説明

プログラマブル表示器

【課題】 制御用ホストコンピュータがメモリカードにアクセスできるにも拘らず、制御システム全体に必要なメモリカード・ドライブ数を削減可能なプログラマブル表示器を実現する。
【解決手段】 プログラマブル表示器4には、一時的に起動可能なデバイスとして、メモリカード・ドライブ21が設けられており、メモリカード21a上に構築されたファイルシステム中に、予め定められたファイル名のファイルとして、起動プログラムが格納されていると、当該起動プログラムを読み出して起動できる。また、プログラマブル表示器4の共通プロトコルIF部42は、LAN5からファイル名と書き込みデータとを含む書き込み要求を受け取ると、カードアクセス処理部45へ指示して、メモリカード21a上に構築されたファイルシステムのうち、当該ファイル名を有するファイルに、上記書き込みデータを書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムにて、制御対象の状態を表示したり制御するプログラマブル表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、従来の制御システム101では、例えば、ベルトコンベアー式の自動組付機など、種々のターゲットシステム102を制御する制御装置として、プログラマブル・ロジック・コントローラ(以下、PLCと略称する)103が、広く使用されている。さらに、近年では、ターゲットシステム102の複雑化に伴って、複数台のPLC 103を互いに連携させて使用することも行われている。また、各PLC103からのデータの表示、あるいは、PLC103への制御指示は、当該PLC103の近傍などに配されるプログラマブル表示器104で行われるだけではなく、例えば、これらのプログラマブル表示器104から離れた場所に設置した制御用ホストコンピュータ106でも、表示あるいは操作できるように、制御システム101を構築することもある。なお、図12の例では、オペレータと対話するために比較的演算能力が高く設定されたプログラマブル表示器104を、PLC103と制御用ホストコンピュータ106との間に配し、各プログラマブル表示器104および制御用ホストコンピュータ106間をネットワーク105で接続することで、PLC103の負担を軽減している。
【0003】
さらに、上記プログラマブル表示器104は、上記表示/制御動作と共に、必要に応じ、例えば、PLC103からのデータや操作などの事象の履歴(ロギングデータ)を保存しており、制御システム101の動作状況の分析や、不具合が発生した場合の原因究明などに利用している。
【0004】
ここで、多くの事象について履歴を保存すれば、より詳細に動作状況の分析や不具合の原因究明を行える一方で、ロギングデータの保存に必要な記憶容量が大きくなってしまう。したがって、履歴を保存する事象は、各ターゲットシステム102や各運用者に応じて選択される。
【0005】
一方、制御システム101では、多くのプログラマブル表示器104が使用されるため、各プログラマブル表示器104が当初から内蔵するメモリ容量は、制限される傾向にある。したがって、必要に応じてロギングデータの格納場所を増設できるように、メモリカード・ドライブ111を設けたプログラマブル表示器104が使用されている。当該プログラマブル表示器104では、内蔵のメモリの記憶容量がロギングデータの格納に十分でない場合、当該ロギングデータを保存可能な容量のメモリカード112が、メモリカード・ドライブ111に装着され、プログラマブル表示器は、内蔵のメモリの代わりに、メモリカード112にロギングデータを格納する。
【0006】
なお、ターゲットシステム102近傍では、一般に、周囲環境温度は、高温になりがちであり、振動や粉塵などが多い。したがって、ロギングデータの記録媒体としては、フロッピーディスクや、光磁気ディスク(MO)よりも、メモリカードの方が好ましい。
【0007】
上記構成において、メモリカード112に格納されたロギングデータを参照する場合、制御用ホストコンピュータ106は、ネットワーク105を介し、プログラマブル表示器104へロギングデータの読み出し指示を送信する。一方、プログラマブル表示器104は、ロギングデータの読み出し指示を受け取ると、内蔵のメモリにアクセスする場合と同様に、例えば、メモリカード112のアドレス領域のうち、予め定められたアドレス領域を参照するなどして、ロギングデータを取得し、ネットワーク105を介して制御用ホストコンピュータ106へ返送する。これにより、制御用ホストコンピュータ106は、各プログラマブル表示器104のロギングデータを取得でき、制御システム101の動作状況を分析したり、不具合が発生した場合に原因を究明したりできる。
【0008】
ここで、制御用ホストコンピュータ106は、プログラマブル表示器104に比べて良好な環境下で使用されているので、誤動作せずに使用可能な記録媒体の種類が多く、例えば、フロッピーディスクや光磁気ディスクなど、メモリカードと比較して記憶容量が大きな記録媒体や容量あたりの単価が安い記録媒体を使用できる。したがって、制御用ホストコンピュータ106では、メモリカードを使う機会が少なく、メモリカード・ドライブ111が予め用意されていないことが多い。
【0009】
ところが、頻度が少ないものの、制御用ホストコンピュータ106は、例えば、ネットワーク接続されていない携帯型のコンピュータとメモリカードを介してデータファイルを交換することもある。したがって、このような場合に備えて、制御用ホストコンピュータ106にメモリカード・ドライブ121を備えた制御システム101も存在する。
【0010】
当該構成では、制御用ホストコンピュータ106は、データファイルを保存する際、ハードディスクやフロッピーディスクにアクセスする場合と同様に、ファイル名を指定してメモリカード122に保存する。一方、データファイルを読み出す場合、制御用ホストコンピュータ106は、当該データファイルのファイル名を指定して、メモリカード122からデータファイルを読み出す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の制御システム101では、アクセス頻度が少ない場合でも、プログラマブル表示器104のメモリカード・ドライブ111とは別に、制御用ホストコンピュータ106にメモリカード・ドライブ121が設けられているため、制御システム101内のメモリカード・ドライブ数が多くなるという問題を生じる。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御用ホストコンピュータがメモリカードにアクセスできるにも拘らず、制御システム全体に必要なメモリカード・ドライブ数を削減可能なプログラマブル表示器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るプログラマブル表示器は、ネットワークに接続可能な通信手段と、アクセス可能なメモリカードを交換可能なメモリカード・ドライブとを有するプログラマブル表示器であって、上記課題を解決するために、上記メモリカード・ドライブがメモリカードにアクセス可能な場合、当該メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、指示されたファイル名のファイルの内容を読み出すカードアクセス手段を備え、上記通信手段は、上記ネットワークを介し、ファイル名を含むアクセス要求を受け取った場合、上記カードアクセス手段に、当該ファイル名のファイルの内容を読み出すように指示すると共に、読み出したファイルの内容を、上記ネットワークを介し、上記アクセス要求の送信元へ返送するものであり、起動する際、上記メモリカード・ドライブがアクセス可能なメモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、予め定められた特定ファイル名のファイルを起動プログラムとして読み込んで起動するカード起動手段と、上記メモリカード・ドライブとは別に設けられ、制御用プログラムが格納された通常起動デバイスと、入力手段が予め定められた特定操作を受け付けた場合、上記メモリカード・ドライブから起動し、かつ、次に上記予め定められた特定操作を上記入力手段が受け付けるまでは、上記通常起動デバイスから起動する起動制御手段とをさらに備えていることを特徴としいる。
