説明

プロドラッグとしてのシルデナフィルN−オキサイド

本発明は、プロドラッグとしてのシルデナフィルN−オキサイド、前記化合物を含有させた製薬学的組成物、これの製造方法および組成物製造方法に関する。本発明は式(1
【化1】


で表される1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−4−メチル−4−オキシド−ピペラジンおよびこれの薬理学的に許容される塩、水化物および溶媒和物に関する。本発明は、また、前記化合物およびこれを含有させた組成物の使用、特にシルデナフィルを用いて副作用があるとしても有効に治療可能な疾患または病気の治療で用いるに有用な薬剤を製造する目的でそれらを用いることにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インデックス 頁
本発明の名称 1
インデックス 1
技術分野 1
背景技術 2
開示 4
定義 6
実施例1: 分析方法 8
実施例2: 具体的化合物の合成 11
実施例3: 薬理学的方法 11
実施例4: 薬物動態および薬理学的試験結果 12
実施例5: 製薬学的製剤 15
参考文献一覧 17
特許請求の範囲 19
要約 21
【0002】
本発明は製薬学および有機化学の分野に関し、シルデナフィルのN−オキサイド、即ち式(1):
【0003】
【化1】

【0004】
で表される1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−4−メチル−4−オキシド−ピペラジンばかりでなくこの化合物を含有させた製薬学的組成物、これの製造方法および組成物製造方法も提供する。
【背景技術】
【0005】
シルデナフィルはcGMP特異的ホスホジエステラーゼ型5(PDE−V)の効力のある選択的阻害剤である。
【0006】
【化2】

【0007】
インビトロ試験により、シルデナフィルはPDE−Vに選択的であることが示された。それがPDE−Vに対して示す効力の方が他の公知ホスホジエステラーゼに対して示す効力よりも高い(PDE−VIに対してよりも10倍、PDE−Iに対してよりも>80倍、PDE−II、PDE−III、PDE−IV、PDE−VII、PDE−VIII、PDE−IX、PDE−XおよびPDE−XIに対してよりも>700)。PDE−IIIと対比した時のPDE−Vへの選択性が約4,000倍であることは重要である、と言うのは、PDE−IIIは心筋収縮能の制御に関与しているからである。シルデナフィルがPDE−VI、即ち網膜内に存在していて網膜の光情報伝達経路に関与する酵素に対して示す効力と比較した時にPDE−Vに対して示す効力はそれに対する効力の約10倍のみである。このように選択性が低いことは投与量または血漿中濃度が高い時に観察される色覚に関する異常さの基礎になっていると考えられている。
【0008】
シルデナフィルは主にCYP3A4(主要な経路)およびCYP2C9(主要ではない経路)の肝ミクロソームアイソザイムによって除去される。そのような主要な循環代謝産物はシルデナフィルのN−脱メチル化の結果としてもたらされる。その代謝産物(またUK 103,320としても知られる)はシルデナフィルと同様なPDE選択性プロファイルを示しかつPDE−Vに対するインビトロ効力は親薬剤が示すそれの約50%である。前記代謝産物の血漿中濃度はシルデナフィルの場合に観察されるそれの約40%であり、その結果として、その代謝産物がシルデナフィルの薬理学的効果を占める割合は約20%である。
【0009】
N−オキサイドが知られるようになったのは1894年からである。現在では、N−オキサイドがいろいろな第三級アミンの代謝産物でありかつまたたいていはそれは第三級アミンとこれのN−脱アルキル類似体の間の中間体でもあることは非常に良く知られている。全部ではないが大部分の第三級アミンである薬剤はN−オキサイドを生じる。これは例えばモルヒネ、イミプラミン、プロマジン、シンナリジンおよびニコチンの場合に生じる。N−オキサイド化が起こる度合は痕跡量からほぼ定量的変換に及んで多様である。ある種のN−オキサイドはこれらの相当する第三級アミンより効力があることが示された。それの最も有名な例は、精神医学および総合内科で最も頻繁に用いられる薬剤の1つであるクロルジアゼポシキド(Librium(R))である。しかしながら、より多くの様々なケースでは、N−オキサイドの方がそれらの相当する第三級アミンよりも効力が低いことが確認され、最も一般的には、N−オキサイド化は代謝不活性化であると見なされている。N−オキサイドはヒトの体内で化学的手段によって容易に還元を受けて相当する第三級アミンになるが、それが起こる度合は多様である。ある種のN−オキサイドは還元による変換をほぼ定量的に受けて相当する第三級アミンになり、そして他の場合の変換は単に痕跡的反応であるか或は全く起こらないことさえある(非特許文献4)。このように、N−
オキサイドおよびこれらの相当する第三級アミンの生成は予測不能である。N−オキサイドが生じた場合、それらは相当する第三級アミンより高い活性を示すか、低い活性を示すか或は完全に不活性であることさえあり得る。N−オキサイドは還元されて相当する第三級アミンになるか或はならないこともあり得る。そのような反応が起こる場合のそれは単に痕跡量であるか或はほぼ定量的であり得る。
【0010】
パラケルスス(Paracelsus)(‘Sola dosis facit venenum’)以来、薬剤が示す治療的効果ばかりでなく毒性効果も関連する標的部位の所のそれらの濃度に関係していることは一般に受け入れられている。一般的に言って標的部位の所の濃度の入手は容易ではないことから、関連した薬剤濃度の近似値として血漿中濃度が用いられる。薬剤開発中、効力が現れる下限または範囲および副作用が現れ始める上限範囲を示す適切な血漿中濃度の枠を限定することが行われる。理想的な場合として、その2つの濃度がすごく離れていると、薬剤を有効かつ副作用が生じないような様式で投与するのが容易になる。現実には、事態はほとんど理想的ではなく、大部分の薬剤が副作用を示す。たいていは、副作用の発生をピーク血漿中濃度が副作用の発生に関係した低い方の濃度を超えていることと関連させることができる。
【0011】
シルデナフィルがもたらす血漿中濃度がピークになると結果として副作用が生じる。シルデナフィルの使用に関連して最も一般的に観察される副作用には、くしゃみ、頭痛、顔面紅潮、動悸、消化不良、眼内圧上昇、かすみ目、光恐怖症、ひどい低血圧、心室性不整脈、心筋梗塞、卒中および持続勃起症が含まれる。そのような有害事象によって薬剤療法の投与量、頻度および期間が大きく制限される可能性がある。特殊な製剤を用いることで有害事象を軽減することは可能であるが、異なる化合物を用いることでもそのような問題を解決することができる。このように、そのような欠点を回避すると同時にシルデナフィルの利点を有する化合物を見つけだすことができれば、それは望ましいことである。プロドラッグは同じ薬理学的プロファイルを有するが、より好ましい薬物動態プロファイルを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP 0 463 756
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Bickel、M.H.,:“The pharmacology and Biochemistry of N−oxides”、Pharmacol.Reviews、21(4)、325−355、1969
【発明の概要】
【0014】
開示
プロドラッグとして作用するシルデナフィル−N−オキサイドを経口投与するとそれは親化合物およびシルデナフィルの有効代謝産物であるN−デスメチルシルデナフィルに急速に変化する。
【0015】
【化3】

