説明

プロテアーゼに対するインヒビタータンパク質およびその利用

本発明は、阻害ポリペプチド配列を含むプロテアーゼのキメラインヒビタータンパク質、ならびに、プロテアーゼに関して特異的な基質−酵素相互作用部位からなる少なくとも1つのポリペプチド配列に関する。本発明の他の目的は、プロテアーゼのキメラインヒビタータンパク質をコードする精製および単離されたDNA配列、前記精製および単離されたDNA配列を含む発現ベクター、この発現ベクターによって形質転換された真核または原核宿主細胞、ならびにキメラインヒビタータンパク質を産生する方法を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、インヒビターのポリペプチド配列と、プロテアーゼに特異的な基質-酵素相互作用部位からなる少なくとも1つのポリペプチド配列とを含む、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質に関する。
【0002】
今回の発明の別の目的は、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする精製・単離されたDNA配列、前述の精製・単離されたDNA配列を含むことで特徴付けられた発現ベクター、この発現ベクターを用いて形質転換された真核または原核宿主細胞およびキメラインヒビタータンパク質の産生方法を規定することである。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
生物が発現するタンパク質のうち、プロテアーゼは、細胞の生死に関わる経路を媒介する最も重要なタンパク質に含まれる。実際に、プロテアーゼと基質との初期相互作用とそれに続く基質の分解は、血栓症、血液凝固、およびアポトーシスを含む必須の生体事象の膨大な多様性を構成している。
【0004】
がん、自己免疫疾患、炎症、および感染症など、プロテアーゼが関連している多くの病状においては、制御不能なタンパク質分解またはプロテアーゼと抗プロテアーゼとのアンバランスが主要な要因であろうという仮説に基づいて、前記タンパク質分解または前記アンバランスについて精力的な研究が続けられている。
【0005】
がんや炎症性疾患(慢性関節リウマチや肺気症など)のモデルにおいて、抗プロテアーゼ治療薬を用いて行われたさまざまな研究は、症状の改善を示す興味深い結果を示し、抗プロテアーゼ治療の効果およびプロテアーゼとインヒビターのバランスの役割を裏付けている。
【0006】
たとえば、前立腺がんはアメリカ人男性で最も頻繁に診断されるがんのひとつであるが、プロテアーゼは急速ながんの成長、浸潤、および転移を含むがん細胞の悪性挙動において中心的な役割を果たしていると考えられている。
【0007】
ヒト腺性カリクレインタンパク質(human kallikrein 2: hK2)は、前立腺上皮で優位に発現するトリプシン様セリンプロテアーゼである。hK2はヒト精漿から初めて単離され、前立腺がんの診断マーカーであることが近年明らかになった(デペルセス他,「hGK−1としても知られている、前立腺カリクレインhK2のヒト精漿からの単離」,バイオケミカ エ バイオフィジカ アクタ,第1245巻,311−361頁,1995年(Deperthes et al. 1995 “Isolation of prostatic kallikrein hK2, also known as hGK-1,
in human seminal plasma” Biochim Biophys Acta, 1245, 311-6))。
【0008】
hK2はマーカーとして機能するほか、hK2のタンパク質分解活性は、hK2ががんの進行に寄与していることを示唆している。この酵素についてはいくつかの潜在的な機能が提案されており、前記機能には、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子の活性化、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子−1の不活性化、pro−PSAの活性化、フィブロネクチンの分解、およびインシュリン様成長因子結合タンパク質(IGF−BP)の分解が含まれる(クロウチェ他,「フェーズディスプレイにより選択された基質を用いた、ヒトカリクレイン2に特異的な組み換えインヒビターの開発」,ヨーロピアン ジャー
ナル オブ バイオケミストリー,第3巻,607−613頁,2004年(Cloutier et al., 2004 “Development of recombinant inhibitors specific to human kallikrein 2
using phase-display selected substrates” Eur J Biochem, 3, 607-13)を参照)。
【0009】
がん(特に前立腺がん)中で、hK2は、PI−6として知られているプロテアーゼインヒビターと特異的な複合体を形成することが最近明らかになった。
【0010】
この特異的な複合体の発見に基づいて、米国特許第6,284,873号および米国特許第6,472,143号は、がんの有無または組織の壊死の有無を決定する診断方法を提供している。
【0011】
前立腺組織に特異的な発現、ならびに、がん発生に関与するすべての潜在的な基質との関連により、hK2は潜在的な治療ターゲットであると考えられている(ダルソン他,「前立腺上皮内新生物および腺癌におけるヒト腺性カリクレイン2(hK2)の発現:新規な前立腺がんマーカー」,ウロロジー,第49巻,857−862頁,1997年(Darson et al. 1997 “Human glandular kallikrein 2 (hK2) expression in prostatic intraepithelial neoplasia and adenocarcinoma: a novel prostate cancer marker” Urology, 49, 857-62)。このため、特異的でかつ長期間にわたって機能するプロテアーゼインヒビター、特にカリクレインインヒビターの開発は有益である。
【0012】
これらのプロテアーゼインヒビターの候補は、セルピン(serpin: serine protease inhibitors)ファミリーから選択可能である。このファミリーは複雑な生理的過程の制御に関与する大きなタンパク質ファミリーである。約45kDaの分子量を有するこれらのタンパク質は2つのサブグループに分けることができる。一方はインヒビターであり、他方は非インヒビターである。
【0013】
セルピンは、露出した柔軟な反応性ループ部位または反応性セルピンループ(reactive-serpin loop: RSL)を有し、前記反応性ループ部位または前記反応性セルピンループは、推定される標的プロテアーゼとの相互作用に関連している。酵素へ結合し、RSLのP1−P1’の切断部位が開裂すると、共有結合した複合体が形成される(ハンチントン他,「セルピン−プロテアーゼ複合体の構造は変形により阻害を示す」,2000年,ネイチャー,第407巻,923−926頁(Huntington et al. 2000 “Structure of a serpin-protease complex shows inhibition by deformation” Nature, 407, 923-6))。この複合体の形成は大きな配座再配置を引き起こし、これにより、標的プロテアーゼを不可逆的にトラップする。セルピンの阻害特異性は主に、P1−P1’に位置するアミノ酸残基の特性およびRSLの長さに基因する。セルピンのRSLドメインまたはセルピンの反応部位の改変は、セルピン−酵素間の阻害プロセスを理解し、特異的なインヒビターを開発するためのアプローチのひとつである(デュホー他,「フリンとの反応に関する、α 1−アンチトリプシンのP6−P1領域内におけるアルギニン残基の寄与」,ジャーナル
オブ バイオロジカル ケミストリー,第276巻,38971−38979頁,2001年、ならびに、プロントニック他,「セリン α(1)−アンチキモトリプシンの阻害特性における反応部位位置の効果」,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第277巻,29927−29935頁,2001年((Dufour et al. 2001 “The contribution of arginine residues within the P6-P1 region of alpha 1-antitrypsin to its reaction with furin” J Biol Chem 276, 38971-9 and Plotnick et al. 2002 “The effects of reactive site location on the inhibitory properties of the serpin
alpha(1)-antichymotrypsin” J Biol Chem, 277, 29927-35))。
【0014】
プロテインC、α2アンチプラスミン、アンチトロンビン−III、α1−アンチキモトリプシン(ACT)、またはプロテアーゼインヒビター6などのいくつかのセルピンはh
K2のインヒビターとして確認されている(サエディ他,「ヒトカリクレイン2(hK2)は前立腺特異的抗原(PSA)ではなく、前立腺癌細胞から遊離されるプロテアーゼインヒビター6(PI−6)と速やかに複合体を形成する」,インターナショナル ジャーナル オブ キャンサー,第94巻,558−563頁((Saedi et al. 2001 “Human kallikrein 2 (hK2), but not prostate-specific antigen (PSA), rapidly complexes with
protease inhibitor 6 (PI-6) released from prostate carcinoma cells” Int J Cancer, 94, 558-63))。hK2−ACT間の比較的遅い複合体形成は主に、RSL中のP1−P1’部位のLeu358残基−Ser359残基に起因し、これらの残基はこのトリプシン様酵素にとって好ましくないペプチド結合である。
【0015】
現在までに、新しいカリクレインインヒビター(プラスマカリクレインを特異的に阻害するカリクレインインヒビター)の選択ならびにその治療方法および診断方法への利用が発表されている(米国特許第6,057,287号,米国特許第6,333,402号,米国特許第5,994,125号,および米国特許第5,795,865号)。しかしながら、これらの特許は、ウシ膵トリプシンインヒビターのKunitzドメインに相同なインヒビターの産生(特に、プラスマカリクレインを特異的に阻害する、リプロプロテイン(liproprotein)に関連する凝固インヒビター(LACI)のKunitzドメインに相同なタンパク質の産生)について記述している。
【0016】
これらのインヒビターはプラスマカリクレインに特異的であるのに加えて、これらのインヒビターはかなり小さな分子であり、プラスマカリクレインに可逆的な様式で結合する。このアプローチの主な欠点の一つは、標的プロテアーゼを可逆的な様式で阻害するタンパク質の利用により、プロテアーゼ複合体が解離して、そのプロテアーゼの酵素活性が回復する危険性があることである。
【発明の開示】
【0017】
したがって、ここで記載されているように、より大きなインヒビターを使用する利点の一つは、不可逆的な方法で標的プロテアーゼを阻害する共有結合複合体の形成を導くことである。本発明のさらなる利点は、大きな共有結合複合体が血液循環から速やかに除かれることが知られていることである。
【0018】
[発明の要旨]
したがって、本発明の目的は、プロテアーゼに対して高い特異性を有するプロテアーゼインヒビタータンパク質、ならびに医薬品組成物における前記インヒビタータンパク質の利用を提供することである。このインヒビタータンパク質は、阻害ポリペプチド配列と、プロテアーゼに特異的な基質−酵素相互作用部位からなる少なくとも1つのポリペプチド配列とを含む範囲においてキメラである。
【0019】
本発明の他の目的は、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離されたDNA配列、前記精製および単離されたDNA配列を含むことを特徴とする発現ベクター、ならびにこの発現ベクターを用いて形質転換された真核宿主細胞および原核宿主細胞を提供することである。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質の製造方法を提供することである。この方法は以下の工程を含む。
【0021】
(a)プロテアーゼに特異的な基質−酵素相互作用部位をコードするポリヌクレオチド配列を選択すること、
(b)前記ポリペプチド配列を、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼに対するインヒビタータンパク質をコードする配列中に導入し、キメラ配列を得ること、
(c)適切な条件下で細胞発現系にて前記キメラ配列を発現させること、および
(d)プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を回収すること。
【0022】
[発明の詳細な説明]
本発明は、阻害ポリペプチド配列と、プロテアーゼに特異的な基質−酵素相互作用部位からなる少なくとも1つのポリペプチド配列とを含む、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質に関する。
【0023】
「キメラインヒビタータンパク質」という用語は、2以上のポリペプチドを含むタンパク質のことを指し、ここで、前記タンパク質は異なる由来からなり、換言すれば、自然界において共に発生しないものである。
【0024】
ここで用いられているように、「タンパク質」、「ポリペプチド(の)」、および「ペプチド(の)」という用語は、本発明においては、置換可能であるとして使用されており、これらは、隣り合う残基におけるα−アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合により互いに結合された一連のアミノ酸残基を示す。
【0025】
本発明のキメラタンパク質はプロテアーゼに対するインヒビターであり、阻害ポリペプチド配列と、プロテアーゼに特異的な基質−酵素相互作用部位からなる少なくとも1つのポリペプチド配列とから構成されている。基質−酵素相互作用部位のポリペプチド配列は、特定のプロテアーゼに対してそのインヒビターに非常に高い選択性を与え、この基質−酵素相互作用部位のポリペプチド配列は、阻害されるプロテアーゼに基づき選ばれる。
【0026】
一般的に、基質−酵素相互作用部位のポリペプチド配列は基質作用部位配列であることができる。「基質作用部位配列」という用語は、基質上に見られ、プロテアーゼにとって選択的な認識部位である配列を指す。プロテアーゼによる基質作用部位配列の認識は、基質の活性化、不活性化、または分解を導き、ほとんどの場合、この高アフィニティー相互作用は、特異的な配列の認識のみならず、その3次元配座の認識と関連している。
【0027】
基質作用部位配列を有するキメラ分子も本発明に含まれる。「キメラ分子」という用語は、基質作用部位配列の機能部位を含むことができ、例えば、当業者に知られているタンパク質化学技術によって得ることができるポリヌクレオチド配列を指す。
【0028】
基質作用部位配列またはその断片あるいはそれに類似する部分の特定の組み合わせもまた本発明に含まれると考えられる。
【0029】
「断片」という用語は、基質作用部位のそれぞれの配列の長さの少なくとも40%のアミノ酸を共有している配列を指す。これらの配列は、これらの配列が基因する本来の配列と同じ特性を示す限りにおいて用いることができる。これらの配列は、基質作用部位のそれぞれの配列の長さのうち70%以上のアミノ酸配列を共有しているのが好ましく、80%以上のアミノ酸配列を共有しているのがより好ましく、90%以上のアミノ酸配列を共有しているのが特に好ましい。
