説明

プロセス診断法

産業プロセスで用いられる診断装置(100)は、産業プロセス内の状態あるいは他の出来事を分析または識別するように形成された監視電子機器あるいは診断回路を含む。システムは、流量計などのプロセス装置内、および1つの例である音響式流量計内で実施される。変換器も使用され、共振周波数などの周波数レスポンスが観察される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業プロセスで使用される診断法に関し、特に、産業プロセス内の汚れおよび腐食を検知するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食および汚れは、多くの産業において長年の問題であった。プロセス産業では、腐食および汚れは、流れ領域壁の狭小および縮小の原因となり、狭小および縮小の両方が、管、導管、シリンダ、タンク、圧力容器およびその他類似の構成要素の性能に有害である。さらに、腐食および汚れは、システムに取り付けられた固定装置の破壊および故障の原因となる。システムによっては、このような故障を修理するには非常に費用がかかる。
【0003】
様々な技術が、装置が故障する前に腐食および/または汚れを検知するために採用されてきた。1つの技術は、プロセス構造の外側に専用の腐食および/または汚れ検知装置を取り付けること、プロセス構造の壁を通る流れの向きに対して垂直な超音波信号を送出すること、および詰まりまたは汚れを示す壁の厚さの変化を測定するための反射超音波信号を経時的に検知することである。別の技術は、流体が充満されたコンテナの壁に超音波信号を送出することである。超音波信号は、送信変換器から受信変換器に伝搬する。受信波の分析によって、内壁の腐食の存在が判断される。第3の技術は、流体の流れの中に音響装置を挿入することである。音響装置は適所に固定されてもよいし、流体内に残屑のように浮かべてもよい。この音響装置からパイプ壁の音響サイン(acoustic signature)を引き出すことができる。
【0004】
さらに、いくつかの外部に取り付けられた検知装置が、固定装置のノイズサイン(noise signature)の変化を検知するために提供されてきた。様々なタイプの固定装置(ボイラ、混合器、熱交換器、バルブおよびその他類似の構成要素)のうちのいずれかを通ってプロセス流体が流れると、プロセスノイズサインが生成されることが、従来技術において知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
詰まり、汚れ、あるいは腐食が生じると、プロセスノイズサインつまりプロセスノイズパターンが変化する。残念なことには、従来の汚れおよび腐食検知装置および検知技術は、既存の監視および制御装置とは分離した専用の検知装置を必要とする。既存の監視および制御システムに前述のような装置を追加することは費用がかかる。当業者は、専用装置を必要としない固定装置の汚れおよび/または腐食を検知するためのシステムおよび装置を必要とし続けている。本発明の実施例は、これらおよび他の問題の解決策を提供し、従来技術以上の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
産業プロセスで使用する診断装置は、産業プロセスの状態あるいは他の出来事を分析または識別するように構成された監視電子機器または診断回路を含む。システムは、流量計などのプロセス装置内、および1つの例である音響式流量計内で使用される。変換器も使用され、共振周波数などの周波数レスポンスが観察される。診断方法もまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
従来の既知の流量計は、一般的に、パイプ内を流れる流体から自然に起きる渦の発生および伝播を検知するために音響センサを利用している。外部パイプ壁に沿って配置された音響センサは、渦によって発生した音響パターンに基づいて前述のような渦を識別して追跡し、パイプを通る流量がそれらのパターンに基づいて計算される。通常は、前述のような音響検知システムは、少なくとも毎秒3フィートの速度を有する乱流を必要とする。
【0008】
さらに、産業プロセス内の装置が、プロセスノイズを発生させる傾向にあることは従来技術において知られている。典型的には、現場装置は、測定される音響データから所望の測定値を抽出するために、センサにプロセスノイズが入らないようにするか、プロセスノイズをフィルタするように設計されている。本発明は、固定装置、または(タービン、ポンプ、ロータ、混合器、および他の回転または往復運動装置、熱交換器、バルブ、温度計保護管、配管およびその他類似の構成要素などの)プロセス装置の健全性を監視するために、バックグラウンドノイズまたはプロセスノイズを利用する。一般的には、これらの装置が汚染または腐食されると、それらのノイズに変化が生ずる。より重要なことには、プロセス装置が故障し始める時に、その故障している装置に関連したプロセスノイズに微妙な変化が検知される。このようなプロセスノイズの変化は、人間の可聴範囲のかなり上か下で生じるが、音響的には検知可能である。
【0009】
1つの態様では、本発明は、システムの汚れおよび腐食を示す音響または圧力の変化の経過を監視するために、典型的には、フィルタされたバックグラウンドノイズ(background noise)を利用する。音響式流量計は、マイクロプロセッサを含む関連回路を有するので、バックグラウンドノイズ処理用のアルゴリズムを含むファームウェアをアップグレードすることで、既存の音響式流量計を、汚れおよび腐食を監視するように構成することができる。新しい音響式流量計システムでは、回路および/またはソフトウェアが、汚れおよび腐食を示すバックグラウンドノイズの変化を監視し検知するために付加される。
【0010】
図1は、本発明の実施例によるプロセス診断システム100の概略ブロック図である。診断システム100は、パイプ102を含み、パイプ102には固定装置104が連結されている。パイプ102内の流体流量は、典型的には3つまたはそれ以上の音響センサを含む音響検知器106を使用して、流体内の渦によって発生した音響パターンを検知する音響式流量計112を用いて測定される。本明細書に使用される「音響(acoustic)」とは、可聴範囲内の周波数で生じるかどうか分らないが、検知可能な、反復または非反復の圧力信号あるいは変動を意味する。
【0011】
音響検知器106は、リード線110を介して監視電子機器108に接続される。監視電子機器108は、(有線または無線の)通信リンク116を介してコントロールセンター114に接続される。一般的には、通信リンク116は、HART、FIELDBUSあるいは他の通信規格などの通信規格を介して標準現場装置通信を行うための標準的な2、3、または4線式ループなどの標準配線である。いくつかの実施例では、リンク116などのプロセス制御ループを通じて供給された電力で、診断システムが完全に給電される。
【0012】
一般的には、パイプ102の壁が、パイプ102内を流れる流体内に渦を形成する。パイプ102の外部に連結された音響検知器106は、渦によって発生した音響パターンを検知する。パイプ102を通る流量が、検知された音響パターンから計算される。渦を識別および追跡する過程において、音響検知器106が流れ内の音響信号を検知する。一般的には、プロセスノイズは、物理的なプロセス構成要素および流体の流れの両方を介して伝えられる。本発明は、渦と無関係な情報を廃棄するのではなく、渦と無関係な情報を基線サインに対して処理する。本発明中では、プロセス装置の汚れおよび/または腐食を予測するために、測定された情報が基線とどの程度異なるかの程度が利用される。