【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、また、シルデナフィルN−オキサイドの薬理学的に許容される塩、水化物および溶媒和物にも関し、これらはシルデナフィルもこれの薬理学的に許容される塩も水化物も溶媒和物も実質的に含有しない可能性がある。シルデナフィルN−オキサイドの調製はシルデナフィルに適切な酸化剤、例えばm−CPBAなどを用いた酸化を受けさせることで実施可能である。当該技術分野で良く知られた標準的手順を用いることで製薬学的に許容される塩を得ることができ、例えば本発明の化合物と適切な酸、例えば無機酸または有機酸などを混合することなどで得ることができる。
【0017】
シルデナフィルN−オキサイドおよびこれらを含有して成る組成物は、シルデナフィルを用いて副作用があるとしても有効に治療可能な疾患または病気、即ち勃起機能不全(インポテンス)および肺動脈高血圧症(PAH)の治療で用いるに有用である。
【0018】
本発明はまた下記も包含する:
シルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩および製薬学的に許容される担体を含有して成っていて例えばシルデナフィルによって治療可能な障害または疾患などを治療するための製薬学的組成物;
シルデナフィルによって治療可能な障害または疾患の治療を必要としている哺乳動物にシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩を投与することを含んで成る治療方法;
シルデナフィルによって治療可能な障害または疾患の治療を必要としている哺乳動物にシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩を投与することを含んで成る治療方法;
シルデナフィルによって治療可能な障害または疾患を治療するためのシルデナフィルN
−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩および製薬学的に許容される担体を含有して成る製薬学的組成物;
シルデナフィルによって治療可能な障害または疾患の治療を必要としている患者にシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩を投与することを含んで成る治療方法。
【0019】
本発明は、また、薬剤を製造する目的でシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの塩を用いることも提供する。
【0020】
本発明は更に組み合わせ療法にも関し、ここでは、本発明の化合物またはこれの製薬学的に許容される塩または本発明の化合物を含有して成る製薬学的組成物もしくは製剤をその示した疾患の中の1つ以上を治療する目的で別の治療薬1種または2種以上、例えばシルデナフィルまたはN−デスメチルシルデナフィルなどと同時または逐次的にか或は組み合わせ製剤として投与する。そのような他の治療薬1種または2種以上の投与は本発明の化合物を投与する前、投与すると同時または投与した後に実施可能である。
【0021】
本発明は、また、シルデナフィルによって治療可能な障害または疾患を治療するための化合物、製薬学的組成物、キットおよび方法も提供し、この方法は、前記治療を必要としている患者にシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩を投与することを含んで成る。
【0022】
本発明は、また、本発明の化合物を製造する方法および本方法で用いる中間体も提供する。
【0023】
本化合物が示す結晶形態のいくつかは多形として存在する可能性があり:そのようなものとして本発明に属することを意図する。加うるに、本化合物の数種は水と一緒に溶媒和物(即ち水化物)を形成するか或は通常の有機溶媒と一緒に溶媒和物を形成する可能性もある。そのような溶媒和物もまた本発明の範囲内に入る。
【0024】
PETまたはSPECTで検出可能なように同位体標識を付けておいたシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩もまた本発明の範囲内に入る。同じことが[13C]−、[14C]−、[H]−、[18F]−、[125I]−または他の同位体が豊富に存在する原子による標識を付けておいた式(1)で表される化合物にも当てはまり、これらは受容体結合または代謝検定で用いるに適する。
【0025】
シルデナフィルN−オキサイドがプロドラッグとして有用であることを見つけだすことができれば、そのような化合物を作用期間が長くかつ強い副作用プロファイルをもたらすピーク血漿中濃度が低いと言った臨床的利点を有する代替品として用いることが可能になる。このように、本発明のいくつかの態様では、親化合物である1−[4−エトキシ−3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)フェニルスルホニル]−4−メチルピペラジン(シルデナフィル)を実質的に含有しない本発明の化合物を提供することができる。実質的に含有しないは、本発明の化合物がシルデナフィルを不純物として含有する量が約50%、40%、30%、20%、10%、1%、0.5%未満であるか或は検出限界以内で含有しないことを意味する。シルデナフィルN−オキサイドを含有していてシルデナフィルを実質的に含有しない製薬学的組成物は本発明に従う組成物であると考える。
【0026】
定義
生体内で代謝を受けて生物活性剤(即ちシルデナフィル)になる化合物のいずれも本出願の範囲および精神の範囲内でプロドラッグである。プロドラッグは、本質的に不活性で
はあるが1種以上の有効な代謝産物に変化する治療薬である。プロドラッグは、親薬剤分子の利用にとってある種の障害を克服する目的で用いられる生体内可逆的薬剤分子誘導体である。そのような障害には、これらに限定するものでないが、溶解性、透過性、安定性、全身に至る前に起こる代謝および標的の制限が含まれる(Bundgaard、1985;King、1994;Stella、2004;Ettmayer、2004;Jaervinen、2005)。
【0027】
用語‘多形’は、ある化合物が2種以上の結晶形態、いわゆる多形体として存在し得ることを定義するものである。多形はしばしば起こる現象である。多形はいくつかの結晶化条件、例えば温度、過飽和の度合、不純物の存在、溶媒の極性、冷却速度などの影響を受ける。多形体はいくつかの方法、例えば固体状態NMR、溶解度試験、DSCまたは融点測定、IRまたはラマン分光測定などで特徴づけ可能である。
【0028】
