説明

プリント配線板

【課題】 ボンディングパッドを高密度化または狭ピッチ化しても、バリやボイドの形成が抑制され、電気接続性や信頼性が低下しないパッド構造を有するプリント配線板を実現すること。
【解決手段】 ボンディングパッドを、パッド部と、そのパッド部に連続するリード部とから構成し、リード部の一部をテーパ状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体素子に接続するボンディングパッドからなる導体回路を有するプリント配線板において、ワイヤボンディングを行っても隣接する他のパッドとの短絡等の不具合を引き起こしにくく、電気的な接続性や信頼性が低下しにくいプリント配線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種半導体素子をプリント基板上に実装するには、半導体素子をプリント配線板の所定領域(例えば、ダイパッド)に金属や絶縁材などからなる接着剤により予め固定した後、半導体素子上のパッドとプリント配線板のパッド(主としてボンディングパッド)とを金等のワイヤを用いて接続し、さらに、半導体素子やワイヤボンディングを保護するために、例えば、ポッティング法や、印刷法等により熱硬化性樹脂で封止樹脂層を形成している。あるいは、トランスファーモールド法により熱可塑性樹脂で封止樹脂層を形成している。これにより、半導体素子とプリント配線板の表層の導体回路もしくは内層の導体回路(バイアホールやスルーホールを含む)による電気的接続が行なわれて、半導体としての機能が発揮される半導体装置が得られる。
【0003】
また、必要に応じて、プリント配線板の外部接続パッド(ボンディングパッドでないパッドを指す。)上にBGA、半田バンプ等を載置させることにより外部基板との接続をすることが可能となる。このとき、プリント配線側のボンディング用パッドの形状は、円形、楕円、四角形等であり、複数のパッドにおいて、これらのすべて同一形状としてもよいし、異なる形状としてもよい。このようなボンディング用パッドの表層には、半導体素子とのワイヤボンディングの際に、確実な金属接合を行って信頼性を確保できるようにNi−Au等の耐食性金属被膜が形成されている。通常、半導体素子のパッドには、ボールボンディングを行い、プリント配線板側には、ウエッジボンディングを行うのである。それにより、半導体素子の機能を発揮させることができるのである。
【0004】
ボンディングパッド上には、耐ボンディング性を考慮して、電解金めっきにより、表層の金層を形成するのが通常(その一例として、硬質金)であり、そのために、ボンディングパッドの一部が延長されてなるめっき用リードを介して、めっき膜が形成され、その後、該ボンディングパッドとめっき用リードとを機械加工により切断していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、パッケージを基板サイズを小さくする、またはチップサイズと同一なサイズまでコンパクト化するという要請に応じて、ボンディングパッドの高密度化、狭ピッチ化、パッド数の増加、半導体素子のプリント基板への実装形態の変化等が行なわれている。その代表的な例としては、隣接したボンディングパッド間の距離の短縮化があげられる。
【0006】
このようなパッケージのコンパクト化に伴い、従来の半導体装置(半導体素子をプリント配線板に実装したものをさす。)では問題にならなかった不具合が発生し、上述したようなコンパクト化された半導体装置では、電気接続性の低下や早期の信頼性の低下を招き、所望の半導体素子の機能や所望の信頼性が得られないという問題があった。
【0007】
例えば、従来のボンディングパッドの一部分から延設されためっきリードを有するプリント配線板では、該リードが、基板の端部に対して、ほぼ直角な方向に形成されているので、ルーター加工等による外形加工を終えたプリント配線板のリード部およびボンディングパッド部を検査すると、バリが確認されることがある。
【0008】
このようなバリは、隣り合うボンディングパッド間を電気的に接続して、短絡を引き起こす場合があった。また、半導体素子が実装され、かつ封止樹脂層による封止を行ったプリント配線板において、該封止樹脂層内にバリが残留すると、信頼性試験(PCT試験、ヒートサイクル試験)の際、残留したバリが封止樹脂内で悪影響を及ぼし、ボンディングパッドやワイヤが早期に損傷してしまうこともあり、その結果、信頼性が低下してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、ボンディングパッドを高密度化または狭ピッチ化しても、バリやボイドの形成が抑制され、電気接続性や信頼性が低下しないパッド構造を有するプリント配線板を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術が抱える上記問題点を解消するために鋭意研究した結果、ボンディングパッドの一部をテーパ形状にすることにより、ルーター等の機械加工時におけるバリ形成を低減させることができる、即ち、バリが形成されたとしても、パッド部またはリード部から剥れ易くなるために、バリの残存を少なくする(バリの形成を抑制する)ことができ、それによって、電気接続性や信頼性の低下を阻止できることを知見し、そのような知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本願発明は、半導体素子が実装され、該半導体素子に接続されるボンディングパッドからなる導体回路を有するプリント配線板において、
前記ボンディングパッドは、少なくとも一部がテーパ状に形成されていることを特徴とするプリント配線板である。
【0012】
