説明

プレーナ型アクチュエータ

【課題】可動部の揺動を検出するためのピエゾ抵抗素子によってトーションバーの幅が制約されることがなく、かつ、可動部の揺動に伴ってピエゾ抵抗素子の抵抗値を大きく変化させて、高い検出精度が得られるプレーナ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、枠状の固定部2と、一対のトーションバー3a,3bと、可動部4とを備え、前記可動部4は、前記一対のトーションバー3a,3bを介して前記固定部2の開口部に揺動可能に支持される。前記固定部2のトーションバー3aが接続される部分、及び、固定部2のトーションバー3bが接続される部分に、トーションバー3a,3bの軸を挟んで、ピエゾ抵抗素子10a〜10dを配置する。そして、ピエゾ抵抗素子10a〜10dの抵抗値変化によって出力電圧が変化するブリッジ回路を構成し、ブリッジ出力から前記可動部4の揺動を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のトーションバーによって支持される可動部を揺動させるプレーナ型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記プレーナ型アクチュエータを用いるデバイスとして、特許文献1に開示されるガルバノミラーがある。このガルバノミラーでは、トーションバーに歪ゲージ(ピエゾ抵抗素子)を形成し、該歪ゲージの抵抗値変化を測定して、ミラー面(可動部)の傾斜角度を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−119280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記トーションバーの幅は、共振周波数の要求などから決定される場合があるが、前述のようにトーションバーにピエゾ抵抗素子を形成させる構成では、ピエゾ抵抗素子及び該ピエゾ抵抗素子の配線によって前記トーションバーの最小幅が制約され、共振周波数の要求を満たす幅に設定できなくなる場合があった。また、トーションバーでは主にせん断力が発生するため、トーションバーにピエゾ抵抗素子を設ける場合、ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化が小さく、高い検出精度を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に着目してなされたものであり、ピエゾ抵抗素子によってトーションバーの幅が制約されることがなく、かつ、可動部の揺動に伴ってピエゾ抵抗素子の抵抗値を大きく変化させて、高い検出精度が得られるプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、請求項1に係る発明は、枠状の固定部と、前記固定部の内側に、一対のトーションバーを介して揺動可能に支持された可動部と、前記可動部を揺動させる駆動手段と、前記固定部の前記トーションバーが接続される部分に配置されるピエゾ抵抗素子とを備える構成とした。
【0007】
かかる構成では、固定部のトーションバーが接続される部分に、可動部の揺動に伴って応力が発生すると、この応力が、ピエゾ抵抗素子の抵抗値を変化させるので、前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化に基づき、可動部の揺動が検出される。前記ピエゾ抵抗素子は固定部に配置されるため、ピエゾ抵抗素子やその配線によってトーションバーの幅が制約されることが回避され、また、可動部の揺動に伴って固定部に発生する応力は引張・圧縮応力が主になるため、ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化を、トーションバーにピエゾ抵抗素子を設ける場合よりも大きくできる。
【0008】
請求項1の構成において、請求項2のように、前記固定部の前記トーションバーが接続される部分に、前記固定部の他の部分よりも薄い薄肉部を形成するとよい。この場合、前記固定部のトーションバーが接続される部分が薄肉に形成されることで、ピエゾ抵抗素子の配置部分における剛性が低下し、可動部の揺動に伴うトーションバーのねじれが固定部に伝わり易くなり、より広範囲に引張・圧縮応力を発生させることができ、この引張・圧縮応力の発生域にピエゾ抵抗素子を配置することで、大きな抵抗値変化を発生させることができる。
【0009】
また、請求項1又は2の構成において、請求項3のように、一対のピエゾ抵抗素子を、前記可動部の揺動に伴って一方に対して圧縮応力が加わるときに、他方に対して引張応力が加わるように、前記トーションバーの幅方向に離間させて配置するとよい。この場合、可動部の揺動に伴って、一方のピエゾ抵抗素子に圧縮応力が加わると、他方のピエゾ抵抗素子には引張応力が加わることになるから、ピエゾ抵抗素子それぞれでの抵抗値変化の方向が異なり、抵抗値の変化をブリッジ回路によって検出する場合に、高いブリッジ出力(出力電圧)を得ることができる。
【0010】
上記請求項3の構成においては、請求項4のように、前記固定部の一方のトーションバーが接続される部分と他方のトーションバーが接続される部分とにそれぞれ一対のピエゾ抵抗素子を配置するとよい。この場合、4個のピエゾ抵抗素子の抵抗値が、可動部の揺動に応じてそれぞれ変化し、例えばこれらのピエゾ抵抗素子でブリッジ回路を構成することで、高いブリッジ出力(出力電圧)を得ることができる。
【0011】
また、上記請求項3の構成において、請求項5のように、前記一対のピエゾ抵抗素子に接続されてブリッジ回路を構成する一対の固定抵抗素子を、前記一対のピエゾ抵抗素子と共に、前記固定部の1辺に配置することができる。この場合、固定部の1辺に、可動部の揺動に応じて抵抗値が変化する一対のピエゾ抵抗素子と共にブリッジ回路を構成する一対の固定抵抗素子が配置されるので、ブリッジ回路を構成するための抵抗素子間の接続が容易に行える。
【0012】
