説明

プリント基板積層体

【課題】組立効率の向上を図ることの出来る、新規な構造のプリント基板積層体を提供すること。
【解決手段】互いに隙間を隔てて対向配置された二枚のプリント基板12,14の対向方向に延びる複数の接続端子16を何れも同一形状とする一方、一方の前記プリント基板12のスルーホール18aへの前記接続端子16の挿通量を複数段階に設定する挿通量変更手段24a,24bを設け、該挿通量変更手段24a,24bによって、前記接続端子16の前記一方のプリント基板12からの突出高さ寸法を複数段階に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二枚のプリント基板が複数の接続端子で相互に接続された、プリント基板積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に搭載される電気接続箱の内部回路等として、複数のプリント基板が積層されたプリント基板積層体が用いられている。このようなプリント基板積層体は、例えば特開平7−297562号公報(特許文献1)に記載されているように、二枚のプリント基板が一定の隙間を隔てて平行に対向配置されていると共に、それらプリント基板の対向面間に延びて配設された接続端子の両端部が、各プリント基板のスルーホールに挿通されて半田付けされることにより、相互に接続された構造とされている。
【0003】
ところで、このようなプリント基板積層体を製造する際には、先ず、一方のプリント基板のスルーホールに、接続端子の一方の端部を挿通して半田付けする。そして、接続端子が突設された一方のプリント基板に他方のプリント基板を重ね合わせて、各接続端子の他方の端部を該他方のプリント基板のスルーホールに挿通して半田付けする。
【0004】
ところが、複数の接続端子は、一方のプリント基板からの突出高さが全て等しくされている。それ故、一方のプリント基板から突出された各接続端子の他方の端部を、他方のプリント基板の各スルーホールに一度で同時に挿通する必要があった。更に、プリント基板間を接続する接続端子は、断面積が非常に小さく、且つ多数本が挟ピッチで配列されている。それ故、多数の接続端子の端部を、他方のプリント基板の各スルーホールに一度で同時に挿通することは困難で、組立作業に手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−297562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、組立効率の向上を図ることの出来る、新規な構造のプリント基板積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、互いに一定の隙間を隔てて対向配置された二枚のプリント基板の対向方向に延びて複数の接続端子が配設されていると共に、各該接続端子の両端部が前記二枚のプリント基板のスルーホールにそれぞれ挿通されて半田付けされているプリント基板積層体において、前記複数の接続端子が何れも同一形状とされている一方、前記二枚のプリント基板の一方の前記スルーホールへの前記接続端子の挿通量を複数段階に設定する挿通量変更手段が設けられており、該挿通量変更手段によって、前記接続端子の前記一方のプリント基板からの突出高さ寸法が複数段階に設定されていることを、特徴とする。
【0008】
本発明によれば、挿通量変更手段によって、複数の接続端子の一方のプリント基板からの突出高さ寸法が、複数段階に設定される。これにより、一方のプリント基板から突出された接続端子を他方のプリント基板のスルーホールに挿通する際には、最も突出された接続端子から順次に挿通することが可能であり、突出高さ寸法の大きな接続端子を他方のプリント基板のスルーホールに挿通することによって、残りの接続端子に対して、対応するスルーホールを位置決めすることが出来る。これにより、複数の接続端子を、他方のプリント基板のスルーホールに容易且つ確実に挿通することが出来、優れた組立効率を得ることが出来る。特に本発明によれば、複数の接続端子は、何れも同一形状とされている。これにより、部品点数の増加を招くことなく組立効率の向上を図ることが出来る。
【0009】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記接続端子に係止部を設けて、該係止部を前記一方のプリント基板の前記スルーホールへの挿通方向で該プリント基板に係止させると共に、前記係止部の前記一方のプリント基板に対する係止位置を前記複数の接続端子間で異ならせることによって前記挿通量変更手段が構成されているものである。