説明をより簡潔にする目的で本明細書に示す量的表現のいくつかには用語“約”による修飾を受けさせていない。用語“約”を明確に用いるか否かに拘らず本明細書に示す全ての量は実際に示す値を指すことを意味しかつまた当該技術分野の通常の技術を基にして妥当に推測されるであろう前記所定値の近似値(前記所定値の実験および/または測定条件が原因の近似値を包含)も指すことを意味すると理解する。本明細書の説明および請求項の全体に渡って、言葉“含んで成る”およびこの言葉の変形、例えば“含んで成っている”および“含有して成る”は、他の添加剤、成分、整数または段階などを排除することを意図するものでない。本明細書で用いる如き用語“組成物”は、指定材料を前以て決めていた量および比率で含有して成る製品ばかりでなく指定材料を指定量で一緒にすることで直接または間接的にもたらされる生成物のいずれも包含する。この用語が製薬学的組成物に関係する場合、この用語は、1種以上の有効成分および任意の担体(不活性な材料を包含)を含有して成る製品ばかりでなくいずれか2種以上の材料を一緒にするか、複合させるか或は凝集させるか、或は1種以上の材料を解離させるか、或は1種以上の材料が示す他の種類の反応または相互作用によって直接または間接的にもたらされる生成物のいずれも包含する。製薬学的組成物の調製を一般に有効成分を液状担体または微細な固体状担体または両方と均一かつ密に関連させた後に必要ならばその生成物を成形して所望の製剤を生じさせることで実施する。そのような製薬学的組成物に含有させる活性のある目的化合物の量は病気の進行または状態に所望の効果をもたらすに充分な量である。従って、本発明の製薬学的組成物には、本発明の化合物と製薬学的に許容される担体を混合することで作られた如何なる組成物も含まれる。
【0029】
本出願の文脈の範囲内で、用語‘組み合わせ製剤’には、真の組み合わせ[これはシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩と他の薬剤がある種の製剤、例えば錠剤または注射液など中で物理的に組み合わされていることを意味する]ばかりでなく‘パーツで出来ているキット(kit−of−parts)’[これにはシルデナフィルN−オキサイドまたはこれの製薬学的に許容される塩とシルデナフィルまたは他の薬剤が個別の投薬形態物として使用説明書に加えて場合により成分である化合物の投与に関するコンプライアンスを助長するさらなる手段、例えばラベルまたは図などと一緒に入っている]の両方が含まれる。真の組み合わせの場合、定義による薬物療法は同時である。‘パーツで出来ているキット’の内容物の投与は同時またはいろいろな時間的間隔を置いて実施可能である。治療を同時に行うか或は逐次的に行うかは、用いる他の薬剤の特性、作用開始および持続期間の如き特性、血漿中濃度、クリアランスなどばかりでなく個々の患者の病気、それの状態および特徴などに依存するであろう。
【0030】
“製薬学的に許容される”は、担体、希釈剤または賦形剤が当該製剤に入っている他の材料に適合しかつそれの受益者に有害であってはならないことを意味する。
【0031】
投与量:推奨される治療投与量はシルデナフィルの場合のそれと同じである:即ち50mgそしてその後に適宜投薬量を少なくするか或は多くする。薬物動態、薬物力学および他の考慮によって実際に投与する量をより高い値または低い値に変更することも可能である。投与すべき化合物の量は、関連する適応症、患者の年齢、体重および性に依存するが、医者はその量を決定することができるであろう。その投与量は好適には0.01mg/kgから10mg/kgの範囲内であろう。典型的な1日当たりの有効成分投与量は幅広い範囲に渡って多様であり、いろいろな要因、例えば関連する適応症、投与経路、患者の年齢、体重および性などに依存し、医者は投与量を決定することができるであろう。経口および非経口投薬量は一般に総有効成分が1日当たり0.1から1,000mgの範囲内の量であろう。
【0032】
本明細書で用いる如き用語“治療的に有効な量”は、本発明の組成物を投与することによって治療可能な疾患を治療または予防する治療薬量を指す。その量は組織系、動物またはヒトに検出可能な治療的、予防的または改善反応が現れるに充分な量である。そのような効果には、例えば本明細書に示す疾患の治療および予防などが含まれ得る。ある被験体に有効な正確な量は、その被験体の大きさおよび健康状態、治療すべき疾患の性質および度合、治療を施す医者(研究者、獣医、医師または他の臨床医)の推奨および投与の目的で選択した療法または療法の組み合わせに依存するであろう。このように、正確な有効量を前以て指定するのは有効ではない。用語“製薬学的に許容される塩”は、健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび下等動物の組織に過度の毒性、刺激、アレルギー反応などをもたらすことなく接触させるに適しかつ妥当な利益/危険比に相応する塩を指す。製薬学的に許容される塩は当技術分野で良く知られている。それらの調製は本発明の化合物を最終的に単離および精製する時点でインシトゥで実施可能であるか或はそれらを製薬学的に許容される無毒の塩基もしくは酸(無機もしくは有機塩基および無機もしくは有機酸を包含)と反応させることで個別に調製可能である。本明細書で用いる如き用語“治療”は、哺乳動物、好適にはヒトの疾患または病気の治療のいずれかを指し、それには(1)病気にかかり易いがまだ病気にかかっていると診断されていない被験体が病気または疾患にかからないようにすること、(2)病気または疾患を抑制、即ちそれの進行を阻止すること、(3)病気または疾患を和らげる、即ち疾患の退行を引き起こすこと、または(4)病気の症状をなくすことが含まれる。本明細書で用いる如き用語”薬物療法”にヒトまたは他の哺乳動物に対して生体内または生体外で実施する予防、診断および治療的療法を包含させることを意図する。本明細書で用いる如き用語“被験体”は、治療、観察または実験の対象である動物、好適には哺乳動物、最も好適にはヒトを指す。
【実施例1】
【0033】
分析方法
核磁気共鳴スペクトル(H NMRおよび13C NMR、APT)の測定を指定溶媒中で特に明記しない限りBruker DRX 600(H:600MHz、13C:150MHz)を300Kで用いて実施した。スペクトルの測定をCambridge Isotope Laboratories Ltd.から入手した重水素化DMSO中で実施した。化学シフト(δ)をテトラメチルシラン(H)からダウンフィールドのppmで示す。結合定数JをHzで示す。NMRスペクトルにおけるピークの形状を記号‘q’(四重線)、‘dq’(二重の四重線)、‘t’(三重線)、‘dt’(二重の三重線)、‘d’(二重線)、‘dd’(二重の二重線)、‘s’(一重線)、‘bs’(幅広い一重線)および‘m’(多重線)で示す。サンプルを1滴のDOと混合した後にNHおよびOHシグナルの同定を実施した。
【0034】
融点をBuechi B−545融点装置を用いて記録した。
【0035】
フラッシュクロマトグラフィーは、指示溶離剤およびシリカゲル(Acros:0.0
30−0.075mmまたはMerckのシリカゲル60:0.040−0.063mmのいずれか)を用いた精製を指す。
【0036】
反応の監視をシリカ被覆プラスチックシート(Merckのシリカゲル60 F254で前以て被覆)を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)を指示溶離剤と一緒に用いて実施した。斑点を紫外光(254nm)またはIで可視化した。
【0037】
液クロ−質量分析(LC−MS)
LC−MS装置を2個のPerkin Elmerシリーズ200ミクロポンプで構成させる。前記ポンプをGilson 215オートサンプラーに連結している50μlのT字形混合装置によって互いに連結させる。この方法は下記の如くである:

