説明

プローブカードの平行度調整機構

【課題】プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハの表面との平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることができるプローブカードの平行度調整機構を提供する。
【解決手段】検査対象であるウェハ31と検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続する複数のプローブ1を保持するプローブカード101のウェハ31に対する平行度を調整するため、プローブカード101を取り付けるプローバ201の取り付け基準面S1に対してプローブカード101の傾斜度を変更する傾斜度変更手段の少なくとも一部をなす調整ねじ22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象であるウェハと検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続するプローブカードの平行度を調整するプローブカードの平行度調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程では、ダイシングする前のウェハの状態で導電性を有するプローブ(導電性接触子)をコンタクトさせることによって導通検査等の電気特性検査を行い、不良品を検出する(WLT:Wafer Level Test)。このWLTを行う際には、検査用の信号をウェハへ伝送するために、多数のプローブを収容するプローブカードが用いられる。WLTでは、ウェハ上のダイをプローブカードでスキャニングしながらプローブをダイごとに個別にコンタクトさせるが、ウェハ上には数百〜数万というダイが形成されているので、一つのウェハをテストするにはかなりの時間を要し、ダイの数が増加するとともにコストの上昇を招いていた。
【0003】
上述したWLTの問題点を解消するために、最近では、ウェハ上の全てのダイ、またはウェハ上の少なくとも1/4〜1/2程度のダイに数百〜数万のプローブを一括してコンタクトさせるFWLT(Full Wafer Level Test)という手法も用いられている(例えば、特許文献1を参照)。この手法では、プローブをウェハ上の電極パッドに対して正確にコンタクトさせるため、ウェハの表面に対するプローブカードの平行度や平面度を精度よく保つことによってプローブの先端位置精度を保持する技術や、ウェハを高精度でアライメントする技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−524258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のプローブカードでは、プローブカードの取り付け基準面とウェハとの平行度が失われると、プローブカードが保持するプローブがウェハに対して一様にコンタクトすることができなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハとの平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることができるプローブカードの平行度調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、検査対象であるウェハと検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続する複数のプローブを保持するプローブカードと、前記プローブカードを取り付けるプローバとを有し、前記プローブカードの前記ウェハに対する平行度を調整するプローブカードの平行度調整機構であって、前記プローブカードの前記プローバへの取り付け基準面に対して前記プローブカードの傾斜度を変更する傾斜度変更手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、上記発明において、前記プローバは、下方に位置する表面を前記取り付け基準面とするフレーム部材と、前記フレーム部材と前記プローブカードとの間に介在し、前記フレーム部材に締結され、前記プローブカードの表面と密着する表面を有するドッキング部材と、を含み、前記傾斜度変更手段は、前記ドッキング部材を前記フレーム部材に対して移動させるとしてもよい。
【0009】
また、上記発明において、前記傾斜度変更手段は、前記取り付け基準面の円周上に配置され、前記取り付け基準面と直交する方向に進退自在となるように前記フレーム部材に取り付けられ、先端が前記ドッキング部材の表面に当接可能な少なくとも3本の調整ねじを含むとしてもよい。
【0010】
また、上記発明において、前記ドッキング部材の前記調整ねじの先端が当接する位置に芯出し用のくぼみを設けてもよい。
【0011】