【0013】
一般的には、診断機能は、正常に作動している固定装置を通って流れているプロセス流体によって生じる音響ノイズサインを測定することによって実行される。この音響ノイズサインは記憶され、基線サインとして使用される。基線からの偏差は、固定装置の汚れおよび/または腐食の程度を予測するために使用される。
【0014】
音響式流量計100は、固定装置104に隣接してパイプ102に取付けられる。流量計100の音響センサは、プロセスの流れ内の渦によって発生した音響パターン、および固定装置104を通って流れるプロセスの流れによって発生した音響ノイズサインの両方を感知するために用いられる。
【0015】
この音響ノイズサインは、組み込み時、またはユーザが定める他の時に、基準値としてサンプリングされて記憶される。作動中には、対象装置またはパイプの詰まりまたは汚れの状態が、プロセスノイズの変化に注目することによって検知される。プロセスノイズの変化が予め定められた閾値と一致するかそれを越える場合には、警報または警告が出力信号上に設定される。
【0016】
プロセスノイズサインは、任意数の信号処理または統計アルゴリズムを用いて確定される。1つの実施例においては、測定された音響信号からノイズサインを確定するために、高速フーリエ変換(FFT)が用いられる。
【0017】
1つの実施例においては、電子機器は単一のパッケージ内に配置される。これらの電子機器は、それ自身の音響パターンに基づいて個別の渦を識別するだけでなく、音響センサ信号を入力し検査する。さらに、電子機器は、不揮発性メモリにセットアップ値を記憶する。電子機器108は、最低限でも、デジタル処理能力を有する。
【0018】
1つの実施例では、監視電子機器108は、高ノイズ環境から信号を抽出し、センサおよび関連する監視機能を較正およびセットアップし、出力信号を生成すると共に、音響センサ信号を検査するように構成されたマイクロプロセッサを含んでいる。さらに、監視電子機器108は、FFTアルゴリズムによってノイズ信号測定値を変換するように構成された適切なソフトウェアを備えたデジタル計算能力、およびFFTアルゴリズムによって生じるノイズサインを参照ノイズサイン(基線サイン)と比較するための比較機能を有する。他の実施例では、これらの機能は、別の回路または別のソフトウェアアルゴリズムによって処理される。
【0019】
1つの実施例では、音響式流量計100は、固定装置の上流に配置される。この実施例では、音響式流量計100は、反射ノイズサインを感知する。このサインの振幅および/または周波数プロファイルが、流量計100によって測定された既知の流量レートに対して、予め定められた量以上に変化している場合、コントロールセンター114に警報を出すために、警報または警告が流量計の出力信号上に設定される。
【0020】
監視電子機器108は、外部装置によって、あるいは現場に必ず存在するオペレータインタフェースによって、初期値を設定するための入力機能を含む。好ましい実施例では、監視電子機器108は、HART、Foundation Field Bus、CAN、あるいは他のデジタル媒体などのデジタルバスによって双方向通信を行う。別の実施例では、監視電子機器108は、無線規格802.11(b)等の無線プロトコル、赤外線信号、セルまたは無線リンクによる単純テキストメッセージ、および類似のものによって双方向通信を行う。この通信能力は、初期値を設定し、様々なレベルの警報を出力するために利用される。さらに、音響センサの健全性が、通信機能によって報告される。この種のメータ用には、電子機器は、典型的には4−20mAループで電力供給されない。しかしながら、メータがバーストモード(burst mode)で稼働される場合、ループからの電力供給が実現可能である。
【0021】
本発明の実施例によって監視される、あるタイプの固定装置の一例は、回転式固定装置である。完全に故障する直前に回転装置の音響サインが変化することは、従来技術において既知である。例えば、流路の老朽化によって故障しそうなベアリングは、正常なプロセスサインと非常に異なる、特有のスクイーリング音(squealing sound)を発する。回転式固定装置の1つの例は、回転し、そのことによって特有のノイズサインを発するポンプおよびそれに付随のモータである。この代表的なノイズサインは、流量計100と一体の音響センサによって感知され、較正中または作動中、あるいはオペレータの要求に応じて、基準ノイズサインとして流量計100に記憶される。回転式装置のベアリングに問題が発生するか、例えば、ポンプ羽根が壊れた場合には、ノイズサインは著しく変化する。(コントロールセンター112からの、あるいは送信機ハウジング上のキーパッドおよび表示装置などの現場のオペレータインタフェース経由の要求により)バックグラウンドノイズサインを周期的に監視することによって、音響式流量計100は、ノイズサインの変化を検知し、(高速フーリエ変換( Fast Fourier Transform)などの)アルゴリズムを介してノイズ信号を処理し、処理されたノイズ信号を記憶されたサインと比較し、それらが予め定められた量と異なる場合、警報を発生させる。高速フーリエ変換が適用された後で、サインを比較することによって、高振幅の新しい周波数帯が直ちに識別される。
【0022】
触媒分解器(「接触分解器(cat cracker)とも呼ばれる)においては、接触分解器構体上の薄片部のポートに連結されたパイプ部分102に接続される音響式流量計100は、薄片部の流量を測定し、接触分解器の健全性を監視するのに用いられる。ノイズパターンあるいは短く高い振幅のノイズイベントに変化が生じる場合(1つのセラミック片が接触分解器構体からはずれる時のように)、音響式流量計の出力信号上に警報が設定される。接触分解器の詰まりまたは汚れの状態は、ノイズ振幅が基準値から予め定められた値を超えて減少する場合に検知される。
【0023】
したがって、本発明は、流量計の機能を固定装置内あるいは配管内の汚れあるいは詰まりを検知するか予測できるように拡張した点に、従来技術の音響式流量計以上の利点がある。流量計100は、容易に使用可能で、基本的な流量計以外に追加の装置や配線を必要としない。さらに、流量計100は、対象装置および付随する配管の両方の詰まりおよび汚れ(または腐食)を監視することができる。
【0024】
図2は、本発明の実施例によるプロセス診断システム200の展開ブロック図である。診断システム200は、パイプ部分202およびパイプ部分202に連結された固定装置204を含む。(複数の音響センサで構成される)音響検知器206は、パイプ部分202の外部壁に取り付けられ、その検知範囲は固定装置204の音響範囲内である。一般的には、音響検知器206が、固定装置204などの装置によって発生したノイズを監視する範囲は、プロセス流体の音響伝導レート、音響検知器206内のセンサの感度、およびプロセスノイズの大きさによって変化する。したがって、検知器206は、検知器206が固定装置204によって引き起こされた検知可能なノイズ信号を音響的に受信するために、固定装置204に十分隣接して配置される。
【0025】
音響検知器206は、監視電子機器208に連結される。該監視電子機器208は、音響検知器と同じハウジング内に含まれてもよいし、または含まれなくてもよい。音響検知器206と監視電子機器208とは、リード線210を介して接続される。
【0026】
