説明

プロジェクタ

【課題】光源を車両のヘッドライト又は投写映像用の光源として機能させることができるプロジェクタを得る。
【解決手段】光源11からの光を変調して映像光を射出する液晶ライトバルブ12と、液晶ライトバルブ12により射出された映像光を拡大投写する投写光学系13と、操作内容に応じた操作信号を入力するための操作部4とを備え、少なくとも光源11、液晶ライトバルブ12、及び投写光学系13は、車両2のヘッドライトに搭載され、操作部4は、光源11を車両2のヘッドライトとして機能させるヘッドライトモードを選択する操作信号、又は光源11を投写映像用の光源として機能させるプロジェクタモードを選択する操作信号を映像信号処理部32へ出力し、映像信号処理部32は、ヘッドライトモード選択操作信号が入力されると、白色光を投写させる映像信号を生成し、プロジェクタモード選択操作信号が入力されると投写映像用の映像信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源を車両のヘッドライト又は投写映像用の光源として機能させるプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクタとしては、例えば、「外部光源からの光をバックライトとして入射させる液晶ディスプレイと、この液晶ディスプレイを通過した光で構成される映像をスクリーンに拡大投射表示する投影レンズと、上記外部光源の高さに合わせて高さを調節する調節機構と、装置の固定枠に取り付ける固定脚とを有することを特徴とする投射表示装置」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−43781号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、プロジェクタを屋外で使用する場合、プロジェクタを屋外に運搬する必要があった。特に大型スクリーンに使用する高輝度モデルはその重量が重いため運搬が大変であった。また、プロジェクタに電源を供給するため、ケーブルを当該プロジェクタまで敷設する必要があり、屋外でのプロジェクタの使用はその準備に大変な労力を要する、という問題点があった。
【0005】
また、上記特許文献1には、例えば自動車のヘッドライトを外部光源として使用するものが提案されているが、投写表示装置と光源とが別体となっているので、使用する度に投写表示装置を設置し、調節機構などにより高さを調節する必要があり、ヘッドライトを映像投写用の光源として使用するにはその準備が非常に煩雑である、という問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、プロジェクタの運搬の労力を軽減することができ、煩わしい設置準備を行うことなく、光源を車両のヘッドライト又は投写映像用の光源として機能させることができるプロジェクタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプロジェクタは、光源と、入力映像信号に基づいて投写映像用の映像信号を生成する映像信号処理部と、前記映像信号処理部により生成された映像信号に基づき、前記光源から射出された光束を変調する光変調部と、前記光変調部により変調された光束を拡大投写する投写光学系と、操作内容に応じた操作信号を入力するための操作部とを備え、少なくとも前記光源、前記光変調部及び前記投写光学系は、車両のヘッドライトに搭載され、前記操作部は、前記光源を前記ヘッドライトとして機能させるヘッドライトモード又は前記光源を投写映像用の光源として機能させるプロジェクタモードを選択させる操作信号を前記映像信号処理部へ出力し、前記映像信号処理部は、前記ヘッドライトモードが選択されると、白色光を投写させる映像信号を生成し、前記プロジェクタモードが選択されると、前記投写映像用の映像信号を生成するものである。
本発明においては、少なくとも前記光源、前記光変調部、及び前記投写光学系は、車両のヘッドライト搭載部分に搭載され、ヘッドライトモードにおいては白色光を投写し、プロジェクタモードにおいては投写映像を投写するので、プロジェクタの運搬の労力を軽減することができ、煩わしい設置準備を行うことなく、光源を車両のヘッドライト又は投写映像用の光源として機能させることができる
【0008】
本発明に係るプロジェクタは、前記投写光学系から射出される投写光の一部を反射するミラーと、前記ミラーを回動させて前記投写光の反射角を変化させるミラー駆動部と、前記操作部からの操作信号に応じて、前記ミラー駆動部を制御するミラー制御部とを更に備え、前記操作部は、前記ヘッドライトモード又は前記プロジェクタモードを選択させる操作信号を前記ミラー制御部へ出力し、前記ミラー制御部は、前記ヘッドライトモードが選択され、且つ、前記ミラーの前記反射角が所定又は任意の反射角にないとき、前記ミラー駆動部を駆動させて前記ミラーの前記反射角を当該所定又は任意の反射角となるように制御し、前記プロジェクタモードが選択されると、前記ミラー駆動部を駆動させて前記ミラーが前記投写光を反射しないようにするものである。