【0014】
上記構成において、例えば、ネットワークを介してプログラマブル表示器に接続された制御用ホストコンピュータなど、送信元の機器は、自機器のドライブにアクセスする場合と略同様に、参照するファイル名を含むアクセス要求を生成し、ネットワークを介し、上記プログラマブル表示器へ当該アクセス要求を送信する。一方、プログラマブル表示器は、アクセス要求を受け取ると、カードアクセス手段に、アクセス要求で指定されたファイル名のファイル内容を読み出すように指示する。さらに、カードアクセス手段は、プログラマブル表示器のメモリカード・ドライブにアクセスして、メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、上記通信手段から指示されたファイル名のファイルの内容を読み出す。また、通信手段は、カードアクセス手段が読み出したファイルの内容を、ネットワークを介し、例えば、制御用ホストコンピュータなど、上記アクセス要求の送信元に返送する。
【0015】
上記構成では、例えば、制御用ホストコンピュータなど、上記プログラマブル表示器にネットワークを介して接続された機器は、メモリカード・ドライブが設けられていないにも拘らず、自機器のドライブにアクセスする場合と略同様に、メモリカード内の所望のファイルの内容を参照できる。この結果、上記機器がメモリカード内のファイルを参照する際、プログラマブル表示器内のメモリカード・ドライブとは別のメモリカード・ドライブを接続する必要が無くなり、プログラマブル表示器および上記機器などから構成される制御システム全体のメモリカード・ドライブ数を削減できる。
【0016】
特に、プログラマブル表示器がメモリカード・ドライブから起動可能な場合、メンテナンス用の起動プログラムや制御用プログラムを格納するためにメモリカードが使用される。したがって、制御用ホストコンピュータからメモリカードにアクセスできることが望ましい。ところが、上記各構成のプログラマブル表示器を用いれば、制御用ホストコンピュータにメモリカード・ドライブを設ける必要がないので、特に好ましい。
【0017】
また、本発明に係るプログラマブル表示器は、ネットワークに接続可能な通信手段と、アクセス可能なメモリカードを交換可能なメモリカード・ドライブとを有するプログラマブル表示器であって、上記課題を解決するために、上記メモリカード・ドライブがメモリカードにアクセス可能な場合、当該メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、指示されたファイル名のファイルに、指示されたデータを書き込むカードアクセス手段を備え、上記通信手段は、上記ネットワークを介し、ファイル名と書き込みデータとを含むアクセス要求を受け取った場合、上記カードアクセス手段に、当該ファイル名のファイルに上記書き込みデータを書き込むように指示するものであり、起動する際、上記メモリカード・ドライブがアクセス可能なメモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、予め定められた特定ファイル名のファイルを起動プログラムとして読み込んで起動するカード起動手段と、上記メモリカード・ドライブとは別に設けられ、制御用プログラムが格納された通常起動デバイスと、入力手段が予め定められた特定操作を受け付けた場合、上記メモリカード・ドライブから起動し、かつ、次に上記予め定められた特定操作を上記入力手段が受け付けるまでは、上記通常起動デバイスから起動する起動制御手段とをさらに備えていることを特徴としている。
【0018】
上記構成では、ネットワークを介してプログラマブル表示器に接続された送信元の機器は、自機器のドライブにアクセスする場合と略同様に、ファイル名と書き込みデータとを含むアクセス要求を生成し、ネットワークを介し、上記プログラマブル表示器へ送信する。一方、プログラマブル表示器は、アクセス要求を受け取ると、カードアクセス手段に、アクセス要求で指定されたファイル名のファイルへ、当該アクセス要求で指定された書き込みデータを書き込むように指示する。さらに、カードアクセス手段は、プログラマブル表示器のメモリカード・ドライブにアクセスして、メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、上記通信手段から指示されたファイル名のファイルへ書き込み出たを書き込む。
【0019】
これにより、上記機器は、メモリカード・ドライブが設けられていないにも拘らず、自機器のドライブにアクセスする場合と略同様に、メモリカード内の所望のファイルにデータを書き込むことができる。この結果、上記機器がメモリカード内のファイルに書き込む際、上記機器にメモリカード・ドライブを接続する必要が無くなり、制御システム全体のメモリカード・ドライブ数を削減できる。
【0020】
なお、本発明の構成において、メモリカードは、メモリカード・ドライブがアクセス可能なメモリカードを交換可能(リムーバブル)であれば、形状が板状であってもよいし、スティック状であってもよい。また、メモリカードに電気的に接触してアクセスする接触型であってもよいし、電磁波などでアクセスする非接触型のメモリカード・ドライブであってもよい。
【0021】
上記構成において、例えば、電源投入時やリセット時など、プログラマブル表示器が起動する際、カード起動手段は、上記メモリカード・ドライブがメモリカードにアクセス可能なメモリカードを参照し、特定ファイル名のファイルが存在すれば、当該ファイルを起動プログラムとして読み込んで起動する。
【0022】
上記構成では、プログラマブル表示器がメモリカード・ドライブから起動できるので、プログラマブル表示器に格納された制御プログラムを変更する際など、プログラマブル表示器に通常の制御動作とは異なるメンテナンス動作を行わせる際、上記特定ファイル名のメンテナンス動作用プログラムをメモリカードに格納し、当該メモリカードをメモリカード・ドライブからアクセス可能にすれば、プログラマブル表示器に固定的にメンテナンス動作用プログラムを用意することなく、メンテナンス動作させることができる。なお、メモリカードには、必要に応じて、例えば、更新する制御プログラムなど、メンテナンス動作用プログラムも格納できる。この場合、プログラマブル表示器の設置場所に、メモリカードを持ち込むだけでよい。したがって、プログラマブル表示器にシリアルケーブルを介して通信するプログラムを格納しておき、メンテナンス時に、制御プログラムが格納された携帯型コンピュータをプログラマブル表示器に接続して、制御プログラムを転送する従来技術と比較して、メンテナンス時の作業を簡略化できる。
【0023】