一般的には、音響検知器206は、パイプ部分202の壁を通過するプロセスに関連するノイズだけでなく、流体の流れ内の渦によって発生したノイズパターンも監視する。測定情報は、リード線210を介して監視電子機器208のデータ入力部220に送信され、入力バッファ221に書込まれる。信号抽出・整形ブロック222は、バッファ221から測定情報を検索し、測定情報から流量情報を抽出する。その後、信号抽出・整形ブロック222は、流量を示す出力信号を発生する。出力信号は、通信リンク216を介してコントロールセンター214に送信されるためにトランシーバ226に送られる。
【0027】
測定情報は、アルゴリズムによって測定情報を処理する変換ブロック223によってバッファ221から読み出される。好ましい実施例では、アルゴリズムは高速フーリエ変換である。変換ブロック223は、測定情報をプロセスノイズを示す音響サインに加工する。音響サインは、音響サインをメモリ228からのセットアップ時に初期化された基準サインと比較する、比較器ブロック224に送信される。1つの実施例では、測定情報をメモリ228に記憶された基線データと相関させるために、ニューラルネットワーク230がコンパレータ224に作用する。この方法では、バックグラウンドノイズ、あるいは特定装置に関連するノイズの音響変化が分離される。変化の大きさは、システムあるいは特定装置の汚れおよび/または腐食の大きさを示す。
【0028】
したがって、音響式流量計は、特別な汚れ/腐食検知器システムを要せずに、流量測定に加えて、プロセスの監視および診断を行うのに適するように構成される。つまり、音響センサを含む現場装置は、大規模な変更を要せずに、2つの機能(流量測定およびプロセス診断)を行うように構成される。1つの実施例では、コントロールセンター214がニューラルネットワーク230およびメモリ228を提供し、マイクロプロセッサ224は、バックグラウンドノイズから渦流測定値を除去し、汚れおよび/または腐食がシステム内に生じたかどうかを決定するために基線信号に対して処理するための二つの信号部分をコントロールセンター214に返す。これにより、回路配列を変えることなく、監視電子機器の回路中のソフトウェアを調節することができる。
【0029】
図1および2のシステムは、流体の流れによって発生したプロセスノイズを受動的に監視するものであることを、当業者は理解するであろう。さらに、固定装置(104/204)が、(携帯用センサおよび類似のものとは異なり)適所に固定されたシステム100/200の物理的な要素に関連することも理解されるであろう。固定装置104/204は、ポンプ、触媒分解器、混合器、バルブ、熱交換器、ボイラあるいは産業プロセスに取り付けられた他の装置を含む。固定装置は、さらに容器、導管、配管、およびタンク、あるいはプロセスに連結された他の構成も含む。
【0030】
図3Aおよび3Bは、能動的な腐食/汚染検知システムを有するプロセス診断システム300の概略ブロック図である。システム300は、プロセス流体を内部に有するパイプ部分302を含む。(触媒分解器、混合器およびその他類似のものなどの)固定装置304は、パイプ部分302に連結される。音響検知器306は、パイプ部分302内のプロセス流体の流量を測定するために、固定装置304付近のパイプ部分302に取り付けられる。音響検知器306は、リード線310を介して監視電子機器308に接続される。監視電子機器308は、有線または無線の通信リンク314を介してコントロールセンター312との間で情報の送受信を行う。
【0031】
機械的ピンギング装置(mechanical 'pinging' device)または音響インパルス発生器316(以下「音響発生器316」という)は、パイプ部分302に取り付けられ、音響信号318を発生するように構成される。パイプ部分302が、ピングングされるか、励起されるかすると、音響検知器306の音響センサが、パイプ部分302の周波数応答特性を測定する。パイプ壁に沿った被膜の堆積および腐食が、検知された共振周波数の変化に基づいて検知される。
【0032】
監視電子機器308のデジタル処理機能は、パイプ部分の共振周波数および振幅減衰を測定するために用いられる。メータ設置の初期の段階で、パイプ部分を励起させて周波数応答特性を測定することによって、基準共振周波数および振幅減衰値が設定され記憶される。現在の共振周波数の測定値および減衰値が、それぞれの初期値と比較される。初期値に比べて予め定められた量以上に変化すると、音響式流量計300は、汚れおよび/または腐食の可能性を示す警報信号を発生する。
【0033】
音響発生器は、音響インパルス発生器316以外にも、圧電振動子要素を用いることができる。このような実施例においては、所定の周波数範囲以上に音響変換器を駆動することによって、共振周波数が得られる。さらに、周波数応答特性を測定するために音響検知器306の音響センサを使用することによって、メータ部分の共振周波数および振幅減衰を測定することができる。
【0034】
音響発生器316をパイプ部分302に恒久的に固定する必要がなく、音響発生器316を隣接したパイプ部分に単に移動させるだけで、隣接したパイプ部分を調べることができるということは注目されるべきである。パイプ部分の重要領域には、数個の音響発生器あるいは変換器が装着可能であり、配管の個々の重要部分には1個の音響発生器あるいは変換器を装着できる。音響式流量メータ300は、特定時に各発生器316を励起し、その発生器316が装着された配管部分の共振周波数および振幅減衰を測定するように構成されている。共振周波数が予め定められた値以上にそれた場合、音響式流量計300は、そのパイプ部分302内の腐食または浸食損傷の可能性を示す警報または警告を発生する。
【0035】
好ましい実施例では、流量計300は、流体の流れ内に引き起こされた渦によって発生した音響パターンを検知するように構成された3個以上の音響センサを含む。流量は、引き起こされた渦がセンサを通るのに要する時間に基づいて測定される。
【0036】
他の実施例では、音響発生器316は、固定装置304へ向かう流体内に音響信号を送信する。固定装置304の表面がぬれていることを示す反射信号320が、固定装置から反射される。音響検知器306は、送信された音響信号318と反射信号320の両方を検知する。あるいは、検知器306は、反射信号320だけを測定する。いずれの場合も、監視電子機器308は、検知された信号を処理し、基線測定値からの変化量を決定する。そして、この変化量の大きさが、固定装置304の汚れおよび/または腐食を示す。
【0037】
図3Aでは、音響信号発生器316は、固定装置304および音響検知器306の上流に配置されている。しかし、音響信号発生器316は、検知器306の下流に配置されても、あるいは同じハウジング内に配置されてもよい。好ましい実施例では、信号発生器316が図のように配置されるので、検知器306は、信号(すなわち装置の共振周波数)の反射部分の周波数および位相変化だけでなく、送信された信号318の周波数および位相を測定することができる。
【0038】
図3Bでは、音響信号発生器316(すなわち励起装置)は、固定装置304を挟んで音響検知器306の反対側に配置される。音響信号発生器316は、固定装置304を通して音響信号318を送信するか、あるいはシステムを励起して共振させる。音響検知器306は、(前述のように)送信された信号を検知するか、システムの共振周波数を測定する。送信された信号318の一部は、(音波320で示されるように)反射され、固定装置304を通して送信される。送信された信号322は、パイプ302内の流体流量を測定し、さらに固定装置304を通過する送信された信号322を検知するように構成された音響検知器306に向ってパイプ302内のプロセス流体を通って伝播する。