【0030】
これらの断片は、例えば化学合成のような当該技術分野で知られているさまざまな方法および技術によって調製可能である。
【0031】
本発明はまた、基質作用部位配列の変異体を含む。「変異体(バリアント)」という用語は、本来のポリペプチド配列とある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドのことを指し、すなわち、「変異体」とは、保存性アミノ酸の置換により本来の配列とは異なるアミノ酸配列であり、これにより、1つ以上のアミノ酸が同じ特性および構造的な役割
を有する別のアミノ酸によって置換されている。アミノ酸配列の変異体は、本来のアミノ酸配列中のある部位で置換、欠失、および/または挿入を含む。ここで、保存性アミノ酸の置換は、以下の5つの群のうちの1つにおける交換として定義される。
【0032】
I. 小さく、非極性または僅かな極性を有する脂肪族残基:Ala, Ser, Thr, Pro, Gly
II. 極性を有し、正に帯電している残基:His, Arg, Lys
III. 極性を有し、負に帯電している残基およびそのアミド:Asp, Asn, Glu, Gln
IV. 大きく、芳香性の残基:Phe, Tyr, Trp
V. 大きく、非極性の脂肪族残基:Met, Leu, Ile, Val, Cys
【0033】
本発明の基質は好ましくはセルピンであり、この場合、基質作用部位配列は反応性セルピンループ(RSL: Reactive Serpin Loop)配列、その断片、そのキメラ分子、その組み合わせ、および/またはそのバリアントであってもよい。
【0034】
「反応性セルピンループ」、「反応性部位ループ」、または「RSL」という用語は、セルピン中に見られる露出した柔軟な反応部位のループを指し、このループは、推定される標的プロテアーゼとの相互作用に関連していることが示唆される。切断部位のアミノ酸側の残基から、その結合部位から離れる方向に向かって、残基は慣習的にP1,P2,P3,…などと呼ばれる。切断部位に続いている残基は、P1’,P2’,P3’,…などと呼ばれる。RSLは通常、6−12アミノ酸残基で構成されている。
【0035】
このRSL配列は配列番号16,17,18,19,20,21および22、その断片、そのキメラ分子、その組み合わせ、および/またはその変異体を含む群から選択可能である。
【0036】
RSL配列は、表1に示された以下の可能性から選択可能である。
【0037】
【表1】

【0038】
通常、前記プロテアーゼはカリクレイン、キモトリプシン(Chtr)、ウロキナーゼ(uPA)、およびヒト好中球エラスターゼ(HNE)を含む群から選ばれる。前記プロテアーゼはヒトカリクレインであることが好ましく、hK2(hGK−1としても知られている)であることが特に好ましい。
【0039】
hK2は15のメンバーからなり、カリクレイン遺伝子ファミリーに属し、前立腺特異抗原(PSAまたはhK3)およびhK2のみが前立腺で高いレベルで発現する。hK2の潜在的な生理的役割の1つは、射精直後に形成される、精子を取り囲むゲル成分のタンパク質分解で、特に、セメノゲリン(se menogelins)およびフィブロネクチン(fibronectin)の分解である。加えて、hK2がインシュリン様成長因子(IGF)結合タンパク質の加水分解によって、IGFによる細胞分裂作用を高めることが可能であることがin vitroの実験で示されている。in vitroの実験ではまた、hK2がプロウロキナーゼを活性化し、キニノゲン(kininogens)からブラジキニン様物質を生成し(B2ブラジキニンリセプターを介した、EGFリセプターの潜在的活性化)、プロPSAを活性型に変換することが示されている。これらのhK2の活性は、細胞外マトリクスタンパク質の分解におけるhK2の潜在的な役割を証明する。加えて、hK2は、細胞分裂因子の放出および成長に関わる受容体の活性化により、前立腺がんの発達を高めることができる。
【0040】
阻害されるプロテアーゼがシステインプロテアーゼである場合、このプロテアーゼはカテプシン(K,L,およびSのサブタイプ)、プロホルモンチオールプロテイナーゼ(prohormone thiol proteinase)、およびカスパーゼファミリー(カスパーゼ1,3,4,および8)を含む群選ばれる。
【0041】
システインプロテアーゼは、触媒活性を得るためにシステイン残基を用いるプロテアーゼ酵素であり、少なくとも30のタンパク質ファミリーに分類可能である。それぞれのファミリーは、相同なアミノ酸配列を持ち、そのファミリーメンバーの類似する三次元構造を反映する進化的に保存された配列モチーフを含む。
【0042】
キメラインヒビタータンパク質の阻害ポリペプチド配列は通常、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼである。
【0043】
阻害ポリペプチド配列がセリンプロテアーゼに由来する場合、この阻害ポリペプチド配列はセルピンの配列、その断片、そのキメラ分子、その組み合わせ、および/またはその変異体であることが好ましい。
【0044】
このセルピンの配列は、α−1アンチキモトリプシン(ACT)、プロテインCインヒビター(PCI)、α−1アンチプロテイナーゼ(AAT)、ヒトα−1アンチトリプシン関連タンパク質前駆体(ATR)、α−2−プラスミンインヒビター(AAP)、ヒト抗トロンビン−III前駆体(ATIII)、プロテアーゼインヒビター10(PI10)、ヒトコラーゲン結合タンパク質2前駆体(CBP2)、プロテアーゼインヒビター7(PI7)、プロテアーゼインヒビタールーセプリン2(HLS2)、ヒトプラスマプロテアーゼC1インヒビター(C1 INH)、単球/好中球エラスターゼインヒビター(M/NEI)、プラスミノーゲン活性化インヒビター−3(PAI3)、プロテアーゼインヒビター4(PI4)、プロテアーゼインヒビター5(PI5)、プロテアーゼインヒビター12(PI12)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−1前駆体内皮(PAI−1)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−2胎盤(PAI−2)、色素上皮由来因子前駆体(PEDF)、プロテアーゼインヒビター6(PI6)、プロテアーゼインヒビター8(PI8)、プロテアーゼインヒビター9(PI9)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−1)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−2)、T4−結合グロブリン(
TBG)、メグシン、およびプロテアーゼインヒビター14(PI14)、これらの断片、これらの分子キメラ、これらの組み合わせ、および/またはこれらの変異体を含む群から選択可能である。
【0045】
これらのセルピンのほとんどは異なる名前を有するため、その内訳を要約する以下に表(表2)を含める。
【0046】

【表2】


【0047】
本発明にかかるキメラインヒビタータンパク質の例として、驚くべきことに、本出願人は下記の表3中に要約されたhK2プロテアーゼに特異的な6つの新しいインヒビタータンパク質を見出した。これらのインヒビターは以下のとおりである。
【0048】
【表3】

【0049】
これらのキメラインヒビタータンパク質は、セルピンの特異性を変えるために、α1−アンチキモトリプシン(rACT)のRSLを変更することにより得られたものであり、rACTは、キモトリプシン、肥満細胞キマーゼ、カテプシンG、hK2、およびPSA(hK3)などの多くのヒト酵素を阻害することが知られている。実施例1で詳細に説明されているようなファージディスプレイ技術により酵素hK2の基質として選ばれたペプチド配列は、RSLの切断部位および周辺のアミノ酸残基を置換するために使用されている。組み換えインヒビターはバクテリア中で産生され、アフィニティークロマトグラフィーによって精製された。
【0050】
野生型rACTはhK2を非常にゆっくりと(12−16時間で)阻害するのに比べて、改変されたrACTは共有結合した複合体を数分間以内で非常に敏速に形成することが明らかになっている。6つのrACT変異体のうち3つはhK2に特異的であり、大きな会合定数(association constant)を示した(表5および表6参照)。過剰のインヒビター([I(インヒビター)]:[E(酵素)]=100:1(濃度比))との30分間の反応により、hK2の酵素活性はrACT6.2、rACT8.3、rACT6.7およびrACT6.1によって完全に阻害され、その一方で、rACT8.20およびrACT5.18はhK2の酵素活性をそれぞれ95%および73%阻害した。この条件下で、野生型rACTは、hK2に対する阻害活性を全く示さなかった。これらの変異体のうち、rACT8.3およびrACT5.18の2つはhK2に対して特異的に作用し、他のテストされた酵素を全く阻害しなかった。別の2つの変異体rACT6.7およびrACT6.2はそれぞれ、PKを36%および100%阻害した。野生型ACTと同様に、変異体rACT8.20は2つのキモトリプシン様プロテアーゼChtrおよびPSAの活性を阻害したが、付加的にPKおよびHNEも同様に阻害した。どの組み換えセルピンも、hK1およびuPAに対する阻害活性を示さなかった。
【0051】
加えて、本出願人はまた、rACTWTのRSL中のP3−P3’残基を、プロテインCインヒビター(PCI)のRSLをコードする基質5残基ペプチドで置換することにより、hK2およびhK3を阻害することができるキメラインヒビター(MDCI)の産生を導き出せることを見出した。
【0052】
したがって、プロテアーゼのキメラインヒビターは、MD820、MD62、MD61、MD67、およびMDCIを含む群から選択可能である。このキメラインヒビタータンパク質は、MD62またはMD61が好ましい。
【0053】
阻害の化学量論(SI)値が1よりも大きい場合、通常、セルピンが基質として挙動すると解釈されることが知られている。この図式では、RSLにおける初期のミカエルス複合体の形成および開裂の後、ほとんどの複合体は、活性型酵素と、完全に不活性化された切断されたインヒビターとに分離される。本出願人はインヒビターの非複合体形成に関して、ACT変異体とhK2との間の反応を分析し、プロテアーゼに対して10倍過剰のインヒビターを含む試料をインキュベートしている。これらの条件は、テストされたACT変異体のために計算されたSI値に近いかもしくはそれよりも下であり(表4参照)、通常、セルピンまたはセルピン−プロテアーゼ複合体のタンパク質分離が起こりやすい。驚くべきことに、本出願人は、大きなSI値にもかかわらず、hK2によるACT変異体の分解が観察されないというその仮説の矛盾を見出した。その仮説に拘泥するつもりはなく、ACTの分解の欠如に関して可能性のある説明は、SI値の決定が行われた条件に存在する。共有結合しているACT−hK2複合体は、in vitroで非常にゆっくりと形成される。このことは、野生型ACTは25℃で30分間のインキュベートした後、hK2に対して阻害活性を全く示さず(表5)、37℃でのより長いインキュベーションを行なった後でさえ、hK2が野生型ACTと部分的にのみ複合体を形成したという我々の観察結果と一致する(図3)。
【0054】
本出願人はまた、これらの新しいインヒビターに関して、他のプロテアーゼに対する特異性を評価した。その評価は、今後のin vivoでの応用へのより有意な置換を確実にするために、全てのプロテアーゼに対して同じ条件下(擬似生理的条件下)で行われた。hK2に対するファージディスプレイによって選ばれた基質でRSL開裂部位を置換することにより、野生型ACTは、hK2に対してより高い感受性を有するインヒビターへと改変される。加えて、これらのインヒビターのうちの2つは、hK2に対してのみ阻害活性を有し、類似する生物学的基質を標的としていることが知られている他の酵素(プラスマカリクレイン、hK1、PSA、ウロキナーゼ (uPA)、好中球エラスターゼ(HNE)など)に対しては阻害活性を示さなかった。本出願人の知る限り、本出願はhK2に特異的なインヒビターの開発について述べる初めての報告である。
【0055】
興味深いことに、rACT8.20(MD820)はhK2のほか、キモトリプシンを阻害し、かつ、プラスマカリクレインおよびヒトエラスターゼをより弱く阻害し、広範囲な阻害特異性を示す。
【0056】
これまでに、セルピンによるシステインプロテアーゼの阻害を詳しく報告した事例が多数存在しており(ゲッティン P.G.W.,「セルピンの構造、機構、および機能」,ケミストリーレビュー,第102巻,4751−4803頁,2002年(Gettins P.G.W., 2002 “Serpin structure, mechanism, and function” in Chem. Rev, 102, 4751-4803))、キメラインヒビタータンパク質の阻害ポリペプチド配列はまた、システインプロテアーゼによっても選ばれてもよい。これらの例は、セルピンの扁平上皮細胞癌抗原1によるカテプシンK,L,およびSの活性阻害、α−1アンチキモトリプシンによるプロホルモンチオールプロテイナーゼの活性阻害、ウイルス由来セルピンcrmAによるカスパーゼ1(インターロイキン1β転換酵素)、カスパーゼ3、およびカスパーゼ8を含むカスパーゼファミリーメンバーの活性阻害、およびヒトセルピンPI9によるカスパーゼ1,4,および8の活性阻害である。
【0057】
組み換え技術を用いて、本発明にかかるプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を調製する場合、ポリペプチドをコードする核酸分子またはその断片が使われるのが好ましい。
【0058】
したがって、本発明は、上述のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離されたDNA配列に関する。
【0059】
「精製および単離されたDNA配列」という用語は、本発明のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする核酸分子、あるいは、本発明にしたがって、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質のようなタンパク質をコードする核酸を指す。核酸は、制限がない(または実質上制限がない)物質であり、前記物質は、自然界または調製された環境(例えば培養細胞中)で、他のポリペプチドまたは核酸などの物質と自然に結合する。ここで、調製された環境では、その調製がin vitroまたはin vivoで行われている組み換えDNA技術による。
【0060】
ここで使用されるDNAはあらゆるポリデオキシヌクレオチド配列であり、例えば、二本鎖DNA、一本鎖DNA、一方または両方の鎖が2つ以上の断片から構成されている二本鎖DNA、一方または両方の鎖が解釈できない燐酸エステル骨格を有する二本鎖DNA、1つ以上の一本鎖部位と1つ以上の二本鎖部位を含むDNA、DNA鎖が完全に相補的な二本鎖DNA、DNA鎖の一部のみが相補的な二本鎖DNA、環状DNA、共有結合によって閉じられたDNA、直鎖DNA、共有結合によって架橋されたDNA、cDNA、化学合成されたDNA、半合成されたDNA、生合成されたDNA、自然界から単離され
たDNA、酵素によって消化されたDNA、摘み取られたDNA、放射線標識されたDNAおよび蛍光標識されたDNAなどの標識化されたDNA、1つ以上の自然界には存在しない種類の核酸を含むDNAである。
【0061】
プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードするDNA配列またはその断片は、標準的な化学技術(例えば、ホスホトリエステル法、あるいは自動化された合成方法およびPCR法を介した方法など)によって合成可能である。
【0062】