また、本発明は、半導体素子に接続されるボンディングパッドからなる導体回路を有するプリント配線板において、前記ボンディングパッドは、パッド部と、それに連続するリード部とからなり、そのリード部の一部がテーパ状に形成されていることを特徴とするプリント配線板である。
【0013】
本発明において、ボンディングパッドの少なくとも一部またはボンディングパッドを構成するリード部に形成されたテーパ状部分の角度は、基板の端部に対して、30〜60°の範囲とすることができる。
【0014】
また、本発明において、ボンディングパッドを複数個設けると共に、各ボンディングパッドは、同一の部位でテーパ状に形成することができる。
また、本発明において、ボンディングパッドは、パッド部の一方の端面とリード部の一方の端面とが同一直線上にあり、かつリード部の他方の端面をテーパ状に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ルーター等の機械加工でめっき用リードを切断、除去してボンディングパッドを形成する際に、リード部への応力が緩和されるので、リード部に連続するパッド部分の剥れが防止される。その結果、該ボンディングパッドの形状は、機械加工後でも、所望の形状が維持され、ワイヤボンディング時の未接続や接続不良等の不具合が生じることが低減されるので、電気接続性や信頼性を確保しやすくなる。
【0016】
また、本発明によれば、封止樹脂層形成後に封止樹脂内にボイドが形成されにくくなる。特に、ボンディングパッドの周辺部におけるボイドの形成がされにくくなる。つまり、封止樹脂層の形成時に、樹脂が軟化される(熱硬化性樹脂であれば、硬化前の常温下では軟らかいし、熱可塑性樹脂であれば、高温下において軟化する。)ことにより、軟化樹脂は封止樹脂形成領域内に均一に流れ込んで、半導体素子、ワイヤおよび基板上のパッドを覆うことにより封止される。この時、本発明のボンディングパッドにはテーパ部が形成されていることから、その樹脂の流れ込みに対して、パッドでの堰き止めがされない。そのために、ボイドが形成されにくくなるのである。特に、リード付近でのボイドが形成されにくくなる。その結果、封止された樹脂内には、ボイドで形成された空隙が残存しにくくなるので、ボンディングパッド上に接合されているワイヤの接続に与える影響が抑えられるので、電気接続性や信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のプリント配線板は、実装された半導体素子が接続されるボンディングパッドからなる導体回路を有し、そのボンディングパッドは、少なくとも一部がテーパ状に形成されていることに特徴がある。
また、本発明のプリント配線板は、半導体素子に接続されるボンディングパッドからなる導体回路を有し、そのボンディングパッドは、パッド部と、そのパッド部に連続するリード部とから構成され、リード部の一部がテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明において、「テーパ状に形成される」とは、ボンディングパッドの端面またはリード部の端面が、基板の端面に対して鋭角をなして形成されるということである。
【0019】
図1(a)〜(b)は、ルーター等による機械加工前の、めっき用リードを介して接続されているボンディングパッドとなる導体形状を示す概略図であり、図1(a)は、従来技術にかかる導体形状を示し、図1(b)は、本発明にかかる導体形状の一例を示す。
図1(a)に示すように、従来技術にかかるボンディングパッドは、リード部がパッド部から基板の端面に対して直角な方向に延設されている。図1(b)に示すように、本発明にかかるボンディングパッドは、リード部がパッド部から基板の端面に対して45°(鋭角)をなすような方向に延設されている。
【0020】
本発明では、図中、点線(切削部)で示すように、導体にルーター等の機械加工を施すことによって、不要なめっき用リードが切断、除去され、その結果として、パッド部と、そのパッド部に連続するリード部とから構成され、そのリード部の一部がテーパ状に形成されたボンディングパッドが形成される。
このように、ボンディングパッドの一部をテーパ状に形成する。即ち、ルーター刃に対して、ボンディングパッド角度を鋭角とすることによって、1回の切削距離が短くなったり、切削回数が多くなったりなどの効果が得られる。その結果、ボンディングパッドにおけるバリの形成を抑えることができるのである。
【0021】
本発明において、ボンディングパッドまたはそのボンディングパッドの一部であるリード部のテーパ角度は、基板の端面に対して、30〜60°であることが望ましい。
その理由は、テーパ角度が30°未満では、不要になっためっき用リードをルータ等の機械加工により切断、除去してボンディングパッドを形成し終えた際、バリが形成される度合いを抑えることがされにくくなる。また、めっき用リードを機械加工により切断、除去する時の応力が緩和されにくいので、導体部分の剥れ等の不具合を引き起こしたりしてしまい、その結果として電気的接続や信頼性が低下してしまうこともある。
【0022】
また、テーパ角度が30°未満では、リード部が形成される幅、長さなどが、ボンディングパッドの挟ピッチ化に対して、阻害されることがある。リード部と隣に配置されたボンディングパッドもしくはリード部との距離がさらにピッチが狭くなるなどを引き起こすことがあるために、テーパ角度が30°〜60°の範囲内でのパッドと比較すると、信頼性試験における劣化が若干早まることもある。
【0023】
一方、テーパ角度が60°を越えると、不要になっためっき用リードをルーター等の機械加工により切断、除去してボンディングパッドを形成し終えた際、バリが形成される度合いを抑えることがされくくなる。また、めっき用リードを機械加工により切断、除去する時の応力が緩和されにくいので、導体部分の剥れ等の不具合を引き起こしたりしてしまい、その結果として、電気的接続や信頼性が低下してしまうこともある。