本発明においては、ヘッドライトモードのとき、ミラーの反射角を所定又は任意の反射角となるようにし、プロジェクタモードのとき、ミラーが投写光を反射しないようにするので、ヘッドライト機能時には白色光をヘッドライトに適した範囲に照射することができ、プロジェクタ機能時には投写映像光を反射することなく投写することができる。
【0009】
本発明に係るプロジェクタは、前記投写光学系から射出される光束の光軸の角度を変化させる光軸駆動部と、前記操作部からの操作信号に応じて、前記光軸駆動部を制御する光軸制御部とを更に備え、前記操作部は、前記ヘッドライトモード又は前記プロジェクタモードを選択させる操作信号を前記光軸制御部へ出力し、前記光軸制御部は、前記ヘッドライトモードが選択され、且つ、前記投写光の光軸が所定又は任意の角度にないとき、前記光軸駆動部を駆動させて前記投写光の光軸が当該所定の角度となるように制御し、前記プロジェクタモードが選択されると、前記光軸駆動部を駆動させて、前記投写光の光軸が、前記ヘッドライトモードにおける前記投写光の光軸に対し、所定の仰角となるようにするものである。
本発明においては、投写光の光軸の角度を、ヘッドライトモード及びプロジェクタモードにおいてそれぞれ所定又は任意の角度となるようにするので、ヘッドライト機能時には白色光をヘッドライトに適した光軸の角度で照射することができ、プロジェクタ機能時には投写映像光を投写するのに適した光軸の角度で投写することができる。
【0010】
本発明に係るプロジェクタにおいては、前記操作部は、電源オン操作、電源オフ操作、及び前記ヘッドライトモード選択操作の少なくとも1つの操作がされると、前記ヘッドライトモードを選択させる操作信号を前記ミラー制御部に出力するものである。
本発明においては、操作部により、電源オン操作、電源オフ操作、及びヘッドライトモードを選択する旨の操作がなされるとヘッドライトモードを選択することができる。
【0011】
本発明に係るプロジェクタにおいては、前記操作部は、電源オン操作、電源オフ操作、及び前記ヘッドライトモード選択操作の少なくとも1つの操作がされると、前記ヘッドライトモードを選択させる操作信号を前記光軸制御部に出力するものである。
本発明においては、操作部により、電源オン操作、電源オフ操作、及びヘッドライトモードを選択する旨の操作がなされるとヘッドライトモードを選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施形態1.
図1は実施形態1に係るプロジェクタの構成、図2は実施形態1に係るプロジェクタの光学系構成図、図3は実施形態1に係るミラーによる投写光の反射を説明する図である。
図に示すように、プロジェクタ本体1は、光源11と、光源11からの光束を変調する光変調部である液晶ライトバルブ12R、12G、12B(以下、区別しない場合は単に「液晶ライトバルブ12」という)と、液晶ライトバルブ12により変調された光束を拡大投写する投写光学系13と、液晶ライトバルブ12を駆動する液晶ライトバルブ駆動部14と、制御部20と、映像入力部31と、入力された入力映像信号に基づいて投写映像用の映像信号を生成する映像信号処理部32と、フレームメモリ33と、操作信号処理部43と、記憶部45とを備えている。
プロジェクタ本体1は、図3に示すように、自動車などの車両2のヘッドライトに搭載される。尚、本実施形態1では、プロジェクタ本体1が車両2のヘッドライト搭載部分に搭載される場合を説明するが、本発明はこれに限らず、少なくとも光源11、液晶ライトバルブ12、及び投写光学系13が、車両2のヘッドライト搭載部分に搭載されていれば良い。
【0013】
さらに、本実施形態1に係るプロジェクタは、プロジェクタ本体1に映像信号を供給する映像供給装置3と、操作内容に応じた操作信号を入力するための操作部4と、投写光学系13から射出される投写光の一部を反射するミラー5と、ミラー5を回動させて投写光の反射角を変化させるミラー駆動部52と、操作部4からの操作信号に応じて、ミラー駆動部52を制御するミラー制御部51とを備えている。プロジェクタの各構成機器への電源供給は、例えば車両2の車載バッテリーを利用することができる。当該プロジェクタは、後述する動作により、定常状態若しくは操作部4の操作により光源11を車両2のヘッドライトとして、又は操作部4の操作により投写映像用の光源として機能させることができる。したがって、別途装置や部材などを設置・調整するなどの煩わしい準備を行うことなく、例えば屋外の任意のスクリーン(ビルディングの壁等)に映像を投写することができ、ユーザは車両2の外又は搭乗した状態で投写映像を鑑賞することができるものである。