【0010】
本態様によれば、挿通量変更手段を、簡易な構造で実現することが出来る。なお、係止部のプリント基板への係止は、係止部をプリント基板に直接に係止しても良いし、接続端子を支持する台座をプリント基板上に設けて、係止部を該台座に係止させることによって該台座を介してプリント基板に間接に係止するもの等でも良い。このことから明らかなように、挿通量変更手段は、接続端子単体のみで構成しても良いし、台座等を用いる場合には、接続端子と台座等を用いて構成する等しても良い。また、係止部の係止位置を接続端子間で異ならせる態様としては、例えば、接続端子の長さ方向の複数箇所に係止部を設けて、それら複数の係止部を選択的に用いることによって、係止部の係止位置を各接続端子の長さ方向で相互に異ならせる等しても良いし、或いは、台座等を用いて係止部を係止すると共に、台座における係止位置を各接続端子のスルーホールへの挿通方向で各接続端子間で異ならせる等しても良い。
【0011】
挿通量変更手段として、より具体的には、例えば、本発明の第三の態様として、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記接続端子の一方の端部に前記係止部としての第一の係止部を設ける一方、他方の端部に前記係止部としての第二の係止部を設け、前記接続端子における前記一方の端部側の端縁部から前記第一の係止部までの離隔距離と、前記他方の端部側の端縁部から前記第二の係止部までの離隔距離とを相互に異ならせると共に、前記一方のプリント基板の前記スルーホールの周縁部に前記第一の係止部又は前記第二の係止部を係止させることにより前記挿通量変更手段が構成されているものが、好適に採用され得る。
【0012】
本態様によれば、接続端子を一方のプリント基板のスルーホールに対して、一方の端部側から挿通して第一の係止部で係止した場合と、反対に他方の端部側から挿通して第二の係止部で係止した場合とで、スルーホールへの挿通量を異ならせることが出来る。従って、一方の端部と他方の端部の何れかを選択して一方のプリント基板のスルーホールに挿通することによって、接続端子のプリント基板からの突出量を2段階に設定することが出来る。そして、本態様によれば、特定形状の接続端子を採用するのみで挿通量変更手段を実現することが可能であり、コスト効率良く組立効率の向上を図ることが出来る。
【0013】
さらに、接続端子の一方のプリント基板への組付状態において、一方のプリント基板に係止されていない側の第一の係止部又は第二の係止部は、一方のプリント基板から所定距離だけ離隔して位置される。これにより、一方のプリント基板から離隔位置された第一の係止部又は第二の係止部で他方のプリント基板を係止することによって、他方のプリント基板を一方のプリント基板に対して精度良く位置決めすることが出来る。特に、複数の接続端子が何れも同一形状とされていることから、一方のプリント基板に対して、一方の端部および他方の端部の何れから挿通した場合でも、一方のプリント基板に係止されていない側の第一の係止部又は第二の係止部の、一方のプリント基板からの離隔距離を、複数の接続端子間で等しく設定することが出来る。これにより、全ての接続端子の第一の係止部又は第二の係止部を用いて、他方のプリント基板を一方のプリント基板に対してより確実に位置決めすることが出来る。
【0014】
また、挿通量変更手段の別の具体例としては、本発明の第三の態様として、前記第二の態様に記載のものにおいて、複数の前記接続端子を貫通状態で保持して前記一方のプリント基板上に配設される台座を備えており、該台座には、前記接続端子を挿通する複数の端子挿通孔が形成されていると共に、各該端子挿通孔には、前記接続端子の中間部分に設けられた前記係止部を係止して、前記接続端子の前記端子挿通孔への挿通量を規定する係止面が形成されており、該係止面の位置が前記端子挿通孔の長さ方向で複数位置に設定されていることにより、前記挿通量変更手段が構成されているものも、好適に採用され得る。
【0015】