また、上記請求項3の構成において、請求項6のように、前記一対のピエゾ抵抗素子が、外部の一対の固定抵抗素子に接続されてブリッジ回路を構成するようにできる。この場合、プレーナ型アクチュエータに対して可動部の揺動検出のために設けられる一対のピエゾ抵抗素子に対して、外部の一対の固定抵抗素子を接続することで、ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化に応じた出力を発生するブリッジ回路が構成されるので、プレーナ型アクチュエータにおける抵抗素子の配置及び該抵抗素子のための配線の引き回しが簡略化される。
【0013】
上記請求項3〜6のいずれか1つに記載の構成において、請求項7のように、前記一対のピエゾ抵抗素子が、前記固定部に形成される拡散導通部を介して接続される構成とするとよい。この場合、例えば駆動手段のアルミニウム配線などを避けて、一対のピエゾ抵抗素子の間を接続することができ、配線の引き回しを簡略化できる。
【発明の効果】
【0014】
かかるプレーナ型アクチュエータによれば、ピエゾ抵抗素子を固定部に配置するので、トーションバーの幅がピエゾ抵抗素子によって制約されることがなく、トーションバーの幅を固有振動数などの要求に応じた値に設定できるようになると共に、トーションバーでは主にせん断力が発生するのに対し、固定部では主に引張・圧縮応力が発生するから、この引張・圧縮応力によってピエゾ抵抗素子の抵抗値を大きく変化させて、高い検出精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプレーナ型アクチュエータを示す平面図
【図2】同上第1実施形態におけるブリッジ回路を示す回路図
【図3】同上第1実施形態における拡散導通部を示す断面図
【図4】同上第1実施形態におけるピエゾ抵抗素子・配線・電気端子を示す部分拡大図
【図5】同上第1実施形態における配線パターンの別の例を示す部分拡大図
【図6】同上第1実施形態におけるピエゾ抵抗素子の製造工程を示す図
【図7】本発明の第2実施形態に係るプレーナ型アクチュエータを示す図であり、(a)は部分平面図、(b)はA−A断面図
【図8】本発明の第3実施形態に係るプレーナ型アクチュエータを示す平面図
【図9】同上第3実施形態におけるブリッジ回路を示す回路図
【図10】同上第3実施形態における制御ユニット側の回路構成を示す回路図
【図11】本発明の第4実施形態に係るプレーナ型アクチュエータを示す平面図
【図12】同上第4実施形態における制御ユニット側の回路構成を示す回路図
【図13】本発明の第5実施形態に係るプレーナ型アクチュエータを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態を示す。図1に示すプレーナ型アクチュエータは、半導体製造技術を利用して製造したMEMS(micro electro mechanical system)デバイスであり、電磁駆動式のアクチュエータである。
【0017】
図1において、このアクチュエータ1は、枠状の固定部2と、一対のトーションバー3a,3bと、可動部4とを備え、前記可動部4は、前記一対のトーションバー3a,3bを介して前記固定部2の開口部に揺動可能に支持される。前記固定部2、トーションバー3a,3b及び可動部4は、半導体基板を用いて一体に形成される。具体的には、例えば、Si単結晶基板をKOH水溶液による結晶軸異方性エッチングを行うことによって、前記トーションバー3a,3b及び可動部4が形成される。
【0018】
前記可動部4の周縁部には、通電時に磁界を発生する駆動コイル5が形成され、該駆動コイル5は、トーションバー3a,3b上に形成されるアルミニウム配線6a,6bを介し、固定部2に形成された一対の電極端子7a,7bに電気的に接続される。前記電極端子7a,7bは、図外の駆動回路(制御ユニット)の電極端子に対し、例えばワイヤーボンディング等により電気的に接続される。
【0019】
また、トーションバー3a,3bの軸方向と平行な可動部4の対辺部と対面する固定部2の外方には、トーションバー3a,3bの軸方向と平行な可動部4の対辺部の駆動コイル5部分に静磁界を作用させる静磁界発生手段である一対の永久磁石8,8が、互いに反対磁極を対向して配置されている。尚、永久磁石8,8は、可動部に対してローレンツ力が働く磁場を生じるように配置すればよく、図1に示した配置の他、例えば特開平7−175005号公報に開示されるように、対をなす永久磁石を上下に配置する構成とすることができ、また、特開2004−206043号公報に開示されるように、トーションバーの軸方向に対して略直角でかつ可動部に対して略平行な外部磁界成分を発生するように、永久磁石を配置する構成などであってもよく、更には、永久磁石8,8に代えて電磁石を用いることもできる。上記駆動コイル5と永久磁石8,8(電磁石)とによって、アクチュエータ1の駆動手段が構成される。
【0020】
そして、前記駆動コイル5に電流を供給すると、永久磁石8,8によって発生する静磁界が、トーションバー3a,3bの軸方向と平行な可動部4の対辺部を流れる駆動コイル5の電流に作用することで、駆動コイル5にローレンツ力を発生させ、上記可動部4を、前記トーションバー3a,3bを中心に揺動させる。ここで、前記トーションバー3a,3bと可動部4の固有振動数に略等しい周波数の電流が駆動コイル5に供給されると、可動部4はこの周波数で共振し、効率よく揺動することになる。
【0021】
尚、駆動手段は、前記駆動コイル5と永久磁石8,8とによって構成される電磁式のものに限定されず、例えば、特開平5−119280号公報に開示されるように、可動部4の裏面と対向する基板上に設けられた電極に電圧を印加することで、前記裏面側との間で静電力を作用させる駆動手段であってもよい。また、例えば、前記可動部4に反射ミラーを設けることで、前記アクチュエータ1は、レーザプリンタのスキャナや、投影型のディスプレイのスキャナ等として用いられる。
【0022】