【0014】
制御部20は、映像信号処理部32、操作信号処理部43及び記憶部45と接続されている。この制御部20は、マイクロプロセッサ等により構成され、記憶部45に記憶された制御プログラム等を実行することで、プロジェクタ本体1の動作を統括制御し、制御部20に接続された各部から入力される各種データを演算するとともに、演算結果を前記各部に出力する。また、制御部20は、後述する動作により、操作信号処理部43から入力された操作信号を映像信号処理部32へ出力する。
【0015】
映像入力部31は、映像供給装置3からの映像信号が入力され、例えばアナログ映像信号の場合にはデジタルの映像信号に変換する等、入力映像信号に対応した各種信号処理を施して映像信号処理部32にそれぞれ出力する。尚、映像供給装置3から入力される映像信号としては、例えばDVD(digital versatile disc)プレーヤやテレビジョン受信機から出力されたコンポジット映像信号などの映像信号や、パーソナルコンピュータから出力されたRGB信号が供給される。
尚、DVDプレーヤやテレビジョン受信機から出力される音声信号は、車両2に搭載された車載スピーカにより音声が出力される。また、音声信号を無線信号に変換するFM送信機等を介して、FM受信機等により音声を出力しても良い。
【0016】
映像信号処理部32は、例えばマイクロプロセッサ等の信号処理回路から構成され、それに内蔵した記憶部に格納された制御プログラムを実行することにより後述する各種の処理を行う。また、映像信号処理部32にはフレームメモリ33が接続されており、映像入力部31からの映像信号を1フレーム(1映像画面)毎にフレームメモリ33に記憶させるとともに、フレームメモリ33に記憶された映像(以下、フレーム映像ともいう)を読み出す機能を有す。また、映像信号の解像度を液晶ライトバルブ12の解像度に合わせる解像度変換処理等の各種の信号処理を施す。
【0017】
記憶部45は、制御部20が実行する制御プログラムを記憶するとともに、プロジェクタ本体1の各種設定値等を記憶する。
【0018】
操作部4は、電源オン/オフ操作キー、入力切り替えキー、ヘッドライトモード選択キー、プロジェクタモード選択キーなどの各種スイッチ類を有し、ユーザによるキー操作に応じた操作信号を操作信号処理部43及びミラー制御部51に出力する。操作信号処理部43は、操作部4から入力された操作信号を受信し、これを制御部20に出力する。この操作部4は、例えば車両2内のインスツルメントパネルなどに配置される。
【0019】
液晶ライトバルブ12R、12G、12Bには、複数の画素(図示せず)がマトリクス状に形成されており、液晶ライトバルブ駆動部14により各画素の透過率が調整されることにより、光源11から射出された光束を変調する。液晶ライトバルブ12から射出された光束は、投写光学系13によってスクリーン上に拡大投写される。
次に、この液晶ライトバルブ12及び投写光学系13の構成については説明する。
【0020】
図2に示すように、プロジェクタの光学系は、光線束を射出する光源11の点灯制御を行う点灯装置100と、照明光学装置120と、ダイクロイックミラー210,212と、反射ミラー220,222,224と、入射側レンズ230と、リレーレンズ232と、3枚のフィールドレンズ240,242,244と、3枚の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bと、各液晶ライトバルブ12の射出側及び入射側にそれぞれ配置された偏光板251,253,255,256,257,258と、クロスダイクロイックプリズム260と投射レンズ270とを備えている。
【0021】
光源11は、放射状の光線を射出するランプ111と反射鏡112とから構成されている。光源11から放射された光は照明光学装置120でその輝度が均一化された後、重畳レンズ160に入る。重畳レンズ160は、照明光学装置120から照射された均一光を液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのパネル面へ入射させる。
【0022】
さらに、2枚のダイクロイックミラー210,212は、重畳レンズ160から射出された光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離する色光分離光学系214を構成している。
第1のダイクロイックミラー210は、コンデンサレンズ160から射出された光の赤色光成分を透過させるとともに、青色光成分と緑色光成分とを反射する。第1のダイクロイックミラー210を透過した赤色光は、反射ミラー220で反射され、フィールドレンズ240を通って赤光用の液晶ライトバルブ12Rに達する。このフィールドレンズ240は、通過した各部分光線束が、各部分光線束の主光線(中心軸)に平行な光束となるように集光する機能を有している。他の液晶ライトバルブの前に設けられたフィールドレンズ242,244も同様に作用する。
