説明

プロジェクタ付撮像装置

【課題】 撮像機構と投影機構を同時に動作させることがなく投影画像に投影環境に応じた補正を行うことができるプロジェクタ付撮像装置を提供する。
【解決手段】 投影画像を投影面に投影する投影部40と、撮像部と、前記投影画像の投影前に前記撮像部により撮像された前記投影面の撮像画像から画質補正量を算出する補正量算出部34と、前記画質補正量を用いて前記投影画像を補正する画像処理部36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ付撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタを備える撮像装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような撮像装置においては、プロジェクタにより投影された投影画像を撮像し、そのデータに基づいて投影環境に応じた自動露出補正(AE)またはオートホワイトバランス補正(AWB)を行っている。
【特許文献1】特開2004−128575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この撮像装置においては投影画像を撮像するため、投影機構と撮像機構とを同時に動作させる必要があった。
【0004】
本発明の目的は、撮像機構と投影機構を同時に動作させることなく投影画像に投影環境に応じた補正を行うことができるプロジェクタ付撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプロジェクタ付撮像装置は、投影画像を投影面に投影する投影部と、撮像部と、前記投影画像の投影前に前記撮像部により撮像された前記投影面の撮像画像から画質補正量を算出する補正量算出部と、前記画質補正量を用いて前記投影画像を補正する画像処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプロジェクタ付撮像装置によれば、投影画像を投影しているときに撮像を行うことなく投影画像に対して投影環境に応じた補正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラについて説明する。図1は第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの外観を示す斜視図である。カメラ2の前面には撮影レンズ4、カメラ2と被写体または投影面との距離を赤外光等により測定する測距部6が備えられ、カメラ2の側面には、投影画像を投影するための投影レンズ8が備えられている。また、カメラ2の上面にはカメラ2の電源のON/OFFを行う電源スイッチ10、レリーズ動作を指示するシャッタボタン12が備えられている。
【0008】
図2は第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの背面の構成を示す図である。カメラ2の背面には撮像された画像の表示、撮像された画像に基づいて求められた投影面における投影可能領域、投影不可領域の表示、投影不可である場合の警告等を表示するLCD表示部14、画像投影モード、投影画像の選択等を行うマルチセレクタ16、画像の再生を指示する再生ボタン18、画像の再生の停止を指示する停止ボタン20、投影面における投影画像のサイズの調整を行うズームボタン22が備えられている。
【0009】
図3は第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラのシステム構成を示すブロック図である。カメラ2にはCPU24が設けられており、CPU24には、測距部6、操作部26、LCD表示部14の表示制御を行うモニタ表示制御部28、撮影レンズ4を介した被写体光を撮像して撮像信号(蓄積電荷としてのアナログ信号)を生成するCCD或いはCMOS等により構成される撮像素子30、図示しないA/D変換部において撮像素子30から出力された撮像信号に対して、A/D変換を行うことにより生成された画像データを一時的に記憶する画像データ記憶部32、投影面を撮像した画像データから投影画像に対する露出補正、ホワイトバランス補正、周辺光量調整、シェーディング補正、ダイナミックレンジ補正等に係る画質補正量を算出する補正量算出部34、画像データに露出補正、ホワイトバランス補正、周辺光量調整、シェーディング補正、ダイナミックレンジ補正、輪郭補償、ガンマ補正等の画像処理を施す画像処理部36、撮影画像及び投影画像を記憶するメモリカード38、画像を投影する投影光学系を備える投影部40が接続されている。
【0010】
ここで、操作部26は、電源スイッチ10、シャッタボタン12、マルチセレクタ16、再生ボタン18、停止ボタン20、ズームボタン22等を含み、投影部40は、光源であるLED42の点灯及び消灯を行う電源制御部44、投影する画像を表示するLCOS(反射型液晶素子)46の表示制御を行う投影制御部48を備えている。