【0024】
また、テーパ角度が60°を超えると、樹脂の流れ込みが阻害されてしまうためにボイドが形成されることがある。特に、ボンディングパッドのパッド部とリード部の交差部分においてボイドが形成されてしまうことがある。そのために、テーパ角度が30〜60°の範囲内である場合と比較すると、信頼性試験において、劣化が若干早まることもある。
したがって、前記テーパ角度が上記範囲内であれば、ボンディングパッド(パッド部とリード部)におけるバリの形成が低減し、そのために、バリを起因とする短絡、異物混入などの不具合が低下するのである。
【0025】
また、前記テーパ角度が上記範囲内であれば、封止樹脂層を形成後に、樹脂内にボイドが形成されにくくなる。そのためにボイドを起因とする不具合が低減するので、ワイヤの損傷や接合部での剥れなどの発生が低下し、その結果、電気接続性や信頼性を確保することができるのである。
【0026】
本発明において、ボンディングパッドは、図1(b)に示すように、複数個からなり、該複数個のボンディングパッドは、同じ部位でテーパ状となっていることが望ましい。
その理由は、バリの形成における不具合を抑えることができるからである。例えば、好ましくないバリが形成されたとしても、テーパ形成位置が同一部位になるので、バリによる短絡など低減させることができる。
【0027】
本発明において、ボンディングパッドは、例えば、基板の端面に平行な方向に細長く延設しためっき用リードの片側または両側(図1(b)参照)において、同一直線上に複数個が列設された形態としてもよいし、複数個が千鳥配列(互い違い)された形態としてもよい。
【0028】
いずれの形態でも、不要となっためっき用リードはルーター等による機械加工によってボンディングパッドから切り離されることによって、少なくともリード部の一部がテーパ状に形成された独立したボンディングパッドが形成される。
【0029】
本発明において、ボンディングパッドは、図2(a)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれを、基板の端面に対して鋭角をなすようなテーパ状に形成することが望ましい。
その理由は、バリの形成を抑えられやすくなるし、封止樹脂の形成時における封止樹脂内のボイドの残留により、空隙の形成を抑えられるからである。
【0030】
また、本発明において、ボンディングパッドは、図2(b)に示すように、パッド部の一方の端面と、リード部の一方の端面が同一直線上にあり、リード部の他方の端面をテーパ状に形成することが望ましい。
その理由は、機械加工や研磨に対する剛性が増すからである。その結果、導体層の剥れやバリの形成を低減させることができる。
【0031】
以下、本発明にかかるプリント配線板を製造する方法の一例について、添付図面を参照にして具体的に説明する。
(1)本発明にかかるプリント配線板を製造するに当たって、それを構成する基本単位としての回路基板は、絶縁性基材の片面もしくは両面に銅箔が貼付けられたものを出発材料として用いる。通常は片面銅箔が形成された片面銅張板を用いる。しかしながら、必要に応じて両面銅張板を用いてもよい。この場合は、基材の強度を保つという観点から用いる。
【0032】
この絶縁性基材は、たとえば、ガラス布エポキシ樹脂基材、ガラス布ビスマレイミドトリアジン樹脂基材、ガラス布ポリフェニレンエーテル樹脂基材、アラミド不織布−エポキシ樹脂基材、アラミド不織布−ポリイミド樹脂基材から選ばれる硬質な積層基材が使用され得るが、ガラス布エポキシ樹脂基材が最も好ましい。また、これらの基材の複数層にしたものであってもよい。
【0033】
上記絶縁性基材の厚さは、20〜800μmが望ましい。その理由は、20μm未満の厚さでは、強度が低下して取扱が難しくなるし、リード部の形成時にも変形などの不具合が起こりやすくなるとともに、めっき形成する際に、膜形成の安定性に欠けるし、信頼性が低くなりなる。逆に、800μmを超える厚さでは、リード部の形成時に、基材を起因とする不具合を引き起こしやすくなる。
【0034】
また銅箔の厚さは、5〜35μmが望ましい。厚みが5μm未満では、パターニングを行った際、断線しやすくなるし、該ボンディングの形成を阻害されることがある。一方、厚みが35μm超では、エッチングにより、微細な線幅の導体回路パターンを形成し難いからであるし、該ボンディングの形成(少なくとも片側テーパ形状)を阻害されることがある。
【0035】
銅箔は、ハーフエッチングを経て、厚みを調整してもよい。この場合には、銅箔厚みは、上記の数値よりも大きいものを用い、エッチング後の銅箔の厚みを、5〜35μmとすることが望ましい。
【0036】
さらに、両面銅張積層板を用いる場合では、銅箔厚みが上記の範囲内であるが、両面で厚みが異なっていてもよい。それにより、強度を確保したりして後工程を阻害しないようにすることができるのである。エッチングで導体回路を形成するのが片面である場合には、その形成を助成させることができるのである。
【0037】
上記絶縁性基材および銅箔としては、特に、エポキシ樹脂をガラスクロスに含潰させてBステージとしたプリプレグと、銅箔とを積層して加熱プレスすることにより得られる片面もしくは両面銅張積層板を用いることが好ましい。その理由は、銅箔がエッチングされた後の取扱中に、配線パターンやボンディングパッドが位置ずれることがなく、位置精度に優れるからである。
【0038】
(2)銅箔上に、エッチングレジスト層を形成する。このレジスト層の形成は、塗布でも予めフィルム状にしたものを貼り付けるいずれの方法でもよい。このレジスト層上に予め回路が描画されたマスクを載置して、露光、現像処理してレジスト層を形成し、レジスト非形成部分に露出する金属層をエッチングして、導体回路、ボンディングパッドおよびめっきリードを形成する。