【0023】
第1のダイクロイックミラー210で反射された青色光と緑色光のうちで、緑色光は第2のダイクロイックミラー212によって反射され、フィールドレンズ242を通って緑光用の液晶ライトバルブ12Gに達する。一方、青色光は、第2のダイクロイックミラー212を透過し、入射側レンズ230と、リレーレンズ232および反射ミラー222,224を備えたリレーレンズ系を通過する。リレーレンズ系を通過した青色光は、さらにフィールドレンズ244を通って青色光用の液晶ライトバルブ12Bに達する。
【0024】
3枚の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、それぞれに入射する各色光を、与えられた映像信号に応じて画像を形成するための光に変換して射出する光変調部としての機能を有する。なお、この液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの光入射側には偏光板256,257,258が有り、また、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの光射出側には偏光板251,253,255がそれぞれ設けられていて、それらにより各色光の偏光方向が調整されている。そして、これらの液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを通過した光は、続いてクロスダイクロイックプリズム260に入る。
【0025】
クロスダイクロイックプリズム260は、3枚の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bから射出された3色の色光を合成する色光合成光学系としての機能を有する。クロスダイクロイックプリズム260には、赤光を反射する誘電体多層膜と、青光を反射する誘電体多層膜とが、4つの直角プリズムの界面に略X字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を投射するための合成光が形成される。クロスダイクロイックプリズム260で生成された合成光は、投射レンズ270に入り、そこから投写光が射出される。これにより車両2の前方に投写光が射出されることとなる。
次に、投写光学系13から射出される投写光の一部を反射するミラー5の配置について説明する。
【0026】
図3(a)はヘッドライトモードにおける投写光の様子を、図3(b)はプロジェクタモードにおける投写光の様子を示す図である。図に示すように、ミラー5は、車両2のヘッドライトに搭載されたプロジェクタ本体1の上部に配置され、その一端が車両2のヘッドライトに回転自在に取り付けられている。また、このミラー5は、例えば駆動モータなどにより構成されるミラー駆動部52により、その一端を中心に所定の角度となるように回動される。そして、後述する動作により、ヘッドライトモード(後述)のとき、図3(a)に示すように、ミラー5は、プロジェクタ本体1の投写光学系13からの投写光を鏡面反射して、当該投写光を車両2前方の路面等に照射する。また、プロジェクタモード(後述)のとき、図3(b)に示すように、ミラー5は、投写光を反射しない角度に回動され、プロジェクタ本体1の投写光学系13からの投写光は、例えば車両2前方に配置されたスクリーン等に投写されることとなる。
【0027】
次に、光源11を車両2のヘッドライトとして機能させるヘッドライトモード、及び光源11を投写映像用の光源として機能させるプロジェクタモードにおける本実施形態1における動作を図4及び図5を用いて次に説明する。
【0028】
図4は実施形態1に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
操作部4は、電源オン操作またはヘッドライトモード選択操作がされると、ヘッドライトモードを選択する操作信号を、ミラー制御部51及び操作信号処理部43を介して制御部20へ出力する(S101)。
ミラー制御部51は、ヘッドライトモードを選択する操作信号が入力されると、ミラー5の反射角がヘッドライトモードにおける所定の反射角(以下「ヘッドライト角」という。)となっているか否かを判断する(S102)。この反射角の判断は、例えばミラー駆動部52から回動角に関する情報を取得しても良いし、前回動作時におけるミラー駆動部52への制御情報を保持することにより現在の反射角を判断しても良い。
そして、ミラー5の反射角がヘッドライト角にないと判断したとき、ミラー制御部51は、ミラー駆動部52を駆動させて、ミラー5の反射角を当該ヘッドライト角となるように回動させる(S103)。一方、ステップS102で、ミラー5の反射角がヘッドライト角にあると判断したときは、ミラー5の回動動作は行わない。
【0029】