また、上記発明において、前記プローバは、下方に位置する表面を前記取り付け基準面とするフレーム部材と、前記フレーム部材と前記プローブカードとの間に介在し、前記プローブカードに締結され、前記フレーム部材の表面と密着する表面を有するドッキング部材と、を含み、前記傾斜度変更手段は、前記プローブカードを前記ドッキング部材に対して移動させるとしてもよい。
【0012】
また、上記発明において、前記傾斜度変更手段は、前記取り付け基準面の円周上に配置され、前記取り付け基準面と直交する方向に進退自在となるように前記ドッキング部材に取り付けられ、先端が前記プローブカードの表面に当接可能な少なくとも3本の調整ねじを含むとしてもよい。
【0013】
また、上記発明において、前記プローブカードの前記調整ねじの先端が当接する位置に芯出し用のくぼみを設けてもよい。
【0014】
また、上記発明において、前記プローバは、前記プローブカードの前記プローブが突出している側の表面の一部を載置し、この載置面を前記取り付け基準面とするプローブカードホルダを含み、前記傾斜度変更手段は、前記プローブカードを前記プローブカードホルダに対して移動させるとしてもよい。
【0015】
また、上記発明において、前記プローブカードは、前記プローブと前記回路構造との電気的な接続を図る配線を有する配線基板と、前記配線基板に装着されて前記配線基板を補強する補強部材と、を含み、前記傾斜度変更手段は、前記取り付け基準面の円周上に配置され、前記取り付け基準面と直交する方向に進退自在となるように前記プローブカードホルダの底面から取り付けられ、先端が前記補強部材の底面に当接可能な少なくとも3本の調整ねじを含むとしてもよい。
【0016】
また、上記発明において、前記傾斜度変更手段は、前記取り付け基準面の円周上に配置され、前記取り付け基準面と直交する方向に進退自在となるように前記プローブカードの上面から取り付けられ、前記プローブカードホルダの前記載置面に当接可能な少なくとも3本の調整ねじを含み、前記載置面の前記調整ねじの先端が当接する位置に芯出し用のくぼみを設けてもよい。
【0017】
また、上記発明において、前記プローブカードは、前記プローブと前記回路構造との電気的な接続を図る配線を有する配線基板と、前記配線基板に装着されて前記配線基板を補強する補強部材と、を含み、前記傾斜度変更手段は、前記取り付け基準面の円周上に配置され、前記取り付け基準面と直交する方向に進退自在となるように前記補強部材の上面から取り付けられた少なくとも3本の締結ねじと、前記配線基板の板厚方向を貫通して埋め込まれ、前記配線基板の板厚よりも大きい高さを有し、前記締結ねじを螺合可能な複数のポスト部材と、を含み、前記複数のポスト部材には、異なる高さを有するものが含まれるとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプローブカードの平行度調整機構によれば、検査対象であるウェハと検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続する複数のプローブを保持するプローブカードのウェハに対する平行度を調整するため、プローブカードを取り付けるプローバの取り付け基準面に対してそのプローブカードの傾斜度を変更する傾斜度変更手段を備えたことにより、プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハとの平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。
【図2】図2は、プローバの要部の構成を示す上面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1で適用される調整ねじの作用を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態3に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態3で適用される調整ねじの作用を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態4に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態5に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態5で適用されるポスト部材の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合もあることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合があることは勿論である。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す断面図である。同図においては、導電性材料からなる複数のプローブ1を収容するプローブカード101と、プローブカード101が取り付けられ、検査対象であるウェハ31の電気特性検査を行うプローバ201の要部とを示している。
【0022】
