゲートバルブ31が設けられている。
【0022】
処理チャンバー10の天井部の外側には、誘電体窓13の外側面(上側面)に対向するように平面状の高周波アンテナ140が配置されており、この高周波アンテナ140を覆うように略筒状(本実施形態では円筒状)のシールド部材160が設けられている。高周波アンテナ140は、図2に示すように、例えば銅、アルミニウム、ステンレスなどの導体で構成された渦巻きコイル状のアンテナ素子142を、複数の挟持体144で挟持して構成されている。各挟持体144は、棒状に形成されており、3つの挟持体144が、アンテナ素子142の中央付近からその外側に向けて放射状に延在するように配置されている。
【0023】
アンテナ素子142には、高周波電源150が接続されている。高周波電源150からアンテナ素子142に所定の周波数(例えば27.12MHz)の高周波を所定のパワーで供給することにより、処理チャンバー10内のプラズマ生成室30内に誘導磁界が形成される。これにより、プラズマ生成室30内に導入された水素ガスを含む処理ガスが励起され、プラズマが生成される。このプラズマ生成室30内に励起されたプラズマ中のイオンは、隔壁部材40によって遮蔽されてプラズマ処理室20内に進入することが阻止され、プラズマ中の水素ラジカルのみがプラズマ処理室20内に移動して水素ラジカルによる半導体ウエハWの処理が行われる。
【0024】
高周波電源150から出力される高周波電力の周波数は、27.12MHzに限られるものではない。例えば13.56MHz、60MHzなどであってもよい。但し、高周波電源150から出力される高周波電力の周波数に応じてアンテナ素子142の電気的長さを調整する必要がある。
【0025】
シールド部材160は、処理チャンバー10の天井部に固定された略円筒状の下部シールド部材161と、この下部シールド部材161の外側にスライド自在に設けられた上部シールド部材162とで構成されている。上部シールド部材162は、上面が閉塞し下面が開口する略円筒状に形成されている。上部シールド部材162は、処理チャンバー10の側壁部に設けられたアクチュエータ165によって上下にスライド駆動するようになっている。また、高周波アンテナ140も、アクチュエータ145によって高さ調整ができるようになっている。
【0026】
プラズマ処理装置1は、制御部(全体制御装置)200を具備しており、この制御部200によってプラズマ処理装置1の各部が制御されるようになっている。また、制御部200には、オペレータがプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる操作部210が接続されている。
【0027】
さらに、制御部200には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理を制御部200の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要なレシピなどが記憶された記憶部220が接続されている。
【0028】
記憶部220には、半導体ウエハWの処理を実行するための複数のレシピの他、処理チャンバー10内のクリーニング処理など必要な処理を行うためのレシピなどが記憶されている。なお、これらのレシピはハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく、またCD−ROM、DVD等の記憶媒体に収容された状態で記憶部220の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0029】
制御部200は、操作部210からの指示等に基づいて所望のレシピを記憶部220から読み出して各部を制御することで、プラズマ処理装置1での所望の処理を実行する。また、操作部210からの操作によりレシピを編集できるようになっている。
【0030】
つぎに、前述した隔壁部材40の詳細な構成について説明する。隔壁部材40は、図4に示すように、多数のスリット状の開口41a、42aを有する複数(本実施形態では2つ)の板状部材41、42を、スペーサ43を挟むことによって、所定間隔を設けて重ねた構成とされている。また、板状部材41の開口41aと、板状部材42の開口42aとは位置が重ならないように配置されている。板状部材41、42は、紫外線(UV)特に真空紫外領域の波長の紫外線が通過しない絶縁材料、例えば、石英又はセラミックス(例えば、アルミナ)等から構成されている。なお、図4に示すように、プラズマからの紫外線がプラズマ生成室30側(図4中上側)の板状部材41に照射されると蛍光として紫外線が発せられるが、この紫外線は、プラズマ処理室20側(図4中下側)の板状部材42によって遮蔽される。
【0031】
図4に示すように、隔壁部材40の板状部材41、42は、絶縁部材から構成されており表面がマイナスに帯電し、板状部材41、42の近傍にはプラス電位のシースが形成される。これによって、プラズマ生成室30で生成されたプラズマ中のイオン(例えば、水素イオン)が遮蔽される。そして、開口41a、42aを介して電気的に中性な水素ラジカルのみを選択的に通過させ、プラズマ処理室20内に導入することができるようになっている。イオンを遮蔽する作用を高めるためには、板状部材41、42の厚さ(図4に示すT1)を厚くすることが好ましく、また、開口41a、42aの幅(図4に示すW)を小さくして開口面積を小さくすることが好ましい。しかしながら、厚さT1を厚くし過ぎたり、幅Wを小さくして開口面積を小さくし過ぎると、水素ラジカルの通過量が少なくなってしまう。
【0032】
実際に、隔壁部材40の効果を確認するため、表面にアモルファスシリコン膜を形成した半導体ウエハWにプラズマ処理を行ったところ、板状部材41、42の厚さT1を2mm、開口41a、42aの幅を4mmとした場合、アモルファスシリコン膜に欠落が生じた。一方、板状部材41、42の厚さT1を5mm、開口41a、42aの幅を2mmとして同様なプラズマ処理を行ったところ、アモルファスシリコン膜に欠落は生じなかった。したがって、板状部材41、42の厚さT1は、3〜10mm程度、開口41a、42aの幅Wは、1〜3mm程度とすることが好ましい。本実施形態では、板状部材41、42の厚さT1は5mm、開口41a、42aの幅Wは2mmとなっている。スペーサ43の厚み(図4に示すT2)、すなわち板状部材41と板状部材42との間隔は、3〜10mm程度とすることが好ましく、本実施形態では5mmとなっている。
【0033】
なお、隔壁部材40によって確実にイオンをトラップするためには、誘電体窓13と隔壁部材40との間のプラズマ生成室30内の空間でプラズマを発生させる必要がある。このため、誘電体窓13のプラズマ生成室30側の面と隔壁部材40(板状部材41)のプラズマ生成室30側の面との間の距離、つまり図4に示す距離d1は、ある程度大きくする必要がある。一方、距離d1を大きくし過ぎるとプラズマと半導体ウエハWの距離が離れることによって効率的に水素ラジカルを半導体ウエハWに作用させることが難しくなる。このため、誘電体窓13のプラズマ生成室30側の面と隔壁部材40のプラズマ生成室30側の面との間の距離d1は、50mm〜110mmとすることが好ましい。
【0034】
次に、高周波アンテナ140の具体的な構成について説明する。高周波アンテナ140は、図2に示すようにアンテナ素子142の両端、すなわち外側端部142aと内側端部142bを自由端(電気的にフローティングの状態)とするとともに、巻き方向の長さの中点又はその近傍(以下、単に「中点」という。)を接地点(グラウンド)142cとし、1/2波長の定在波を形成できるように構成されている。
【0035】
すなわち、アンテナ素子142は、高周波電源150から供給される所定の周波数(例えば27.12MHz)を基準として、その基準周波数の1/2波長で共振(半波長モードで共振)するように、長さ、巻径、巻回ピッチ、巻数が設定されている。例えばアンテナ素子142の電気的長さは、基準周波数の1/2倍によって共振する長さ、すなわち基準周波数である27.12MHzにおける1波長の1/2倍の長さである。なお、アンテナ素子142は、パイプ状、線状、板状などいずれの形状で構成してもよい。
【0036】