また制御部20は、操作信号処理部43から入力されたヘッドライトモードを選択する操作信号を映像信号処理部32へ出力し、映像信号処理部32は、この操作信号が入力されると、白色光を投写させる映像信号、即ち、白画面を表示するための映像信号を生成し、液晶ライトバルブ駆動部14を介して液晶ライトバルブ12に白画面を描画する(液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのそれぞれの透過率を最大にする)。そして、投写光学系13はその白画面を投写する(S104)。
【0030】
次に、制御部20及びミラー制御部51は、プロジェクタモード選択操作信号の有無を判断し(S105)、プロジェクタモード選択操作信号が入力されると、後述するプロジェクタモードに移行する(S106)。尚、白画面を投写後又はプロジェクタモードに移行後、電源オフ操作がなされると、操作部4により、ヘッドライトモード選択操作信号がミラー制御部51に出力され、ミラー制御部51は、上述したステップS102,S103の動作によりミラー5を駆動させる。つまり、電源オン/オフ操作後の定常状態においては、ヘッドライトモードが選択されて、ミラー5の反射角はヘッドライト角となる。
【0031】
このような動作により、ヘッドライトモードにおいては、図3(a)に示したように、プロジェクタ本体1の投写光学系13から白色光が投写され、この白色光をミラー5により所定の反射角で反射することによって、プロジェクタ本体1の光源11を車両2前方の所定範囲を照射するヘッドライトとして機能させることができる。
【0032】
次に、プロジェクタモードの動作について説明する。
図5は実施形態1に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
操作部4は、プロジェクタモード選択操作がされると、プロジェクタモード選択操作信号を、ミラー制御部51及び操作信号処理部43を介して制御部20へ出力する(S111)。
ミラー制御部51は、プロジェクタモード選択操作信号が入力されると、ミラー駆動部52を駆動させて、ミラー5の反射角を、当該ミラー5に投写光が反射しない角度(以下、「映像投写角」という)となるように回動させる(S103)。
【0033】
また制御部20は、操作信号処理部43から入力されたプロジェクタモード選択操作信号を映像信号処理部32へ出力し、映像信号処理部32は、この操作信号が入力されると、映像入力部31から入力された入力映像信号を変換して、投写映像用の映像データを生成して液晶ライトバルブ駆動部14へ出力する。
液晶ライトバルブ駆動部14は、入力された映像データに応じて、液晶ライトバルブ12を駆動する。液晶ライトバルブ12は、液晶ライトバルブ駆動部14により各画素の透過率が調整されることにより、光源11の光を変調して映像光を射出する(S113)。
次に、制御部20及びミラー制御部51は、ヘッドライトモード選択操作信号の有無を判断し(S114)、ヘッドライトモード選択操作信号が入力されると、上述したヘッドライトモードに移行する(S115)。
【0034】
このような動作により、プロジェクタモードにおいては、プロジェクタ本体1の投写光学系13からの投写映像光が、ミラー5により反射することなく車両2前方に投写され、プロジェクタとして機能させることができる。
【0035】
尚、本実施形態1では、ヘッドライトモードにおいて、所定のヘッドライト角で白色光を反射する場合を説明したが、これに限らず、例えば、ヘッドライトのハイビーム又はロービームに対応する反射角を、操作部4のキー操作により選択するようにしても良い。
また、所定の反射角に限らず、例えば、操作部4からの操作に応じて任意の反射角となるように、ミラー5を回動するようにしても良い。
【0036】
以上のように本実施形態1においては、プロジェクタ本体1を車両2のヘッドライトに搭載しているので、車両2の移動によりプロジェクタを運搬することができ、運搬の労力を軽減することができる。また、ヘッドライトモードのときは白色光を投写し、プロジェクタモードのときは投写映像を投写することにより、別途装置や部材などを設置・調整するなどの煩わしい準備を行うことなく、光源11を車両2のヘッドライト又は投写映像用の光源として機能させることができる。
【0037】
また、ヘッドライトモードのとき、ミラー5の反射角を所定の反射角となるようにし、プロジェクタモードのとき、ミラー5が投写光を反射しないようにするので、ヘッドライト機能時には白色光をヘッドライトに適した範囲に照射することができ、プロジェクタ機能時には投写映像光を反射することなく投写することができる。
【0038】
さらに、プロジェクタの各構成機器への電源供給は、車両2の車載バッテリーを利用することができるので、電源供給のためのケーブルを敷設する必要を無くすことができる。
【0039】
実施形態2.