本態様によれば、台座の係止面の位置を複数段階に設定することによって、接続端子の一方のプリント基板に対する係止位置を異ならせて、一方のプリント基板からの突出高さ寸法を複数段階に設定することが出来る。そして、本態様によれば、従来から用いられている台座を巧く利用して挿通量変更手段を構成したことによって、部品点数の増加を招くことなく他方のプリント基板の組み付け作業を効率化することが出来ると共に、台座を用いて複数の接続端子を一方のプリント基板のスルーホールにも効率良く挿通することが出来る。特に、係止面の位置が異ならされることにより、複数の接続端子は、台座から一方のプリント基板側への突出量も異ならされることから、一方のプリント基板のスルーホールへの挿通作業もより効率良く行なうことが出来る。また、係止面の位置を3以上の多段階に設定することも可能であり、接続端子の一方のプリント基板からの突出高さ寸法を3段階以上に設定して、他方のプリント基板のスルーホールへの挿通作業をより容易にすることも出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の接続端子を何れも同一形状とすると共に、一方のプリント基板のスルーホールへの接続端子の挿通量を複数段階に設定する挿通量変更手段を設けて、該挿通量変更手段によって複数の接続端子の一方のプリント基板からの突出高さ寸法を異ならせた。これにより、他方のプリント基板のスルーホールに対して、最も突出された接続端子から順次に挿通することが可能となり、接続端子をスルーホールに挿通することによって、残りの接続端子に対してスルーホールを位置決めすることが出来る。その結果、多数の接続端子を他方のプリント基板のスルーホールに容易に挿通することが出来て、組立効率の向上を図ることが出来る。そして、同一形状の接続端子を採用したことにより、部品点数の増加を招くことも無く、コスト効率良く組立効率を向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのプリント基板積層体の要部の斜視図。
【図2】図1に示したプリント基板積層体を構成する接続端子の斜視図。
【図3】図1におけるプリント基板積層体の組付工程を示す説明図。
【図4】本発明の第二の実施形態としてのプリント基板積層体の要部の斜視図。
【図5】図4におけるV−V断面図。
【図6】図5におけるA部の拡大図。
【図7】本発明の異なる態様としてのプリント基板積層体の要部の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
先ず、図1に、本発明の第一の実施形態としてのプリント基板積層体10の要部を示す。プリント基板積層体10は、一方のプリント基板としての下基板12と、他方のプリント基板としての上基板14が隙間を隔てて対向配置されており、これら下基板12と上基板14が、複数の接続端子16で相互に接続された構造とされている。
【0020】
下基板12および上基板14は、従来公知のプリント基板が適宜に採用可能であり、互いに略同様の形状とされている。下基板12の幅方向両端部には、複数のスルーホール18aが、下基板12の外周縁部20の延出方向に沿う一直線上で、所定間隔を隔てて配列して形成されている。一方、上基板14には、下基板12の各スルーホール18aと対応する位置に、複数のスルーホール18bがそれぞれ形成されている。なお、スルーホール18a,18bの内径寸法は、好適には、接続端子16を特別な押込力を要することなく挿通可能な大きさに設定される。
【0021】
これら下基板12と上基板14は、複数の接続端子16で相互に接続されている。複数の接続端子16は、何れも同一形状とされている。図2に、接続端子16を示す。接続端子16は、例えば鉄や銅、黄銅等からなる母材の表面に錫等のめっきが施された金属線材が所定長さで切断および潰し加工等されて形成されている。
【0022】
接続端子16は、略一定の正方形断面をもって延びる直線形状とされている。接続端子16には、一方の端部22a側に第一の係止部24aが形成されていると共に、他方の端部22b側に第二の係止部24bが形成されている。これら第一の係止部24aおよび第二の係止部24bは、互いに略同様の形状とされており、接続端子16の軸直角方向で互いに反対側に突出する一対の突起によって構成されている。第一の係止部24aおよび第二の係止部24bは、例えば、接続端子16を形成する金属線材に長さ方向で部分的に潰し加工が施されて、金属線材の肉が軸直角方向外方に突出されることによって形成される。
【0023】
本実施形態においては、一方の端部22a側の端縁部26aから第一の係止部24aまでの離隔距離:d1と、他方の端部22b側の端縁部26bから第二の係止部24bまでの離隔距離:d2とが互いに異なる大きさに設定されており、離隔距離:d1の方が、離隔距離:d2よりも大きくされている。
【0024】
