説明

プリプレグシート固定装置とプリプレグシート固定方法及び多層プリント配線基板の製造方法

【課題】未硬化のプリプレグシートに孔を形成し、孔に導電性ペーストを充填し、銅箔等と一体化してなる多層プリント配線基板において、プリプレグシートの面積を大きくした場合、プリプレグシートを吸着ステージに吸着させる場合に、皺が発生する場合がある。
【解決手段】未硬化の複合プリプレグシート10に孔21を形成し、これを吸着ステージ14の上に吸着する際に、複合プリプレグシート10の4辺の複数個所を吸着治具11を用いて固定し、複合プリプレグシート10の一部を積極的に下側に凸の形状とし、複合プリプレグシート10の下に凸の頂点に対応する吸着ステージ14を局所的に真空引きしておき、まず最初に複合プリプレグシート10の凸の頂点と、吸着ステージ14の一部を真空吸着させた後、更に複合プリプレグシート10を吸着ステージ14に接するようにさせると同時に、吸着ステージ14の独立した吸着ゾーン15も真空引きする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の部品実装用のプリント配線基板として使われるIVH(インナービアホール、IVHは層間接続を意味する)を有する多層プリント配線基板の製造に用いるプリプレグシート固定装置とプリプレグシート固定方法及び多層プリント配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話を始めとする電子機器の高性能化、小型化の要求に伴い、IVH(インナービアホール)を有する多層プリント配線基板が広く使われている。こうしたものとして、例えば松下電器産業株式会社の登録商標である“ALIVH”として、特許文献1を始めとした一連の多層プリント配線基板が提案されている。このようなIVHを有する多層プリント配線基板は、アラミド不織布やガラス織布を未硬化の樹脂で固めたプリプレグシートに所定の孔(この孔がIVHとなる)を形成し、この孔に導電性ペーストを充填(ビアペースト充填と呼ぶ)した後、銅箔と共に積層(あるいは多層に積層)するものである。こうした導電性ペーストを用いたIVH(インナービアホール)を使用する多層プリント配線基板は、製品設計の自由度が高いため、携帯電話を始めとする電子機器で広く使われている。
【0003】
こうした多層プリント配線基板においてコストダウンを行うには、基板のワークサイズの拡大(つまりプリプレグシートの大判化)が有効である。しかしプリプレグシートを構成する樹脂は未硬化であり、プリプレグシートの厚み自体が100〜200μmと極めて薄いため、プリプレグシートの面積を大きくした(大判化した)場合、プリプレグシートの取り扱いが難しくなる。例えば、真空吸着ステージに大判化したプリプレグシートを真空吸着させる場合、前記プリプレグシートの表面に皺が発生する場合がある。そして真空吸着ステージの上に吸着したプリプレグシートに発生した皺は、その後工程(例えば、図6等で後述するビアペースト充填工程)で、製品の歩留まりに影響を与える可能性がある。
【0004】
次にプリプレグシートを吸着ステージに吸着する際に、発生しやすい皺について、図7を用いて説明する。図7は、従来のプリプレグシートを吸着ステージに吸着する様子を示す斜視図である。図7において、プリプレグシート1の周辺部を、吸着治具2で固定している。通気材3は通気性を有する部材(例えば紙や布)である。吸着ステージ4の上には、焼結金属等からなる多孔質板5を固定している。そして矢印6に示すように、吸着ステージ4の上に、通気材3を介して、プリプレグシート1を真空吸着する。なおプリプレグシート1には、IVH(インナービアホール)となる孔7を多数形成している。ここでプリプレグシート1の面積が小さい場合(例えば300×300mm、400×400mm程度)は、特に課題は発生しない。しかしプリプレグシート1の面積が大きくなったり(例えば600×600mm、700×700mm等)、その厚みが薄くなったりするほど、プリプレグシート1を吸着ステージに真空吸着させる際に皺が発生しやすくなることが考えられる。
【0005】
図8は、プリプレグシートが大面積化した時の課題について説明する斜視図及び断面図である。図8(A)は、大面積化(あるいは大判化)したプリプレグシートを吸着ステージ上に吸着した場合に発生する皺について説明する斜視図である。図8(A)において、吸着ステージ4の表面には、プリプレグシート1を真空吸着によって固定している。8は、プリプレグシート1に発生した皺である。図8(B)は、図8(A)の任意の位置における断面図である。図8(B)において、吸着ステージ4は、一つの真空室から構成されており、矢印6aに示すように真空引きする(真空ポンプ等は図示していない)。そして矢印6b、6cに示すような空気の流れ(あるいは負圧)によって、プリプレグシート1を、通気材3の上に吸着している(なお多孔質板5は図示していない)。ここでプリプレグシート1には、IVHとなる数十個〜数万個の孔7を形成している。そしてこの孔7を介して真空(負圧)が漏れる。そしてこの孔7を介して真空が漏れる分、プリプレグシート1の吸着力は低くなり、皺8が発生しやすくなる。