ステップ 総時間 流量(μl/分) A(%) B(%)
0 0 2000 95 5
1 1.8 2000 0 100
2 2.5 2000 0 100
3 2.7 2000 95 5
4 3.0 2000 95 5

A=HCOOHが0.025%でNHHCOOが10ミリモルの水(pH=+/−3)が100%
B=HCOOHが0.025%のACNが100%
【0038】
前記オートサンプラーには2μlの注入用ループが備わっている。前記オートサンプラーは3μmの粒子が入っているWaters Atlantis C18 304.6mmカラムに連結している。前記カラムはPerkin Elmerシリーズ200カラムオーブンで40℃に自動調節されている。前記カラムは2.7μlのフローセルが備わっているPerkin Elmerシリーズ200 UVメーターに連結している。波長を254nmに設定する。前記UVメーターはSciex API 150EX質量分析装置に連結している。その質量分析装置は下記のパラメーターを有する:走査範囲:150−900a.m.u.;極性:正;走査様式:プロファイル;解像度Q1:UNIT;ステップサイズ:0.10a.m.u.;1走査当たりの時間:0.500秒;NEB:10;CUR:10;IS:5200;TEM:325;DF:30;FP:225およびEP:10。光散乱検出器がSciex API 150に連結している。その光散乱検出器はSedere Sedex 55であり、それを50℃および3バールのN下で操作する。その装置全体をG3 powermacで制御する。
【0039】
マウスの血漿および脳サンプルに入っているシルデナフィルおよびこれのN−オキサイドの分析を蛋白質を沈澱させた後にMS/MS検出が備わっているHPLCを実施することを含んで成る一般的生物学的分析方法を用いて行った。
【0040】
サンプル調製:100μlの血漿に入っている蛋白質をアセトニトリルで沈澱させた後、その得た溶液のサンプル(5μl)を分析した。脳全体を均一にしかつ遠心分離にかけた後、その上澄み液のサンプル(10μl)を分析した。
【0041】
液クロ-タンデム質量分析(LC−MS/MS)をSciex API 4000 LC−MS/MSを用いて実施した。サンプルの量化を抽出して試験用サンプルと同じ様式で処理した較正サンプルを用いて血漿および脳サンプルのそれぞれが1−5000ng/mlおよび5.0−5000ng/脳の範囲内になるように行った。化合物が示すピークの面積を量化で用いた。較正曲線をモデルy=A+Bx+Cx(yは分析物が示すピー
クの面積でありxは名目上の較正レベル(ng/ml)(血漿)またはng/g(脳)であり、Aは切片であり、Bは傾きであり、そしてCは曲率の記述である)に合致させた。1/xの計量を用いた。LC−MS/MS装置の性能の監視を標準溶液を標準的間隔で注入することを利用して実施した。この使用した方法は詳細には有効ではなく、従って、報告する濃度は良好な推定値であった。血漿および脳サンプルのそれぞれの量化の下限(LLOQ)は1.00ng/mlおよび5.00ng/脳であると確立した。Hypersil BDS C18 100x4.6mm 3μm 分析用カラムを用いた逆相HPLCを流量を1.00ml/分にした勾配溶離を用いて45℃の温度で実施した:
【0042】
【表1】