前記アクチュエータ1の固定部2には、可動部4の揺動(振動)を検出するための揺動検出手段としての4個のピエゾ抵抗素子10a〜10dが配置されている。前記4個のピエゾ抵抗素子10a〜10dは、固定部2のトーションバー3aが接続される部分、及び、固定部2のトーションバー3bが接続される部分に、それぞれ2個を一組として配置される。前記トーションバー3a側に設けられる一対のピエゾ抵抗素子10a,10b、及び、前記トーションバー3b側に設けられる一対のピエゾ抵抗素子10c,10dは、固定部4のトーションバー3a,3b寄りの可動部4の揺動によって引張・圧縮応力が発生する領域に、トーションバー3a,3bの軸を挟んで、トーションバー3a,3bの幅方向に離間して対向配置される。
【0023】
前記トーションバー3a,3bが接続される固定部2の1辺には、前記駆動コイル5用の電極端子7a,7bと共に、前記ピエゾ抵抗素子10a〜10d用の電極端子11a〜11fが配置されており、前記電極端子7a,7b及び電極端子11a〜11fは、固定部2の端縁に沿って略直線的に並べられる。
尚、図1に示す実施形態では、前記電極端子7a,7b及び電極端子11a〜11fを略直線的に並べたが、直線的に並べる構成に限定されるものではなく、また、並び方向での電極端子の設置間隔も適宜設定することができる。
【0024】
前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)の一方の電極と、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の一方の電極とは、固定部2において相互に接続され、ピエゾ抵抗素子10a(10c)の他方の電極は、アルミニウム配線12a(12c)によって前記電極端子11a(11c)に接続され、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の他方の電極は、アルミニウム配線12b(12d)によって前記電極端子11b(11d)に接続される。また、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)の一方の電極と、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の一方の電極とは、前記駆動コイル5のアルミニウム配線6a,6bを避けるために、後で詳細に説明するように、拡散導通部13a,13bを介して電気的に接続されるが、この拡散導通部13a,13bの中間部と前記電気端子11e,11fとが、アルミニウム配線14a,14bによって接続される。
【0025】
そして、図外の制御ユニットの電気端子と前記電気端子11a〜11fとが、例えばワイヤーボンディング等により電気的に接続されることで、前記ピエゾ抵抗素子10a〜10dが、図2に示すようにブリッジ回路を構成し、前記ピエゾ抵抗素子10a〜10dの抵抗値変化を、前記ブリッジ回路の出力変化に基づいて検出するようになっており、前記電気端子11e,11fは、ブリッジ出力(V)を取り出すための端子となる。
【0026】
即ち、図2に示すように、電気端子11a,11dを接続することで、ピエゾ抵抗素子10a,10dを直列に接続し、また、電気端子11b,11cを接続することで、ピエゾ抵抗素子10b,10cを直列に接続し、更に、電気端子11a,11dの接続部と、電気端子11b,11cの接続部に対して電源Voを接続し、前記ピエゾ抵抗素子10cとピエゾ抵抗素子10dとの間の電位と、ピエゾ抵抗素子10aとピエゾ抵抗素子10bとの間の電位との差を、電気端子11e,11f間の電位差として取り出すようになっている。そして、前記制御ユニットでは、前記ブリッジ回路の出力から前記可動部4の揺動を検出し、該検出結果に基づいて駆動コイル4への通電制御を行う。
【0027】
ところで、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)とピエゾ抵抗素子10b(10d)との間には、駆動コイル5用のアルミニウム配線6a(6b)が延設されるため、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)の一方の電極と、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の一方の電極とをアルミニウム配線で接続させようとすると、アルミニウム配線6a,6bと同一面上に配線することになるため、アルミニウム配線6a,6b及び電極端子7a,7bを避けるように大きく迂回させて配線させる必要が生じ、配線構造が複雑化してしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、半導体基板材料中に不純物を拡散させて形成される拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bを、アルミニウム配線6a,6bの下層にトーションバー3a,3bの幅方向に沿って延設させ、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)の一方の電極と、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の一方の電極とを、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bを介して接続させるようにしている。即ち、アルミニウム配線6a,6bに対して基板の厚さ方向に逃げて設置される拡散導通部13a,13bを設けることで、アルミニウム配線6a,6bを横断する方向で、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)の一方の電極と、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の一方の電極とを接続できるようにしてあり、これによって、ピエゾ抵抗素子同士の接続を短い距離で行える。
【0029】