本発明にかかるキメラインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離されたDNA配列は、酵素学的な技術によって産生させてもよい。この場合、制限酵素は予め決定された認識配列を開裂し、かつ、キメラインヒビタータンパク質またはその断片をコードするDNA(またはRNA)などの核酸配列を含むより大きな核酸分子から核酸配列を単離するために使用可能である。
【0063】
ポリリボヌクレオチド(RNA)の形態の核酸はまた、本発明に含まれ、例えば、一本鎖RNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、一方または両方の鎖が2つ以上の断片から構成されている二本鎖RNA、一方または両方の鎖が解釈できない燐酸エステル骨格を有する二本鎖RNA、1つ以上の一本鎖部位と1つ以上の二本鎖部位を含むRNA、RNA鎖が完全に相補的な二本鎖RNA、RNA鎖の一部のみが相補的な二本鎖RNA、共有結合によって架橋されたRNA、酵素によって消化されたRNA、摘み取られたmRNA、化学合成されたRNA、半合成されたRNA、生合成されたRNA、自然界から単離されたRNA、放射線標識されたRNAおよび蛍光標識されたRNAなどの標識化されたRNA、1つ以上の自然界には存在しない種類の核酸を含むRNAである。
【0064】
プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離されたDNAは、配列番号N°1、配列番号N°3、配列番号N°5、配列番号N°7、配列番号N°9、配列番号N°11、および配列番号N°13を含む群から選ばれるのが好ましい。
【0065】
本発明はまた、前述の変異体の配列を含み、該変異体の配列は保存性ヌクレオチドの置換により、リファレンス配列と異なるヌクレオチド配列であり、これにより、1つ以上のヌクレオチドが同じ性質を有する別のヌクレオチドによって置換されている。
【0066】
また、本発明の別の目的は、前述したようなプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離された配列を含む発現ベクターを提供することである。発現ベクターの選定は、当該技術分野でよく知られているように、所望の機能的性質(例えば、キメラインヒビタータンパク質の発現、形質転換またはトランスフェクトされる宿主細胞)に直接依存する。
【0067】
加えて、発現ベクターはさらに、精製および単離されたDNA配列と操作上結合されるプロモーターをも含んでいてもよい。これは、本発明のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする精製および単離された結合DNA配列が、発現を許容される適切な制御配列の制御下にあることを意味し、ここで、発現とは、換言すれば、挿入された単離および精製されたDNA配列の転写および翻訳のことである。
【0068】
ここで用いられているように、「プロモーター」という用語は、当該技術分野で知られているような付加的な制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー、ポリペプチドの発現のために通常機能しているポリアデニル化部位およびスプライス部位)を指し、あるいは、1つ以上離れた標的配列を付加的に含んでいてもよく、選択可能なマーカーを任意にコードしていてもよい。
【0069】
宿主細胞に適応可能な状態で使用可能なプロモーターとしては、例えば、ポリオマウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、パピローマウイルス(例えばウシパピローマウイルス)、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(例えば、マウスまたはヒトのサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター)、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、そしてシミアンウイルス40(例えば、SV40初期および後期プロモーター)などのウイルスのゲノムから得られたプロモーター、あるいは、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、またはヒートショックプロモーターなどの外来の哺乳類プロモーターから得られたプロモーターが挙げられる。
【0070】
使用可能なエンハンサーとしては、例えば、哺乳類の遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインシュリン)から既知のエンハンサー配列、あるいは、真核細胞ウイルスのエンハンサー(例えば、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターのエンハンサー、ポリオーマのエンハーサー、アデノウイルスのエンハンサー)から既知のエンハンサー配列が挙げられる。
【0071】
本発明のDNA配列の発現において、膨大な種類の宿主/発現ベクターの組み合わせを用いることができる。有用な発現ベクターは例えば、染色体由来のDNA配列、非染色体由来のDNA配列、および合成DNA配列の断片からなることができる。適切なベクターは、SV40の誘導体、既知の細菌プラスミドおよびその誘導体(例えば、E.coliのプラスミド,col El,pCRl,pBR322、pMB9)、RP4などのプラスミド、ファージDNA(例えば、多数のファージX誘導体(例えばNM989))、他のファージDNA(例えば、M13、糸状一本鎖ファージDNA)、酵母プラスミドまたはその誘導体(例えば、2μプラスミド)、真核生物細胞で有用なベクター(例えば、昆虫または哺乳類の細胞で有用なベクター)、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせから得られたベクター(ファージDNAまた他の発現を制御する配列が機能するように改変されたプラスミドなど)、ならびにこれらの類似物を含む。
【0072】
最も好ましい発現ベクターはpQE−9である。
【0073】
本発明の別の目的は、ここで述べられている発現ベクターによって形質転換またはトランスフォームされた真核または原核宿主細胞を提供することである。
【0074】
「形質転換された細胞」または「トランスフォームされた細胞」あるいは「形質転換/トランスフォームされた細胞」という用語は、細胞外DNAが導入され、かつ、その細胞外DNAを保持する細胞を意味する。そのDNAは、核酸が染色体の構成成分としてまたは染色体外成分として複製できるように細胞に導入されてもよい。
【0075】
本発明にしたがって精製および単離されたDNAを含む発現ベクターを、適切な真核または原核宿主細胞に形質転換またはトランスフォームすることは、典型的には、使用されるベクターに依存する良く知られた方法によって達成される。これらの方法に関しては、例えば、マニアチス他,「分子クローニング,研究室マニュアル」,コールド・スプリング・ハーバー研究室,1982年(Maniatis et al. 1982, Molecular Cloning, A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory)および商業的に利用可能な方法を参照されたい。
【0076】
ここで開示されているキメラインヒビタータンパク質は、細胞発現系で組み換えにより産生されるのが好ましい。
【0077】
本発明のDNA配列の発現において、多くの種類の単細胞系宿主細胞が有用である。こ
れらの宿主は、良く知られた真核宿主および原核宿主(E.coli,シュードモナス(Pseudomonas),バチルス(Bacillus),ストレプトマイセス(S treptomyces)などの菌株)、真菌(酵母など)、動物細胞(CHO,YB/20,NSO,SP2/0,R1.1,B−W細胞,およびL−M細胞,アフリカミドリザル腎細胞(例えば、COS1,COS7,BSC1,BSC40,BMT10),昆虫細胞(例えばSf9))、および組織培養したヒト由来細胞および植物由来細胞を含んでいてもよい。宿主細胞は好ましくは細菌細胞であり、より好ましくはE.coli細胞である。
【0078】
本発明はまた、ここで述べられているキメラインヒビタータンパク質を活性物質として含む医薬組成物に関し、1つ以上の薬学的に許容しうる担体,賦形剤,補助剤と任意に組み合わせられる。
【0079】
ここで述べられているように、少なくとも1つのキメラインヒビタータンパク質に加えて、その医薬組成物は、活性化合物を薬学的に許容しうる調剤へと調合するプロセスを容易にする1以上の薬学的に許容しうる担体,賦形剤,補助剤などを含んでいてもよい。
【0080】
許容しうる担体、賦形剤、および補助剤は、適用される投与量および濃度において、服用者に対して非毒性であり、かつ、バッファー(燐酸,クエン酸,およびその他の有機酸など)、抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む)、保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム,塩化ヘキサメソニウム,塩化ベンゾアルコニウム,塩化ベンゼソニウム,フェノール,ブチルオーベンジルアルコール)、アルキルパラベン(メチルパラベン,プロピルパラベンなど),カテコール,レソシノール,シクロヘキサノール,3−ペンタノール,m−クレゾールなど)、低分子量のポリペプチド(10残基未満)、タンパク質(血清アルブミン,ゼラチン,免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン,グルタミン,アスパラギン,ヒスチジン,アルギニン,リジンなど)、単糖類,二糖類,およびその他の炭水化物(グルコース,マンノース,またはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖(ショ糖,マンニトール,トレハロース,ソルビトールなど)、塩形成カウンターイオン(ナトリウムなど)、金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性剤(ツイーン(登録商標)、プロロニック(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG))を含む。
【0081】
医薬組成物の投与形態は全身的または局所的であってもよい。例えば、そのような組成物の投与は、さまざまな非経口経路(皮下経路,静脈経路,皮内経路,筋肉内経路,腹膜内経路,鼻腔内経路,真皮内経路,口腔内経路など)であってもよく、または、移植された装置を介するものであってもよく、あるいは、蠕動手段によって送達されてもよい。
【0082】
ここで述べられているように、キメラインヒビタータンパク質を含む医薬組成物はまた、生体吸収性マトリクス中に活性物質として含有または含浸されていてもよく、ここで、前記マトリクスは懸濁液、ゲル、または固形支持体の形態で投与される。加えて、前記マトリクスはバイオポリマー(bi opolymer)からなるものであってもよい。
【0083】
徐放性調剤を調製してもよい。徐放性調剤の適切な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスであり、そのマトリクスは、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの成形物の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性のエチレン−酢酸ビニル共重合体、分解性の乳酸−グリコール酸共重合体(ルプロン デュポン(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注入可能なマイクロスフェア),およびポリ−D−(−
)−3−ヒドロキシ酪酸)が含まれる。
【0084】
in vivo投与に用いられる調剤は無菌でなければならない。これは、例えば無菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
【0085】
いずれかの効果およびある種の効果を期待する場合、本発明のキメラインヒビタータンパク質の適切な投与量は、服用者の年齢、性別、健康状態、体重、ならびに同時に行なう治療の種類に依存すると思われる。
【0086】
適切な投与形態は、疾患、キメラインヒビタータンパク質、および投与様式に依存するだろう。可能性がある投与形態には、錠剤、カプセル、トローチ剤、練り歯磨き、座薬、吸入剤、液体、軟膏、および非経口注射が含まれる。
【0087】
キメラインヒビタータンパク質のアミノ酸のアミノ酸修飾も本発明に含まれ、この修飾は、非水溶性マトリクスまたは他の微細分子担体にキメラインヒビタータンパク質を架橋したり、あるいは、血液−脳関門を通過する際の可溶性、吸収性、および透過性を改善したりするのに有用であるかもしれない。
【0088】
そのような修飾は当該技術分野でよく知られており、その代わりに、タンパク質およびその均等物の潜在的に望ましくない副作用を除去または緩和してもよい。
【0089】
本発明の好ましい医薬組成物がキメラインヒビタータンパク質を活性物質として含む一方で、ここで述べられているように、代わりの医薬組成物は、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする精製および単離されたDNA配列を活性物質として含んでいてもよい。この医薬組成物は、精製および単離されたDNA単独で含んでいてもよいし、あるいは、前記精製および単離されたDNA配列を含む発現ベクターまたはそのベクターを用いて前もってトランスフェクトされた宿主細胞を含んでいてもよい。後者の例においては、抗原性の問題を避けるために、治療対象の患者から宿主細胞を単離するのが好ましいだろう。これらの遺伝子治療および細胞治療のアプローチは、医薬組成物を繰り返し投与する必要のある患者にとって特に好都合であろう。なぜなら、精製および単離されたDNA配列、発現ベクター、ならびに発現ベクターを用いて前もってトランスフェクトさせた宿主細胞を、そのタンパク質を内因的に産生するであろう患者の細胞中へ組み込むことが可能だからである。
【0090】
OLE_LINK1本願による開示は、哺乳類のタンパク質分解に関連する疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで述べられているように、該方法は、医薬組成物を前記哺乳類に投与することを含む。
【0091】
本発明にかかる、タンパク質分解に関連する疾患を治療または予防する方法は、その疾患がhK2の活性が有害な疾患である場合に有益であり、そのような疾患は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患(前立腺肥大症など)、または感染症などである。
【0092】
「がん」という用語は、無秩序な細胞成長によって一般的に特徴付けられる哺乳類の生理学的な状況を指したり、または記述したりする。
【0093】
好ましい方法としては、哺乳類はヒトの患者であり、投与されるキメラインヒビタータンパク質は表3の組み換えセルピンの例から選ばれ、これらのセルピンはhK2プロテアーゼを特異的に阻害する。OLE_LINK1
哺乳類のタンパク質分解に関連する疾患の治療または予防のために必要な薬物を調製するために、ここで述べられている本発明の医薬組成物を使用することはまた、本発明の範
囲に含まれる。この場合、その疾患は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患(前立腺肥大症など)、または感染症など、hK2の活性が有害な疾患である。
【0094】
がんの例は前立腺がんに限定されず、がんの例には乳がんまたは転移性がんが含まれる。
【0095】
本発明のキメラインヒビタータンパク質は、予定された目的を達成する量にて一般的に使用可能である。疾患を治療または予防するために使用するに際して、キメラインヒビタータンパク質またはその医薬組成物は、治療にとって効果的な量で投与される。
