説明

プリント装置

【課題】 ユーザが特に意識せずともシート情報が記録されるようにして、いったん取り外したロールシートのシート情報を装置又はユーザが容易に識別可能にすること。
【解決手段】 1つの画像をプリントするごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録する。プリントした画像それぞれの先端と後端を交互にカッタで切り落としていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロールシートを用いたプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻かれたロールシートにプリントを行なうプリント装置では、ユーザがロールシートの装填や取り外しを行なう。使いかけでロールに残りがある状態でも、一旦取り外して後に再装填する場合がある。再装填した際には、ロールの残り量を装置が認識することが望ましい。
【0003】
特許文献1に開示される装置では、ユーザがロールシート取り外す際に、残量印字モードを選択すると、装置がシート残量情報をシートの端部に記録する。そして、次回、シートを再装填して使用する際には、ユーザはシートに記録された残量情報を見てその数値をキーボードから入力すれば、装置が残量を認識することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−166937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、残量印字モードを選択せずにユーザがロールシートを取り外してしまうと、シートには残量記録がなされていないので、再使用の際にはシート残量が分からなくなってしまう。つまり従来は、ユーザはシート取り外しに際には残量印字モードを設定するよう常に意識して操作しなければならず、うっかり忘れた場合のリカバリができない。
【0006】
本発明は上述の課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の主目的は、ユーザが特に意識せずともシート情報が記録されるようにして、ユーザがどのようなタイミングでロールシートを取り外しても、取り外したロールシートのシート情報を装置又はユーザが容易に識別可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリント装置は、連続したシートを保持して供給するシート供給部と、前記シート供給部から供給されたシートにプリントするプリント部と、プリントされたシートを切断するカッタ部と、制御部とを有し、前記制御部の制御により、前記プリント部により1つの画像をプリントするごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録することを特徴とする。
【0008】
上記プリント装置によれば、1つの画像を記録するごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録する。最後の画像の後端を切断してもその後ろの余白領域は残され、次回の使用におけるシート先頭領域にシート情報が記録された状態となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザが特に意識せずともシート情報が記録されるようにして、ユーザがどのようなタイミングでロールシートを取り外しても、取り外したロールシートのシート情報を装置又はユーザが容易に識別可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】制御部のブロック図
【図3】片面プリントモード、両面プリントモードでの動作を説明するための図
【図4】プリント画像および余白領域とカット位置との関係を示す図
【図5】片面プリントの動作シーケンスを示すフローチャート図
【図6】両面プリントにおける表面プリントのシーケンスを示すフローチャート図
【図7】両面プリントにおける裏面プリントのシーケンスを示すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続したシート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。なお、単位画像といわずに単に画像という場合もある。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。
【0012】
本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置など、インクを用いて乾燥が必要なプリント装置に広く適用可能である。また、本発明は感光材料が付与されたシートにレーザ等で潜像を描画して液体現像方式でプリントを行なうプリント装置にも適用可能である。また、本発明はプリント処理に限らず連続したシートに乾燥が必要な種々の処理(記録、加工、塗布、照射、読取、検査など)を行なうシート処理装置にも適用可能である。
【0013】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。排出部12はソータ部11を含んで排出処理を行なうユニットを指す。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0014】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。シート供給部1の出口近傍には、シート上に記録されたコード化されたシート情報を光学的に読み取るための読取器22が設けられている。
【0015】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。
【0016】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0017】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するシート処理部である。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0018】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0019】