詳細には、図3に示すように、半導体基板(シリコン基板)21の上に絶縁膜(シリコン酸化膜)22が皮膜され、この絶縁膜22の表面に前記アルミニウム配線6a,6bが設けられ、このアルミニウム配線6a,6b直下の半導体基板(シリコン基板)21に対して不純物を拡散させて、アルミニウム配線6a,6bの延設方向と直交する方向に延設される拡散導通部13a,13bを形成する。
【0030】
ここで、拡散導通部13a,13bの長さは、アルミニウム配線6a,6bの幅よりも長くなるように形成され、かつ、拡散導通部13a,13bの一端は、アルミニウム配線6a,6bのピエゾ抵抗素子10a,10c側の側縁よりもピエゾ抵抗素子10a,10cにより近い位置まで延設され、拡散導通部13a,13bの他端は、アルミニウム配線6a,6bのピエゾ抵抗素子10b,10d側の側縁よりもピエゾ抵抗素子10b,10dにより近い位置まで延設される。そして、図4に示すように、拡散導通部13a,13bの一端と、ピエゾ抵抗素子10a,10cの一方の電極とを、アルミニウム配線15a,15bで接続し、拡散導通部13a,13bの他端と、ピエゾ抵抗素子10b,10dの一方の電極とを、アルミニウム配線16a,16bで接続する。
【0031】
前述のように、ブリッジ出力の取り出しのために、前記拡散導通部13a,13bと、前記電気端子11e,11fとが接続されるが、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bの抵抗によってブリッジ回路の抵抗値に偏りを生じないように、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bの中間点(電気抵抗が略半分になる点)と電気端子11e,11fとを接続させている。そして、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bの中間点(電気抵抗が略半分になる点)と電気端子11e,11fとの接続を可能にするため、少なくとも前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bが設けられる部分での前記アルミニウム配線6a,6bの延設位置を、トーションバー3a,3bの幅中心に対してずらしている。
【0032】
換言すれば、ピエゾ抵抗素子10a(10c)とピエゾ抵抗素子10b(10d)、及び、拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bは、トーションバー3a,3bの幅方向の中心軸に対して略線対称に配置されるのに対し、少なくとも前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bが設けられる部分での前記アルミニウム配線6a,6bの設置位置は、前記中心軸よりもピエゾ抵抗素子10a(10c)側或いはピエゾ抵抗素子10b(10d)側にずらしてある。これにより、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bの中間点(電気抵抗が略半分になる点)と、前記アルミニウム配線6a,6bとが重なることがなく、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bの中間点(電気抵抗が略半分になる点)と電気端子11e,11fとのアルミニウム配線14a,14bによる接続を可能にしている。
【0033】
図5は、図4の前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bを用いずに、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)とピエゾ抵抗素子10b(10d)との直列接続を可能にする配線パターンを示す。
図5に示す例では、前記アルミニウム配線6a(6b)は、トーションバー3a(3b)の略幅中心において直線的に延設され、固定部2の端縁に配置される電極端子7a(7b)に接続される。
【0034】
一方、ピエゾ抵抗素子10a(10c)の一方の電極(可動部4から遠い側の電極)は、略直線的に延設されるアルミニウム配線12a(12c)によって前記電極端子11a(11c)に接続され、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の一方の電極(可動部4から遠い側の電極)は、アルミニウム配線12b(12d)によって前記電極端子11b(11d)に接続される。
前記電極端子11a(11c)と前記電極端子7a(7b)との間には、ピエゾ抵抗素子10a(10c)とピエゾ抵抗素子10b(10d)との間の電位を取り出すための電極端子11e(11f)が配置されている。
【0035】
そして、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)の他方の電極(可動部4に近い側の電極)は、アルミニウム配線18a(18c)によって電極端子11e(11f)に接続され、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の他方の電極(可動部4に近い側の電極)は、アルミニウム配線18b(18d)によって電極端子11e(11f)に接続される。
ここで、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の他方の電極(可動部4に近い側の電極)と前記電極端子11e(11f)とを最短距離で接続させようとしても、その間に、アルミニウム配線6a(6b)が延設されており、最短距離で接続させることができない。
【0036】
そこで、前記アルミニウム配線18(18d)は、電極端子11e(11f)に一端が接続され、固定部2の端縁と電気端子11e(11f)及び電気端子7a(7b)と挟まれる領域を、前記電極端子11b(11d)に向けて延設され、更に、前記電気端子7a(7b)と電極端子11b(11d)とで挟まれる領域を可動部4に向けて延設されて、前記ピエゾ抵抗素子10b(10d)の他方の電極(可動部4に近い側の電極)に接続される。
