説明

プラズマ放電リアクターおよびガス処理装置

【課題】 電極と誘電体との間で発生する火花放電を抑え、放電以外の有効電流を抑制する。
【解決手段】 接地電極4と、高電圧印加電極2と、接地電極4と高電圧印加電極2との間に配置され且つ接地電極4と当接している誘電体5と、を有し、誘電体5は、被処理ガスaを通過させる内部を有し、誘電体5の内部で被処理ガスaに含有される被処理対象物質を処理するプラズマリアクターにおいて、誘電体5の外面と誘電体5の内部を構成する壁面は共に被処理対象物質を吸着する吸着材13で被覆されている。そして、誘電体5は、接地電極4と当接部11aで当接し、この当接部11aにおいて誘電体5自体が露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマによって処理対象物質を含有する被処理ガスを処理するためのプラズマ放電リアクターおよびガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、揮発性化合物等を含有するガスによる大気汚染、人体への影響が注目されている。そうした揮発性化合物等を含有する被処理ガスを処理する技術が数多く提案されている中で、プラズマ放電、特に非平衡プラズマ放電によって揮発性有機化合物(VOCs)等のガスを処理する技術に基づいたガス処理方法およびガス処理装置が提案されている。
【0003】
このような従来のガス処理装置としては、電極間に配置される誘電体に、吸着材や触媒が被覆されてなるプラズマ放電リアクターを備える構成が開示されている(特許文献1,2参照。)。特許文献2の段落番号[0010]には、ハニカム触媒は、誘電体による基材またはセラミック等の基材に誘電体を均等に添着させたものに、触媒や吸着剤を添着させたものであることが開示されている。さらに、この特許文献2の段落番号[0013]には、放電電極とハニカム触媒、ハニカム触媒と対向電極の間は数mm〜数cmの空間を持ってもよいが、近接または接触または貫入させてもよい、と記載されている。
【特許文献1】特開2002−153749号公報
【特許文献2】特開2004−113704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のガス処理装置が備えるプラズマ放電リアクターでは、電極とハニカム触媒が接触する場合において、接触している部分に吸着剤が添着されておらず、ハニカム触媒が露出しているという記載はない。さらに、上述した特許文献には、電極とハニカム触媒が接触する場合においてハニカム触媒を露出させる構成にするということに想到し得る記載もない。そのため、従来のプラズマ放電リアクターは、電極とハニカム触媒が接触する場合、ハニカム触媒に添着した吸着剤に吸収された水分によって電極と誘電体との間で火花放電が発生する可能性がある。さらにこれによって、誘電体が劣化する、あるいは処理能力が低下とするといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、電極と誘電体との間で発生する火花放電を抑制し、誘電体の劣化あるいは処理能力の低下を抑制できるプラズマ放電リアクターおよびガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明のプラズマ放電リアクターは、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、且つ少なくともいずれか一方の前記電極と当接している誘電体と、を有し、前記誘電体は、被処理ガスを通過させる内部を有し、前記誘電体の前記内部で前記被処理ガスに含有される処理対象物質を処理するプラズマ放電リアクターにおいて、前記誘電体の外面と前記誘電体の前記内部を構成する壁面は共に前記処理対象物質を吸着する吸着材で被覆され、前記誘電体は、前記少なくとも一方の電極と前記当接している部分において前記誘電体自体が露出している。
【発明の効果】
【0007】
上述したように、本発明によれば、電極に当接する誘電体の当接部分において、誘電体自体が露出し吸着材で被覆されていないので、誘電体の当接部分に水分が吸着されるのを抑制することができる。このことによって、電極と誘電体との間において火花放電の発生を抑制し、誘電体の劣化あるいは処理能力の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係るプラズマ放電リアクターは、例えば揮発性有機化合物、あるいは臭気成分等を含むガスを処理する装置であり、例えば工場、研究施設、ホテル、病院、家屋などの施設において利用することができる。本発明に係るプラズマ放電リアクターは、第1の電極と第2の電極との間において発生する放電によって、吸着材に吸着した処理対象物質を処理することができる。
【0009】
本発明に係るプラズマ放電リアクターにおいて、誘電体は第1の電極と第2の電極の少なくとも一方の電極と当接している。誘電体と電極とが当接することによって放電を安定させることができる。
【0010】