【0043】
MS/MSを用いた検出を正MRMイオン化を用いて実施した。下記のイオンを測定した:

シルデナフィル N−オキサイドシルデナフィル
Q1 475.3 491.4
Q3 100.1 99.2
【実施例2】
【0044】
具体的化合物の合成
1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシ−フェニル]スルホニル]−4−メチルピペラジン(シルデナフィル)および
1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシ−フェニル]スルホニル]−ピペラジン(N−デスメチルシルデナフィル)の合成をEP 0 463 756に示されているようにして実施した。
1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−4−メチル−4−オキシド−ピペラジン(シルデナフィルN−オキサイド):
シルデナフィルの遊離塩基(1.42g、3ミリモル)を75mlのジクロロメタンに溶解させた後、−10℃に冷却した。その混合物にメタ−クロロ過安息香酸(m−CPB
A、0.74g、3ミリモル、HO中70%)を加えた後、その溶液を−10℃で2.5時間撹拌した。固体状KCO(2g)を加えた後、その結果として得た混合物を0℃で更に30分間撹拌した。その反応混合物を濾過(ガラス製漏斗)で濾過した後、その沈澱物をDCMで洗浄した。その結果として得た溶液を濃縮することで表題の化合物を固体として得た(1.36g、92%)。融点:>200℃(分解)。LCMS;R:1.21分、([M+H]=491).H−NMR(600MHz、DDMSO):δ 7.89−7.85(m、2H)、7.39(d、J=8Hz、1H)、4.18(q、J=7Hz、2H)、4.16(s、3H)、3.51−3.43(m、4H)、3.04(s、3H)、3.02−2.96(m、2H)、2.93−2.88(m、2H)、2.78(t、J=7Hz、2H)、1.77−1.70(m、2H)、1.30(t、J=7Hz、3H)、0.93(t、J=7Hz、3H).
【実施例3】
【0045】
薬理学的方法
ホスホジエステラーゼのインビトロ阻害をCEREP(128、rue Danton、92500 Rueil−Malmaison,フランス)において充分に立証された手順を用いて実施した:PDE−Iをウシ脳から得(Nicholson、1989)、PDE−IIをヒトU−937細胞から得(Torphy、1992)、PDE−IIIをヒト血小板から得(Weishaar、1986)、pDE−IVをヒトU937単球から得(Torphy、1992)、PDE−Vをヒト血小板から得(Weishaar、1986)そしてPDE−VIをウシ網膜から得た(Ballard、1998)。
【0046】
ヒト大腸モデルTIM2(TNO 腸モデル2)は、生体内の状態を模擬するヒト大腸の動的モデルである。これはいろいろな研究で立証された人工消化系である(Minekus、1999)。
【0047】
シルデナフィルN−オキサイドばかりでなくこれの薬理学的に許容される塩はプロドラッグである。それらはシルデナフィルを用いて副作用があるとしても有効に治療可能な病気、即ち勃起機能不全(インポテンス)および肺動脈高血圧症の治療で用いるに有用である。
【実施例4】
【0048】
薬物動態および薬理学的試験結果
シルデナフィルおよびこれのN−オキサイドをオスNMRIマウス(1時間点当たり3匹の動物)に個別に投与(静脈内(i.v.)または経口(p.o.))した後、それらの血漿および脳をLC−MS(この上に示した方法を参照)で両方の化合物に関して分析した。データの平均(n=3)を取りそしてそれらを表1に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
シルデナフィルをマウスに投与(i.v.またはp.o.)した時にそれが代謝を受けてそれのN−オキサイドになる度合は僅かである:血漿中のそれの濃度は親化合物の濃度の1−2%を超えることは決してなく、そして脳中では痕跡量も測定されない。シルデナフィル−N−オキサイド自身を投与すると、これは還元を受けて親化合物になる。シルデナフィルN−オキサイドをi.v.投与してから約1時間後の血漿および脳中のシルデナフィル濃度はN−オキサイドの濃度より高い。そのような効果は経口投与を行った後の方が顕著である:N−オキサイド投与してから30分以内に血漿および脳両方の中のシルデナフィル濃度がN−オキサイドの濃度の10から100倍以上の濃度になる。
【0051】
シルデナフィル−N−オキサイド(1mg)を1%のメチルセルロースに入れて懸濁さ
せた後、TIM2モデル(上を参照、Minekus、1999)の管腔(120ml)の中に挿入した。その管腔および透析物(後者は腸の血管床のモデルである)からサンプルをいろいろな時間的間隔で採取して、シルデナフィル−N−オキサイドおよびシルデナフィルに関して分析した:表2:
【0052】
【表3】

【0053】
この上に示した結果から、シルデナフィルN−オキサイドを投与してから2時間以内に既にそれがほぼ定量的な還元を受けてシルデナフィルになったことは明らかである。いろいろな研究でTIM2は生きているヒトにおける消化管の状態を高度に予測する値をもたらすインビトロモデルであるとして立証されていることから、シルデナフィルN−オキサイドを経口投与するとヒトの場合にもまたそれが還元を受けてシルデナフィルになるであろう、即ちそれはプロドラッグであると予測する。
【0054】
【表4】