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタ20を備えたユニットである。カッタ部6はさらに、シート上に記録されているカットマークを光学的に検出するカットマークセンサ19とシートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱17が設けられている。ゴミ箱17は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱17に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。
【0020】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するエッジセンサ21が設けられている。つまり、エッジセンサ21はカッタ部6と情報記録部7による記録位置との間でシートの端部を検知する、エッジセンサ21の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
【0021】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0022】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0023】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートは巻き取りのときとは逆順に送り出されてデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0024】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置(「排出分岐位置」と呼ぶ。)には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0025】
ソータ部11を含む排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは排出部12が有する複数のトレイに排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0026】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0027】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0028】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲んだ範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示するディスプレイや音声発生器などの出力部を含む。
【0029】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0030】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリンタドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0031】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0032】
図3(a)は片面プリントモードでの動作を説明するための図である。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。
【0033】
このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。以上をまとめると、片面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(6)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(4)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(5)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する;
(6)最後の単位画像を切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す。
【0034】
図3(b)は両面プリントモードでの動作を説明するための図である。両面プリントでは、表(おもて)面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導かれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、この巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この巻き戻しによって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
【0035】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。
【0036】
このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。以上をまとめると、両面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(11)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントされたシートを乾燥部8を通過させる;
(4)乾燥部8を通過したシートを第2経路に導いて、反転部9が有する巻取回転体に巻き取っていく;
(5)第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろでカッタ部6でシートを切断する;
(6)切断したシートの端部が乾燥部8を通過して巻取回転体に達するまで巻取回転体に巻き取る。これと共に、切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す;
(7)巻取りが済んだら巻取回転体を逆回転させて、第2経路から再びプリント部4にシートを供給する;