高周波電源150からの高周波を供給する給電ポイント142dは、接地点142cよりも内側であっても外側であってもよく、例えばインピーダンスが50Ωとなる点であることが好ましい。給電ポイントは可変にしてもよい。この場合、モータなどにより給電ポイントを自動で変更できるようにしてもよい。
【0037】
このようなアンテナ素子142によれば、高周波電源150から基準周波数(例えば27.12MHz)の高周波を高周波アンテナ140に印加して半波長モードで共振させると、ある瞬間では図3に示すようにアンテナ素子142に印加される電圧Vは、中点(接地点)がゼロで、一方の端部が正のピークとなり、他方の端部が負のピークとなるような波形になる。これに対して、アンテナ素子142に印加される電流Iは、電圧波形と90度位相がずれるため、中点(接地点)が最大で、両端部がゼロとなるような波形になる。
【0038】
このとき、高周波の正負のサイクル毎に互いに瞬時容量が逆方向に増減するので、アンテナ素子142に印加される電圧Vと電流Iの波形はそれぞれ図3に示すようになる。すなわち、電圧Vについてはアンテナ素子142上に発生する正負の電圧成分によって相殺されて平均電圧が非常に小さくなるような半波長モードの定在波が形成される。これに対して、電流Iについてはアンテナ素子142上で中点(接地点)が最も強く、正のみ又は負のみの電流成分による定在波が形成される。
【0039】
このような定在波によってアンテナ素子142の中央近傍に最大強度を有する垂直磁場Bが発生する。これによりプラズマ生成室30内に、垂直磁場Bを中心とする円形電場が励起され、ドーナツ状のプラズマが生成される。この際、アンテナ素子142に印加される平均電圧は非常に小さいので、容量結合度が極めて弱いため、電位の低いプラズマを生成することができる。
【0040】
ここで、仮にアンテナ素子142の外側端部142aと内側端部142bの両方を接地して、外側端部142aと接地間に高周波電源150を接続した場合には、図3に示した電圧Vと電流Iの波形が逆になる。すなわち、高周波電源150から基準周波数(例えば27.12MHz)の高周波を高周波アンテナ140に印加して半波長モードで共振させると、ある瞬間ではアンテナ素子142に印加される電圧Vは、中点(接地点)が最大で、両端部がゼロとなるような波形になる。これに対して、アンテナ素子142に印加される電流Iは、電圧波形と90度位相がずれるため、中点(接地点)がゼロで、一方の端部が正のピークとなり、他方の端部が負のピークとなるような波形になる。
【0041】
このように、アンテナ素子142の両端を接地して半波長モードで共振させると、接地点を境としてアンテナ素子142の内側部とアンテナ素子142の外側部では常に相反する方向の磁場が形成される。その相反する磁場によってほぼ同一平面内の近傍に円形電場が二つ形成される。しかもこの二つの円形電場の回転方向が常に相反しているため、互いに干渉し合い、生成されたプラズマが不安定になるおそれがある。
【0042】
これに対して、アンテナ素子142の中点を接地点とすると、上述したように励起される円形電場は一つであって常に一方向であり、干渉し合う反対方向の電場もない。このため、アンテナ素子142の中点を接地点とする場合には、アンテナ素子142の端部を接地点とする場合に比べて安定したプラズマを形成することができる。
【0043】
また、アンテナ素子142の両端を接地した場合は、共振状態でのアンテナ素子142上に電圧成分が残るので、プラズマ中に容量結合成分が多く発生する。この点、アンテナ素子142の中点を接地点とした場合には、上述したように共振状態でのアンテナ素子142上の電圧成分が非常に小さいので、プラズマ中に容量結合成分が発生し難い。従って、ダメージの少ないプラズマ処理を行うには、アンテナ素子142の中点を接地点とする場合の方が有利である。
【0044】
ところで、本実施形態においてアンテナ素子142を1/2波長モードで共振させるためには、上述したようにアンテナ素子142の電気的長さを正確に基準周波数(ここでは27.12MHz)の1/2倍の長さに合わせる必要がある。しかしながら、アンテナ素子142の物理的長さを正確に製作するのは容易ではない。また、アンテナ素子142の共振周波数はアンテナ素子142の固有のリアクタンスだけでなく、アンテナ素子142とシールド部材160との間の浮遊容量(ストレキャパシタンス)も影響する。このため、たとえアンテナ素子142の物理的長さを正確に製作できたとしても、取付け誤差などによりアンテナ素子142とシールド部材160の距離に誤差が生じて設計通りの共振周波数が得られない場合もある。
【0045】
このため本実施形態では、シールド部材160の高さを調整可能とし、これによってアンテナ素子142とシールド部材160との間の距離を調整して浮遊容量を変化させることで、アンテナ素子142の共振周波数を調整できるようになっている。具体的にはアクチュエータ165を駆動させて上部シールド部材162を高くすることで、シールド部材160と高周波アンテナ140との距離が長くなる。これにより、浮遊容量Cが小さくなるので、アンテナ素子142の電気長が長くなるように共振周波数を調整できる。
【0046】
逆に、上部シールド部材162を低くすれば、シールド部材160と高周波アンテナ140との距離が短くなる。これにより、浮遊容量Cが大きくなるので、アンテナ素子142の電気長が短くなるように共振周波数を調整できる。このように、本実施形態によればシールド部材160の高さを調整することにより、アンテナ素子142とシールド部材160との間の浮遊容量Cを変えることができるので、アンテナ素子142の物理的長さを変えることなく、アンテナ素子142の共振周波数を調整できる。
【0047】
さらに、本実施形態では、高周波アンテナ140の高さも調整可能とし、これによってプラズマとアンテナ素子142との距離を調整することでプラズマポテンシャルを調整できるようになっている。
【0048】
上述した高周波アンテナ140とシールド部材160の高さ調整はそれぞれ、制御部200によってアクチュエータ145、165を制御することによって行われる。この場合、高周波アンテナ140とシールド部材160の高さ調整は、操作部210によるオペレータの操作によって行うようにしてもよく、また制御部200の自動制御によって行うようにしてもよい。
【0049】
シールド部材160の高さ調整を自動的に行う場合には、例えば高周波電源150の出力側に高周波パワーメータ(例えば反射波パワーメータ)を設け、高周波パワーメータによって検出される高周波電力に応じて(例えば反射波電力が最小となるように)、アクチュエータ165を制御してシールド部材160の高さを調整し、アンテナ素子142の共振周波数を自動的に調整するように構成することができる。
【0050】
また、本実施形態では、図5に示す、高周波アンテナ140のアンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側(プラズマ生成室30側)の面との距離Dが、55mm以上90mm以下とされている。これによって、加速された水素イオン等によって誘電体窓13がスパッタされ、損傷を受けることを抑制することができる。すなわち、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dを55mm未満とすると、アンテナ素子142と誘電体窓13の真空側の面とが近付くことによって、アンテナ素子142による電界によって加速された水素イオン等が誘電体窓13の真空側の面をスパッタし、スパッタ量が多くなることによって誘電体窓13が損傷を多く受ける。一方、距離Dを55mm以上とすることによって誘電体窓13の損傷を大幅に軽減することができる。
【0051】
図6の棒グラフは、プラズマ処理装置1において、誘電体窓13の真空側の面に、ALD−SiO2膜を形成した半導体ウエハを貼り付けて、処理チャンバー10内に水素ガスのプラズマを発生させた際のALD−SiO2膜の10分間あたりのスパッタ量を測定した結果を示すものである。なお、測定時の条件は、圧力5.32PA(40mTorr)、高周波電力3000W、水素ガス流量500sccm、時間600秒であり、誘電体窓13の厚みは30mmである。また、スパッタ量の測定は中心部(図6中白抜きの棒で示す。)と、周縁部(図6中ハッチング入りの棒で示す。)において実施した。
【0052】