【0055】
そのようなデータから、この2種類の化合物は異なる薬物動態特性を示すことは明らかである。小規模なパイロット実験でシルデナフィルおよびこれのN−オキサイドをオスNMRIマウス(1時間点当たり3匹の動物)に個別に投与(静脈内(i.v.)または経口(p.o.)のいずれか)した後、それらの血漿および脳をLC−MS(この上に示した方法を参照)でN−デスメチルシルデナフィルの存在に関して分析した。データの平均(n=3)を取りそしてそれらを表4に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
予想したように、シルデナフィルをマウスに投与(i.v.またはp.o.)するとそれは代謝を受けて代謝産物であるN−デスメチル類似物になったが、これもまた血液脳関門を通り抜ける、と言うのは、それも脳組織内に存在していたからである。シルデナフィル−N−オキサイドを投与した時にまたそれが代謝を受けてN−デスメチルシルデナフィルになることも観察した(観察したのは経口投与した後のみであった)ことは新規な観察であった。
【0058】
シルデナフィル−N−オキサイドがいろいろなホスホジエステラーゼの阻害剤として示す活性を調査する目的で、シルデナフィル自身に続いて前記化合物にも試験を受けさせた。得た結果を表5に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
シルデナフィルに関して表5に示したデータは、科学文献から公知のデータを立証するものである、即ち前記化合物はPDE−Vの効力のある阻害剤でありかつPDE−VI(これもまた強力に阻害される)を除いてその特別なサブタイプにとって高度に選択的である。シルデナフィル−N−オキサイドが示す効力はシルデナフィル自身のそれよりも10倍低いことを確認し、かつ匹敵する選択性を示すことが分かった。
【0061】
要約として、シルデナフィル−N−オキサイドを経口するとそれはプロドラッグとして働く、即ちそれは急速に親化合物およびN−デスメチルシルデナフィル、即ち効力がシルデナフィルの約半分であると報告されているシルデナフィル代謝産物に変化する。また、シルデナフィル−N−オキサイド自身はほとんど全く活性を示さない、即ちそれが示す活性は親化合物のそれの約1/10であることも確認した。
【実施例5】
【0062】
製薬学的製剤
臨床使用の目的で、シルデナフィルN−オキサイドを製薬学的組成物に構築したが、これは本発明にとって重要でありかつ新規な態様である、と言うのは、それらは本化合物、より詳細には本明細書に開示する特定の化合物を含有するからである。使用可能な種類の製薬学的組成物には、錠剤、かみ砕くことができる錠剤、カプセル(ミクロカプセルを包含)、溶液、非経口用溶液、軟膏(クリームおよびゲル)、座薬、懸濁液および本明細書に開示する他の種類が含まれるか、或はそれらは本明細書および当該技術分野における一般的知識を基に当業者に明らかである。また、本有効成分を例えばシクロデキストリン、これらのエーテルまたはエステルに入っている包接錯体の形態にすることも可能である。そのような組成物を経口、静脈内、皮下、気管、気管支、鼻内、肺、経皮、口腔、直腸、非経口または他の様式の投与で用いる。そのような製薬学的製剤は少なくともシルデナフィルN−オキサイドを少なくとも1種の製薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤および/または担体と混ざり合っている状態で含有する。本有効成分の総量を適切には当該製剤の約0.1%(重量/重量)から約95%(重量/重量)、適切には0.5%から50%(重量/重量)、好適には1%から25%(重量/重量)の範囲内にする。いくつかの
態様では、本有効成分の量を約95%(重量/重量)以上または約0.1%(重量/重量)未満にする。
【0063】
本発明の化合物を補助物質、例えば液状もしくは固体粉末状の材料、例えば製薬学的に普通の液状もしくは固体状の充填材および増量剤、溶媒、乳化剤、滑剤、風味剤、着色剤および/または緩衝剤物質などを用いて通常方法で投与に適した形態にしてもよい。頻繁に用いられる補助物質には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトールおよび他の糖もしくは糖アルコール、タルク、乳蛋白質、ゼラチン、澱粉、アミロペクチン、セルロースおよびこれの誘導体、動物性および植物性油、例えば魚肝油、ヒマワリ、落花生またはゴム油など、ポリエチレングリコールおよび溶媒、例えば無菌水および一価もしくは多価アルコール、例えばグリセロールなどばかりでなく崩壊剤および滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびポリエチレングリコールワックスなどが含まれる。次に、その混合物を加工して顆粒にするか或は圧縮して錠剤にしてもよい。錠剤の調製を以下に示す材料を用いて実施する。