上記構成において、例えば、タッチパネルの複数箇所の略同時操作など、特定の操作があったとき、上記起動制御手段は、プログラマブル表示器が起動する際のデバイスを、例えば、内蔵メモリなど、通常起動するデバイスから、上記メモリカード・ドライブに一時的に変更する。この場合は、メモリカード・ドライブからアクセス可能なメモリカード内に、上記特定ファイル名の起動プログラムが格納されていたとしても、プログラマブル表示器は、特定の操作がない限り、通常起動デバイスから起動する。したがって、上記起動プログラムをメモリカードから削除したり、メモリカードをメモリカード・ドライブから取り外したりすることなく、通常の制御動作中も、例えば、ロギングデータの格納場所として、上記メモリカードを使用し続けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るプログラマブル表示器は、以上のように、メモリカード・ドライブと、メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、指示されたファイル名のファイルの内容を読み出すカードアクセス手段と、ネットワークを介してアクセス要求を受け取った場合、上記カードアクセス手段に、当該ファイル名のファイルの内容を読み出すように指示すると共に、読み出したファイルの内容を上記アクセス要求の送信元へ返送する通信手段と、起動する際、上記メモリカード・ドライブがアクセス可能なメモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、予め定められた特定ファイル名のファイルを起動プログラムとして読み込んで起動するカード起動手段と、上記メモリカード・ドライブとは別に設けられ、制御用プログラムが格納された通常起動デバイスと、入力手段が予め定められた特定操作を受け付けた場合、上記メモリカード・ドライブから起動し、かつ、次に上記予め定められた特定操作を上記入力手段が受け付けるまでは、上記通常起動デバイスから起動する起動制御手段とを備えている構成である。
【0025】
本発明に係るプログラマブル表示器は、以上のように、メモリカード・ドライと、メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、指示されたファイル名のファイルにデータを書き込むカードアクセス手段と、ネットワークを介し、アクセス要求を受け取った場合、上記カードアクセス手段に、当該ファイル名のファイルに書き込みデータを書き込むように指示する通信手段と、起動する際、上記メモリカード・ドライブがアクセス可能なメモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、予め定められた特定ファイル名のファイルを起動プログラムとして読み込んで起動するカード起動手段と、上記メモリカード・ドライブとは別に設けられ、制御用プログラムが格納された通常起動デバイスと、入力手段が予め定められた特定操作を受け付けた場合、上記メモリカード・ドライブから起動し、かつ、次に上記予め定められた特定操作を上記入力手段が受け付けるまでは、上記通常起動デバイスから起動する起動制御手段とを備えている構成である。
【0026】
上記各構成では、例えば、制御用ホストコンピュータなど、上記プログラマブル表示器にネットワークを介して接続された機器は、メモリカード・ドライブが設けられていないにも拘らず、自機器のドライブにアクセスする場合と略同様に、メモリカード内の所望のファイル名のファイルにアクセスできる。この結果、プログラマブル表示器内のメモリカード・ドライブとは別のメモリカード・ドライブを接続する必要が無くなり、プログラマブル表示器および上記機器などから構成される制御システム全体のメモリカード・ドライブ数を削減できるという効果を奏する。
【0027】
さらに、上記構成では、プログラマブル表示器がメモリカード・ドライブから起動できるので、通常の制御動作とは異なるメンテナンス動作を行わせる際、プログラマブル表示器の設置場所に、メモリカードを持ち込むだけでよい。したがって、プログラマブル表示器にシリアルケーブルを介して通信するプログラムを格納しておき、メンテナンス時に、制御プログラムが格納された携帯型コンピュータをプログラマブル表示器に接続して、制御プログラムを転送する従来技術と比較して、メンテナンス時の作業を簡略化できるという効果を奏する。
【0028】
さらに、上記構成によれば、メモリカード・ドライブからアクセス可能なメモリカード内に、上記特定ファイル名の起動プログラムが格納されていたとしても、プログラマブル表示器は、特定の操作がない限り、通常起動デバイスから起動する。したがって、上記起動プログラムをメモリカードから削除したり、メモリカードをメモリカード・ドライブから取り外したりすることなく、通常の制御動作中も、上記メモリカードを使用し続けることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、図1に示すように、本実施形態に係る制御システム1は、例えば、モータやバルブあるいはセンサなどのデバイス2a…を含むターゲットシステム2の状態を制御するシステムであって、上記各デバイス2aを制御するプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)3と、PLC3に接続され、多くの場合、ターゲットシステム2の近傍でオペレータにより操作されるプログラマブル表示器4…とを備えている。上記各プログラマブル表示器4は、詳細は、後述するように、予め格納される制御用プログラムに従って動作しており、PLC3と通信してデバイス2aの状態を表示すると共に、通信結果やオペレータの指示に応じて、デバイス2aへの制御指示をPLC3へ送信できる。
【0030】
また、上記制御システム1において、上記各プログラマブル表示器4は、例えば、イーサネット(登録商標)などのローカル・エリア・ネットワーク(LAN;ネットワーク)5によって、互いに接続されている。さらに、当該LAN5には、制御用ホストコンピュータ6が接続されており、当該制御用ホストコンピュータ6によって、制御システム1全体を制御すると共に、例えば、制御用プログラムに不具合が発見された場合や、制御用プログラムを改善した場合などに、上記制御用プログラムの一部または全部を修正(作成)できる。
【0031】
通常の制御動作時、すなわち、プログラマブル表示器4のCPU14が上記制御用プログラムを実行して、表示装置15やタッチパネル16、あるいは、通信回路18やネットワーク通信回路19(いずれも後述)などのハードウェアを制御すると、当該プログラマブル表示器4には、機能ブロックとして、PLC3やLAN5に接続されるインターフェース部(IF部)として、専用プロトコルIF部41・共通プロトコルIF部(通信手段)42と、両IF部41・42による通信を中継するプロトコル変換部43と、オペレータの操作や通信結果などに基づいて、表示/制御動作を行う表示制御処理部44とが形成される。
【0032】
一方、制御用ホストコンピュータ6には、CPUなどの演算処理手段がメモリやハードディスクなどの記憶手段に格納されたプログラムを実行し、表示回路や通信回路などのハードウェアを制御することで実現される機能ブロックとして、制御システム1全体の監視制御を行う表示処理部61と、LAN5に接続される共通プロトコルIF部62と、共通プロトコルIF部62およびLAN5を介して各プログラマブル表示器4と通信して、表示処理部61などの要求に応じるサーバ部63と、制御用プログラムの一部としての画面データを修正(作成)する作画処理部64と、制御システム1のデータの分析プログラムなどのプログラムを実行するアプリケーション処理部65とが設けられている。なお、図1の例では、制御用プログラムを変更可能な部材として、作画処理部64のみを設け、制御用プログラムのうち後述するシステムプログラムやプロトコルプログラムあるいはアプリケーションプログラムなどは、例えば、プログラマブル表示器4の製造業者などのコンピュータで変更する場合を示しているが、これらのプログラムを制御用ホストコンピュータ6で変更してもよい。