図6に示すように、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dを50mmとした場合、スパッタ量は中心部で30nm以上、周縁部で40nm以上であった。これに対して、距離Dを57.5mmとした場合、スパッタ量は中心部で10nm以下、周縁部で20nm以下であり、距離Dが50mmの場合の半分以下であった。また、このような傾向は、距離Dを65mmとした場合も同様であり、距離Dを57.5mmとした場合と略同様な結果となった。このため、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dを55mm以上とすることが好ましい。なお、プラズマと誘電体窓13には電位差があるため距離Dを大きくしてもスパッタ量をゼロとすることはできない。
【0053】
また、距離Dを、90mmを超えて大きくし、アンテナ素子142を誘電体窓13から離間させると、処理チャンバー10内にプラズマが発生し難くなる。このため、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dは、90mm以下とすることが好ましい。
【0054】
以上の理由から、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dは、55m以上90mm以下とすることが好ましい。なお、本実施形態のプラズマ処理装置1では、上記のように、誘電体窓13とアンテナ素子142とが離間されて配置されているため、プラズマからの入熱がアンテナ素子142に伝わり難いので、アンテナ素子142を冷却するための冷却機構を設ける必要がない。
【0055】
図7のグラフは、縦軸をエッチングレート(E/R)(nm/min)、横軸を半導体ウエハの中心からの距離(ウエハ位置)(mm)として、5分間ベークを行ったg線フォトレジストのエッチングレートを測定した結果を示しており、図7(a)は、上述した距離Dが70mmの場合、図7(b)は、上述した距離Dが45mmの場合を示している。なお、測定時のエッチング処理条件は、圧力200Pa(1.5Torr)、高周波電力3000W、処理ガスH2/He=100/2400sccm、載置台温度300℃、エッチング時間180秒である。図7(a)、図7(b)に示されるように、上述した距離Dが70mmの場合も、距離Dが45mmの場合もエッチングレート及びエッチングレートの分布が略同一であった。したがって、例えば、距離Dを70mmとしてアンテナ素子142を誘電体窓13から離間させ、誘電体窓13の損傷を抑制した状態としても、高効率でプラズマ中の水素ラジカルを半導体ウエハWに作用させることができ、高効率でプラズマ処理を実施することができる。
【0056】
図8のグラフは、縦軸をエッチングレート(E/R)(nm/min)、横軸を半導体ウエハの中心からの距離(ウエハ位置)(mm)として、5分間ベークを行ったg線フォトレジストのエッチングレートを測定した結果を示している。図8(a)は、背景技術の欄で説明した側壁部にコイルスプリング状の高周波コイルを設けた円筒状のプラズマ発生室と、処理室とを図1に示した隔壁部材40と同様な構造の隔壁部材によって仕切った構成のプラズマ処理装置を使用した場合を示している。この場合、高周波電力を4000W、隔壁部材の2つの板状部材の板厚2mm、開口(スリット)の幅4mmとしている。また、図8(b)は、本実施形態のプラズマ処理装(板状部材41、42の板厚5mm、開口41a、42aの幅2mm)を使用し、高周波電力を3000Wとした場合を示している。
【0057】
図8(a)、図8(b)のグラフに示されるように、本実施形態のプラズマ処理装置1では、従来のプラズマ処理装置に比べて隔壁部材40の条件が厳しく(板状部材41、42の板厚が厚く、開口41a、42aの幅が狭い。)なっており、かつ、高周波電力が少ない条件でありながら、より高いエッチングレートが得られている。このように、本実施形態のプラズマ処理装置1では、イオンの作用を抑制しつつ水素ラジカルを効率良く半導体ウエハWに作用させて、効率良くプラズマ処理を行うことができる。
【0058】
上記構成のプラズマ処理装置1によって、半導体ウエハWのプラズマ処理を行う場合、ゲートバルブ31を開き、ウエハ搬出入口30から処理チャンバー10のプラズマ処理室20内に半導体ウエハWを搬入し、載置台15に載置して静電チャックにより吸着する。
【0059】
次いで、ゲートバルブ31を閉じ、排気部130の図示しない真空ポンプ等によって、処理チャンバー10内を所定の真空度となるまで真空引する。
【0060】
その後、ガス供給部120によって、所定流量の水素ガスを含む処理ガスを、処理チャンバー10のプラズマ生成室30内に供給する。そして、処理チャンバー10内の圧力が、所定の圧力に維持された後、高周波電源150から、高周波アンテナ140に所定の周波数の高周波電力が印加される。これにより、プラズマ生成室30内には、水素ガスを含む処理ガスのICPプラズマが発生する。
【0061】
このICPプラズマ中のイオンは、電気的なチャージを有するため、隔壁部材40によって遮蔽され、プラズマ処理室20内にはほとんど到達できない。一方、水素ラジカルは、電気的に中性であるため、隔壁部材40の開口41a、開口42aを通ってプラズマ処理室20内にまで到達する。そして、この水素ラジカルが、載置台15上に載置された半導体ウエハWに作用することによって、半導体ウエハWのプラズマ処理、例えば、エッチング処理やアッシング処理等が行われる。
【0062】
この時、プラズマ処理装置1では、平面状の高周波アンテナ140を使用してICPプラズマが発生させており、比較的半導体ウエハWに近い領域にプラズマが存在する。このため、プラズマから半導体ウエハWに至るまでの水素ラジカルの移動量が少なくて済み、寿命の短い水素ラジカルを効率的に半導体ウエハWに作用させることができる。
【0063】
また、隔壁部材40が、間隔を設けて配設された複数の板状部材41、板状部材42によって構成されているので、水素イオン等のイオンが、プラズマ処理室20内に漏れ出て、半導体ウエハW上に形成された低誘電率膜等にダメージを与えることを効果的に抑制することができる。
【0064】
さらに、隔壁部材40の複数の板状部材41、板状部材42によって、プラズマ中から紫外線(特に真空紫外領域の波長を有する紫外光)が半導体ウエハWに照射され、例えば半導体ウエハW上に形成された低誘電率膜等にダメージを与えることを効果的に抑制することができる。
【0065】
また、前述したとおり、高周波アンテナ140に発生する電圧成分が少ないので、プラズマ中の水素イオン等が電界によって加速されることを抑制することができ、加速された水素イオン等によって誘電体窓13がスパッタされ、損傷を受けることを抑制することができる。さらに、本実施形態では、高周波アンテナ140のアンテナ素子142の中心と、誘電体窓13の真空側(プラズマ生成室30側)の面との距離(図5に示すD)が55mm以上90mm以下とされているので、加速された水素イオン等によって誘電体窓13がスパッタされ、損傷を受けることをより一層抑制することができる。
【0066】
そして、所定のプラズマ処理が終了すると、高周波電力の印加及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが処理チャンバー10内から搬出される。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1……プラズマ処理装置、10……処理チャンバー、13……誘電体窓、15……載置台、20……プラズマ処理室、30……プラズマ生成室、40……隔壁部材、41,42……板状部材、41a,42a……開口、140……高周波アンテナ、142……アンテナ素子、150……高周波電源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野等においては、半導体ウエハ等の基板に、成膜処理やエッチング処理等の処理を行う装置として、プラズマを用いたプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