材料 量(mg/錠剤)
シルデナフィルN−オキサイド 10
微結晶性セルロース 200
ヒュームド二酸化ケイ素 10
ステアリン酸 10
総量 230

【0064】
前記成分を混合した後、圧縮することで各重量が230mgの錠剤を生じさせた。
【0065】
本有効成分を個別に前以て他の非有効成分と混合しておいた後、混合することで製剤を生じさせてもよい。また、本有効成分を互いに混合した後、非有効成分と混合することで製剤を生じさせることも可能である。
【0066】
軟質ゼラチン製カプセルの調製は、カプセルに本発明の有効成分、植物油、脂肪または軟質ゼラチン製カプセル用の他の適切な媒体の混合物を含有させることで実施可能である。硬質ゼラチン製カプセルには本有効成分の顆粒を含有させてもよい。硬質ゼラチン製カプセルにまた本有効成分と一緒に固体粉末状材料、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモ澱粉、コーンスターチ、アミロペクチン、セルロース誘導体またはゼラチンなどを含有させることも可能である。
【0067】
直腸投与用投薬単位の調製は、(i)本活性物質が中性の脂肪基材と混ざり合っている状態で入っている座薬の形態、(ii)本活性物質が植物油、パラフィン油または直腸用ゼラチン製カプセルに適した他の媒体と混ざり合っている状態で入っている直腸用ゼラチン製カプセルの形態、(iii)既製微細浣腸の形態または(iv)投与直前に適切な溶媒を用いて戻す乾燥微細浣腸製剤の形態で実施可能である。
【0068】
液状製剤の調製はシロップ、エリキシル、濃滴もしくは懸濁液、例えば溶液または懸濁液などの形態で実施可能であり、それらに本有効成分を入れそして残りを例えば糖もしくは糖アルコールおよびエタノール、水、グリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールの混合物などで構成させる。必要ならば、そのような液状製剤に着色剤、風味剤、防腐剤、サッカリンおよびカルボシメチルセルロースまたは他の増粘剤を含有させることも可能である。液状製剤の調製をまた使用前に適切な溶媒を用いて戻す乾燥粉末の形態で実施することも可能である。非経口投与用溶液の調製は本発明の製剤が製薬
学的に許容される溶媒に入っている溶液として実施可能である。そのような溶液にまた安定化用材料、防腐剤および/または緩衝用材料を入れることも可能である。非経口投与用溶液の調製をまた使用前に適切な溶媒を用いて戻す乾燥製剤として実施することも可能である。
【0069】
本発明に従い、また、医学的治療で用いる目的で本発明の製薬学的組成物に含める材料の中の1種以上を充填しておいた容器を1個以上含有して成る製剤および‘部分で出来ているキット’も提供する。そのような容器1個または2個以上と一緒に、いろいろな資料、例えば使用説明書または医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関が規定する形態の注意書き(この注意書きにヒトまたは獣医学的投与の目的で製造、使用または販売することが政府機関によって認可されたことを示す)を入れてもよい。本発明の製剤をホスホジエステラーゼの阻害が要求または必要とされている疾患の治療で用いるための薬剤の製造で用いる方法および医薬的治療方法は、ホスホジエステラーゼの阻害が要求または必要とされている疾患に苦しんでいるか或はそれにかかり易い患者にシルデナフィルN−オキサイドを治療的に有効な総量で投与することを含んで成る。
【0070】
例として、限定するものでないが、全身的使用または局所的塗布に好適な活性化合物を含有して成る数種の製薬学的組成物を示す。本発明の他の化合物またはこれらの組み合わせを前記化合物の代わりに(またそれに加えて)用いることも可能である。本有効成分の濃度は本明細書に考察したように幅広い範囲に渡って多様であり得る。含有させることができる材料の量および種類は当該技術分野で良く知られている。
【0071】
参考文献一覧
以下に示す文献が当業者に有用である範囲でか或は本発明をより詳細に記述する目的でそれらは引用することによって本明細書に組み入れられる。それらのいずれもまた本明細書に引用する他の資料も引用もまた如何なる引用文献の引用も従来技術の資料または引用であるとは認められない。