【0096】
「治療にとって効果的な量」とは、治療を受ける被験者の症状を改善または予防したり、あるいは、治療を受ける被験者を延命したりするのに効果をもたらす量である。治療にとって効果的な量の決定は、特にここで提供されている詳細な開示にしたがって、当業者に理解可能な範囲内で行われる。
【0097】
全身投与用の治療にとって効果的な量または投与量ははじめに、in vitro評価から予測可能である。例えば、投与量は、培養細胞にて決定されたIC50を含む血中濃度の範囲に収まるようにモデル動物に処方される。そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために用いることができる。
【0098】
初期投与量はまた、当該技術分野で良く知られている技術(例えばモデル動物)によるin vivoデータから予測可能である。当業者は、動物実験のデータに基づいてヒトへの投与量を容易に最適化でき、言うまでもなく、その投与量は、治療を受ける被験者自身、被験者の体重、疾患の重篤さ、投与方法、ならびに処方する医師の判断に依存する。
【0099】
本発明はまた、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質の製造方法を含み、該方法は以下の工程を含む。
【0100】
(a)プロテアーゼに特異的な基質−酵素相互作用部位をコードするポリヌクレオチド配列を選択すること、
(b)前記ポリペプチド配列を、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼに対するインヒビタータンパク質をコードする配列中に導入し、キメラ配列を得ること、
(c)適切な条件下で細胞発現系にて前記キメラ配列を発現させること、および
(d)プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を回収すること。
【0101】
プロテアーゼに特異的な基質作用部位をコードするポリヌクレオチド配列の選定は、以以下に示す様々な技術を用いて行なうことができる。該技術は例えば、プロテアーゼ選定のための基質(無菌状態の細胞からペプチドを直接提示するマウス白血病レトロウイルスなど)の提示(ブッコルズ(Buchholz)他,1998年)、あるいは、所望の酵素でトランスフェクトされた哺乳類の細胞を用いて、プロテアーゼの開裂部位をin vivo で選定するために使用されるキメラセンダイウウイルスライブラリーを用いた同様の方法(パシニ他,「キメラセンダイウイルスライブラリを用いた、プロテアーゼ開裂部位のin vivoでの選定」,ジャーナル オブ ビロロジー,第74巻,第22号,10563−10570(Pacini et al, 2000 “ In vivo selection of protease cleavage sites by using chimeric Sindbis virus libraries” J. Virol. 74, 22: 10563-70))である。
【0102】
酵母システムの1つであるGASP(部位特異的タンパク質分解のための遺伝子定量法)も本発明に含まれる。このシステムでは、全長の膜タンパク質に対してランダムな基質を融合することにより、基質を酵母の膜に結合させる。その膜上では、細胞内転写因子がレポーター遺伝子のプロモーターに結合する(カン他,「部位特異的なタンパク質分解の
ための改良された戦略」,モレキュラー セル,第30巻,第11(2)号,263−266号(Kang et al., 2001 “An improved strategy for a genetic assay for site-specific proteolysis” Mol. Cell. 30; 11(2): 263-6))。
【0103】
近年、プロテアーゼの基質特異性を決定するための多数のコンビトリニアルな化学ライブラリーが発表されている。この化学ライブラリーには、蛍光基質ライブラリーおよび位置走査−合成コンビトリニアルライブラリが含まれる。
【0104】
別の方法は、固定化ペプチドライブラリーと名づけられた方法であり、液相中の蛍光強度を測定することにより、ライブラリー中の各メンバーに対する相対的な基質特異性(kcat/Km)を決定し、エドマンシークエンスによって切断部位を同定する(ヒュ他,「固定化ペプチドライブラリーを用いた、クロストリジウム属ヒストリチクム菌β−コラゲナーゼの基質特異性の迅速な同定」,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第8巻,第277(10)号,8366−8371頁,2002年(Hu et al. 2002 “Rapid determination of substrate specificity of clostridium histolyticum beta-collagenase using an immobilized peptide library” J. Biol. Chem. 8, 277 (10): 8366-71)。
【0105】
プロテアーゼの基質特異性がファージディスプレイ技術によって同定される場合、包括的な多様性を含むファージディスプレイランダムペプチドライブラリーが生成され、精製されたプロテアーゼによってスクリーニングされる。この既知の技術は、決められた長さのアミノ酸からなる、考えられる全てのアミノ酸の組み合わせを含むファージディスプレイランダムペプチドライブラリーを構築するために、前述の特異的なケースに適応される。これにより、巨大なライブラリーが、糸状ファージの先端でランダムな配列を提示するように構築され、次いで増幅されて、その特異性を迅速に評価するためにプロテアーゼによってスクリーニングされる。
【0106】
実施例1,2によれば、本出願人は、完全だと考えられる1.8×10個の独立した形質転換体を含むペンタマー(5アミノ酸)ライブラリーを構築した。なぜなら、理論上、3.2×10個の可能性があるランダムペンタマー配列のうち全てが表されていたからである。
【0107】
ファージの配列はさらに、ペンタマーがランダムに挿入されたことを立証した。次いで、ランダムなペンタペプチドを提示するファージはリガンド(6×His)と融合され、アフィニティー支持体(この場合、Ni−NTAマトリクス)に固定化される。プロテアーゼとインキュベートさせた後(実施例1,2の場合、プロテアーゼはhK2であった)、感度が高い基質を発現するファージは固相から遊離される。遊離されたファージは、F因子が陽性である細菌を感染させて、滴定および増幅させるために使用される。次いで、これらのファージは沈殿法によって精製された後、増幅され、次いで、アフィニティー支持体に固定されて、次回のスクリーニングに使用される。このペンタペプチドの選定は、極めて高い特異性を有するポリヌクレオチド配列を得るために、計8回繰り返される。最後の回で選定されたファージは、ペトリ皿にプレートすることによってクローニングされて、個々のファージのDNAは、基質作用部位をコードする部位が増幅されて、酵素によって切断された配列が決定される。
【0108】
次に、キメラ配列を得るために、基質作用部位をコードするポリヌクレオチド配列は、セリンプロテアーゼのインヒビターをコードする配列(例えばrACTをコードする配列)に導入される。2つのサイレントな制限部位Sac IIおよびMlu Iが、rACTのRSLドメインのP1コドンの18bp上流および18bp下流にあらかじめ組み込まれることにより、基質作用部位をコードする選択されたポリヌクレオチド配列がサブクロ
ーニングされる。
【0109】
組み換えキメラインヒビターは、例えば、適切な培養条件下において、大腸菌TG1株中で産生される。適切な培養条件は、発現される組み換えキメラインヒビターに依存し、10−40℃の間の温度内ならびに10−30時間内に含まれる。驚くべきことに、本出願人は、実施例1,2の場合、16℃での16時間の培養により、完全に正常なrACT変異体を発現および産生できることを見出した。
【0110】
最後に、組み換えキメラインヒビターは、組み換えキメラインヒビターが分泌される場合、培地から抽出され、一方、組み換えキメラインヒビターが分泌されない場合、細胞発現系から抽出されて、当該技術分野で知られている技術(高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、減外濾過、イオン交換など)によって精製される。特定の組み換えキメラインヒビターを精製するために使用される実際の条件は、全体の電荷、疎水性、および親水性などの因子に一部依存する可能性があり、当業者はこのことを容易に理解できるだろう。
【0111】
アフィニティークロマトグラフィー精製のため、組み換えキメラインヒビターまたはHisタグに特異的に結合する抗体を用いてもよい。別のアフィニティー分子(Hisタグに特異的に結合する、アガロースビーズに結合されたNi2+−ニトリロトリ酢酸など)はまた、本発明の想定の範囲内である。
【0112】
次いで、キメラインヒビタータンパク質について、プロテアーゼ活性の阻害能がさらに評価された。この評価は、スキャッチャード(Scatchard)法のような一般的な方法によって行なうことができる(スキャッチャード(Scatchard), 1949 Ann NY Acad Sci, 51:
660-669)。この方法は、タンパク質の結合に用いられた結合能を測定および分析する伝統的な方法であり、純度が比較的高いタンパク質を必要とし、かつ、結合タンパク質と非結合タンパク質とを分離する能力を必要とする。
【0113】
キメラインヒビタータンパク質の酵素に対するアフィニティーを測定する第2の適切な方法は、酵素の働きを悪くするキメラインヒビタータンパク質の能力を測定することである。この方法は、酵素が基質から遊離する速度、ならびに発色性または蛍光性の基質の利用可能性に依存して、純度が比較的高いキメラインヒビタータンパク質を必要とする。
【0114】
本発明のキメラインヒビタータンパク質は、野生型のインヒビタータンパク質よりも強いアフィニティーによって、プロテアーゼ活性を阻害するのが好ましい。
【0115】
ここで開示されているキメラインヒビタータンパク質は、細胞発現系において、組み換えにより製造されるのが好ましい。この発現システムは、真核または原核宿主細胞であることができる。
【0116】
本発明のキメラインヒビタータンパク質の発現において、多くの種類の単細胞系宿主細胞が利用できる。これらの宿主は、良く知られた真核宿主および原核宿主(E.coli,シュードモナス,バチルス,ストレプトマイセスなどの菌株)、真菌(酵母など)、動物細胞(CHO,YB/20,NSO,SP2/0,R1.1,B−W細胞,およびL−M細胞,アフリカミドリザル腎細胞(例えば、COS1,COS7,BSC1,BSC40,BMT10),昆虫細胞(例えばSf9))、および組織培養したヒト由来細胞および植物由来細胞を含んでいてもよい。宿主細胞は好ましくは、バチルス属,エシェリヒア属,サルモネラ属,およびエルビニア属を含む群から選ばれる細菌細胞である。より好ましくは、細菌宿主細胞はE.coli(エシェリヒア.コリ)細胞である。
【0117】
本発明にしたがって精製および単離されたDNAを含む発現ベクターを、適切な真核または原核宿主細胞に形質転換またはトランスフォームすることは、典型的には、使用されるベクターに依存する良く知られた方法によって達成される。これらの方法に関しては、例えば、マニアチス他,「分子クローニング,研究室マニュアル」,コールド・スプリング・ハーバー研究室,1982年(Maniatis et al. 1982, Molecular Cloning, A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory)および商業的に利用可能な方法を参照されたい。
【0118】
本発明の別の目的は、精製および単離されたDNA配列を含む試料中のプロテアーゼをin vivo または in vitroにて検出する診断キットを提供することであり、この精製および単離されたDNA配列は、配列番号N°1,3,5,7,9,11,13の配列、該配列と相補的な配列、該配列の断片、および/または該配列の変異体を含む群から選ばれる。
【0119】
あるいは、本発明にかかるプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を含む試料中のプロテアーゼを検出する診断キットはまた、本発明の範囲内である。プロテアーゼに対する前述のキメラインヒビタータンパク質は例えば、MD820、MD62、MD61、MD67、およびMDCIを含む群から選ばれてもよい。
【0120】
ここで用いられているように、「試料」という用語は、プロテアーゼ、またはプロテアーゼをコードする配列を含むことができるあらゆる適切なサンプルを指し、ここで、プロテアーゼをコードする配列は、キメラインヒビタータンパク質に結合するプロテアーゼをコードする配列と結合可能であるか、あるいは、前述のキメラインヒビタータンパク質をコードする精製および単離されたDNA配列と結合可能である。
【0121】
診断キットは、プロテアーゼの検出を可能にするシステムを含み、シグナルの検出は、存在するプロテアーゼの量に依存する。そのシグナルは、視覚的にまたは機器を用いて検出することができる。潜在的なシグナルは、着色された生成物、蛍光生成物、または発光生成物の生成、検査成分または検査生成物による吸収特性の変化または放射線の放出、ならびに成分生成物の沈殿や凝集である。前述の成分はラベル(例えば、放射性同位体、蛍光色素、酵素、補酵素、酵素基質、高電子密度化合物、または凝集性の粒子など)であってもよく、そのラベルは、この診断キット中に存在するキメラインヒビタータンパク質、または精製および単離されたDNA配列に結合される。
【0122】
最後に、本願による開示は、哺乳類のタンパク質分解に関連する疾患の治療または予防方法を提供し、該方法は、組み換え野生型セルピンを活性物質として含む医薬組成物を哺乳類に投与することを含む。
【0123】
上述した、タンパク質分解に関連する疾患を治療または予防する方法は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患(前立腺肥大症など)、または感染症などのように、その疾患がhK2の活性が有害である疾患の場合に有用である。
【0124】
上述の記載は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されるだろう。しかしながら、このような実施例は、本発明を実施する方法の例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0125】
[実施例1]
ファージディスプレイにより選ばれた基質を用いた、ヒトhK2に特異的な組み換えACTインヒビターの開発
【0126】
方法