上記のプラズマ処理装置において、水素ガスのプラズマを発生させ、この水素ガスのプラズマ中の水素ラジカルを被処理基板に作用させて、レジストのアッシングや、低誘電率膜のエッチングを行う技術が知られている。このように水素ガスのプラズマを使用する場合、平行平板型などの容量結合型のプラズマ処理装置を使用すると、電極が水素プラズマにより大きなダメージを受ける。このため、誘導結合プラズマ(ICP)を生成する誘導結合型のプラズマ処理装置が使用されている。
【0004】
このような誘導結合型のプラズマ処理装置として、円筒状のプラズマ発生室の側壁部にコイルスプリング状の高周波コイルを設け、このプラズマ発生室と、処理を行う半導体ウエハ等の被処理基板が配置された処理室とを、貫通孔を有する複数の遮蔽板(隔壁部材)によって仕切り、プラズマ中のラジカルのみを選択的に基板に作用させるプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上記のように、側壁部に高周波コイルを設けた円筒状のプラズマ発生室と、処理室とを遮蔽板によって仕切った構成のプラズマ処理装置では、側壁部に高周波コイルを設ける都合上、プラズマ発生室の形状が縦長となる。そして、この縦長のプラズマ発生室で発生させたプラズマ中からラジカルのみを移動させて被処理基板に作用させると、ラジカルの移動距離が長くなり、効率良くラジカルを被処理基板に作用させ、効率的に処理を行うことが難しい。
【0006】
このため、効率的に水素ラジカルによる処理を行うという点では、処理室の天井部に誘電体窓を設け、ここに平面状の高周波アンテナを設けたプラズマ処理装置を用いることが好ましい。しかしながら、このような構成のプラズマ処理装置では、誘電体窓に平面状の高周波アンテナを近接して配置する必要がある。このため、高周波アンテナの電圧によってプラズマ中のイオンが引き付けられ誘電体窓が損傷を受けるという問題と、プラズマからの入熱により高周波アンテナの温度が上昇し、高周波アンテナを冷却するための冷却機構が必要となるという問題が生じる。
【0007】
なお、処理室の天井部に平面状の高周波アンテナを設けたプラズマ処理装置において、高周波アンテナの両端を開放するとともに、中点又はその近傍を接地し、高周波の1/2波長で共振するようにして、加速されたイオンによる被処理基板のダメージを抑制するようにしたプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−16453号公報
【特許文献2】特開2010−153274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したとおり、従来においては、水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理する際に、効率的に水素ラジカルを被処理基板に作用させることが困難となる問題があった。また、誘電体窓が水素イオンによってダメージを受けるという問題や、プラズマからの入熱により高周波アンテナがダメージを受けるため、冷却機構が必要になる等の問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、水素ラジカルを被処理基板に効率良く作用させて効率的なプラズマ処理を行えるとともに、水素イオンによる誘電体窓のダメージを軽減することができ、かつ、高周波アンテナのための冷却機構を不要とすることのできるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、を備え、前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のプラズマ処理方法の一態様は、水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、を備え、前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されているプラズマ処理装置を用いて前記被処理基板にプラズマ処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水素ラジカルを被処理基板に効率良く作用させて効率的なプラズマ処理を行えるとともに、水素イオンによる誘電体窓のダメージを軽減することができ、かつ、高周波アンテナのための冷却機構を不要とすることのできるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の断面概略構成を示す図。
【図2】図1のプラズマ処理装置の高周波アンテナの概略構成を示す図。
【図3】図2の高周波アンテナにおける電圧と電流の関係を示す図。
【図4】図1のプラズマ処理装置の要部断面構成を模式的に示す図。
【図5】図1のプラズマ処理装置の要部断面構成を模式的に示す図。
【図6】誘電体窓のスパッタ量を測定した結果を示すグラフ。
【図7】エッチングレートを測定した結果を示すグラフ。
【図8】エッチングレートを測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置1の構成を模式的に示す図である。同図に示すように、プラズマ処理装置1は、処理チャンバー10を具備している。処理チャンバー10は、表面を陽極酸化処理されたアルミニウム等から略円筒状に構成されている。処理チャンバー10の内側の底部には、半導体ウエハW等の被処理基板を載置するための載置台15が配設されている。載置台15の基板載置面には、被処理基板を吸着するための図示しない静電チャック等が設けられている。
【0017】
処理チャンバー10の天井部には、載置台15と対向するように、石英又はセラミックス等の誘電体(絶縁体)材料からなる誘電体窓13が設けられている。誘電体窓13は、円板状に形成されており、処理チャンバー10の天井部に形成された円形の開口を気密に閉塞するように配設されている。
【0018】
処理チャンバー10の内部には、載置台15が配置された下方のプラズマ処理室20と、上方のプラズマ生成室30とを仕切るように、隔壁部材40が配設されている。この隔壁部材40の詳細な構成については、後述する。
【0019】
プラズマエッチング装置1には、処理チャンバー10のプラズマ生成室30内に水素ガスを含む処理ガスを供給するためのガス供給部120が設けられている。処理チャンバー10の側壁部にはガス導入口121が形成されており、ガス導入口121には、ガス供給配管123を介してガス供給源122が接続されている。ガス供給配管123の途中には、処理ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ124、開閉バルブ126が介挿されている。ガス供給源122からの処理ガスは、マスフローコントローラ124により所定の流量に制御されて、ガス導入口121から処理チャンバー10のプラズマ生成室30内に供給される。
【0020】
図1では説明を簡単にするため、ガス供給部120を一系統のガスラインで表現しているが、ガス供給部120は単一のガス種の処理ガスを供給する場合に限られるものではなく、複数のガス種を処理ガスとして供給するものであってもよい。また、ガス供給部120は、処理チャンバー10の側壁部からガスを供給する構成のものに限られず、処理チャンバー10の天井部からガスを供給する構成であってもよい。この場合には、例えば、誘電体窓13の例えば中央にガス導入口を形成し、そこからガスを供給するようにしてもよい。
【0021】
処理チャンバー10の底部には、処理チャンバー10内を排気するための排気部130が排気管132を介して接続されている。排気部130は例えば真空ポンプ等によって構成され、処理チャンバー10内を所定の圧力まで減圧し得るようになっている。処理チャンバー10の側壁部には、ウエハ搬出入口30が形成されており、このウエハ搬出入口30には、ウエハ搬出入口30を気密に閉塞し、開閉自在とされたゲートバルブ31が設けられている。
【0022】
処理チャンバー10の天井部の外側には、誘電体窓13の外側面(上側面)に対向するように平面状の高周波アンテナ140が配置されており、この高周波アンテナ140を覆うように略筒状(本実施形態では円筒状)のシールド部材160が設けられている。高周波アンテナ140は、図2に示すように、例えば銅、アルミニウム、ステンレスなどの導体で構成された渦巻きコイル状のアンテナ素子142を、複数の挟持体144で挟持して構成されている。各挟持体144は、棒状に形成されており、3つの挟持体144が、アンテナ素子142の中央付近からその外側に向けて放射状に延在するように配置されている。