【0039】
このエッチング液としては、硫酸一過酸化水素、過硫酸塩、塩化第二銅、第二銅錯体と有機酸塩、塩化第二鉄の水溶液等から選ばれる少なくとも1種の水溶液を用いることが望ましい。
上記銅箔をエッチングして導体回路を形成する前処理として、ファインパターンを形成しやすくするため、あらかじめ、銅箔の表面全面をエッチングして厚さを調整してもよい。
【0040】
(3)次に、導体回路の表面を覆ってソルダーレジスト層をそれぞれ形成する。この場合、回路基板の外表面全体にソルダーレジスト組成物を塗布し、その塗膜を乾燥した後、この塗膜に、開口させたい部分を描画したフォトマスクフィルムを載置して露光、現像処理することにより、開口させたい部分の形状と同じ形状の開口を形成する。この場合、ソルダーレジスト層をドライレジストフィルムを貼り付けて、露光・現像もしくはレーザにより開口を形成させてもよい。
ソルダーレジスト層の開口には、ボンディングパッド、外部接続パッドおよびめっきリード部からなる導体が露出されている。
【0041】
開口部が形成されたソルダーレジスト層を100〜250℃、30分〜2時間程度で加熱処理を行い、ソルダーレジスト層を硬化させる。
このとき、ソルダーレジスト層としては熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、一部に(メタ)アクリル基が付加された熱硬化性樹脂、これらの樹脂を2種類以上が複合された樹脂(例えば、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂の樹脂複合体など)を用いることができる。
【0042】
また、ソルダーレジスト層の厚みは、5〜30μmの範囲であることが望ましい。厚みが5μm未満では、導体回路が露出されないことがあり、導体部分が剥き出しになり、信頼性が低下してしまう。逆に、厚みが30μmを越えると、ソルダーレジスト層の硬化時における熱収縮による応力が大きくなりやすくなる傾向にあり、そのために、導体回路に断線等の不具合を引き起こしやすくなり、信頼性が低下してしまうのである。
【0043】
また、必要に応じて、ソルダーレジスト層を形成する前の導体回路には粗面を形成させてもよい。粗面形成としては、例えば、めっき処理、エッチング処理、黒化処理等で行うのである。
【0044】
(4)ソルダーレジスト層の開口から露出した導体回路であるボンディングパッドや外部接続用パッドなどに、主としてボンディングパッドから延設されためっきリードを介して、電解めっきによりニッケル−金層を形成する。
ニッケルめっきには、硫酸ニッケル、塩化ニッケル等の金属錯体が主となり、PH調整剤、ホウ酸などが含まれた液組成であり、電流密度は、0.5〜2.0A/dm2、めっき温度は常温から50℃、めっき時間10分〜1時間程度で行われることが通常である。
【0045】
このとき、ニッケル層の厚みは、1〜10μmの範囲で形成されることが望ましい。厚みが1μm未満では、金メッキを行ったとき、金メッキ膜が拡散してしまい、膜の不具合が生じてしまい、その結果、ボンディング性が低下しやすくなるし、パッドでの腐食の進行が進みやすく、信頼性が低下しやすくなるのである。
【0046】
一方、厚みが10μmを越えると、ヒートサイクルやPCT条件下などでの信頼性試験において、ニッケル膜に対して、熱などに起因する応力が作用した場合に、ニッケル膜の内部で応力が緩衝しにくくなるので、破断などの不具合を引き起こしやすくなる。その結果として、信頼性が低下しやすくなるのである。
【0047】
金めっきには、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩、シアン化金錯塩等の金属塩からなるめっき液を用い、電流密度は、0.5〜2.0A/dm2、めっき温度は常温から50℃、めっき時間は10分〜1時間程度で行われることが通常である。
【0048】
金層の厚みは、0.01〜1μmの範囲で形成されることが望ましい。厚みが0.01μm未満であれば、パッド上に均一な金メッキ膜が形成されないことがあり、その結果として、ワイヤボンディングを行った際に、金属結合が不十分となりやすく、その結果、ワイヤ接合部における剥がれを引き起こしやすくなり、電気接続性や信頼性を低下しやすくなるのである。一方、厚みが1μmを越えると、ヒートサイクルやPCT条件下などでの信頼性試験において、ニッケル膜に対して、熱などに起因する応力が作用した場合に、ニッケル膜の内部で応力が緩衝しにくくなるので破断などの不具合を引き起こしやすくなる。その結果として、信頼性が低下しやすくなるのである。
【0049】
必要に応じて、ニッケル層或いは金層を2層以上の複数層にしてもよい。例えば、金層の場合では、下層に無電解めっき膜、上層に電解めっき膜により形成してもよい。下層に無電解めっきを行うことにより、電解めっき膜の形成を助長させることができるのである。基本的には上層側に電解めっきによる金層を形成することが望ましい。この金層は硬質金(例えば、コバルト、ニッケル、インジュウム等が含有)もしくは軟質金(例えば、添加剤の含有量が小であるめっき液による膜形成、置換型金めっき、自己触媒型金めっき等)を用いることができる。この場合、該ボンディングパッド上でワイヤボンディング(主としてウエッジボンディング)が行われるので、その際、耐衝撃性と熱圧着での接合性を考慮すると、表層に硬質金を用いることが有利である。なぜならば、プル強度も低下しにくくなり、信頼性試験を行っても長時間の機能が確保されやすいからである。
【0050】
パッド上の表層に形成される金属には、ニッケル、金、銀、白金、パラジウムなどの耐食性金属を形成させることができる。これらの耐食性金属の組合せとして、ニッケル−金以外にも、ニッケルーパラジウムー金、金(単層)、銀(単層)等を表層に形成してもよい。
【0051】