まず、プローブカード101の構成を説明する。プローブカード101は、複数のプローブ1を用いて検査対象であるウェハ31と検査用の信号を生成する回路構造とを電気的に接続するものであり、配線が設けられた円盤状の配線基板2と、配線基板2の一方の面に装着され、配線基板2を補強する補強部材3と、配線基板2からの配線を中継するインターポーザ4と、インターポーザ4によって中継された配線の間隔を変換するスペーストランスフォーマ5と、配線基板2よりも径が小さい円盤状をなしてスペーストランスフォーマ5に積層され、ウェハ31の配線パターンに対応して複数のプローブ1を収容保持するプローブヘッド6と、を備える。また、プローブカード101は、配線基板2に取り付けられ、インターポーザ4およびスペーストランスフォーマ5を積層した状態で一括して保持する保持部材7と、保持部材7に装着されてプローブヘッド6の端部を固定するリーフスプリング8と、配線基板2と検査用の回路構造との電気的な接続を図るオスコネクタ9と、を備える。
【0023】
配線基板2は、ベークライトやエポキシ樹脂等の絶縁性物質を用いて形成され、その内部には配線層がビアホール等によって立体的に形成されている。配線基板2に形成される配線は、一方の端部がオスコネクタ9に接続され、他方の端部がスペーストランスフォーマ5に接続されている。なお、図1では、記載を簡略にするために、一部の配線のみを模式的に示している。
【0024】
補強部材3は円盤状をなし、オスコネクタ9を上方へ露出可能な中空部を有している。この補強部材3は、アルマイト仕上げを行ったアルミニウム、ステンレス、インバー材、コバール材(登録商標)、ジュラルミンなど剛性の高い材料によって実現される。
【0025】
インターポーザ4は、薄板状をなす。このインターポーザ4として、例えばマシナブルセラミックスからなる基材に複数の貫通孔を形成し、この貫通孔に伸縮自在な接続端子を挿通したものを用いることができる。接続端子は、その一端がスペーストランスフォーマ5の電極パッドに接触するとともに、他端が配線基板2の電極パッドに接触している。この場合の接続端子は、導電性材料を巻回して形成したコイルばねによって構成してもよいし、導電性を有するばねの両端にピン型の導電性接続部材を取り付けた構成としてもよい。なお、インターポーザ4として、ポリイミド等の絶縁性材料からなる薄膜状の基材と、この基材の両面に配設され、片持ち梁状をなす板ばね式の複数の導電性接続端子とを有するものを適用してもよい。また、インターポーザ4として、薄板状のシリコンゴム内部の板厚方向に金属粒子を配列させた加圧導電ゴムを適用してもよい。
【0026】
スペーストランスフォーマ5は、内部の配線層も配線基板2と同様、ビアホール等によって立体的に形成されている。このスペーストランスフォーマ5の表面はインターポーザ4と略合同な表面を有し、薄板状をなしている。かかるスペーストランスフォーマ5は、アルミナ系セラミックス等の絶縁性材料を母材としており、プローブヘッド6の熱膨張係数と配線基板2の熱膨張係数との差を緩和する機能をも果たしている。
【0027】
プローブヘッド6は、セラミックス等の絶縁性材料によって形成された円盤形状をなし、ウェハ31の配列に応じて複数のプローブ1を収容するための複数の貫通孔部が板厚方向に貫通するように形成されている。プローブヘッド6に収容されるプローブ1の数や配置パターンは、ウェハ31に形成される半導体チップの数や電極パッドの配置パターンに応じて定まる。例えば、直径8インチ(約200mm)のウェハ31を検査対象とする場合には、数百〜数千個のプローブ1が必要となる。また、直径12インチ(約300mm)のウェハ31を検査対象とする場合には、数千〜数万個のプローブ1が必要となる。
【0028】
プローブヘッド6が収容するプローブ1は、ウェハチャック701に載置されたウェハ31の電極パッドの配置パターンに対応して一方の先端が突出するようにプローブヘッド6に収容保持されており、各プローブ1の表出している先端がウェハ31の複数の電極パッドの表面に対して垂直な方向から所定圧で接触する。プローブ1は細針状をなすとともに、長手方向に伸縮自在に弾発付勢されている。このようなプローブ1として、従来から知られているプローブのいずれかを適用することができる。
【0029】
保持部材7は、補強部材3と同様の材料によって構成され、積層されたインターポーザ4およびスペーストランスフォーマ5を保持することが可能な中空部を有する。この保持部材7は、ねじ(図示せず)等を用いて配線基板2に固着されている。
【0030】
リーフスプリング8は、リン青銅、ステンレス、ベリリウム銅などの弾性のある材料から形成され、薄肉の円環状をなし、保持部材7に締結されている。リーフスプリング8は、プローブヘッド6表面の周縁部近傍を全周に渡って配線基板2の方向へ均等に押さえ付けており、プローブヘッド6で収容するプローブ1には略均一な初期荷重を発生し、プローブヘッド6の反りを防止している。
【0031】