(8)第2経路から供給されるシートの第2面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)第2面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(10)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(11)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する。
【0037】
本実施形態のプリント装置は、連続したシートに1つの画像をプリントするごとに、次の画像との間の余白領域にカットマークと共にシート情報を記録していくことを特徴の一つとしている。最後の画像の後端を切断してもその後ろの余白領域は残される。すなわち、最後の画像を切断した後は、次の使用における先頭領域にシート情報が記録された状態となる。したがって、カット後に巻き戻されたロールシートがいつ取り外されたとしても、次回の使用の際にはロールシートの先端部に記録されているシート情報をプリント装置が読み取って認識することができる。もしくはユーザが容易にシート情報を認識することができる。ユーザは認識したシート情報を入力部(プリント装置本体の入力部もしくはホスト装置16の入力部)から入力して設定することができる。
【0038】
ここで、シート情報とは、シート情報がコード化された一次元又は二次元のコードパターンと、当該情報をユーザが判読可能な文字とが並べて記録されたものである。シート情報は、シート残量(ロール残量)、シート種類、シート幅の少なくとも1つに関する情報である。あるいは、プリントした画像に関する情報、例えば画像のシリアルナンバや名称である。あるいは、記録日時、環境温度、環境湿度の少なくとも1つに関する情報である。詳しくは後述する。
【0039】
図4は、シート上でのプリント画像および余白領域とカット位置との関係を示す図である。シート上には、画像領域101と余白領域100が交互に配置される。最上流の画像領域101の上流側には余白領域105が配置される。余白領域100、105には、カットマーク102とシート情報103がプリントヘッド14で記録される。下流側カットライン104aは、余白領域100の下流側と画像領域101の上流側との境界である。上流側カットライン104bは、余白領域100の上流側と画像領域101の下流側との境界である。最上流カットライン104cは、ジョブの最後にプリントされた画像の画像領域101の上流側と余白領域105との境界である。1つの画像領域101には1つの画像がプリントされる。ここでいう「1つの画像」とは、1つの画像領域101内に記録される画像全体を指すものとし、領域内に分割された小さな画像が複数並んでいたとしてもそれらを合わせた領域全体を「1つの画像」と定義する。
【0040】
図5は、上述の構成のプリント装置における、片面プリントの詳細な動作シーケンスを示すフローチャート図である。動作が開始されると、ステップS10でシート供給部1はロールR1,R2の一方を選択してシート給送を開始する。ステップS11では、読取器22は給送されるシート先端に記録されているシート情報(図4(b)、シート情報103)の読み取りを試みて、シート情報があるか否かの判定を行なう。ステップS11において、読取器22によりシート先端にシート情報があると判定した場合(Yes)は、ステップS12に移行する。ステップS12では読取器22で読み取った読取結果に基づいてシート情報を取得し、記憶する。シート情報とは、シート種、シート幅、シート残量、前回記録時における記録日時および環境温湿度である。続くステップS15では、画像記録を行う時点の記録日時の取得、環境温度の取得、環境湿度の取得を行なう。
【0041】
ステップ41において、シート情報の読み取りが出来ずシート情報が無いと判定した場合は、ステップS13に移行する。ステップS13では、装置はユーザに対してシート情報が取得できないとのアラームを発する。ステップS14では、装置はユーザに対して、使用するシートのシート情報(シート種、シート幅、シート残量など)の手動入力するか、シート情報が無い状態でプリントを続行するか、あるいはプリント動作を中断するかの選択を促す。ステップS14で、ユーザがプリント続行を選択したら(Yes)ステップS15に移行し、中断を選択したら(No)プリント動作を中断する。
【0042】
ステップS15に続いて、ステップS16ではプリント画像の画像シリアルナンバー割付を行なう。ステップS17では、画像記録を行う時点でのシート残量を計算する。この残量計算は、シート情報取得(ステップS12)もしくはシート情報の手動入力により得られたシート残量から、画像記録を行う時点でのシートのカット量を引くことで計算される。
【0043】
ステップS18では、上述のように得られたシート情報を元に、インクドット配置、インクドット打ち込み量、インクドット打ち込みタイミング、ローラ送り量、ローラ送り速度などのプリント制御のパラメータの最適値を計算して、装置の動作を設定する。
【0044】
ステップS19では、ステップS12で取得されたシート種類、その他の情報を用いて、シートの劣化状態を計算する。このシート劣化計算は、シートのロール最外周部とその他の部分について、以下の(式1)、(式2)を用いて行なう。
ロール外周のシート劣化状態係数
=A ×(d+B×a)×(e+B×b)× c ・・・(式1)
ロール外周以外のシート劣化状態係数
=A ×(d+C×a)×(e+C×b) ・・・(式2)
ここで
A:(画像記録を行う時点の記録日時−前回記録時の記録日時)
B:(画像記録を行う時点の環境温度+前回記録時の環境温度)
C:(画像記録を行う時点の環境温度−前回記録時の環境温度)
a、d:温度劣化係数
b、e:湿度劣化係数
c:ロール外周係数
である。係数は予め実験等により求めたものである。
【0045】
ステップS20では、上述の計算の結果を元に、シート劣化が著しいか否かを判断する。ステップS20の判断がYesの場合、すなわちシート劣化状態係数がシート毎に定められた閾値を超えるときはシート劣化していると判断して、ステップS26に移行する。ステップS26では、ユーザに対してシート劣化のアラームを発する。ステップS27では、ユーザに対してプリントを続行するか、あるいはプリント動作を中断するかの選択を促す。ステップS27で、ユーザがプリント続行を選択したら(Yes)ステップS21に移行し、中断を選択したら(No)プリント動作を中断する。