(5)パッドの表層に金属層を形成し終えたプリント配線板では、不要となっためっき用リードを切断、除去すると共に、所望の基板のサイズにするために、パンチング、ルーターなどの機械加工機あるいはレーザ加工機による切削、切断加工が行われる。また、これらの基板は、2枚以上の複数のプリント基板を積層して、加工を行ってもよい。
【0052】
これにより、少なくとも片側がテーパ状であるボンディングパッドが形成されるのである。言い換えると、不要なめっき用リードが切断、除去されると、ボンディング部とリード部からなる独立したボンディングパッドが形成され、リード部の少なくとも一方の端面、例えば、ルーター刃の抜け側に位置するような端面が、基板の端面またはルーター加工の進行方向に対して鋭角となるように形成されている。
【0053】
前記リード部のテーパ角度は、基板の端面またはルーター加工の進行方向に対して、30〜60°であることが望ましい。テーパ角度が30°未満では、ボンディングパッドを加工し終えた際、バリが形成される度合いが大きくなる。また、テーパの形成がボンディングパッドの挟ピッチ化を阻害してしまうことがあり、そのために、隣のボンディングパッドとの距離が小さくなることがあり、その結果として、信頼性試験において、劣化が若干早まることもある。
【0054】
一方、テーパ角度が60°を越えると、ボンディングパッドを加工し終えた際、バリを形成される度合いが大きくなることがある。また、樹脂の流れ込みが阻害されてしまうためにボイドが形成されることがある。特に、ボンディングパッドのパッド部とリード部の交差部分においてボイドが形成されてしまうことがある。そのために、テーパ角度が上記範囲内である場合と比較すると、信頼性試験において、劣化が若干早まることがある。
【0055】
したがって、前記テーパ角度が上記範囲内であれば、ボンディングパッド(ボンディング部とリード部)におけるバリの形成が低減し、そのために、バリを起因とする短絡、異物混入などの不具合が低下する。また、封止樹脂層を形成後に、樹脂内にボイドが形成されにくくなるため、ボイドを起因とする不具合が低減し、ワイヤの損傷や接合部での剥れなどの発生が低下する。その結果、電気接続性や信頼性を確保することができる。
【0056】
また、本発明におけるボンディングパッドは、複数個の独立したボンディングパッドから構成することもでき、該複数個のパッドは、同じ部位でテーパ状となっていることが望ましい。
【0057】
例えば、ボンディングパッドは、基板の端面に平行な方向に細長く延設されためっき用リードの片側または両側において、同一直線上に複数個が列設された形態としてもよいし、複数個が千鳥配列(互い違い)された形態としてもよい。
【0058】
いずれの形態でも、不要となっためっき用リードはルーター等による機械加工によってボンディングパッドから切り離されることによって、少なくともリード部の一部がテーパ状に形成された独立したボンディングパッドが形成される。
【0059】
また、ボンディングパッドは、ボンディングパッド部の一方の端面とリード部の一方の端面が同一直線上にあり、リード部の他方の端面をテーパ状に形成することが望ましい。
必要に応じて、後工程用の穴位置合わせを行える位置決め穴などのアライメント用のマークをドリルやパンチングなどにより加工してもよい。
【0060】
また、これらのボンディングパッドからなる基板(短冊)を得るために、短冊状の個々の基板に形成してもよいし、短冊である一単位を複数枚にマトリックス状に配列したシート基板やリールトゥリール方式により製造してもよい。
【実施例】
【0061】
(実施例1−1)
(1) プリント配線板を両面回路基板により製作する。この両面回路基板10は、エポキシ樹脂をガラスクロスに含潰させてBステージとしたプリプレグ12と、銅箔14とを積層して加熱プレスすることにより得られる両面銅張基板を出発材料として用いる(図4(a)参照)。
【0062】
この絶縁性基材12の厚さは150μm、銅箔14の厚さは12μmまたは18μmとする。この積層板の銅箔を12μmまたは18μmよりも厚いものを用いて、エッチング処理により、銅箔の厚みを12μmまたは18μmに調整してもよい。
【0063】
(2)上記(1)工程を経た両面銅張基板上に、厚み15〜50μmの感光性ドライフィルムレジストを両面に貼付することによって、エッチングレジスト層16を形成した。エッチングレジスト層を形成した基板の表面(ボンディングパッドおよび外部接続パッドを施す側を表面と記す。)側に、ボンディングパッド(パッド部およびリード部)、外部接続パッドおよびめっきリード部を含んだ導体回路や、アライメントマーク、製品番号等が描画されたマスクを載置し、露光・現像を経て、銅箔上にエッチングレジスト層16の非形成部を形成した(図4(b)参照)。
【0064】
また、エッチングレジスト層が形成された基板の裏面側(半導体素子のボンディング面)にも、ボンディング面やその他のアライメントマーク等が描画されたマスクを載置し、露光・現像を経て、銅箔上にエッチングレジスト層の非形成部を形成した。
【0065】
(3)エッチングレジスト層16の非形成部に、過酸化水素水/硫酸からなるエッチング液により、エッチングを行って、非形成部に該当する銅箔が除去される。その後、レジストをアルカリ液により完全に剥離させることにより、基板表面には、ボンディングパッド(パッド部およびリード部)、外部接続パッドおよびめっきリード部を含んだ導体回路18や、アライメントマーク、製品番号等が形成された(図4(c)参照)。
【0066】
前記導体回路の配線パターンは、配線幅/配線間距離=50μm/50μm以上である。通常の配線幅は、70〜75μm程度であるが、より望ましい範囲は、50μm/50μm以下である。
【0067】