即ち、ピエゾ抵抗素子10b(10d)の他方の電極(可動部4に近い側の電極)と、電極端子11e(11f)とを、前記アルミニウム配線6a(6b)及び電極端子7a(7b)を迂回して接続させるようにしてある。
【0037】
上記の配線パターンでは、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bを用いないで、前記ピエゾ抵抗素子10a(10c)とピエゾ抵抗素子10b(10d)との直列接続を行えるから、配線を容易に行え、また、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bによる抵抗値の偏りがないので、可動部4の揺動(振動)を高精度に検出できる。
尚、本実施形態では、前述のようにアルミ配線を用いるが、アルミ配線に限定するものではなく、導電性を有する材料を配線材料として適宜選択できる。
【0038】
図6は、前記ピエゾ抵抗素子10a〜10dの形成方法を示す。まず、図6(a)に示す2枚の単結晶シリコンウェハ21a,21cの間に熱酸化膜層21bを挟んで接合したSOI(Silicon On Insulator)ウェハ(半導体基板)21表面に、図6(b)に示すように、例えば、酸化炉などを用いてシリコン酸化膜22を被膜する。その後、図6(c)に示すように、固定部2のトーションバー3a,3bの接続部分に、イオン注入または熱拡散によりピエゾ抵抗素子10a〜10dを形成する。
【0039】
このピエゾ抵抗素子10a〜10dの形成手段としては、例えば、単結晶シリコンウェハ21aがn型単結晶シリコン材料で形成されている場合には、n型単結晶シリコン材料に、例えば、不純物を添加してp型領域を形成するようにしてもよいし、別工程でp型単結晶シリコン材料を作成しておき、このp型単結晶シリコン材料を固定部2に貼り付けて形成するようにしてもよい。また、単結晶シリコンウェハ21aがp型単結晶シリコン材料で形成されている場合にも、同様の手段によりピエゾ抵抗素子10a〜10dを形成すればよい。
【0040】
次いで、図6(d)に示すように、ピエゾ抵抗素子10a〜10dの表面に、例えば、酸化炉などを用いてシリコン酸化膜22を形成する。その後、図6(e)に示すように、電極取出し用コンタクト部分以外の部分をマスクし、シリコン酸化膜22のエッチングを行い、コンタクト23を形成する。そして、図6(f)に示すように、ピエゾ抵抗素子10a〜10dの電極及び電極端子に相当する部分以外をマスクし、アルミニウムエッチングを行い、ピエゾ抵抗素子10a〜10dの電極と電極端子11a〜11dとを接続するアルミニウム配線12a〜12dを形成する。次いで、図6(g)に示すように、アルミニウム配線12a〜12dを保護するため、例えば、感光性ポリイミドなどの絶縁膜24で被覆する。
【0041】
尚、拡散導通部13a,13bは、図6に示すピエゾ抵抗素子10a〜10dの形成工程において同時並行に形成され、図4に示す配線パターンにおける拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bの中間点と電気端子11e,11fとを接続させるアルミニウム配線14a,14bも、アルミニウム配線12a〜12dと同様にして形成される。
【0042】
上記第1実施形態のプレーナ型アクチュエータ1によると、前記固定部2のトーションバー3a,3bの接続部には、可動部4の揺動に応じて引張・圧縮応力が発生し、この引張・圧縮応力の発生領域にトーションバー3a,3bの軸を挟んでピエゾ抵抗素子10a,10b及びピエゾ抵抗素子10c,10dが配置されるので、例えば、ピエゾ抵抗素子10a,10cに引張応力が加わる場合、トーションバー3a,3bの軸を挟んで対向するピエゾ抵抗素子10b,10dには圧縮応力が加わる。
【0043】
前記ピエゾ抵抗素子10a〜10dが、例えばp型拡散抵抗により形成されている場合、引張応力が加わるピエゾ抵抗素子10a,10cの抵抗値は増加し、圧縮応力が加わるピエゾ抵抗素子10b,10dの抵抗値は減少し、前記図2のブリッジ回路の出力電圧V(V=Va−Vb)の値は負になる。逆に、前記ピエゾ抵抗素子10a〜10dが、p型拡散抵抗により形成されている場合に、可動部4の傾き方向が切り替わって、ピエゾ抵抗素子10a,10cに圧縮応力が加わると、ピエゾ抵抗素子10a,10cの抵抗値は減少し、ピエゾ抵抗素子10b,10dに引張応力が加わると、ピエゾ抵抗素子10b,10dの抵抗値は増加し、前記図2のブリッジ回路の出力電圧V(V=Va−Vb)の値は正になる。
【0044】
従って、前記ブリッジ回路の出力電圧Vの正負から、可動部4の傾き方向を判断でき、また、電圧値から傾斜角を検出することができ、これらの検出結果に基づいて前記駆動コイル5への通電がフィードバック制御される。ここで、前記ピエゾ抵抗素子10a〜10dは、トーションバー3a,3bではなく固定部2に配置されるから、ピエゾ抵抗素子10a〜10d及びその配線によってトーションバー3a,3bの幅が制約されることがなく、トーションバー3a,3bの幅を固有振動数の要求などに応じた最適値に設定できる。
【0045】
また、可動部4の揺動に伴ってトーションバー3a,3bでは主にせん断力が発生するため、前記ブリッジ回路を構成するピエゾ抵抗素子10a〜10dをトーションバー3a,3bに配置した場合、可動部4の揺動によるピエゾ抵抗素子10a〜10dの抵抗値変化が小さく、高いブリッジ出力を得ることが難しい。これに対し、上記第1実施形態のように、固定部2のトーションバー3a,3bが接続される部分にピエゾ抵抗素子10a〜10dを配置する構成であれば、固定部2において可動部4の揺動に伴い主に引張・圧縮応力が発生し、一対のピエゾ抵抗素子10a,10b(10c,10d)の一方に引張応力が加わり、他方に圧縮応力が加わって、大きな抵抗値差を生じさせるので、高いブリッジ出力を得て、可動部4の揺動状態の検出を高精度に行える。