hK2およびhK3 (PSA)は前述のようにヒトの精液から精製され(フレネット G,ゲルバス Y,トレンブライ RR,デューブ JY.,「カリクレインhK2によって精製された前立腺特異抗原の調製のコンタミネーション」,ジャーナル オブ ウロロジー,第159巻,1375−1378頁,1998年(Frenette G, Gervais Y, Tremblay RR, Dube JY. 1998 “Contamination of purified prostate-specific antigen preparations by kallikrein hK2” J Urol. 159, 1375-8))、抗hK2モノクローナル抗体および抗PSAモノクローナル抗体は、RR トレンブライ(RR Tremblay)教授(ラバル大学,カナダ)より進呈された。ヒトキモトリプシン(Chtr)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、hK1、プラスマカリクレイン(PK)、好中球エラスターゼ(HNE)、および市販のACT(ヒトプラスマα−1−アンチキモトリプシン)は、カルビオケム(Calbiochem)社より購入した。Z-Phe-Arg-AMC、Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-AMC、Z-Gly-Gly-Arg-AMC、およびMeOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-AMCはカルビオケム社より購入した。CFP-TFRSA-YFP蛍光基質は、これまでの発表に従って開発された(マハジャン NP他,「新規な突然変異体緑色発光タンパク質のプロテアーゼの基質は、アポトーシスの間、特異的なカスパーゼを活性化することを明らかにした」,ケミストリー アンド バイオロジー,第6巻,401−409頁,1999年(Mahajan NP et al. 1999 “Novel mutant green fluorescent protein protease substrates reveal the activation of specific caspases during apoptosis” Chem Biol. 6, 401-9))。ヒトα−1−アンチキモトリプシン(ACT)のcDNAは、ペンシルベニア大学のハーヴェイ ルビン博士(Dr. Harvey Rubin)より寄贈された。
【0127】
部位特異的な突然変異の誘発
ACTのcDNAをPQE−9発現ベクター(キアゲン,ドイツ,図9参照)にサブクローニングし、rACTWTのN末端にHisタグを導入した後、2つの制限部位Sac IIおよびMlu Iは、RSLのP1コドンの18bp上流と18bp下流にそれぞれ組み込まれた。これらの部位は、Sac II部位のためのオリゴヌクレオチドである5 ’-GTGATTTTGACCGCGGTGGCAGCAG-3’と、Mlu I部位のためのオリゴヌクレオチドである5 ’-GCACAATGGTACGCGTCTCCACTAATG-3’とを用いてサイレント変異によって作成され、ストラタジーン(Stratagene)によって市販されているクイックチェンジ(quickchange)変異誘発プロトコルが行なわれた。
【0128】
基質ファージディスプレイライブラリーの構築
基質ファージライブラリーは、改変されたpH0508bプラスミドを用いて調製された(ローマン他,「1価のファージディスプレイによる高アフィニティー結合タンパク質の選択」,バイオケミストリー,第12巻,10832−10838頁,1991年(Lowman et al. 1991 “Selecting high-affinity binding proteins by monovalent phage display” Biochemistry, 12, 10832-8))。そのコンストラクションは、M13ジーンIIIのカルボキシル基末端領域(コドン249−406)の直前にあるGly-Gly-Gly-Ser-repeat-rich部位の一端にHisタグを有する。ランダムなペンタマー(5アミノ酸)は、フランキング部位に相当する、5’がビオチン化されたプライマー(5'-TGAGCTAGTCTAGATAGGTG-3'および5'-TGCAGCGACTGCTATGA-3')を用いて、変性したコドンの両端に適切な制限部位を有する鋳型オリゴヌクレオチド5'TGAGCTAGTCTAGATAGGTGGCGGTNNSNNSNNSNNSNNSGGGTCGACGTCGGTCATAGCAGTCGCTGCA-3'(ここで、「N」はいずれかのヌクレオチドであり、「S」はGまたはCを示す。)のPCR伸長法によって調製された。
【0129】
PCRの鋳型は、既に発表されているように分解・精製され(スミス G.P,スコット J.K.,「糸状ファージ上に提示された、ペプチドおよびタンパク質のライブラリー」,メソッズ エンズーモロジー,第217巻,228−257頁,1993年(Smith
G.P, Scott J.K. 1993 “Libraries of peptides and proteins displayed on filamentous phage” Methods Enzymol. 217, 228-57))、XbaI/SalIで消化されたpH0508bベクターに挿入されて、エレクトロポレーション法によってXL1−Blue(F因子なし)に導入された。ライブラリーの範囲は形質転換効率から判断され、この形質転換効率は、アンピシリンおよびテトラサイクリン(100および15μg/mL)を含むLuria-Bertaniプレート上で形質転換された細胞の一部をプレーティングすることにより決定された。残りの形質転換された細胞は、ファージライブラリーを調製するため、100プラーク形成ユニット(plaque forming unit: p.f.u.)/mLの濃度になるようにM13K07ヘルパーファージを加えて一晩培養された。ファージは上清から回収され、ポリ(エチレングリコール)沈殿法によって精製された。このうち200クローンがシークエンシングのために任意に選ばれ、ライブラリーのランダム化が確認された。
【0130】
ファージディスプレイされたペンタペプチドライブラリーのスクリーニング
この新しいペンタペプチドライブラリーは、hK2による8回のスクリーニングを受けた。セファロースビーズに結合される100μlのNi2+−ニトリロトリ酢酸(Ni2+ニトリロトリ酢酸樹脂)は、1mg/mLのBSAを含む10mLのNaCl/Pで洗浄された。ファージ粒子(1011個)は、平衡化されたNi2+−ニトリロトリ酢酸ビーズに添加され、4℃で3時間緩やかに振とうすることによりビーズに結合された。そのビーズを1mg/mLのNaCl/P/BSA、5mMのイミダゾール、0.1%のツイーン20で洗浄して、結合しなかったファージを取り除いた後、NaCl/P溶液で平衡化された。
【0131】
基質ファージは、27nM(最終濃度)のhK2に37℃で45分間曝された。また、プロテアーゼの無いコントロール実験も同時に行われた。上清中に遊離された分解されたファージはXL1−Blueエシェリヒア.コリで増幅され、次のスクリーニングに使われた。8回のパンニングで約15の異なるクローンが5回目、6回目、8回目のスクリーニングから選ばれ、プラスミドDNAが単離され、基質をコードする領域の配列が確認された。
【0132】
組み換え野生型ACTおよびその変異体の構築ならびに発現
6つの変異体は、RSLのP3−P3’間に位置する反応性部位ループを変更したものであるが(以下の表4参照)、これら6つの変異体は、フランキング領域に相当するプライマー(5 ’-TACCGCGGTCAAAATC-3’および5 ’-TCACGCGTGTCCAC-3’)を用いて、以下の鋳型オリゴヌクレオチド(ここで下線を付けた配列は、RSL中の新しい切断部位をコードする)のPCR伸長法によって生成された。
rACT8.20, 5 ’-TACCGCGGTCAAAATCACCCTCCGTTCTCGAGCAGTGGAGACGCGTGA-3’;
rACT6.3, 5 ’-TACCGCGGTCAAAATCACCAGGAGGTCTATCGATGTGGAGACGCGTGA-3’;
rACT8.3, 5 ’-TACCGCGGTCAAAATCAGGGGGAGATCTGAGTTAGTGGAGACGCGTGA-3’;
rACT6.7, 5 ’-TACCGCGGTCAAAATCAAGCTTAGAACAACATTAGTGGAGACCGCTGA-3’;
rACT6.1, 5 ’-TACCGCGGTCAAAATCATGACAAGATCTAACTTAGTGGAGACGCGTGA-3’;
rACT5.18, 5 ’-TACCGCGGTCAAAATCACCGAGCGTGTCTCGCCCGTGGAGACGCGTGA-3’
【0133】
PCR産物は、SacIIおよびMluIの2つの制限酵素によって消化され、制限酵素によって消化されたrACTWTにサブクローニングされた。組み換えセルピンは、TG1E.coli株により産生された。細胞は、100μg/mLのアンピシリンを含む2xTY倍地(1L当たり16gのトリプトン、10gの酵母抽出物、5g/LのNaClを含む)中で37℃にてA600=0.5まで培養された。次いで、最終濃度が0.5mMになるようにイソプロピルチオ−β−ガラクトシド(IPTG)が添加され、16℃で16時間組み換えセルピンを発現させた。100mLの培地から得られた細胞は、遠心によって回収され、冷却したPBSで懸濁した後、フレンチプレスにて破砕されて、すべ
ての可溶性細胞内タンパク質が回収された。細胞破砕物の残骸は遠心によって除去され、Ni2+−ニトリロトリ酢酸アフィニティアガロースビーズが上清に添加されて、4℃で90分間かけて、組み換えセルピンに結合させた。次いで、その樹脂を50mMのTrisバッファー(pH8.0,500mMのNaCl,25mMのイミダゾールを含む)で洗浄した後、結合タンパク質を50mMのTrisバッファー(pH8.0,500mMのNaCl,150mMのイミダゾールを含む)で10分間溶出した。精製が完了した後、rACTは、50mMのTrisバッファー(pH8.0,500mMのNaCl,0.05%のTriton−Xを含む)に対して4℃で16時間透析された。タンパク質濃度は、精製されたサンプル毎にブラットフォード法を用いて決定され、クマシンブルーで染色されたSDS−PAGEゲル上の密度により正規化された(ラエミリ UK.,「バクテリオファージT4の頭部のアセンブリにおける構造タンパク質の開裂」,ネイチャー,第227巻,680−685頁,1970年(Laemmli UK. 1970 “Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4” Nature, 227, 680-5))。
【0134】
【表4】

【0135】
阻害評価および化学量論阻害(SI)
化学量論阻害(SI)値は、hK2および他の異なる酵素に対するrACTWTおよびその変異体の阻害活性のために決定された。初期テストはhK2,PSA,hK1,キモトリプシン(Chtr),プラスマカリクレイン(PK),ウロキナーゼ(uPA),およびヒト好中球エラスターゼ(HNE)に対してモル濃度で100倍過剰のrACTを用いて行われた。その反応は、25℃で30分間(PSAは37℃で90分間)50mMのTrisバッファー(pH7.5,150mMのNaCl,0.05%のTritonX
−100,0.01%BSAを含む)中で行われ、残存する酵素活性は蛍光基質を加えることによって測定された(hK1,hK2,PK:Z-Phe-Arg-AMC、Chtr:Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-AMC、uPA:Z-Gly-Gly-Arg-AMC、HNE:MeOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-AMC、PSA: CFP-TFRSA-YFP)。インヒビター存在下での酵素活性は、インヒビターの不存在下での反応と比較された。阻害活性が確認された反応では、異なる濃度の組み換えセルピンをインキュベートすることによってSIが決定された。インヒビター対酵素の比([I]/[E])に対する、残された酵素活性(阻害される酵素の反応速度/阻害されなかった酵素の反応速度)を線形回帰分析することにより、その化学量論阻害(グラフと横軸との交点)が得られた。
【0136】
酵素反応
異なるrACTと、hK2、キモトリプシン、PK、およびHNEとの相互作用を表す結合定数は、プログレスカーブ法を用いて擬一次条件下で決定された(Morrison JF, Walsh CT. 1988 “ The behavior and significance of slow-binding enzyme inhibitors”
Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. 61, 201-301)。この条件下では、一定量の酵素(2nM)が異なる濃度のインヒビター(0−800nM)および過剰量の基質(10μM)と混合された。それぞれの反応は、50mMのTrisバッファー(pH7.5,150mMのNaCl,0.05%のTritonX−100,および0.01%のBSAを含む)を用いて25℃で45分間行われ、生成物の形成速度は、FL800蛍光96ウエルマイクロプレートリーダー(バイオテック,USA)を用いて測定された。このモデルでは、阻害活性は反応過程全体として不可逆であると考えられ、酵素活性の進行は生成物(P),初期反応速度(ν)によって表され、かつ、一次結合定数(kobs)(インヒビター濃度のみに依存する定数)における反応時間(t)に従って阻害され、速度定数は阻害濃度にのみ依存する。
【0137】
[式1]

【0138】
それぞれのインヒビターについて、異なる4つのインヒビター濃度を用い、式1にしたがってデータを非線形回帰してkobsが計算された。kobsをインヒビターの濃度[I]に対してプロットすることにより、二次結合定数(k’)(グラフの傾き(k’=Δkobs/Δ[I])に一致する)が決定された。基質とインヒビターの間で起こる競合反応のため、下記の式2は、基質濃度[S]およびその基質に対する酵素のKによりk’を補正し、kを与える。
【0139】
[式2]

【0140】
各Kは次のとおりである。hK2に対するZ-FR-AMC:67μM、キモトリプシンに対するSuc-AAPF-AMC:145μM、PKに対するZ-FR-AMC:170μM、HNEに対するMeOSuc-AAPV-AMC:130μM。
【0141】
複合体形成およびインヒビターの分解に関するウエスタンブロット法による分析
hK2は、50mMTrisバッファー(200mMのNaCl,0.05%のTritonX−100を含む)中で、[I]/[E]=100:1の条件で異なる組み換えACTと37℃で3時間インキュベートされた。
【0142】
タンパク質サンプルは、95℃で5分間加熱された後、SDS−PAGE(12%のアクリルアミドを用い、T:C比が19:1である。)によって分離されて、次いで、Hybond−ECLニトロセルロース(アマシャム ファルマシア)へと電気的に写し取られた。反応していないhK2およびhK2−ACT複合体は、マウス抗hK2モノクローナル抗体およびアルカリフォスフェートコンジュゲーテッドヤギ抗マウス二次抗体により検出された。ウエスタンブロット結果は、ECL検出キット(アマシャム ファルマシア バイオテック)により視覚化された。また、hK2は、50mMのTrisバッファー(200mMのNaClおよび0.05%のTritonX−100を含む)中で、[I]/[E]=10:1にて、ACT8.3またはACT6.7と25℃で30分間(速度論的条件)インキュベートした。タンパク質は、抗Hisモノクローナル抗体と同様の二次抗体を用いて、前述のプロトコルにしたがって、ウエスタンブロット法により検出された。
【0143】
可溶性組み換え野生型ACTとその変異体の産生
野生型セルピンα−1−アンチキモトリプシンは、hK2に特異的なインヒビターを開発するために使用された。rACTWTのRSL構造中に位置するP3−P3’残基は、上述したようなファージディスプレイ技術によってあらかじめ選ばれた基質ペンタペプチドにより置換された。表1に示された6つのrACT変異体が設計され、かつ構築された。基質ペプチド中の切断部位は、rACTWTのRSLのLeu358−Ser359にしたがって配列された。rACTWTおよびその変異体は、N末端にHisタグを含む融合タンパク質としてE.coli TG1中で発現された。それぞれの変異体は主に、活性を有する可溶性のタンパク質として蓄積されるように低い温度で産生された。そのタンパク質は非変性条件下で精製され、精製されたタンパク質の量は1.0−2.5mg/Lであった。精製されたセルピンの純度は、例えばSDS−PAGE分析によってバリアント6.1(レーン1)および野生型ACT(レーン2)が評価されているように、98%以上であった(図1)。
【0144】
rACT変異体はカリクレインhK2に非常に特異的である
ヒト好中球エラスターゼ,キモトリプシン様プロテアーゼ(Chtr,PSA,またはhK3)、およびトリプシン様プロテアーゼ(hK2,hK1,PK,uPA)を含む酵素群は、rACT変異体の特異阻害性を決定するためにスクリーニングされた(表5)。