【0006】
更にプリプレグシート1と、吸着ステージ4と(あるいは通気材3と)を、複数個所で接触させて、吸着させた場合、皺8が発生しやすくなる。このような接触ムラは、プリプレグシート1の面積が大きくなるほど、発生しやすくなる。また通気材3の厚みバラツキ等も皺8の発生原因になることがある。更に多層プリント配線基板を薄層化するためには、プリプレグシート1の薄層化が必須となるが、プリプレグシート1の厚みが薄くなった場合も、プリプレグシートの曲がりやすさ(あるいはスティフネス)が低下する結果、皺8の発生原因になる可能性もある。
【0007】
このように例えば300×300mmのような、比較的小面積のプリプレグシート1の場合、皺8が発生しにくくとも、その大きさが400×400mm、500×500mmと大判化するほど、皺8が発生する可能性が増加する。そして吸着ステージ4上に吸着したプリプレグシート1の表面に皺8が発生した場合、次工程(例えば、導電性ペーストの充填工程であるビアペースト充填工程)において、プリプレグシート1にダメージを与えたり、孔7の位置関係にズレを発生させたりする可能性が考えられる。
【特許文献1】特許第3207663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のプリプレグシート1に孔7を形成し、ここに導電性ペーストを充填し、これをIVH(インナービアホール)として多層積層する多層プリント配線基板において、プリプレグシート1の面積が増加するにつれて、プリプレグシート1を吸着ステージ4に吸着する工程において、前記プリプレグシート1に皺8が発生しやすいという課題が発生することがあった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、大面積のプリプレグシートを吸着ステージに吸着させる際に、前記プリプレグシートに皺を発生させることなく、プリプレグシートを吸着ステージに吸着させられるプリプレグシート固定装置とプリプレグシートの固定方法及び多層プリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明は、プリプレグシートを、真空吸着する吸着ステージと、前記プリプレグシートの4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージの上に前記プリプレグシートを移動させる移動部と、からなるプリプレグシート固定装置を用い、前記吸着ステージに時間差をつけながら独立して真空吸着する、複数個の独立した真空吸着部を有している孔開きプリプレグシート固定装置である。
【0011】
このような構成によって、インナービアとなる孔を多数個形成した大判のプリプレグシートであっても、皺を発生させることなく吸着ステージに吸着、固定することができる。
【0012】
その結果、前記孔に導電性のビアペーストを充填しこれをインナービアとして、銅板等と共に多層に積層する場合においても、前記インナービアとなる孔の位置ズレの発生や、プリプレグシートへのダメージの発生を防止できるため、多層プリント配線基板の高精度化、高歩留まり化を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、プリプレグシートの大判化が可能であり、多層プリント配線基板の大面積化に伴う低コスト化を実現できる。その結果、プリプレグシートに形成した孔に導電性ペーストを充填し、これをIVH(インナービアホール)とする多層プリント配線基板の低コスト化、さらにはこうした多層プリント配線基板を用いた携帯電話等の電子機器の低コスト化を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
なお本発明の実施の形態に示された一連の図面は模式図であり、各位置関係を寸法的に正しく示したものではない。
【0015】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における熱伝導基板について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、実施の形態におけるプリプレグシートの吸着方法について説明する斜視図である。図1において、10は複合プリプレグシート、11は吸着治具、12は矢印、13は通気材(例えば紙や布)、14は吸着ステージ、15は吸着ゾーンである。なお複合プリプレグシート10は、後述する図2で詳しく説明する。吸着治具11は、複合プリプレグシート10を真空吸着や機械的に、保持する治具である。ここで吸着治具11は、複合プリプレグシート10の4辺に形成した吸着代(きゅうちゃくしろ)で、複合プリプレグシート10の4辺を複数個所で掴んで固定する。なお吸着代は、周辺部から15mm以下、望ましくは10mm以下が望ましい。吸着代を15mmより幅広にした場合、それだけ複合プリプレグシート10の多層基板に加工できる面積(つまり、インナービアホールとなる孔を形成できる領域)が狭くなる。また複合プリプレグシート10の周辺部に皺を発生させてしまう可能性がある。
【0017】