【0039】
前述のように、送信された信号322は、音響検知器306によって測定され、監視電子機器308によって記憶された音響サインと比較される。他の実施例では、未処理の測定データがコントロールセンター312に送信され、そこでデータが処理され、蓄積されている基線情報と比較される。
【0040】
一般的に、当初の設置状態では、固定装置304は、反射伝達機能および送信伝達機能の2つの伝達機能を有するとしてモデル化することができる。各伝達機能は、特定装置に特有のものであり、検知された反射または送信波形は装置に特有のサインである。後で測定された波形が、(位相、振幅、周波数などにおいて)特有のサインと異なるならば、測定された反射/送信波は、汚れあるいは腐食に起因する固定装置304内の変化を反映する。したがって、検知された音響サインは、システム300内の汚れまたは腐食状態を予測する根拠を提供する。
【0041】
対象パイプ部分の共振周波数に変化を生成し、これを検知するためのシステムは、非常に短い時間の間、パイプに共振を励起させる手段を含むことができる。共振周波数の変化を検知することができる圧力および/または音響装置が、その変化に基づいて汚れを検知するために用いられる。好ましい実施例では、「リスニング(listening)」装置は、圧力センサあるいは音響式流量計である。ピンギングあるいは音響信号発生器は、パイプを励起して振動させるのに用いられる圧電駆動機械式発信器、あるいはパイプに穏やかな衝動を送るための「ハンマー」タイプの装置である。これらの装置は、磁気ソレノイド技術、または振動モードで用いられる圧電ドライバに基礎をおいている。共振チェックは、単一のメータで多数の部分を評価できるように多重化された、時間、周波数あるいはコードを含む。メータの主要または補助の電子機器のいずれかが診断機能を実施するために利用される。
【0042】
従来では、毎秒3フィートかそれ以上のレートで正確に流量測定できる音響式流量計が提供されている。このような大きなレートでしか正確に測定できない主な理由は、低流量速度で発生する渦が低エネルギであるということである。このことにより、バックグラウンドプロセスノイズからそれら特有のオーディオ信号を分離することがより難しくなる。
【0043】
図4Aは、本発明の実施例による、プロセス流体内に渦を引き起こすための渦流板400の正面図である。好ましくは、渦流板400は、開口部404を画定するリング形本体402を有する。流体の流れの中で渦を発生させるために、開口部404内に2つの障害物406が配置されている。プロセス内に板400を固定するための固定手段として、ファスナ開口部407が本体402内に設けられている。2つの障害物406は、開口部の一部に延びる部分的な障害物であってよい。第2の実施例では、2つの障害物406は、(破線で示されるように)開口部全体に延びている。第3実施例では、障害物が1つだけ設けられる。音響検知器の上流の流体の流れに渦流板400を挿入することによって、音響検知器は、毎秒1フート以下の低流量レートでの機能を果たすことができる。
【0044】
図4Bは、それぞれパイプ部分410および416に連結されたフランジ要素412および414に挟まれた渦流板400を有する音響検知器アセンブリ408の概略斜視図である。ファスナ418は、渦流板400とフランジ要素412、414とを固定する。流れの方向に沿って配置された3つの音響センサ420で構成された音響検知器422は、パイプ部分416の外部表面上に配置される。音響検知器420は、流量を示す出力信号と、検知器422に隣接するシステムの健全性を示す診断信号とを生成するように構成された電子機器424に接続される。
【0045】
この実施例では、流量レートは、渦が各センサを通過する時に検知される渦の伝達時間に基づいて検知される。各センサ420間の時間差および既知の距離は、流量レートを計算するための、毎秒3フィートより低い流量レートでさえ正確となる信頼できる基礎を提供する。測定のために用いられるパイプ部分内のオーディオセンサの上流に、小さな歯状のものあるいは他の小さな渦発生物を挿入することによって、はるかに強い特有のオーディオ信号をもつ渦を生成することが可能になる。これにより、音響式流量計技術を、毎秒約1フート以下の流量レートにまで拡張することができる。
【0046】
図5Aおよび5Bは、熱交換器システム500の2つの実施例を示す。図5Aでは、熱交換器システム500は、一方の端部で蒸気トラップ504に、他方の端部でボイラ508に連結される熱交換器502を含む。凝縮貯蔵タンク506は、蒸気トラップ504とボイラ508との間に連結される。最後に、音響検知器510は、熱交換器502の流体出口端部に連結される。
【0047】
一般的に、ボイラ508は、システム500内の液体を、高温の蒸気にまで加熱する。この高温の蒸気は、パイプを通って熱交換器502まで送られる。熱交換器502は、隣接したプロセス(図示せず)で熱交換し、交換器内の蒸気を冷却する。冷却された蒸気は、蒸気トラップ内で液体状に凝縮し、音響検知器510を通過して、凝縮水貯蔵タンク506内に流れ、再加熱のために、ボイラ508の中にポンプで戻される。システム500が単純化されることが理解されるであろう。「補給(makeup)」水の注入のためだけでなく、廃棄のためのバルブ、および自動または手動のブローダウン(blowdown)などの産業用の熱交換器システムに共通のいくつかの要素は、説明を明確化するために省略されている。
【0048】
ボイラ508および熱交換器502の両方が、流体中にプロセスノイズを起す原因となる。ボイラ508は、プロセスにノイズを起すバーナを使用して水を加熱している。蒸気がパイプを通って流れると、蒸気自身がノイズを発生し、蒸気が流れ込む熱交換器502が、反射ノイズサインを発生する。音響検知器510は、システムの特定のノイズサインを測定するために、これらの音響信号を検知する。特に、交換器502は汚れおよび/または腐食を知るのに最適な要素なので、多くの場合音響検知器510が注目されるべき装置になる。この音響検知器510は2つ以上の装置を監視することができる。
【0049】
能動的な汚れおよび腐食検知器を完成するために、熱交換器502と下流の要素との間に音響変換器503(破線で示される)が挿入される。好ましい実施例では、音響変換器503は、変換器がプロセス流体のすぐ近くに位置するように、交換器の壁面に連結される。変換器503は、これを腐食から保護するために、これとプロセス流体との間に、被膜および/または隔離材を有する。音響検知器510内の電子機器は、変換器503を駆動するために1つ以上の周波数を含む信号を発生する。変換器503に戻された信号は、送信変換器503の全体の健全性だけでなく、プロセス流体特性を評価するために検知される。
【0050】
音響検知器510は、発生した音響信号を検知する。この信号は、流体特性情報および汚れ/詰まりの情報の両方を含んでいる。音響検知器510の電子機器は、検知された信号からプロセス流体特性情報を取り除き、汚れ/詰まりの情報のみを残す。その後、交換器を介して等価音響インピーダンスまで減衰することによって、汚れ/詰まりの情報が評価される。音響インピーダンスが閾値を越えて増大している場合、音響検知器510は、(図1〜3Bに示される)コントロールセンターに警報信号を発する。