【0023】
アンテナ素子142には、高周波電源150が接続されている。高周波電源150からアンテナ素子142に所定の周波数(例えば27.12MHz)の高周波を所定のパワーで供給することにより、処理チャンバー10内のプラズマ生成室30内に誘導磁界が形成される。これにより、プラズマ生成室30内に導入された水素ガスを含む処理ガスが励起され、プラズマが生成される。このプラズマ生成室30内に励起されたプラズマ中のイオンは、隔壁部材40によって遮蔽されてプラズマ処理室20内に進入することが阻止され、プラズマ中の水素ラジカルのみがプラズマ処理室20内に移動して水素ラジカルによる半導体ウエハWの処理が行われる。
【0024】
高周波電源150から出力される高周波電力の周波数は、27.12MHzに限られるものではない。例えば13.56MHz、60MHzなどであってもよい。但し、高周波電源150から出力される高周波電力の周波数に応じてアンテナ素子142の電気的長さを調整する必要がある。
【0025】
シールド部材160は、処理チャンバー10の天井部に固定された略円筒状の下部シールド部材161と、この下部シールド部材161の外側にスライド自在に設けられた上部シールド部材162とで構成されている。上部シールド部材162は、上面が閉塞し下面が開口する略円筒状に形成されている。上部シールド部材162は、処理チャンバー10の側壁部に設けられたアクチュエータ165によって上下にスライド駆動するようになっている。また、高周波アンテナ140も、アクチュエータ145によって高さ調整ができるようになっている。
【0026】
プラズマ処理装置1は、制御部(全体制御装置)200を具備しており、この制御部200によってプラズマ処理装置1の各部が制御されるようになっている。また、制御部200には、オペレータがプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる操作部210が接続されている。
【0027】
さらに、制御部200には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理を制御部200の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要なレシピなどが記憶された記憶部220が接続されている。
【0028】
記憶部220には、半導体ウエハWの処理を実行するための複数のレシピの他、処理チャンバー10内のクリーニング処理など必要な処理を行うためのレシピなどが記憶されている。なお、これらのレシピはハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく、またCD−ROM、DVD等の記憶媒体に収容された状態で記憶部220の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0029】
制御部200は、操作部210からの指示等に基づいて所望のレシピを記憶部220から読み出して各部を制御することで、プラズマ処理装置1での所望の処理を実行する。また、操作部210からの操作によりレシピを編集できるようになっている。
【0030】
つぎに、前述した隔壁部材40の詳細な構成について説明する。隔壁部材40は、図4に示すように、多数のスリット状の開口41a、42aを有する複数(本実施形態では2つ)の板状部材41、42を、スペーサ43を挟むことによって、所定間隔を設けて重ねた構成とされている。また、板状部材41の開口41aと、板状部材42の開口42aとは位置が重ならないように配置されている。板状部材41、42は、紫外線(UV)特に真空紫外領域の波長の紫外線が通過しない絶縁材料、例えば、石英又はセラミックス(例えば、アルミナ)等から構成されている。なお、図4に示すように、プラズマからの紫外線がプラズマ生成室30側(図4中上側)の板状部材41に照射されると蛍光として紫外線が発せられるが、この紫外線は、プラズマ処理室20側(図4中下側)の板状部材42によって遮蔽される。
【0031】
図4に示すように、隔壁部材40の板状部材41、42は、絶縁部材から構成されており表面がマイナスに帯電し、板状部材41、42の近傍にはプラス電位のシースが形成される。これによって、プラズマ生成室30で生成されたプラズマ中のイオン(例えば、水素イオン)が遮蔽される。そして、開口41a、42aを介して電気的に中性な水素ラジカルのみを選択的に通過させ、プラズマ処理室20内に導入することができるようになっている。イオンを遮蔽する作用を高めるためには、板状部材41、42の厚さ(図4に示すT1)を厚くすることが好ましく、また、開口41a、42aの幅(図4に示すW)を小さくして開口面積を小さくすることが好ましい。しかしながら、厚さT1を厚くし過ぎたり、幅Wを小さくして開口面積を小さくし過ぎると、水素ラジカルの通過量が少なくなってしまう。
【0032】
実際に、隔壁部材40の効果を確認するため、表面にアモルファスシリコン膜を形成した半導体ウエハWにプラズマ処理を行ったところ、板状部材41、42の厚さT1を2mm、開口41a、42aの幅を4mmとした場合、アモルファスシリコン膜に欠落が生じた。一方、板状部材41、42の厚さT1を5mm、開口41a、42aの幅を2mmとして同様なプラズマ処理を行ったところ、アモルファスシリコン膜に欠落は生じなかった。したがって、板状部材41、42の厚さT1は、3〜10mm程度、開口41a、42aの幅Wは、1〜3mm程度とすることが好ましい。本実施形態では、板状部材41、42の厚さT1は5mm、開口41a、42aの幅Wは2mmとなっている。スペーサ43の厚み(図4に示すT2)、すなわち板状部材41と板状部材42との間隔は、3〜10mm程度とすることが好ましく、本実施形態では5mmとなっている。
【0033】
なお、隔壁部材40によって確実にイオンをトラップするためには、誘電体窓13と隔壁部材40との間のプラズマ生成室30内の空間でプラズマを発生させる必要がある。このため、誘電体窓13のプラズマ生成室30側の面と隔壁部材40(板状部材41)のプラズマ生成室30側の面との間の距離、つまり図4に示す距離d1は、ある程度大きくする必要がある。一方、距離d1を大きくし過ぎるとプラズマと半導体ウエハWの距離が離れることによって効率的に水素ラジカルを半導体ウエハWに作用させることが難しくなる。このため、誘電体窓13のプラズマ生成室30側の面と隔壁部材40のプラズマ生成室30側の面との間の距離d1は、50mm〜110mmとすることが好ましい。
【0034】
次に、高周波アンテナ140の具体的な構成について説明する。高周波アンテナ140は、図2に示すようにアンテナ素子142の両端、すなわち外側端部142aと内側端部142bを自由端(電気的にフローティングの状態)とするとともに、巻き方向の長さの中点又はその近傍(以下、単に「中点」という。)を接地点(グラウンド)142cとし、1/2波長の定在波を形成できるように構成されている。
【0035】
すなわち、アンテナ素子142は、高周波電源150から供給される所定の周波数(例えば27.12MHz)を基準として、その基準周波数の1/2波長で共振(半波長モードで共振)するように、長さ、巻径、巻回ピッチ、巻数が設定されている。例えばアンテナ素子142の電気的長さは、基準周波数の1/2倍によって共振する長さ、すなわち基準周波数である27.12MHzにおける1波長の1/2倍の長さである。なお、アンテナ素子142は、パイプ状、線状、板状などいずれの形状で構成してもよい。
【0036】
高周波電源150からの高周波を供給する給電ポイント142dは、接地点142cよりも内側であっても外側であってもよく、例えばインピーダンスが50Ωとなる点であることが好ましい。給電ポイントは可変にしてもよい。この場合、モータなどにより給電ポイントを自動で変更できるようにしてもよい。
【0037】
このようなアンテナ素子142によれば、高周波電源150から基準周波数(例えば27.12MHz)の高周波を高周波アンテナ140に印加して半波長モードで共振させると、ある瞬間では図3に示すようにアンテナ素子142に印加される電圧Vは、中点(接地点)がゼロで、一方の端部が正のピークとなり、他方の端部が負のピークとなるような波形になる。これに対して、アンテナ素子142に印加される電流Iは、電圧波形と90度位相がずれるため、中点(接地点)が最大で、両端部がゼロとなるような波形になる。