なお吸着治具11として、ゴムや樹脂を用いた吸着パッド(真空吸着でシートを吸着するパッド)を使うことで、複合プリプレグシート10にダメージを与えない。なお治具等で複合プリプレグシート10を機械的に挟んだり、つかんだりしても良い。この時もつかみ代(あるいは挟み代)は、複合プリプレグシート10の周辺部(周辺から15mm以下、望ましくは10mm以下)とする。なお吸着治具11は、モーター等で駆動する移動部に固定されているが、図1では移動部は図示していない。
【0018】
また吸着ステージ14は、図3や図4で後述するように、独立して真空吸着できる、複数個の独立した真空吸着部(図1の吸着ゾーン15a〜15dに相当)から構成されている。そしてこの真空吸着部は、後述する図5で説明するように、シーケンサ等を使うことで、時間差をつけながら独立して真空吸着できる。
【0019】
そして図1に示すように、少なくとも複合プリプレグシート10の4辺以上を、吸着治具11で複数個所固定し、複合プリプレグシート10の中央部を、自重で下に凸の形状とする。そして矢印12に示すように、通気材13や複合プリプレグシート10を、吸着ステージ14の上に吸着させる。なお通気材13は、複合プリプレグシート10を吸着させる前に、吸着ステージ14の上に吸着させておくことが望ましい。ここで4辺を複数個所で、その周辺部から15mm以下で掴むことで、安定して複合プリプレグシート10の中央部を下に凸とできる。
【0020】
本実施の形態において、下に凸となる部分は、複合プリプレグシート10の中央部に拘る必要は無い。本実施の形態では、複合プリプレグシート10の一部を、積極的に下に凸とすることで、皺無しに複合プリプレグシート10を吸着ステージ14に吸着させようというものであり、例えば下に凸となる位置は、複合プリプレグシート10の形状(正方形、長方形等)に応じて最適化できる。また複合プリプレグシート10の吸着治具11による掴み方や、掴み位置を工夫することで、複合プリプレグシート10の中央部をその再現性よく、自重で下に凸の形状にできる。そして吸着ゾーン15a〜15dの真空引きのシーケンスを調整することで、皺の発生を抑制できる。
【0021】
また下に凸となる位置に相当する吸着ゾーン15の位置から、真空吸着(詳細については、図5で説明する)を開始することで、皺の発生を防止できる。
【0022】
ここで吸着ステージ14は、複数個の独立した吸着ゾーン15a〜15dから形成されている。そして吸着ゾーン15a〜15dは、互いに独立して真空吸着を行うことができる。そして吸着ゾーン15a〜15dは、シーケンスによって時間差をつけながら真空吸着するように調整している。なお吸着ゾーン15a〜15dの数は、2以上(更に望ましくは3以上)である。吸着ゾーン15の個数が1だけの場合、図8(A)、(B)に示したように、複合プリプレグシート10の面積が大きくなった場合、複合プリプレグシート10に吸着ムラや皺が発生する可能性がある。なお複合プリプレグシート10の面積の増加に伴い、吸着ゾーン15a〜15dの数を2以上に増やすことが有効である。
【0023】
図2(A)〜(C)は、複合プリプレグシートについて説明する断面図及び斜視図である。図2(A)は複合プリプレグシートに孔を形成する様子を説明する断面図である。図2(A)において、16は保護フィルム、17a、17bは繊維、18は樹脂、19はレーザー装置、20はレーザー光である。ここでプリプレグシートは、繊維17a、17bに未硬化状態の樹脂18を含浸させたものである。そしてプリプレグシートの両面を保護フィルム16で保護したものが、複合プリプレグシート10となる。なお繊維17a、17bの違いは、繊維の向きの違いである(XYの面方向に編んだ場合)。なお繊維17a、17bは織布であっても、不織布であっても良い。また繊維17a、17bとして、アラミド繊維やガラス繊維等を、その用途に応じて選択する。またこれら繊維17a、17bを固定する樹脂18としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが、コストや信頼性の面から望ましい。
【0024】
図2(B)は、複合プリプレグシートに孔を形成した後の断面図である。このように孔21を形成した複合プリプレグシート10を、図1に示すようにして、吸着ステージ14の上に吸着することになる(図1では、孔21は図示していない)。そして、この孔21の中にインナービアとなる導電性ペーストを充填することになる(詳細については、図6で説明する)。ここで吸着ステージ14の上に固定する前の、複合プリプレグシート10は、その面積が大きくなるほど、図2(C)に示すように皺22が発生しやすくなる。これは複合プリプレグシート10が、熱膨張係数の異なる部材の積層体からなるためである。更に複合プリプレグシート10に、1シート当たり数万〜数十万個の孔21を形成した場合、更に皺22が発生しやすくなる。これは孔21の粗密(あるいはその分布)が場所によって大きく異なる場合があるためである。また複合プリプレグシート10の面積が大きくなったり、その厚みが薄くなったりすると更に皺22が発生しやすくなる。
【0025】