上記実施形態1においては、投写光をミラー5により反射させ、ヘッドライトの照射範囲を調整したが、本実施形態2では、プロジェクタ本体1の設置角度を変化させて、投写光の光軸の角度を変化させることにより、ヘッドライトの照射範囲を調整する。
【0040】
図6は実施形態2に係るプロジェクタの構成を示すブロック図、図7は実施形態2に係る投写光の光軸の角度を説明する図である。図において、本実施形態2に係るプロジェクタは、上述した実施形態1におけるプロジェクタのミラー制御部51、ミラー駆動部52及びミラー5に換えて、投写光学系13から射出される投写光の光軸の角度を変化させる光軸駆動部62と、この光軸駆動部62を制御する光軸制御部61とを備えている。その他の構成については上述した実施形態1と同様である。
【0041】
図7(a)はヘッドライトモードにおける投写光の様子を、図7(b)はプロジェクタモードにおける投写光の様子を示す図である。図に示すように、本実施形態におけるプロジェクタ本体1は、車両2のヘッドライトに搭載され、その投写光の光軸が鉛直方向に回転自在に取り付けられている。また、このプロジェクタ本体1は、例えば駆動モータなどにより構成される光軸駆動部62により、その投写光の光軸の角度が所定の角度となるように回動される。そして、後述する動作により、ヘッドライトモードのとき、図7(a)に示すように、プロジェクタ本体1は、ヘッドライトに適した光軸の角度に回動されて、投写光を車両2前方の路面等に照射する。また、プロジェクタモードのとき、図7(b)に示すように、プロジェクタ本体1は、プロジェクタに適した光軸の角度に回動され、プロジェクタ本体1の投写光学系13からの投写光は、例えば車両2前方に配置されたスクリーン等に投写されることとなる。
次に、本実施形態2における動作を図8及び図9を用いて説明する。
【0042】
図8は実施形態2に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
操作部4は、電源オン操作またはヘッドライトモード選択操作がされると、ヘッドライトモード選択操作信号を、光軸制御部61及び操作信号処理部43を介して制御部20へ出力する(S201)。
光軸制御部61は、ヘッドライトモード選択操作信号が入力されると、投写光の光軸の反射角がヘッドライトモードにおける所定の角度(以下「ヘッドライト角」という。)となっているか否かを判断する(S202)。この角度の判断は、例えば光軸駆動部62から回動角に関する情報を取得しても良いし、前回動作時における光軸駆動部62への制御情報を保持することにより現在の角度を判断しても良い。
そして、投写光の光軸の角度がヘッドライト角にないと判断したとき、光軸制御部61は、光軸駆動部62を駆動させて、投写光の光軸の角度を当該ヘッドライト角となるようにプロジェクタ本体1を回動させる(S203)。一方、ステップS202で、光軸の角度がヘッドライト角にあると判断したときは、プロジェクタ本体1の回動動作は行わない。
【0043】
また制御部20は、操作信号処理部43から入力されたヘッドライトモード選択操作信号を映像信号処理部32へ出力し、映像信号処理部32は、この操作信号が入力されると、白色光を投写させる映像信号、即ち、白画面を表示するための映像信号を生成し、液晶ライトバルブ駆動部14を介して液晶ライトバルブ12に白画面を描画する(液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのそれぞれの透過率を最大にする)。そして、投写光学系13はその白画面を投写する(S204)。
【0044】
次に、制御部20及び光軸制御部61は、プロジェクタモード選択操作信号の有無を判断し(S205)、プロジェクタモード選択操作信号が入力されると、後述するプロジェクタモードに移行する(S206)。尚、白画面を投写後又はプロジェクタモードに移行後、電源オフ操作がなされると、操作部4により、ヘッドライトモード選択操作信号が光軸制御部61に出力され、光軸制御部61は、上述したステップS202,S203の動作によりプロジェクタ本体1を駆動させる。つまり、電源オン/オフ操作後の定常状態においては、ヘッドライトモードが選択されて、プロジェクタ本体1の角度はヘッドライト角となる。
【0045】
このような動作により、ヘッドライトモードにおいては、図7(a)に示したように、プロジェクタ本体1の投写光学系13から白色光が投写され、この白色光の光軸角度を所定の角度とすることによって、プロジェクタ本体1の光源11を車両2前方の所定範囲を照射するヘッドライトとして機能させることができる。
【0046】
次に、プロジェクタモードの動作について説明する。
図9は実施形態2に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