【0051】
この実施例では、音響検知器510は、流体速度を測定し、音響変換器503(圧電振動子であってもよい)を駆動し、返還信号を評価し、かつ詰まりまたは汚れが検知された時に警報状態を送信するように構成された電子機器を含む。
【0052】
さらに、このタイプの能動的(駆動された変換器)汚れおよび腐食検知システムは、プロセス流体の主な特性の変化を評価する。あるプロセスについては、例えばプロセス流体の中に、浮遊物片やより上部に固体層が一時的に存在するような例外が時々発生する。この例外が存在したままだと、直ちに交換器が汚れる。基準音響サインは、この種の重大なイベントを検知し、検知されたイベントに特有の警報をユーザ(あるいはコントロールセンター)に提供するために用いられる。
【0053】
このタイプの装置は、交換器502内のチューブ群のそれぞれが送信変換器503を具備するように構成されている。好ましい実施例では、これらの変換器は、ほとんどの音響エネルギが対象のチューブ群を通り抜けるように指向されている。各チューブ群は、異なる時間間隔で評価される。汚れ/詰まりはゆっくり(少なくとも数時間をかけて)生じるので、これらの時間間隔は、数秒間隔でよく、これにより検知の迅速性を失うことはない。タブ(容器)のグループを監視することによって、領域特有の汚れ/腐食を容易に検知することができる。
【0054】
音響検知器510を備えた音響式流量計により、ノイズ信号の振幅および周波数分布を測定できることが理解されるであろう。交換器または反応器が詰まると、音響検知器510とは反対側の交換器の端部にある音響変換器503で発生するプロセスノイズが減衰される。検知器510は、減衰の程度を検知することによって、交換器および付随する配管内の汚れあるいは腐食の程度を予測することができる。詰まりが、事前に設定された限度を越えると、警報か警告が発生され、これは例えば制御システムに送られる。
【0055】
感度を向上させるために、付加的な上流・下流の変換器が用いられる。流量計の音響検知器510は、プロセスノイズの減衰量をより正確に測定するために変換器信号を利用することができる。
【0056】
変換器503は、その中に自己診断できる電子機器を有している。送信された信号の一部は、システム内の構成部分から反射される。反射信号は、変換器の音響出力信号の強さを監視するために用いられる。変換器503が老化するか、劣化するか、または壊れると、この信号は退化するかまたは消える。このことが起こると、変換器503に付随した電子機器は、それが故障しているという警告を出力する。複数の変換器503が使用される場合、各変換器503は、自己診断の電子機器を含んでいる。
【0057】
この実施例は、音響式流量計510のオプションの診断能力として交換器の汚れの程度を測定する、高感度の予測方法を提供する。本発明は、導入および設置が容易で、汚れおよび詰まりの情報を提供するために、多くの圧力/体積分析を必要としない。変換器503および音響検知器510の音響センサのメンテナンスは、交換器502が点検または修理される時に行われる。この実施例の特別な利点の1つは、交換器502の被膜および汚れが、二次的な圧力量測定をすることなく、直接検知されるということである。さらに、音響変換器503を利用するシステムでは、プロセス流体特性が、信号の減衰に基づいて評価される。既存の音響式流量計技術を利用するので、この方法で診断システムを実行する費用は、安価であり、その費用は、主にノイズ処理用の付加的なボードなどのオリジナルの流量メータに小規模なハードウェアを付加するためのものである。
【0058】
図5Bは、ボイラ508と音響検知器510の間に配置された温度センサ512を有する交換器システム500を示す。さらに、温度センサ514が、音響検知器510と交換器502の間に配置され、温度センサ516が、交換器と凝縮貯蔵タンク506の間に配置される。
【0059】
温度値は、交換器502に生じた詰まり/汚れの程度を測定するために監視される。3つの温度センサ512、514、516は、熱交換媒体(温度センサ512)の入口温度だけでなく、交換器502(温度センサ514および516)を通過することによるプロセス流体温度の変化を測定する。流量レートと結合されたこれらの温度センサ信号が、被覆、汚染、または詰まりに起因する交換器効レートの変化を検知するために用いられる。与えられた流量値と与えられた熱交換媒体入口温度の組み合わせに対して、交換器の両側の温度差(T2−T3)とボイラ508から交換器514の入口までの温度差(T1−T2)が測定される。初期値が、不揮発性メモリに記憶されて、次々に次の値と比較される。交換器502の両側の温度差の測定値が、記憶された差とかなり異なる温度変化を示すならば、詰まりまたは汚れが推測され、警報が発せられる。
【0060】
清潔で適切に作動する交換器の伝熱特性は、温度低下の変化がシステム内の予定の温度変化に相当するものであるかどうかを評価する基礎になる。一定のプロセス流体特性が与えられると、測定値が期待値と著しく異なる場合、装置は警告か警報を発することができる。
【0061】
音響検知器510は、音響信号を検知することにより、交換器の汚れ/詰まりを長期的にチェックすることができる。プロセス流体特性が、特定の装置に対応して大きく変わる場合には、交換器502の両側の期待温度低下についての密度変化の影響を修正するために、流体密度センサ518が用意される。1つの実施例では、音響式流量計は、(渦メータと同様に)プロセス流体密度を直接測定できるように構成されている。代わりに、交換器の両側の圧力差が測定されてもよい。交換器を通る温度と流量と共に、この差圧が、流体密度を推定するために用いられる。ほとんどの液体については、流体特性の流量への影響は、詰まり/汚れに比べて小さいので、流体密度は、大抵無視することができる。しかしながら、気体については、流体特性の変化は、交換器の両側の温度差に著しい変化を生ずる。交換器の性能の重要な変化をテストする場合には、このような流体特性の変化も詰まり/汚れを示す信号として考慮に入れられなければならない。
【0062】
音響検知器510に付随する電子機器は、温度センサ信号を受信して整形するだけでなく、音響検知器信号510を受信して、流量センサ信号を整形する。電子機器は、不揮発性メモリ内に基準値を記憶している。電子機器は最低限でもデジタル処理能力を有し、現在の感知流量値、入口温度、および交換器504の両側の温度差を基準値と比較する。交換器性能が予め定められた限度より低下すると、詰まり/汚れの発生の可能性を表わす警報あるいは警告が発せられる。
【0063】
冗長的な測定ではあるが、診断機能が正常であるかどうかは、交換器を通って流れるプロセス流体から、正常に作動している交換器の音響ノイズサインを測定することによって確認される。流量計音響センサは、流体内の渦によって発生した音響パターンを測定し、かつプロセス流体が交換器を通って流れる時に、プロセス流体によって生成された音響ノイズサインを感知するために用いられる。組み込み時、あるいはユーザが定める他の時に、流量ノイズが基準としてサンプリングされ記憶される。動作中には、交換器または付随の配管の詰まりまたは汚れの状態が、ノイズ振幅の変化が予め定められた閾値を越えることによって検知される。
【0064】