【0046】
また、ブリッジ回路を構成するためのピエゾ抵抗素子10a,10b(10c,10d)間の接続を、前記拡散導通部(拡散抵抗)13a,13bを介して行わせることで、アルミニウム配線6a,6bの設置部分を大きく迂回して、ピエゾ抵抗素子10a,10b(10c,10d)間の接続するためのアルミニウム配線を設ける必要がなく、固定部2における配線の引き回しを簡略化できる。
【0047】
上記のように、ピエゾ抵抗素子10a〜10dは、可動部4の揺動に伴って固定部2に発生する引張・圧縮応力によって抵抗値が変化し、抵抗値が変化することでブリッジ出力が変化して、可動部4の揺動が検出される。従って、トーションバー3a,3bが接続される固定部2に、可動部4の揺動に伴い引張・圧縮応力を発生させる必要があるが、例えば、トーションバー3a,3bを細く形成して固有振動数を低くする場合、固定部2における引張・圧縮応力の発生域が狭くなり、また、発生する引張・圧縮応力が小さくなってしまう場合がある。
【0048】
ここで、前記固定部2のトーションバー3a,3bが接続される部分に、前記固定部2の他の部分よりも薄い薄肉部を形成することで、引張・圧縮応力の発生領域の拡大、発生する引張・圧縮応力の増大を図ることができ、前記薄肉部を形成した第2実施形態を以下に説明する。
【0049】
図7は、前記薄肉部を設けた第2実施形態を示す。尚、図7(a),(b)は、アクチュエータ1の片側半分(トーションバー3a側)を示すが、薄肉部は、固定部2のトーションバー3aが接続される部分と、トーションバー3bが接続される部分との双方に、同様にして設けられているものとする。また、図7に示すプレーナ型アクチュエータ1は、薄肉部31を備えること以外は、第1実施形態と同様であり、同一要素には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0050】
図7に示す第2実施形態のアクチュエータ1において、固定部2の厚さDは、D1に設定されているが、固定部2のトーションバー3a,3bが接続される部分での厚さDを、トーションバー3a,3b及び可動部4と同じ厚さであり、前記D1よりも小さいD2(D2<D1)に設定し、薄肉部31を設けてある。
【0051】
アクチュエータ1の製造工程においては、シリコン基板21の支持基板32を、シリコン基板21下面の絶縁層まで異方性エッチングして除去することで、トーションバー3a,3b及び可動部4がシリコン基板21の厚さD2に形成され、固定部2は、シリコン基板21と支持基板32とが積層された厚さD1に形成される。ここで、前記異方性エッチングにおいて固定部2のトーションバー3a,3bが接続される部分の所定領域についても支持基板31を除去することで、トーションバー3a,3b及び可動部4と同じ厚さD2の領域、即ち、薄肉部31が固定部2に設けられる。
【0052】
前記薄肉部31(厚さD2の領域)は、図7(a)に示すように、トーションバー3a,3bの幅方向において、トーションバー3a,3bの幅W1よりも広く、固定部2の全幅FWよりも狭く、また、トーションバー3a,3bの軸方向において固定部2の枠幅W2よりも狭く、トーションバー3a,3bの幅方向の中心軸に対して略対称に設けられている。そして、前記薄肉部31に、ピエゾ抵抗素子10a〜10dを配置し、薄肉部31に発生する引張・圧縮応力によってピエゾ抵抗素子10a〜10dの抵抗値が変化するようにしてある。
【0053】
上記のように薄肉部31を設ければ、該薄肉部31の剛性が低くなることで、可動部4の揺動に伴うトーションバー3a,3bのねじれが固定部2に伝わり易くなり、固定部2のより広範囲に強い引張・圧縮応力を発生させることができ、この引張・圧縮応力の発生域にピエゾ抵抗素子10a〜10dを配置することで、大きな抵抗値変化を発生させることができる。
【0054】
前記薄肉部31は、トーションバー3a,3bのねじれに起因する固定部2の応力分布を考慮した上で、ピエゾ抵抗素子10a〜10dのそれぞれについて、局所的でなく所定の範囲で応力が分布するように形成すればよい。例えば、ピエゾ抵抗素子10a〜10dの所定の範囲で応力が分布するように、ピエゾ抵抗素子10a〜10dのそれぞれを、薄肉部31と他の部分とに跨るように配置してもよいが、ピエゾ抵抗素子10a〜10dの全部分を薄肉部31に配置することが好ましい。
尚、薄肉部31の厚さD2は、固定部2の他の部分の厚さD1よりも薄ければよく、トーションバー3a,3bよりも厚く又は薄く形成することができる。また、薄肉部31を、トーションバー3a,3bの軸方向と平行な固定部2の両側方端面2a,2bの一方から他方にかけて連続して形成することができる。
【0055】
上記第1,第2実施形態では、固定部2のトーションバー3aが接続される部分に、ピエゾ抵抗素子10a,10bを配置し、固定部2のトーションバー3bが接続される部分に、ピエゾ抵抗素子10c,10dを配置し、これら4個のピエゾ抵抗素子10a〜10dでブリッジ回路を構成したが、トーションバー3a側とトーションバー3b側とのいずれか一方にのみ2個のピエゾ抵抗素子10を配置し、この2個のピエゾ抵抗素子10と、2個の固定抵抗素子とでブリッジ回路を構成し、該ブリッジ回路でピエゾ抵抗素子10の抵抗値変化を検出させることができる。
【0056】
図8は、固定部2に対して2個のピエゾ抵抗素子10と2個の固定抵抗素子とを配置した第3実施形態を示す。図8において、固定部2のトーションバー3aが接続される部分に、一対のピエゾ抵抗素子10a,10bが配置され、固定部2のトーションバー3bが接続される部分には、ピエゾ抵抗素子は配置されない。尚、固定部2のトーションバー3aが接続される部分にはピエゾ抵抗素子を配置せずに、固定部2のトーションバー3bが接続される部分にピエゾ抵抗素子を配置する構成であってもよい。
【0057】