オスコネクタ9は、配線基板2の中心に対して放射状に配設され、プローバ201が具備するメスコネクタ(図示せず)と対をなし、互いの端子が接触することによってプローブ1と検査用の回路構造との電気的な接続を確立する。オスコネクタ9とメスコネクタとから構成されるコネクタとしてZIF型コネクタを適用することができる。このZIF型コネクタを適用すれば、プローブカード101や検査装置は、プローブ1の数が多くても接続によるストレスをほとんど受けずに済み、電気的な接続を確実に得ることができる上、プローブカード101の耐久性を向上させることもできる。なお、オスコネクタ9の配置位置は、必ずしも上述したものに限られるわけではない。また、配線基板2にメスコネクタを配設する構成としてもよい。
【0032】
以上の構成を有するプローブカード101を組み立てる際、配線基板2、補強部材3、インターポーザ4、スペーストランスフォーマ5、プローブヘッド6、保持部材7を順次積層するときには、所定の位置決めピンを用いて相互の位置決めを行うようにすればより好ましい。
【0033】
次に、プローバ201の要部の構成を説明する。図2はプローバ201の上面図である。なお、図1は図2のA−A線断面図である。プローバ201は、プローブカード101の補強部材3側を取り付けるフレーム部材211と、フレーム部材211を支持する支持部材221と、プローブカード101の底面を保持するプローブカードホルダ301とを備える。また、プローバ201は、ステンレスまたはアルミニウム等の金属を用いて形成され、フレーム部材211とプローブカード101の補強部材3との間に介在し、フレーム部材211に締結された円盤状のドッキング部材401と、ウェハ31を載置するウェハチャック701とを備える。さらに、プローバ201は、ウェハチャック701の昇降動作を行う駆動手段と、プローブ1とウェハ31との位置合わせを行う位置合わせ手段と、プローバ201の各動作を制御する制御手段と、を備える(図示せず)。
【0034】
フレーム部材211は、プローブカード101の配線基板2よりも若干大きい径を有する円形の外周部211aと、外周部211aのなす円と同じ中心を有し、ドッキング部材401よりも若干大きい表面積を有する円盤状をなす中央部211bと、中央部211bの外周方向から外周部211aに達するまで延出し、外周部211aと中央部211bとを連結する4つの連結部211cとを有する。
【0035】
フレーム部材211の中央部211bには、その中心部を板厚方向に貫通する孔部212が設けられている。この孔部212の内側面には、フレーム部材211とドッキング部材401とを締結する締結ねじ21を螺合可能なねじ山が設けられている(図示せず)。また、フレーム部材211の中央部211bには、4つの孔部213が取り付け基準面S1上の同一円周上の中心対称な位置に形成されている。これらの孔部213の内側面にはねじ山(図示せず)が設けられており、プローブカード101の平行度を調整する調整ねじ22が螺合されている。
【0036】
プローブカードホルダ301は、プローブカード101を保持した状態でプローブヘッド6の表面を表出する中空部311が形成され、配線基板2の底面部を載置可能な薄円盤状をなす主板部301aを有する。
【0037】
ドッキング部材401の中心部には、その中心部を板厚方向に貫通する孔部411が設けられている。この孔部411の内側面には、締結ねじ21を螺合可能なねじ山が設けられている(図示せず)。ドッキング部材401をフレーム部材211と締結する際には、孔部212と孔部411とを同軸的に連通し、締結ねじ21を螺合することによって両部材を締結する。なお、フレーム部材211の孔部213に螺合される調整ねじ22は、その先端部がドッキング部材401の表面に当接するまで埋め込まれる。この調整ねじ22は、取り付け基準面S1と直交する方向に進退自在である。また、ドッキング部材401の底面とプローブカード101の補強部材3の上面とは隙間なく密着しており、ドッキング部材401が移動する際には、プローブカード101も追従して移動する。
【0038】
ドッキング部材401は、プローブ1の先端の高さを調整するスペーサとしての機能も有している。すなわち、ドッキング部材401は、プローブ1がウェハ31とコンタクトしてストロークした後、プローブ1の先端がプローブカードホルダ301の底面よりも確実に下方に突出するような厚さを有している。
【0039】
次に、図3を用いて調整ねじ22の作用を説明する。本実施の形態1では、調整ねじ22を回してその調整ねじ22の先端位置を進退すなわち図3で上下動させることにより、フレーム部材211に対してドッキング部材401を移動させ、ドッキング部材401および補強部材3の上面がドッキング部材401の下面に密着するプローブカード101の取り付け基準面S1に対する傾斜度を変更する。この意味で、調整ねじ22は、傾斜度変更手段の少なくとも一部をなしている。図3に示す場合、調整ねじ22を図で下方へ動かすことによってフレーム部材211の底面である取り付け基準面S1とドッキング部材401との平行度は失われているが、ここで調整すべきはプローブ1の先端位置を通る平面Pとウェハ31の表面を通過する平面Wとの平行度であり(図1を参照)、問題はない。なお、調整ねじ22によるドッキング部材401の移動量Δhは、たかだか数十〜数百μm(マイクロメートル)程度である。