【0145】
【表5】

【0146】
過剰のインヒビター([I]/[E]=100:1)と30分間反応させることにより、hK2の活性は、rACT6.2、rACT8.3、rACT6.7、およびrACT6.1によって完全に阻害されたのに対して、rACT8.20およびrACT5.18の酵素活性はそれぞれ95%、73%であった。この条件下で、野生型rACTはhK2に対して阻害活性を全く示さなかった。これらのバリアントのうちrACT8.3およびrACT5.18はhK2に特異的であり、試験が行なわれた他の酵素に対して阻害活性を示さなかった。他の2つのバリアント(rACT6.7およびrACT6.2)はそれぞれ36%、100%のPKの阻害活性を示した。野生型ACTのように、変異体r
ACT8.20は2つのキモトリプシン様プロテアーゼChtrおよびPSAの活性を阻害したが、加えてPKおよびHNEに対しても阻害活性を示した。hK1およびuPAに対しては,どの組み換えセルピンも阻害活性を示さなかった。
【0147】
hK2に対する変異体ACTの化学量論阻害は、野生型ACTと比較して劇的に改善されている。
【0148】
化学量論阻害の決定は、最も価値がある比較を行なうために、全ての酵素に対して生理的な条件下のpHおよびイオン強度で行われた。組み換え野生型ACTは、キモトリプシンに対してSI値2を与え(表6)、この値は、類似する条件下で市販のACTによって得られた値と一致した(データは示さず)。
【0149】
【表6】

【0150】
全ての組み換えバリアントのSI値を決定するために、本出願人は、濃度の異なるrACT8.20(x)、rACT6.2(□)、rACT8.3(△)、rACT6.7(◇)、rACT6.1(*)、rACT5.18(○)、およびrACTWT(+)(6.25−500nM)と、hK2(5nM)とを反応バッファー中で25℃にて30分間反応させた。インヒビターとの反応後に残されたhK2の酵素活性(反応速度)は、蛍光基質Z-FR-AMC(10μM)を用いて評価された。評価された反応速度は、阻害されていない酵素(コントロール)の反応速度(v)に対する阻害された酵素の反応速度(v
の比に相当する。SIは、インヒビターと酵素との比を推定することによって、線形回帰分析を用いて決定された(すなわち、x軸のとの交点)。
【0151】
図2に示されているように、新たに構築されたACTの新しい変異体は、野生型ACTと比較して、hK2に対して低いSI値を示した。これらの変異体のうちrACT6.7、rACT6.1およびrACT6.2は、hK2に対して最も低い化学量論阻害値を示した(それぞれ9,19および25)。rACT6.2およびrACT6.1がPKに対して最も低いSI値(18および16)を示した一方で、rACT6.7のSI値はずっと大きかった(227)。hK2に特異的な2つの組み換えACT、rACT8.3およびrACT5.18はそれぞれ、より大きなSI値(34および139)を示した。rACT8.20インヒビターのSI値は、hK2を含む、試験が行なわれた全てのプロテアーゼに対して、100より大きかった。
【0152】
変異体ACTは、インヒビターを分解することなくhK2と安定な複合体を形成する
hK2は、インヒビター:酵素の濃度比が100:1の条件にて、rACT8.20、rACT6.2、rACT8.3、rACT6.7、rACT6.1、rACT5.18および野生型rACTと37℃で3時間インキュベートさせた。rACTとhK2との反応生成物のウエスタンブロット分析は、酵素と相互作用した後のインヒビターの運命を決定するために、マウス抗hK2抗体を用いて還元条件で行われる(rACT8.20(レーン1)、rACT6.2(レーン2)、rACT8.3(レーン3)、rACT6.7(レーン4)、rACT6.1(レーン5)、rACT5.18(レーン6)および野生型rACT(レーン7))。図3Aは、hK2をACT変異体とインキュベートさせた場合、遊離hK2(E)が共有結合複合体(IE)を形成することによって完全に消失したことを示している。この共有結合複合体は、インキュベーションを16時間行なっても分解せず、非常に高い安定であることが示された(データは図示せず)。野生型ACTはhK2の活性をさらにゆっくり阻害したが、その複合体はインキュベーションを3時間行なうと、ほとんど解離した。hK2を用いて測定されたSI値の上昇は、ACTバリアントインヒビターが複合体を形成せずに分解したのに起因するものではない。
【0153】
さらに、ACT8.3(レーン1)およびACT6.7(レーン3)は、平衡条件下(25℃、30分間)で、インヒビター/酵素の比が10:1にて、hK2とインキュベートさせた(レーン2およびレーン4はそれぞれウエスタンブロットによる)。複合体の形成は、マウスの抗Hisタグモノクローナル抗体を用いて還元条件下でウエスタンブロット法により分析された(図3B)。全てのインヒビタータンパク質は、hK2と複合体を形成するか、または遊離しない形態で存在しており、このことは、セルピン−酵素相互作用の潜在的な基質経路が限界に近いことを示している。
【0154】
変異体ACTはhK2と最も高い結合定数を示した。
変異体ACTとの阻害反応の速度は、これらのインヒビターとの反応性を有する各プロテアーゼに対して決定された。最終的に、hK2と組み換えセルピンとの相互作用は、プログレスカーブ法を用いて擬一次条件下で測定された。hK2(2nM)と基質であるZ-FR-AMC(10μM)は、種々の濃度(20−800nM)のインヒビターrACT8.20(◇)およびrACT5.18(+)(図4A)と、rACT6.2(○)、rACT8.3(□)、rACT6.7(△)、およびrACT6.1(×)(図4B)とに添加された。典型的なプログレスカーブについて、式1を用いて非線形回帰分析を行ない、その割合(kobs)がセルピン濃度に対してプロットされた。kobsを決定した後、結合定数(k)がプロテアーゼに対するそれぞれの基質のKを用いて決定された(表6)。キモトロプシンに対する野生型ACTのk値は、発表済みのデータに一致した(クーレイ他,「セルピンMNEIは、2つの作用部位での効率的な反応を介して、エラスターゼ様セリンプロテアーゼおよびキモトリプシン様セリンプロテアーゼを阻害する。」,
バイオケミストリー,第40巻,15762−15770頁,2001年(Cooley et al. 2001 “The serpin MNEI inhibits elastase-like and chymotrypsin-like serine proteases through efficient reACTions at two ACTive sites” Biochemistry, 40,
15762-70))。組み換えrACT6.7は、hK2に対して最も高いk値(8991M−1−1)を示し、その一方で、PKに対するk値は45倍小さかった。これに対して、組み換えrACT6.2は、hK2およびPKに対してほぼ同じk値を示し、このことは、これら2つのプロテアーゼに対しては相互作用に差が無いことを示している。hK2に特異的な組み換えインヒビターであるrACT8.3およびrACT5.18のkobsは、より小さな値2439および595M−1−1を示し、その一方で、非特異的なACT8.20のk値は1779M−1−1を示し、この値は、Chtr、PK、およびHNEに比較して優位であった。組み換えセルピンの一つであるrACT6.1は、hK2よりもPKに対してより高い反応性を示した。
【0155】
[実施例2]
ヒトhK2プロテアーゼおよびヒトhK3プロテアーゼに対して特異的な組み換えACTの開発
rACTWTのRSL構造中に位置するP3−P3’残基は、実施例1で述べられたように、プロテインCインヒビター(PCI)のRSLをコードする基質ペンタペプチドによって置換された(表7)。
【0156】
【表7】

【0157】
まず、組み換えタンパク質ACTPCI(MDCI)を産生するために、TG1細胞は、相当するコンストラクションを用いて形質転換された後、適切な培養液中で培養された。次に、その細胞は最適な光学密度(濁度)に誘導され、16℃で16時間組み換えインヒビターを発現させた。組み換えインヒビターACTPCIは細菌の細胞質内から抽出され、前述の実施例で示されたように、Ni−NTAを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって分離された。
【0158】
組み換えACTの発現に関するSDS−PAGEによる分析
実施例1および実施例2で開発された、異なるインヒビターの純度は、図5で示されるように、還元状況下でSDS−PAGE分析によって評価された。
【0159】
インヒビターの評価
これらのインヒビターはさらに、ヒトカリクレインhK2,hK3(図6)およびプラスマカリクレイン、トリプシン、ウロキナーゼ、エラスターゼ、トロンビン、hK14、およびhK8(表8)の活性を阻害する特異性および親和力を評価するために分析された。これらの2つの酵素(hK2およびhK3)は、異なる酵素特異性を有しているが(hK2はトリプシン様であり、hK3はキモトリプシン様である。)、本来どちらもACTによって活性が阻害される。ACTは、血液循環中で天然のhK3インヒビターとして機能すると考えられており、その一方で、ACTのhK2に対する阻害活性は弱い。
【0160】
rACTとヒトカリクレインとの間の阻害活性は、図6で示されるように、ウエスタンブロット法によって分析された。変異体ACT毎に、1μgのインヒビターを、100ngのhK2またはhK3と生理的な条件下で37℃にて1時間インキュベートさせた。
【0161】
抗hK2モノクローナル抗体9D5を用いた検出結果が図6Aに示されている。
レーン1:hK2のみ、
レーン2:市販のACT+hK2
レーン3:野生型ACT+hK2、
レーン4:MD820+hK2、
レーン5:MDCI+hK2、
レーン6:MD62+hK2、
レーン7:MD61+hK2
【0162】
図6Bは、抗His抗体によるhK3−ACT複合体の検出を示している(組み換えACTタンパク質中のHisタグを検出)。
【0163】
レーン1:PSAのみ、
レーン2:市販のACT+PSA、
レーン3:野生型ACT+PSA、
レーン4:MD820+PSA、
レーン5:MDCI+PSA、
レーン6:MD62+PSA、
レーン7:MD61+PSA
【0164】
hK2の特性によって選抜された基質配列による反応ループ内のアミノ酸の置換は、ACTを、hK3活性を阻害することなく、hK2に非常に特異的なインヒビターへと変換した(MD820,MD61,MD62)。これらの結果は、表4で上記に示された結果を裏付ける。プロテインCインヒビター(PCI)の反応ループに基づくMDCIのみが、評価された両方のカリクレイン(hK2およびhK3)の活性を阻害した。
【0165】
MD61およびMD62は、全てのhK2タンパク質の活性を3分未満で阻害する(同じ条件下で)。MD61およびMD62は、同量のhK2の活性を阻害するために12時間より長いインキュベーションを必要とする野生型または市販のα−1−アンチキモトリプシン(ACT)(データを図示せず)と比較して、hK2と非常に高い親和性を有するインヒビターである。
【0166】
【表8】

[実施例3]
【0167】
MDインヒビターによるがん成長の抑制
3.1.MD62インヒビターおよびMD67インヒビターによるがん成長の抑制
アンドロジェン非依存性のヒト前立腺癌細胞株DU−145は、米国型培養コレクション(American Type Culture Collection)から得られた。hK2遺伝子で形質転換されたDU145細胞株(DU145/hK2)を得るために、レトロウイルス技術が用いられた。
【0168】
対数増殖期のDU145/hK2細胞株が集められ、1μgまたは10μgのインヒビターを含むDMEM(インビトロジェン)中で7.5×10細胞個/mLの濃度になるように懸濁された。この細胞縣濁液は、マトリゲル(matrigel;BDバイオサイエンス)と1:2の割合で混合された後、8週齢のオス無胸腺スイスヌードマウス(グループ当り2匹)の右左のわき腹に皮下注入された(3×10細胞個/40μl)。各マウスは2箇所に細胞縣濁液を注入された。
【0169】
腫瘍植え付けの6、12および18日後に、50μgまたは10μgのMD62,MD67、ならびに100μgまたは10μgのACT−WTが皮下注入された。腫瘍植え付けの24、30、33、36、39、および41日後に、25μgまたは5μgのMD62,MD67、ならびに50μgまたは5μgのACT−WTが皮下注入された。
【0170】
図10Aは、MD62によるがん成長の抑制を示している。hK2で形質転換された前立腺癌細胞株DU−145(3×10細胞個)はヌードマウスに移植され、次いで、MD62(注入当り5μgまたは25μg)によって処置を施された。
【0171】
図10Bは、MD67によるがん成長の抑制を示している。hK2で形質転換された前立腺癌細胞株DU−145(3×10細胞個)はヌードマウスに移植され、次いで、MD62(注入当り5μgまたは25μg)によって処置を施された。
【0172】
3.2.MDCIインヒビターによる腫瘍の成長の抑制
アンドロジェン非依存性のヒト前立腺癌細胞株DU−145は、米国型培養コレクションから得られた。hK2遺伝子を感染させたDU145細胞株(DU145/hK2)を得るために、レトロウイルス技術が用いられた。
【0173】
対数増殖期のDU145/hK2細胞株が集められ、1μgまたは10μgのインヒビターを含むDMEM(インビトロジェン)中で7.5×10細胞個/mLの濃度になる
ように懸濁された。この細胞縣濁液は、マトリゲル(matrigel;BDバイオサイエンス)と1:2の割合で混合された後、8週齢のオス無胸腺スイスヌードマウス(グループ当り2匹)の右左のわき腹に皮下注入された(3×10細胞個/40μl)。各マウスは2箇所に細胞縣濁液を注入された。
【0174】
腫瘍植え付けの6、12および18日後に、100μgまたは10μgのMDCIまたはACT−WTが皮下注入された。がん植え付けの24、30、33、36、39、および41日後に、50μgまたは5μgのMDCIまたはACT−WTが皮下注入された。
【0175】
図11は、MDCIによる腫瘍成長の抑制を示している。hK2で形質転換された前立腺腫瘍細胞株DU−145(3×10細胞個)はヌードマウスに移植され、次いで、MD62(注入当り5μgまたは25μg)によって処置を施された。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、精製された組み換えACT.変異体(Variant) 6.1(レーン1)および組み換え野生型ACT(rACTWT)(レーン2)の還元条件下でのSDS−PAGE分析を示す。
【図2】図2は、rACTWTおよびその変異体のhk2に対する化学量論阻害(SI: Stoichiometry of Inhibition)を示す。SIは、線形回帰分析を用いて、インヒビターと酵素との濃度比率(I/E比)を推定することにより決定された(すなわち、x切片)。
【図3】図3のAおよびBは、hK2と組み換えインヒビターとの複合体形成を示す。矢印はhK2(E)、インヒビター(I)、およびhK2−ACT複合体(E−I)をそれぞれ示す。
【図4】図4のAおよびBは、擬一次条件下(pseudo-first order condition)におけるrACTWTおよびその変異体によるhK2の活性阻害を示す。hK2と組み換えセルピンとの相互作用は、プログレスカーブ(progress curve)法により擬一次条件下で測定された。
【図5】図5は、実施例1および実施例2で開発されたインヒビターの還元条件下におけるSDS−PAGE分析によるインヒビターの純度の決定に相当する。
【図6】図6のAおよびBは、組み換えACTとhK2の阻害反応(図6A)、ならびに組み換えACTとPSAとの阻害反応(図6B)のウエスタンブロット法による分析を示す。
