説明

プリント基板

【課題】端子接触部における導通不良及び接触抵抗の増加を抑制すること。
【解決手段】絶縁性の基材3の表面に形成される導体17の露出面にめっきが施されており、めっきが施された導体17は、相手側端子が接触する端子接触部9と、この端子接触部9と連続して形成されるめっきリード部11とを有してなり、めっきリード部11の端部の少なくとも上面の設定範囲が保護材13で被覆されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に係り、特に、可撓性を有するプリント基板の基材の表面に形成される導体のめっきリード部を被覆する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、FPC(フレキシブルプリント回路体)等の可撓性を有するプリント基板を用いたコネクタ構造が開示されている。この種のプリント基板は、例えば、基材の表面に平行配線した複数の導体が絶縁樹脂フィルムで被覆され、その導体の一端側の絶縁樹脂フィルムから導体の一部が露出された状態となっている。このようなプリント基板がスライダに固定された状態でハウジング内に差し込まれ、ハウジング内に設けられた相手側の端子がプリント基板の露出する導体部分と接触することにより、電気的な接続状態が得られる。
【0003】
この種のプリント基板の露出する導体部分には、通常、めっきリード部が形成される。めっきリード部は、相手側端子が接触する端子接触部と連続して形成され、その線幅は、端子接触部の線幅よりも十分に細くなっている。これは、プリント基板の製造時にプリント基板の外形が切断されて切り落とされるが、めっきリード部の線幅が大きい場合には、切断設備の摩耗が早く進行するため、摩耗進行を抑制するために線幅が細く形成されている。
【0004】
このようなプリント基板の多くは、導体が露出する部分、つまり端子接触部やめっきリード部に金めっきが施されている。このように導体に金めっきが施されることにより、酸化ガスや腐食ガスが導体に接触することによる酸化物や腐食生成物の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−45558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、めっきリード部は、金めっきが施された後に基材とともに端部が切り落とされることから、めっきリード部の端部には金めっきが施されていない切断面が形成され、その部分から酸化物や腐食生成物が発生することがある。これにより、例えば、めっきリード部の端部と端子接触部との距離が短ければ、めっきリード部の端面で発生した酸化物や腐食生成物が端子接触部の相手側端子が接触する面に付着し、導通不良や接触抵抗の増加を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、端子接触部における導通不良及び接触抵抗の増加を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のプリント基板は、絶縁性の基材の表面に形成される導体の露出面にめっきが施され、このめっきが施された導体は、相手側端子が接触する端子接触部と、この端子接触部と連続して形成されるめっきリード部とを有しており、めっきリード部の端部の少なくとも上面の設定範囲が保護材で被覆されてなることを特徴とする。
【0009】
このようにめっきリード部の端部の少なくとも上面を保護材で被覆することにより、めっきリード部の端面で発生する酸化物や腐食生成物が端子接触部へ移動するのを妨げることができるため、酸化物や腐食生成物に起因する相手側端子との導通不良の発生や接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0010】
また、保護材として片面に接着層が形成されたフィルム材が用いられ、めっきリード部の端部の基材裏面からめっきリード部の端部の上面に渡ってフィルム材が貼り付けられてなるものとしてもよい。
【0011】
これにより、めっきリード部の端部の上面のみならず端面も覆われるため、めっきリード部の端面において酸化物や腐食生成物の発生を防ぐことができ、端子接触部における導通不良や接触抵抗の増加を確実に防ぐことができる。また、保護材としてフィルム材を用いることにより、例えば、端部に接着剤を塗りつけて接着層を形成する場合よりも短時間で貼り付け作業を行うことができ、しかもムラのない層を形成することができる。この場合、フィルム材としては、例えばポリイミドフィルムを用いることができる。
【0012】