【0033】
ここで、PLCは、シーケンサから発達してきた経緯もあって、例えば、製造会社毎や製品の種別毎など、PLCの機種毎に独自の専用プロトコルを備えているものが多い。ところが、本実施形態に係る制御システム1では、プログラマブル表示器4間がLAN5で直接接続されている。これにより、制御システム内の通信処理にPLCが介在する従来の制御システムとは異なって、制御システム1に必須の構成であり、しかも、画面表示のために、PLC3よりも演算能力や記憶容量の余裕が大きなプログラマブル表示器4が、通信の大半を処理できる。さらに、各プログラマブル表示器4は、プロトコル変換部43が設けられており、プロトコル変換部43は、自らに接続されているPLC3の機種に固有の専用プロトコルと、ネットワーク5での通信用に予め定められた共通プロトコルとを変換して、他のプログラマブル表示器4や制御用ホストコンピュータ6と、PLC3との通信を中継する。また、プログラマブル表示器4および制御用ホストコンピュータ6の共通プロトコルIF部42・62は、他のプログラマブル表示器4に接続されているPLC3の機種に拘らず、予め定められた共通プロトコルで通信するように設定されている。この結果、上記PLC間を直接接続する制御システムに比べて、互いに異なる機種のPLC3を制御システム1内に混在させやすくなる。
【0034】
ここで、プログラマブル表示器4のハードウェア構成および制御用プログラムについて詳細に説明すると、上記制御用プログラムには、ハードウェアの制御処理、あるいは、文字や図形の表示処理やタッチパネルへの入力を受け付ける処理など、多くのプログラムで一般的に使用される処理を行うシステムプログラムと、予め定められた通信プロトコルで通信するためのプロトコルプログラムとが含まれている。また、本実施形態に係るプログラマブル表示器4は、処理指示語(タグ)を組み合わせて決定される画面データに基づいて、入力および画面表示を制御可能な表示器であって、上記制御用プログラムには、さらに、プログラマブル表示器4の表示/制御動作を規定する上記画面データと、例えば、当該画面データに基づいて上記システムプログラムを呼び出して、プログラマブル表示器4の各ハードウェアに、画面データが示す表示/制御動作を行わせるアプリケーションプログラムなどの拡張プログラムとが含まれている。
【0035】
上記制御用プログラムのうち、画面データは、画面上の領域への表示に対応するデバイスのアドレスと画面上の領域との対応を示す表示タグや、画面上の領域への入力に対応するデバイスのアドレスと画面上の領域との対応を示す入力タグなどから構成されており、上記システムプログラムを呼び出して表示/制御動作させるプログラムを作成する場合に比べて容易に作成できる。また、表示内容や各表示図形の配置などは、ターゲットシステム2や、その運用者に固有である。したがって、上記画面データは、上記制御用ホストコンピュータ6の作画処理部64で変更される。
【0036】
一方、上記プログラマブル表示器4には、図2に示すように、通常起動デバイスとして、上記制御用プログラムが格納されるFEEPROM(Flash Electrically Erasable and Programmable ROM)11と、電源投入時に実行される初期化プログラムやフォントデータなどが格納されたROM(Read Only Memory)12と、例えば、DRAM(Dynamic Randam Acess Memory )など、上記各ROM11・12よりもアクセス速度が速く、上記FEEPROM11やROM12などに格納されたプログラムを実行する際に展開したり、作業領域として使用されるメインメモリ13と、上記各メモリ11〜13にアクセスしながら、各メモリ11〜13に格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit )14とが設けられている。また、プログラマブル表示器4は、入出力手段として、液晶表示装置などの表示装置15およびタッチパネル16と、上記CPU14の指示に応じて、表示装置15およびタッチパネル16を制御するI/O回路17と、RS−232Cなどの規格のシリアルポート18aを介して通信する通信回路18と、LAN5に接続するネットワーク通信回路19とを備えている。
【0037】
さらに、本実施形態に係るプログラマブル表示器4は、一時起動デバイスとして、上記メモリカード21aを読み取るメモリカード・ドライブ21を備えており、メモリカード・ドライブ21から起動できるように構成されている。上記メモリカード21aとしては、例えば、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(商標)あるいはMemory Stick(商標)などを利用できる。また、半導体メモリで記録を保持するリムーバブルな記録媒体であれば、接触型、近接型または非接触型のICカードであってもよい。
【0038】
また、いずれから起動するかを半固定的に設定するDIPスイッチ22と、例えば、リセット処理前後で値を維持可能なレジスタとして実現され、メモリカード・ドライブ21からの一時的な起動を示すフラグが格納されるフラグ記憶部23とが設けられている。これにより、後述する特定の操作を受けた場合は、DIPスイッチ22の設定に拘らず、1度だけ、メモリカード・ドライブ21から起動できるようになっている。
【0039】
具体的には、本実施形態に係るROM12には、電源投入時に実行される初期プログラムとして、各ハードウェアの機能の診断や初期設定などの初期化を行うハードウェア初期化プログラムP1と、上記シリアルポート18aを介して他の機器からプログラムを受け取り、上記FEEPROM11に格納する通信プログラムP2と、FEEPROM11からの起動処理を行う内部起動プログラムP3とに加えて、上記メモリカード・ドライブ21からの起動処理を行うカード起動プログラム(カード起動手段)P11と、DIPスイッチ22などの設定に基づいて、電源投入直後に、上記各プログラムP2・P3・P11のいずれを実行するかを選択する起動選択プログラムP12とが格納されている。また、カード起動プログラムP11には、メモリカード・ドライブ21からの起動時に、上記フラグ記憶部23のフラグをクリアするプログラムも含まれている。なお、図2では、説明の便宜上ROM12やFEEPROM11に格納されるプログラムを列挙して記載しているだけであり、実際に各プログラムを格納されるアドレス領域を示すものではない。
【0040】
一方、上記FEEPROM11に格納された制御用プログラムP21には、実際の制御動作を行う前に実行され、上記フラグ記憶部23を参照して、メモリカード・ドライブ21からの一時的な起動を示すフラグがセットされているか否かをチェックするフラグチェックプログラムP31と、フラグがセットされている場合にメモリカード・ドライブ21からの起動を指示する一時起動プログラムP32とが含まれている。さらに、制御用プログラムP21には、上述のシステムプログラムとして、特定の操作を受け付けた場合、図3に示すように、例えば、表示画面の下方など、特定の表示領域A1に、起動ドライブの選択処理を含む複数の選択肢を表示するメニュー表示プログラムP33と、選択肢として、起動ドライブの選択処理が選択された場合に、上記フラグ記憶部23にフラグをセットするフラグ設定プログラムP34とが含まれている。なお、上記フラグチェックプログラムP31およびフラグ設定プログラムP34を実行するCPU14およびフラグ記憶部23が、特許請求の範囲に記載の起動制御手段に対応している。