操作部4は、プロジェクタモード選択操作がされると、プロジェクタモード選択操作信号を、光軸制御部61及び操作信号処理部43を介して制御部20へ出力する(S211)。
光軸制御部61は、プロジェクタモード選択操作信号が入力されると、光軸駆動部62を駆動させて、映像投写に適した光軸の角度、即ち、プロジェクタ本体1の投写光の角度を前記ヘッドライト角に対し、仰角となる所定の角度(以下、「映像投写角」という)となるように回動させる(S203)。
【0047】
また制御部20は、操作信号処理部43から入力されたプロジェクタモード選択操作信号を映像信号処理部32へ出力し、映像信号処理部32は、この操作信号が入力されると、映像入力部31から入力された入力映像信号を変換して、投写映像用の映像データを生成して液晶ライトバルブ駆動部14へ出力する。
液晶ライトバルブ駆動部14は、入力された映像データに応じて、液晶ライトバルブ12を駆動する。液晶ライトバルブ12は、液晶ライトバルブ駆動部14により各画素の透過率が調整されることにより、光源11の光を変調して映像光を射出する(S213)。
次に、制御部20及び光軸制御部61は、ヘッドライトモード選択操作信号の有無を判断し(S214)、ヘッドライトモードを選択する操作信号が入力されると、上述したヘッドライトモードに移行する(S215)。
【0048】
このような動作により、プロジェクタモードにおいては、プロジェクタ本体1からの投写光の光軸が、映像投写に適した映像投射角で車両2前方に投写され、プロジェクタとして機能させることができる。
【0049】
尚、本実施形態2では、所定のヘッドライト角又は映像投射角となるように投写光の光軸を変化させる場合を説明したが、これに限らず、例えば、ヘッドライトのハイビーム又はロービームに対応する光軸角度を、操作部4のキー操作により選択するようにしても良い。
また、所定の角度に限らず、例えば、操作部4からの操作に応じて任意の光軸角度となるように、プロジェクタ本体1を回動するようにしても良い。
【0050】
尚、本実施形態2では、ヘッドライト搭載部分に搭載されたプロジェクタ本体1が回動して、投写光の光軸を変化させる場合を説明したが、本発明はこれに限らず、投写光の光軸の角度が変化すれば良く、例えば、光源11、液晶ライトバルブ12及び投写光学系13からなる光学エンジンを回動させて、光軸の角度を変化させても良い。
【0051】
以上のように本実施形態2においては、上述した実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、投写光の光軸の角度を、ヘッドライトモード及びプロジェクタモードにおいてそれぞれ所定の角度となるようにするので、ヘッドライト機能時には白色光をヘッドライトに適した光軸の角度で照射することができ、プロジェクタ機能時には投写映像光を投写するのに適した光軸の角度で投写することができる。
【0052】
尚、上記実施形態1及び2では、液晶ライトバルブ12を用いて、光源11から射出された光を変調したが、本発明はこれに限らず、他の空間光変調器を用いても良く、例えば、半導体基板の上に敷き詰められた微小面積のミラーの傾きを映像データに基づいて制御することによって映像を投写するDMD(Digital Micromirror Device)を用いてもよい。なお、DMDは米国テキサスインスツルメンツ社の登録商標である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1に係るプロジェクタの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態1に係るプロジェクタの光学系構成図である。
【図3】実施形態1に係るミラーによる投写光の反射を説明する図である。
【図4】実施形態1に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
【図5】実施形態1に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2に係るプロジェクタの構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態2に係る投写光の光軸の角度を説明する図である。
【図8】実施形態2に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