(4)回路基板の表面に、ソルダーレジスト層20を形成した。フィルム化されたソルダーレジストを貼り付けることにより、基板全体両面に、ソルダーレジスト20を硬化前の厚みで20〜30μmに形成した(図4(d)参照)。
次いで、100℃で30分間の乾燥処理を行った後、基板の表面側には、ボンディングパッド、外部接続パッド、めっきリードもしくはアライメントマーク等に該当するソルダーレジスト開口部のパターン(マスクパターン)が描画された厚さ5mmのガラス基坂(ガラスマスク)を、基板の表側にソルダーレジストに密着させて1000mJ/cmの紫外線で露光し、アルカリ溶液により現像処理した。
一方、基板の裏面側は、ソルダーレジスト層を形成後、マスクは載置させないで、全面に紫外線で露光し、表面同様にアルカリ溶液により現像処理した。
【0068】
現像処理後に、120℃で1時間、150℃で2時間の条件で加熱処理し、表面にはボンディングパッド、外部接続パッド、めっきリード等の部分に対応した開口22を有するソルダーレジスト層20(厚み20μm)を形成した(図4(e)参照)。
必要に応じて、ソルダーレジスト層20を形成する前に、回路基板の表面に、粗化層を設けてもよい。
【0069】
また、前記ソルダーレジスト層は、レジストフィルムを用いて形成した。この場合、レジスト液を塗布することにより形成してもよいし、予め粘度調整を行ったワニスを準備して、ロールコーターや印刷により形成してもよい。
【0070】
(5)ソルダーレジスト層の開口22から露出した導体部分に、耐食性金属層24(この場合、ニッケル−金層)を形成した。ニッケル層の形成は、めっきリードに接続し、導体回路表面を酸等により洗浄した後に、下記に示した組成のめっき液およびめっき条件により、電解ニッケルめっき処理を施すことにより行われる。
電解ニッケルめっき処理
<ニッケルめっき液組成>
硫酸ニッケル 300g/l
塩化ニッケル 50g/l
ホウ酸 50g/l
<ニッケルめっき条件>
電流密度: 2.0A/dm2
めっき液温度: 55℃
めっき時間: 30分
このようなニッケル層の厚みは、3〜5μmの範囲に形成された。
【0071】
(6)次に、ニッケルめっき膜上に、金メッキ膜を形成した。この金めっき膜の形成は、めっきリードに接続し、導体回路表面を酸等により洗浄した後に、下記に示した組成のめっき液およびめっき条件により、電解金めっき処理を施すことによって行う。
電解金めっき処理
<金めっき液組成>
シアン化金カリウム 5g/l
シアン化カリウム 30g/l
燐酸水素カリウム 30g/l
炭酸カリウム 15g/l
<金めっき条件>
電流密度: 0.5A/dm2
めっき温度: 65℃
めっき時間: 5分
このような金層の厚みは、0.1〜0.3μmの範囲に形成された。
【0072】
(7) 次に、ニッケル−金層24が形成されたボンディングパッド26から延設されためっきリード部を切断し、それぞれ独立したボンディングパッド26を形成するために、めっきリード部付近のルーター加工を行って、不要なめっき用リード等を切断、除去した(除去部分は符号28で示す)。
【0073】
このようなルーター加工によって、ほぼ矩形のパッド部と、そのパッド部から延設されたリード部とからなる複数のボンディングパッドが形成されたプリント配線板を製造した。
なお、各ボンディングパッドは、パッド部の一方の端面とリード部の一方の端面とが同一直線上にあるように形成され、さらに、リード部の他方の端面が基板の端面に対して45°の角度をなすようなテーパ状に形成されている。
【0074】
(実施例1−2)
リード部のテーパ角度を30°とした以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0075】
(実施例1−3)
リード部のテーパ角度を60°とした以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0076】
(参考例1−1)
リード部のテーパ角度を10°とした以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0077】
(参考例1−2)
リード部のテーパ角度を20°とした以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0078】
(参考例1−3)
リード部のテーパ角度を70°とした以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0079】
(参考例1−4)
リード部のテーパ角度を80°とした以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0080】
(実施例2−1)
銅張積層板として、片面銅張り積層板を用いた以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0081】
(実施例2−2)
リード部のテーパ角度が30°とした以外は、実施例2−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0082】
(実施例2−3)
リード部のテーパ角度が60°とした以外は、実施例2−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0083】
(参考例2−1)
リード部のテーパ角度が10°とした以外は、実施例2−1とプリント配線板を製造した。
【0084】
(参考例2−2)
リード部のテーパ角度が20°とした以外は、実施例2−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0085】
(参考例2−3)
リード部のテーパ角度が70°とした以外は、実施例2−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0086】