【0011】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの処理について説明する。マルチセレクタ16の操作により画像の投影が選択されると、投影面に対して撮影レンズ4及び測距部6が設けられたカメラ2の前面を対向させた状態で測距部6によりカメラ2と投影面との距離を測定し(ステップS1)、測定された距離に基づいて投影面上での投影画像のサイズである投影画角を決定する(ステップS2)。次に、投影面におけるステップS2で決定した投影画角を含む領域について撮像し(ステップS3)、撮像した画像データを画像データ記憶部32に一時的に記憶する。ここで、投影面を撮像した画像データの色味等から投影画像を補正して投影することが可能であるか判定する(ステップS4)。
【0012】
補正が可能であると判定された場合には、環境光等の投影環境に基づく影響を補正するための画質調整補正量Aを算出する(ステップS5)。即ち、画像データ記憶部32に記憶された投影面の画像データに基づいて、補正量算出部34により露出補正、ホワイトバランス補正、周辺光量調整、シェーディング補正に係る画質調整補正量Aを算出する。次に算出された画質調整補正量Aから撮影レンズ4及び撮像素子30を含む撮像機構の特性をキャンセルするための補正量Bを考慮した画質調整補正量Cを算出する(ステップS6)。ここで、撮像機構に係る補正量Bには、撮影レンズ4の特性に係る影響を考慮した露出補正、周辺光量調整及びホワイトバランス補正、撮像素子30の特性に係る影響を考慮したシェーディング補正等の画質調整パラメタに係る補正量が含まれる。次に、算出された画質調整補正量Cに投影レンズ8及びLCOS46を含む投影機構の特性をキャンセルするための補正量Dを考慮した画質調整補正量Eを算出する(ステップS7)。ここで、投影機構に係る補正量Dには、投影レンズ8の特性に係る影響を考慮した周辺光量調整及びホワイトバランス補正、LCOS46の特性に係る影響を考慮してシェーディング補正等の画質調整パラメタに係る補正量が含まれる。
【0013】
画像処理部36はメモリカード38から読み出した画像データに画質調整補正量Eを用いて補正を施し(ステップS8)、LCOS46に表示する。そして、ユーザは投影レンズ8が設けられた面が投影面に対向するようにカメラ2の向きを変え、LCOS46に表示された画像をLED42から射出された光により読み出し投影面に投影する(ステップS9)。
【0014】
また、ステップS4において投影面の色味等、投影環境の影響によって投影画像に補正を行っても投影ができないと判定された場合、画像の投影を行わず、LCD表示部14への警告の表示、または警告音等による警告報知を行う(ステップS10)。
【0015】
本実施の形態によれば、投影画像を投影しているときに撮像を行うことなく投影画像に投影環境に応じた補正を行うことができる。また、撮影レンズと投影レンズを同じ面に設ける必要がないためプロジェクタ付撮像装置の小型化を図ることができる。
【0016】
なお、投影面の明暗差が大きい場合、投影面に色が異なる部分がある場合等にはダイナミックレンジ補正を行う。この場合には、ステップS3において画像データ記憶部32に記憶された投影面の画像データに基づいて、例えば、投影面を照射する照明光の影響により投影面に明るい領域と暗い領域とがある場合に、暗い領域に投影されることになる部分は明るく投影されるように画像データに対して階調補正を行う。
【0017】
そして、ステップS9における投影前に、LCD表示部14に投影面を撮像した画像を表示し、この画像上に投影面の特徴ある部分を目標として投影するために目標マークの表示を行う。また、投影する際には投影面の特徴ある部分に位置合わせ用の指標が投影されるように位置合わせ用の指標を投影画像と共にLCOS46に表示する。例えば、投影面を照射する照明光等の影響により投影面に明るい部分と暗い部分とがある場合に、LCD表示部14において明るい領域と暗い領域との境界に目標マークを投影面を撮像した画像と共に表示し、LCOS46において明るい領域に投影する投影画像と暗い領域に投影する投影画像の境界に位置合わせ用の指標を表示する。従って、ユーザは、LCD表示部14に表示されている目標マークの位置を参照して、投影面に投影された位置合わせ用の指標の位置を調整することにより、適切な位置に投影画像の投影を行うことができる。
【0018】
また、画像データ記憶部32に記憶された投影面の画像データに基づいて、投影面に部分的な色の違いがあると判定した場合には、色の違いがある領域に投影されることになる部分の画像データに対して投影面の色の違いをキャンセルする補正を行う。また、LCD表示部14に投影面の特徴ある部分を目標として投影するために目標マークを投影面を撮像した画像と共に表示し、LCOS46に目標マークに対応する位置に位置合わせ用の指標を投影画像と共に表示し投影する。従って、投影面に部分的な色の違いがある場合等でも、投影画角内のアドレスに関連付けて画像データの補正を精度よく行うことができる。