交換器汚染検知システムは、流量メータのオプションの診断機能として、交換器の汚れの程度を測定するための高感度の予測手段を提供する。流量計は、導入が簡単で容易であり、診断は、汚れ/腐食の一次表示として交換器の両側の温度差を監視することにより行われる。交換器が点検される時に、流量計およびセンサが点検される。複数の温度センサが使用される場合には、複数の温度差が測定され、温度測定値の変化が、システム内の汚染領域を正確に検知するために利用される。適切な流量計技術あるいは追加のセンサを用いることによって、プロセス流体特性を評価することができる。さらに、濡れた構成要素は、標準センサ/送信機であるので、流量計に付随する電子機器だけが特別なものである。
【0065】
図6は、本発明の実施例による温度計保護管600の概略断面図である。一般に、温度センサ、特に温度計保護管の共通の故障状態は、温度計保護管またはセンサの外部の表面の被膜または汚れである。この被膜または汚れは、センサの熱時定数の変化を引き起こし、それにより、制御システムを「脱調(detuning)」する。ひどく被膜された温度センサは、プロセス内の温度が限界を超えても、被膜による時定数の増加によって、温度が範囲外であることの報告が遅れるため、監視を行うのに問題が生じる。
【0066】
温度計保護管600は、被膜または汚れが許容できない厚みになった時を検知するための手段を含む。温度計保護管600は、温度センサ604を固定するための空間を形成する円筒状の本体602を含む。温度センサリード線606は、送信機(図示せず)から空間を通って、温度センサに延びている。温度計保護管602の外部表面608が被膜/汚染されると、時定数が変化する。
【0067】
許容範囲外の被膜の堆積または汚れを検知するために、圧電変換器610が、温度計保護管600の内部に固定される。他の実施例では、変換器は磁気式、静電気式、あるいはその他の方式の変換器であってもよい。温度計保護管600は、変換器610が温度計保護管600を駆動して共振させることができるような形状に作られている。変換器の駆動周波数は、温度計保護管600の最大の振幅が測定され記憶されるまで、付随の電子部機器によって変更される。温度計保護管600が被膜されるか汚れると、温度計保護管600の質量が増加し、その共振周波数が変化する。共振周波数のこの変化が予め定められた限度を越えると、温度計保護管600に連結された送信機は、この測定場所のプロセス処理担当部(一般的にはコントロールセンター)に警報あるいは「注意」信号を送る。
【0068】
温度計保護管600を被覆したり汚したりしない浸食性のプロセス流体においては、温度計保護管600の質量は、侵食性のプロセス流体が温度計保護管600を侵食するにつれて、徐々に変化する。侵食性のプロセス流体が、温度計保護管600の表面に穴をあけるか、そうでなければ腐食(浸食)する時には、温度計保護管600の質量が減少して、それにより共振周波数に変化が起きる。この共振周波数の変化の限度は、基線からの(プラスまたはマイナスの)偏差により予め設定されるか定められている。
【0069】
図7Aは、本発明の実施例による診断機能を有する、空気アクチュエータバルブ700の概略ブロック図である。プロセスプラントの性能の低下の原因である共通の故障状態とは、バルブが動かなくなるか、つかえるか、または(プラグタイプバルブにおける)軸のプラグからの離脱といったバルブの機能不良である。別の故障状態は、バルブの内部形状がひどく腐食されるような、バルブの空洞化を含む。空洞化は、バルブとポンプとにわたる圧力変化に関連する問題であり、空洞化が生じると、プロセス流体が装置を通って流れる時に、圧力および温度の状態がプロセス流体の影響を受け、小さな気泡が生じて、激しくつぶれる。泡の崩壊は、たとえ短時間でも、装置を厳しく浸食する。空洞化に関連する周波数が20キロヘルツ以上に上がることを除いて、空洞化の発生を検知するのは難しい。当業者は、対象装置に耳を傾けるか、変化を検知するように構成された音響センサおよび特別な電子機器を用いることによって、ほとんどの空洞化を検知することができる。圧力および/または音響センサは、プロセスから出る音を検知して、空洞化に関連するパターンを検知するように構成される。空洞化現象が検知されると、ユーザに通知される。空洞化は、20KHz以上の周波数範囲の装置サインの変化によって検知される。圧力センサおよび/または音響センサがより高い周波数を測定できるようにすることによって、空洞化が検知され、報告されるようにすることができる。バルブの空洞化は、ぶつかり合うビー玉のような音を発生する。さらに、I/PあるいはI/ポジショナ(Positioner)が故障すると、バルブの機能不良を引き起こす。
【0070】
バルブ700は、空気駆動制御バルブ704、位置決め要素706、空気アクチュエータ708およびオンラインバルブ診断装置710を備えたハウジング702を含む。一般的には、位置決め要素706(I/PまたはI/ポジショナ)は、制御バルブ704の位置を決める。アクチュエータ708は、位置決め要素を制御する。
【0071】
空気アクチュエータバルブ700は、フランジ要素714を有するパイプ部分712に取り付けられ、フランジ要素714は、隣接パイプ718のフランジ要素716と対の連結される。バルブ700は、3つの圧力センサ、720、722、および724を含む。(圧力P1に対応する)圧力センサ724は、空気アクチュエータの圧力を測定するように構成される。(それぞれ圧力P2およびP3に対応する)圧力センサ720および722は、制御バルブ704とこれに隣接したパイプ部分712との間に配置される。一般的には、圧力センサ720および722は、制御バルブ704の一方側に配置された圧力タップを備えたガスケット内に配置される。
【0072】
上流圧力(P2)、下流圧力(P3)、および空気アクチュエータ圧力(P1)を測定することによって、診断装置710は、バルブが機能不良かとどうかの診断出力を提供することができる。特に、上流圧力(P2)およびバルブ間の圧力差(P2−P3)は、バルブの作動点を測定するために監視される。空気アクチュエータに対する圧力も監視される。適切に(正常に)作動中のバルブにおいては、始動圧力(P1)が変化すると、バルブ作動点(P2−P3)も変化する。アクチュエータ圧力(P1)は、プロセスの擾乱による制御ループ変化の結果として、あるいは異なる作動点でプロセスを実行する時に変化する。
【0073】
下流圧力センサ722は、高帯域幅を有するように選択されるので、キロヘルツ(KHz)内の音響周波数を感知することができる。別の実施例として、(点線で示された)付加的な音響センサ726を備えた圧力センサ722を、圧力センサ722用のタップに連結してもよい。この音響センサ726は、高周波数を検知する機能を有するので、空洞化を予測/検知するために用いられることができる。
【0074】
Foundation Fieldbus、HARTによって、または診断装置710を通る制御ループの配線によって、バルブ700への制御信号が、診断装置710に利用可能になると、診断装置710は、駆動圧力に変化を与える制御信号を監視する。駆動圧力に変化が生じない場合には、診断装置710は、位置決め要素706の機能不良の可能性を報告する。
【0075】
図7Bは、図7Aのオンラインバルブ装置710の概略拡大図である。図示されるように、ゲージ圧力(GP)センサ(P2)720は、制御バルブ704の上流に設けられたガスケット内の圧力タップを介してプロセス圧力を測定する。一方、ゲージ圧力センサ(P3)722は、制御バルブ704の下流に設けられたガスケット内の圧力タップを介してプロセス圧力を測定する。ゲージ圧力センサ(P1)724は、バルブアクチュエータ圧力を測定する。アクチュエータ圧力、上流圧力、下流圧力の各測定値は、未加工のアナログデータをデジタル出力に変換するA/D変換器730に送られる。その後、デジタル出力は、バルブの健全性を示す信号に対してデジタル出力加工を行うマイクロプロセッサおよびメモリ(診断論理)回路732に送られる。その後、信号は、診断出力を送信する出力回路734に送られる。