【0041】
本実施形態では、特定の操作として、例えば、図4に示すように、タッチパネル16の入力面(表示画面)のうち、4隅に設けられた特定領域A11〜A14のうち、任意の3点の略同時押しを採用しており、上記メニュー表示プログラムP22は、当該操作を検出すると、メニュー表示する。本実施形態では、タッチパネル16として、例えば、デジタル方式のタッチパネル、あるいは、アナログ方式のタッチパネルであっても、上記各特定領域A11〜A14がそれぞれ別個のタッチパネルに配されるように複数に分割されたタッチパネルなど、複数領域への操作を検出可能なタッチパネルを採用しているので、何ら支障なく、上記特定操作を検出できる。
【0042】
また、上記FEEPROM11には、制御用プログラムP21だけではなく、制御用データD21として、例えば、イメージ画像、サウンドデータ、グラフデータ、アラームデータなど、表示/制御時に必要なデータ、あるいは、例えば、ロギングデータや画面データのバックアップなど、メンテナンス用のデータなどが格納されている。
【0043】
また、本実施形態に係る制御用プログラムP21には、さらに、カードアクセスプログラムP35が含まれており、通常制御動作時には、図1に示すように、共通プロトコルIF部42からのアクセス要求に応じて、メモリカード・ドライブ21のメモリカード21aへアクセスするカードアクセス処理部(カードアクセス手段)45が、機能ブロックとして形成される。当該カードアクセス処理部45は、共通プロトコルIF部42がLAN5からファイル名を含む読み出し要求を受け取ると、メモリカード・ドライブ21にアクセスして、メモリカード21a上に構築されたファイルシステムのうち、指示されたファイル名のファイルを参照できる。さらに、当該ファイルの内容を、共通プロトコルIF部42を介し、読み出し要求の送信先に返送できる。一方、上記共通プロトコルIF部42が、ファイル名と書き込みデータとを含む書き込み要求を受け取った場合、上記カードアクセス処理部45は、メモリカード・ドライブ21にアクセスして、上記ファイルシステムのうち、指示されたファイル名のファイルに、上記書き込みデータを書き込むことができる。
【0044】
ここで、上記プログラマブル表示器4は、ターゲットシステム2近傍の環境、すなわち、水や油あるいは埃が多い劣悪な環境下で使用される。したがって、入力装置として、これらの環境でも誤動作しにくいタッチパネル16が採用されるだけではなく、図2に示す各部材11〜23は、図5に示すような筐体4aに格納される。また、タッチパネル16側の表面が露出し、背面が露出しないように、筐体4aを壁面などに埋設することが多い。ここで、図6に示すように、メモリカード・ドライブ21のスロットや、図示しない通気口などの開口部は、背面あるいは筐体4aの側面のうち、露出しない位置に配されている。なお、図6では、メモリカード・ドライブ21のスロットを背面に配した場合を例示している。これにより、開口部の露出を防止でき、上述のような劣悪な環境下でも正常に動作し続けることができる。
【0045】
さらに、上記メモリカード21aには、例えば、MS−DOS(登録商標)互換のファイルシステムなど、制御用ホストコンピュータ6にメモリカード・ドライブ21を接続した場合に、制御用ホストコンピュータ6がアクセス可能なファイルシステムが構築されており、上記カード起動プログラムP11が実行されると、プログラマブル表示器4は、当該ファイルシステムに格納されたファイルのうち、予め定められたファイル名のファイルを起動時に実行する。本実施形態では、例えば、ルートディレクトリ上で、ファイル名が”IPL.SYS ”のファイルを起動時に実行すると規定されており、メモリカード21aには、当該ファイル名で、起動用プログラム(図2に示すメンテナンス用プログラムP41)が格納される。これにより、起動用プログラムや制御用プログラムが、制御用ホストコンピュータ6以外のコンピュータで作成される場合であっても、当該コンピュータは、プログラマブル表示器4用の起動プログラムを、メモリカード21aに所定のファイル名で格納するだけでよい。したがって、新たな構成のファイルシステムを構築する場合や、起動用プログラムを特定の領域に保存する場合とは異なり、上記コンピュータに新たなフォーマットツールを用意することなく、プログラマブル表示器4で起動可能なメモリカード21aを作成できる。
【0046】
また、メモリカード21aがFEEPROM11内の制御用プログラムP21を更新するために用いられる場合、メモリカード21aには、メンテナンス用プログラムP41に加えて、更新すべき制御用プログラムP21が格納されており、上記メンテナンス用プログラムP41は、当該制御用プログラムP21をFEEPROM11に転送するプログラムと、転送時のユーザインターフェース用のプログラムとを含んで構成される。さらに、必要に応じて、FEEPROM11に転送すべき制御用データD21も格納されている。
【0047】
より詳細には、本実施形態に係るメンテナンス用プログラムP41は、メモリカード21aに格納された制御用プログラムP21…や制御用データD21…のうち、プログラマブル表示器4の機種に応じたファイル名の制御用プログラムP21や制御用データD21を選択して転送するように構成されている。これにより、メモリカード21a内に複数機種用の制御用プログラムP21や制御用データD21が混在していても、何ら支障なく、プログラマブル表示器4に適した制御用プログラムP21や制御用データD21を転送できる。この結果、FEEPROM11の容量やメインメモリ13の容量の異なる複数機種間で、メモリカード21aを共用でき、メモリカード21aを持ち運ぶ際の手間を削減できる。
【0048】
また、メンテナンス用プログラムP41には、制御用プログラムP21(制御用データD21)をFEEPROM11にダウンロードするプログラムだけではなく、FEEPROM11からメモリカード21aへアップロードするプログラムも含まれている。この場合は、あるプログラマブル表示器4のFEEPROM11の内容を、他のプログラマブル表示器4に容易に転送できる。さらに、メンテナンス用プログラムP41として、メモリカード21a内のデータと、FEEPROM11内のデータとを比較して、相違点を表示画面に表示するプログラムが含まれていてもよい。なお、転送/比較するプログラムは、制御用プログラムP21や制御用データD21全体を転送/比較してもよいし、予め設定されたデータやメンテナンス要員の指示などに従って、一部分を選択して転送/比較してもよい。
【0049】
ここで、ターゲットシステム2や、その運営者などによって、メンテナンス時に必要な機能やユーザインターフェースが互いに異なっている。したがって、ROM12内に、メンテナンス用プログラムP41を格納しようとすると、必要な機能やユーザインターフェースを提供できなかったり、所望の機能やユーザインターフェースを実現するよりも大きな容量のROM12が必要になる。また、ユーザインターフェースは、プログラムの不具合が発生しやすく、比較的頻繁に変更される虞れがある。これに対して、本実施形態のプログラマブル表示器4では、上述のように、メンテナンス用プログラムP41をメモリカード21aに格納しているので、ROM12の容量を増やすことなく、各ユーザに応じたメンテナンス用プログラムを提供できる。また、制御システム1内の各プログラマブル表示器4へ順次メモリカード21aを装着すれば、各プログラマブル表示器4でメモリカード21aを共用できるので、ROM12に格納する場合に比べて、制御システム1全体で必要なメモリ容量を削減できる。