(参考例2−4)
リード部のテーパ角度が80°とした以外は、実施例2−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0087】
(実施例3−1)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して45°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0088】
(実施例3−2)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して30°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例1−2と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0089】
(実施例3−3)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して60°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例1−3と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0090】
(参考例3−1)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して10°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、参考例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0091】
(参考例3−2)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して20°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、参考例1−2と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0092】
(参考例3−3)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して70°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、参考例1−3と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0093】
(参考例3−4)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して80°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、参考例1−4と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0094】
(実施例4−1)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して45°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例2−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0095】
(実施例4−2)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して30°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例2−2と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0096】
(実施例4−3)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して60°の角度をなすようなテーパ状に形成されている、以外は、実施例2−3と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0097】
(参考例4−1)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して10°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例2−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0098】
(参考例4−2)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して20°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例2−2と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0099】
(参考例4−3)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して70°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例2−3と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0100】
(参考例4−4)
ボンディングパッドのリード部の両側にテーパ状部分を形成した、即ち、図1(b)に示すように、リード部の両方の端面のそれぞれが、基板の端面に対して80°の角度をなすようなテーパ状に形成されている以外は、実施例2−4と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0101】
(比較例1−1)
ボンディングパッドにおけるリード部にはテーパがなく、即ち、リード部がパッド部に対して直角であるように形成された以外は、実施例1−1と同様にしてプリント配線板を製造した。
【0102】
上記実施例、参考例および比較例にしたがって製造されたプリント配線板について、以下のA項目の評価試験を行い、該製造されたプリント配線板に半導体素子を実装した後に、B項目、C項目およびD項目の評価試験を行なって、合計4項目の評価試験を行った。それらの評価試験の結果は、表1に示す。
【0103】
A.バリの発生
ルーター加工を終了した時点で、ボンディングパッドを顕微鏡(×50)により、パッド部もしくはリード部の100箇所におけるバリの有無とそのバリの発生度合い(ボンディングパッド数に対する発生数)を調べた。
【0104】
B.封止試験
(ワイヤ曲がりの有無)
基板上にダミーの半導体素子を実装し、その後、ダミーの半導体素子のボンディングパッドとプリント配線板のボンディングパッドとを、直径25μmの金線を用いたワイヤボンディングにより接続した。その後、トランスファーモールドを行った。その後、主としてボンディングパッド付近をX線装置を用いて検査し、パッド部もしくはリード部にワイヤの曲がりや接触があるかどうかを確認した。
曲がりが確認されない場合は○、曲がりなどが確認された場合は×で示した。
【0105】
(ボイドの有無)
さらに、封止試験を行った基板について、ボンディングパッド部分に該当する位置で基板を切断し、その切断面を光学顕微鏡(×50)を用いて、ボイドの有無を観察した。
なお、ボイド無しは○、ボイド有り(2個以内)は△、ボイド有り(3個以上)は×で示した。
【0106】
C.信頼性試験
上記B.で用いたダミー半導体を実装したプリント配線板(半導体装置)の5P(ピース)を、PCT条件下(130℃、2atm)の試験装置に入れて、100時間、200時間、300時間における導通の有無を、簡易チェッカーにより確認した。
なお、試験装置から取り出してから2時間以上経過した半導体装置について電気導通試験を行った。このとき、信頼性積算時間に対する導通状況を比較評価した。なお、断線が生じたピース数を表1に示した。
【0107】
【表1】

【0108】
以上のような試験結果から、本発明のプリント配線板によれば、テーパを有するボンディングパッドは、テーパを有しないパッドに比較すると、バリの形成、封止状態、信頼性試験で優位性があることが確認された。
また、特に、テーパ角度が、30〜60°の範囲にあるものは、範囲外のものと比較すると、信頼性が低下しにくいことも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように、本発明は、ボンディングパッドを高密度化または狭ピッチ化しても、バリやボイドの形成が抑制され、電気接続性や信頼性が低下しないパッド構造を有するプリント配線板を提案する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】(a)は、めっきリードを介して接続されている従来技術にかかるボンディングパッドの形状を示す概略図、 (b)は、テーパ状に形成されためっきリードを介して接続されている本発明にかかるボンディングパッドの形状を示す概略図である。
【図2】(a)は、図1(b)に示すようなボンディングパッドを示す概略図である。 (b)は、パッド部の一方の端面とリード部の一方の端面が同一直線上にあり、リード部の他方の端面をテーパ状に形成したボンディングパッドを示す概略図である。
【図3】本発明にかかるプリント配線板を製造する工程の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
10 両面銅貼積層板
12 絶縁性基材
14 銅箔
16 エッチングレジスト層
18 導体回路
20 ソルダーレジスト層
22 開口
24 耐食性金属層
26 ボンディングパッド
28 切断部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が実装され、該半導体素子が接続されるボンディングパッドからなる導体回路を有するプリント配線板において、
前記ボンディングパッドは、少なくとも一部がテーパ状に形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
半導体素子に接続されるボンディングパッドからなる導体回路を有するプリント配線板において、
前記ボンディングパッドは、パッド部と、そのパッド部に連続するリード部とから構成され、そのリード部の一部がテーパ状に形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
前記テーパ状に形成される部分の角度は、基板の端部に対して、30〜60°の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記ボンディングパッドは、複数個設けられると共に、それらの各ボンディングパッドは、同一の部位でテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記ボンディングパッドは、パッド部の一方の端面とリード部の一方の端面が同一直線上にあり、かつリード部の他方の端面がテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−103392(P2007−103392A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277703(P2005−277703)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】