誘電体は、例えばセラミック等の物質からなっていて、その内部を処理対象物質が通過できるようになっている。内部を処理対象物質が通過できるものとして、例えば3次元網目構造、ハニカム構造或いはコルゲート構造になっているものがある。そして、誘電体の外面と、誘電体の内部を構成する壁面は共に吸着材で被覆されている。処理対象物質は電極間に配置された誘電体の内部を通過する際に吸着材に吸着され、電極間に発生した放電によって処理される。外面とは、誘電体の面のうち少なくとも電極と接する面のことである。
【0011】
そして、誘電体は、電極と当接している部分において誘電体自体が露出している。つまり、誘電体は、吸着材を介さずに直接電極と当接しており、誘電体は電極と当接している部分において吸着材で被覆されていないので、水分が吸着されるのを抑制することができる。このことによって、この電極と誘電体との間において火花放電の発生を抑制し、誘電体の劣化あるいは処理能力の低下を抑制できる。
【0012】
本実施の形態に係るプラズマ放電リアクターとしては、カートリッジタイプの構成が挙げられる。これは、ガス処理装置の装着部に対して着脱自在に構成されたプラズマ放電リアクターを指している。ガス処理装置は、カートリッジタイプであるプラズマ放電リアクターが装着される装着部を少なくとも備えているガス処理装置である。カートリッジタイプとすることで、必要に応じてプラズマ放電リアクターを容易に交換することが可能にされている。
【0013】
もちろん本発明に係るプラズマ放電リアクターは、上述のカートリッジタイプでなくてもよく、ガス処理装置に交換困難に搭載されている構成でもよい。この構成の場合でも同様に、ガス処理装置は、プラズマ放電リアクターが装着される装着部を有している。
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明するが、本発明は本実施の形態に限るものではない。
【0015】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係るプラズマ放電リアクターは、処理対象物質を含有している被処理ガスをプラズマによってガス処理(プラズマ処理)するカートリッジであって、電極と当接している部分において、誘電体自体が露出している誘電体を備えている。
【0016】
つまり、当接部において誘電体には吸着材が被覆されていないので、電極と誘電体との間で発生している火花放電を抑制し、誘電体の劣化あるいは処理能力の低下を抑制できる。
【0017】
ここで処理対象物質としては、例えば、揮発性有機化合物(VOCs)、窒素酸化物、臭気物質等が挙げられるが、これらの物質に限定されず、あらゆるガス状物質を対象としている。
【0018】
以下、本実施の形態に係るプラズマ放電リアクターについて、図面を参照して説明する。図1に、本実施の形態に係るガス処理としてプラズマ放電リアクターの断面図を示す。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態のプラズマ放電リアクター1は、処理対象物質を含有している被処理ガスを処理するカートリッジであって、被処理ガスのプラズマ処理を行うための反応容器7を備えている。この反応容器7には、被処理ガスが導入される導入口8と、プラズマ処理された処理ガスが排気される排気口9とが対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0020】
また、このプラズマ放電リアクター1は、第1の電極である複数の接地電極4と、この接地電極4に対して空間を隔てて配置された第2の電極である複数の高電圧印加電極2と、を備えている。そして、プラズマ放電リアクター1は、被処理ガスに含有された処理対象物質を吸着する吸着材13で被覆された誘電体5と、高電圧印加電極2と接地電極4との間に電圧を供給する電源部6とを備えている。接地電極4および高電圧印加電極2は電源部6に接続配線を介して電気的に接続されている。
【0021】
誘電体5は、図1に示すように、第1の電極である接地電極4と当接していて、第2の電極である高電圧印加電極2と離間している。そして、誘電体5はその内部を処理対象物質が通過できるように構成されている。本実施の形態では、誘電体5は、図2に示すように、3次元網目構造をなしているが、例えばハニカム構造あるいはコルゲート構造をなしているものでもよい。このような構造にすることによって、誘電体5の表面積が大きくなり、誘電体5の上に吸着材13が被覆される面積が大きくなる。吸着材13は、図2に示すように、誘電体5の外面および内部を含めた3次元網目構造全体に被覆されている。ここで、誘電体とは、比誘電率が10〜500の範囲にある物質を指している。
【0022】
さらに必要であれば、図2に示すように、誘電体5の上には、強誘電体材料12が被覆されていて、さらにその上に吸着材13が被覆されていてもよい。強誘電体材料12は、誘電体5を被覆しても被覆しなくてもよいが、誘電体5が強誘電体材料12で被覆されていることによって、放電電圧を低下させ、安定した放電を得ることができる。ここで、強誘電体材料とは、比誘電率が1600〜10000の範囲にある材料を指している。
【0023】
吸着材13で誘電体5を被覆するには、例えば吸着材13を含む溶液中に誘電体5を浸漬させ、誘電体5に吸着材13を添着させた後に溶液中から取り出して乾燥させることが考えられる。