【0050】
上記構成において、制御用ホストコンピュータ6からプログラマブル表示器4のメモリカード・ドライブ21に装着されたメモリカード21a内のファイルを参照する際の動作について、図7に基づき説明すると以下の通りである。すなわち、ステップ1(以下では、S1のように略称する)において、制御用ホストコンピュータ6の作画処理部64やアプリケーション処理部65が、制御用ホストコンピュータ6内のハードディスク内のファイルを参照する場合と同様に、メモリカード・ドライブ21に装着されたメモリカード21a内のファイル名を指定して読み出しを指示すると、サーバ部63は、ファイル名を示すデータ列と、読み出し要求であることを示す識別子とを含む読み出し要求を生成し、共通プロトコルIF部62およびLAN5を介して、上記メモリカード・ドライブ21を有するプログラマブル表示器4に、読み出し要求を送信する。送信先となるプログラマブル表示器4は、例えば、ファイル名中に含まれるドライブ名に基づいてサーバ部63が特定してもよいし、ユーザによって予め定められたプログラマブル表示器4を送信先としてもよい。
【0051】
なお、メモリカード・ドライブ21の参照や書き込みなどのアクセスによって、プログラマブル表示器4による制御動作に支障をきたす虞れがある場合は、サーバ部63は、予め、LAN5を介してプログラマブル表示器4にオフラインへの移行を指示して、プログラマブル表示器4の制御動作を一時中断させておく方が望ましい。
【0052】
一方、S2において、プログラマブル表示器4の共通プロトコルIF部42は、読み出し要求を受け取ると、当該読み出し要求中の識別子に基づいて読み出し要求であることと、読み出すべきファイル名とを識別し、カードアクセス処理部45へ、当該ファイル名を有するファイルの読み出しを指示する。なお、カードアクセス処理部45へ指示する際、共通プロトコルIF部42が指示を発行してもよいし、カードアクセス処理部45が所定のタイミングで共通プロトコルIF部42に指示の有無を確認してもよい。
【0053】
また、カードアクセス処理部45は、S3において、メモリカード・ドライブ21にアクセスして、メモリカード21a上に構築されたファイルシステムのうち、上記S2にて指定されたファイル名を有するファイルの内容を読み出す。さらに、カードアクセス処理部45は、S4において、共通プロトコルIF部42へ指示して、読み出し要求の送信元(この場合は、制御用ホストコンピュータ6)へ、読み出し要求への返答であることを示す識別子とファイルの内容とを送信させる。なお、本実施形態では、LAN5に接続された機器は、TCP/IPプロトコルで通信しているので、読み出し要求の送信元は、読み出し要求を含むパケットに付加された送信元IPアドレスなどから判別できる。
【0054】
一方、制御用ホストコンピュータ6は、S5において、読み出し要求に対する返答を受け取ると、上記S1でファイルの読み出しを指示した作画処理部64やアプリケーション処理部65にファイル内容を伝える。ここで、上述したように、上記メモリカード21aには、制御用ホストコンピュータ6にメモリカード・ドライブ21を接続した場合に、制御用ホストコンピュータ6がアクセス可能なファイルシステムが構築されており、上記カードアクセス処理部45は、当該ファイルシステム内のファイルにアクセスできる。したがって、制御用ホストコンピュータ6にメモリカード・ドライブが設けられていないにも拘らず、メモリカード・ドライブ21が設けられたプログラマブル表示器4がLAN5に接続されていれば、自機器に接続されている場合と同様、ファイル名を指定して、メモリカード21a内のファイルを読み出すことができる。
【0055】
一方、ファイルに書き込む場合は、図8に示すS11において、作画処理部64やアプリケーション処理部65などが、ファイル名を指定して、データの書き込みを指示すると、サーバ部63は、書き込み要求を示す識別子とファイル名を示すデータ列と書き込むデータ(書き込みデータ)とを含む書き込み要求を生成し、上記S1と同様に、メモリカード・ドライブ21を有するプログラマブル表示器4へ送信する。
【0056】
また、プログラマブル表示器4の共通プロトコルIF部42は、S12において、上記S2と略同様に、識別子に基づいて書き込み要求であると識別し、カードアクセス処理部45に対して、書き込み要求が示すファイル名を有するファイルへ、書き込みデータを書き込むように指示する。さらに、カードアクセス処理部45は、S13において、メモリカード・ドライブ21にアクセスして、メモリカード21a上に構築されたファイルシステムのうち、上記S12にて指定されたファイル名を有するファイルへ、書き込みデータを書き込む。なお、必要であれば、書き込みの成否を、上記S4およびS5と略同様に、書き込み要求の送信元へ返答してもよい。
【0057】
これにより、制御用ホストコンピュータ6にメモリカード・ドライブが設けられていないにも拘らず、メモリカード・ドライブ21が設けられたプログラマブル表示器4がLAN5に接続されていれば、自機器に接続されている場合と同様、ファイル名を指定して、メモリカード21a内のファイルにデータを書き込むことができる。
【0058】
続いて、図9および図10に基づき、上記プログラマブル表示器4の各起動動作について説明する。すなわち、例えば、通常の制御動作時のように、DIPスイッチ22がプログラマブル表示器4内部のFEEPROM11からの起動に設定されている場合、図9に示すt1の時点において、電源が投入されると、プログラマブル表示器4のCPU14は、図10に示すS21において、最初にROM12から、ハードウェア初期化プログラムP1を読み出して実行する。これにより、プログラマブル表示器4は、例えば、メインメモリ13や表示装置15あるいはタッチパネル16など、自らがアクセス可能な各ハードウェアの機能を診断したり、初期設定するなどして、各ハードウェアを初期化する。
【0059】
さらに、S22において、CPU14は、通信回路18を制御して、シリアルポート18aに、例えば、携帯型コンピュータなどの機器が接続されているか否かを判定する。ここで、通常の制御動作時には、シリアルポート18aには、携帯型コンピュータなどの機器が接続されていない。この場合(S22にて、NOの場合)、CPU14は、S23において、DIPスイッチ22を確認して、メモリカード・ドライブ21からの起動が強制されているか否かを確認する。
【0060】
上述したように、t1の時点では、DIPスイッチ22がFEEPROM11からの起動に設定されている。したがって、CPU14は、上記S23の判定の後、S24において、例えば、FEEPROM11の制御用プログラムP21の実行開始アドレスをプログラムカウンタにセットするなどして、FEEPROM11からの起動を試みる。なお、CPU14が同時にアクセス可能なアドレス領域が限られており、ROM12とFEEPROM11とを切り換える場合には、例えば、アドレス領域をFEEPROM11に切り換えてリセットするなどして、FEEPROM11から起動する。また、FEEPROM11の制御用プログラムP21を、メインメモリ13に展開して、展開後の制御用プログラムP21の実行開始アドレスにジャンプしてもよい。
【0061】