【0019】
また、画像データ記憶部32に記憶された投影面の画像データに基づいて、投影面の部分的な色の違いが色味等の影響により投影に適さないものであると判定した場合には、投影に適さない領域を投影不可位置、それ以外の領域を投影可能位置としてLCD表示部14に表示してもよい。
【0020】
また、投影面に明るい部分と暗い部分とがある場合を例に説明したが、特徴ある部分は投影面である壁の角度が変化する場所、部屋の隅にある柱等であってもよい。
【0021】
また、本実施の形態において投影環境に基づく影響を補正するための補正量、撮像機構の特性をキャンセルするための補正量、投影機構の特性をキャンセルするための補正量を分けて算出する。そのため、視聴者が投影面における画像を環境光に順応して無意識に色の補正を行って投影画像を認識することを考慮して、環境光等の投影環境に基づく影響を完全に補正せず、多少投影環境に基づく影響を残した補正を行うこともできる。
【0022】
例えば、投影面が赤いランプの照射下にある場合にステップS5において環境光の影響を完全に補正して投影すると、視聴者は無意識に色の補正を行って認識するため投影面に投影された画像を不自然に感じる場合がある。そこで、画像データ記憶部32に記憶された投影面の画像データに基づいて、環境光等の投影環境に基づく影響を補正するための画質調整補正量AをステップS5において算出する際に赤いランプの影響を多少残した補正量Aを算出する。そして、ステップS6において撮像機構の特性をキャンセルするための画質調整補正量Cを算出し、ステップS7において投影機構の特性をキャンセルするための画質調整補正量Eを算出する。画質調整補正量Eは赤いランプの影響を多少残した補正量となっているため、ステップS8において画質調整補正量Eを用いて赤いランプの影響を多少残した補正を投影画像の画像データに対して行うことができる。
【0023】
また、画像データ記憶部32に記憶された投影面の画像データに基づいて、投影環境が野外であると判定された場合には、投影環境が屋内よりも明るいため、投影面を撮像した画像データに基づいて投影を行わずに警告の報知を行うか、またはLED42から射出される光の光量を上げて投影を行う。
【0024】
また、カメラ2と投影面との距離の測定及び投影面の撮像の後、投影する際にユーザがカメラ2の向きを変えるため、ステップS9における投影前にズームボタン22により投影面における投影画像のサイズやピントを調整してもよい。
【0025】
また、カメラ2に加速度センサを設けることにより、ユーザがカメラ2の向きが変えたことを検出してから投影をするようにしてもよい。この場合には、カメラ2の向きを変える際に人の目に投影に係る光が誤って向けられることを防ぐことができる。
【0026】
また、メモリカードに撮影画像及び投影画像を記憶する構成を例に説明したが、カード状の記憶媒体に限られず、ハードディスク、CD、DVD等であってもよい。
【0027】
なお、本実施の形態ではステップS9において撮像機構を動作させた後に投影機構を動作させる前にカメラの向きを変えて投影を行う例について説明したが、撮影レンズをカメラの前面に設け、投影レンズが前方を向くように回転可能にカメラの側面または上面等に設けてもよい。この場合には、撮像機構を動作させた後に投影機構を動作させる前にカメラの前面に投影レンズが位置するように回転させ投影を行う。そのため、撮像機構を動作させた後に投影機構を動作させる前にカメラの向きを変える必要がなく、投影画角内のアドレスに関連付けて行うダイナミックレンジ補正等を更に精度よく行うことができる。
【0028】
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラについて説明する。第1の実施の形態においては投影レンズと撮影レンズとがそれぞれカメラ2の筐体の側面と前面に設けられる構成として説明したが、第2の実施の形態においてはカメラに設けられた投影レンズと撮影レンズとを共通にしたものである。従って、上述のカメラ2と同一の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて詳細に説明する。また、上述のカメラ2の構成と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0029】