【図9】実施形態2に係るプロジェクタモードの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 プロジェクタ本体、2 車両、3 映像供給装置、4 操作部、5 ミラー、11 光源、12R 液晶ライトバルブ、12G 液晶ライトバルブ、12B 液晶ライトバルブ、13 投写光学系、14 液晶ライトバルブ駆動部、20 制御部、31 映像入力部、32 映像信号処理部、33 フレームメモリ、43 操作信号処理部、45 記憶部、51 ミラー制御部、52 ミラー駆動部、61 光軸制御部、62 光軸駆動部、100 点灯装置、111 ランプ、112 反射鏡、120 照明装置、160 重畳レンズ、210 ダイクロイックミラー、212 ダイクロイックミラー、214 色光分離光学系、220 反射ミラー、222 反射ミラー、224 反射ミラー、230 入射側レンズ、232 リレーレンズ、240 フィールドレンズ、242 フィールドレンズ、244 フィールドレンズ、250 液晶パネル、251 偏光板、252 液晶パネル、253 偏光板、254 液晶パネル、255 偏光板、256 偏光板、257 偏光板、258 偏光板、260 クロスダイクロイックプリズム、270 投射レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
入力映像信号に基づいて投写映像用の映像信号を生成する映像信号処理部と、
前記映像信号処理部により生成された映像信号に基づき、前記光源から射出された光束を変調する光変調部と、
前記光変調部により変調された光束を拡大投写する投写光学系と、
操作内容に応じた操作信号を入力するための操作部と
を備え、
少なくとも前記光源、前記光変調部及び前記投写光学系は、車両のヘッドライトに搭載され、
前記操作部は、前記光源を前記ヘッドライトとして機能させるヘッドライトモード又は前記光源を投写映像用の光源として機能させるプロジェクタモードを選択させる操作信号を前記映像信号処理部へ出力し、
前記映像信号処理部は、
前記ヘッドライトモードが選択されると、白色光を投写させる映像信号を生成し、
前記プロジェクタモードが選択されると、前記投写映像用の映像信号を生成することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記投写光学系から射出される投写光の一部を反射するミラーと、
前記ミラーを回動させて前記投写光の反射角を変化させるミラー駆動部と、
前記操作部からの操作信号に応じて、前記ミラー駆動部を制御するミラー制御部と
を更に備え、
前記操作部は、前記ヘッドライトモード又は前記プロジェクタモードを選択させる操作信号を前記ミラー制御部へ出力し、
前記ミラー制御部は、
前記ヘッドライトモードが選択され、且つ、前記ミラーの前記反射角が所定又は任意の反射角にないとき、前記ミラー駆動部を駆動させて前記ミラーの前記反射角を当該所定又は任意の反射角となるように制御し、
前記プロジェクタモードが選択されると、前記ミラー駆動部を駆動させて前記ミラーが前記投写光を反射しないように制御することを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記投写光学系から射出される光束の光軸の角度を変化させる光軸駆動部と、
前記操作部からの操作信号に応じて、前記光軸駆動部を制御する光軸制御部と
を更に備え、
前記操作部は、前記ヘッドライトモード又は前記プロジェクタモードを選択させる操作信号を前記光軸制御部へ出力し、
前記光軸制御部は、
前記ヘッドライトモードが選択され、且つ、前記投写光の光軸が所定又は任意の角度にないとき、前記光軸駆動部を駆動させて前記投写光の光軸が当該所定の角度となるように制御し、
前記プロジェクタモードが選択されると、前記光軸駆動部を駆動させて、前記投写光の光軸が、前記ヘッドライトモードにおける前記投写光の光軸に対し、所定の仰角となるようにすることを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記操作部は、電源オン操作、電源オフ操作、及び前記ヘッドライトモード選択操作の少なくとも1つの操作がされると、前記ヘッドライトモードを選択させる操作信号を前記ミラー制御部に出力することを特徴とする請求項2記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記操作部は、電源オン操作、電源オフ操作、及び前記ヘッドライトモード選択操作の少なくとも1つの操作がされると、前記ヘッドライトモードを選択させる操作信号を前記光軸制御部に出力することを特徴とする請求項3記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−103905(P2009−103905A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275310(P2007−275310)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】