上記S24にて、FEEPROM11から起動すると、CPU14は、制御用プログラムP21の通常制御動作を実行する前に、フラグチェックプログラムP31を実行し、上記フラグ記憶部23を参照する(S25)。ここで、電源投入直後は、フラグ記憶部23のフラグがセットされていない(S25にて、NO)。したがって、CPU14は、制御用プログラムP21に従って、例えば、オペレータの操作に従ってPLC3へ指示するなど、通常の制御動作を開始する(S26)。
【0062】
一方、プログラマブル表示器4が通常制御動作を行っている期間中に、図4に示す特定領域A11〜A14をメンテナンス要員が多点押しするなどして、特定操作が検出されると(S27にて、YES )、CPU14は、制御用プログラムP21のメニュー表示プログラムP33に従い、例えば、図3に示すように、予め定められた表示領域A1に、メンテナンス用の選択肢などの選択肢を含むメニューを表示する(S28)。ここで、表示領域A1は、表示画面の一部に制限されており、残余の表示領域A2では、デバイスの状態表示など、通常の制御動作用の表示を続けることができる。また、上記表示領域A1には、スライドボタンA3が表示されており、当該スライドボタンA3を操作することで、図11に示すように、表示領域A1に表示される選択肢を変更できる。なお、変更方法は、スライドボタンA3の操作毎に、表示される選択肢の一部が変化するようにスライドしてもよいし、全部が変化するように切り換えてもよい。
【0063】
選択肢として、メモリカード21aからの起動が選択されると(S29にて、YES )、CPU14は、S30において、フラグ設定プログラムP34に従って、フラグ記憶部23にフラグをセットする。
【0064】
上記S30にて、フラグがセットされると、上述と同様に、S21以降の処理が開始される(図9のt2の時点)。ただし、この場合は、フラグ記憶部23にフラグがセットされているので、CPU14は、上記S25の判定後、S41において、フラグ記憶部23のフラグをリセットして、メモリカード・ドライブ21からの起動を開始する。
【0065】
具体的には、ROM12のカード起動プログラムP11が実行され、CPU14は、メモリカード・ドライブ21に装着されたメモリカード21a内に、起動用プログラムとして予め定められたファイル名のファイルが存在した場合、当該ファイルをメインメモリ13に展開して実行する。
【0066】
ここで、本実施形態に係るメモリカード21aには、図2に示すように、制御用プログラムP21および制御用データD21に加えて、これらのデータP21・D21を転送可能なメンテナンス用プログラムP41が、上記特定のファイル名で格納されている。したがって、上記カード起動プログラムP11が実行されると、当該メンテナンス用プログラムP41が起動用プログラムとして識別され、CPU14にて実行される。
【0067】
さらに、メンテナンス用プログラムP41が実行されると、CPU14は、ROM12に予め格納されたプログラマブル表示器4の機種名などのデータから、プログラマブル表示器4の機種を特定し、メモリカード21a内の制御用プログラムP21…、制御用データD21…のうち、当該機種に対応するファイル名の制御用プログラムP21や制御用データD21を、FEEPROM11に転送する。
【0068】
上記S41において、メモリカード・ドライブ21から起動され、フラグ記憶部23のフラグがクリアされた後、メンテナンス用プログラムP41の指示あるいはメンテナンス要員の指示で、プログラマブル表示器4がリセットされると、プログラマブル表示器4は、S21以降の処理を繰り返す(図9のt3の時点)。
【0069】
この状態では、上記S41にて、フラグがリセットされているので、プログラマブル表示器4は、t1の時点と同様に、FEEPROM11から起動する。これにより、プログラマブル表示器4は、FEEPROM11に転送された、新たな制御用プログラムP21に従って表示/制御できる。
【0070】
ここで、例えば、プログラマブル表示器4が操作を受け付けなくなった場合や、誤動作した場合などに、プログラマブル表示器4がリセットされることがある。ところが、この場合には、t2の時点とは異なり、フラグがセットされない。したがって、t2にて、特定の操作が行われ、一度、メモリカード・ドライブ21から起動した後の期間(t3以降の期間)は、メモリカード21aが装着されていたとしても、特定の操作が再び行われない限り、プログラマブル表示器4は、何度リセットしてもFEEPROM11から起動する。したがって、制御用プログラムを格納した携帯型コンピュータが、シリアルポート18aに接続されているか否かで起動方法を変更する従来の構成を、単にメモリカード・ドライブ21からの起動に適用した構成、すなわち、メモリカード・ドライブ21にメモリカード21aが装着されているか否かに応じて起動方法を変更する構成とは異なり、本実施形態に係るプログラマブル表示器4は、メモリカード21aから一度起動した後は、メモリカード21aが装着されていても、FEEPROM11から起動できる。この結果、メンテナンス時に一時的にメモリカード・ドライブ21から起動して制御用プログラムP21を更新した後、当該制御用プログラムP21が正しく動作しているかを確認する際、メンテナンス要員がメモリカード21aを着脱したり、起動方法の切り換え設定を変更したりする必要がなく、メンテナンス時の手間を大幅に削減できる。
【0071】
また、メモリカード21aが装着されていても、FEEPROM11から起動できるので、通常制御動作時に、メモリカード21aを装着し続けることができる。したがって、メモリカード21aを、ロギングデータなどの格納場所に使用できる。この結果、FEEPROM11を増設する場合に比べて容易に、ターゲットシステム2に応じた容量のロギングデータの格納領域を確保できる。
【0072】
なお、プログラマブル表示器4のシリアルポート18aに携帯型のコンピュータが接続されている場合は、上記S22の判定の後、CPU14は、当該コンピュータと通信して制御用プログラムP21を受け取り、FEEPROM11に格納する。また、DIPスイッチ22がメモリカード・ドライブ21からの起動に設定されていた場合は、上記S23の判定の後、上記S41において、メモリカード・ドライブ21からの起動が行われる。これにより、例えば、制御用プログラムP21書き込み時に停電した場合など、FEEPROM11から起動できない場合、プログラマブル表示器4は、メモリカード・ドライブ21から強制的に起動できる。さらに、上記S28におけるメニュー表示後、他の選択肢が選択された場合(上記S29にて、NOの場合)、CPU14は、通常の制御動作を行いながら、上記S27において、特定の操作を待ち受ける。
【0073】
ここで、本実施形態では、特定の操作として、タッチパネル16の多点押しを採用しているが、これに限るものではなく、予め定められた操作であれば、略同様の効果が得られる。ただし、多点押しは、タッチパネル16の前面から操作可能であるにも拘らず、特に注意しないと押しにくい操作であり、誤ってタッチパネル16に触るなどの誤操作が行われたとしても、多点押しになり難い。この結果、誤操作に起因するメモリカード・ドライブ21からの誤起動を防止できる。
【0074】
また、本実施形態では、特定の表示領域A1にメニュー表示して、メモリカード・ドライブ21からの起動を含む選択肢を選択させているが、これに限らず、表示画面の全面を占有して表示してもよい。ただし、本実施形態のように、表示領域A1のみにメニュー表示すれば、実際の制御動作時、あるいは、制御動作をテストしている場合には、残余の領域A2に制御用のデータを表示できる。
【0075】
さらに、本実施形態では、スライドボタンA3を表示して、表示領域A1に表示する選択肢を変更しているので、表示領域A1の広さが制限されているにも拘らず、より多くの選択肢を選択できる。