【0040】
ところで、図2においては、フレーム部材211の構成(連結部211cが4つ)等も考慮に入れて4本の調整ねじ22を取り付ける構成とした場合を図示しているが、一般に調整ねじ22の本数は、各調整ねじ22の先端によって一つの平面を構成することができればよく、最低3本あればよい。この一方で、調整ねじ22の本数が多すぎると、傾斜度を変更して平行度の調整を行うこと自体が難しくなる。したがって、フレーム部材211に取り付ける調整ねじ22の本数は、3〜6本程度であればより好ましい。また、調整ねじ22の配置場所は、必ずしも上述した場合に限られるわけではなく、配線基板2、補強部材3、インターポーザ4、スペーストランスフォーマ5等の板厚や表面積、剛性等の諸条件によって適宜定めればよい。
【0041】
なお、フレーム部材211に対するドッキング部材401の傾斜度を変更し、プローブカード101の平行度を調整する際には、プローブ1の先端付近をカメラ等の撮像手段によって撮影し、この撮影した画像を参照しながら調整ねじ22の締め具合を調整すれば効率よく傾斜度を変更することができてより好ましい。
【0042】
以上説明した本発明の実施の形態1に係るプローブカードの平行度調整機構によれば、検査対象であるウェハと検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続する複数のプローブを保持するプローブカードのウェハに対する平行度を調整するため、プローブカードを取り付けるプローバの取り付け基準面に対してそのプローブカードの傾斜度を変更する傾斜度変更手段を備えたことにより、プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハとの平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態1によれば、プローブがウェハに対して一様にコンタクトするような調整を行うことにより、高精度で信頼性の高いウェハの電気特性検査を実現することができる。
【0044】
さらに、本実施の形態1によれば、プローブの先端位置の精度も向上するため、プローブ間の先端の高さ方向の位置のバラツキを抑え、全てのプローブのストロークをほぼ一定とすることができ、安定した接触抵抗を得ることができる。加えて、全てのプローブのストロークをほぼ一定とすることにより、特定のプローブに対して必要以上の荷重を加えてしまうこともなくなるため、ウェハ上の電極パッドを過度に傷つけずに済む。また、ダイとパッケージとの接続工程(ワイヤーボンディング等)における歩留まりの悪化や、電極パッドに接続された配線の破壊等を防止することもできる。
【0045】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。プローブカード102は、配線基板2を補強する補強部材11の中心部に孔部111が設けられている。上記以外のプローブカード102の構成は、プローブカード101の構成と同じである。
【0046】
プローブカード102を取り付けるプローバ202は、プローブカード102の補強部材11側を取り付けるフレーム部材231と、フレーム部材231とプローブカード102の間に介在し、プローブカード102に締結された円盤状のドッキング部材402と、を備える。ドッキング部材402の中心部には、取り付け時に孔部111と同軸的に連通可能な孔部421が形成されており、これらの孔部111および421に締結ねじ23を螺合することにより、ドッキング部材402と補強部材11とが締結されている。
【0047】
ドッキング部材402には、複数の孔部422が中心対称な位置に配置されている。本実施の形態2では、ドッキング部材402の上面はフレーム部材231の中央部231bの底面と隙間なく密着している。この意味で、孔部422は、取り付け基準面S1上の同一円周上の中心対称な位置に配置されているということもできる。これらの孔部422の内側面には、プローブカード102の補強部材11の取り付け基準面S1に対する傾斜度を変更する傾斜度変更手段の一部をなす調整ねじ24を螺合可能なねじ山(図示せず)が設けられている。孔部422の数は、上述した実施の形態1と同様に3〜6個程度であれば好ましい。
【0048】
調整ねじ24の先端は補強部材11の上面に当接している。本実施の形態2では、プローブカード102がドッキング部材402に締結されているため、プローバ202にプローブカード102を取り付ける前に、ドッキング部材402に対するプローブカード102の傾斜度を変更してプローブカード102の平行度を調整することもできる。
【0049】
フレーム部材231には、プローブカード102をプローバ202へ取り付けたときにドッキング部材402の孔部422と同軸的に連通する孔部232が設けられている。このため、プローブカード102をプローバ202に取り付けた後も、フレーム部材231の上面から調整ねじ24の先端位置を進退すなわち図4で上下動させ、取り付け基準面S1に対するプローブカード102の傾斜度を変更することができる。