【0038】
このとき、高周波の正負のサイクル毎に互いに瞬時容量が逆方向に増減するので、アンテナ素子142に印加される電圧Vと電流Iの波形はそれぞれ図3に示すようになる。すなわち、電圧Vについてはアンテナ素子142上に発生する正負の電圧成分によって相殺されて平均電圧が非常に小さくなるような半波長モードの定在波が形成される。これに対して、電流Iについてはアンテナ素子142上で中点(接地点)が最も強く、正のみ又は負のみの電流成分による定在波が形成される。
【0039】
このような定在波によってアンテナ素子142の中央近傍に最大強度を有する垂直磁場Bが発生する。これによりプラズマ生成室30内に、垂直磁場Bを中心とする円形電場が励起され、ドーナツ状のプラズマが生成される。この際、アンテナ素子142に印加される平均電圧は非常に小さいので、容量結合度が極めて弱いため、電位の低いプラズマを生成することができる。
【0040】
ここで、仮にアンテナ素子142の外側端部142aと内側端部142bの両方を接地して、外側端部142aと接地間に高周波電源150を接続した場合には、図3に示した電圧Vと電流Iの波形が逆になる。すなわち、高周波電源150から基準周波数(例えば27.12MHz)の高周波を高周波アンテナ140に印加して半波長モードで共振させると、ある瞬間ではアンテナ素子142に印加される電圧Vは、中点(接地点)が最大で、両端部がゼロとなるような波形になる。これに対して、アンテナ素子142に印加される電流Iは、電圧波形と90度位相がずれるため、中点(接地点)がゼロで、一方の端部が正のピークとなり、他方の端部が負のピークとなるような波形になる。
【0041】
このように、アンテナ素子142の両端を接地して半波長モードで共振させると、接地点を境としてアンテナ素子142の内側部とアンテナ素子142の外側部では常に相反する方向の磁場が形成される。その相反する磁場によってほぼ同一平面内の近傍に円形電場が二つ形成される。しかもこの二つの円形電場の回転方向が常に相反しているため、互いに干渉し合い、生成されたプラズマが不安定になるおそれがある。
【0042】
これに対して、アンテナ素子142の中点を接地点とすると、上述したように励起される円形電場は一つであって常に一方向であり、干渉し合う反対方向の電場もない。このため、アンテナ素子142の中点を接地点とする場合には、アンテナ素子142の端部を接地点とする場合に比べて安定したプラズマを形成することができる。
【0043】
また、アンテナ素子142の両端を接地した場合は、共振状態でのアンテナ素子142上に電圧成分が残るので、プラズマ中に容量結合成分が多く発生する。この点、アンテナ素子142の中点を接地点とした場合には、上述したように共振状態でのアンテナ素子142上の電圧成分が非常に小さいので、プラズマ中に容量結合成分が発生し難い。従って、ダメージの少ないプラズマ処理を行うには、アンテナ素子142の中点を接地点とする場合の方が有利である。
【0044】
ところで、本実施形態においてアンテナ素子142を1/2波長モードで共振させるためには、上述したようにアンテナ素子142の電気的長さを正確に基準周波数(ここでは27.12MHz)の1/2倍の長さに合わせる必要がある。しかしながら、アンテナ素子142の物理的長さを正確に製作するのは容易ではない。また、アンテナ素子142の共振周波数はアンテナ素子142の固有のリアクタンスだけでなく、アンテナ素子142とシールド部材160との間の浮遊容量(ストレキャパシタンス)も影響する。このため、たとえアンテナ素子142の物理的長さを正確に製作できたとしても、取付け誤差などによりアンテナ素子142とシールド部材160の距離に誤差が生じて設計通りの共振周波数が得られない場合もある。
【0045】
このため本実施形態では、シールド部材160の高さを調整可能とし、これによってアンテナ素子142とシールド部材160との間の距離を調整して浮遊容量を変化させることで、アンテナ素子142の共振周波数を調整できるようになっている。具体的にはアクチュエータ165を駆動させて上部シールド部材162を高くすることで、シールド部材160と高周波アンテナ140との距離が長くなる。これにより、浮遊容量Cが小さくなるので、アンテナ素子142の電気長が長くなるように共振周波数を調整できる。
【0046】
逆に、上部シールド部材162を低くすれば、シールド部材160と高周波アンテナ140との距離が短くなる。これにより、浮遊容量Cが大きくなるので、アンテナ素子142の電気長が短くなるように共振周波数を調整できる。このように、本実施形態によればシールド部材160の高さを調整することにより、アンテナ素子142とシールド部材160との間の浮遊容量Cを変えることができるので、アンテナ素子142の物理的長さを変えることなく、アンテナ素子142の共振周波数を調整できる。
【0047】
さらに、本実施形態では、高周波アンテナ140の高さも調整可能とし、これによってプラズマとアンテナ素子142との距離を調整することでプラズマポテンシャルを調整できるようになっている。
【0048】
上述した高周波アンテナ140とシールド部材160の高さ調整はそれぞれ、制御部200によってアクチュエータ145、165を制御することによって行われる。この場合、高周波アンテナ140とシールド部材160の高さ調整は、操作部210によるオペレータの操作によって行うようにしてもよく、また制御部200の自動制御によって行うようにしてもよい。
【0049】
シールド部材160の高さ調整を自動的に行う場合には、例えば高周波電源150の出力側に高周波パワーメータ(例えば反射波パワーメータ)を設け、高周波パワーメータによって検出される高周波電力に応じて(例えば反射波電力が最小となるように)、アクチュエータ165を制御してシールド部材160の高さを調整し、アンテナ素子142の共振周波数を自動的に調整するように構成することができる。
【0050】
また、本実施形態では、図5に示す、高周波アンテナ140のアンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側(プラズマ生成室30側)の面との距離Dが、55mm以上90mm以下とされている。これによって、加速された水素イオン等によって誘電体窓13がスパッタされ、損傷を受けることを抑制することができる。すなわち、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dを55mm未満とすると、アンテナ素子142と誘電体窓13の真空側の面とが近付くことによって、アンテナ素子142による電界によって加速された水素イオン等が誘電体窓13の真空側の面をスパッタし、スパッタ量が多くなることによって誘電体窓13が損傷を多く受ける。一方、距離Dを55mm以上とすることによって誘電体窓13の損傷を大幅に軽減することができる。
【0051】
図6の棒グラフは、プラズマ処理装置1において、誘電体窓13の真空側の面に、ALD−SiO2膜を形成した半導体ウエハを貼り付けて、処理チャンバー10内に水素ガスのプラズマを発生させた際のALD−SiO2膜の10分間あたりのスパッタ量を測定した結果を示すものである。なお、測定時の条件は、圧力5.32PA(40mTorr)、高周波電力3000W、水素ガス流量500sccm、時間600秒であり、誘電体窓13の厚みは30mmである。また、スパッタ量の測定は中心部(図6中白抜きの棒で示す。)と、周縁部(図6中ハッチング入りの棒で示す。)において実施した。
【0052】
図6に示すように、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dを50mmとした場合、スパッタ量は中心部で30nm以上、周縁部で40nm以上であった。これに対して、距離Dを57.5mmとした場合、スパッタ量は中心部で10nm以下、周縁部で20nm以下であり、距離Dが50mmの場合の半分以下であった。また、このような傾向は、距離Dを65mmとした場合も同様であり、距離Dを57.5mmとした場合と略同様な結果となった。このため、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dを55mm以上とすることが好ましい。なお、プラズマと誘電体窓13には電位差があるため距離Dを大きくしてもスパッタ量をゼロとすることはできない。