【0046】
ステップS21では、1つの画像領域(図4(a)、画像領域101)に画像のプリントを行う。プリント動作中は、ステップS18で決定した各シート領域における最適なプリント制御パラメータでインク吐出およびシート搬送が制御される。
【0047】
ステップS22では、プリントした画像領域に隣接する余白領域(図4(a)、余白領域100)に、プリントヘッド14によりシート切断の目印となるカットマークを記録する。これと共に、同じ余白領域にシート情報(図4(a)、シート情報103)をプリントヘッド14により記録する。ここで記録するシート情報は、シート種、シート幅と、画像記録を行う時点のシート残量、記録日時、環境温度、環境湿度、画像シリアルナンバー等である。これらの情報を一次元又は二次元のコードパターンにして記録する。これと共に、ユーザが目視して情報を認識することができるように、上記情報の少なくとも一部を文字や数字によって、コードパターンに隣接して記録する。
【0048】
ステップS23では、カッタ20で下流側のカットライン(図4(a)、下流側カットライン104a)でシートを切断する。下流側カットラインの位置は、記録したカットマークをカットマークセンサ19で検出するタイミングから判断することができる。
【0049】
ステップS24では、プリントジョブの最後の画像か否かを判断する。最後の画像でない場合(No)にはステップS25に移行する。ステップS25では、カッタ20で上流側のカットライン(図4(a)、上流側カットライン104b)でシートを切断する。上流側カットラインの位置も、記録したカットマークをカットマークセンサ19で検出するタイミングで判断することができる。単位長さ毎にカットされたシートは乾燥部8で乾燥処理を済ませ、排出搬送部10を経て、ソータ部11の排出部12に排出される。ステップS25の次はステップS15に戻って、同様の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS24で最後のプリントジョブの画像の場合(Yes)と判断した場合は、ステップS28に移行する。ステップS28では上述と同様のシート情報をプリントヘッド14により記録する。そして、図4(c)に示すように、カッタ20で最上流カットライン104cにおいてシートを切断する。
【0051】
ステップS29では、切断した連続シートの上流側をロールR1又はR2に巻き戻す。巻き戻しは、シート供給部1で保持するロールを供給時の回転とは逆方向に回転させて行なう。こうして、片面プリントのシーケンスを終了する。
【0052】
このように、1つの画像を記録するごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録する記録動作(ステップS22)、および記録した画像それぞれの先端と後端を交互に前記カッタ部で切り落としていくカット動作(ステップS23、S25)を繰返す。ステップS28の後には、シートをカットラインで切断しないので、図4(b)に示すように、カットされたシート先端(余白領域105)にはカットマーク102とシート情報103が残ったままシートが巻き戻される。つまり、表面プリント動作が終了したら余白領域のうち最後にシート情報を記録した余白領域を残して切断されたシートは、シート供給部1に送り戻される。
【0053】
巻き戻されたロールR1又はR2を、メンテナンスや別のロールとの交換のためにユーザが取り外したとしても、シート先端にはシート情報が保持されている。ユーザが、同じロールをシート供給部1に再度セットすると、シート情報が読取器22で読み取られて自動的に再設定され、スムーズにプリント処理を再開することができる。仮に、読取器22がシート情報を読み取ることができない状況が発生しても、ユーザが目視によって文字や数字で記録された情報を認識して、入力部から手動入力すればシート情報を容易に再設定することができる。
【0054】
なお、ステップS22では、シート情報を記録しないようにしてもよい。この場合、図4(c)に示すように、余白領域100にはカットマーク102のみが記録され、最後(最上流)の余白領域105にのみカットマーク102と共にシート情報103が記録される。
【0055】
次に、両面プリント時のプリントジョブの一連の流れを説明する。上述したように、両面プリントでは最初に表面プリント、続いて裏面プリントを行なう。図6は両面プリントにおける表面プリントのシーケンスを示すフローチャートである。図6において、先の図5と同じ番号のステップは同一処理であるので、重複の説明は省略して異なるステップを中心に説明する。
【0056】
ステップS10(シート給送)からステップS21(画像プリント)までの処理は、図5の例と同じである。ステップS21の処理に次いで、ステップ28で余白領域にシート情報を記録する。ここで記録するシート情報は上述の例と同じであり、コード化されたパターンと文字又は数字とが併せて記録される。
【0057】
続くステップS24では、プリントジョブの最後の画像か否かを判断する。最後の画像でない場合(No)にはステップS16に戻って同様の処理を繰り返し、画像を繰返しプリントしていく。図3で説明したように、両面プリントにおける表面プリントでは連続シートは単位長さにはカットされずに、プリントされたシートは反転部9の巻取ドラムに巻き取られていく。
【0058】
ステップS24で最後のプリントジョブの画像の場合(Yes)と判断した場合は、ステップS22に移行する。ステップS22では、余白領域(図4、余白領域105)にカットマークを記録する。ステップS30では、最上流カットライン104cで連続シートを切断する。そして、ステップS29では、切断した連続シートの上流側をロールR1又はR2に巻き戻す。下流側のプリントがなされたシートはカットせず反転部9に最後まで巻き取る。ステップ31では、プリントされたシートを反転部9の巻取ドラムに最後まで巻き取る。こうして、両面プリントにおける表面プリントのシーケンスを終了する。
【0059】
このように、表面プリントでは、プリント部により1つの画像を記録するごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録する記録動作(ステップS22)を繰返し実行する。
【0060】