前記ピエゾ抵抗素子10a,10bは、第1実施形態と同様に、拡散導通部13aを介して電気的に接続され、この拡散導通部13aの中間部と電気端子11eとが、アルミニウム配線14aによって接続される。また、ピエゾ抵抗素子10a,10bを挟んで2個の固定抵抗素子41a,41bを、固定部2に配置してあり、ピエゾ抵抗素子10aの拡散導通部13aが接続される側とは逆側の電極と固定抵抗素子41aの一方の電極とがアルミニウム配線44aによって接続され、ピエゾ抵抗素子10bの拡散導通部13aが接続される側とは逆側の電極と固定抵抗素子41bの一方の電極とがアルミニウム配線44bによって接続される。
【0058】
また、固定抵抗素子41aの他方の電極と電気端子42aとがアルミニウム配線45aによって接続され、固定抵抗素子41bの一方の電極と電気端子42bとがアルミニウム配線45bによって接続される。更に、前記アルミニウム配線44aの途中と電気端子43aとがアルミニウム配線46aによって接続され、前記アルミニウム配線44bの途中と電気端子43bとがアルミニウム配線46bによって接続されている。
【0059】
電気端子7a,11e,42a,42b,43a,43bは、固定部2の端縁に沿って直線的に配置されている。そして、制御ユニット81の電気端子と前記電気端子11e,42a,42b,43a,43bとが、例えばワイヤーボンディング等により電気的に接続されることで、前記ピエゾ抵抗素子10a,10b及び固定抵抗素子41a,41bは、図9に示すようなブリッジ回路を構成する。
【0060】
具体的には、図9に示すように、前記電気端子42a,42b相互を接続することで、前記ピエゾ抵抗素子10a,10b及び固定抵抗素子41a,41bがブリッジ回路を形成し、該ブリッジ回路に対する電源供給は、電気端子43a,43bを電源Voに接続することでなされ、ブリッジ出力は、電気端子42a,42bの接続部と電気端子11eとの電位差として取り出される。
【0061】
図10は、前記ブリッジ回路を構成するための前記制御ユニット81における回路を示すものであり、制御ユニット81には、前記電気端子42a,43a,11e,43b,42bに対応する5個の電気端子82a〜82eが設けられており、アクチュエータ1側の電気端子42a,43a,11e,43b,42bと、制御ユニット81側の電気端子82a〜82eとが、それぞれがワイヤーボンディング83により電気的に接続される。
【0062】
そして、制御ユニット81内では、電気端子82aと電気端子82eとが配線84によって電気的に接続され、電気端子82bと電気端子82dとが配線85によって接続され、前記配線85途中に電源Voが介装される。また、配線84の電圧と、電気端子82cとの電位差が、出力電圧V(ブリッジ出力)として検出され、該出力電圧Vに基づいて可動部4の揺動位置(揺動角度)が検出されるようになっている。但し、ブリッジ回路の構成を図9,10のものに限定するものではなく、例えば、前記ピエゾ抵抗素子10a,10bの接続部を電源供給部とすることができる。
【0063】
上記第3実施形態によると、ブリッジ回路を構成する抵抗素子が、固定部2の1辺に集めて配置されるから、固定部2の両端にそれぞれピエゾ抵抗素子10が配置され、これらのピエゾ抵抗素子10a〜10dによってブリッジ回路を構成する場合に比べて、抵抗素子間の接続を容易に行える。但し、図9のように、2個のピエゾ抵抗素子10a,10bと2個の固定抵抗素子41a,41bとでブリッジ回路を構成した場合よりも、図2に示したように、4個のピエゾ抵抗素子10a〜10dでブリッジ回路を構成した方が、大きなブリッジ出力(出力電圧V)を得ることができる。
【0064】
尚、前記固定抵抗素子41a,41bは、可動部4の揺動による抵抗値変化がないか、又は、可動部4の揺動に伴う抵抗値変化が、揺動検出に用いることができるほどには大きくない抵抗素子であり、可動部4の揺動に対して抵抗値の変化が小さい(零を含む)という特性は、可動部4の揺動に伴う応力を受けない場所への配置によって得られるものであっても良いし、ピエゾ効果(圧電効果)を有しない組成の抵抗で実現されるものであってもよい。
【0065】
また、図1の構成におけるトーションバー3b側のセンサデバイス、即ち、ピエゾ抵抗素子10c,10d、電気端子11c,11d、アルミニウム配線12c,12dを無くして、図11の第4実施形態に示すように、トーションバー3a側にのみピエゾ抵抗素子10a,10bを備える構成とし、該ピエゾ抵抗素子10a,10bと制御ユニット81側(外部)に備えられた固定抵抗素子41a,41bでブリッジ回路を構成させることができる。
【0066】
図12は、前記第4実施形態において、前記ブリッジ回路を構成するための前記制御ユニット81における回路を示すものであり、制御ユニット81には、アクチュエータ1側の電気端子43a,11e,43bに対応する3個の電気端子82f〜82hが設けられており、アクチュエータ1側の電気端子43a,11e,43bと、制御ユニット81側の電気端子43a,11e,43bとがそれぞれがワイヤーボンディング83により電気的に接続される。
【0067】
そして、制御ユニット81内では、電気端子82fと電気端子82hとが、途中に電源Voが介装される配線87によって電気的に接続され、前記電源Voに対して並列に、固定抵抗素子41a,41bの直列回路が接続されている。また、固定抵抗素子41aと固定抵抗素子41bとの間の端子電圧と、電気端子82gの電圧、即ち、ピエゾ抵抗素子10aとピエゾ抵抗素子10bとの間の端子電圧との電位差が、出力電圧V(ブリッジ出力)として検出されるようになっている。上記第4実施形態によると、アクチュエータ1側(固定部2)に形成される抵抗素子の数が減り、アクチュエータ1の構成を簡略化できる。
【0068】
前記図11に示した第4実施形態では、2個のピエゾ抵抗素子10a,10bを、固定部2のトーションバー3a側に、トーションバー3aの軸を挟んで対向配置させたが、2個のピエゾ抵抗素子10のうちの1個を、固定部2のトーションバー3aが接続される部分に配置し、残る1個を、固定部2のトーションバー3bが接続される部分に配置することができる。図13は、固定部2のトーションバー3aが接続される部分に、1個のピエゾ抵抗素子10aを配置し、固定部2のトーションバー3bが接続される部分に、1個のピエゾ抵抗素子10dを配置した、第5実施形態を示す。