図5は、第2の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの断面を示す図である。カメラ50は、投影レンズと撮影レンズを共通化したレンズ52、撮像機構に係る撮像素子30、投影機構に係るLED42、LED42から射出された光を略平行とするための集光レンズ54、投影画像の表示を行うLCOS46、入射した光をP偏光成分の光とS偏光成分の光とに分離する偏光ビームスプリッタ56、レンズ52を介して入射する被写体光を撮像素子30へ進行させるミラー58及びミラー60を備えている。なお、ミラー58は回転可能に設けられ、撮像の際にはレンズ52と偏光ビームスプリッタ56との間に位置し、投影の際にはレンズ52と偏光ビームスプリッタ56との間から退避するように取り付けられている。
【0030】
本実施の形態に係るプロジェクタ付カメラのシステム構成は図3に示すブロック図と同様である。また、本実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの処理は図4に示すフローチャートに示した処理と同様に行うが、投影レンズと撮影レンズとを共通化するためステップS6における撮像機構に係る補正量Bのうち撮影レンズの特性に係る画質調整パラメタの補正量は考慮せずに画質調整補正量Cを算出し、ステップS7における投影機構に係る補正量Dのうち投影レンズの特性に係る画質調整パラメタの補正量を考慮せずに画質調整補正量Eを算出する。また、ステップS9における投影前にミラー58をレンズ52と偏光ビームスプリッタ56との間から退避させる。
【0031】
本実施の形態に係るプロジェクタ付撮像装置によれば、投影レンズと撮影レンズを共通化するためステップS9において画像の投影を行う際に投影レンズが設けられた面が投影面に対向するようにカメラの向きを変える必要がない。そのため、投影画角内のアドレスに関連付けて行うダイナミックレンジ補正等を更に高い精度で行うことができる。
【0032】
なお、上述の各実施の形態においては反射型液晶素子を例に説明したが、透過型液晶素子を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの背面の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラのシステム構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタ付カメラの断面を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
2…カメラ、4…撮影レンズ、6…測距部、8…投影レンズ、30…撮像素子、32…画像データ記憶部、34…補正量算出部、36…画像処理部、40…投影部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影画像を投影面に投影する投影部と、
撮像部と、
前記投影画像の投影前に前記撮像部により撮像された前記投影面の撮像画像から画質補正量を算出する補正量算出部と、
前記画質補正量を用いて前記投影画像を補正する画像処理部と
を備えることを特徴とするプロジェクタ付撮像装置。
【請求項2】
前記補正量算出部は、前記撮像部が有する特性に係る画質変化を考慮して前記画質補正量を算出することを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ付撮像装置。
【請求項3】
前記補正量算出部は、前記投影部が有する特性に係る画質変化を考慮して前記画質補正量を算出することを特徴とする請求項1または2記載のプロジェクタ付撮像装置。
【請求項4】
前記画質補正量は、ホワイトバランス補正、露出補正、シェーディング補正、周辺光調整及びダイナミックレンジ補正の中の少なくとも1つに関する補正量であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のプロジェクタ付撮像装置。
【請求項5】
前記画像処理部により前記投影画像に前記画質補正量を用いた補正を行うことができない場合には警告を行う警告手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のプロジェクタ付撮像装置。
【請求項6】
前記撮像画像から求められた投影可能位置と投影不可位置の少なくとも一方を前記撮像画像と共に表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のプロジェクタ付撮像装置。
【請求項7】
前記投影部は前記投影面に位置合わせ用の指標を前記投影画像と共に投影することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のプロジェクタ付撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−16476(P2010−16476A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172515(P2008−172515)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】