【0076】
図7Cは、図7Aおよび7Bの実施例による空気アクチュエータバルブ700の動作の概略フローチャートである。スタートと同時に、診断装置は、アクチュエータバルブ圧力(P1)、上流圧力(P2)、下流圧力(P3)およびバルブ制御信号(C1)に対する基準値を初期化する(ブロック750)。基準値が初期化されると、装置は、バルブの不作動または故障をチェックする(ブロック752〜774)。
【0077】
装置は、アクチュエータバルブ圧力(P1)を調べて、値が2シグマ以上に変化したかどうかを調べる(ブロック752)。値が2シグマ以上変化しない場合、装置は、バルブが変化するまで2秒毎にアクチュエータ圧力(P1)を再テストする。値が2シグマ以上変化すると、装置はバルブ間の圧力を安定させるために1、2秒待機する(ステップ754)。その後、装置は上流および下流の圧力(それぞれP2およびP3)を測定し、バルブ間の圧力差(P2−P3)を計算する(ステップ756)。バルブ作動圧力が変化する(ステップ758)と、装置は、アクチュエータバルブ圧力(P1)、上流圧力(P2)、下流圧力(P3)、およびバルブ制御信号(C1)の基準値を再初期化する(ブロック750)。基準値が初期化されると、装置は、バルブの不作動または故障をチェックする(ブロック752−774)。
【0078】
バルブ作動圧力が変化しなければ、装置は、アクチュエータ圧力(P1)の変化が2シグマ以上のままかどうかをテストする(ブロック760)。もしそうでなければ、装置は、アクチュエータバルブ圧力(P1)、上流圧力(P2)、下流圧力(P3、)およびバルブ制御信号(C1)の基準値を再初期化する(ブロック750)。基準値が初期化されると、装置は、バルブの不作動または故障をチェックする(ブロック752−774)。
【0079】
アクチュエータ圧力(P1)が、ノイズの2シグマ以上変化したままであれば(ブロック760)、装置はバルブ間の圧力を安定させるために待機する(ブロック762)。装置は、上流・下流の圧力(P2およびP3)を再測定し、差圧(P2−P3)を計算する(ブロック764)。装置は、バルブ作動圧力が変化したかどうかをテストする(ブロック766)。作動圧力が変化するならば、空気バルブは恐らく詰まっている。(ブロック768)。バルブ作動圧力が、変化していないならば(ブロック766)、これが4回目の再テストであるかどうか、あるいは、アクチュエータ圧力(P1)が最低値または最高値のどちらかであるかをチェックする(ブロック770)。どちらかが真ならば、バルブは恐らく不作動であるか故障している(ブロック772)。故障の場合、装置は、圧力が安定するまで(大抵数秒で十分である)待機して(ブロック774)、アクチュエータ圧力(P1)がノイズの2シグマ以上変化したままであるかどうかを調べるために再テストする(ステップ760)。
【0080】
図7A−7Cの実施例は、バルブが動かなくなりつつあるか、またはつかえて動かなくなっているかどうか、あるいはその軸が壊れているかどうかを決定するためのオンライン方法を提供し、またバルブが空洞であるかどうか予測/決定するオンライン方法を提供する。システムは、タップを伴う3つの単純なガスケット板を含むので、診断バルブシステムは、取り付けが簡単で、(バルブ本体の取り付けは、別の実施可能な実施例であるけれども)バルブ本体の修正やタッピングの必要がない。診断は、継続的に更新されるバルブ作動点および空気駆動圧力に基づくので、部分的なセットアップが簡単である。装置は、既存のシステム上に追加することができ、DCS、バルブI/Pあるいは位置決め制御データにアクセスすることなく作動する。さらに、継続的な操作の必要がないので、電力消費が低くなる。バルブが機能不良かどうかを評価するのに、数秒毎に一度の診断チェックを実施すれば十分である。装置が、制御ループから電力供給される必要はない。独立した電源が実施可能であり、通信は、ローカル、アナログ、HART、FFB、Ethernet(登録商標)、あるいは他のデジタルバスによって可能である。診断装置700は、設定点情報が診断装置に利用可能な場合に、I/PおよびI/位置決めの機能不良チェックを提供する。圧力センサは、高機能である必要はないが、かなり信頼性が高いことが必要である。最終的に、診断システム700は、任意のメーカーのフランジ付きバルブの全てに利用可能であり、バルブ本体が圧力ポートに取り付けられていれば、フランジなしのバルブに使用することができる。
【0081】
一般的には、本発明は、プロセス流量装置内の問題に特有な音響スペクトルの内容および振幅の変化を利用するという利点を有している。音響式流量計および圧力センサの両方が、このスペクトルの内容および振幅を検知するように構成される。これにより、圧力および/あるいは音響感知能力を用いた交換器の詰まり/汚れの診断、圧力および/あるいは音響感知能力を用いた空洞化の検知診断、毎秒3フィート以下の低流量での音響式流量診断、パイプを稼働させることによる汚れや詰まりの評価、および基準値に対する共振周波数のテストを実施することができる。
【0082】
図8は、本発明の実施例による産業プロセス内の汚れあるいは腐食を検知する方法の概略フローチャートである。産業プロセスのプロセス流体内で、ノイズ信号が測定される(ブロック1000)。診断回路は、バックグラウンドノイズから渦に関連した音響パターンを分離する(ブロック1002)。診断装置は、音響パターンに基づいて流量レートを計算し、バックグラウンド(プロセス)ノイズに基づいてプロセスノイズサインを計算する(ブロック1004)。前述のように、バックグラウンドノイズサインは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)などのアルゴリズムを用いて計算される。
【0083】
計算されたプロセスノイズサインが、状態がよい既知のシステムのプロセスノイズサインに対応する記憶された基準値と比較される(ブロック1006)。計算されたノイズサインが、記憶された基準値から予め定められた限度以上異なるならば、流量測定信号に警報の信号または表示が付加されて、コントロールセンターに送信される(ブロック1008)。
【0084】
本発明は好ましい実施例に関して説明されたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱しないで、形状および細部において変形できることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例による産業プロセス内の固定装置の汚れを検知するための汚れおよび腐食検知機能を有する音響式流量計の概略ブロック図である。
【図2】図1の音響式流量計の監視電子機器の概略ブロック図である。
【図3A】本発明の実施例による音響信号発生器を有する汚れおよび腐食検知器の概略ブロック図である。
【図3B】本発明の実施例による音響信号発生器を有する汚れおよび腐食検知器の概略ブロック図である。
【図4A】本発明の実施例による低流量プロセスの音響測定を助けるための渦流板の概略正面図である。
【図4B】本発明の実施例による図4Aの渦流板を含む腐食および汚れ検知システムの概略斜視図である。
【図5A】本発明の実施例による熱交換器を含むプロセス内の腐食および汚れ検知器の変形を示す。