【0024】
誘電体5の当接部11aにおいて吸着材13で被覆されてはおらず、誘電体5自体が露出している。つまり、当接部11aには、吸着材13が被覆されていないので、当接部11aには水分が吸着されにくくなる。このような当接部11aにおいて誘電体5自体が露出している誘電体を得るためには、一旦誘電体5の上に吸着材13を被覆させた後に、被覆させた吸着材13を除去することが考えられる。吸着材13を除去する方法として、例えば研磨することが考えられる。なお、吸着材13を除去する際に、強誘電体材料12は吸着材13と共に除去されてもよいし、されなくてもよい。
【0025】
接地電極4は、ロッド形状の電極であり、且つ互いに離間して配置された複数の電極であることが好ましい。こうすることによって、被処理ガスの通過が容易になる。さらに、複数の電極のうちで各ロッド形状の電極は互いに平行に配置されていることが好ましい。こうすることによって、放電の分布がより均一になり、処理効率が向上する。また、同様の理由により、高電圧印加電極2もロッド形状の電極であり且つ互いに離間して配置された複数の電極であることが好ましく、さらには複数の電極が平行に配置されていることが好ましい。
【0026】
さらに、接地電極4は、接地電極4の長尺方向に対して交差する方向の断面の輪郭が湾曲した形状であることが好ましい。こうすることによって火花放電が起こりにくくなり、被処理ガスの処理を良好に行うことができる。より好ましくは、接地電極4の断面形状は円形である。これと同様の理由により、高電圧印加電極2も高電圧印加電極2の長尺方向に対して交差する方向の断面の輪郭が湾曲した形状であることが好ましく、断面形状が円形であることがより好ましい。
【0027】
さらに、ロッド形状の接地電極4の長尺方向とロッド形状の高電圧印加電極2の長尺方向とは互いに交差する方向に配置されていることが好ましい。接地電極4と高電圧印加電極2の交差する領域では放電が起こりやすくなるため、良好に被処理ガスの処理を行うことができる。
【0028】
また、接地電極4は、外周部が被覆材で被覆されておらず、いわゆる裸電極として露出した構成になっていることが好ましい。電極を裸電極にすることによって、放電をより一層低電圧で行うことができる。
【0029】
高電圧印加電極2は、外周部が例えばセラミック材などの誘電体が円筒状に形成されたバリヤ材3で被覆されていることが好ましい。電極にバリヤ材3を被覆することによって放電による熱の発生を抑制することができ、良好に被処理ガスの処理を行うことができる。
【0030】
なお、高電圧印加電極2および接地電極4は、例えばワイヤー状やメッシュ状等の他の形状に形成されても良い。また、高電圧印加電極2と接地電極4は、上述した配置と逆に配置されても良く、バリヤ材3で被覆された接地電極と、被覆されていない裸電極としての高電圧印加電極とを備える構成でも良く、この構成の場合、誘電体の表面に設けられる強誘電体材料および吸着材は、高電圧印加電極に当接される当接面以外に被覆されている。
【0031】
また、本実施の形態のプラズマ放電リアクターでは、バリヤ材で被覆された高電圧印加電極2と誘電体5とが離間している構成が採られたが、離間しているか否かは特に問わず、バリヤ材で被覆された高電圧印加電極2と誘電体5とが当接する構成にしても良い。
【0032】
以上のように構成されたプラズマ放電リアクター1について、処理対象物質を含有している被処理ガスを処理する動作を説明する。
【0033】
プラズマ放電リアクター1では、バリヤ材3で被覆された高電圧印加電極2に、電源部6によって電圧を印加することで、高電圧印加電極2と接地電極4との間に、誘電体5を介して非平衡プラズマが発生する。被処理ガスaは、導入口8から反応容器7内に導入されて、誘電体5を通過する間に処理され、排気口9から処理ガスbとして系外へ排出される。
【0034】
上述したように、プラズマ放電リアクター1によれば、誘電体5が、接地電極4に当接される当接面11aのみが吸着材13で被覆されていないことで、接地電極4と誘電体5の当接面11aとの間で発生している火花放電を抑制し、かつ放電以外の有効電流を抑制することによる処理能力の向上、および電力の抑制を図ることができる。
【0035】
以下、上述した誘電体5と異なる他の誘電体を備える他の実施の形態のプラズマ放電リアクターについて説明する。なお、他の実施の形態において、上述した実施の形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
(第2の実施の形態)
本実施の形態に係るプラズマ放電リアクターは、図3に示す誘電体が用いられる。
【0037】
図3に示すように、誘電体15の上には、強誘電体材料12が被覆され、さらに強誘電体材料12の上に触媒担持吸着材14が被覆されている。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態と同様である。本実施の形態のように、誘電体15に、触媒を担持させた触媒担持吸着材14を被覆することによって、被処理ガスの処理能力をより向上させることができる。
【0038】