本実施の形態においては、図1に示すように、複合プリプレグシート10を、自重でその中央部を下に凸になるように積極的に垂れ下げることで、皺22を発生させることなく吸着ステージ15に吸着させる。次に図3(A)〜(B)、図4(A)〜(C)を用いて、このように皺22が発生しやすく、取り扱いにくい複合プリプレグシート10を、如何に皺22を発生させることなく、吸着ステージ14の上に安定して真空吸着させるかについて様子を説明する。
【0026】
図3(A)〜(B)は、複合プリプレグシートを吸着ステージの上に真空吸着させる様子を説明する断面図である。図3(A)〜(B)において、23は点線であり、吸着ゾーン15等の省略を意味する。また24は吸着部、25は吸着済み部である。
【0027】
まず図3(A)に示すようにして、複合プリプレグシート10を、その中央部が下に凸になるように、吸着治具11を用いて保持する。なお吸着治具11は、複合プリプレグシート10の周辺部の4辺を複数個所で固定することが望ましい(なお図1では、複合プリプレグシート10の4辺を複数個所で掴んでいるが、図3、図4ではそこまで細かく図示していない)。ここで例えば、図3(A)に示すように、積極的に4辺を複数個所で保持(あるいは固定)することで、複合プリプレグシート10の中央部を下に凸状(これは三次元的な球面を含んでいる)とする。なおこの下に凸の寸法は(あるいは複合プリプレグシート10の周辺部からみた凸の山の高さ)は、一例として、複合プリプレグシート10が500mm×500mmの面積の場合、5mm以上200mm以下(望ましくは100mm以下、更に望ましくは50mm以下)が望ましい。凸の高さを5mm以下にしようとするには、複合プリプレグシート10を強く引っ張る必要があり、複合プリプレグシート10の寸法に影響を与える可能性がある。また200mm以上とした場合、かえって皺22が発生する可能性がある。また600×600mmの場合、6mm以上300mm以下(望ましくは150mm以下、更に望ましくは70mm以下)が望ましい。このように複合プリプレグシート10の面積に応じて、凸部の高さの範囲を制御することが望ましい。このようにすることで、異なる複合プリプレグシート10であっても、再現性良く取り扱うことができる。
【0028】
なお図3(A)における吸着部24は、図1に記載した独立して真空吸着可能な吸着ゾーン15a〜15dの断面に相当する。図3(A)において、互いに独立した、複数の真空吸着部からなる吸着ステージ14の中央部(Vaq1)だけを選択的に吸着部24として、矢印12bに示すように真空引きしている。矢印12bは、通気材13を介して、空気が吸着されることを意味し、この部分を複合プリプレグシート10の、下に凸になった頂点部分と重なるようにする。そして矢印12aで示すように、複合プリプレグシート10を、吸着ステージ14に近づける。そして複合プリプレグシート10の下に凸となった部分の頂点を、吸着ステージ14に接するようにすることで、複合プリプレグシート10の一部を選択的に吸着ステージ14に吸着する。こうして図3(B)に示す状態とする。
【0029】
図3(B)において、吸着済み部25は、複合プリプレグシート10が吸着ステージ14に選択的に吸着されている部分に相当する。こうして複合プリプレグシート10の一番下に垂れ下がった部分を、最初に吸着部24で選択的に吸着することで、皺22が発生しない。その後、徐々に(例えば図4(A)〜(C)に示すように)複合プリプレグシート10を下に移動させると共に、複合プリプレグシート10と吸着ステージ14の接触面積を広げると同時に、吸着ステージ14における吸着部24の面積を広げる。
【0030】
図4(A)〜(C)は、複合プリプレグシートを吸着ステージの上に吸着する様子を説明する断面図である。図4(A)に示すように、更に複合プリプレグシート10を下ろす。同時に吸着部24の面積を広げる(例えば、Vaq1から、Vaq1+Vaq2へ)。こうして複合プリプレグシート10に皺22を形成することなく、徐々に吸着ステージ14の上に吸着させる。
【0031】
図4(B)は、更に複合プリプレグシート10の吸着済み部25の面積を広げた(例えば、Vaq1+Vaq2から、Vaq1+Vaq2+Vaq3へ)状態を示す断面図である。図4(B)において、吸着ステージ14の吸着部24は更に広がっている。そして最後に図4(C)に示すように、複合プリプレグシート10の幅方向を全て、吸着ステージ14の上に、矢印12dに示すように固定する(例えば、Vaq1+Vaq2+・・・・+Vaq(n))。その後、複合プリプレグシート10の4辺を複数個所で固定していた吸着治具11を、矢印12cに示すように取り外す。こうすることで、複合プリプレグシート10の自重も活かしながら、複合プリプレグシート10全体を、吸着ステージ14の表面に皺22を発生させることなく、吸着できる。
【0032】
このようにして、複合プリプレグシート10を、徐々に(最初から皺22が発生しないように吸着させ、その状態で吸着面積を広げるようにすることで)吸着ステージ14の上に、皺22が発生しないように(あるいは伸ばすように)して真空吸着させる。
【0033】