【図7A】図7Aは、MD820のDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図7B】図7Bは、MD62のDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図7C】図7Cは、MD83のDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図7D】図7Dは、MD67のDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図7E】図7Eは、MD61のDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図7F】図7Fは、MD518のDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図7G】図7Gは、MDCIのDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8】図8は、ACTインヒビターおよびMDインヒビターのRSL配列の比較を示す。文字飾りのない残基はACTWTと共通であり、太字や下線で示された残基はACT変異体のRSL中の変異に相当する。セルピン中の推定の切断部位は、P1−P1’残基間のアスタリスクによって印が付けられている。
【図9】図9は、pQE9発現ベクターのマップを示す。
【図10A】図10Aは、MD62による腫瘍成長の阻害を示す。hK2を発現するように形質転換された前立腺がん細胞株DU−145(3×10個の細胞)はヌードマウスに移植され、MD62(5μgまたは25μgの注入)による処置を施された。
【図10B】図10Bは、MD67による腫瘍成長の阻害を示す。hK2を発現するように形質転換された前立腺がん細胞株DU−145(3×10個の細胞)はヌードマウスに移植され、MD67(5μgまたは25μgの注入)による処置を施された。
【図11】図11は、MDCIによる腫瘍成長の阻害を示す。前立腺がん細胞DU−145(3×10個の細胞)はhK2を発現するように形質転換されたものであり、前記細胞はヌードマウスに移植され、MDCI(5μgまたは50μgの注入)による処置を施された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)阻害ポリペプチド配列、および
(b)プロテアーゼに対して特異的な基質−酵素相互作用部位からなる少なくとも1つのポリペプチド配列
を含む、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項2】
請求項1において、
前記基質−酵素相互作用部位からなる前記ポリペプチド配列は、基質作用部位配列、その断片、その分子キメラ、その組み合わせ、および/またはその変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項3】
請求項2において、
前記基質作用部位配列は、反応性セルピンループ配列、その断片、その分子キメラ、その組み合わせ、および/またはその変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項4】
請求項3において、
前記反応性セルピンループ配列は、配列番号16,17,18,19,20,21,22の配列、その断片、その分子キメラ、その配列の組み合わせ、および/またはその配列の変異体を含む群から選ばれる、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記プロテアーゼは、カリクレイン、キモトリプシン(Chtr)、ウロキナーゼ(uPA)、およびヒト好中球エラスターゼ酵素を含む群から選ばれる、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項6】
請求項5において、
前記カリクレインはhK2カリクレインタンパク質である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記阻害ポリペプチド配列は、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼの阻害ポリペプチド配列である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記阻害ポリペプチド配列はセルピンの配列、その断片、その分子キメラ、その組み合わせ、および/またはその変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項9】
請求項8において、
前記セルピンの配列は、α−1アンチキモトリプシン(ACT)、プロテインCインヒビター(PCI)、α−1アンチプロテイナーゼ(AAT)、ヒトα−1アンチトリプシン関連タンパク質前駆体(ATR)、α−2−プラスミンインヒビター(AAP)、ヒト抗トロンビン−III前駆体(ATIII)、プロテアーゼインヒビター10(PI10)、ヒトコラーゲン結合タンパク質2前駆体(CBP2)、プロテアーゼインヒビター7(PI7)、プロテアーゼインヒビタールーセプリン2(HLS2)、ヒトプラスマプロテアーゼC1インヒビター(C1 INH)、単球/好中球エラスターゼインヒビター(M/NEI)、プラスミノーゲン活性化インヒビター−3(PAI3)、プロテアーゼインヒビター4(PI4)、プロテアーゼインヒビター5(PI5)、プロテアーゼインヒビター
12(PI12)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−1前駆体内皮(PAI−1)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−2胎盤(PAI−2)、色素上皮由来因子前駆体(PEDF)、プロテアーゼインヒビター6(PI6)、プロテアーゼインヒビター8(PI8)、プロテアーゼインヒビター9(PI9)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−1)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−2)、T4−結合グロブリン(TBG)、メグシン、およびプロテアーゼインヒビター14(PI14)、これらの断片、これらの分子キメラ、これらの組み合わせ、および/またはこれらの変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質は、MD820、MD62、MD61、MD67、およびMDCIを含む群から選ばれる、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項11】
請求項10において、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質は、MD62またはMD67である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離されたDNA配列。
【請求項13】
請求項12において、
前記配列が、配列番号N゜1、配列番号N゜3、配列番号N゜5、配列番号N゜7、配列番号N゜9、配列番号N゜11、および配列番号N゜13を含む群から選ばれる、精製および単離されたDNA配列。
【請求項14】
請求項12または13に記載の精製および単離されたDNA配列を含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項14において、
前記精製および単離されたDNA配列が機能するように、該精製および単離されたDNA配列と結合するプロモーターをさらに含む、発現ベクター。
【請求項16】
請求項14または15に記載の発現ベクターを用いて形質転換された、真核または原核宿主細胞。
【請求項17】
請求項1ないし11のいずれかに記載のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を活性物質として含み、かつ、必要に応じて1以上の薬学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の医薬組成物を哺乳類に投与することを含む、哺乳類でのタンパク質分解に関連する疾患を治療または防止する方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記疾患は、hK2カリクレイン活性が有害となる疾患である、方法。
【請求項20】
請求項18または19において、
前記疾患はがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症である、方法。
【請求項21】
請求項20において、
前記がんは前立腺がん、乳がん、または転移性がんである、方法。
【請求項22】
請求項20において、
前記炎症性疾患は両性前立腺肥大である、方法。
【請求項23】
哺乳類でのタンパク質分解に関連する疾患を治療または防止するための薬剤を調製するための、請求項17に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
請求項23において、
前記疾患は、hK2カリクレイン活性が有害となる疾患である、使用。
【請求項25】
請求項23または24において、
前記疾患はがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症である、使用。
【請求項26】
請求項25において、
前記がんは前立腺がん、乳がん、または転移性がんである、使用。
【請求項27】
請求項25において、
前記炎症性疾患は両性前立腺肥大である、使用。
【請求項28】
請求項1ないし11のいずれかに記載のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質の製造方法であって、
(a)プロテアーゼに特異的な基質−酵素相互作用部位をコードするポリヌクレオチド配列を選択すること、
(b)前記ポリペプチド配列を、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼに対するインヒビタータンパク質をコードする配列中に導入し、キメラ配列を得ること、
(c)適切な条件下で細胞発現系にて前記キメラ配列を発現させること、および
(d)プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を回収すること
を含む、方法。
【請求項29】
請求項28において、
前記工程(a)は、ファージディスプレイライブラリスクリーニングにより行なわれる、方法。
【請求項30】
請求項28または29において、
前記適切な条件は、前記細胞発現系で10−40℃で10−30時間培養することである、方法。
【請求項31】
請求項30において、
前記適切な条件は、16℃で16時間培養することである、方法。
【請求項32】
請求項28ないし31のいずれかにおいて、
前記工程(b)は、前記細胞発現系から前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を抽出した後に分離することにより行なわれる、方法。
【請求項33】
請求項32において、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質の分離は、アフィニティークロマトグラフィーにより行なわれる、方法。
【請求項34】
請求項28ないし33のいずれかにおいて、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質はさらに、前記プロテアーゼの活性に対する阻害活性を評価される、方法。
【請求項35】
請求項28ないし34のいずれかにおいて、
前記細胞発現系は、原核細胞または真核細胞である、方法。
【請求項36】
請求項35において、
前記原核細胞は細菌細胞である、方法。
【請求項37】
配列番号N゜1、配列番号N゜3、配列番号N゜5、配列番号N゜7、配列番号N゜9、配列番号N゜11、および配列番号N゜13を含む群から選ばれるいずれかの精製および単離されたDNA配列、該DNA配列に相補的な配列、該DNA配列の断片、および/または該DNA配列の変異体を含む、検体中におけるプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を検出するための診断キット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)阻害ポリペプチド配列、および
(b)プロテアーゼに対して特異的な基質−酵素相互作用部位からなる少なくとも1つのポリペプチド配列
を含み、
前記プロテアーゼがカリクレインである、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項2】
請求項1において、
前記基質−酵素相互作用部位からなる前記ポリペプチド配列は、基質作用部位配列、その断片、その分子キメラ、その組み合わせ、および/またはその変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項3】
請求項2において、
前記基質作用部位配列は、反応性セルピンループ配列、その断片、その分子キメラ、その組み合わせ、および/またはその変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項4】
請求項3において、
前記反応性セルピンループ配列は、配列番号16,17,18,19,20,21,22の配列、その断片、その分子キメラ、その配列の組み合わせ、および/またはその配列の変異体を含む群から選ばれる、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記カリクレインは、hK2カリクレインタンパク質またはhK3カリクレインタンパク質である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項6】
請求項5において、
前記カリクレインはhK2カリクレインタンパク質である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記阻害ポリペプチド配列は、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼの阻害ポリペプチド配列である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記阻害ポリペプチド配列はセルピンの配列、その断片、その分子キメラ、その組み合わせ、および/またはその変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項9】
請求項8において、
前記セルピンの配列は、α−1アンチキモトリプシン(ACT)、プロテインCインヒビター(PCI)、α−1アンチプロテイナーゼ(AAT)、ヒトα−1アンチトリプシン関連タンパク質前駆体(ATR)、α−2−プラスミンインヒビター(AAP)、ヒト抗トロンビン−III前駆体(ATIII)、プロテアーゼインヒビター10(PI10)、ヒトコラーゲン結合タンパク質2前駆体(CBP2)、プロテアーゼインヒビター7(PI7)、プロテアーゼインヒビタールーセプリン2(HLS2)、ヒトプラスマプロテアーゼC1インヒビター(C1 INH)、単球/好中球エラスターゼインヒビター(M/NEI)、プラスミノーゲン活性化インヒビター−3(PAI3)、プロテアーゼインヒビター4(PI4)、プロテアーゼインヒビター5(PI5)、プロテアーゼインヒビター12(PI12)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−1前駆体内皮(PAI−1)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−2胎盤(PAI−2)、色素上皮由来因子前駆体(PEDF)、プロテアーゼインヒビター6(PI6)、プロテアーゼインヒビター8(PI8)、プロテアーゼインヒビター9(PI9)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−1)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−2)、T4−結合グロブリン(TBG)、メグシン、およびプロテアーゼインヒビター14(PI14)、これらの断片、これらの分子キメラ、これらの組み合わせ、および/またはこれらの変異体である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質は、MD820、MD62、MD61、MD67、およびMDCIを含む群から選ばれる、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項11】