続いて、裏面プリントのシーケンスを開始する。図7は両面プリントにおける裏面プリントのシーケンスを示すフローチャートである。図7において、先の図5、図6と同じ番号のステップは同一処理である。
【0061】
図7において、ステップS11では、反転部9の巻取ドラムが逆回転して、巻き取ったシートを送り出すことによりシートを給送する。シートは、デカール部2、斜行矯正部3を経てプリント部4に搬送される。
【0062】
ステップ21での画像プリントの前に、ステップS15〜ステップS19の各処理を行なう。ステップ21でシート裏面に画像プリントを行なう。次いで、ステップ22で余白領域(図4、余白領域100)にカットマークを記録し、ステップS23で同じ余白領域にシート情報を記録する。
【0063】
シートS23では、単位長さ毎に下流側カットライン104aでシートを切断する。ステップ25では、同じ余白領域の上流側カットライン104bでシートを切断する。カットされたシートは乾燥部8で乾燥処理を済ませ、排出搬送部10を経て、ソータ部11の排出部12に排出される。こうして両面プリントのシーケンスが終了する。
【0064】
裏面プリントは、1つの画像を記録するごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録する記録動作(ステップS22)、および記録した画像それぞれの先端と後端を交互に前記カッタ部で切り落としていくカット動作(ステップS23、S25)を繰返す。
【0065】
表面プリントの後にロールR1又はR2に巻き戻されたシートは、図4(b)に示すように、シート先端(余白領域105)にはカットマーク102とシート情報103が残っている。そのため、上述したのと同様の作用効果が得られる。また、表面プリントが済んだシートの各余白領域には画像シリアルナンバーが記録される。そのため、シート搬送ジャムやシステムトラブルでプリントエラーが発生した場合にも、ユーザは画像シリアルナンバーを見ることで、プリントジョブのどこでエラーが起こったかを、容易に把握することができる。
【0066】
以上説明したように、プリント部4により1つの画像をプリントするごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録する。つまり、ユーザが特に意識せずともシート情報が記録されるようにしている。このため、ユーザがどのようなタイミングでシート供給部1から連続シート(ロール)を取り外しても、取り外した連続シートのシート情報を装置又はユーザが容易に識別可能となる。また、
【符号の説明】
【0067】
1 シート供給部
4 プリント部
6 カッタ部
8 乾燥部
13 制御部
14 プリントヘッド
19 カットマークセンサ
20 カッタ
22 読取器
100 余白領域
101 画像領域
102 カットマーク
103 シート情報
104a 下流側カットライン
104b 上流側カットライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続したシートを保持して供給するシート供給部と、
前記シート供給部から供給されたシートにプリントするプリント部と、
プリントされたシートを切断するカッタ部と、
制御部と、を有し、
前記制御部の制御により、前記プリント部により1つの画像をプリントするごとに次の画像との間の余白領域にシート情報を記録することを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記制御部の制御により、プリントした複数の画像それぞれの先端と後端を交互に前記カッタ部で切り落としていくことを特徴とする、請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
前記余白領域のうち最後にシート情報を記録した余白領域を残して前記カッタ部で切断されたシートは前記シート供給部に送り戻されることを特徴とする、請求項1または2記載のプリント装置。
【請求項4】
前記シート情報は、シート残量、シート種類、シート幅の少なくとも1つに関する情報であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項5】
前記シート情報は、プリントした画像に関する情報であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項6】
前記シート情報は、記録日時、環境温度、環境湿度の少なくとも1つに関する情報であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項7】
前記制御部の制御により、前記余白領域に前記シート情報とともにカットマークを記録し、前記記録されたカットマークに基づいてカット位置を判断して前記カッタ部でシートを切断することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項8】
前記カットマークを読み取るセンサをさらに有し、前記制御部は前記センサの読取結果に基づいて前記シートを切断する位置を判断することを特徴とする、請求項7記載のプリント装置。
【請求項9】
前記記録されたシート情報を読み取る読取器をさらに有し、前記制御部は前記読取器の読取に基づいて装置の動作を設定することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記記録されたシート情報をユーザが認識して入力した情報に基づいて装置の動作を設定することを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項11】
前記制御部の制御により、シートの第1面に複数の画像を順次プリントし、前記第1面にプリント済みのシートを表裏反転させて前記第1面の背面側の第2面に複数の画像を順次プリントして、シートに両面プリントすることが可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載のプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−177940(P2011−177940A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42334(P2010−42334)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】