また、保護材として硬化性を有する液状又はゲル状の樹脂が用いられ、めっきリード部の端部に樹脂を塗布し、又は、めっきリード部の端部を樹脂に浸漬することにより、めっきリード部の端部の基材裏面からめっきリード部の端部の上面に渡って樹脂層が形成されてなるものとしてもよい。
【0013】
すなわち、浸漬や塗布によってめっきリード部の端部に付着した樹脂を後から硬化させることにより、所定の位置に封止性を有する樹脂層を形成することができるため、めっきリード部の被覆を簡単に行うことができる。この場合、樹脂として、例えば紫外線硬化性樹脂を用いることができる。
【0014】
また、保護材として片面に接着層が形成されたフィルム材が用いられ、めっきリード部の端部の上面にフィルム材が貼り付けられてなるものとしてもよい。この場合、例えば、フィルム材をめっきリード部の上面から端面に向かって突き出すように貼り付けることにより、酸化物や腐食生成物が端子接触部へ移動するのを効果的に抑制することができる。この場合も、フィルム材としては、例えばポリイミドフィルムを用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、端子接触部における導通不良及び接触抵抗の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用してなるプリント基板のめっきリード部を被覆する第1の実施形態を示す図である。
【図2】図1のB部におけるA−A矢視断面図である。
【図3】本発明を適用してなるプリント基板のめっきリード部を被覆する第2の実施形態を示す図である。
【図4】図3のD部におけるC−C矢視断面図である。
【図5】本発明を適用してなるプリント基板のめっきリード部を被覆する第3の実施形態を示す図である。
【図6】図5のF部におけるE−E矢視断面図である。
【図7】プリント基板の全体構成を示す上面図である。
【図8】図7のG部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用してなるプリント基板の実施形態について説明する。
【0018】
本発明のプリント基板は、FPC等の可撓性を有するプリント基板に適用される。図7に示すように、本実施形態のプリント基板1は、可撓性を有する基材3の上に平行配線した金属箔(例えば銅箔)からなる導体5が固着されている。導体5は、絶縁樹脂フィルム7で被覆されており、その一端側の絶縁樹脂フィルム7から導体5の一部(図7の左側)が露出されている。絶縁樹脂フィルム7は、例えばポリイミドフィルムにより形成されている。
【0019】
ここで、絶縁樹脂フィルム7から露出された導体部分Gを図8に示す。導体部分Gは、端子接触部9と、めっきリード部11を有している。めっきリード部11は、端子接触部9と連続して形成され、その線幅は、端子接触部9の線幅よりも十分に細くなっている。端子接触部9は、図示しない相手側端子の乗り上げ部分となり、かつ、電気的な接触がなされる部分となっている。めっきリード部11の線幅が端子接触部9の線幅よりも狭いのは、プリント基板1の製造時においてプリント基板1の外形が切り落とされたときの切断設備の摩耗を抑制するためである。
【0020】
端子接触部9とめっきリード部11の露出する面には、金めっきが施されている。このように金めっきが施されることにより、酸化ガスや腐食ガスが露出面に付着することによる酸化物や腐食生成物の発生を防ぐことができる。
【0021】
このようにして構成されるプリント基板1は、図示しないスライダに固定された状態で図示しないハウジング内に差し込まれ、ハウジング内に設けられた相手側端子がプリント基板1の露出する端子接触部9に押し付けられることで電気的な接続状態が得られる。
【0022】
ところで、前述したように、プリント基板1の製造時においては、金めっきが施されためっきリード部11の端部が切り落とされるため、めっきリード部11の端部には金めっきが施されていない切断面が形成される。このため、めっきリード部11の切断面に酸化ガスや腐食ガスが付着することにより、酸化物や腐食生成物が発生するおそれがある。特に、めっきリード部11の端部と端子接触部9との距離が短ければ、めっきリード部11の切断面で発生した酸化物や腐食生成物が端子接触部9の上面、つまり相手側端子が接触する面に移動して付着することがある。この場合、相手側端子と端子接触部9との間に酸化物や腐食生成物が介在することになり、導通不良や接触抵抗の増加を招くおそれがある。
【0023】