【0076】
なお、本実施形態では、ファイル名によって、メンテナンス用プログラムP41が転送する制御用プログラムP21(制御用データD21)を選択しているが、これに限るものではない。例えば、メモリカード21aに格納された他のデータベースを参照するなどして選択してもよい。いずれの場合であっても、メンテナンス用プログラムP41が、機種に応じた制御用プログラムP21(制御用データD21)を特定可能であれば、略同様の効果が得られる。なお、機種のラインナップは、需要や業績などによって変更される。したがって、機種選択用のプログラムは、書き換えが難しいROM12ではなく、本実施形態のように、メモリカード21aに格納する方が望ましい。
【0077】
また、上記では、FEEPROM11からの起動処理およびメモリカード・ドライブ21からの起動処理以外の起動処理として、シリアルポート18aからの制御用プログラムP21転送のみを説明したが、これに限るものではない。例えば、他のドライブなど、I/Oユニットが接続されている場合は、他のドライブから起動してもよい。また、プログラマブル表示器4の試作時など、FEEPROM11が完成していない場合などに備えて、ROM12は、FEEPROM11から起動できないとき、ROMエミュレータからの起動を試みる方が望ましい。
【0078】
なお、本実施形態では、リセット処理前後で値を維持可能なレジスタとしてフラグ記憶部23を実現しているが、これに限るものではない。ただし、プログラマブル表示器4では、同時にアクセス可能なアドレス領域が制限されていることが多く、例えば、メンテナンス用のプログラムと制御用のプログラムとなど、用途(動作時期)の異なる複数のプログラムを順次実行する場合、一度リセットして、それぞれ用のアドレス領域を切り換えることが多い。ところが、本実施形態のように、リセット処理前後でフラグの値を維持すれば、このような場合であっても、何ら支障なく、メモリカード・ドライブ21からの起動を1度に制限できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、制御システム全体の要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記制御システムにおいて、プログラマブル表示器の要部構成を示すブロック図である。
【図3】上記プログラマブル表示器の表示画面例を示す説明図である。
【図4】上記プログラマブル表示器において、メモリカード・ドライブからの起動を指示する際に操作される入力領域を示す説明図である。
【図5】上記プログラマブル表示器を示す斜視図である。
【図6】上記プログラマブル表示器の背面を示す平面図である。
【図7】上記制御システムの動作を示すものであり、メモリカード参照時を示すフローチャートである。
【図8】上記制御システムの動作を示すものであり、メモリカード書き込み時を示すフローチャートである。
【図9】上記プログラマブル表示器の動作を示すものであり、プログラマブル表示器への操作と起動ドライブとの関係を示すタイミングチャートである。
【図10】上記プログラマブル表示器の動作を示すフローチャートである。
【図11】上記プログラマブル表示器の表示画面例を示す説明図である。
【図12】従来例を示すものであり、制御システム全体の要部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0080】
4 プログラマブル表示器
5 LAN(ネットワーク)
11 FEEPROM(通常起動デバイス)
16 タッチパネル(入力手段)
21 メモリカード・ドライブ
21a メモリカード
23 フラグ記憶部(起動制御手段)
42 共通プロトコルIF部(通信手段)
45 カードアクセス処理部(カードアクセス手段)
P11 カード起動プログラム(カード起動手段)
P31 フラグチェックプログラム(起動制御手段)
P34 フラグ設定プログラム(起動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続可能な通信手段と、アクセス可能なメモリカードを交換可能なメモリカード・ドライブとを有するプログラマブル表示器であって、
上記メモリカード・ドライブがメモリカードにアクセス可能な場合、当該メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、指示されたファイル名のファイルの内容を読み出すカードアクセス手段を備え、
上記通信手段は、上記ネットワークを介し、ファイル名を含むアクセス要求を受け取った場合、上記カードアクセス手段に、当該ファイル名のファイルの内容を読み出すように指示すると共に、読み出したファイルの内容を、上記ネットワークを介し、上記アクセス要求の送信元へ返送するものであり、
起動する際、上記メモリカード・ドライブがアクセス可能なメモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、予め定められた特定ファイル名のファイルを起動プログラムとして読み込んで起動するカード起動手段と、
上記メモリカード・ドライブとは別に設けられ、制御用プログラムが格納された通常起動デバイスと、
入力手段が予め定められた特定操作を受け付けた場合、上記メモリカード・ドライブから起動し、かつ、次に上記予め定められた特定操作を上記入力手段が受け付けるまでは、上記通常起動デバイスから起動する起動制御手段とをさらに備えていることを特徴とするプログラマブル表示器。
【請求項2】
ネットワークに接続可能な通信手段と、アクセス可能なメモリカードを交換可能なメモリカード・ドライブとを有するプログラマブル表示器であって、
上記メモリカード・ドライブがメモリカードにアクセス可能な場合、当該メモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、指示されたファイル名のファイルに、指示されたデータを書き込むカードアクセス手段を備え、
上記通信手段は、上記ネットワークを介し、ファイル名と書き込みデータとを含むアクセス要求を受け取った場合、上記カードアクセス手段に、当該ファイル名のファイルに上記書き込みデータを書き込むように指示するものであり、
起動する際、上記メモリカード・ドライブがアクセス可能なメモリカード上に構築されたファイルシステム内の各ファイルのうち、予め定められた特定ファイル名のファイルを起動プログラムとして読み込んで起動するカード起動手段と、
上記メモリカード・ドライブとは別に設けられ、制御用プログラムが格納された通常起動デバイスと、
入力手段が予め定められた特定操作を受け付けた場合、上記メモリカード・ドライブから起動し、かつ、次に上記予め定められた特定操作を上記入力手段が受け付けるまでは、上記通常起動デバイスから起動する起動制御手段とをさらに備えていることを特徴とするプログラマブル表示器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−79596(P2006−79596A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228761(P2005−228761)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【分割の表示】特願2000−186798(P2000−186798)の分割
【原出願日】平成12年6月21日(2000.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【Fターム(参考)】