【0069】
この第5実施形態において、前記ピエゾ抵抗素子10aは、トーションバー3a,3bの軸よりも一方側に偏った位置に配置され、逆に、ピエゾ抵抗素子10dは、トーションバー3a,3bの軸よりも他方側に偏った位置に配置され、ピエゾ抵抗素子10aが可動部4の揺動に伴って圧縮応力(引張応力)を受ける場合には、ピエゾ抵抗素子10dは引張応力(圧縮応力)を受けるようにしてある。
【0070】
そして、ピエゾ抵抗素子10aの一方の電極は、アルミニウム配線12aを介して電気端子11aに接続され、ピエゾ抵抗素子10aの他方の電極は、アルミニウム配線48aを介して電気端子47aに電気的に接続されている。また、ピエゾ抵抗素子10bの一方の電極は、アルミニウム配線12dを介して電気端子11dに接続され、ピエゾ抵抗素子10dの他方の電極は、アルミニウム配線48dを介して電気端子47dに電気的に接続されている。ここで、第4実施形態と同様に、前記2個のピエゾ抵抗素子10a,10dは、制御ユニット81側(外部)に備えられている2個の固定抵抗41a,41bに接続されることで、ブリッジ回路を構成し、ピエゾ抵抗素子10a,10dの抵抗値変化に応じた出力電圧が検出される。
【0071】
上記第5実施形態では、ピエゾ抵抗素子10a,10d相互をアクチュエータ1上では接続しないので、駆動コイル5用のアルミニウム配線6a,6bに対して立体的に交差させて、ピエゾ抵抗素子10a,10d間を接続する配線(拡散導通部13a,13b)を設ける必要がなく、アクチュエータ1における配線構成を簡略化できる。また、ピエゾ抵抗素子10aが可動部4の揺動に伴って圧縮応力(引張応力)を受ける場合には、ピエゾ抵抗素子10dは引張応力(圧縮応力)を受けるようにしてあり、可動部4の揺動に対する抵抗値変化の方向が異なるから、必要充分な出力電圧を得ることが可能である。
【0072】
尚、第3〜第5実施形態において、第2実施形態のように、薄肉部31を設けることができる。また、図1,図7,図8,図11,図13に示した実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の全体を可動部として、前記トーションバー3a,3bの軸方向に直交する方向に揺動可能に、トーションバーを介して固定部に支持し、前記可動部4を前記トーションバー3a,3bの軸回りに揺動させると共に、前記トーションバー3a,3bの軸方向と直交する軸回りにアクチュエータ全体を揺動させる構成とすることができる。そして、上記のプレーナ型アクチュエータにおいて、2重に設けられる固定部のそれぞれについて、トーションバーが接続される部分に、ピエゾ抵抗素子を配置させることができる。
【0073】
また、上記各実施形態では、ピエゾ抵抗素子10の向きを、ピエゾ抵抗素子10の電極が図1などにおける左右方向に並ぶ向きとしたが、ピエゾ抵抗素子10の向きは、電極が図1などにおける上下方向に並ぶ向きとすることができ、更に、ピエゾ抵抗素子10の電極の並び方向が斜めであってもよく、引張・圧縮応力を受けて抵抗値を変化させるのに最適な向きに設定できる。
【符号の説明】
【0074】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 固定部
3a,3b トーションバー
4 可動部
5 駆動コイル
8 永久磁石
10a〜10d ピエゾ抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の固定部と、前記固定部の内側に、一対のトーションバーを介して揺動可能に支持された可動部と、前記可動部を揺動させる駆動手段と、前記固定部の前記トーションバーが接続される部分に配置されるピエゾ抵抗素子とを備えたことを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記固定部の前記トーションバーが接続される部分に、前記固定部の他の部分よりも薄い薄肉部を形成したことを特徴とする請求項1記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
一対のピエゾ抵抗素子を、前記可動部の揺動に伴って一方に対して圧縮応力が加わるときに、他方に対して引張応力が加わるように、前記トーションバーの幅方向に離間させて配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定部の一方のトーションバーが接続される部分と他方のトーションバーが接続される部分とにそれぞれ一対のピエゾ抵抗素子を配置したことを特徴とする請求項3記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記一対のピエゾ抵抗素子に接続されてブリッジ回路を構成する一対の固定抵抗素子を、前記一対のピエゾ抵抗素子と共に、前記固定部の1辺に配置したことを特徴とする請求項3記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項6】
前記一対のピエゾ抵抗素子が、外部の一対の固定抵抗素子に接続されてブリッジ回路を構成することを特徴とする請求項3記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項7】
前記一対のピエゾ抵抗素子が、前記固定部に形成される拡散導通部を介して接続されることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−20207(P2011−20207A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166788(P2009−166788)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】