これに対し、本発明では、めっきリード部11の切断面で発生した酸化物や腐食生成物が端子接触部9まで移動するのを防ぐため、めっきリード部11の端部において、少なくともめっきリード部11の上面に、保護材からなる保護層を形成することを特徴としている。さらに本発明では、めっきリード部11の切断面において酸化物や腐食生成物の発生を防ぐため、めっきリード部11の端部の基材3裏面からめっきリード部11の端部の上面に渡って保護材からなる保護層を形成することを特徴としている。
【0024】
ここで、本発明の第1の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0025】
本実施形態では、保護層を形成するものとして片面に接着層を有するシート状のフィルム材13を用いている。このフィルム材13は、接着層15とフィルム層17の2層から形成され、接着層15は、フィルム層17とめっきリード部11及び基材3との間に介在している。本実施形態では、このようなフィルム材13が、めっきリード部11の端部の基材3の裏面からめっきリード部11の端部の上面に渡って貼り付けられた状態となっている。フィルム材13の貼り付け作業は、手作業で行うこともできるし、自動化することもできる。
【0026】
フィルム材13には、周知のポリイミドフィルムからなるシート材を用いることができるが、フィルム材13とめっきリード部11及び基材3との接着状態が保持されるとともに、酸化ガスや腐食ガスの浸透を防ぐ構造のものであれば、特に限定されるものではない。
【0027】
このように、フィルム材13をめっきリード部11の端部の上面だけでなく、めっきリード部11の切断面から基材3の裏面に渡って貼り付けることにより、めっきリード部11の切断面をフィルム材13によって完全に封止することができる。このため、めっきリード部11の切断面に酸化ガスや腐食ガスが接触することによる酸化物や腐食生成物の発生を防ぐことができ、端子接触部9における導通不良や接触抵抗の増加を防ぐことができる。
【0028】
また、フィルム材13をめっきリード部11の端部に断面U字状(図2)、つまり、めっきリード部13を包み込むように貼り付けることで、貼り付ける面積を広く確保することができ、フィルム材13の貼り付け状態をより安定に保持することができる。また、このようなフィルム材13を用いることにより、被覆するための作業を簡単に行うことができ、しかもムラのない保護層を形成することができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態について、図3及び図4を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と相違する構成や特徴部等を中心に説明する。
【0030】
本実施形態では、保護層を形成するものとしてフィルム材13に代えて所定の樹脂を用いる点で第1の実施形態と相違する。ここで用いる樹脂とは、硬化性を有する液状又はゲル状の樹脂のことであり、液状又はゲル状の状態で何らかの処理を施すことにより、硬化する性質を有するものである。例えば、液状又はゲル状の樹脂に紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化樹脂が知られている。
【0031】
この種の樹脂を用いることにより、例えば、めっきリード部11の端部に液状の樹脂を塗布し、或いは、めっきリード部11の端部を液状の樹脂に浸漬させた後、所定の処理を施すことによって簡単に硬化させることができる。その結果、図4に示すように、めっきリード部11の端部の上面だけでなく、めっきリード部11の切断面から基材3の裏面に渡って樹脂層19を簡単に形成することができる。
【0032】
このようにして形成された樹脂層19は、酸化ガスや腐食ガスの浸透を防ぐことができ、第1の実施形態と同様、めっきリード部11の切断面の封止効果を発揮する。したがって、酸化物や腐食生成物の発生を防ぐことができ、端子接触部9における導通不良や接触抵抗の増加を防ぐことができる。
【0033】
また、本実施形態のように、樹脂層19をめっきリード部11の端部に断面U字状(図4)に形成することで、樹脂層19が付着する面積を広く確保することができ、樹脂層19をより安定に保持することができる。また、樹脂層19を液状又はゲル状の状態で形成することができるため、例えば一度に多くの部品を処理することが可能となり、作業性を向上させることができる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施形態について、図5及び図6を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と相違する構成や特徴部等を中心に説明する。
【0035】
本実施形態では、保護層を形成するものとしてフィルム材13を用いている点で、第1の実施形態と共通するが、フィルム材13をめっきリード部11の端部の上面のみに貼り付けている点で、第1及び第2の実施形態と構成が相違する。