【0050】
上記以外のプローブカード102およびプローバ202の各構成は、上記実施の形態1で説明したプローブカード101およびプローバ201の各構成とそれぞれ同様である。
【0051】
以上説明した本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に、プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハとの平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態2によれば、プローブカードをプローバへ取り付ける前に予備的な調整を行うこともできる。
【0053】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。プローブカード103は、配線が設けられた配線基板12と、配線基板12を補強する補強部材13と、を備える。また、プローブカード103は、上記実施の形態1で説明したプローブカード101が具備するのとそれぞれ同じ構成を有するインターポーザ4、スペーストランスフォーマ5、プローブヘッド6、保持部材7、およびリーフスプリング8を具備している。
【0054】
プローブカード103を取り付けるプローバ203は、プローブカード103の底面を保持するプローブカードホルダ302と、プローブカード103の補強部材13の上方からばねの弾性力によって伸縮自在な構成を有する接続端子51を複数個有する中空平板状の端子座501とを備える。接続端子51は、その先端が、配線基板12の端面に設けられて内部の配線に接続される複数の電極パッド(図示せず)と対向する位置に配設されている。
【0055】
プローブカードホルダ302は、プローブカード103を保持した状態でプローブヘッド6の表面を表出する中空部321が形成され、配線基板12の底面部を載置可能な薄円盤状をなす主板部302aを有しており、この主板部302aの上面がプローバ203における取り付け基準面S2である。
【0056】
プローバ203にプローブカード103を取り付ける際には、プローブカード103をプローブカードホルダ302の主板部302aに載置した後、端子座501をプローブカード103の上方から押し付けることによってプローブカード103を固定する。
【0057】
プローブカードホルダ302の主板部302aの周縁部付近には、主板部302aを板厚方向に貫通する孔部322が形成されている。また、配線基板12の周縁部付近にも、プローブカードホルダ302に載置したときに孔部322と同軸的に連通する孔部121が形成されている。これらの孔部322および121は、取り付け基準面S2上の同一円周上の中心対称な位置に形成されている。孔部322および121の内周面にはねじ山(図示せず)が形成されており、プローブカード103の平行度を調整する調整ねじ25がプローブカードホルダ302の底面側から取り付けられている。本実施の形態3においても、調整ねじ25の本数は3〜6本程度が好ましい。
【0058】
次に、図6を用いて調整ねじ25の作用を説明する。本実施の形態3では、調整ねじ25を回してその調整ねじ25の先端位置を進退すなわち図6で上下動させることにより、プローブカードホルダ302に対してプローブカード103を移動させ、プローブカードホルダ302の載置面である取り付け基準面S2に対するプローブカード103の傾斜度を変更する。この意味で、調整ねじ25は、傾斜度変更手段の少なくとも一部をなしている。図6に示す場合、調整ねじ25を図で上方へ動かすことによってプローブカードホルダ302の取り付け基準面S2とプローブカード103の配線基板12の底面との平行度は失われているが、ここで調整すべきはプローブ1の先端位置を通る平面Pとウェハ31を通過する平面Wとの平行度であり(図5を参照)、問題はない。なお、調整ねじ25によるプローブカード103の上下方向の移動量ΔHは、たかだか数十〜数百μm程度である。
【0059】
なお、本実施の形態3において、プローブカード103の上方からプローブカード103を押さえつける端子座501をコネクタ座に置き換えることも可能である。この場合には、上述した実施の形態1と同様に、コネクタ座と相対するコネクタを配線基板12の上面に取り付ければよい。
【0060】
以上説明した本発明の実施の形態3に係るプローブカードの平行度調整機構によれば、検査対象であるウェハと検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続する複数のプローブを保持するプローブカードのウェハに対する平行度を調整するため、プローブカードを取り付けるプローバの取り付け基準面に対してそのプローブカードの傾斜度を変更する傾斜度変更手段を備えたことにより、プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハとの平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることが可能となる。