このような構造とされた接続端子16が、図3に示すように、下基板12の各スルーホール18aにそれぞれ挿通されて半田付けされる。接続端子16は、スルーホール18aに対して、一方の端部22a側と他方の端部22b側の何れかを選択して挿通することが可能とされており、一方の端部22a側から挿通した場合(図3中、右端の接続端子16参照)には、第一の係止部24aがスルーホール18aへの挿通方向(図3中、上方から下方)でスルーホール18aの周縁部28に係止されることによって、スルーホール18aへの挿通量がd1に設定される。一方、他方の端部22b側から挿通した場合(図3中、左端の接続端子16参照)には、第二の係止部24bがスルーホール18aへの挿通方向(図3中、上方から下方)で周縁部28に係止されることによって、スルーホール18aへの挿通量がd2に設定される。これにより、接続端子16は、一方の端部22a側から挿通した場合のスルーホール18aへの挿通量:d1が、他方の端部22b側から挿通した場合の挿通量:d2よりも大きくなるようにされている。その結果、一方の端部22a側から挿通した場合の接続端子16の下基板12からの突出高さ寸法:h1の方が、他方の端部22b側から挿通した場合の下基板12からの突出高さ寸法:h2よりも小さくなるようにされている。このように、本実施形態においては、一方の端部22aと他方の端部22bの何れかを選択してスルーホール18aに挿通して、第一の係止部24a又は第二の係止部24bを下基板12に係止させることによって、スルーホール18aへの挿通量をd1とd2の2段階に設定する挿通量変更手段が構成されており、挿通量変更手段によって、接続端子16の下基板12からの突出高さ寸法をh1とそれよりも大きなh2の2段階に設定することが出来る。
【0025】
そして、スルーホール18aに挿通された一方の端部22a又は他方の端部22bが半田付けされることによって、接続端子16が、下基板12に固定されている。本実施形態においては、複数のスルーホール18aの配列方向(図3中、左右方向)で、一方の端部22aと他方の端部22bが交互に選択されて挿通されており、一方の端部22a側が下基板12から突出されて突出高さ寸法がh1に設定された接続端子16と、他方の端部22b側が下基板12から突出されて突出高さ寸法がh2に設定された接続端子16とが、スルーホール18aの配列方向で交互に配設されている。なお、接続端子16の下基板12への固定は、例えば、複数の接続端子16を、スルーホール18aに挿通される一方の端部22a又は他方の端部22bを突出させた状態で図示しない治具にセットして、下基板12を該治具に重ねることによって、治具から突出された各接続端子16の一方の端部22a又は他方の端部22bを、下基板12の対応するスルーホール18aにそれぞれ挿通した後に半田付けされることによって行なわれる。
【0026】
そして、下基板12に上基板14が重ねられることにより、下基板12から突出された接続端子16の一方の端部22a又は他方の端部22bが、上基板14のスルーホール18bにそれぞれ挿通される。なお、端部22a,22bの、上基板14のスルーホール18bへの挿通量は、下基板12に係止されていない側の第一の係止部24a又は第二の係止部24bに上基板14が係止されることによって規定される。これら下基板12に係止されていない側の第一の係止部24aと第二の係止部24bによって、下基板12と上基板14が、一定の隙間寸法:D(図1参照)をもって互いに略平行に対向位置されている。そして、上基板14のスルーホール18bに挿通された一方の端部22a又は他方の端部22bが半田付けされることにより、複数の接続端子16が下基板12と上基板14の対向方向に延びるように配設される。このようにして、下基板12と上基板14が、複数の接続端子16で電気的に接続されて、プリント基板積層体10が構成されている。
【0027】
このような構造とされたプリント基板積層体10によれば、接続端子16の下基板12からの突出高さ寸法が、h1とh2の2段階に設定されている。従って、上基板14のスルーホール18bに接続端子16を挿通する際には、先ず、下基板12からの突出高さ寸法:h2に設定された接続端子16が、突出高さ寸法:h1に設定された接続端子16よりも先にスルーホール18bに挿通される。これにより、全ての接続端子16を対応するスルーホール18bに一度に挿通することが不要とされると共に、突出高さ寸法:h1に設定された接続端子16に対して、上基板14のスルーホール18bを位置合わせして、容易に挿通することが出来る。その結果、多数の接続端子16を、上基板14のスルーホール18bに対して、下基板12からの突出高さ寸法の大きなものから順に、且つ未挿通の接続端子16をスルーホール18bに位置決めして挿通することが可能であり、断面積が小さく、挟ピッチで配列された多数の接続端子16を、上基板14の対応するスルーホール18bに容易且つ確実に挿通することが出来、組立効率を向上することが出来る。