【0053】
また、距離Dを、90mmを超えて大きくし、アンテナ素子142を誘電体窓13から離間させると、処理チャンバー10内にプラズマが発生し難くなる。このため、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dは、90mm以下とすることが好ましい。
【0054】
以上の理由から、アンテナ素子142の中心と誘電体窓13の真空側の面との距離Dは、55m以上90mm以下とすることが好ましい。なお、本実施形態のプラズマ処理装置1では、上記のように、誘電体窓13とアンテナ素子142とが離間されて配置されているため、プラズマからの入熱がアンテナ素子142に伝わり難いので、アンテナ素子142を冷却するための冷却機構を設ける必要がない。
【0055】
図7のグラフは、縦軸をエッチングレート(E/R)(nm/min)、横軸を半導体ウエハの中心からの距離(ウエハ位置)(mm)として、5分間ベークを行ったg線フォトレジストのエッチングレートを測定した結果を示しており、図7(a)は、上述した距離Dが70mmの場合、図7(b)は、上述した距離Dが45mmの場合を示している。なお、測定時のエッチング処理条件は、圧力200Pa(1.5Torr)、高周波電力3000W、処理ガスH2/He=100/2400sccm、載置台温度300℃、エッチング時間180秒である。図7(a)、図7(b)に示されるように、上述した距離Dが70mmの場合も、距離Dが45mmの場合もエッチングレート及びエッチングレートの分布が略同一であった。したがって、例えば、距離Dを70mmとしてアンテナ素子142を誘電体窓13から離間させ、誘電体窓13の損傷を抑制した状態としても、高効率でプラズマ中の水素ラジカルを半導体ウエハWに作用させることができ、高効率でプラズマ処理を実施することができる。
【0056】
図8のグラフは、縦軸をエッチングレート(E/R)(nm/min)、横軸を半導体ウエハの中心からの距離(ウエハ位置)(mm)として、5分間ベークを行ったg線フォトレジストのエッチングレートを測定した結果を示している。図8(a)は、背景技術の欄で説明した側壁部にコイルスプリング状の高周波コイルを設けた円筒状のプラズマ発生室と、処理室とを図1に示した隔壁部材40と同様な構造の隔壁部材によって仕切った構成のプラズマ処理装置を使用した場合を示している。この場合、高周波電力を4000W、隔壁部材の2つの板状部材の板厚2mm、開口(スリット)の幅4mmとしている。また、図8(b)は、本実施形態のプラズマ処理装(板状部材41、42の板厚5mm、開口41a、42aの幅2mm)を使用し、高周波電力を3000Wとした場合を示している。
【0057】
図8(a)、図8(b)のグラフに示されるように、本実施形態のプラズマ処理装置1では、従来のプラズマ処理装置に比べて隔壁部材40の条件が厳しく(板状部材41、42の板厚が厚く、開口41a、42aの幅が狭い。)なっており、かつ、高周波電力が少ない条件でありながら、より高いエッチングレートが得られている。このように、本実施形態のプラズマ処理装置1では、イオンの作用を抑制しつつ水素ラジカルを効率良く半導体ウエハWに作用させて、効率良くプラズマ処理を行うことができる。
【0058】
上記構成のプラズマ処理装置1によって、半導体ウエハWのプラズマ処理を行う場合、ゲートバルブ31を開き、ウエハ搬出入口30から処理チャンバー10のプラズマ処理室20内に半導体ウエハWを搬入し、載置台15に載置して静電チャックにより吸着する。
【0059】
次いで、ゲートバルブ31を閉じ、排気部130の図示しない真空ポンプ等によって、処理チャンバー10内を所定の真空度となるまで真空引する。
【0060】
その後、ガス供給部120によって、所定流量の水素ガスを含む処理ガスを、処理チャンバー10のプラズマ生成室30内に供給する。そして、処理チャンバー10内の圧力が、所定の圧力に維持された後、高周波電源150から、高周波アンテナ140に所定の周波数の高周波電力が印加される。これにより、プラズマ生成室30内には、水素ガスを含む処理ガスのICPプラズマが発生する。
【0061】
このICPプラズマ中のイオンは、電気的なチャージを有するため、隔壁部材40によって遮蔽され、プラズマ処理室20内にはほとんど到達できない。一方、水素ラジカルは、電気的に中性であるため、隔壁部材40の開口41a、開口42aを通ってプラズマ処理室20内にまで到達する。そして、この水素ラジカルが、載置台15上に載置された半導体ウエハWに作用することによって、半導体ウエハWのプラズマ処理、例えば、エッチング処理やアッシング処理等が行われる。
【0062】
この時、プラズマ処理装置1では、平面状の高周波アンテナ140を使用してICPプラズマが発生させており、比較的半導体ウエハWに近い領域にプラズマが存在する。このため、プラズマから半導体ウエハWに至るまでの水素ラジカルの移動量が少なくて済み、寿命の短い水素ラジカルを効率的に半導体ウエハWに作用させることができる。
【0063】
また、隔壁部材40が、間隔を設けて配設された複数の板状部材41、板状部材42によって構成されているので、水素イオン等のイオンが、プラズマ処理室20内に漏れ出て、半導体ウエハW上に形成された低誘電率膜等にダメージを与えることを効果的に抑制することができる。
【0064】
さらに、隔壁部材40の複数の板状部材41、板状部材42によって、プラズマ中から紫外線(特に真空紫外領域の波長を有する紫外光)が半導体ウエハWに照射され、例えば半導体ウエハW上に形成された低誘電率膜等にダメージを与えることを効果的に抑制することができる。
【0065】
また、前述したとおり、高周波アンテナ140に発生する電圧成分が少ないので、プラズマ中の水素イオン等が電界によって加速されることを抑制することができ、加速された水素イオン等によって誘電体窓13がスパッタされ、損傷を受けることを抑制することができる。さらに、本実施形態では、高周波アンテナ140のアンテナ素子142の中心と、誘電体窓13の真空側(プラズマ生成室30側)の面との距離(図5に示すD)が55mm以上90mm以下とされているので、加速された水素イオン等によって誘電体窓13がスパッタされ、損傷を受けることをより一層抑制することができる。
【0066】
そして、所定のプラズマ処理が終了すると、高周波電力の印加及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが処理チャンバー10内から搬出される。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1……プラズマ処理装置、10……処理チャンバー、13……誘電体窓、15……載置台、20……プラズマ処理室、30……プラズマ生成室、40……隔壁部材、41,42……板状部材、41a,42a……開口、140……高周波アンテナ、142……アンテナ素子、150……高周波電源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、
前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、
前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、
前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、
を備え、
前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、