【0061】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4に係るプローブカードの平行度調整機構を構成を示す図である。プローブカード104は、配線が設けられた配線基板14と、配線基板14を補強する補強部材15と、を備える。配線基板14の周縁部付近には、板厚方向に貫通する複数の孔部141が形成されている。また、補強部材15の周縁部付近には、取り付け時に配線基板14の孔部141と同軸的に連通する孔部151が形成されている。孔部141および151の内周面にはねじ山(図示せず)が形成されており、プローブカード104の平行度を調整する調整ねじ26が補強部材15の上面側から取り付けられている。なお、ここで説明した以外のプローブカード104の構成は、上記実施の形態1で説明したプローブカード101の構成と同様である。
【0062】
プローブカード104を装着するプローバ204は、プローブカード104の底面を保持するプローブカードホルダ303を備える。プローブカードホルダ303以外のプローバ204の構成は、上記実施の形態3におけるプローバ203の構成と同じである。
【0063】
プローブカードホルダ303は、プローブカード103を保持した状態でプローブヘッド6の表面を表出する中空部331が形成され、配線基板14の底面部を載置可能な薄円盤状をなす主板部303aを有しており、この主板部303aの上面がプローバ204における取り付け基準面S2である。主板部303aの上面には、補強部材15および配線基板14において取り付け基準面S2上の同一円周上の中心対称な位置にそれぞれ形成された孔部151および141に螺合されている調整ねじ26の先端が当接する位置に、その調整ねじ26の芯出しを行うくぼみ332が設けられている。
【0064】
本実施の形態4では、傾斜度変更手段の少なくとも一部をなす調整ねじ26をプローブカード104の上面側から取り付け、この調整ねじ26の先端位置を進退すなわち図7で上下動させることにより、プローブカードホルダ303に対してプローブカード104を移動させ、プローブカードホルダ303の載置面である取り付け基準面S2に対するプローブカード104の傾斜度を変更する。その際、調整ねじ26の先端が芯出しされ、くぼみ332に自動的に当接して保持されるため、正確な位置決めを行うことができる。この意味で、調整ねじ26はプローブカード104のプローブカードホルダ303への位置決めピンとしての機能をも有している。
【0065】
以上説明した本発明の実施の形態4によれば、上述した実施の形態1〜3と同様に、プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハとの平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態4によれば、プローブカードの載置面上で調整ねじの先端位置が当接する位置にくぼみを設けることによって調整ねじの芯出しをすることにより、正確な位置決めを行うことが可能となる。
【0067】
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5に係るプローブカードの平行度調整機構の構成を示す図である。プローブカード105は、配線が設けられた配線基板16と、配線基板16を補強する補強部材17と、を備える。配線基板16の周縁部付近には、板厚方向に貫通する複数の孔部161が形成されている。また、補強部材17の周縁部付近には、取り付け時に配線基板16の孔部161と同軸的に連通する孔部171が形成され、その内側面には、後述する締結ねじ27を取り付け可能なねじ山が設けられている(図示せず)。これらの孔部161および171は、取り付け基準面S2上の同一円周上の中心対称な位置に形成されている。なお、ここで説明した以外のプローブカード105の構成は、上記実施の形態1で説明したプローブカード101の構成と同様である。
【0068】
プローブカード105を装着するプローバ205は、プローブカード105の底面を保持するプローブカードホルダ304を備える。プローブカードホルダ304は、プローブカード105を保持した状態でプローブヘッド6の表面を表出する中空部341が形成され、配線基板16の底面部を載置可能な薄円盤状をなす主板部304aを有しており、この主板部304aの上面がプローバ205における取り付け基準面S2である。プローブカードホルダ304以外のプローバ205の構成は、上記実施の形態3におけるプローバ203の構成と同じである。
【0069】
本実施の形態5では、傾斜度変更手段として、取り付け基準面S2上の同一円周上の中心対称な位置に配置され、取り付け基準面S2と直交する方向にプローブカード105の補強部材17の上面側から取り付けられた少なくとも3本の締結ねじ27と、プローブカード105の配線基板16の孔部161に貫通して埋め込まれ、締結ねじ27を螺合可能な複数のポスト部材61と、を含む。
【0070】