【0028】
特に本実施形態においては、複数の接続端子16は、何れも同形状とされており、接続端子16の種類を異ならせること無しに、下基板12からの突出高さ寸法を異ならせることが可能とされている。これにより、部品点数の増加を招くこと無く、組立効率の向上を図ることが出来る。更に、複数の接続端子16が何れも同形状とされていることから、下基板12のスルーホール18aに対して、一方の端部22aおよび他方の端部22bの何れを挿通した場合でも、下基板12に係止されない側の第一の係止部24aと第二の係止部24bの下基板12からの離隔位置を全て等しく揃えることが出来る。これにより、全ての接続端子16の第一の係止部24a又は第二の係止部24bに上基板14を係止させることが出来て、下基板12と上基板14との隙間寸法:Dを精度良く設定することが出来る。
【0029】
また、前述のように、接続端子16を治具にセットして下基板12のスルーホール18aに挿通するような場合には、例えば第一の係止部24a又は第二の係止部24bを治具に係止させることにより、治具へのセット状態で、治具から突出される一方の端部22aと他方の端部22bの治具からの突出高さ寸法を異ならせることも可能であり、このようにすれば、下基板12のスルーホール18aへの挿通作業もより効率良く行なうことが出来る。
【0030】
次に、図4および図5に、本発明の第二の実施形態としてのプリント基板積層体30の要部を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、その説明を適宜に省略する。
【0031】
本実施形態におけるプリント基板積層体30は台座34を備えており、複数の接続端子32が、台座34に固定されている。図5に示すように、複数の接続端子32は、何れも同一形状とされている。接続端子32は、前記第一の実施形態における接続端子16と略同様の形状とされており、長さ方向の中間部分で一方の端部22a側には係止部36が形成されている一方、他方の端部22b側には当て止め部38が形成されている。これら係止部36および当て止め部38は、前記第一の実施形態における接続端子16の第一の係止部24aおよび第二の係止部24bと略同様の形状とされており、接続端子32の軸直角方向の外方に突出する突片形状とされている。
【0032】
一方、台座34は、非導電性の合成樹脂から形成されており、略長手ブロック形状とされた台座本体40の四隅から、脚部42が突出された形状とされている。台座34には、台座本体40を貫通する複数の端子挿通孔44が形成されている。端子挿通孔44は、接続端子32を圧入保持可能なように、接続端子32の正方形断面よりも僅かに小さな正方形断面形状をもって台座本体40の厚さ方向(図5中、上下方向)に延び出されている。
【0033】
このような複数の端子挿通孔44が、台座本体40の長手方向(図5中、左右方向)で、下基板12と上基板14におけるスルーホール18a,18bの配列間隔と等しい間隔で一直線上に並んで形成されている。図6に示すように、複数の端子挿通孔44のうち、配列方向の両端に位置する一対の端子挿通孔44a,44a以外の端子挿通孔44には、台座本体40の上面46から窪む凹部48が形成されている。この凹部48の底面によって、上面46から台座本体40の内方に位置して、端子挿通孔44の延出方向に直交して両外側に広がる係止面50が形成されている。
【0034】
本実施形態においては、複数の接続端子32が台座34に組み付けられた状態で、下基板12のスルーホール18aに纏めて挿通される。接続端子32は、一方の端部22a側から、台座34の端子挿通孔44に対して、上面46から圧入状態で挿通される。なお、本実施形態の接続端子32は、何れも同一方向で一方の端部22a側から端子挿通孔44に挿通されている。接続端子32の挿通量は、配列方向の両端の端子挿通孔44a,44aについては、係止部36が上面46に係止されることによって規定される一方、それ以外の端子挿通孔44については、係止部36が凹部48に挿入されて係止面50に係止されることによって規定される。このように、両端の端子挿通孔44a,44aについては、台座本体40の上面46が、係止部36を係止する係止面52とされている。そして、一方の端部22aが、台座本体40における上面46と反対の下面54から突出されることにより、接続端子32が、台座本体40を貫通した状態で台座34に保持される。