請求項10において、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質は、MD62またはMD67である、プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離されたDNA配列。
【請求項13】
請求項12において、
前記配列が、配列番号N゜1、配列番号N゜3、配列番号N゜5、配列番号N゜7、配列番号N゜9、配列番号N゜11、および配列番号N゜13を含む群から選ばれる、精製および単離されたDNA配列。
【請求項14】
請求項12または13に記載の精製および単離されたDNA配列を含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項14において、
前記精製および単離されたDNA配列が機能するように、該精製および単離されたDNA配列と結合するプロモーターをさらに含む、発現ベクター。
【請求項16】
請求項14または15に記載の発現ベクターを用いて形質転換された、真核または原核宿主細胞。
【請求項17】
請求項1ないし11のいずれかに記載のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を活性物質として含み、かつ、必要に応じて1またはそれ以上の薬学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の医薬組成物を哺乳類に投与することを含む、哺乳類でのタンパク質分解に関連する疾患を治療または防止する方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記疾患は、hK2カリクレイン活性が有害となる疾患である、方法。
【請求項20】
請求項18または19において、
前記疾患はがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症である、方法。
【請求項21】
請求項20において、
前記がんは前立腺がん、乳がん、または転移性がんである、方法。
【請求項22】
請求項20において、
前記炎症性疾患は両性前立腺肥大である、方法。
【請求項23】
哺乳類でのタンパク質分解に関連する疾患を治療または防止するための薬剤を調製するための、請求項17に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
請求項23において、
前記疾患は、hK2カリクレイン活性が有害となる疾患である、使用。
【請求項25】
請求項23または24において、
前記疾患はがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症である、使用。
【請求項26】
請求項25において、
前記がんは前立腺がん、乳がん、または転移性がんである、使用。
【請求項27】
請求項25において、
前記炎症性疾患は両性前立腺肥大である、使用。
【請求項28】
請求項1ないし11のいずれかに記載のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質の製造方法であって、
(a)プロテアーゼに特異的な基質−酵素相互作用部位をコードするポリヌクレオチド配列を選択すること、
(b)前記ポリペプチド配列を、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼに対するインヒビタータンパク質をコードする配列中に導入し、キメラ配列を得ること、
(c)適切な条件下で細胞発現系にて前記キメラ配列を発現させること、および
(d)プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を回収すること
を含む、方法。
【請求項29】
請求項28において、
前記工程(a)は、ファージディスプレイライブラリスクリーニングにより行なわれる、方法。
【請求項30】
請求項28または29において、
前記適切な条件は、前記細胞発現系にて10−40℃で10−30時間培養することである、方法。
【請求項31】
請求項30において、
前記適切な条件は、16℃で16時間培養することである、方法。
【請求項32】
請求項28ないし31のいずれかにおいて、
前記工程(b)は、前記細胞発現系から前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を抽出した後に分離することにより行なわれる、方法。
【請求項33】
請求項32において、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質の分離は、アフィニティークロマトグラフィーにより行なわれる、方法。
【請求項34】
請求項28ないし33のいずれかにおいて、
前記プロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質はさらに、前記プロテアーゼの活性に対する阻害活性を評価される、方法。
【請求項35】
請求項28ないし34のいずれかにおいて、
前記細胞発現系は、原核細胞または真核細胞である、方法。
【請求項36】
請求項35において、
前記原核細胞は細菌細胞である、方法。
【請求項37】
配列番号N゜1、配列番号N゜3、配列番号N゜5、配列番号N゜7、配列番号N゜9、配列番号N゜11、および配列番号N゜13を含む群から選ばれるいずれかの精製および単離されたDNA配列、該DNA配列に相補的な配列、該DNA配列の断片、および/または該DNA配列の変異体を含む、検体中におけるプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を検出するための診断キット。
【請求項38】
請求項1ないし11のいずれかに記載のプロテアーゼに対するキメラインヒビタータンパク質を含む検体中のプロテアーゼを検出するための診断キット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルピンの配列を含み、
前記セルピンの反応性セルピンループは、カリクレインに特異的な基質活性部位配列、その断片、その分子キメラ、および/またはその組み合わせのうち少なくとも1つにより修飾された、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質。
【請求項2】
請求項1において、
前記カリクレインはhK2カリクレインである、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記反応性セルピンループは、配列番号16,17,18,19,20,21,22の配列、その断片、その分子キメラ、その配列の組み合わせ、および/またはその配列の変異体を含む群から選ばれる、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記セルピンの配列は、α−1アンチキモトリプシン(ACT)、プロテインCインヒビター(PCI)、α−1アンチプロテイナーゼ(AAT)、ヒトα−1アンチトリプシン関連タンパク質前駆体(ATR)、α−2−プラスミンインヒビター(AAP)、ヒト抗トロンビン−III前駆体(ATIII)、プロテアーゼインヒビター10(PI10)、ヒトコラーゲン結合タンパク質2前駆体(CBP2)、プロテアーゼインヒビター7(PI7)、プロテアーゼインヒビタールーセプリン2(HLS2)、ヒトプラスマプロテアーゼC1インヒビター(C1 INH)、単球/好中球エラスターゼインヒビター(M/NEI)、プラスミノーゲン活性化インヒビター−3(PAI3)、プロテアーゼインヒビター4(PI4)、プロテアーゼインヒビター5(PI5)、プロテアーゼインヒビター12(PI12)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−1前駆体内皮(PAI−1)、ヒトプラスミノーゲン活性化インヒビター−2胎盤(PAI−2)、色素上皮由来因子前駆体(PEDF)、プロテアーゼインヒビター6(PI6)、プロテアーゼインヒビター8(PI8)、プロテアーゼインヒビター9(PI9)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−1)、ヒト扁平上皮細胞癌抗原(SCCA−2)、T4−結合グロブリン(TBG)、メグシン、およびプロテアーゼインヒビター14(PI14)、これらの断片、これらの分子キメラ、これらの組み合わせ、および/またはこれらの変異体である、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
MD820、MD62、MD61、MD67、およびMDCIを含む群から選ばれる、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質。
【請求項6】
請求項5において、
MD62またはMD67である、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のカリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質であって、
前記カリクレインに対して特異的な基質活性部位配列の少なくとも1つが、ファージディスプレイランダムペンタペプチドライブラリーを用いて、カリクレインによって選択された基質ペプチドである、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のカリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質をコードする、精製および単離されたDNA配列。
【請求項9】
請求項8において、
前記配列が、配列番号N゜1、配列番号N゜3、配列番号N゜5、配列番号N゜7、配列番号N゜9、配列番号N゜11、および配列番号N゜13を含む群から選ばれる、精製および単離されたDNA配列。
【請求項10】
請求項8または9に記載の精製および単離されたDNA配列を含む、発現ベクター。
【請求項11】
請求項10において、
前記精製および単離されたDNA配列が機能するように、該精製および単離されたDNA配列と結合するプロモーターをさらに含む、発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の発現ベクターを用いて形質転換された、真核または原核宿主細胞。
【請求項13】
請求項1ないし7のいずれかに記載のカリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質を活性物質として含み、かつ、必要に応じて1またはそれ以上の薬学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
哺乳類でのタンパク質分解に関連する疾患を治療または防止するための薬剤の調製に使用される、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項14において、
前記疾患は、hK2カリクレイン活性が有害となる疾患である、医薬組成物。
【請求項16】
請求項14または15において、
前記疾患はがん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症である、医薬組成物。
【請求項17】
請求項16において、
前記がんは前立腺がん、乳がん、または転移性がんである、医薬組成物。
【請求項18】
請求項16において、
前記炎症性疾患は両性前立腺肥大である、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1ないし7のいずれかに記載のカリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質の製造方法であって、
(a)カリクレインに特異的な基質−酵素相互作用部位をコードするポリヌクレオチド配列を選択すること、
(b)前記ポリペプチド配列を、セルピンの配列をコードする配列中に導入し、カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質を得ること、
(c)適切な条件下で細胞発現系にて前記カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質を発現させること、および
(d)前記カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質を回収すること
を含む、方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記工程(a)は、ファージディスプレイライブラリスクリーニングにより行なわれる、方法。
【請求項21】
請求項19または20において、
前記適切な条件は、前記細胞発現系にて10−40℃で10−30時間培養することである、方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記適切な条件は、16℃で16時間培養することである、方法。
【請求項23】
請求項19ないし22のいずれかにおいて、
前記工程(b)は、前記細胞発現系から前記カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質を抽出した後に分離することにより行なわれる、方法。
【請求項24】
請求項23において、
前記カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質の分離は、アフィニティークロマトグラフィーにより行なわれる、方法。
【請求項25】
請求項19ないし23のいずれかにおいて、
前記カリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質はさらに、前記カリクレインの活性に対する阻害活性を評価される、方法。
【請求項26】
請求項19ないし23のいずれかにおいて、
前記細胞発現系は、細菌細胞である、方法。
【請求項27】
配列番号N゜1、配列番号N゜3、配列番号N゜5、配列番号N゜7、配列番号N゜9、配列番号N゜11、および配列番号N゜13を含む群から選ばれるいずれかの精製および単離されたDNA配列、該DNA配列に相補的な配列、該DNA配列の断片、および/または該DNA配列の変異体を含む、検体中のカリクレインを検出するための診断キット。
【請求項28】
請求項1ないし7のいずれかに記載のカリクレインに対する組み換えインヒビタータンパク質を含む、検体中のカリクレインを検出するための診断キット。

【図2】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−523097(P2006−523097A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506440(P2006−506440)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001040
【国際公開番号】WO2004/087912
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(502129715)ユニバーシティ オブ ローザンヌ (5)
【Fターム(参考)】