Ballard他(1998)J.Urol.159:2164

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EP 0 463 756

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Minekus、M.、M.Smeets−Peter、A.Bernalier、S.Marol−Bonnin、R.Havenaar、P.Marteau、M.Alric、G.FontyおよびJ.H.J.Huis in’t Veld.‘A computer−controlled system to simulate conditions of the large intestine with peristaltic mixing、water absorption and absorption of fermentation products’.Appl.Microbiol.Biotechnol.53:108−114、1999.

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Weishaar他(1986)Biochem.Pharmacol.35:787−800

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシ−フェニル]スルホニル]−4−メチル−4−オキシド−ピペラジン:
【化1】

これの薬理学的に許容される塩、水化物および溶媒和物。
【請求項2】
1−[4−エトキシ−3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)フェニルスルホニル]−4−メチル−ピペラジンもこれの薬理学的に許容される塩も水化物も溶媒和物も実質的に含有しない請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1−2のいずれか1項記載の化合物またはこれの薬理学的に許容される塩、水化物または溶媒和物を含有して成る薬剤。
【請求項4】
勃起機能不全または肺動脈高血圧症を治療するための請求項1−2のいずれか記載の化合物。
【請求項5】
製薬学的に許容される担体および/または少なくとも1種の製薬学的に許容される補助物質以外に、請求項1−2のいずれか1項記載の少なくとも1種の化合物またはこれの薬理学的に許容される塩、水化物または溶媒和物を、有効成分として薬理学的に有効な量で含有して成る製薬学的組成物。
【請求項6】
勃起機能不全または肺動脈高血圧症の治療で同時、個別または逐次的に用いるための、(i)シルデナフィルのN−オキサイドまたはこれの薬理学的に許容される塩、水化物または溶媒和物および(ii)別の治療薬を含有して成る、組み合わせ製薬学的製剤。
【請求項7】
前記他の治療薬がシルデナフィルである請求項6記載の組み合わせ製薬学的製剤。
【請求項8】
勃起機能不全または肺動脈高血圧症を治療する製薬学的組成物を製造するための請求項1−2のいずれか記載化合物の使用。
【請求項9】
勃起機能不全または肺動脈高血圧症の治療を必要としているヒトまたは動物患者におけるそれを治療する方法であって、前記患者にシルデナフィルのN−オキサイドを前記治療に有効な量で投与することを含んで成る方法。
【請求項10】
勃起機能不全または肺動脈高血圧症を治療する製薬学的組成物を製造するための請求項6記載組み合わせ製剤の使用。
【請求項11】
シルデナフィルのN−オキサイドを製造する方法であって、式(1)で表されるシルデ
ナフィルに酸化剤を用いた酸化を受けさせることで式(1)で表されるシルデナフィルN−オキサイドを生じさせる
【化2】

方法。
【請求項12】
前記酸化剤がm−クロロ過安息香酸である請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2010−531327(P2010−531327A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513874(P2010−513874)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057940
【国際公開番号】WO2009/000798
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(501439149)ソルベイ・フアーマシユーチカルズ・ベー・ブイ (71)
【Fターム(参考)】