ポスト部材61は、一方の底面から締結ねじ27を螺合可能な凹部611を備えた円筒形状をなしており、その高さh1は配線基板16の板厚よりも大きい。本実施の形態5では、孔部161に高さが異なるポスト部材を埋め込むことによってプローブカード105をプローブカードホルダ304に対して移動させ、プローブカード105のプローブカードホルダ304に対する傾斜度を変更する。具体的には、例えば図9に示すように、孔部161のいずれか一つににポスト部材61とは異なる高さh2(>h1)を有するとともに締結ねじ27を螺合可能な凹部621を具備するポスト部材62を埋め込むことによって、プローブカード105のプローブカードホルダ304に対する傾斜度が変わる。
【0071】
このようなポスト部材としては、例えば5〜10μm程度の単位で高さが段階的に異なる複数種類のポスト部材を形成しておき、それらのポスト部材の中から最適な組み合わせを探し出して各孔部161に埋め込み、プローブカード105の平行度を調整するようにすればよい。
【0072】
以上説明した本発明の実施の形態5によれば、所定の高さを有する複数種類のポスト部材を適宜用いることによってプローブカードホルダに対するプローブカードの傾斜度を変更することにより、プローブカードの取り付け基準面と検査対象であるウェハとの平行度が失われていても、そのプローブカードが保持するプローブをウェハに対して一様にコンタクトさせることが可能となる。
【0073】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1〜5を詳述してきたが、本発明はそれらの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、実施の形態4でプローブカードホルダ303に形成したくぼみ332と同様のくぼみを、他の実施の形態における調整ねじの先端に当接する位置に形成してもよい。
【0074】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 プローブ
2、12、14、16 配線基板
3、11、13、15、17 補強部材
4 インターポーザ
5 スペーストランスフォーマ
6 プローブヘッド
7 保持部材
8 リーフスプリング
9 オスコネクタ
21、23、27 締結ねじ
22、24、25、26 調整ねじ
31 ウェハ
51 接続端子
61、62 ポスト部材
101、102、103、104、105 プローブカード
111、121、141、151、161、171、212、213、232、322、411、421、422 孔部
201、202、203、204、205 プローバ
211、231 フレーム部材
211a、231a 外周部
211b、231b 中央部
211c 連結部
221 支持部材
301、302、303、304 プローブカードホルダ
301a、302a、303a、304a 主板部
311、321、331、341 中空部
332 くぼみ
401、402 ドッキング部材
501 端子座
611、621 凹部
701 ウェハチャック
1、S2 取り付け基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象であるウェハと検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続する複数のプローブを保持するプローブカードと、前記プローブカードを取り付けるプローバとを有し、前記プローブカードの前記ウェハに対する平行度を調整するプローブカードの平行度調整機構であって、
前記プローブカードの前記プローバへの取り付け基準面に対して前記プローブカードの傾斜度を変更する傾斜度変更手段を備え、
前記プローバは、
前記プローブカードの表面のうち前記プローブが突出している側の表面の一部を載置し、この載置面を前記プローブカードの前記プローバへの取り付け基準面とするプローブカードホルダを含み、
前記プローブカードは、
前記プローブと前記回路構造との電気的な接続を図る配線を有する配線基板と、
前記配線基板に装着されて前記配線基板を補強する補強部材と、を含み、
前記傾斜度変更手段は、
前記取り付け基準面の円周上に配置され、前記取り付け基準面と直交する方向に進退自在となるように前記プローブカードホルダの底面から取り付けられ、先端が前記補強部材の底面に当接可能な少なくとも3本の調整ねじを含み、前記プローブカードを前記プローブカードホルダに対して移動させることを特徴とするプローブカードの平行度調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−215591(P2012−215591A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173293(P2012−173293)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2006−208911(P2006−208911)の分割
【原出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】