前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記アンテナ素子の中心と前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、55mm〜90mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面と前記隔壁部材の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、50mm〜110mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項は1〜3いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓が、石英又はセラミックスから構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記アンテナ素子が渦巻き状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記開口がスリット状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、
前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、
前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、
前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、
を備え、
前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、
前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されている
プラズマ処理装置を用いて前記被処理基板にプラズマ処理を施す
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項7記載のプラズマ処理方法であって、
前記アンテナ素子の中心と前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、55mm〜90mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載のプラズマ処理方法であって、
前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面と前記隔壁部材の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、50mm〜110mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項10】
請求項は7〜9いずれか1項記載のプラズマ処理方法であって、
前記誘電体窓が、石英又はセラミックスから構成されていることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
請求項7〜10いずれか1項記載のプラズマ処理方法であって、
前記アンテナ素子が渦巻き状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項12】
請求項7〜11いずれか1項記載のプラズマ処理方法であって、
前記開口がスリット状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項1】
水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、
前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、
前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、
前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、
を備え、
前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、
前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記アンテナ素子の中心と前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、55mm〜90mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面と前記隔壁部材の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、50mm〜110mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項は1〜3いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記誘電体窓が、石英又はセラミックスから構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記アンテナ素子が渦巻き状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記開口がスリット状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
水素を含む処理ガスをプラズマ励起させて発生した水素ラジカルを被処理基板に作用させてプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記処理ガスを励起させてプラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室に連通するプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室内に配置され、前記被処理基板を載置する載置台と、
前記プラズマ生成室の天井部に設けられた板状の誘電体窓の外側に配設された平面状の高周波アンテナと、
前記プラズマ生成室に誘導結合プラズマを生成するための高周波電力を、前記高周波アンテナに印加する高周波電源と、
前記プラズマ生成室と前記プラズマ処理室とを隔てる隔壁部材と、
を備え、
前記高周波アンテナは、両端を開放するとともに中間部を接地し、前記高周波電源からの高周波電力の1/2波長で共振するように構成したアンテナ素子を具備し、
前記隔壁部材は、前記水素ラジカルを通すための複数の開口を有し、紫外線が通過しない絶縁材料からなる複数の板状部材を夫々間隔を設けて重ね、かつ、前記板状部材の前記開口は夫々他の前記板状部材の前記開口と重ならないようにずらして配置して構成されている
プラズマ処理装置を用いて前記被処理基板にプラズマ処理を施す
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項7記載のプラズマ処理方法であって、
前記アンテナ素子の中心と前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、55mm〜90mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載のプラズマ処理方法であって、
前記誘電体窓の前記プラズマ生成室側の面と前記隔壁部材の前記プラズマ生成室側の面との間の距離が、50mm〜110mmとされている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項10】
請求項は7〜9いずれか1項記載のプラズマ処理方法であって、
前記誘電体窓が、石英又はセラミックスから構成されていることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
請求項7〜10いずれか1項記載のプラズマ処理方法であって、
前記アンテナ素子が渦巻き状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項12】
請求項7〜11いずれか1項記載のプラズマ処理方法であって、
前記開口がスリット状に形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−156261(P2012−156261A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13381(P2011−13381)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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