【0036】
本実施形態では、めっきリード部11の切断面が露出されたままであるため、切断面において酸化物や腐食生成物が発生するおそれがある。しかし、めっきリード部11の先端部の上面をフィルム材13で被覆することにより、切断面で発生した酸化物や腐食生成物は、その保護層、つまりフィルム材13を乗り越えなければ、端子接触部9に至らないことになる。よって、このようにめっきリード部11の先端部の上面だけにフィルム材13を貼り付けるだけでも、酸化物や腐食生成物の移動を妨げることができるため、端子接触部9における導通不良の発生や接触抵抗の増加を抑制する効果を得ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、一定の形状保持が可能なフィルム材13を用いているため、図6に示すように、フィルム材13をめっきリード部11の先端の上面から切断面に向かって突き出すように貼り付けるようにしてもよい。このようにすることで、切断面で発生した酸化物や腐食生成物の移動(矢印の方向の移動)をより効果的に妨げることができ、その結果、導通不良の発生や接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0039】
例えば、第2の実施形態では、保護層を形成するものとして樹脂を用いる例を説明したが、この樹脂に代えて、周知の接着剤を用いるようにしてもよい。接着剤を液の状態で塗り付けた後、自然硬化させることにより、樹脂の場合と同様に、めっきリード部11の先端の切断面の封止効果を得ることができる。また、第3の実施形態では、フィルム材13を用いる例を説明したが、第2の実施形態の樹脂等、その他の絶縁材等を用いるようにしてもよい。また、保護層を形成するものとしては、絶縁材に限られず、導電性材料を用いるようにしてもよい。要は、酸化物や腐食生成物の移動経路にこれらの移動の障害となる何らかの層が形成されていればよい。
【0040】
また、めっきリード部11の先端の上面に形成する保護層の範囲は、めっきリード部11の切断面と端子接触部9との距離や、めっきリード部11の切断面の面積等を考慮して、適宜設定することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、めっきリード部11の線幅が、端子接触部9の線幅よりも細く形成される例を説明したが、この例に限られるものではなく、例えば、めっきリード部11の線幅は、端子接触部9の線幅と同じ幅に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 プリント基板
3 基材
5 導体
7 絶縁樹脂フィルム
9 端子接触部
11 めっきリード部
13 フィルム材
15 接着層
17 フィルム層
19 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材の表面に形成される導体の露出面にめっきが施されており、
前記めっきが施された導体は、相手側端子が接触する端子接触部と、この端子接触部と連続して形成されるめっきリード部とを有してなり、
前記めっきリード部の端部の少なくとも上面の設定範囲が保護材で被覆されてなるプリント基板。
【請求項2】
前記保護材として片面に接着層が形成されたフィルム材が用いられ、前記めっきリード部の端部の前記基材裏面から該めっきリード部の端部の上面に渡って前記フィルム材が貼り付けられてなる請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記保護材として硬化性を有する液状又はゲル状の樹脂が用いられ、前記めっきリード部の端部に前記樹脂を塗布し、又は、前記めっきリード部の端部を前記樹脂に浸漬することにより、前記めっきリード部の端部の前記基材裏面から該めっきリード部の端部の上面に渡って樹脂層が形成されてなる請求項1に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記保護材として片面に接着層が形成されたフィルム材が用いられ、前記めっきリード部の端部の上面に前記フィルム材が貼り付けられてなる請求項1に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−16593(P2013−16593A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147530(P2011−147530)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】