【図5B】本発明の実施例による熱交換器を含むプロセス内の腐食および汚れ検知器の変形を示す。
【図6】本発明の実施例による温度計保護管の外表面上の汚れおよび腐食を検知するための変換器に取り付けられた温度計保護管の概略横断面図である。
【図7A】本発明の実施例による診断機能を備えた空気弁の概略ブロック図である。
【図7B】図7Aの空気弁用の制御回路の概略ブロック図である。
【図7C】本発明の実施例による図7Aおよび7Bのシステムを備えたバルブ故障検知プロセスの概略フローチャートである。
【図8】本発明の実施例による1つの装置内でプロセス測定および診断を実行するプロセスの概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
100……プロセス診断システム
102……パイプ
104……固定装置
106……音響検知器
108……監視電子機器
110……リード線
112……音響式流量計
114……コントロールセンター
116……通信リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ部分に連結され、プロセスノイズを測定するように構成された音響感知装置、および
前記音響感知装置に結合され、前記測定されたプロセスノイズからプロセス流体内の渦によって発生した音響パターンを分離するように構成され、産業プロセス内の装置の故障または老朽化を示す、前記測定されたプロセスノイズの変化を検知し、検知された変化に基づいて警報信号を発生するように構成された監視電子機器を具備する、
前記産業プロセスのパイプ部分のプロセス流体の流量レートを測定するための音響式流量計。
【請求項2】
前記監視電子機器が、
前記測定されたプロセスノイズをプロセスサインに変換するように構成された変換ブロック、および
変化を識別するために、前記プロセスサインを記憶された基準サインと比較するように構成されたコンパレータを具備する請求項1の音響式流量計。
【請求項3】
前記パイプ部分に連結され、前記パイプ部分に音響信号を発するように構成された音響発生器を具備する請求項1の音響式流量計。
【請求項4】
前記音響発生器が前記電子機器に接続され、該電子機器が、前記音響発生器により、特定周波数で音響信号の生成を始めるように構成された請求項3の音響式流量計。
【請求項5】
さらに、前記パイプ部分に連結された固定装置であって、プロセス流体が前記固定装置を通って流れる時にプロセスノイズを生成する固定装置を含み、
前記変化が、前記固定装置の腐食あるいは汚れを示す請求項1の音響式流量計。
【請求項6】
さらに、前記産業プロセスの構成要素が正常に機能している時に、前記プロセスを通って流れるプロセス流体の変換されたプロセスノイズ信号を含む基準サインを記憶するように構成された不揮発性メモリバッファを含む請求項1の音響式流量計。
【請求項7】
前記プロセスノイズが、複数の周波数からなる信号を含む請求項1の音響式流量計。
【請求項8】
さらに、前記測定されたプロセスノイズと前記記憶された基準サインとの比較を監視し、前記基準サインからの偏差の程度に基づいて警報信号を発生させるかどうか決定するように構成されたニューラル・ネットワークを含む請求項1の音響式流量計。
【請求項9】
さらに、予め定められた限度を設定するための外部入力インタフェースまたは現地オペレータインタフェースを含む請求項1の音響式流量計。
【請求項10】
前記パイプ部分が、熱交換器に連結されるように構成された請求項1の音響式流量計。
【請求項11】
能動的変換器を含む請求項1の音響式流量計。
【請求項12】
温度センサを含む請求項1の音響式流量計。
【請求項13】
前記プロセス流体に渦を誘起する構造を含む請求項1の音響式流量計。
【請求項14】
プロセス装置、
前記パイプ部分に接続された周波数レスポンスを測定するための少なくとも1つの検知器、
プロセス要素に連結されて、前記プロセス要素を駆動して共振を起こさせるように構成された変換器、および
前記少なくとも1つの検知器および前記変換器に連結され、前記変換器に送信されたコマンドによって前記プロセス要素をトリガし、かつ前記少なくとも1つの検知器からの測定された周波数レスポンスを処理するように構成され、前記測定された周波数レスポンスを記憶された基準周波数レスポンスと比較し、前記記憶された周波数レスポンスからの前記測定された周波数レスポンスの偏差に基づいてプロセス装置の健全性を示す診断信号を生ずるように構成された診断回路を含む、
プロセス装置内の汚れおよび腐食を検知するための診断装置。
【請求項15】
前記測定された周波数レスポンスの偏差が、前記プロセス装置の質量変化を示す請求項14の診断装置。
【請求項16】
前記質量変化が、腐食を示す質量減少である請求項15の診断装置。
【請求項17】
前記質量変化が、堆積を示す質量増加である請求項15の診断装置。
【請求項18】
前記プロセス装置が、プロセス流体のプロセス温度を測定するための温度センサを備えた温度計保護管を含む請求項14の診断装置。
【請求項19】
前記プロセス装置が、パイプ部分を含む請求項14の診断装置。
【請求項20】
前記プロセス装置が、流体内に延びる障害物を含む請求項14の診断装置。
【請求項21】
産業プロセスのプロセス流体内のノイズ信号を測定すること、
前記測定されたノイズ信号内のプロセスノイズから渦に関連した音響パターンを分離すること、
前記音響パターンに基づいてプロセス値を、前記プロセスノイズに基づいてノイズサインを算出すること、
前記ノイズサインを記憶された基準サインと比較すること、および
前記ノイズサインが、予め定められた限度以上に前記蓄積された基準サインと異なる場合に、コントロールセンターに送信する流量測定信号に警報表示を追加することを含む、
産業プロセス内の固定装置の健全性を監視する方法。
【請求項22】
プロセス変数を測定するように形成され、受動的あるいは能動的にプロセスノイズを検知するように構成された感知装置、および
前記感知装置に連結され、前記プロセスノイズの周波数変化を識別するように構成された監視回路を含む、
産業プロセス内の固定装置の汚れおよび腐食を検知するように構成された診断システム。
【請求項23】
機械的装置を駆動して共振させること、
前記装置の共振周波数を測定すること、および
前記装置の共振周波数に基づいて前記装置の汚れあるいは腐食を示す警報信号を発することを含む、
産業プロセスのプロセス装置の汚れまたは腐食を検知する方法。
【請求項24】
上流または下流圧力を測定するように構成された第1の圧力センサ、
バルブ位置を制御するために用いられる空気流体の圧力を測定するように構成された第2の圧力センサ、および
前記感知された圧力に基づいて前記バルブの動作を分析するように形成された診断回路を含む、
産業プロセスのバルブの動作を診断する装置。
【請求項25】
前記第1の圧力センサが、前記プロセス流体内の音響周波数を感知するように構成された請求項24の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−531868(P2007−531868A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520327(P2006−520327)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/022736
【国際公開番号】WO2005/010522
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】