【0035】
このような台座34が、手作業で下基板12上に載置されたり、図示しない治具に接続端子32の一方の端部22aを突出した状態でセットされて該治具に下基板12が重ねられる等することにより、台座34から突出された接続端子32の一方の端部22aが、下基板12のスルーホール18aに挿通されて半田付けされる。これにより、台座34が脚部42を介して下基板12上に配設されると共に、接続端子32が下基板12に固定されて、他方の端部22bが下基板12から突出される。
【0036】
続いて、上基板14が下基板12に重ねられることによって、下基板12から突出された複数の接続端子32の他方の端部22bが、対応する上基板14のスルーホール18bにそれぞれ挿通される。なお、他方の端部22bのスルーホール18bへの挿通量は、複数の端子挿通孔44の配列方向の両端に位置された一対の端子挿通孔44a,44aの当て止め部38に上基板14が係止されることによって規定される。そして、スルーホール18bに挿通された他方の端部22bが半田付けされることにより、下基板12と上基板14が複数の接続端子32で相互に電気的に接続される。
【0037】
本実施形態においては、配列方向の両端に位置する端子挿通孔44a,44aの係止面52と、それ以外の端子挿通孔44の係止面50の位置が、端子挿通孔44の長さ方向(図6中、上下方向)で異ならされており、係止面50が、係止面52に比してより下基板12側に接近されている。これにより、係止面50に係止された場合の接続端子32のスルーホール18aへの挿通量を、係止面52に係止された場合の挿通量よりも大きくすることが出来る。このように、本実施形態においては、接続端子32の係止部36を、台座34の係止面50,52に係止させることによって、台座34を介して係止部36を下基板12に係止してスルーホール18aへの挿通量を規定する。そして、係止面50,52の位置を、端子挿通孔44の長さ方向で異ならせて、接続端子32のスルーホール18aへの挿通方向で下基板12に対して複数の離隔位置に設定することによって、挿通量変更手段が構成されている。その結果、両端の端子挿通孔44a,44aに挿通された接続端子32の下基板12からの突出高さ寸法を、それ以外の端子挿通孔44に挿通された接続端子32の突出高さ寸法よりも大きくすることが出来る。
【0038】
そして、下基板12からの突出高さ寸法が相対的に大きくされた、両端に位置する2つの接続端子32,32に上基板14のスルーホール18bを挿通することによって、残りの接続端子32とこれに対応するスルーホール18bを位置合わせすることが出来る。その結果、多数の接続端子32を、上基板14のスルーホール18bに容易に挿通することが出来る。特に、上基板14の組み付けの初期の段階では、両端に位置する2つの接続端子32,32をスルーホール18bに挿通するのみで足ることから、上基板14の組み付けをより容易に行なうことが出来る。そして、本実施形態においては、複数の接続端子を効率良くプリント基板のスルーホールに挿通するために従来から用いられている台座を巧く利用して挿通量変更手段を構成したことによって、部品点数の増加を招くことなく、組立効率の向上を図ることが出来る。更に、両端に位置する2つの接続端子32,32の突出高さ寸法のみを他の接続端子32よりも大きくしたことによって、従来台座34に設けられていた、接続端子32のスルーホール18a,18bへの挿入前に上基板14や下基板12の貫通孔に挿通される位置決めピン等の機能を接続端子32に付与することが出来る。その結果、更なる部品点数の低下と製造コストの低下を図ることが出来る。
【0039】
なお、本実施形態において、凹部48を備えた端子挿通孔44と、凹部48を有さず、上面46で係止面52が構成された端子挿通孔44aとを、台座本体40の長手方向(図5中、左右方向)で交互に形成して、下基板12からの接続端子32の突出高さ寸法を、端子挿通孔44,44aの配列方向で交互に異ならせることも勿論可能である。また、凹部48の深さ寸法(上面46から係止面50までの離隔寸法)を複数段階に設定して、係止面50の位置を端子挿通孔44の長さ方向(図5中、上下方向)で複数段階に設定することにより、接続端子32の下基板12からの突出高さ寸法を3段階以上に設定可能とする等しても良い。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、図7に、本発明の異なる態様としてのプリント基板積層体60を示す。