図5は、吸着ステージの真空引きの手順を説明する図であり、例えば図1における吸着ステージ14の真空引きのシーケンスに相当する。図5において、26は真空ON(つまり真空引きを行っている)となっている期間を、27a、27bは補助線を示す。そしてX軸は工程順番(複合プリプレグシートの下降開始→シートのステージ接触→真空吸着完了→次工程開始(ビアペースト充填工程開始)→次工程完了(ビアペースト充填工程完了)を示す。なお次工程(ビアペースト充填工程)については、図6で後述する。図5においてY軸は、経過時間(吸着開始→吸着完了)を示す。また図中において、Vaq1とは、複合プリプレグシート10を一番最初に吸着させる真空吸着部である。そしてVaq2、Vaq3、・・・と、順次真空吸着させている。そしてVaq(n−1)、Vaq(n)となる。またVaq(n)は、吸着ステージ14の一番最後に真空引きする部分に相当する。なおここでnは2以上である。nを2以上とすることで、吸着ステージ14における複合プリプレグシート10の皺22の発生を防止できる。また図5における補助線27bは、例えばVaq1→Vaq2→Vaq3と、真空引きのタイミングを少しずつずらしている(あるいは時間差をつけて遅らせている)ことを示している。
【0034】
図6は、吸着ステージの上に真空吸着させた複合プリプレグシートの孔に導電性ペーストを充填する様子を説明する断面図及び斜視図であり、ビアペースト充填工程とも呼ばれる。図6(A)において、吸着ステージ14(図示していない)の上に、通気材13を介して、複合プリプレグシート10を皺22を発生させることなく真空吸着している。図6(A)において、28はスキージ、29a、29bは導電性ペーストである。スキージ28を、矢印12aの方向に動かしながら、導電性ペースト29aを孔21に埋め込む。ここで孔21は、矢印12bで示すように真空引きしている。こうして孔21の内部に、導電性ペースト29bを充填する。図6(B)は、複合プリプレグシート10の孔21に導電性ペースト29bを充填した状態を示す斜視図である。一方、従来の吸着方法では、例えば図8に示したように吸着ステージ4の表面に、プリプレグシート1を皺8を有する状態で吸着しているため図6(A)に示すような導電性ペースト29aの充填工程において、皺8がプリプレグシート1に発生しやすく、皺8の上をスキージ28が通過することで、プリプレグシート1にダメージや寸法変化を与える可能性がある。
【0035】
なお実施の形態で提案するプリプレグ固定装置や、プリプレグシート固定方法において、取り扱う部材はプリプレグシート1単体でも良い。このように本実施の形態を用いることで、プリプレグシート1は保護フィルム16無しの状態でも皺22の防止効果が得られる。更に多数の孔21に密度差を有するような皺22が発生しやすくなったプリプレグシート1(更には複合プリプレグシート10)に対しても、皺22の発生防止効果が高い。
【0036】
以上のようにして、プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を真空吸着する吸着ステージ14と、前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージ14の上に前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を移動させる移動部と、からなるプリプレグシート固定装置を用い、前記吸着ステージ14に時間差をつけながら独立して真空吸着する、複数個の吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)を有しているプリプレグシート固定装置を提案することによって、大判化すると取り扱いが難しく(真空吸着時に皺22が発生しやすい)、更に孔21を形成することで真空吸着時に皺22が発生しやすくなり、更にプリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の一面以上に保護フィルム16を形成することで発生しやすい皺が、更に真空吸着時に皺22となりやすい複合プリプレグシート10であっても、皺22の発生を防止しながら吸着ステージ14の上に吸着できるため、複合プリプレグシート10の大判化が可能であり、多層プリント配線基板の低コスト化を実現すると共に、その歩留まりを高められる。
【0037】
更にプリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を真空吸着する吸着ステージ14と、前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージ14の上に前記孔21が形成されたプリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を移動させる移動部と、からなるプリプレグシート固定装置を用い、前記吸着ステージ14に時間差をつけながら独立して真空吸着できる複数個の吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)を有しているプリプレグシート固定装置の、前記吸着ステージ14上にセットした通気材13の上に、プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を移動させ、複数の吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)の上に、前記孔21が形成されたプリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の一部を接触させた後、吸着ステージ14の複数個の独立した真空吸着部(あるいは複数個の吸着ゾーン15)を順次真空吸着するプリプレグシート固定方法を用いることによって、大判化すると取り扱いが難しく(真空吸着時に皺22が発生しやすい)、更に孔21を形成することで真空吸着時に皺22が発生しやすくなり、更にプリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の一面以上に保護フィルム16を形成することで発生しやすい皺が、更に真空吸着時に皺22となりやすい複合プリプレグシート10であっても、皺22の発生を防止しながら吸着ステージ14の上に吸着できるため、複合プリプレグシート10の大判化が可能であり、多層プリント配線基板の低コスト化を実現すると共に、その歩留まりを高められる。
【0038】
プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を真空吸着する吸着ステージ14と、前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージ14の上に前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を移動させる移動部と、からなるプリプレグシート固定装置を用い、前記吸着ステージ14に時間差をつけながら独立して真空吸着する、複数個の独立して真空引きできる吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)を有しているプリプレグシート固定装置の、前記吸着ステージ14上にセットした通気材13の上に、プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を移動させ、前記吸着ステージ14(あるいは真空吸着部)の上に、前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の一部を接触させた後、吸着ステージ14の複数個の吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)を順次真空吸着するプリプレグシートの固定方法を用いることによって、大判化すると取り扱いが難しく(真空吸着時に皺22が発生しやすい)、更に孔21を形成することで真空吸着時に皺22が発生しやすくなり、更にプリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の一面以上に保護フィルム16を形成することで発生しやすい皺が、更に真空吸着時に皺22となりやすい複合プリプレグシート10であっても、皺22の発生を防止しながら吸着ステージ14の上に吸着できるため、複合プリプレグシート10の大判化が可能であり、多層プリント配線基板の低コスト化を実現すると共に、その歩留まりを高められる。
【0039】
少なくとも、プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を真空吸着する吸着ステージ14と、前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の4辺を複数個所で掴んで前記吸着ステージ14の上に前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を移動させる移動部と、からなるプリプレグシート固定装置を用い、前記吸着ステージ14に時間差をつけながら独立して真空吸着する、複数個の独立して真空引きできる吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)を有しているプリプレグシート固定装置の、前記吸着ステージ14上にセットした通気材13の上に、プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)を移動させ、前記吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)の上に、前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の一部を接触させた後、吸着ステージ14の複数個の吸着ゾーン15(あるいは真空吸着部)を順次真空吸着した後、前記プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)の前記孔21に、導電性ペースト29a、29bを充填する工程を含む多層プリント配線基板の製造方法によって、大判化すると取り扱いが難しく(真空吸着時に皺22が発生しやすい)プリプレグシート1(あるいは複合プリプレグシート10)であっても、皺22の発生を防止しながら吸着ステージ14の上に吸着できるため、複合プリプレグシート10の大判化が可能であり、多層プリント配線基板の低コスト化を実現すると共に、その歩留まりを高められる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかるプリプレグシート固定装置とプリプレグシート固定方法及び多層プリント配線基板の製造方法を用いることで、携帯電話を始めとする各種機器に用いる多層プリント配線基板をコストダウンでき、機器の低コスト化を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態におけるプリプレグシートの吸着方法について説明する斜視図
【図2】(A)、(B)は複合プリプレグシートについて説明する断面図、(C)は斜視図
【図3】(A)、(B)は複合プリプレグシートを吸着ステージの上に真空吸着させる様子を説明する模式図
【図4】(A)〜(C)はそれぞれ複合プリプレグシートを吸着ステージの上に吸着する様子を説明する模式図
【図5】吸着ステージの真空引きの手順を説明する図
【図6】(A)は吸着ステージの上に真空吸着させた複合プリプレグシートの孔に導電性ペーストを充填する様子を説明する断面図、(B)は同斜視図
【図7】従来のプリプレグシートを吸着ステージに吸着する様子を示す斜視図
【図8】(A)はプリプレグシートが大面積化した時の課題について説明する斜視図、(B)は同断面図
【符号の説明】
【0042】
10 複合プリプレグシート
11 吸着治具
12 矢印
13 通気材
14 吸着ステージ
15 吸着ゾーン
16 保護フィルム
17 繊維
18 樹脂
19 レーザー装置
20 レーザー光
21 孔
22 皺
23 点線
24 吸着部
25 吸着済み部
26 真空ON
27 補助線
28 スキージ
29 導電性ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリプレグシートを真空吸着する吸着ステージと、
前記プリプレグシートの4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージの上に前記プリプレグシートを移動させる移動部と、
からなるプリプレグシート固定装置であって、
前記吸着ステージが、時間差をつけながら独立して真空吸着する複数個の独立した真空吸着部を有しているプリプレグシート固定装置。
【請求項2】
プリプレグシートを真空吸着する吸着ステージと、
前記プリプレグシートの4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージの上に前記プリプレグシートを移動させる移動部と、
からなるプリプレグシート固定装置であって、
前記吸着ステージが、時間差をつけながら独立して真空吸着する複数個の独立した真空吸着部を有しており、
前記吸着ステージ上にセットした通気材の上に、前記移動部によって前記プリプレグシートを移動させ、
前記真空吸着部の第1の真空吸着部の上に、前記プリプレグシートの自重で形成された凸部を真空吸着させた後、吸着ステージの第2以降の真空吸着部を用いて真空吸着するプリプレグシート固定方法。
【請求項3】
孔の形成されたプリプレグシートを真空吸着する吸着ステージと、
前記プリプレグシートの4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージの上に前記プリプレグシートを移動させる移動部と、
からなるプリプレグシート固定装置を用い、
前記吸着ステージに時間差をつけながら独立して真空吸着する、複数個の独立した真空吸着部を有しているプリプレグシート固定装置の、
前記吸着ステージ上にセットした通気材の上に、プリプレグシートを移動させ、
前記真空吸着部の上に、前記孔開きプリプレグシートの一部を接触させた後、前記吸着ステージの独立した真空吸着部を順次真空吸着するプリプレグシート固定方法。
【請求項4】
少なくとも、
プリプレグシートを真空吸着する吸着ステージと、
前記プリプレグシートの4辺を複数個所で掴んで、前記吸着ステージの上に前記プリプレグシートを移動させる移動部と、
からなるプリプレグシート固定装置を用い、
前記吸着ステージに時間差をつけながら独立して真空吸着する複数個の独立した真空吸着部を有しているプリプレグシート固定装置の、
前記吸着ステージ上にセットした通気材の上に、プリプレグシートを移動させ、
前記真空吸着部の上に、前記プリプレグシートの一部を接触させた後、前記独立した真空吸着部を順次真空吸着した後、
前記プリプレグシートの前記孔に、導電性ペーストを充填する工程を、
含む多層プリント配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−53573(P2008−53573A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230064(P2006−230064)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】