以上のような基本構成であるプラズマ放電リアクター1は、ガス処理装置が有する装着部に対して着脱可能に構成され、ガス処理装置の装着部に装着された状態でプラズマ放電リアクター1として使用されるカートリッジとして構成されてもよい。
【0039】
また、本実施の形態のガス処理装置は、図示しないが、上述のプラズマ放電リアクター1が着脱可能に装着される装着部を備えている。このガス処理装置は、装着部にカートリッジタイプのプラズマ放電リアクター1が装着された状態で、プラズマ放電リアクター1によってプラズマ処理を行う。また、ガス処理装置は、内部に上述したプラズマ放電リアクター1が組み付けられる構成にされてもよい。
【実施例】
【0040】
本発明の効果を以下に示す実施例および参考例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
実施例1では、図2に示したように、強誘電体材料12がセラミックからなる誘電体5の上に被覆され、さらに吸着材13が強誘電体材料12の上に被覆されている。さらに、この誘電体5は、裸電極である接地電極4に当接する当接部11aにおいて露出している。
【0042】
図1に示したプラズマ放電リアクター1を用いて、処理対象物質の処理率を求めた。高電圧印加電極2、接地電極4としては、直径φ1mmのロッド棒を使用した。バリヤ材3としては、アルミナによって内径1mm、外径3mmの筒状に形成したものを使用した。
【0043】
誘電体5は、セラミックとしてアルミナが用いられ、体積2cm3、厚さ5mmの3次元網目構造をなす誘電体5を有している。誘電体5の上に、強誘電体材料12として0.2gのBaTiO3が被覆され、さらに強誘電体材料12の上に吸着材13として0.4gの疎水性ゼオライトが被覆されている。ここで用いた疎水性ゼオライトは、SiO2/Al23モル比が1000以上のゼオライトである。このように誘電体5に強誘電体材料12及び吸着材13が被覆されたものにおいて、当接部11aを含む面全体を研磨して強誘電体材料12及び吸着体13を除去した。つまり、当接部11aにおいて、誘電体5は露出していて、強誘電体材料12及び吸着材13は被覆されていない。
【0044】
被処理ガスaとしては、5ppmのNH3を含有するAir(通常の窒素と酸素を主成分とする空気)ベースガスを用い、流速20L/minで反応容器7内に流入させた。次いで、高電圧印加電極2と接地電極4との間に、電源部6よって電圧を印加してプラズマ放電を生起させて、Airベースガスのプラズマ処理を行った。このときの電力は1.4Wとした。
【0045】
図4に、本実施例のプラズマ放電リアクター1から排出された処理ガスbを検知管によって測定した結果を示す。なお、図4において、曲線L1が実施例1、曲線L2が実施例2、曲線C1が比較例1、曲線C2が比較例2をそれぞれ示している。図4中の曲線L1で示すように、本実施例では、放電時間が90min経過後の処理率が60%であった。
【0046】
(実施例2)
実施例2では、図3に示したように、強誘電体材料12がセラミックからなる誘電体15の上に被覆され、さらに触媒担持吸着材14が強誘電体材料12の上に被覆されている。さらに、この誘電体15は、裸電極である接地電極4に当接する当接部11aにおいて露出している。
【0047】
誘電体15は、セラミックとしてアルミナが用いられ、体積2cm3、厚さ5mmの3次元網目構造をなす誘電体5を有している。誘電体5の上に、強誘電体材料12として0.2gのBaTiO3が被覆され、さらに強誘電体材料12の上に触媒担持吸着材14としてAgが1wt%担持された0.4gの疎水性ゼオライトが被覆されている。このように誘電体5に強誘電体材料12及び触媒担持吸着材14が被覆されたものにおいて、当接部11aを含む面全体を研磨して強誘電体材料12及び触媒担持吸着体14を除去した。つまり、当接部11aにおいて、誘電体15は露出していて、強誘電体材料12及び触媒担持吸着材14は被覆されていない。それ以外の構成および条件は、上述の実施例1と同一である。
【0048】
図4に、プラズマ放電リアクター1から排出された処理ガスbを検知管によって測定した結果を示す。図4中の曲線L2で示すように、本実施例2は、放電時間が90min経過後の処理率が80%であった。
【0049】
(比較例1)
比較例1では、セラミックからなる誘電体5の全面に亘って強誘電体材料12が被覆され、さらにこの強誘電体材料12の表面に吸着材13が被覆されてなる誘電体25を使用した。
【0050】
誘電体25は、セラミックとしてアルミナが用いられ、体積2cm3、厚さ5mmの3次元網目構造をなす誘電体5を有している。強誘電体材料12として、0.3gのBaTiO3を誘電体5の全面に亘って被覆し、さらに強誘電体材料12の表面に、吸着材13として0.6gの疎水性ゼオライトを被覆した。この誘電体25は当接部11aも、強誘電体材料12及び吸着材13で被覆されている。それ以外は、上述の実施例1と同一である。
【0051】
図4に、プラズマ放電リアクター1から排出された処理ガスbを検知管によって測定した結果を示す。図4中の曲線C1で示すように、本比較例1では、放電時間が90min経過後の処理率が30%であった。
【0052】
(比較例2)
比較例2は、誘電体として、セラミックからなる誘電体5の全面に亘って強誘電体材料12で被覆され、さらにこの強誘電体材料12の表面が触媒担持吸着材14で被覆されてなる誘電体35を使用した。
【0053】
誘電体35は、セラミックとしてアルミナが用いられ、体積2cm3、厚さ5mmの3次元網目構造をなす誘電体5を有している。強誘電体材料12として、誘電体5の全面に亘って0.3gのBaTiO3を被覆し、さらに強誘電体材料12の表面に、触媒担持吸着材14としてAgが1wt%担持された0.6gの疎水性ゼオライトを被覆した。この誘電体25は当接部11aも、強誘電体材料12及び触媒担持吸着材14で被覆されている。それ以外は、上述の実施例1と同一である。
【0054】
図4に、プラズマ放電リアクター1から排出された処理ガスbを検知管によって測定した結果を示す。図4中の曲線C2で示すように、本比較例2では、放電時間が90min経過後の処理率が30%であった。
【0055】
上述したように、実施例2の処理率が最も高く、80%の処理率を得ることができた。実施例1も処理率が60%で良好であった。
【0056】
一方、比較例1、2では、実施例1、2に比較して電力当たりの処理能力が低く、いずれも30%程度の処理率にとどまった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態のプラズマ放電リアクターを模式的に示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態のプラズマ放電リアクターに使用される誘電体を模式的に示す断面図である。
【図3】第2の実施の形態のプラズマ放電リアクターに使用される誘電体を模式的に示す断面図である。
【図4】実施例1、2および比較例1、2について、放電時間と処理率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 プラズマ放電リアクター
2 高電圧印加電極
3 バリヤ材
4 接地電極
5 誘電体
6 電源部
10 収納空間
11a 当接部
12 強誘電体材料
13 吸着材
14 触媒担持吸着材
a 被処理ガス
b 処理ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、且つ少なくともいずれか一方の前記電極と当接している誘電体と、を有し、
前記誘電体は、被処理ガスを通過させる内部を有し、
前記誘電体の前記内部で前記被処理ガスに含有される処理対象物質を処理するプラズマ放電リアクターにおいて、
前記誘電体の外面と前記誘電体の前記内部を構成する壁面は共に前記処理対象物質を吸着する吸着材で被覆され、
前記誘電体は、前記少なくとも一方の電極と前記当接している部分において前記誘電体自体が露出していることを特徴とするプラズマ放電リアクター。
【請求項2】
前記誘電体は、前記第2の電極と離間している請求項1に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項3】
前記第2の電極はバリヤ材で被覆されている請求項1または請求項2に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項4】
前記第1の電極は裸電極である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項5】
前記吸着材には触媒が担持されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項6】
前記第1の電極はロッド形状の電極であり、且つ互いに離間して配置された複数の電極である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項7】
前記第1の電極は前記第1の電極の長尺方向に対して交差する方向の断面の輪郭が湾曲した形状である請求項6に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項8】
前記第2の電極はロッド状の電極であり、且つ互いに離間して配置された複数の電極であり、前記第2の電極の長尺方向は前記第1の電極と交差する方向である請求項6または請求項7に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項9】
前記当接している部分は、前記誘電体を被覆していた前記吸着材が除去されたことで前記誘電体自体が露出している部分である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のプラズマ放電リアクター。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のプラズマ放電リアクターと、前記プラズマ放電リアクターを装着する装着部とを有するガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−122658(P2006−122658A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242928(P2005−242928)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】