本態様における接続端子62には、長さ方向の中央から偏倚した位置に係止部36が形成されている。これにより、接続端子62は、一方の端縁部26aから係止部36までの離隔距離:d3と、他方の端縁部26bから係止部36までの離隔距離:d4が異ならされている。一方、台座34の端子挿通孔44は、何れも、凹部48を有さず、全長に亘って一定の正方形断面をもって延びる貫通孔とされている。本態様によれば、接続端子62を一方の端部22aから端子挿通孔44に挿通して係止部36で台座34の上面46に係止した場合と、他方の端部22bから端子挿通孔44に挿通して係止部36で上面46に係止した場合とで、下基板12のスルーホール18aへの挿通量を異ならせることが出来て、下基板12からの接続端子62の突出高さ寸法を2段階に設定することが出来る。このように、接続端子62の長さ方向で偏倚した係止部36と、これを係止する台座34を含んで、挿通量変更手段を構成することも可能である。なお、本態様においては、上基板14のスルーホール18bへの接続端子62の挿通量は、図示しない適当な治具で設定されることが好ましく、本態様から明らかなように、前記第二の実施形態における接続端子32の当て止め部38は、必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0041】
10,30,60:プリント基板積層体、12:下基板(一方のプリント基板)、14:上基板(他方のプリント基板)、16,32,62:接続端子、18a,b:スルーホール、22a:一方の端部、22b:他方の端部、24a:第一の係止部、24b:第二の係止部、26a:端縁部(一方の端部側)、26b:端縁部(他方の端部側)、28:(スルーホールの)周縁部、34:台座、36:係止部、44:端子挿通孔、50,52:係止面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに一定の隙間を隔てて対向配置された二枚のプリント基板の対向方向に延びて複数の接続端子が配設されていると共に、各該接続端子の両端部が前記二枚のプリント基板のスルーホールにそれぞれ挿通されて半田付けされているプリント基板積層体において、
前記複数の接続端子が何れも同一形状とされている一方、
前記二枚のプリント基板の一方の前記スルーホールへの前記接続端子の挿通量を複数段階に設定する挿通量変更手段が設けられており、
該挿通量変更手段によって、前記接続端子の前記一方のプリント基板からの突出高さ寸法が複数段階に設定されていることを特徴とするプリント基板積層体。
【請求項2】
前記接続端子に係止部を設けて、該係止部を前記一方のプリント基板の前記スルーホールへの挿通方向で該プリント基板に係止させると共に、前記係止部の前記一方のプリント基板に対する係止位置を前記複数の接続端子間で異ならせることによって前記挿通量変更手段が構成されている請求項1に記載のプリント基板積層体。
【請求項3】
前記接続端子の一方の端部に前記係止部としての第一の係止部を設ける一方、他方の端部に前記係止部としての第二の係止部を設け、前記接続端子における前記一方の端部側の端縁部から前記第一の係止部までの離隔距離と、前記他方の端部側の端縁部から前記第二の係止部までの離隔距離とを相互に異ならせると共に、前記一方のプリント基板の前記スルーホールの周縁部に前記第一の係止部又は前記第二の係止部を係止させることにより前記挿通量変更手段が構成されている請求項2に記載のプリント基板積層体。
【請求項4】
複数の前記接続端子を貫通状態で保持して前記一方のプリント基板上に配設される台座を備えており、該台座には、前記接続端子を挿通する複数の端子挿通孔が形成されていると共に、各該端子挿通孔には、前記接続端子の中間部分に設けられた前記係止部を係止して、前記接続端子の前記端子挿通孔への挿通量を規定する係止面が形成されており、該係止面の位置が前記端子挿通孔の長さ方向で複数位置に設定されていることにより、前記挿通量変更手段が構成されている請求項2に記載のプリント基板積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69553(P2012−69553A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210534(P2010−210534)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】